第1 この記事の対象
平成22年新司法試験の論文式試験から,主要7科目の模範解答記事と評価項目を案内する。
対象は公法系2問,民事系2問,刑事系2問である。
民事系第2問は民法と民事訴訟法の総合問題であり,7科目の案内では同問を二つの範囲に分ける。
選択科目,短答式試験及び旧司法試験は対象外である。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 年度・試験 | 平成22年新司法試験・論文式試験 |
| 主要科目の実施日 | 平成22年5月13日・15日・16日 |
| 対象 | 主要7科目。試験上は公法系2問・民事系2問・刑事系2問 |
| 評価項目 | 209項目,うち重み5は45項目 |
| 民事系第2問 | 同じ記事の設問1・2・5が民法,設問3・4が民事訴訟法 |
| 公式資料 | 法務省が問題,出題の趣旨及び採点実感等に関する意見を掲載 |
| 集計の基準 | 令和8年11月6日に確認した科目別6記事の評価表 |
| 翌年の主要7科目ハブ | 平成23年司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答と評価項目(AI作成) |
各記事の模範解答はAIが作成した答案例である。
評価項目と重みは各記事独自の分析であり,法務省の公式解答・公式採点基準・項目別配点を示すものではない。
予測得点や合格可能性への換算にも使えない。
第2 7科目の記事一覧
| 科目 | 主な論点 | 評価項目 | 重み5 |
|---|---|---|---|
| 公法系第1問(憲法) | 生活保護の現在地,国政選挙の投票機会,国家賠償 | 24 | 4 |
| 公法系第2問(行政法) | 村有地売却,住民訴訟,請求権放棄 | 36 | 5 |
| 民事系第2問(民法・設問1・2・5) | 有権代理と表見代理,抵当権侵害,認知と包括遺贈 | 18 | 7 |
| 民事系第1問(商法・会社法) | 現物出資,見せ金,払込みと株式の効力,会社・第三者に対する責任 | 35 | 6 |
| 民事系第2問(民事訴訟法・設問3・4) | 氏名冒用,既判力,条件付き認容 | 27 | 6 |
| 刑事系第1問(刑法) | 誤投薬,不作為による殺人,業務上過失致死 | 35 | 8 |
| 刑事系第2問(刑事訴訟法) | ごみの領置,携帯電話の消去データ,おとり捜査,秘密録音,反訳書 | 34 | 9 |
| 合計 | 主要7科目・6問(民事系第2問は範囲を分けて集計) | 209 | 45 |
民法と民事訴訟法は,同じ民事系第2問の記事で扱う。
一覧では,設問1・2・5を民法欄に,設問3・4を民事訴訟法欄に分けた。
第3 各問題の概要と重み5の事項
番号は,各科目の記事の評価表の通し番号である。
同じ番号でも科目が異なれば別の項目を指す。
民事系第2問は民法と民事訴訟法で一つの評価表を使うため,番号は設問1から設問5まで通しで付いている。
各項目の根拠箇所と重み付けの説明は,科目別記事の評価表及び分布の節を参照されたい。
1 公法系第1問(憲法)
住居を失ったXの生活保護申請が却下され,住民登録と選挙人名簿からの抹消により国政選挙で投票できなかった事例である。
設問1はXの訴訟代理人として生活保護と選挙権を分けて主張し,設問2は被告の反論を踏まえた自説と国賠の判断を求める。
重み5は4項目である。
番号1:生活保護法19条の解釈適用と却下処分を審査対象とし,生活保護法自体の合憲性や最低生活水準を決める立法裁量と区別する
番号5:居住地がないか明らかでない場合にY市内の現在地で生活保護法19条1項2号の実施機関を定め,一律却下の適否を判断する
番号13:在外国民選挙権判決を踏まえ,選挙の公正を保ちながら投票を可能にすることが事実上不能又は著しく困難といえるかで全面的な行使制限を検討する
番号14:通常の住所・名簿制度の機能を保ちながら,住所のない者の投票を可能にする制度を欠くことを憲法審査の対象として明示する
記事:平成22年司法試験公法系科目第1問(憲法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した24項目と5段階の重み付け(AI作成)
2 公法系第2問(行政法)
過疎対策として村有地を売却したA村で,住民が価格と手続を争い,議員の一部が損害賠償請求権の放棄を検討する事例である。
弁護士Fとして,4号請求の内容とB・C・Dの訴えの適法性,売買契約締結の適法性,資料3の二つの判決の比較と放棄議決への当てはめを検討する。
契約締結について会議録が外した地方自治法96条1項5号・8号と,請求権が消滅する手続は対象から外れる。
