第1 この記事の対象
平成23年新司法試験の論文式試験について,主要7科目の模範解答と評価項目を科目別に案内する。
選択科目と短答式試験は対象外である。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 年度・試験 | 平成23年新司法試験・論文式試験 |
| 主要科目の実施日 | 平成23年5月11日・12日・14日 |
| 対象 | 公法系2問,民事系3問,刑事系2問 |
| 評価項目 | 212項目,うち重み5は45項目 |
| 公式資料 | 法務省が問題,出題の趣旨及び採点実感を掲載 |
| 集計の基準 | 令和8年11月6日に確認した科目別7記事の公開評価表 |
| 翌年の主要7科目ハブ | 平成24年司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答と評価項目(AI作成) |
各記事の模範解答はAIが作成した答案例である。
評価項目と重みは各記事独自の分析であり,法務省の公式解答・公式採点基準・項目別配点を示すものではない。
第2 7記事の一覧
| 科目 | 主な論点 | 評価項目 | 重み5 |
|---|---|---|---|
| 公法系第1問(憲法) | 地図画像のネット提供と表現の自由,住居に結び付く私生活情報,中止命令 | 25 | 4 |
| 公法系第2問(行政法) | 場外発売場の設置許可,第三者の原告適格,許可取消しへの予防的救済,条例 | 31 | 7 |
| 民事系第1問(民法) | 転用物訴権,敷金返還請求権の放棄,将来債権売買の解除,工作物責任と減額 | 38 | 6 |
| 民事系第2問(商法) | 自己株式の取得と処分,財源規制,株主・取締役の責任 | 36 | 9 |
| 民事系第3問(民事訴訟法) | 権利自白の撤回,債権者代位訴訟への参加,共同相続人による認諾・放棄 | 33 | 6 |
| 刑事系第1問(刑法) | 反撃・追跡・振落としにおける正当防衛と過剰防衛,共犯 | 28 | 7 |
| 刑事系第2問(刑事訴訟法) | 別件逮捕・勾留と本件拘束,捜査報告書とメールの伝聞・再伝聞 | 21 | 6 |
| 合計 | 主要7科目・7問 | 212 | 45 |
第3 各問題の概要と重み5の事項
番号は,各科目の記事の公開評価表の通し番号である。
同じ番号でも科目が異なれば別の項目を指す。
条件付き項目は,子記事が示す適用条件を括弧内に示す。
各項目の根拠箇所と重み付けの説明は,科目別記事の評価表及び分布の節を参照されたい。
1 公法系第1問(憲法)
地図と対応する街路・住居の画像を提供するX社が,生活状況の分かる画像の修正を求められ,改善勧告を経てシステム提供の中止を命じられた事案である。
設問1はX社代理人として訴訟を簡潔に特定し,X社自身の憲法上の主張を組み立てる。
設問2では被告の反論を想定し,生活画像の公表を規制することの合憲性について私見を示す。
所定の行政手続が適正であるとの前提で,個別の規制対象の明確性と一般的な文言批判を区別する。
重み5は4項目である。
番号3:情報・事実の流通を妨げられない自由を表現の自由として構成し,その保護の理由を説明する
番号8:公道で一時的に見られることと,ネットで広く反復して閲覧されることの差を,具体的な侵害の範囲・程度に結び付ける
番号13:氏名等が分からなくても,どの家の居住者の情報かを把握できることから保護利益への影響を説明する
番号14:生活画像の公表を規制することの合憲性を,情報価値と具体的な私生活上の被害の調整から論じ,中止が過剰との指摘だけで処分審査を終えない
記事:平成23年司法試験公法系第1問(憲法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した25項目と5段階の重み付け(AI作成)
2 公法系第2問(行政法)
場外発売場の設置許可の基礎となった自治会同意の決議に疑いが生じ,学校法人と近隣住民が争う一方,大臣が同意書の再取得と許可取消しを検討する事案である。
設問1はT市に助言する第三者として原告適格に絞る。
設問2(1)はAの取消前救済の有意な二候補を比較し,仮の救済を除いて最適な訴えを選ぶ。
設問2(2)は大臣の要求・取消措置を,設問3は提示された①②以外の追加条例規定を検討する。
重み5は7項目である。
番号1:第三者原告の法律上の利益を,行訴法9条1・2項に即した判断枠組みで示す
