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不起訴事件記録(実況見分調書・物件事故報告書)の入手方法(AIリライト)

第1 最初に確認すべき結論

1 不起訴事件記録は一つの書類ではない

不起訴事件記録とは,不起訴となった被疑事件について捜査機関が作成又は収集した書類及び物をまとめて指す実務上の表現である。
交通事故で問題となる実況見分調書,現場見取図,写真撮影報告書,信号周期表,診断書及び供述調書は,それぞれ別の文書である。

したがって,「刑事記録一式」を求めるだけでは足りない。
事故状況の立証に必要な文書名を可能な限り特定し,その文書が検察庁と警察のどちらにあるかを確認する必要がある。

不起訴事件記録は,刑事確定訴訟記録法にいう保管記録ではない。
刑事確定訴訟記録法4条を不起訴事件記録の閲覧根拠とすることはできない。

2 入手ルートは申請者と資料の所在で決まる

入手ルート主な利用場面重要な限界
検察庁への直接申請被害者,被害者の法定代理人,遺族又はその代理人弁護士が客観的証拠を求める場合法律上当然に全部を取得できる制度ではなく,刑事訴訟法47条に基づき個別判断される
弁護士法23条の2による照会被疑者側,第三者側又は警察保有の物件事故報告書等について,弁護士が所属弁護士会を通じて照会する場合回答が法的に保証されるものではなく,地域及び照会先による運用差がある
民事訴訟法226条の文書送付嘱託損害賠償請求訴訟等の係属後,裁判所から検察庁等へ送付を求める場合裁判所が必要性を認める必要があり,供述調書は厳格な条件の下で扱われる
民事訴訟法220条の文書提出命令文書所持者が任意提出を拒み,法律関係文書等に当たるとして提出を求める場合刑事訴訟法47条による提出拒否が裁量逸脱又は濫用となるかが問題となる

物件事故報告書は,通常は物件事故を受理した都道府県警察が保有する資料であり,不起訴事件記録そのものではない。
人身事故の不起訴記録と物件事故報告書を同じ制度で取得できると考えないことが重要である。

第2 不起訴事件記録の法的根拠と開示範囲

1 刑事訴訟法47条に基づく個別判断である

刑事訴訟法47条は,訴訟に関する書類を公判の開廷前に公にしてはならないとする一方,公益上の必要その他の事由があって相当と認められる場合を例外としている。

法務省は,「不起訴事件記録の開示について」において,被害者等の保護,権利行使の必要性,関係者の名誉及びプライバシー,捜査及び公判への影響等を個別具体的に考慮して,相当な範囲で開示する運用を公表している。

記録事務規程17条は,刑事確定訴訟記録法上の保管記録又は再審保存記録について,閲覧を許したときに謄写も許すことができる旨を定めた規定である。
不起訴事件記録の謄写根拠を記録事務規程17条とすることはできず,刑事訴訟法47条と不起訴記録開示の運用により説明すべきである。

したがって,申請者には「記録全部の開示を受ける権利」が当然に発生するわけではない。
もっとも,検察官の判断が常に最終となるわけでもなく,民事訴訟における文書提出命令では,提出拒否が裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用したかを裁判所が審査する。

2 被害者参加対象事件の被害者等

刑事訴訟法316条の33が定める被害者参加対象事件には,故意に人を死傷させた罪のほか,自動車運転死傷処罰法4条,5条又は6条3項若しくは4項の罪が含まれる。

この類型の被害者,被害者の法定代理人,これらの者から委託を受けた弁護士,並びに被害者が死亡した場合等の一定の親族については,損害賠償請求のためだけでなく,事件の内容を知る目的でも,実況見分調書や写真撮影報告書等の客観的証拠を原則として閲覧対象とする運用が示されている。

ただし,関係者の名誉及びプライバシーに関わる部分,関連事件の捜査又は公判に具体的な影響を及ぼす部分,将来の捜査又は公判に支障を生じさせるおそれがある部分は,不開示又はマスキングの対象となり得る。

