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判決確定後の刑事記録(刑事確定訴訟記録)の入手方法――閲覧・謄写の手続と法的根拠(AIリライト)

第1 確定した刑事記録を入手する手順

刑事被告事件の訴訟記録は,訴訟終結後,第一審の裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官が保管する(刑事確定訴訟記録法2条1項)。
本記事では,判決確定後の記録について,閲覧,謄写及び裁判書の謄本・抄本交付を区別し,申請手順,保管期間,保存延長及び再審保存請求を整理する。

交通事故の民事賠償等に利用する場合でも,申請者の立場,文書の種類及び利用目的に応じた制限がある。
閲覧の法的根拠は刑事訴訟法53条及び刑事確定訴訟記録法であるが,謄写については別途の申出と許否の判断を要する。

窃盗・横領の被害会社も,損害回復のための利用目的と必要な記録を具体化して保管検察庁へ照会することが考えられる。
捜査中から裁判終了後までの確認方法は,従業員の窃盗・横領被害を受けた会社が捜査・刑事裁判の情報を確認する方法(AI作成)で整理している。

刑事事件の判決書・確定記録を探すときの案内

本記事は判決が確定した後の記録を扱う。
判決書だけを読みたい場合と,実況見分調書などを含む記録を利用したい場合では,確認する制度が異なる。

目的確認する箇所
判決書の内容を調べたい掲載裁判例は裁判所の裁判例検索で調べられる。ただし全判決が掲載されるわけではない。個別の確定記録の閲覧は閲覧の根拠と限界・第三者による閲覧を確認する。
判決書などの謄本・抄本が必要裁判書の謄本・抄本の交付請求を確認する。閲覧・謄写と同じ請求ではない。
実況見分調書なども利用したい入手手順と交通事故の確定記録の範囲を確認する。文書・申請者・利用目的によって制限がある。

捜査中・公判中・不起訴事件を含む段階別の案内は,刑事記録の入手方法を参照されたい。
大阪地検での取扱いは実務例であり,実際の申請先・書式・費用は保管先へ事前に確認する。

刑事事件全体の分岐と,立場別の確認事項は,刑事事件とは―民事事件との違い,手続の流れと立場別の対応を参照されたい。

1 全体の流れ

(1) 被害者側の代理人の場合

被害者の代理人弁護士が起訴事件の刑事記録を入手する場合,手順は二段階になる。
まず,検察庁に対し,事件の処分状況を照会する。検番(検察庁の事件番号)や送致年月日等を記載した「調査依頼書」と題する手紙を送り,回答書を送ってもらう。
交通事故を例にとると,この調査依頼書には,交通事故証明書及び民事事件の委任状のコピー,並びに返信用封筒(110円切手を貼付したもの)を添付する。

次に,罰金等の有罪判決が確定した後に,保管記録の閲覧・謄写を申請する。
有罪判決が確定するまでは,その事件はまだ「確定訴訟記録」になっていないため,このタイミングを待つ必要がある。

(2) 加害者側の代理人の場合

加害者(被告人)の代理人弁護士が起訴事件の刑事記録を入手する場合も,同じように検察庁へ処分結果を照会して回答書を送ってもらい,判決確定後に閲覧・謄写を申請すればよい。
被疑者は,検察官が公訴を提起しない処分(不起訴処分)をしたときは,その旨の告知を請求することができる(刑事訴訟法259条)。処分結果を確認する法律上の手がかりとして,この規定がある。

(3) 電話で照会するときに伝える事項

検察庁に対して電話で処分状況を問い合わせる場合,被疑者・被告人の氏名のほか,回答書に記載されている回答整理番号を伝えれば足りる。

2 大阪地方検察庁での閲覧・謄写申請の取扱い

(1) 窓口に提出する書類

被害者側か加害者側かを問わず,代理人弁護士が大阪地検で確定した起訴事件の刑事記録の閲覧・謄写を申請するときは,次の書類を記録係の窓口に持参して提出する。
大阪地検の窓口の階数,受付時間,必要書類及び謄写方法は変更され得るため,申請時点の公式の記録閲覧案内又は記録担当への電話確認を優先する。以下に掲げる書式や取扱いは従前の実務例であり,現在の全国共通の手順を保証するものではない。