番号11:本件許可の取消処分の差止めを,取消前救済の候補として正確に挙げる
番号14:取消しのおそれの除去という目的への直接性・実効性を比較して,最も適切な訴えを理由付きで選ぶ
番号15:刑法上の違法性を阻却する許可の特殊性を,許否裁量を考える制度的理由として論じる
番号18:同意を許可段階で要求・考慮できるかを,法令の裁量と通達の合理性から実質的に判断する
番号24:許可拒否と許可後の職権取消しを分け,取消しの公益とAの信頼保護を具体的に比較する
番号29:憲法94条等を基礎に,モーターボート競走法・建築基準法等と条例の抵触可能性を具体的に検討する
記事:平成23年司法試験公法系第2問(行政法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した31項目と5段階の重み付け(AI作成)
3 民事系第1問(民法)
賃貸建物の工事代金が未払のまま建物が売却され,将来賃料の売買,賃貸借の合意解除と敷金返還請求権の放棄,内覧時のエレベーター事故が続く事案である。
設問1では民法248条に基づく請求を扱わず,敷金返還債務はGに承継されていないものとし,AのCに対する支払拒絶に合理的な理由はないとする。
1(1)は転用物訴権,1(2)はFからの回収を不当利得以外の構成で検討する。
設問2は売買と合意解除を有効とした上で解除根拠を一つ選び,敷金と損害賠償を除く。
設問3は施工者・占有者・所有者の責任と,加齢による機能低下や疲労を理由とする減額の可否を検討する。
全設問で利息及び遅延損害金は扱わない。
重み5は6項目である。
番号4:法律上の原因をAB賃貸借全体の対価関係で判断する
番号8:放棄を債務免除と捉えてFを相手に424条を行使する(適用条件:債務免除構成を採用)
番号14:Fが負う契約上の義務を具体的に定立する
番号26:事故時の直接占有者Aを責任主体として検討する
番号28:A・Fの占有者責任と所有者責任を注意による免責と関係付ける
番号31:疾患と疾患に至らない身体的特徴を区別する
記事:平成23年司法試験民事系第1問(民法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した38項目と5段階の重み付け(AI作成)
4 民事系第2問(商法)
上場会社が特定株主から自己株式を取得して別会社へ処分した後,分配可能額の計算の基礎となった貸借対照表に架空売上げがあったと分かった事案である。
設問①は通知の欠缺,売主の議決権行使及び財源規制を分けて取得の効力を論じ,会社と売主との法律関係を検討する。
設問②は処分の効力,設問③は代表取締役の会社法上の責任を扱う。
先行取得の瑕疵とその後の処分との関係は,採った取得の効力の構成に応じて論じる。
重み5は9項目である。
番号4:通知の欠缺と本件自己株式取得の効力との関係を理由付きで論じる
番号9:正しい貸借対照表(資料③)から分配可能額を5億円と算出する
番号11:財源規制違反と取得の効力との関係について,無効説・有効説のいずれかを理由付きで採る
番号12:三つの瑕疵ごとの検討を踏まえ,取得全体の効力を論理的に一貫させる(財源規制違反の有効説だけを理由に他の瑕疵を処理しない)
番号13:取得の効力にかかわらず,Bが462条1項により受領した25億円全額の支払義務を負うことを示す
番号16:甲社の乙社への処分と乙社の市場売却を踏まえ,Bが主張する同時履行の抗弁権を検討する
番号27:有効に取得されていない自己株式を処分したことが無効原因となるかを論理的に検討する(適用条件:取得を無効とする構成を採る場合のみ)
番号28:本件自己株式取得に関する職務を行ったCの462条1項の責任を示す
番号30:462条とは別に,Cの465条1項3号の欠損塡補責任を示す
記事:平成23年司法試験民事系第2問(商法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した36項目と5段階の重み付け(AI作成)
5 民事系第3問(民事訴訟法)
債権者代位による移転登記請求訴訟での所有権の陳述と別の債権者の参加,及び別訴で共同相続人の一人が行った認諾・放棄が問われる。
設問1は陳述③を権利自白とした上で,Bと代理人Pの立場から撤回制限を基礎付ける。
設問2は権利主張参加と共同訴訟参加を検討し,詐害防止参加を除く。
設問3は指定された受継・請求を前提に,判例に沿った個々の効力,両者を組み合わせたときの問題,自ら採る構成を示す。
重み5は6項目である。
