第1 この記事の対象
平成21年新司法試験の論文式試験について,主要7科目を扱う6本の模範解答記事を案内する。
公法系・民事系・刑事系は各2問であり,民事系第1問は民事訴訟法,第2問は民法・商法の総合問題である。
選択科目,短答式試験及び同年の旧司法試験は対象外である。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 年度・試験 | 平成21年新司法試験・論文式試験 |
| 主要科目の実施日 | 平成21年5月14日・16日・17日 |
| 対象 | 主要7科目。試験上は公法系2問・民事系2問・刑事系2問 |
| 評価項目 | 159項目,うち重み5は45項目 |
| 民事系 | 第1問が民事訴訟法,第2問が民法・商法の総合問題。第2問は一問として集計した |
| 公式資料 | 法務省が問題,出題の趣旨及び採点実感等に関する意見を掲載 |
| 集計の基準 | 令和8年11月7日に確認した科目別6記事の評価表 |
| 翌年の主要7科目ハブ | 平成22年司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答と評価項目(AI作成) |
各記事の模範解答はAIが作成した答案例である。
評価項目と重みは各記事独自の分析であり,法務省の公式解答・公式採点基準・項目別配点を示すものではない。
個々の設問に対する答案や論証の詳細は,リンク先の記事を参照されたい。
第2 6記事の一覧
| 科目 | 主な論点 | 評価項目 | 重み5 |
|---|---|---|---|
| 公法系第1問(憲法) | 臨床研究の中止と研究の自由,遺伝情報の開示と家族のプライバシー | 29 | 8 |
| 公法系第2問(行政法) | 建築確認,原告適格と仮の救済,接道・施設との距離・説明手続 | 34 | 7 |
| 民事系第1問(民事訴訟法) | 建物買取請求権の行使事実,弁論主義と自白,引換給付判決と後訴 | 24 | 7 |
| 民事系第2問(民法・商法) | 機械の売買・所有権留保・即時取得,吸収合併の差止め・議決権行使・合併無効 | 31 | 14 |
| 刑事系第1問(刑法) | 口座間振込とATMの現金引出し,甲乙の関係,架空の強盗被害の通報 | 21 | 6 |
| 刑事系第2問(刑事訴訟法) | 令状執行中の写真撮影,再現実験,実況見分調書の証拠能力 | 20 | 3 |
| 合計 | 主要7科目・6問 | 159 | 45 |
第3 各問題の概要と重み5の事項
番号は,各科目の記事の評価表の通し番号である。
同じ番号でも科目が異なれば別の項目を指す。
項目の文言は各記事の評価表による。
条件付きの項目は,各記事が示す適用条件を括弧内に示し,該当する構成を採用又は比較する場面で読む。
各項目の根拠箇所と重み付けの説明は,科目別記事の評価表及び分布の節を参照されたい。
1 公法系第1問(憲法)
県立大学の臨床研究で被験者Cが重体となり,医学部長は研究全体の中止を命じた。
教授Xは,Cの家族4人の遺伝情報を各自の開示の同意を得ずにCに伝え,遺伝子情報保護規則の違反を理由に1か月の停職とされた。
両設問ともXの代理人として主張し,大学側の反論を想定して結論と理由を示す。
設問1は処分性を前提とし,設問2は個人情報に関する法令・条例を除く。
重み5は8項目である。
番号2:規則が定める規制の合憲性と,具体的な中止・停職処分の合憲性を別々に評価する(両設問共通)。
番号4:新しい治療法を検証するXの臨床研究の実施を,憲法23条の研究の自由の保障範囲に位置付ける。
番号7:制裁のない国の指針と医学部規則の違いを,制定背景・主体・機能から説明し,規則で措置を定め得るかを検討する。
番号8:大学の自治の憲法上の意味を示し,個々の研究者の自由との対立を,自主的な倫理・安全審査が許される限度から調整する。
番号12:規則8条の変更等と本研究全体の中止を比較し,事故の深刻さと代替措置の実効性から本件処分の相当性を説明する。
番号17:Cが公的機関の保有する自己の遺伝情報を求める利益を,13条の自己情報コントロールに基づく開示請求の面から構成する。
番号18:第三者の権利侵害を援用する違憲主張適格について,没収事件の二つの理由を示し,本問へ移せる判断枠組みを論じる。
番号22:家族の遺伝情報について,Cが自己の病気を理解する利益と,家族の13条上の情報プライバシーを区別して比較する。