3 その他の被害者,被疑者側及び第三者

被害者参加対象事件以外では,民事訴訟等において損害賠償請求権その他の権利を行使する目的があることを示す必要がある。

客観的証拠のうち,代替性に乏しく,その証拠がなければ立証が困難なものが中心となる。
代替性がないとまではいえない資料でも,必要性があり,かつ,開示による弊害が少ない場合には,閲覧又は謄写が認められる余地がある。

被疑者側又は第三者からの請求も一律に排除されてはいない。
例えば,交通事故の過失相殺事由を把握し,適正な被害回復に資する場合など,相当と認められるときは開示に応じるとの運用が示されている。

4 客観的証拠と供述調書の差

実況見分調書,現場見取図,写真撮影報告書,信号周期表及び診断書等は,事故状況を示す客観的証拠として開示対象になりやすい。

これに対し,被疑者,被害者又は目撃者の供述調書は,供述者の名誉,プライバシー及び捜査協力への影響が大きいため,客観的証拠と同じ基準で開示されない。

法務省の公表方針では,民事裁判所から特定人の供述調書について文書送付嘱託があり,重要争点の証明に欠くことができず,供述者の死亡,所在不明等により法廷で供述を得られないか,供述調書と法廷証言が実質的に相反し,かつ,捜査,安全,名誉及びプライバシーへの具体的弊害が認められないという全要件を満たす場合に開示するとされている。

第3 被害者又は被害者代理人が検察庁へ申請する手順

1 事件を特定する

最初に,事故日時,事故場所,当事者名,警察署名,送致先検察庁及び検察庁事件番号を整理する。

検察庁事件番号が分からないときは,送致した警察署又は送致先と考えられる検察庁に,照会方法を確認する。
大阪で使用されてきた調査依頼書の画像は,次のとおりであるが,現在の提出先,書式及び必要資料は保管検察庁へ確認すべきである。

調査依頼書の参考画像
大阪地検に刑事記録の保管状況を問い合わせる調査依頼書の雛形
大阪地検に対する調査依頼書の雛形である。現行書式であることを保証するものではない。
大阪地検に刑事記録の保管状況を問い合わせる調査依頼書の記載例
調査依頼書の記載例である。提出前に現行運用を確認する必要がある。

2 対象文書と必要性を具体化する

申請書には,次の事項を記載するのが実務上有用である。

① 申請者の立場及び被害者との関係
② 利用目的となる権利又は重要な争点
③ 閲覧又は謄写を求める文書名
④ 当該文書が必要な理由及び代替資料では足りない理由
⑤ 民事訴訟の係属の有無及び事件番号
⑥ マスキング等により開示弊害を抑えられる事情

「刑事記録一式」だけでなく,「実況見分調書,現場見取図,写真撮影報告書,信号周期表及び診断書」のように文書名を列挙する方が,対象を特定しやすい。

3 保管検察庁へ事前確認して申請する

申請先は,原則として対象事件の記録を保管する検察庁である。
支部から本庁へ記録が引き継がれる場合もあるため,保管場所を確認してから申請する。

大阪地方検察庁の記録閲覧案内も,閲覧の詳細について事前連絡を求め,法務省の公表方針を案内している。
受付場所,受付時間,必要な身分証明書,委任状,郵送の可否,返信用封筒,現行料金分の郵便切手及び謄写業者の利用可否は,申請時点の運用を電話で確認するのが安全である。

4 閲覧と謄写は同じとは限らない

閲覧が認められても,当然に同じ範囲のコピーを交付されるとは限らない。
閲覧のみか,謄写も認められるか,謄写方法が庁内業者,持参機器又は別の方法のいずれかは,個別に確認する必要がある。

大阪地検で使用されてきた申請書等の画像を次に掲げるが,現行の正式書式として転載するものではない。

閲覧及び謄写関係書式の参考画像
大阪地検で使用されてきた不起訴記録閲覧申請書
不起訴記録閲覧申請書の参考画像である。
大阪地検で使用されてきた謄写申請書
謄写申請書の参考画像である。
大阪地検で使用されてきた閲覧謄写に関する申出書
閲覧及び謄写に関する申出書の参考画像である。