問題文の配点の割合は,設問1から設問3までで2:4.5:3.5である。
重み5は5項目である。
番号3:4号本文に基づきA村長を被告とし,A村のE個人に対する損害賠償請求権の行使を求める
番号9:地方自治法96条1項6号と237条2項を接続し,適正な対価を欠く財産譲渡の議会議決の要否を検討する
番号16:令167条の2第1項2号につき,契約目的と競争に適さない条件を具体的に結び付け,裁量の合理性を審査する
番号31:事案の違いにとどまらず,議会の判断の尊重と第一審で違法が認められた後の司法的統制の重みの違いを比較する
番号35:両判決の考え方を踏まえ,Eの個別事情,回収見込みと財政・住民訴訟への影響を衡量し,F自身の議決適法性に関する意見を示す
記事:平成22年司法試験公法系第2問(行政法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した36項目と5段階の重み付け(AI作成)
3 民事系第2問(民法・設問1・2・5)
設問1は,CがAの名で借入れを増額した事例で,Fの有権代理と表見代理の二つの構成それぞれについて事実①②の意味を問う。
設問2は,丙建物の取壊しによる抵当権侵害の損害と,抵当権設定登記を欠くことを理由とする反論を扱う。
別の事実関係を置く設問5は,EとAの親子関係に触れ,C・EのHに対する元本の支払義務と額を答える。
ここでは同じ記事の評価表のうち設問1・2・5を集計した。
重み5は7項目である。
番号1:Fの二つの選択的主張を,有権代理と110条の権限外の行為の表見代理として別々に扱う
番号9:取壊し後の甲・乙の換価額と被担保債権額を比較し,残存担保で充足できる場合と不足する場合を分ける
番号10:丙の取壊しが第1回弁済期前であることから,取壊し時の経済的不利益と回収不足を確定できる時点を分けて論じる
番号13:Eは登記欠缺を主張できる177条の第三者に原則該当し,背信的悪意者は正当な利益を欠くため除外されると述べる
番号42:成年Eの承諾があっても,未提出の認知届により父子関係は生じず,書類の作成・使者への交付と届出を区別する
番号43:遺言を非相続人Eへの遺産3分の1の割合的包括遺贈と解し,Cの3分の2は唯一の相続人に帰属する残余であると示す
番号44:990条の同一の権利義務と可分債務の承継を結び,Hへの元本支払義務をC400万円・E200万円と算定する
記事:平成22年司法試験民事系第2問(民法・民事訴訟法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した45項目と5段階の重み付け(AI作成)
4 民事系第1問(商法・会社法)
設立時の現物出資財産に価額不足があり,設立後の募集株式の払込みに見せ金が使われた事例である。
設問1はA・Bの甲社に対する責任,設問2は払込みと株式の効力,A・B・丙社の甲社に対する会社法上の責任及びA・Bの乙銀行に対する責任を順に問う。
鑑定士や公認会計士,C・Dや各銀行の責任,一般私法上の丙社に対する返還請求は検討範囲から外れる。
重み5は6項目である。
番号1:A・Bの発起人及び設立時取締役としての両地位を会社に対する不足額填補義務に結び付ける
番号8:借入金による払込み一般と,会社に営業資金を確保する意思・実質のない見せ金を区別する
番号12:払込みの効力と発行された株式の効力を段階として分け,採用する効力の組合せを明示する
番号21:採用した効力構成に沿って,Aの見せ金への関与又は丙社への資金交付を423条1項の任務懈怠として評価する
番号27:429条1項の悪意・重過失の対象を会社に対する具体的な任務懈怠とし,Aの虚偽を用いた借入れに適用する
番号30:429条1項の任務懈怠責任と2項の特定行為による責任を独立の要件・立証構造として説明する
記事:平成22年司法試験民事系第1問(商法・会社法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した35項目と5段階の重み付け(AI作成)
5 民事系第2問(民事訴訟法・設問3・4)
EになりすましたGの訴訟行為と,貸金債務不存在確認の確定判決が後の抵当権設定登記抹消請求に及ぼす影響を扱う。
設問3はGの行為の効力を検討し,設問4⑴はFの訴訟代理人Qからの課題に司法修習生として答え,二つの構成の長所と短所を裁判所での採用可能性と結び付ける。
設問4⑵は残元本500万円を前提に条件付き認容と全部棄却を比較する。
設問4⑴の信義則違反と,設問4の利息・遅延損害金は検討範囲から外れる。
重み5は6項目である。
番号15:GがE本人と称した行為を法的に位置付け,代理人としての顕名を欠くことの意味を説明する
番号24:自認額を超える部分が訴訟物となる最高裁の立場を基準に置く
