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平成23年司法試験民事系第1問(民法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した38項目と5段階の重み付け(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

平成23年司法試験の民事系科目第1問(民法)について,法務省の出題の趣旨と採点実感から独自に抽出した38の評価項目と,5段階の重み,5000字以内の答案例を示す。
評価項目と重みは本記事独自の分析であり,法務省の公式採点基準,配点又は合格可能性の推計ではない。

項目内容
対象問題法務省・平成23年民事系問題PDFの第1問(PDF2頁~4頁)。
答案の基準時平成23年の試験時の民法を前提とする。平成29年の債権法改正(令和2年4月1日施行)後の条文を当時の答案へ持ち込まない。
資料の状態問題は確認済み(PDF2頁~4頁)。出題の趣旨はPDF3頁の民事系第1問の見出しから5頁の第2問の直前まで,採点実感はPDF11頁~14頁の民事系第1問全体を確かめた。
中心となる事項転用物訴権,敷金返還請求権の放棄と詐害行為取消権,将来債権売買の解除,工作物責任,素因減額。
評価項目全38項目。重み5は6項目。重みの合計は145。条件付きの別構成の項目を全答案へ累積要求しない。
裁判例最高裁平成7年9月19日判決(平成4年(オ)第524号,民集49巻8号2805頁)及び最高裁平成8年10月29日判決(平成5年(オ)第875号,民集50巻9号2474頁)。判決本文と書誌を裁判所HPで確認した(第7の3)。
答案の分量4030字(見出し・番号・空白を含み,改行だけを除外)。上限5000字。
確認日令和8年11月4日。法令の確認範囲は第7の2に示す。

本答案は,設問1(1)ではBの受益が法律上の原因を欠くことを否定し,CのBに対する不当利得返還請求による回収額を0円とする。
設問1(2)では,Aの敷金返還請求権の放棄を債務免除として詐害行為取消権により取り消し,回復した請求権の代位行使により700万円を回収する構成を採る。
設問2では,将来の賃料債権を発生した状態で帰属させる主たる給付義務の履行不能による解除を認め,代金2000万円の返還を導く。
設問3では,A・Fの工作物責任とDの不法行為責任を検討し,加齢による身体機能の低下と疲労の蓄積を理由とする減額を否定する。
各設問の結論を唯一の正解とするものではない。

事実と設問の整理,評価項目の一覧,答案本文,設問ごとの解説の順に参照されたい。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

一つの評価項目には,一つの判定対象を置いた。
表の頁はPDFファイルの先頭から数える頁であり,両公式資料の対象範囲から根拠箇所と短い語句を示す。
「記載なし」は当該範囲を読んだ上で具体的な記載を確認できないこと,「間接・要件具体化」は一般的な記載から本記事が導いたことを意味する。

主たる給付義務と付随義務,旧543条と旧541条,債務免除と偏頗弁済という別構成は,全てを一つの答案に累積して要求しない。
【適用条件】が付く行は,その構成を採った場合に限って評価する。
答案全体の行と設問別の行が同じ不足を捉える場合には,同じ不足を二重に評価しない。

2 5段階の重み付けの基準

重み5:設問の判断を大きく分ける核心。

重み4:結論を理由付きで支える主要な論証・当てはめ。

重み3:通常押さえる法的処理・事情の評価。

重み2:論証を補強する説明・個別事情・誤りへの注意。

重み1:補充的な引用・記述範囲の確認。

重みは設問内での役割から各項目を個別に判断した。
両公式資料に登場するという件数だけで重みを決めず,段階ごとの件数も割り当てていない。

第3 本問の概要

1 問題文と事実関係

問題の全文は,法務省の民事系問題PDFに掲載されている。
本記事の要約だけでなく,設問の指定・仮定の文言を確認されたい。

B所有の甲建物を賃借したAが,Cに内装工事を,Dにエレベーター設備の更新工事を請け負わせた。
AはCへの残代金2500万円とBへの賃料を支払わず,Bは甲建物と乙土地をFに売却した。
Fは平成23年分の賃料債権をGに売却した後,無資力となったAとの間で賃貸借を合意解除し,AはFに対する敷金返還請求権を放棄した。
明渡し前の内覧の際にHがエレベーター内で転倒して骨折し,その原因にはDのボルトの締付け不足のほか,Hの加齢による身体機能の低下と疲労の蓄積も含まれていた。