記事:平成21年司法試験公法系科目第1問(憲法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した29項目と5段階の重み付け(AI作成)
2 公法系第2問(行政法)
建築確認を受けたマンションの工事が進む中,近隣居住者,非居住の所有者,図書館児童室を使う児童とその父が工事の停止を求める。
弁護士Kとして,設問1では取消訴訟と仮の救済,設問2では確認の違法事由とFが各事由を主張できるかを検討する。
設問1は処分性,審査請求前置及び出訴期間に問題がないことを前提とし,措置命令と検査済証交付を争う訴えを除く。
設問2は容積率・高さ・建ぺい率が適法であることを前提とする。
重み5は7項目である。
番号3:行訴法9条1項・2項に沿い,根拠法令の趣旨と保護利益の内容,害される態様・程度を用いて,個別に保護される法律上の利益かを判断する。
番号11:工事完成で確認の工事禁止解除の効力が尽きることから,狭義の訴えの利益を判断する。
番号14:重大な損害につき,回復の困難さ,損害と処分の性質・程度を解釈し,Fらが受ける具体的な不利益を衡量する。
番号19:遮断機による通行不能・開放時の狭さ・非常時連絡の限界を,避難・消防等の通行確保という接道規制の目的から評価する。
番号22:27条4号の「これらに類するもの」を,列挙施設の出入口で保護すべき利用者と車両との交錯の危険から解釈する。
番号27:委任条例の実体基準と自主条例の説明義務を区別し,後者の違反が法6条の確認の審査事項又は法定の前提手続になるかを論じる。
番号30:行訴法10条1項により,処分を争う原告適格とは別に,違法事由ごとにF自身の法律上の利益との関係を判断する。
記事:平成21年司法試験公法系科目第2問(行政法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した34項目と5段階の重み付け(AI作成)
3 民事系第1問(民事訴訟法)
土地所有者Xが建物収去と土地明渡しを求め,借地人Yによる建物買取請求権の行使事実をX自身が述べた。
引換給付判決の確定後,Xは解除に関する書証を発見し,後訴を提起した。
設問1は賃貸借の終了を前提とし,Yが否認・援用・沈黙する各場合に証拠調べなしで行使事実を判決の基礎にできるかを問う。
設問2は両訴訟の訴訟物が同一であるとの前提で,Yの却下・棄却の論拠とXの反論を分けて検討する。
重み5は7項目である。
番号2:買取請求権の行使で建物所有権がXに移り,収去を妨げるため,行使事実の主張立証責任を負うYに有利で,これを述べたXには不利益と説明する。
番号8:Yが否認しても,Xが行使事実を主張しているため,主張共通の原則上,その事実は立証されれば判決の基礎にできると説明する。
番号11:民訴法159条1項は,主張責任を負う側が事実を主張し,相手が争うことを明らかにしない場面を想定するため,本問ではそのまま適用できないと説明する。
番号14:両訴訟の訴訟物を同一の所有権に基づく土地明渡請求権とし,収去と退去をそれぞれ履行態様として扱う。
番号18:Yの立場から,一部認容という把握において,収去を伴う無条件の明渡しを退けた部分にも既判力が生じると論じる(適用条件:一部認容という説明を採用又は比較するとき)。
番号21:Xの立場から,前訴債務名義では代金との引換えによる退去明渡しにとどまり,後訴が求める無条件の収去明渡しを実現できないため,新たな名義を得る利益があると論じる。
番号23:前訴確定後にBから手掛かりを得た経緯,A及びCの死亡,書証の所在などから,Xに前訴で解除の主張を期待できたかを検討する。
記事:平成21年司法試験民事系科目第1問(民事訴訟法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した24項目と5段階の重み付け(AI作成)
4 民事系第2問(民法・商法)
前半の設問1から3では,機械の型番の誤記,所有権留保付き売買後の転売と直接納品,機械の使用利益が問題となる。
後半の設問4から6では,X社の吸収合併に反対する株主Zが採り得る手段と,株主総会の議決権の集計が問題となる。
設問2は指定事実①から④を分け,設問3の使用料相当額請求は法的根拠を一つ選ぶ。
設問4は会社法上の手段を検討し,設問5はFの票が重複する場合としない場合の双方を扱う。
設問6は設問4で用いた手段を除き,合併の効力発生前後を分ける。
重み5は14項目である。
番号1:両社の書面と前後の経緯からPS112の新品1台を合意の対象と解する。
番号5:AY間の売買に基づく新たな占有の取得をYが主張立証する必要を説明する。