番号28:構成①につき,前訴の全部認容の主文が自認部分の存在まで判断したといえるかを検討する
番号31:構成②につき,放棄調書の確定判決と同一の効力が,実体判断を伴わない放棄に既判力まで与えるかを論じる
番号34:無条件抹消の申立てから条件付きの質的一部認容をすることの可否を民訴法246条により検討する
番号38:条件付き認容では500万円が主文に掲げられることから,その数額に既判力が及ぶかを条件の効力と債権額の独立した確定に分けて論じる
記事:平成22年司法試験民事系第2問(民法・民事訴訟法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した45項目と5段階の重み付け(AI作成)
6 刑事系第1問(刑法)
薬剤師丙が処方と異なる薬を交付し,看護師乙が照合せずに投与した後,妻甲が異変に気付きながら救命の機会を失わせ,Vが死亡した事例である。
甲・乙・丙それぞれの罪責を論じ,医師Bの処方・指示と事後の救命処置が適切という与件の下,特別法違反を除いて罪数まで示す。
重み5は8項目である。
番号1:作為と不作為の両構成を比較し,午後2時の妨害,検温表の記入・提示,通報の懈怠の機能を分けて主たる実行行為を特定する
番号6:甲が午後2時の虚偽で乙を退去させ,通常の救命経路を遮った事実を,甲自身の作為義務・支配の根拠として評価する
番号10:期待された通報を仮定し,午後2時20分までの異変発見,院内での即時処置,救命を経て死亡回避に至ることを論じる
番号13:午後2時の時間稼ぎと,その後に容体の悪化を見て生死を運命に委ねた段階を分け,故意の成立時期を判断する
番号14:作為義務,故意及び結果回避可能性が同時に存在する時間帯を示し,午後2時30分の作為だけで殺人既遂を認定しない
番号21:Bの指示,Vの高齢と原因不明の発熱から,乙が約30分ごとに容体を直接確認する必要を説明する
番号29:甲の故意ある不作為が救命の機会を失わせたことと,D薬の危険が進行し死因となったことを区別し,乙の誤投薬に死亡を帰属できるかを論じる
番号30:丙の誤交付後の乙の誤投薬と甲の不救助をそれぞれ評価し,丙自身の行為から死亡までの因果の連鎖を示す
記事:平成22年司法試験刑事系第1問(刑法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した35項目と5段階の重み付け(AI作成)
7 刑事系第2問(刑事訴訟法)
けん銃密売の捜査で,ごみから回収したメモ片や携帯電話の発着信歴を復元し,会話とその後の説明を録音して反訳した事例である。
設問1は三つの捜査の適法性を問い,立入りと内容確認・領置,当初の押収とデータ復元・分析をそれぞれ分ける。
設問2は捜査の適法性を踏まえ,弁護人が不同意の捜査報告書について,けん銃譲渡に関する会話の存在と内容という立証趣旨に即して記載部分ごとの証拠能力を論じる。
重み5は9項目である。
番号4:占有の放棄と区別して,通常の収集過程でごみの中身を見られないという期待の権利性と,本件での要保護性を検討する
番号8:捜査②で,管理者の同意なしに敷地内の専用倉庫へ立ち入った行為の法的意味を,ごみの領置と分けて論じる
番号13:携帯電話の押収とは別に,復元・分析が当初の令状の効力内か,別個の令状を要する新たな侵害かを立てる
番号18:おとり捜査の適否を,機会提供型・犯意誘発型という呼称だけで決めず,必要性・補充性と働き掛けの相当性で判断する
番号21:同意した会話当事者の支配下にある会話を録音する場合と,双方の同意を欠く傍受の相違を,会話の秘密の要保護性から説明する
番号25:検察官の指定した会話の存在と内容を一つの要証事実として固定し,証拠の使用目的をすり替えない
番号26:Kが再生して反訳した報告書全体は,検証結果書面に準じ,Kの公判供述による真正立証を要すると論じる
番号28:報告書1⑴・2⑴・3の直接会話は,その内容の発言が交わされた事実を示すために使う限り非伝聞と論じる
番号30:報告書1⑵・2⑵の乙の事後説明は,同じ会話の存在・内容を示すには説明の真実性に依存するので伝聞と論じる
記事:平成22年司法試験刑事系第2問(刑事訴訟法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した34項目と5段階の重み付け(AI作成)
第4 6記事に共通する作り方
1 評価項目の抽出
各記事は,法務省の出題の趣旨と採点実感等に関する意見を手掛かりに,答案のどの記述を評価するかを項目に分けている。
資料欄で明示と間接を分ける記事では,間接は資料の指摘を各記事が評価項目に結び付けたことを表す。
2 5段階の重み付け