時点権利・事実
平成22年2月7日AのCへの残代金2500万円が未払
同年8月1~2日BからFへ売買・登記。敷金2500万円からBへの滞納1200万円を控除し1300万円を承継
同年9月1~2日Fが平成23年の賃料2400万円をGへ2000万円で売却,通知
同年10月3日Aの無資力をFが知って合意解約・敷金請求権放棄
同年10月12日Aが明け渡す前にHが事故に遭う
同年10月31日賃貸借終了・明渡し。Fへの滞納600万円控除後の敷金残額700万円
平成23年4月1日Gが1~3月の賃料600万円を求めるがAは不発生を主張

2 設問が求めること

設問立場・対象指定・仮定・除外到達点
1(1)CからBへの不当利得返還事実1~11・15。Cへの支払拒絶に合理的理由なし,248条を除外。Cの請求とBの反論,回収額
1(2)CからFへの回収不当利得以外。Gは敷金返還債務を引き受けない。取消対象・保全構成・反論・700万円という限度
2GによるFG債権売買の解除事実1~11。売買及びAF合意解約は有効。一つの根拠を選択。敷金・損害賠償は除外。Fの債務,解除条文の全要件,2000万円返還
3(1)Hの賠償請求事実1~14。施工者・直接及び間接占有者・所有者を識別。相手方ごとの責任と反論
3(2)加齢性機能低下と疲労寄与の事実と法的な減額事由を区別。減額可否と理由

第4 評価項目と重み

1 設問1(1)―転用物訴権

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1Bの受益の捉え方と具体的数額を示す4PDF4頁「具体的な数額を示すことが求められる」PDF12頁「Bの受益及びCの損失」
2Cの労務に伴う損失を未回収2500万円として特定する3PDF4頁「残代金2500万円」PDF12頁「Bの受益及びCの損失」
3Aの無資力によりB受益がCの労務に由来する関係を説明する4PDF4頁「Aの無資力により」PDF12頁「Bの受益とCの損失との間の因果関係」
4法律上の原因をAB賃貸借全体の対価関係で判断する5PDF4頁「AB間の賃貸借契約を全体として見たときに」PDF12頁「Bの受益が法律上の原因を欠くこと」
5相場賃料との差額7200万円等を対価関係に結び付ける4PDF4頁「相場よりも7200万円少ない」記載なし
6Bの反論を踏まえて返還可否・範囲を結論付ける3間接・要件具体化:PDF3頁「諸事実を各々の要件に結び付けて」記載なし

2 設問1(2)―敷金返還請求権の放棄と責任財産の保全

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
7Cの2500万円の残代金債権を被保全債権として特定する3PDF4頁「2500万円の請負残代金債権を被保全債権」記載なし
8放棄を債務免除と捉えてFを相手に424条を行使する【適用条件:債務免除構成を採用】5PDF4頁「敷金返還債務の免除であると捉える考え方」PDF11頁「敷金返還債務の免除であると捉え」
9無資力と責任財産の減少から詐害性を判断する【適用条件:債務免除構成を採用】4間接・要件具体化:PDF4頁「民法第424条が定めるそのほかの要件」PDF11頁「それが債権者Cの債権を害する」
10債権先行性及び財産権行為性を確認する【適用条件:債務免除構成を採用】3間接・要件具体化:PDF4頁「民法第424条が定めるそのほかの要件」間接・要件具体化:PDF11頁「他の要件について検討」
11Aの詐害意思とFの悪意を事実から示す【適用条件:債務免除構成を採用】4間接・要件具体化:PDF4頁「民法第424条が定めるそのほかの要件」間接・要件具体化:PDF11頁「他の要件について検討」
12放棄を将来賃料相当の損害賠償債権への充当と捉え偏頗弁済の詐害性を検討する【適用条件:損害賠償債権への充当構成を採る場合のみ】4PDF4頁「一部の債権者への偏頗弁済」記載なし
13不当利得以外という指定を守る3記載なしPDF12頁「不当利得返還請求について解答する答案」