番号8:代金全額未弁済の不知とAの無権利の不知を分け,事実②の主張立証は不要とする。
番号11:占有取得時である2月15日を基準とし,2月20日の認識を過失の直接根拠にしない。
番号12:所有権留保の担保目的と所有権帰属を踏まえ,Xの承諾の範囲からYの使用権限とその終了時期を分析する。
番号14:採用した根拠の要件に従って始期を定め,引渡し・解除・返還請求・訴え提起の役割を取り違えない。
番号15:長期保有株主Zが,契約締結・招集を行うXの取締役に会社法360条による差止めを求める構成を示す。
番号19:Xに回復不能な損害が生ずるおそれを,監査役設置会社の規律と本件の事情に即して判断する。
番号21:議決権行使書面と委任状の機能を分け,白紙委任1万個はZが現にした反対の票として扱う。
番号22:賛成指示50個につき,Zの反対投票の効力を代理権の範囲から論じ,根拠なく賛成に転換しない。
番号24:Fの100個が重複する場合に,書面と代理行使の競合を理由付けし,採用した扱いに従って賛否を再計算する。
番号25:設問5の集計を引き継いで,特別決議の定足数と出席議決権の3分の2以上の賛成を検算する。
番号28:取消し等の本案と,合併実行を防ぐ仮の地位を定める仮処分を接続する。
番号29:合併無効の訴えを用い,Zの原告資格,Dの被告適格,効力発生日から6箇月の期間を示す。
記事:平成21年司法試験民事系科目第2問(民法・商法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した31項目と5段階の重み付け(AI作成)
5 刑事系第1問(刑法)
甲から振込の指示を受けた乙が80万円を口座間で移し,120万円を現金で引き出して自分の借金の返済に充てる。
その後,甲が乙を車のトランクに閉じ込め,両名は架空の強盗被害を装う。
具体的な事実を示しつつ甲と乙の罪責を論じ,成立する犯罪と罪数を整理する。
特別法違反と丙の罪責は対象外である。
重み5は6項目である。
番号2:預金の法律上の占有を,銀行に対する払戻し・送金の権限を根拠として説明する。
番号9:実際に操作した乙の行為を甲に帰属させるため,間接正犯又は共犯の根拠を明示する。
番号13:ATM内の銀行占有の現金につき,乙の無権限の払戻しと窃盗の成否を検討する。
番号14:甲の指示・カード交付と乙の独自行為との条件関係と,危険の現実化による結果帰属を区別する。
番号15:甲の想定と現実を客体・行為態様・構成要件で対照し,故意の有無を錯誤として評価する。
番号17:監禁の外形を示した上で,乙の承諾の効力を対立する理由と具体的な範囲から判断する。
記事:平成21年司法試験刑事系科目第1問(刑法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した21項目と5段階の重み付け(AI作成)
6 刑事系第2問(刑事訴訟法)
T社事務所での捜索差押許可状の執行中に,壁の文字の消し跡,通帳,旅券などが撮影された。
その後,車が海中に転落する経過を再現する実験が行われ,甲の説明と写真を含む実況見分調書が作成された。
設問1は資料1の供述の信用性と令状の適法な発付を前提として,写真①から④までの各撮影の適否を問う。
設問2は弁護人の不同意を踏まえ,実質的な要証事実を定め,調書の部分ごとに証拠能力と条件を検討する。
重み5は3項目である。
番号1:令状主義の趣旨を,憲法35条による屋内・私的領域の保護と司法による事前の対象限定に結び付ける。
番号2:捜索・差押えと検証の目的・機能を区別し,令状執行中の写真撮影がどの法的根拠で許され得るかを論じる。
任意捜査の許否だけで処理しない。
番号17:犯行の再現と物理的実行可能性を区別し,本件で検察官の立証趣旨が独自の意味を持つことを具体的に論じる。
説明なく要証事実を実際の犯行へ置き換えない。
記事:平成21年司法試験刑事系科目第2問(刑事訴訟法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した20項目と5段階の重み付け(AI作成)
第4 6記事に共通する作り方
1 評価項目の抽出
各記事は,出題の趣旨と採点実感を手掛かりに,答案で確認できる内容を評価項目に整理している。
評価表には項目ごとに資料の対応箇所が付されている。
資料との対応を「間接」と示す箇所では,資料の記述を事案に即して具体化した評価も含まれる。
2 5段階の重み付け