共通の目安は,5が設問の判断を大きく分ける核心,4が結論を理由付きで支える主要な論証・当てはめ,3が通常押さえる法的処理・事情の評価,2が論証を補強する説明・個別事情・誤りの注意,1が補充的な引用・記述範囲の確認である。
重みは資料への登場回数で機械的に定めるものではない。
表は各記事が付けた重みを集計したものであり,科目横断で個々の項目を付け直していない。
注意項目は避けるべき誤りを示し,許容分岐や条件付きの項目はその構成を採る場合に読む。
相互に異なる構成を採ることを前提とする項目を,一つの答案に重ねて求めるものではない。
3 模範解答と解説
各記事は設問に指定された立場と検討範囲を踏まえた答案例を示す。
答案で採用した見解,資料が指摘する事項,他に取り得る構成を区別し,評価表と答案の対応を確認できるようにしている。
第5 重みの分布の比較
| 科目 | 重み5 | 重み4 | 重み3 |
|---|---|---|---|
| 公法系第1問(憲法) | 4 | 15 | 2 |
| 公法系第2問(行政法) | 5 | 18 | 11 |
| 民事系第2問(民法・設問1・2・5) | 7 | 7 | 2 |
| 民事系第1問(商法・会社法) | 6 | 23 | 4 |
| 民事系第2問(民事訴訟法・設問3・4) | 6 | 15 | 4 |
| 刑事系第1問(刑法) | 8 | 15 | 9 |
| 刑事系第2問(刑事訴訟法) | 9 | 16 | 9 |
| 合計 | 45 | 109 | 41 |
| 科目 | 重み2 | 重み1 | 項目数 | 重みの合計 |
|---|---|---|---|---|
| 公法系第1問(憲法) | 2 | 1 | 24 | 91 |
| 公法系第2問(行政法) | 1 | 1 | 36 | 133 |
| 民事系第2問(民法・設問1・2・5) | 2 | 0 | 18 | 73 |
| 民事系第1問(商法・会社法) | 2 | 0 | 35 | 138 |
| 民事系第2問(民事訴訟法・設問3・4) | 2 | 0 | 27 | 106 |
| 刑事系第1問(刑法) | 3 | 0 | 35 | 133 |
| 刑事系第2問(刑事訴訟法) | 0 | 0 | 34 | 136 |
| 合計 | 12 | 2 | 209 | 810 |
項目数は評価表の行を数え,重みの合計は各重みとその項目数を掛けて足し合わせた。
民事系第2問の45項目は,民法の18項目と民事訴訟法の27項目からなる。
設問1・2・5の番号1~14・42~45を民法に,設問3・4の番号15~41を民事訴訟法に計上した。
本記事では,例えば民事系第2問を読む際には,設問1・2・5の実体法上の構成と設問3・4の訴訟上の処理を分けて確認できるように整理した。
項目の切り分け方が記事ごとに異なるため,分布の差を科目の難易度や点数の差に読み替えることはできない。
第6 関連記事
① 平成23年司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答と評価項目(AI作成)
② 令和7年度司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答と評価項目(AI作成)
③ 法務省HPの司法試験・予備試験の資料の所在―年度別の実施・結果・出題趣旨・採点実感のページ一覧(AI作成)
④ 司法試験の採点実感から学ぶ法律文書の書き方―準備書面・意見書・相談メモのチェックリスト(AI作成)
第7 出典
1 公式資料
① 司法試験委員会・平成22年新司法試験の実施日程等について(論文式主要科目の実施日と科目区分)
② 法務省・平成22年新司法試験論文式試験問題(公法系科目)(第1問(憲法)・第2問(行政法))
③ 法務省・平成22年新司法試験論文式試験問題(民事系科目)(第1問(商法・会社法)・第2問(民法・民事訴訟法))
④ 法務省・平成22年新司法試験論文式試験問題(刑事系科目)(第1問(刑法)・第2問(刑事訴訟法))
⑤ 法務省・平成22年新司法試験論文式試験問題出題趣旨(公法系・民事系・刑事系の対象各問)
⑥ 法務省・平成22年新司法試験の採点実感等に関する意見(憲法・行政法・商法・民法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法)
2 集計の基準
本記事の数値は,令和8年11月6日時点の6子記事の評価表から,各重みの件数,項目数及び重みの合計を集計したものである。
本記事は,各科目の法的分析や公式資料との対応を改めて審査したものではない。
各問の検討範囲,根拠の頁,法令の基準時と裁判例は,それぞれの子記事の出典欄を参照されたい。