第4 被疑者側又は第三者が入手を求める場合

1 不起訴処分の告知と記録開示は別である

被疑者は,刑事訴訟法259条により,不起訴処分となった旨の告知を請求できる。

しかし,不起訴処分告知書を取得したことと,実況見分調書や供述調書を閲覧又は謄写できることは別問題である。
不起訴処分告知書は,記録開示の許可書ではない。

2 直接申請と23条照会の選択

被疑者側又は第三者側でも,事故状況の把握が正当な被害回復又は民事上の権利行使に資し,開示の必要性が高く弊害が少ない場合には,記録開示が認められる余地がある。

もっとも,直接申請を受け付けるか,弁護士法23条の2に基づく弁護士会照会を求めるかは,検察庁及び申請者の立場により異なる。
まず保管検察庁の記録担当部署に確認し,必要に応じて弁護士会照会を利用するのが実務的である。

23条照会は,弁護士個人が照会状を直接送る制度ではなく,受任事件について所属弁護士会へ申出をし,弁護士会が審査して照会する制度である。
また,照会先から回答が得られることを保証する制度ではない。

第5 交通事故で対象となる主な資料

1 実況見分調書等の客観的証拠

交通事故では,次の資料が事故態様,速度,衝突地点,信号表示及び見通しの立証に関係する。

① 実況見分調書及び現場見取図
② 写真撮影報告書及び写真
③ 交通事故現場見取図又は現場の見分状況書
④ 信号周期表,信号現示表又は信号機に関する捜査報告書
⑤ 車両の損傷状況に関する報告書
⑥ 診断書及び鑑定関係資料
⑦ 被疑者,被害者及び目撃者の供述調書

同じ事件でも,これらが全て作成されるとは限らない。
特に,現場の見分状況書と実況見分調書は同じ文書名ではないため,保管文書の名称及び作成の有無を確認すべきである。

交通事故の現場の見分状況書の例
現場の見分状況書の一例である。治療期間だけからこの書式が使用されると断定することはできない。

実況見分調書を読む際の着眼点は,交通事故の実況見分における注意点も参照されたい。

2 簡略な交通事故書式

軽微な人身事故では,所定の条件の下で簡約書式が使用されることがある。
もっとも,「診断書が事故後3週間以内に提出されなければ必ず現場の見分状況書になる」という一律の法令上のルールは確認できない。

書式の選択は,傷害の程度だけでなく,事故態様,捜査の必要性,送致区分その他の条件に左右される。
必要な資料が見当たらない場合は,別名称の文書が作成されていないか,写真又は見取図が別添になっていないかを照会すべきである。

3 物件事故報告書は警察保有資料である

負傷者がいない物件事故では,刑事事件として送致されず,検察庁に不起訴事件記録が存在しない場合がある。
この場合,物件事故報告書,現場付近図その他の資料は,事故を取り扱った警察署又は都道府県警察に所在する可能性がある。

主な照会方法は,弁護士法23条の2に基づく照会である。
都道府県警察によっては,本人情報の開示制度その他の手続を案内することもあるため,事故取扱警察署及び警察本部の情報公開又は個人情報担当部署へ確認する。

照会事項には,事故日時,場所,当事者,受理番号を記載した上で,次の事項を分けて尋ねるのがよい。

① 物件事故報告書の作成及び保有の有無
② 衝突地点,事故態様及び当事者の説明の記載内容
③ 現場付近図,写真その他の添付資料の有無
④ 回答できない場合の根拠及び代替手続

物件事故報告書に図面又は写真が必ず付くとは限らず,報告書自体が既に保存期間を経過している場合もある。
23条照会をすれば全国一律に写しが交付されるという取扱いではない。

