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交通事故捜査の流れと証拠―実況見分・供述調書・送致まで(AI作成)

交通事故捜査では,事故現場の状況,車両の損傷,映像,関係者の供述及び傷害の内容を集め,事故がどのように発生したか,運転者にどのような注意義務違反があったか,その違反と死傷結果に因果関係があるかを確認する。捜査は実況見分だけで終わるものではなく,供述調書,診断書・病状照会,ドライブレコーダー等を相互に照合して進められる。

この記事では,交通事故捜査の流れを事故直後から検察庁への送致まで時系列で整理し,各段階で作成される記録と,被害者・運転者が確認すべき点を説明する。実況見分調書の読み方,証拠能力及び刑事記録の入手方法は,リンク先の専門記事で詳しく説明している。

第1 交通事故捜査の全体像

1 事故の申告,救護及び現場臨場

人身事故が発生した場合,運転者には停止,負傷者の救護,後続事故の防止及び警察への報告が求められる。警察官は,負傷者の救護と交通整理を行いながら,事故現場,道路の形状,信号・標識,車両の停止位置,破片,液体,擦過痕,制動痕その他の消失しやすい資料を確認する。

事故直後の位置関係は,車両の移動,救急活動,天候又は交通によって変化する。したがって,当事者が安全を確保した上で撮影した現場・車両の写真,ドライブレコーダー,防犯カメラ及び目撃者の連絡先は,後日の説明を補う資料になり得る。

2 実況見分及び車両・道路の確認

警察官は,必要に応じて実況見分を行い,道路幅員,勾配,見通し,照明,標識・標示,車両の損傷,路面痕跡並びに関係者が指示した発見地点,危険認知地点,制動開始地点及び衝突地点等を記録する。図面や写真が添付される場合もある。

3 被疑者,被害者及び参考人の取調べ

運転者,被害者及び目撃者から,事故前の行動,速度,視線,信号表示,相手を発見した時期,回避行動,衝突後の状況等を聴取する。重要な供述は供述調書に録取される。客観的な映像がある場合でも,映像に現れない認識,判断又は事故前後の経過を確認するため,供述の聴取は必要になる。

4 診断書,病状照会及び医療記録

人身事故では,診断書によって傷病名,治療見込み及び受傷時期を確認する。重い傷害,長期治療,既往症又は症状経過に争いがある場合,捜査機関が医療機関に病状を照会し,診療録,画像又は医師の説明を検討することがある。

5 補充捜査及び検察官送致

警察は,収集した証拠に不足又は矛盾があれば,追加の実況見分,取調べ,映像の解析,信号周期の照会,車両鑑定又は医療照会等を行う。捜査を終えた事件は,原則として検察官に送致される。検察官は記録を検討し,必要に応じて補充捜査を指示した上で,起訴又は不起訴を判断する。

6 検察官が送致後に確認すること

検察官は,警察から送致された記録を検討するほか,必要に応じて被疑者,被害者又は参考人から直接事情を聴き,警察に補充捜査を求める。その上で,犯罪を立証できる証拠があるかと,諸事情を踏まえて起訴を要するかを区別して判断する。送致後の呼出し,供述及び起訴・不起訴の判断は,交通事故で検察庁から呼び出されたら―検察官の取調べ・持ち物・起訴・不起訴で説明している。

段階主な確認事項主な記録・証拠
初動救護,事故場所,車両・負傷者の状態通報記録,写真,映像,目撃情報
現場捜査道路,見通し,痕跡,位置関係実況見分調書,見取図,写真
供述捜査認識,判断,事故前後の経過被疑者・被害者・参考人供述調書
医療捜査傷害の内容,程度,因果関係診断書,病状照会回答,医療記録
送致犯罪事実,証拠,処分に関する事情送致書,捜査報告書,事件記録

第2 警察が集める主な証拠

1 現場,道路及び車両に残る客観的資料

道路形状,幅員,勾配,見通し,信号・標識・標示,照明,路面状態,破片,擦過痕及び制動痕は,事故態様を検討する基礎となる。車両については,損傷位置,変形の方向,塗膜片,灯火,タイヤ,ブレーキその他の状態が確認されることがある。ただし,一つの痕跡だけから速度や衝突位置を断定できるとは限らず,他の資料との整合性が必要である。

2 ドライブレコーダー,防犯カメラ及び車両データ

映像は,信号表示,車両・歩行者の動き,衝突までの時間及び事故後の行動を直接確認できる場合がある。他方,画角,時刻のずれ,フレーム間隔,死角,音声の有無及び上書きの可能性を確認しなければならない。映像があっても,運転者の認識や特定の危険をあえて受け入れたかといった主観的事項まで当然に明らかになるわけではない。

3 供述と客観証拠の照合

供述は,事故時の認識,視線,運転操作及び事故前後の経過を知るために重要であるが,記憶違い,推測又は事故後に得た情報が混ざることがある。捜査では,供述を映像,車両損傷,現場痕跡,信号周期及び第三者供述と照合し,一致点と不一致点を確認する。