  1. 保管記録閲覧請求書(検察庁指定の書式によるもの。大阪地検本庁で使用されている書式)
  2. 謄写申出書(検察庁指定の書式によるもの。大阪地検本庁で使用されている書式)
  3. 民事事件の委任状のコピー
  4. 交通事故証明書のコピー
  5. 回答書のコピー(検番に基づき処分状況を照会したときに返ってくる文書)
  6. 閲覧・謄写に関する申出書(大阪地検本庁で使用されている書式)
  7. 弁護士の職印
  8. 弁護士会発行の身分証明書

謄写に関する申出書では,謄写業者としてOPO謄写センター又は西村謄写館のいずれかを選択する。
写真等をカラーコピーで希望する場合は,その旨を余白に記載する。西村謄写館を利用したときは,秋田ビル西村謄写館(大阪地裁本庁の近く),検察庁堺支部内の閲覧室,又は郵送のいずれかで謄写した記録を受け取る。
申請のみの場合にも,現在の予約の要否及び記録の保管場所を事前に確認する。

(2) 閲覧手数料の納付方法

閲覧には,記録1件につき1回150円の手数料がかかる(刑事確定訴訟記録法7条,刑事確定訴訟記録閲覧手数料令)。手数料は収入印紙で納付する。
原則として,閲覧・謄写の許可が出た後に,収入印紙を窓口へ持参して納付する。この場合,窓口には申請時と納付時の二度赴くことになる。

もっとも,許可が出た後に大阪地検へ収入印紙を郵送し,OPO謄写センター又は西村謄写館で謄写済みの記録を受け取る方法もある。この場合は,窓口へ赴くのは申請時の一度で足りる。

(3) 支部・区検の記録を謄写する場合

堺支部,岸和田支部又は羽曳野区検の刑事記録を謄写したいときは,従前は西村謄写館を利用する取扱いがあったが,現在利用できる謄写方法・業者は対象庁へ確認する。

3 裁判書の謄本・抄本の交付請求

被告人等の訴訟関係人は,裁判書(判決書又は略式命令書)の謄本又は抄本の交付を請求することができる(記録事務規程33条)。
交付請求は,記録事務規程の様式第16号による。

第2 閲覧・謄写を定める法律の枠組み

1 閲覧の根拠と限界

刑事記録の閲覧は,刑事訴訟法53条及び刑事確定訴訟記録法4条に基づく,法律上認められた権利である。
刑事訴訟法53条1項は「何人も,被告事件の終結後,訴訟記録を閲覧することができる」と定め,刑事確定訴訟記録法4条1項は,保管検察官に対し,請求があったときは保管記録を閲覧させる義務を課している。

ただし,この権利は無制限ではない。刑事訴訟法53条1項ただし書は「訴訟記録の保存又は裁判所若しくは検察庁の事務に支障のあるとき」を例外とし,刑事確定訴訟記録法4条1項ただし書も同じ事由を引く。
最高裁判所は,この「検察庁の事務に支障のあるとき」には,その記録に係る事件と関連する他の事件の捜査や公判に不当な影響を及ぼすおそれがある場合が含まれるとした(最高裁平成27年10月27日決定)。
同決定は,憲法21条及び82条は,刑事確定訴訟記録の閲覧を権利として要求できることまでを認めたものではないとも判断している(同旨の先例として最高裁平成2年2月16日決定)。

閲覧した者には,その後の利用に関する義務もある。閲覧により知り得た事項をみだりに用いて,公の秩序若しくは善良の風俗を害し,犯人の改善及び更生を妨げ,又は関係人の名誉若しくは生活の平穏を害する行為をしてはならない(刑事確定訴訟記録法6条)。

2 訴訟関係人・正当な理由がある者の閲覧

刑事確定訴訟記録法4条2項は,後記3のとおり第三者の閲覧を制限する事由を列挙するが,そのただし書は,「訴訟関係人又は閲覧につき正当な理由があると認められる者」からの請求であれば,これらの制限事由に該当する場合でも閲覧できるとする。
訴訟関係人の典型例は元被告人であり(最高裁平成20年6月24日決定参照),元被告人の代理人弁護士も訴訟関係人に含まれると考えられる。

再審請求のために記録を確認する場面については,最高裁は,再審請求人により選任された弁護人は「閲覧につき正当な理由があると認められる者」に該当すると判断した(最高裁平成21年9月29日決定)。
再審の請求は,有罪の言渡しを受けた者やその法定代理人等が行うことができる(刑事訴訟法439条1項)。