物件事故報告書の例
物件事故報告書の一例であり,現行書式及び添付資料は都道府県警察の運用により異なり得る。

第6 任意開示で足りない場合の民事訴訟上の手段

1 文書送付嘱託

民事訴訟が係属している場合,裁判所に対し,民事訴訟法226条の文書送付嘱託を申し立てる方法がある。

申立てでは,対象文書を特定し,争点との関連性,立証趣旨,任意開示で得られなかった経緯及び代替証拠では足りない理由を示す。
裁判所が申立てを採用しても,検察庁は刑事訴訟法47条に基づき開示の相当性を判断する。

法務省の運用では,必要性が認められる客観的証拠の送付に応じる一方,供述調書については第2の4で述べた厳格な要件を全て満たす場合に限るとしている。

2 文書提出命令

任意提出が得られない場合,民事訴訟法220条及び223条に基づく文書提出命令を申し立てる余地がある。

刑事事件関係書類であることだけで,常に提出命令の対象外になるわけではない。
最高裁判例は,対象文書が引用文書又は法律関係文書に当たり,民事訴訟で取り調べる必要性,文書の代替可能性,名誉及びプライバシーへの影響,捜査及び公判への影響等を総合考慮して,提出拒否が保管者の裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用したかを審査している。

警察が捜査書類の写しを所持する場合,原本を検察官が保管していても,都道府県が提出拒否の判断主体となり得る。
録音録画媒体,司法解剖写真及び鑑定受託者の資料についても,文書の所持者,作成経緯及び申立人との法律関係を個別に検討する必要がある。

3 情報公開請求は迂回路にならない

刑事訴訟法53条の2は,訴訟に関する書類及び押収物について,行政機関情報公開法及び保有個人情報開示に関する規定の適用を除外している。

したがって,不起訴事件記録を一般の行政文書開示請求又は保有個人情報開示請求によって取得するという迂回路は,原則として利用できない。
ただし,物件事故報告書のように刑事事件の訴訟関係書類とは別の警察資料について,地方公共団体の制度が利用できるかは別途確認を要する。

第7 関連裁判例

1 不起訴記録の直接閲覧

名古屋地裁平成17年9月30日判決・平成17年(行ウ)第46号は,交通事故被害者が不起訴記録の閲覧拒否を行政処分として争った事案である。
同判決は,不起訴記録が刑事訴訟法47条の訴訟に関する書類に当たり,同条は一般的な公開請求権及び不服申立権を付与するものではなく,刑事確定訴訟記録法も不起訴記録に適用されないとして,取消訴訟を不適法とした。

この判決からは,直接申請が無意味であるとの結論にはならない。
直接申請は,刑事訴訟法47条ただし書と法務省の公表運用に基づく個別的な開示判断を求める手続であり,刑事確定訴訟記録法4条の閲覧請求とは法的性質が異なる。

2 文書提出命令

刑事事件関係書類の文書提出命令に関する主要裁判例は,次のとおりである。

① 最高裁平成16年5月25日第三小法廷決定・平成15年(許)第40号・民集58巻5号1135頁は,刑事訴訟法47条による提出拒否について,民事訴訟での必要性と開示による弊害を比較し,裁量逸脱又は濫用の有無を審査する基本枠組みを示した。

② 最高裁平成17年7月22日第二小法廷決定・平成17年(許)第4号・民集59巻6号1837頁は,捜索差押許可状の提出拒否を裁量逸脱又は濫用とする一方,捜査継続中の捜索差押令状請求書については具体的な捜査及びプライバシー上の弊害を認め,提出拒否を相当とした。

③ 最高裁平成19年12月12日第二小法廷決定・平成19年(許)第22号・民集61巻9号3400頁は,不起訴事件の告訴状及び被害者供述調書について,国家賠償請求訴訟における必要性が高く,具体的な開示弊害が認められない事情の下で,国の提出拒否を裁量逸脱又は濫用とした。

④ 名古屋地裁平成23年12月27日決定・平成23年(モ)第142号は,国家賠償請求訴訟における身体検査令状関係文書等について,必要性が高く具体的弊害が小さい事情の下で,提出拒否を裁量逸脱又は濫用とした下級審例である。

