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刑事記録の入手方法-捜査中・公判中・不起訴・確定後の手続(AIリライト)

第1 最初に確認すること

1 事件の段階と申請先

「刑事記録」は一つの制度の名称ではなく,捜査中の記録,公判係属中の訴訟記録,不起訴事件記録及び判決確定後の保管記録では,根拠,申請先及び開示範囲が異なる。
本記事は,令和8年9月6日を調査の基準日として,入手方法を選ぶための入口と関連記事を整理するものである。

事件の段階主な確認先主な制度又は取扱い
捜査中・起訴前警察署又は検察庁一般的な閲覧制度はなく,当事者の立場と個別の手続を確認する。
公判係属中裁判所又は検察庁弁護人は刑事訴訟法40条,被害者等は犯罪被害者保護法3条等を確認する。
不起訴記録を保管する検察庁刑事訴訟法47条を前提に,法務省の不起訴記録開示方針による個別判断を受ける。
判決確定後第一審裁判所に対応する検察庁刑事確定訴訟記録法による保管記録の閲覧と,別途の謄写の申出を区別する。

2 申請者の立場

同じ記録でも,被疑者・被告人側,被害者側,訴訟関係人及び第三者では利用できる制度が異なる。
被害者についても,被害者参加対象事件か,同種余罪の被害者か,損害賠償請求その他の権利行使を目的とするかによって要件が変わるため,単に「当事者である」というだけで閲覧・謄写が認められるとは限らない。

3 対象文書と利用目的

申請前に,欲しい文書が判決書,実況見分調書,写真撮影報告書,供述調書,鑑定書又は証拠物のいずれであるかを具体化する必要がある。
閲覧が認められても謄写が同じ範囲で認められるとは限らず,個人情報のマスキング,使用目的の制限その他の条件が付されることもある。

第2 捜査中・起訴前の記録

1 一般的な閲覧制度はないこと

刑事訴訟法47条は,訴訟に関する書類を公判の開廷前に公にしてはならないことを原則とし,公益上の必要その他の事由があって相当と認められる場合を例外としている。
捜査中であること,当事者であること又は被害者であることだけから,捜査機関が保有する記録全般の閲覧・謄写を請求できる一般的な権利が生じるわけではない。

2 被疑者・弁護人側

刑事訴訟法40条による弁護人の訴訟書類及び証拠物の閲覧・謄写は,公訴提起後の制度である。
起訴前は,令状・勾留関係の書類その他の個別制度と弁護活動を通じて必要な情報を確認することになり,捜査記録全体の開示を前提とすべきではない。

3 被害者側

被害者等通知制度その他の情報提供と,刑事記録そのものの閲覧・謄写は区別する必要がある。
捜査状況又は処分結果を知る制度があっても,それによって捜査記録全体が交付されるわけではなく,記録の入手は起訴後又は不起訴後の制度を別に検討することになる。

第3 公判係属中の記録

1 被告人・弁護人側

公訴提起後,弁護人は,裁判所において訴訟に関する書類及び証拠物を閲覧し,謄写することができるが,証拠物の謄写には裁判長の許可が必要である(刑事訴訟法40条)。
検察官請求証拠の開示,裁判所に提出された記録の閲覧・謄写,目的外使用の制限その他の詳細は,刑事裁判係属中の起訴事件の刑事記録を入手する方法(被告人側)で説明している。

2 被害者等

犯罪被害者保護法3条は,第一回公判期日後から事件終結まで,被害者等,その法定代理人又は委託を受けた弁護士が,事件の係属する裁判所へ訴訟記録の閲覧・謄写を申し出る制度を定めている。
裁判所は,検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き,理由が正当でない場合又は犯罪の性質,審理状況その他の事情から相当でない場合を除いて閲覧・謄写をさせるものとされ,使用目的の制限その他の条件を付すことができる。
申出時期,対象となる記録及び手数料の詳細は,刑事裁判係属中の起訴事件の刑事記録を入手する方法(被害者側)を参照されたい。

3 同種余罪の被害者等

犯罪被害者保護法4条は,被告人又は共犯者が同様の態様で継続的又は反復して行った同一又は同種の罪の被害者等について,損害賠償請求権の行使に必要であり,犯罪の性質,審理状況その他の事情を考慮して相当と認められるときに,閲覧・謄写をさせることができるとしている。
この申出は検察官を経由し,対象者であることを疎明する資料を提出する必要がある。

第4 不起訴事件記録

1 原則非公開と個別判断

不起訴事件記録は,刑事訴訟法47条を前提として一般公開されるものではない。
もっとも,法務省は,被害者等の保護,関係者の名誉・プライバシー及び捜査・公判への影響を個別具体的に考慮し,相当と認められる範囲で開示する運用を示している。