3 設問2―将来債権売買の解除

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
14Fが負う契約上の義務を具体的に定立する5PDF4頁「売主はどのような義務を負うか」PDF12頁「将来債権売買契約の売主は買主に対してどのような義務を負うか」
15主給付義務構成で将来債権が不発生となる危険を評価する【適用条件:主給付義務構成を採用】4PDF4頁「将来債権売買契約の特性」記載なし
16付随義務構成で価値維持義務の根拠とFの発生支配地位を示す【適用条件:付随義務構成を採る場合のみ】4PDF4頁「何を根拠に認められるか」記載なし
17義務は将来債権を帰属させるだけとの反論に応答する4PDF4頁「売主の義務は買主に将来債権を帰属させることであるにとどまるとする反論」記載なし
18選んだ解除条文を明示する3PDF4頁「民法第543条」PDF12頁「規定を指摘」
19543条構成における全部又は一部の履行不能を当てはめる【適用条件:543条構成を採用】4PDF5頁「履行不能となっていること」PDF12頁「履行の全部又は一部の不能」
20543条構成でFの帰責事由を無資力等の反論も踏まえて判断する【適用条件:543条構成を採用】4PDF5頁「Fの帰責事由」PDF12頁「債務者の責めに帰することができない事由」
21付随義務違反が解除に値する重大性を有するか判断する【適用条件:付随義務+543条構成を採る場合のみ】4PDF5頁「解除に値する程度に重大」記載なし
22541条構成に対応する催告等の要件と事実を検討する【適用条件:541条構成を採る場合のみ】3PDF5頁「民法第541条に基づく解除」記載なし
23売主義務の内容と解除要件・結論を一貫させる4間接・要件具体化:PDF3頁「論理的に一貫した論述」PDF12頁「要件の充足についての検討とが一貫しない」

4 設問3(1)―工作物責任と請負人の責任

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
24土地の工作物の意味を示し固定設備の昇降機へ適用する3PDF5頁「土地の工作物及び設置又は保存の瑕疵」間接・要件具体化:PDF13頁「土地の工作物に関する」
25設置保存の瑕疵を通常の安全性欠如と捉えボルトの不備へ適用する3PDF5頁「ボルトが十分に締められていなかった」記載なし
26事故時の直接占有者Aを責任主体として検討する5PDF5頁「直接占有者であるA」PDF13頁「直接占有者であるAを取り上げず」
27Fを間接占有者及び所有者として検討する4PDF5頁「その間接占有者であり」PDF13頁「間接占有者であり所有者であるF」
28A・Fの占有者責任と所有者責任を注意による免責と関係付ける5PDF5頁「責任の法的な性質」PDF13頁「占有者の責任と所有者の責任の関係」
29Dが契約相手以外の第三者にも安全の注意義務を負うと理由付ける4PDF5頁「注文者以外の第三者の安全」PDF13頁「請負人であるDを取り上げて適切な検討を行う」
30Dのボルト締付け義務違反とHの受傷との因果関係を示す3PDF5頁「違反があるかどうか」記載なし