⑤ 最高裁平成31年1月22日第三小法廷決定・平成30年(許)第7号・民集73巻1号39頁は,原本を検察官が保管していても,捜査書類の写しを所持する都道府県が刑事訴訟法47条の判断主体となり,提出拒否が裁量逸脱又は濫用となれば写しの提出を命じ得るとした。

⑥ 最高裁令和2年3月24日第三小法廷決定・令和元年(許)第11号・民集74巻3号455頁は,司法解剖写真の情報を記録した電磁的記録媒体について,遺族と地方公共団体との関係で法律関係文書に当たるとした。

⑦ 最高裁令和2年3月24日第三小法廷決定・令和元年(許)第12号・集民263号135頁は,鑑定受託者が鑑定に関して作成又は受領した文書若しくは準文書又はその写しも,民事訴訟法220条4号ホの刑事事件関係書類に当たり得るとした。

⑧ 最高裁令和6年10月16日第二小法廷決定・令和6年(許)第5号・集民271号147頁は,取調べ録音録画媒体の公判不提出部分について,具体的争点に対する証拠価値と代替困難性が高く,開示弊害を抑制できる事情の下で,国の提出拒否を裁量逸脱又は濫用とした。

これらの裁判例は,文書の種類だけで結論を出していない。
申立人との法律関係,民事訴訟の具体的争点,証拠の必要性及び代替可能性,捜査の終了状況,関係者の意向,マスキング等による弊害抑制の可否を,文書ごとに検討している。

3 23条照会及び情報公開

最高裁平成28年10月18日第三小法廷判決・平成27年(受)第1036号・民集70巻7号1725頁は,23条照会に対する報告拒絶が,照会した弁護士会に対する不法行為を構成しないとした。

最高裁平成30年12月21日第二小法廷判決・平成29年(受)第1793号・民集72巻6号1368頁は,照会先の報告義務の確認を求める訴えについて,確認の利益を欠き不適法であるとした。
したがって,23条照会は重要な調査手段であるが,回答又は資料交付が保証される制度ではない。

東京地裁平成26年4月16日判決・平成24年(行ウ)第552号は,刑事事件の捜査過程で作成され,刑事司法手続で利用する目的を持つ映像等が刑事訴訟法53条の2の訴訟に関する書類に当たり,情報公開制度の適用対象外となることを示した。

第8 不起訴処分の告知及び理由の確認

1 被疑者本人から請求する場合

検察官は,被疑事件について公訴を提起しない処分をした場合,被疑者の請求があれば,速やかにその旨を告げなければならない。
根拠は刑事訴訟法259条である。

請求方法,不起訴処分告知書の書式,郵送の可否及び本人確認資料は,処分した検察庁へ確認する。

2 告訴人等から請求する場合

刑事訴訟法260条は,告訴,告発又は請求のあった事件について,検察官が公訴を提起し,又は提起しない処分をしたとき,速やかにその旨を告訴人,告発人又は請求人へ通知することを定めている。

刑事訴訟法261条は,不起訴とした場合に,告訴人等の請求があれば,速やかに理由を告げることを定めている。

被害者であっても,告訴人等に該当しない場合に261条が当然に適用されるわけではない。
被害者に対する処分結果又は理由の説明は,犯罪被害者等通知制度その他の運用も含め,担当検察庁へ確認する。

第9 保存期間及び申請実務の注意点

1 保存期間を一律に決めつけない

法務省の記録事務規程25条は,不起訴理由,罪名及び法定刑等に応じて不起訴記録の保存期間を区分している。
同規程27条は,必要があると認めるときに保存期間を延長できることを定めている。

したがって,「過失運転致傷の不起訴記録は常に5年保存」と一律に説明することは正確でない。
現在の過失運転致傷罪は,自動車運転死傷処罰法5条により,7年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金とされており,旧来の懲役又は禁錮という表現は現行法に合わない。

保存期間の経過が近い可能性がある場合は,開示申請又は民事訴訟上の証拠申出を早めに検討すべきである。
物件事故報告書等の警察資料には,検察庁の不起訴記録とは別の保存規程が適用される。