番号4:裁判所への効力により相手方が得た立証不要の有利な地位を,撤回によって覆すことを制限するという順序で論証する
番号6:原始取得とその後の全承継取得の主要事実を遡る主張・立証の困難から,争いのない所有者を起点とする必要を具体的に説明する
番号14:同一訴訟物でも担当者の原告適格が非両立なら権利主張参加を認め得ることを,債務者参加の判例の構造から説明する
番号19:被担当者Aを経由して他の担当者へ既判力が反射的に及ぶとの立場では,その経路を示して合一確定を基礎付ける(適用条件:反射的効力により共同訴訟参加を基礎付ける答案)
番号21:他の担当者への効力拡張によらない立場では,Aに相矛盾する既判力が生ずることを避ける必要から合一確定を論証する(適用条件:被担当者Aにおける既判力矛盾の回避により基礎付ける答案)
番号28:判例に従うとMが乙土地の共有者と確定しながらNへの明渡義務を負うという同一人についての実体法上の矛盾を具体的に示す
記事:平成23年司法試験民事系第3問(民事訴訟法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した33項目と5段階の重み付け(AI作成)
6 刑事系第1問(刑法)
甲の先行暴行,乙と丙の反撃,甲の逃走後の乙の追跡と切付け,車に逃れた甲による乙の振落としを時系列で検討する問題である。
甲・乙・丙の刑事責任を,問題文が与えた認識と行為経過に即して論じ,特別法違反は除く。
反撃時点と追跡後を区別し,正当防衛,過剰防衛及び共犯の成否・範囲を検討する。
重み5は7項目である。
番号2:甲の振り落としについて,車高・速度・距離・蛇行・路面から殺人の実行行為性を検討する
番号3:甲の危険事情の認識と振り落とす意思から,未必の殺意の有無を理由付きで認定する
番号7:乙の凶器喪失後の侵害と振り落としの危険を比較し,防衛手段の必要性・相当性を判断する
番号9:甲の先行暴行が後の侵害を招いた点につき,自招侵害による防衛制限の成否を検討する
番号12:助けを求めた丙,これに応じた乙,相互の加勢の経緯から黙示の現場共謀を認定する
番号17:第1・第2場面の乙の行為につき,時間・場所の連続性,侵害継続,防衛意思から一体の量的過剰防衛かを検討する
番号20:適法な共同防衛の後は,離脱の有無だけでなく,後行の報復傷害について新たな共謀があるかを検討する
記事:平成23年司法試験刑事系第1問(刑法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した28項目と5段階の重み付け(AI作成)
7 刑事系第2問(刑事訴訟法)
殺人・死体遺棄の捜査で浮上した甲と乙について,先行する別件拘束と後続の本件逮捕が問題となり,捜査報告書に添付されたメールの証拠能力も問われる。
設問1は四つの逮捕と後続拘束の適否を個別に検討する。
逮捕②の逮捕者については,子記事が司法試験委員会の公表資料を踏まえて二つの読み方を区別し,主に現認者Qと逮捕者Pを分ける構成を採る。
設問2では弁護人の不同意を前提に,指定された立証趣旨ごとに報告書全体と添付資料中の供述の層を分ける。
重み5は6項目である。
番号1:別件逮捕・勾留の適法性を判断する基本的立場を示し,事件単位の令状審査と拘束期間制限から理由付ける
番号10:先行する別件拘束と本件拘束の関係を採用説に即して説明し,実質的に同一被疑事実の拘束の蒸し返しとなるかを甲乙別に検討する(適用条件:採用説から先行拘束と本件拘束を接続することを評価し,実質同一性を否定する説へ肯定説の結論を要求しない)
番号11:両報告書全体を検証結果記載書面に準じるものと捉え,刑訴法321条3項により作成者Pの公判廷での真正作成供述を要すると説明する
番号16:Bに遺棄の手伝いを求める甲乙の発言は,内心の状態又は共謀の構成事実を示す使用では,内側の発言自体は非伝聞となると理由付ける
番号17:殺人告白はBのメールを外側とする再伝聞であり,刑訴法324条の趣旨を供述代用書面へ及ぼす根拠を述べ,各層の例外を検討する
番号20:資料2添付の催促と返信は,一連の交信の存在と内容を情況証拠として用いるため非伝聞とし,立証趣旨を存在と内容へ分断せず関与への推認を説明する
記事:平成23年司法試験刑事系第2問(刑事訴訟法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した21項目と5段階の重み付け(AI作成)
第4 7記事に共通する作り方
1 評価項目の抽出