証拠確認しやすい事実主な限界
実況見分・写真道路,痕跡,損傷,指示地点指示説明と客観観察を区別する必要がある
映像移動,信号,時間的経過死角,時刻,画角及び主観的事項
供述調書認識,判断,事故前後の事情記憶,推測及び誘導の影響を検討する必要がある
医療資料傷害の内容,治療経過,重症度既往症や別原因との区別に追加資料が必要なことがある

第3 実況見分と見通し見分

1 実況見分で記録される事項

実況見分は,捜査官が現場,車両その他の物を観察して結果を記録する捜査である。交通事故では,道路と車両の客観的状況のほか,当事者が指示した発見地点,危険認知地点,制動開始地点及び衝突地点等が図示されることがある。立会人の説明に基づく部分は,捜査官自身が目撃した事故経過ではないため,客観的な観察結果と区別して読む必要がある。

立会時の注意点は,交通事故の実況見分調書作成時の留意点で説明している。写真,説明文及び再現部分の証拠能力は,実況見分調書の写真と説明の証拠能力を参照されたい。

2 見通し見分の目的

見通し見分は,運転者の位置から歩行者,車両その他の対象をどの地点で,どの程度見通すことができたかを確認する捜査である。夜間事故では,事故時刻に近い明るさ,天候,街路灯,前照灯,被害者の位置・姿勢及び衣服等を可能な範囲で再現し,発見可能距離を検討する。

発見可能距離が分かっても,直ちに回避可能性が決まるわけではない。速度,空走距離,制動距離,路面状態,運転者が危険を認識すべき時点及び対象の動きを合わせて検討する必要がある。

第4 供述調書で確認される事項

1 被疑者供述調書

運転者については,出発から事故までの経路,運転目的,速度,視線,信号・標識の認識,相手を発見した時期,危険を感じた時期,ブレーキ・ハンドル操作及び事故後の救護・申告等が確認される。過失の内容は,「よく見ていなかった」といった結論だけでなく,どの時点で何を確認すべきで,実際に何をしていたかという具体的事実によって検討される。

2 被害者及び参考人の供述調書

被害者については,事故状況,受傷及び治療の経過,事故後の生活への影響,処罰に関する意見並びに示談状況等が確認されることがある。目撃者については,見聞きした位置,時刻,対象との距離,遮蔽物,事故前後の視認時間及び当事者との関係が供述の信用性を検討する資料になる。

3 記憶と推測を分け,時間順に確認する

実際に見聞きした事実と,「通常ならそうだったはずだ」という推測は区別する必要がある。事故前,危険の発見,回避操作,衝突及び事故後という時間順に説明すると,記憶の範囲と不明な点が明確になる。図面又は写真を用いる場合も,資料を見て初めて知った事実を事故当時の記憶と混同しないことが重要である。

4 読み聞かせ,訂正及び署名押印

供述調書は,内容を読み聞かせ又は閲覧させ,誤りがあれば訂正を求める手続が予定されている。重要な数字,信号表示,速度,地点,見た方向及び発言の趣旨が自分の説明と一致しているかを確認すべきである。刑事訴訟法上,署名押印は拒絶できるが,拒絶の法的効果や事件への対応は個別事情によるため,必要に応じて弁護士へ相談すべきである。

5 供述が変化した場合

供述が変わった場合,後の供述内容だけでなく,最初の供述をした理由,誤りに気付いた経緯,新たに確認した資料及び訂正時期が検討対象となる。供述の変遷を隠すのではなく,変化の理由を客観資料と対応させて説明できるかが重要である。

第5 診断書と病状照会

1 傷害の内容と程度を確認する

診断書は,傷病名,受傷日,治療見込み等を確認する基本資料である。ただし,診断書に記載された加療期間だけで,実際の治療期間,後遺障害又は刑事処分が自動的に決まるわけではない。

2 病状照会が必要になる場合

骨折,脳損傷,高次脳機能障害,意識障害,長期入院又は死亡等が問題となる場合,捜査機関が医師に治療経過,検査結果,予後又は死傷結果と事故との関係を照会することがある。既往症,骨粗鬆症,糖尿病,認知症その他の基礎疾患がある場合でも,既往症だけを理由に事故との因果関係を否定できるものではなく,事故前後の症状と医学資料を具体的に検討する。

3 刑事捜査と民事上の損害立証は同じではない

刑事捜査は犯罪事実と刑事責任を明らかにするためのものであり,民事上の全損害を確定する手続ではない。治療費,休業損害,後遺障害及び将来介護等については,刑事記録とは別に診療録,画像,収入資料その他の証拠を整える必要がある。

第6 事故類型ごとの捜査上の着眼点

交通事故捜査の基本的な工程は共通するが,事故類型によって中心となる事実と証拠は異なる。次の表は,主な着眼点を要約したものであり,個別事件の犯罪成立又は過失割合を一律に決めるものではない。