もっとも,訴訟関係人等であっても,制限なく閲覧できるわけではない。関係人の名誉又は生活の平穏を害する目的でされた閲覧請求は,刑事確定訴訟記録法6条の趣旨に照らして権利の濫用として許されない。
たとえば,関係者の身上・経歴等のプライバシーに関する部分について,その関係者の名誉又は生活の平穏を害する目的でされたと認められる相当の理由がある場合には,閲覧は許可されない(前掲最高裁平成20年6月24日決定)。
実務上も,検察庁からは,身上・前科等のプライバシー部分についてはそもそも閲覧・謄写を請求しないよう要請される。

3 第三者による閲覧

訴訟関係人又は閲覧につき正当な理由があると認められる者からの請求がある場合を除き,次のいずれかに当たるときは閲覧できない(刑事確定訴訟記録法4条2項各号)。

  1. 保管記録が弁論の公開を禁止した事件のものであるとき
  2. 保管記録に係る被告事件が終結した後3年を経過したとき
  3. 閲覧させることが公の秩序又は善良の風俗を害することとなるおそれがあると認められるとき
  4. 閲覧させることが犯人の改善及び更生を著しく妨げることとなるおそれがあると認められるとき
  5. 閲覧させることが関係人の名誉又は生活の平穏を著しく害することとなるおそれがあると認められるとき
  6. 閲覧させることが裁判員,補充裁判員,選任予定裁判員又は裁判員候補者の個人を特定させることとなるおそれがあると認められるとき

ここで注意を要するのが,2号(3年経過)の扱いである。刑事確定訴訟記録法4条2項の柱書には「第二号の場合にあつては,終局裁判の裁判書を除く」という括弧書きがある。
つまり,事件終結後3年を経過しても,判決書等の終局裁判の裁判書には,第三者からの請求でも同項2号の3年経過による閲覧制限は適用されない。ただし,その他の閲覧制限まで当然に排除されるわけではない。これが,判決書を広く閲覧できることの直接の条文上の根拠である。

最高裁も,刑事事件の判決書は,国家刑罰権の行使に関して裁判所の判断を示した重要な記録であり,裁判の公正を担保する観点からも一般の閲覧に供する必要性が高いとして,プライバシー部分以外については第三者でも閲覧が許可されることがあるとした(最高裁平成24年6月28日決定参照)。

他方で,4条2項の不開示事由は実務上かなり広く解釈される傾向があり,少なくとも検察庁の段階では,訴訟関係人以外の第三者が刑事記録を閲覧することは容易ではない(東京地検への閲覧申込みの体験談として,週刊金曜日ブログ「司法の秘密主義ってひどくなってないか」がある)。

閲覧請求者の立場についても判断が示されている。ある事件の告発人であっても,市民グループの代表者として国民・周辺住民の知る権利や平穏に生活する権利を主張するにすぎない場合には,「訴訟関係人」に当たらないのはもとより,「閲覧につき正当な理由があると認められる者」にも当たらず,第三者としての閲覧になる(最高裁平成27年12月14日決定)。

4 閲覧を拒否されたときの不服申立て

保管検察官は,閲覧の請求に対して記録を閲覧させないときは,その旨及び理由を書面で請求者に通知する(刑事確定訴訟記録法施行規則8条3項)。
もっとも,不許可の際には,刑事確定訴訟記録法に規定する制限事由を通知するにとどまるのが通例である(最高裁平成6年2月24日決定参照)。

保管検察官の閲覧に関する処分に不服がある場合は,準抗告により,その保管検察官が所属する検察庁に対応する裁判所に対して,処分の取消し又は変更を請求することができる(刑事確定訴訟記録法8条,刑事訴訟法430条1項)。
たとえば保管検察官が大阪地検に所属していれば,対応する裁判所は大阪地裁である。

「対応する裁判所」の意義については,地方検察庁に属する検察官が区検察庁の検察官の事務取扱いとして閲覧に関する処分をした場合,当該区検察庁に対応する簡易裁判所が,刑事確定訴訟記録法8条1項にいう「保管検察官が所属する検察庁の対応する裁判所」に当たるとされた(最高裁令和5年1月30日決定)。

また,判決書の閲覧請求について,「プライバシー部分を除く」という限定の趣旨を申立人に確認せず,閲覧の範囲を検討しないまま,民事裁判でその内容が明らかにされるおそれがあるというだけの理由で刑事確定訴訟記録法4条2項4号及び5号に該当するとして判決書全部の閲覧を不許可とした処分には,同条項の解釈適用を誤った違法があるとされた(前掲最高裁平成24年6月28日決定)。