各記事は出題の趣旨・採点実感を手掛かりに,一つの行に一つの判定対象を置き,答案上で検討できる形に具体化している。
出典欄は対応する公式資料の箇所を示すものであり,一般的な記述から具体化した項目と,対象範囲に直接の記述を確認できなかった項目は区別される。
2 5段階の重み付け
共通の目安は,5が設問の判断を大きく分ける核心,4が結論を理由付きで支える主要な論証・当てはめ,3が通常押さえる法的処理・事情の評価,2が論証を補強する説明・個別事情・誤りの注意,1が補充的な引用・記述範囲の確認である。
4は,出題の趣旨と採点実感の両方に現れることを要件としない。
憲法では法的な入口と対立利益の捉え方,刑事訴訟法では前後の拘束のつながりや供述の層と要証事実の区別が,5と4を分ける説明に現れている。
表は各記事が付けた重みを集計したものであり,科目横断で個々の項目を付け直していない。
注意は誤りを避けるための項目である。
許容分岐や適用条件のある項目は,該当する立場や前提を採る場合に読む。
民事訴訟法の番号19・21のように別々の構成に対応する行は,一つの答案へ累積して要求するものではない。
3 模範解答と解説
答案例は設問ごとに指定された立場,前提,除外事項を踏まえて構成されている。
子記事の答案と解説を続けて読むことで,選んだ構成と別の構成が許される箇所を区別できる。
第5 重みの分布の比較
| 科目 | 重み5 | 重み4 | 重み3 |
|---|---|---|---|
| 憲法 | 4 | 8 | 10 |
| 行政法 | 7 | 15 | 7 |
| 民法 | 6 | 20 | 11 |
| 商法 | 9 | 19 | 7 |
| 民事訴訟法 | 6 | 20 | 5 |
| 刑法 | 7 | 8 | 8 |
| 刑事訴訟法 | 6 | 11 | 4 |
| 合計 | 45 | 101 | 52 |
| 科目 | 重み2 | 重み1 | 項目数 | 重みの合計 |
|---|---|---|---|---|
| 憲法 | 2 | 1 | 25 | 87 |
| 行政法 | 2 | 0 | 31 | 120 |
| 民法 | 1 | 0 | 38 | 145 |
| 商法 | 1 | 0 | 36 | 144 |
| 民事訴訟法 | 2 | 0 | 33 | 129 |
| 刑法 | 3 | 2 | 28 | 99 |
| 刑事訴訟法 | 0 | 0 | 21 | 86 |
| 合計 | 11 | 3 | 212 | 810 |
本記事では,何を検討の入口とするか,そこからどこまで分けて論じるかに着目して重み5の項目を整理する。
例えば憲法の番号3は情報提供を保護される自由として構成する問題であり,民事訴訟法の番号19・21は採用する見解により合一確定の根拠を組み立てる問題である。
刑事訴訟法の番号16・17では,発言の使い方と供述の層によって伝聞の検討が分かれる。
重みの合計は,重みごとの項目数に各重みを掛けて足した値である。
項目の切り分け方や条件付きの行も反映するため,公式配点,答案の得点,科目間の難易度又は合格可能性に換算できない。
第6 関連記事
① 平成24年司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答と評価項目(AI作成)
② 令和7年度司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答と評価項目(AI作成)
③ 法務省HPの司法試験・予備試験の資料の所在―年度別の実施・結果・出題趣旨・採点実感のページ一覧(AI作成)
④ 司法試験の採点実感から学ぶ法律文書の書き方―準備書面・意見書・相談メモのチェックリスト(AI作成)
第7 出典
1 公式資料
① 法務省・平成23年新司法試験問題
② 法務省・平成23年新司法試験論文式試験出題の趣旨
③ 法務省・平成23年新司法試験の採点実感等に関する意見
④ 法務省・平成23年新司法試験の結果について
⑤ 司法試験委員会・平成23年新司法試験論文式試験刑事系科目第2問について
⑥ 司法試験委員会・平成23年新司法試験の実施日程等について
2 確認状態
本記事の数値は,令和8年11月6日時点の7子記事の公開評価表から,各重みの件数,項目数及び重みの合計を集計したものである。
本記事は,各科目の法的分析や公式資料との対応を改めて審査したものではない。
各問の検討範囲,根拠の頁,法令の基準時と裁判例の確認状態は,それぞれの子記事の出典及び確認状態を参照されたい。