5 設問3(2)―身体的素因と減額

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
31疾患と疾患に至らない身体的特徴を区別する5PDF5頁「疾患にまで至らない身体的特徴」PDF13頁「小問(2)について,適切な解答をする」
32722条2項の公平な損害分担の趣旨から調整の基準を示す4PDF5頁「過失相殺(民法第722条第2項)の趣旨」記載なし
33Hの身体機能低下を疾病なし等の事実に即して法的に評価する4PDF5頁「Hの身体機能の低下及び疲労の蓄積」記載なし
34Hの疲労蓄積を機能低下と併せて評価し減額の結論を示す4PDF5頁「賠償額を減額することの可否」PDF13頁「小問(2)について,適切な解答をする」

6 答案全体

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
35要件に具体的事実を結び付けて丁寧に論証する4間接・要件具体化:PDF3頁「具体的な事実を法的な観点から評価」PDF13頁「要件に当てはまる具体的事実を拾い上げる」
36論理の一貫性と構成の明快さを保つ4PDF3頁「論理的に一貫した論述」PDF11頁「構成の明快さ」
37設問を正確に理解し指定・除外を守る3記載なしPDF13頁「〔設問〕で何が問われているかを正確に理解」
38設問別分量を4対3対3の配点割合に照らして点検する2記載なしPDF13頁「4:3:3」

7 重みの分布

重み5は6件,重み4は20件,重み3は11件,重み2は1件,重み1は0件であり,合計38項目,重みの合計は145である。
この合計を実際の配点又は答案の得点へ換算することはできない。

設問別では,設問1が13項目・49点,設問2が10項目・39点,設問3が11項目・44点,答案全体が4項目・13点である。
各設問には採らなかった構成でだけ評価する条件付きの項目が含まれるため,この比を配点の割合(4:3:3)と直接比べることはできない。
条件付きの項目も分布には含めるが,採らなかった構成の項目は,その答案の評価から外す。

重み5は,AB間の賃貸借全体の対価関係による法律上の原因の判断(番号4),敷金返還請求権の放棄を債務免除と捉えた詐害行為取消し(番号8),将来債権の売主Fが負う義務の定立(番号14),直接占有者Aの工作物責任(番号26),占有者の責任と所有者の責任の関係(番号28),疾患と疾患に至らない身体的特徴の区別(番号31)の6項目とした。
いずれも,その後の要件の検討と結論を左右する点を重視した。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

平成23年の試験時の民法を前提とする。
平成29年の債権法改正後の543条等の内容を,当時の規定として用いていない。
答案中の「旧」は,平成23年当時の条文であることを示す。
設問1(2)は債務免除構成,設問2は主たる給付義務の履行不能という一つの構成を採る。

答案には評価項目の番号や判例の書誌を入れず,別構成は枠外の解説で説明する。
答案は見出し・番号・空白を含み,改行だけを除いて4030字である。

2 答案

第1 設問1

1 小問(1)

 Cは,Bに対し,民法703条に基づいて,未回収の工事残代金2500万円に相当する不当利得の返還を請求する。
そのためには,Bの受益,Cの損失,両者の因果関係及び法律上の原因の欠如が必要である。

 受益は,Bが所有する建物に,代金5000万円相当の内装工事の労務が投下され,同額相当の改装支出を免れたことと捉える。
Cは5000万円相当の工事を提供したが半額しか回収しておらず,損失は2500万円である。
Bが建物を1億6000万円で売却したことも利益の現実化を示すが,改装前からの6000万円の増価にはDのエレベーター工事の寄与も含まれるから,増価全部をCの工事による受益とするべきではない。

 Bは,工事代金を負担するのはAであり,Cの損失はAに対する代金債権で補われていると反論する。
しかし,その債権はAの無資力により2500万円について無価値となっている。
そうすると,Aの財産を通じて対価を得る予定が失われた限度で,Bの工事利益はCの財産・労務の犠牲に由来すると評価でき,因果関係を認められる。