5 謄写の拒否は準抗告で争えない

閲覧を許されたことと,謄写を許されたことは同じではない。
記録事務規程17条は,閲覧を許すときに謄写を許すことができるとし,謄写申出書を提出させて別に許否を決定する手続を定めている。
コピー又は撮影が必要な場合は,対象文書,利用目的,必要な範囲及び方法を具体化して確認する。

保管検察官の謄写拒否は,刑事確定訴訟記録法8条1項にいう閲覧に関する処分には当たらず,同項による準抗告の対象にならない(最高裁平成14年6月4日決定)。
この結論を,あらゆる法的対応を一律に否定する意味に広げるべきではない。

第3 確定記録の保管期間と保存延長・再審保存

1 記録ごとの保管期間と現存確認

保管期間は,刑事確定訴訟記録法2条2項・別表及び同法施行規則により,記録の区分に応じて定まる。
終局裁判の裁判書と,供述調書・実況見分調書等を含む裁判書以外の記録では,期間が異なる。
以下は主な区分であり,個別事件では確定裁判,適用罪名,経過措置及び延長の有無を確認する必要がある。

記録の区分確定裁判の刑の重さ等保管期間
裁判書(終局裁判の裁判書)死刑又は無期拘禁刑100年
有期拘禁刑50年
罰金,拘留若しくは科料又は刑の免除原則20年(施行規則1条の対象は10年)
裁判書以外の保管記録(事件記録)罰金,拘留又は科料に処する裁判に係るもの原則3年(施行規則3条の対象は1年)

罰金刑の裁判書は原則20年,裁判書以外の記録は原則3年である。
ただし,施行規則1条・3条が定める道路交通法第8章又は車庫法17条・18条の罪の略式手続等の事件については,裁判書10年,裁判書以外の記録1年という例外があり,正式裁判請求の有無や仮納付による刑執行の条件も確認を要する。
過失運転致傷事件の記録と,道路交通法違反の記録を同じ例外に当てはめない。

有期拘禁刑の裁判書は50年であり,刑期別の期間となるのは裁判書以外の記録である。
裁判書以外の記録は,死刑・無期拘禁刑50年,20年を超える有期拘禁刑30年,10年以上20年以下20年,5年以上10年未満10年,刑の一部の執行猶予を言い渡す裁判8年,それを除く5年未満の拘禁刑5年と区分される。
無罪,免訴,公訴棄却等には別の区分があるため,有罪判決についての表を流用しない。

保管期間の満了と,実際に記録が廃棄されたことは別である。
必要な記録については,現存の有無,保管期間の満了時期,延長・再審保存等の有無及び廃棄済みかどうかを,保管検察庁へ確認する。

法務総合研究所の研修教材『六訂 検務事務入門』(令和6年3月)は,保管記録の保管期間は訴訟終結の日の翌日から起算すると説明している(本文103頁)。
同書によれば,裁判書と裁判書以外の保管記録とでは保管期間が違うため,誤って廃棄しないよう,裁判書は保管記録から抜き取って保管番号順に編てつし,裁判書以外の保管記録は倉庫等に格納して,別々に保管されている(本文110頁)。
上訴審で確定した記録は,上訴審の裁判所から第一審の裁判所に送られ,そこから対応する検察庁に送付されるため,記録を保管しているのは第一審の裁判をした裁判所に対応する検察庁である(同頁,刑事確定訴訟記録法2条1項)。

2 民事賠償等のための保管期間延長の要望

刑事確定訴訟記録法2条3項は,保管検察官が必要と認めるときに保管期間を延長できると定める。
民事賠償等のために記録が必要な場合は,対象事件・対象文書,利用する民事事件,具体的な争点,現在の手続の進行状況,代替証拠では足りない理由及び必要な期間を示して,延長の検討を求めることが考えられる。

延長の要望は,法3条2項の再審保存請求とは異なり,申出により当然に延長を受ける権利が生じる制度ではない。
平成28年3月11日の法務総合研究所研修教材『五訂 記録事務解説』は,民事争訟に関連する弁護士の延長要望に応じる取扱いを紹介しているが,これは当時の運用の説明である。
現在の個別庁での受付方法及び判断を確認し,電話照会や閲覧申請をしただけで廃棄が止まったものと考えない。