2 被害者参加対象事件の被害者等

法務省の不起訴事件記録の開示については,被害者参加対象事件について,被害者等が事件の内容を知ること等を目的とする場合でも,実況見分調書や写真撮影報告書等の客観的証拠は,相当でない場合を除き,原則として閲覧を認めるとの方針を示している。
ただし,関係者の名誉・プライバシー,関連事件への具体的な影響又は将来の捜査・公判への支障がある場合には,不開示又はマスキングとなり得る。
客観的証拠と供述調書の区別及び謄写の範囲は,被害者参加対象事件の不起訴記録の閲覧・謄写で説明している。

3 その他の被害者及び被害者以外の者

被害者参加対象事件以外の被害者等について,法務省の方針は,民事訴訟等で損害賠償請求権その他の権利を行使する目的がある場合に,代替性に乏しく,その証拠なしでは立証が困難な客観的証拠を閲覧・謄写の対象とし,代替性がないとまではいえない証拠も,必要性があり弊害が少ないときは認めるとしている。
被害者以外の者についても,例えば加害者側による過失相殺事由の確認が正当な被害回復に資する場合など,相当と認められるときは閲覧・謄写に応じる方針が示されているが,自動的に認められるものではない。

4 申請の準備

不起訴記録を探すときは,事故又は事件を扱った警察署,発生日時・場所,被疑者名,罪名,検番又は送致番号及び処分結果を可能な範囲で特定する。
交通事故の検番等の確認方法は,交通事故の検番・送致番号の入手方法と弁護士会照会の手続(大阪)を,申請書類,開示範囲及び民事訴訟上の手段は,不起訴事件記録の入手方法を参照されたい。
法務省の開示方針の改正経過は,不起訴事件記録の開示範囲の拡大で整理している。

第5 判決確定後の刑事記録

1 保管検察官と申請先

刑事確定訴訟記録法2条により,刑事被告事件の訴訟記録は,訴訟終結後,第一審の裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官が保管する。
控訴又は上告があった事件でも,出発点は第一審裁判所に対応する検察庁であり,実際の所在,閲覧場所及び謄写業者の利用可否は申請先へ確認する必要がある。

2 閲覧の原則と制限

刑事訴訟法53条は,被告事件の終結後は何人も訴訟記録を閲覧できるとする一方,記録の保存又は裁判所・検察庁の事務に支障がある場合等の制限を定めている。
刑事確定訴訟記録法4条も,事件終結後3年を経過した記録,関係人の名誉又は生活の平穏を著しく害するおそれがある記録等について制限を定め,訴訟関係人又は閲覧につき正当な理由がある者に対する例外を置いている。
したがって,「確定後は誰でも常に全部を閲覧できる」という制度ではない。

3 閲覧と謄写の区別

刑事確定訴訟記録法が定める中心的な制度は閲覧請求であり,謄写は別途の申出として取り扱われる。
最高裁平成14年6月4日第一小法廷決定(平成13年(し)第299号)は,謄写不許可処分は同法8条1項の「閲覧に関する処分」に当たらないとしたため,閲覧が認められることと,謄写不許可を同条の不服申立てで争えることを同一視できない。
具体的な手順は,判決確定後の刑事記録の入手方法を参照されたい。

4 不服申立て

刑事確定訴訟記録法8条は,保管検察官の保存又は閲覧に関する処分に不服がある請求者が,対応する裁判所へ取消し又は変更を請求する手続を定めている。
最高裁令和5年1月30日第一小法廷決定(令和4年(し)第594号)は,地方検察庁の検察官が区検察庁の検察官の事務取扱いとして処分した場合,その区検察庁に対応する簡易裁判所が不服申立てを受ける裁判所に当たるとした。

5 閲覧制限に関する主な最高裁決定

① 最高裁平成2年2月16日第三小法廷決定(平成元年(し)第147号)は,憲法21条及び82条が刑事確定訴訟記録の閲覧を権利として要求できることまで認めたものではないとした。
② 最高裁平成24年6月28日第三小法廷決定(平成24年(し)第25号)は,プライバシー部分を除くとの限定がされた判決書の閲覧請求について,限定の趣旨と閲覧可能な範囲を検討せずに全部を不許可とした処分を違法とした。
③ 最高裁平成27年10月27日第二小法廷決定(平成27年(し)第428号)は,関連する他事件の捜査又は公判に不当な影響を及ぼすおそれがある場合も,「検察庁の事務に支障のあるとき」に含まれるとした。

第6 交通事故で区別すべき行政記録

1 刑事記録とは別の記録があること

交通事故では,警察・検察庁が作成又は保管する実況見分調書等のほか,交通事故証明書,保険会社の資料,道路管理者の資料及び自動車運送事業者が提出する事故報告書が問題となる。
これらは作成主体,保有者及び取得根拠が異なるため,すべてを「刑事記録」として検察庁へ申請することはできない。