 もっとも,転用利益の返還は,AB間の賃貸借を全体としてみて,Bが対価関係なしに利益を受けた場合に限られる。
Bが利益に相応する出捐・負担をしていれば,更にCへの返還を負わせることは二重負担となるからである。

 Bは,改装後の適正賃料が月400万円以上であることを双方が知りながら,工事費A負担,工事部分の所有権B帰属及び明渡時の費用請求排除と一体として,3年間月200万円で賃貸した。
相場との差額は月200万円,36か月で7200万円となり,内装及びエレベーターの工事費合計7000万円に相応する。
したがってBは,工事利益に対応した賃料上の負担を引き受けたと反論できる。

 Cは,Bが自らは改装するつもりでなかったのに工事利益と売却代金を取得し,実際には3年間賃貸し続けてもいないと主張できる。
しかし,Bの改装意思の有無やAの不払,早期の契約終了によって,当初の対価関係が当然に失われるわけではない。
現実の未収賃料だけを取り出して無償の受益とするのは相当でない。
よって,Cの主張し得る損失の上限は2500万円であるが,法律上の原因の欠如を認められず,Bから回収できる額は0円となる。

2 小問(2)

 Cは,Aの敷金返還請求権の放棄を取り消した上で,回復した請求権を代位行使する。

 敷金2500万円からBに対する2月ないし7月の未払賃料1200万円が控除され,Fが承継した敷金返還債務は1300万円である。
さらに,Fに対する8月ないし10月の未払賃料600万円が,賃貸借終了・明渡しの時点で敷金から控除されるため,返還されるべき残額は700万円となる。
Gは敷金返還債務を引き受けていない。

 ところが,AはFに対する返還請求権を放棄した。
これはFの債務を免除する財産権処分である。
Cは,旧424条により,受益者Fを被告としてその取消しを裁判上請求する。

 Cの残代金債権2500万円は放棄前に発生している。
Aは無資力であるのに,精算後に残る価値ある敷金返還請求権を対価なく失わせ,Cへの弁済に充てる責任財産を減少させた。
放棄時にまだ明渡し前であっても,将来の残額請求権を処分している以上,詐害性は否定されない。

 Aは自己の無資力とCへの不払を知り,FもAからこれらの事情を告げられていたから,詐害意思及び受益者の悪意が認められる。
Fは合意解約に伴う放棄であり有効だと反論するが,合意解約自体の有効性は,無償の債務免除について債権者を保護する必要を失わせない。
本件の放棄は債務免除と捉え,Aの他の債務に対する弁済とは構成しない。

 取消しによって回復した請求権について,Cは旧423条によりAに代位する。
Cの金銭債権は弁済期にあり,Aの無資力及び権利不行使により保全の必要がある。
敷金返還請求権は一身専属権でなく,10月31日の賃貸借終了・明渡しにより精算後の残額を行使できる。
Fの未払賃料控除の反論は前記計算の限度で認められるが,放棄の反論は取消しにより排斥される。
したがってCはAに代位して自己への支払を求め,700万円を回収できる。

第2 設問2

1 Gは,Fの主たる給付義務の履行不能を理由に,旧543条による解除を主張する。

 将来債権売買における売主の義務は契約解釈による。
Fは,存続中の賃貸借に基づく平成23年の賃料2400万円を2000万円で売却した。
目的債権の発生には不確実性があり,FがAの資力や一切の発生障害を保証したとはいえない。
しかし,F自身が賃貸人として発生の基礎を左右できるのに,単に将来発生した債権をGに帰属させれば足りるとすると,Fは代金を得ながら自由にその発生を妨げられることになる。

 借入金の早期返済のために将来の賃料収入を売却して資金を得たという契約の目的からも,そのような自由までGが認めたとは解し難い。
Fの主給付義務は,将来の賃料債権が発生した状態でGに帰属する状態を実現する義務であり,少なくとも自己の任意の合意解除によって発生を妨げない拘束を含む。
これは資力保証を付加するものではない。