申出後も,受付,延長の判断,延長後の期限及び記録の保管状況を確認する必要がある。
記録の保存が認められたことは,その記録の閲覧・謄写又は民事裁判所への提出が認められたことを意味しない。

3 再審保存の請求と保存期間の延長

刑事確定訴訟記録法3条2項は,再審の請求をしようとする者,再審の請求をした者又は刑事訴訟法440条1項により選任された弁護人に,再審保存を請求する資格を認めている。
再審請求の申立て後にしか利用できない制度ではない。
もっとも,再審準備を受任した弁護士であるというだけで,当然に440条1項の弁護人としての請求資格を有するものと扱わない。
本人の請求資格及び代理関係を確認し,どの資格で請求するかを明確にする。

請求は,保管検察官に対し,刑事確定訴訟記録法施行規則5条の再審保存請求書(様式第1号)を提出して行う。
一般の保存延長のお願いだけで済ませず,対象記録,再審準備の事情,保存の必要性及び希望する期間を具体化する。
法3条3項は保存するかどうかの決定と通知を定め,施行規則6条は書面による通知及び不保存の場合の理由付記を定めている。

既に再審保存された記録についても,保存期間を確認する。
延長が必要な場合は,法3条4項及び施行規則7条に基づく保存期間の延長請求を検討する。
再審保存又はその延長に関する処分に不服がある場合は,法8条による取消し又は変更の請求が可能であり,法2条3項の一般的な職権延長の要望とは分けて扱う。

再審請求前の記録及び証拠品の保存を一連の手順として確認する場合は,再審請求前に刑事記録・証拠品の保存を求めるには―請求先,対象,保存期間と開示との違い(AI作成)を参照されたい。

4 不提出記録・証拠品・刑事参考記録との区別

裁判所に提出されなかった記録は,記録事務規程23条により,当該事件の裁判書以外の保管記録又は再審保存記録の保管・保存に従う。
再審の準備で必要な場合は,裁判所提出記録だけを念頭に置かず,不提出記録の種類及び現存も確認する。
この保存上の取扱いによって,不提出記録全部への一般的な閲覧請求権が生じるわけではない。

証拠品は,訴訟記録とは別の保管・処分の問題である。
記録事務規程9条には,再審請求が予測される場合の管理と,証拠品担当事務官への通知が定められている。
鑑定に必要な物等があるときは,記録の再審保存請求だけで証拠品もすべて保存されたと考えず,証拠品の特定,保管先,処分の予定及び保存の取扱いを別に確認する。

刑事法制の調査研究のための刑事参考記録の指定は,法9条に基づく別の制度である。
民事事件の当事者が必要とする記録について,当然にその指定を受けられるというものではなく,裁判所の事件記録の特別保存とも区別する。

5 移送後の所在と再審請求の通知を確認する

刑事記録や証拠品の所在は,裁判所に提出された記録,検察官の裁判所未提出記録及び証拠品の現物を分けて確認する。
裁判所の併合・移送等があった場合,事件事務規程110条は未提出記録の送付を,93条2項はその受領の通知を定める。
送付したという説明だけで移送先の受領・現存まで確認できたと考えず,必要な資料名と対象事件を示して現在の担当・保管庁へ照会する。

資料の種類所在確認で尋ねる事項
裁判所提出記録対象事件,現在の保管庁,返還・送付等の経過,必要な文書の現存。
裁判所未提出記録文書の種類,送付元・送付先,送付と受領の確認,現在の担当庁。
証拠品の現物品名・数量,押収・領置等の番号,目録との対応,現保管先,還付・廃棄等の処分状況。

事件事務規程161条3項・4項は,再審請求について,証拠品担当と確定記録の記録担当への通知を定め,再審請求事件が終結したときも同様としている。
再審を請求した場合は,請求事件を扱う担当と,記録・証拠品を保管する担当への連絡を分けて確認するとよい。
通知がされたこと,保存の判断がされたこと及び現物が存在することは別であり,この通知規定だけから永久保存義務や全面開示の権利が生じるわけではない。
これらの確認は,電話等で対応可能な事項を担当庁へ具体的に尋ねる実務上の整理であり,内部帳簿や送付書を必ず交付してもらえる制度という意味ではない。
目録に品名が載っている場合も,必要な物や媒体が現に保管されているか,記録と同じ庁に所在するかを個別に確認する。