事故類型主な確認事項中心となる証拠
横断歩行者・夜間事故発見可能性,前照灯,速度,歩行者の位置・衣服見通し見分,照明,映像,供述
横断歩道横断者の位置,接近時の安全確認,減速・停止現場見取図,映像,目撃供述
追突車間距離,前方注視,制動開始車両損傷,制動痕,ドラレコ
交差点・一時停止優先関係,停止の有無,見通し,進入時期標識・停止線,映像,損傷,供述
赤信号信号表示,停止線通過時点,信号認識信号周期,映像,目撃・当事者供述
右左折・進路変更合図,周囲確認,相手の位置,移動開始時期映像,損傷,位置関係,供述
居眠り・疾病兆候,運転継続判断,発症経過,予見可能性医療・服薬資料,運行記録,供述
雪道・凍結路路面状態,速度,タイヤ,制動・操舵気象,路面写真,車両確認,映像
飲酒・無免許飲酒経過,運転意思,免許状況,運転の認識呼気・採血,映像,免許照会,関係者供述
ひき逃げ・発覚免脱事故認識,救護・申告,逃走経路,事故後の行動防犯映像,車両損傷,通信・移動資料,供述

第7 被害者と運転者が確認すべきこと

1 消失しやすい資料を早く特定する

ドライブレコーダー及び店舗・住宅の防犯カメラは,上書き又は保存期間経過により失われることがある。事故場所,撮影方向,時刻及び管理者を早期に確認し,警察又は弁護士を通じて保全を検討する。自分で取得する場合も,元データを加工せず,複製を作って保管するのが望ましい。

2 見た事実と推測を分ける

分からない点を推測で埋めると,後に映像等と矛盾し,供述全体の信用性が問題となり得る。「実際に見た」「音で分かった」「事故後に他人から聞いた」「記憶がない」を区別して説明すべきである。

3 調書の内容を自分の説明と照合する

地点,速度,距離,信号,視線及び回避操作は,表現の違いが事故態様の評価に影響することがある。供述調書を確認する際は,重要部分が自分の記憶どおりか,不明な点が断定形になっていないか,訂正が本文に反映されたかを確認する。

4 捜査の範囲と民事対応を混同しない

警察が捜査しているからといって,損害賠償に必要な全資料が自動的に保全されるとは限らない。治療経過,休業資料,修理資料,事故前後の写真及び保険会社との連絡記録は,当事者側でも整理する必要がある。

第8 送致後の記録の所在と入手方法

1 捜査中・公判中・不起訴・確定後で手続が異なる

交通事故の刑事記録は,事件の段階によって保管者,閲覧・謄写の根拠及び開示範囲が異なる。捜査中は一般に開示が制限され,送致後は検察庁の事件番号を特定する必要があることが多い。全体の区分は,刑事記録の入手方法で説明している。

2 不起訴事件の実況見分調書等

不起訴事件では,実況見分調書,写真その他の客観的証拠について,申請者の立場及び利用目的に応じて開示が検討される。供述調書は,プライバシー,捜査への支障その他の事情から開示範囲が狭くなることがある。具体的な手続は,不起訴事件記録の入手方法を参照されたい。

3 検番・送致番号を特定する

検察庁へ記録開示を申し出る前提として,警察の検番又は検察庁の送致番号・事件番号を調べることがある。大阪における弁護士会照会等の方法は,交通事故の検番・送致番号の入手方法で説明している。

第9 現行制度と参考資料

1 令和7年5月1日からの特例書式

警察庁は,令和7年4月23日付で「過失運転致死傷等事件に係る特例書式の適用及び運用について」を発出し,同年5月1日から運用している。現行通達は,所定の事件について,送致書・捜査報告書,実況見分調書,被疑者供述調書,被害者供述調書,参考人供述調書及び診断書等を編てつする構成を示している。旧通達の書式や「加療約3週間」という説明を,現行の全国一律の基準であるかのように扱うべきではない。

2 令和8年の法改正との関係

自動車運転死傷処罰法は令和8年に改正されており,危険運転致死傷罪等の成否を検討する場合は,行為時に適用される条文と施行日を確認する必要がある。事故類型の一般的な捜査着眼点と,特定の犯罪の構成要件は分けて検討すべきである。

3 この記事の基礎資料

この記事の実務上の着眼点は,『検察官から見た交通捜査の要点解説 交通事故・事件 交通違反 供述調書記載例集〈第6版〉』(立花書房,令和3年)を全体的に参照した。同書は,被疑者供述調書(3頁~16頁),被害者供述調書(17頁~20頁),見通し見分(21頁~30頁),病状照会(31頁~46頁)及び多数の事故類型を詳しく扱う。他方,刊行後の法改正及び通達改正があるため,現行制度は次の一次資料で確認した。