2 合意解除は有効であり,平成22年10月31日に賃貸借は終了した。
平成23年の賃料債権は全く発生せず,AはGに1月ないし3月の600万円を支払う義務を負わない。
FがAとの賃貸借を一方的に復活させることはできず,対象全期間について前記の給付状態を実現することは社会通念上不能となった。

 Fは,旧569条によればAの資力を担保しておらず,Aが無資力となり転借人も見付からない以上,Gはもともと回収できなかったと反論する。
しかし,支払能力の危険と債権自体を不発生にする行為は異なる。
Aの無資力は将来賃料債権の発生を当然には妨げない。
Gが資力の危険を引き受けたことから,Fの任意の発生阻害まで免責されるわけではない。

 FはGへの売却を認識しながら,Gと調整せずAの要望に応じて合意解除した。
Gはどうせ回収できないという自己の判断だけで,売買した債権を失わせることは正当化できない。
賃料不払を理由にAとの契約を終了する利益があっても,FG間で負担した義務が当然に消えるものではない。
よって,履行不能につきFの帰責事由が認められる。

3 対象全期間の債権が不発生となり売買の目的を達成できない。
全部履行不能であるから催告を要せず,Gが解除の意思表示をすれば売買は解除される。
Fは旧545条1項に基づく原状回復として,受領した2000万円をGに返還する。

第3 設問3

1 小問(1)

 Hは,まずA及びFに717条1項の工作物責任を追及できる。
土地の工作物とは土地に接着して人工的に作られた設備をいい,建物に固定されたエレベーターはその一部としてこれに当たる。
設置・保存の瑕疵とは通常備えるべき安全性の欠如であり,複数のボルトを締め忘れた状態は設置の瑕疵に当たる。
そのため急激な動作が生じ,Hが転倒して骨折したから,瑕疵と損害との因果関係もある。

 同条の占有者には,工作物の管理を直接行う者だけでなく,間接に支配して瑕疵を修補し危険を除去し得る者も含まれる。
事故日の10月12日は明渡し前であり,Aは直接占有者である。
Fも,Aを通じて建物を占有し,賃貸人として修繕する地位を有する間接占有者である。
Fは直接占有者Aがいるから責任はAだけにあると反論しても,占有者は複数併存し得るため,その理由だけでは免責されない。

 占有者は損害防止に必要な注意をしたと立証すれば免責されるが,専門業者Dに発注したことのみで当然に必要な注意を尽くしたとはいえない。
A及びFについて,設備の点検や危険防止措置等を具体的に検討すべきであり,その立証がない限り各自の占有者責任が認められる。
これらの占有者が必要な注意を尽くした場合にも,所有者Fが同項ただし書の無過失責任を負う。
Hは,AとFの占有者責任と,占有者の免責に備えたFの所有者責任を関係付けて主張できる。

 次に,Dに709条の責任を追及できる。
エレベーターは第三者の利用が当然予定される設備であり,設置請負人は,契約の相手方以外の利用者に対しても,その生命身体を危険にさらす瑕疵を作出しない注意義務を負う。
Dはボルトの締付け・確認を怠り,重大な事故の危険を生じさせ,その危険がHの骨折として現実化した。
したがって過失,身体侵害,損害及び因果関係が認められる。
HとDに契約関係がないとの反論は妨げとならない。

 Aの717条の責任はDの行為についての使用者責任ではなく,716条の注文者免責によって当然には排除されない。
Dと工作物責任を負う者の責任が重なっても,同一損害の二重填補を受けることはできない。

2 小問(2)

 被害者の疾患が加害行為と共に損害を発生・拡大させ,全損害を加害者に負担させることが公平を失するときは,公平な損害分担を趣旨とする722条2項の類推適用による減額が問題となる。
しかし,疾患に至らない身体的特徴は,通常人の間に存在する個性として原則的に受け入れるべきものであり,特段の事情がない限り減額に用いるべきではない。