第4 大阪地検の運用と検察庁の説明

1 情報公開審査会の答申に表れた運用

閲覧・謄写の申請方法について,大阪地検がどのように運用しているかは,令和元年12月24日付けの情報公開・個人情報保護審査会の答申書(大阪地検の閲覧謄写申請手続の運用が分かる文書)から読み取れる。この答申書における検察庁側の説明の要点は,次のとおりである。

まず,不起訴記録は,刑事訴訟法47条により原則として非公開とされ,同条ただし書に該当する場合にのみ例外的に公開される。その閲覧の可否は,個々の事案ごとに検察官の合理的裁量によって決定される。もっとも,記録法や記録事務規程が保管記録(刑事確定訴訟記録)の閲覧・謄写の手続を定めていることから,これを準用して不起訴記録の閲覧・謄写の事務も行っている。

次に,大阪地検は,閲覧請求書等の提出のためと,許可後の手数料納付のために,申請者に窓口へ二度来庁するよう求める運用をしている。この運用は大阪地検独自の判断によるもので,根拠となる文書は存在しないという。
窓口来庁を求める理由として,検察庁側は,本人確認の必要があること,日々多数の申請があり記載内容に不備のあるものも見受けられることから窓口で全件を確認していること,これらをすべて郵送で処理すると本人確認や不備確認のために許可までに相当の時間を要し,双方の業務に支障が生じることを挙げている。手数料(印紙)についても,多数の申請分が郵送されると管理や授受の明確性の確保に時間を要するため,窓口来庁を求めているとする。

手数料を許可後に窓口で納付する運用の根拠については,施行規則13条が印紙による収納を認め,手数料令が手数料を記録1件につき1回150円と定め,記録事務規程14条3項が「納付されたときは,閲覧年月日を記入した上,閲覧請求者に保管記録を閲覧させる」と規定していることが挙げられている(大阪地検記録係の引継票も参照)。

2 謄写の方法に関する国会答弁

謄写事務の担い手や方法については,大林宏法務省刑事局長(司法修習24期)が,平成17年6月3日の衆議院法務委員会で答弁している(法務省ウェブサイト掲載の該当答弁)。
その要点は,謄写事務は紛失・破損・情報漏えい等がないよう慎重に扱う必要があるため,弁護士会の事務員やその他の謄写業者が行っていること,謄写の金額は依頼者と謄写業者との契約関係の問題であって必ずしも固定されていないこと,謄写はコピー機による複写に限られず,閲覧者が閲覧室に持ち込んだデジタルカメラによる撮影も認められていること,である。

第5 確定記録がなぜ公開されるのか

1 裁判の公正の担保

確定訴訟記録を公開する制度の趣旨は,刑事訴訟法の制定時から,裁判の公正を担保することにあると説明されてきた。
木内曽益検務長官は,昭和23年5月31日の衆議院法務委員会で,確定訴訟記録の公開について,何人も被告事件の終結後は原則として訴訟記録を閲覧できるものとしたのは裁判の公正を担保する趣旨に基づくものである旨を答弁している(国会会議録)。

2 国際人権規約(自由権規約)14条1項

裁判の公開は,国際人権規約(自由権規約)14条1項でも定められている。同項の外務省による訳文は次のとおりである(外務省ウェブサイト)。

すべての者は,裁判所の前に平等とする。すべての者は,その刑事上の罪の決定又は民事上の権利及び義務の争いについての決定のため,法律で設置された,権限のある,独立の,かつ,公平な裁判所による公正な公開審理を受ける権利を有する。報道機関及び公衆に対しては,民主的社会における道徳,公の秩序若しくは国の安全を理由として,当事者の私生活の利益のため必要な場合において又はその公開が司法の利益を害することとなる特別な状況において裁判所が真に必要があると認める限度で,裁判の全部又は一部を公開しないことができる。もっとも,刑事訴訟又は他の訴訟において言い渡される判決は,少年の利益のために必要がある場合又は当該手続が夫婦間の争い若しくは児童の後見に関するものである場合を除くほか,公開する。