6記事に共通の目安は,5がその設問の判断を大きく分ける核心,4が結論を理由付きで支える主要な論証・当てはめ,3が通常押さえる法的処理・事情の評価,2が論証を補強する説明・個別事情・誤りの注意,1が補充的な引用・記述範囲の確認である。
表は各記事が付けた重みを集計したものであり,科目横断で個々の項目を付け直していない。
各記事で「注意」と表記する項目は,答案で避けるべき誤りを示す。
複数の構成が許容される箇所では,答案が採用する構成と理由,結論の整合を確認する。
3 模範解答と解説
各記事は,設問の指定に応じて検討する立場や前提を示し,答案例とその解説を掲げている。
民事系第1問のように双方の論拠を検討する設問や,民事系第2問のように選択した構成から数値や手段を導く設問がある。
第5 重みの分布の比較
| 科目 | 重み5 | 重み4 | 重み3 |
|---|---|---|---|
| 公法系第1問(憲法) | 8 | 13 | 7 |
| 公法系第2問(行政法) | 7 | 18 | 8 |
| 民事系第1問(民事訴訟法) | 7 | 10 | 6 |
| 民事系第2問(民法・商法) | 14 | 13 | 3 |
| 刑事系第1問(刑法) | 6 | 9 | 5 |
| 刑事系第2問(刑事訴訟法) | 3 | 14 | 3 |
| 合計 | 45 | 77 | 32 |
| 科目 | 重み2 | 重み1 | 項目数 | 重みの合計 |
|---|---|---|---|---|
| 公法系第1問(憲法) | 1 | 0 | 29 | 115 |
| 公法系第2問(行政法) | 1 | 0 | 34 | 133 |
| 民事系第1問(民事訴訟法) | 1 | 0 | 24 | 95 |
| 民事系第2問(民法・商法) | 1 | 0 | 31 | 133 |
| 刑事系第1問(刑法) | 1 | 0 | 21 | 83 |
| 刑事系第2問(刑事訴訟法) | 0 | 0 | 20 | 80 |
| 合計 | 5 | 0 | 159 | 639 |
重みの合計は,重みごとの項目数に各重みを掛けて足した値である。
項目の切り分け方や一問に含まれる設問の構成に左右されるため,公式配点,得点の見込み,難易度又は合格可能性には換算できない。
本記事では,表を答案の読みどころを見つけるための索引として整理する。
例えば民事系第2問では,機械の取引を扱う前半と合併を扱う後半で問われる処理が異なるため,第3の番号を設問の順にたどると対応を確認しやすい。
第6 関連記事
① 平成22年司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答と評価項目(AI作成)
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③ 司法試験の過去問・参考答案一覧―平成29年~令和8年の年度別・科目別ガイド(AI作成)
④ 法務省HPの司法試験・予備試験の資料の所在―年度別の実施・結果・出題趣旨・採点実感のページ一覧(AI作成)
⑤ 司法試験の採点実感から学ぶ法律文書の書き方―準備書面・意見書・相談メモのチェックリスト(AI作成)
第7 出典
1 公式資料
① 司法試験委員会・平成21年新司法試験の実施日程等について(論文式主要科目の実施日と科目区分)
② 法務省・平成21年新司法試験試験問題(短答式試験・論文式試験の問題の一覧)
③ 法務省・平成21年新司法試験論文式試験問題集(公法系科目)(第1問(憲法)は2頁~5頁,第2問(行政法)は6頁~13頁)
④ 法務省・平成21年新司法試験論文式試験問題集(民事系科目)(第1問(民事訴訟法)は1頁~7頁,第2問(民法・商法)は8頁~14頁)
⑤ 法務省・平成21年新司法試験論文式試験問題集(刑事系科目)(第1問(刑法)は2頁~4頁,第2問(刑事訴訟法)は5頁~9頁)
⑥ 法務省・平成21年新司法試験論文式試験問題出題趣旨(公法系・民事系・刑事系の対象各問は1頁~8頁)
⑦ 法務省・平成21年新司法試験の採点実感等に関する意見(憲法・行政法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法は1頁~22頁)
頁はPDFファイルの先頭から数えた範囲である。
2 集計の基準
本記事の数値は,令和8年11月7日時点の6記事の評価表から,各重みの件数,項目数及び重みの合計を集計したものである。
本記事は,各科目の法的分析や公式資料との対応を改めて審査したものではない。
各問の検討範囲,根拠の頁,法令の基準時と裁判例は,それぞれの科目別記事の出典欄を参照されたい。