2 窓口,書式及び謄写方法は事前に確認する

検察庁の執務場所,記録担当部署,受付時間,書式,必要資料,郵送方法,郵便料金及び謄写方法は変更され得る。
古い記事に記載された階数,曜日,受付時間,電話番号,切手額又は業者名をそのまま用いず,申請時点の公式案内又は電話確認を優先すべきである。

検察庁に電話するときは,事故日時,当事者名,警察署,検察庁事件番号,申請者の立場,希望する文書及び利用目的を手元に準備すると確認が円滑である。

3 事件と文書を正確に特定する

最高検察庁の公表資料である「令和3年職務上の過誤について」PDF17頁(資料内14頁)には,過失運転致傷事件の被害者代理人による23条照会に対し,対象事件の実況見分調書1通を開示すべきところ,別事件の実況見分調書3通を誤って開示した事例が掲載されている。

この事例からも,申請者側は,対象事故の日時,場所,当事者及び文書名を明示し,交付された文書についても,表紙,事件番号,作成年月日及び事故場所が対象事件と一致するかを確認すべきである。

第10 出典

1 法令及び公的資料

① e-Gov法令検索「刑事訴訟法」
② e-Gov法令検索「刑事確定訴訟記録法」
③ e-Gov法令検索「弁護士法」
④ e-Gov法令検索「民事訴訟法」
⑤ e-Gov法令検索「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」
⑥ 法務省「不起訴事件記録の開示について」
⑦ 法務省「犯罪被害者の方々へ」
⑧ 法務省「記録事務規程」
⑨ 大阪地方検察庁「記録の閲覧」
⑩ 最高検察庁「令和3年職務上の過誤について」PDF17頁(資料内14頁)

2 裁判例

① 名古屋地裁平成17年9月30日判決・平成17年(行ウ)第46号
② 最高裁平成16年5月25日第三小法廷決定・平成15年(許)第40号・民集58巻5号1135頁
③ 最高裁平成17年7月22日第二小法廷決定・平成17年(許)第4号・民集59巻6号1837頁
④ 最高裁平成19年12月12日第二小法廷決定・平成19年(許)第22号・民集61巻9号3400頁
⑤ 名古屋地裁平成23年12月27日決定・平成23年(モ)第142号
⑥ 最高裁平成31年1月22日第三小法廷決定・平成30年(許)第7号・民集73巻1号39頁
⑦ 最高裁令和2年3月24日第三小法廷決定・令和元年(許)第11号・民集74巻3号455頁
⑧ 最高裁令和2年3月24日第三小法廷決定・令和元年(許)第12号・集民263号135頁
⑨ 最高裁令和6年10月16日第二小法廷決定・令和6年(許)第5号・集民271号147頁
⑩ 最高裁平成28年10月18日第三小法廷判決・平成27年(受)第1036号・民集70巻7号1725頁
⑪ 最高裁平成30年12月21日第二小法廷判決・平成29年(受)第1793号・民集72巻6号1368頁
⑫ 東京地裁平成26年4月16日判決・平成24年(行ウ)第552号

3 実務書

① 大阪弁護士協同組合『犯罪被害者支援マニュアル―その初動とノウハウ―』(平成31年)30頁~35頁
② 大阪弁護士協同組合『23条照会の手引2022』(令和4年)60頁~62頁,86頁~90頁
③ 『弁護士会照会制度〔第6版〕』(商事法務,令和4年)114頁~115頁,140頁~145頁
④ 『弁護士会照会ハンドブック』(きんざい,平成30年)241頁~243頁,257頁~259頁
⑤ 大阪弁護士協同組合『文書提出命令申立の手引』82頁~88頁
⑥ 宮田正之編著『交通事故事件一件書類記載例集』(立花書房,平成24年・平成25年第2刷)161頁~168頁
⑦ 伊丹俊彦・合田悦三編集代表『逐条実務刑事訴訟法』(立花書房,平成30年)刑事訴訟法47条,259条~261条