2 自動車事故報告書

貨物自動車運送事業法23条は,一般貨物自動車運送事業者について,転覆,火災その他の国土交通省令で定める重大事故を国土交通大臣へ届け出ることを定め,同法36条2項はこの規定を貨物軽自動車運送事業者にも準用している。
自動車事故報告規則2条・3条の対象は,死者又は重傷者が出た事故だけではなく,転覆,転落,火災,多数台の衝突,危険物の飛散,酒気帯び運転を伴う事故等を含み,事業者等は原則として事故の日から30日以内に報告書を提出する。
貨物軽自動車運送事業者への事故報告義務は令和7年4月1日から施行されており,国土交通省側の保有文書の取得を検討するときは,情報公開法による開示請求の対象となるか,個人・法人情報等の不開示情報があるかを別に検討する必要がある。

3 交通事故捜査の現行書式

警察庁は,令和7年4月23日付け通達により過失運転致傷等事件の特例書式を改正し,同年5月1日から新たな取扱いを実施するとともに旧通達を廃止した。
したがって,旧書式の名称又は負傷期間による従前の区分だけから,現在作成される記録を判断すべきではなく,具体的な事件の担当警察署又は検察庁へ確認する必要がある。

4 先に確認しやすい資料

交通事故証明書は,事故日時・場所,当事者及び事故種別等を確認する入口となるが,事故原因又は過失割合を認定する資料ではない。
取得経路,申請期間及び記載内容は,交通事故証明書の取得方法を参照されたい。

第7 申請前の実務チェック

1 事件を特定する情報

申請先へ連絡する前に,①事件の発生日時・場所,②当事者名,③罪名,④担当警察署,⑤検番・送致番号・裁判所の事件番号,⑥起訴・不起訴・確定の別,⑦欲しい文書名を整理する。
番号が分からない場合でも,分かる情報を示して照会方法を確認し,記録の不存在と事件特定情報の不足を混同しないことが重要である。

2 窓口・書式・費用の事前確認

閲覧・謄写の申請書式,必要な委任状・本人確認資料,手数料,予約の要否,郵送の可否及び利用できる謄写業者は,記録の種類と庁ごとに異なり得る。
申請前に担当部署へ確認し,閲覧の請求,謄写の申出及び謄写業者への依頼を区別して準備する必要がある。

3 デジタル化に伴う変更

刑事手続のデジタル化に関する令和7年法律第39号は令和7年5月23日に公布され,一部の規定を除く施行日が令和9年3月31日までの間の政令で定める日とされている。
基準日現在は段階的な施行の途中であるため,紙の閲覧・謄写を前提とする過去の案内だけに依拠せず,申請時点の受付方法を確認する必要がある。

4 記録を入手できない場合

保存期間の満了,事件を特定できないこと,開示要件を満たさないこと又は関係者・捜査への弊害により,希望する記録の全部又は一部を入手できない場合がある。
その場合は,不開示の理由と範囲を確認した上で,交通事故証明書,診療記録,車両写真,ドライブレコーダー映像その他の適法に入手できる資料で目的を達成できるかを検討する。

第8 関連記事

1 記録の段階別の記事

刑事裁判係属中の起訴事件の刑事記録を入手する方法(被告人側)
刑事裁判係属中の起訴事件の刑事記録を入手する方法(被害者側)
被害者参加対象事件の不起訴記録の閲覧・謄写
不起訴事件記録の入手方法
不起訴事件記録の開示範囲の拡大
判決確定後の刑事記録の入手方法
刑事裁判の書証の証拠能力-伝聞法則・供述調書・同意書面の判断順序(AI作成)

2 謄写業者・保管・統計の記事

謄写業者と判決確定後の刑事記録の保管場所
西村謄写館及びOPO謄写センター
大阪高検・大阪地検と謄写業者との平成26年謄写業務協定書等
刑事確定訴訟記録の保管機関が検察庁となった経緯
検察庁における交通事故事件に関する記録閲覧等の概況

第9 出典・参考資料

1 法令

刑事訴訟法40条,47条,53条及び53条の2
刑事確定訴訟記録法2条,4条及び8条
犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律3条及び4条
貨物自動車運送事業法23条及び36条2項
自動車事故報告規則2条及び3条
行政機関の保有する情報の公開に関する法律

2 裁判例

最高裁平成2年2月16日第三小法廷決定(平成元年(し)第147号)
最高裁平成14年6月4日第一小法廷決定(平成13年(し)第299号)
最高裁平成24年6月28日第三小法廷決定(平成24年(し)第25号)
最高裁平成27年10月27日第二小法廷決定(平成27年(し)第428号)
最高裁令和5年1月30日第一小法廷決定(令和4年(し)第594号)

3 行政機関の資料

法務省「不起訴事件記録の開示について
法務省「情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案
警察庁「過失運転致傷等事件に係る特例書式の運用について(令和7年4月23日付け通達)
国土交通省「貨物軽自動車運送事業における安全対策を強化するための制度改正について