第6 閲覧した確定記録に基づく報道の例

確定記録の閲覧は,報道機関による調査報道の手段としても用いられている。

しんぶん赤旗日曜版は,「桜を見る会」前夜祭に関する事件記録を東京地検に閲覧請求し,開示された文書の中にあったホテル職員作成の「宴会ファイル」(2017年~2019年分)を基に報道した(しんぶん赤旗2022年5月29日付け記事)。
東京新聞は,鶏卵汚職事件(吉川貴盛元農林水産相の収賄罪が確定した事件)について,同紙の請求で東京地検が開示した刑事確定訴訟記録から,西川公也元農相が同社から6年間で計1500万円を受け取ったと供述していたことが判明したと報じた(東京新聞2024年8月2日付け記事)。

もっとも,閲覧により知り得た事項の利用には制約がある。刑事確定訴訟記録法6条は,保管記録又は再審保存記録を閲覧した者は,閲覧により知り得た事項をみだりに用いて,公の秩序若しくは善良の風俗を害し,犯人の改善及び更生を妨げ,又は関係人の名誉若しくは生活の平穏を害する行為をしてはならないと定めている。

第7 交通事故の確定記録と「訴訟に関する書類」の範囲

1 交通事故の確定記録で閲覧・謄写できる書類

交通事故事件の確定記録では,起訴状,実況見分調書,被告人・被害者の供述調書,信号周期表及び裁判書を閲覧・謄写できる。
他方で,閲覧・謄写できる範囲は一律ではない。前科調書,身上調書,裁判書の前科記載部分等のプライバシーに関わる情報については,請求者の立場・利用目的・制限事由を確認する必要がある。第2で述べた第三者の閲覧制限と,訴訟関係人又は正当な理由がある者の取扱いを区別し,文書名だけから常に閲覧できないと判断しない。
交通事故での具体的な入手方法は,別稿(交通事故事件の刑事記録の入手方法)で整理している。

2 「訴訟に関する書類」と情報公開法の適用除外

刑事記録は,情報公開法の対象外である。刑事訴訟法53条の2は,訴訟に関する書類には行政機関情報公開法等を適用しないと定めている。
ここでいう「訴訟に関する書類」とは,書類の性質・内容を問わず,被疑事件・被告事件に関して作成された書類をいい,検察庁が保管する書類に限らず,同庁から謄写を受けるなどして他の行政機関が保管しているものも含むと解されている(令和2年度(行個)答申第49号・令和2年7月14日答申。答申書)。

また,事件番号によって特定される事件の訴訟記録を閲覧すれば,一般に,記録に記載された被告人の氏名や住所等を知ることができ,特定の個人を識別できることになる,との整理も示されている(令和5年度(最情)答申第3号・令和5年10月3日答申。答申書)。

第8 令和7年の刑事手続IT化による今後の変化

ここまで述べた閲覧・謄写は,保管検察官が保管する刑事確定訴訟記録に関する現行の運用である。刑事手続のデジタル化により今後変更される可能性はあるが,公判係属中の検察官による証拠開示,裁判所が保管する訴訟記録及び判決確定後の刑事確定訴訟記録は,法的根拠と保管主体が異なる。公開資料からは,確定記録の閲覧・謄写が公判中の証拠開示と同じオンライン経路へ一律に移行することまでは確認できない。

情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律(令和7年法律第39号)は,令和7年5月16日に成立し,同月23日に公布された。電磁的記録提供命令等の一部規定は令和8年5月21日に施行され,書類の電子化,電子令状及びオンラインによる書類・証拠の授受等の主要規定は,令和9年3月31日までの間において政令で定める日に施行される。

令和8年9月15日現在,確定記録については,まず本記事に記載した保管検察官への現行手続を確認し,併せて申請時点の受付方法を照会する必要がある。段階的施行と個別事件への適用については,刑事手続のデジタル化とは―令和7年法律第39号の施行日,電子令状,オンライン証拠開示及びLinKage(AI作成)を参照されたい。

第9 関連記事

刑事記録の入手に関する関連記事として,次のものがある。

検察庁の記録事務に関する内部文書としては,東京地検記録事務細則(平成25年3月29日付け東京地検検事正訓令)や,保管記録等取扱要領について(平成25年3月26日付け大阪高検検事長の通達)を参照できる(後者の別表第1の内容は,刑事確定訴訟記録法別表(第2条関係)と同じである)。

出典

1 法令

2 裁判例

3 公文書・答申

補足資料:法務省事件事務規程(令和8年3月23日最終改正・5月21日施行)93条2項・110条・161条3項及び4項。
訴訟記録・未提出記録の送付と受領,再審請求時の担当者への通知を区別して確認した。

4 条約

5 報道