 Hの機能低下は加齢によるもので,定期検査でも疾病は発見されず,医師からも無理をしなければ日常生活に支障がないと説明されている。
したがって,疾病としてではなく通常の身体的特徴として評価すべきである。

 看病による疲労も,疾病と同視すべき程度であるとの事情はなく,通常のエレベーター利用の危険を認識させるものでもない。
看病や疲労があること自体を具体的な注意義務違反として過失相殺することもできない。
加齢性の機能低下と疲労が共に受傷に寄与したとしても,それだけでは全損害を賠償させることが公平を失する特段の事情とはいえない。
よって,これらを理由とする賠償額の減額は認められない。

以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 答案と評価項目の対応

答案第1の1は第4の番号1~6,第1の2は番号7~13,第2は番号14~23,第3の1は番号24~30,第3の2は番号31~34に対応する。
番号35~38は答案全体の記述と分量を確認する項目である。
重み3以下で条件の付かない番号2・6・7・13・18・24・25・30・37・38も,各設問の論述に対応する。
番号12・16・21・22は答案で採らなかった構成の項目であり,解説で位置付ける。

第4の重み5・4の項目及び条件付きの項目について,模範解答との対応を次の表に示す。

番号重み評価項目答案の該当箇所・留保
14Bの受益の捉え方と具体的数額を示す答案第1の1。支出節約として5000万円を明示し,売却増価6000万円の帰属を区別。
34Aの無資力によりB受益がCの労務に由来する関係を説明する答案第1の1。A債権の無価値化からCの犠牲への帰属を説明。
45法律上の原因をAB賃貸借全体の対価関係で判断する答案第1の1。
54相場賃料との差額7200万円等を対価関係に結び付ける答案第1の1。
85放棄を債務免除と捉えてFを相手に424条を行使する【適用条件:債務免除構成を採用】答案第1の2。放棄を債務免除と明示。
94無資力と責任財産の減少から詐害性を判断する【適用条件:債務免除構成を採用】答案第1の2。
103債権先行性及び財産権行為性を確認する【適用条件:債務免除構成を採用】答案第1の2。
114Aの詐害意思とFの悪意を事実から示す【適用条件:債務免除構成を採用】答案第1の2。
124放棄を将来賃料相当の損害賠償債権への充当と捉え偏頗弁済の詐害性を検討する【適用条件:損害賠償債権への充当構成を採る場合のみ】本答案では採らない(債務免除構成を選択)。適用外であり,欠落として減点しない。
145Fが負う契約上の義務を具体的に定立する答案第2。主たる給付義務とその履行のための不作為拘束を区別。
154主給付義務構成で将来債権が不発生となる危険を評価する【適用条件:主給付義務構成を採用】答案第2。
164付随義務構成で価値維持義務の根拠とFの発生支配地位を示す【適用条件:付随義務構成を採る場合のみ】本答案では採らない(主給付義務構成を選択)。適用外である。
174義務は将来債権を帰属させるだけとの反論に応答する答案第2。発生済み債権の譲渡だけで足りるとの反論を検討。
194543条構成における全部又は一部の履行不能を当てはめる【適用条件:543条構成を採用】答案第2。
204543条構成でFの帰責事由を無資力等の反論も踏まえて判断する【適用条件:543条構成を採用】答案第2。
214付随義務違反が解除に値する重大性を有するか判断する【適用条件:付随義務+543条構成を採る場合のみ】本答案では採らない(付随義務構成を採らない)。適用外である。
223541条構成に対応する催告等の要件と事実を検討する【適用条件:541条構成を採る場合のみ】本答案では採らない(543条構成を選択)。適用外である。
234売主義務の内容と解除要件・結論を一貫させる答案第2。
265事故時の直接占有者Aを責任主体として検討する答案第3の1。
274Fを間接占有者及び所有者として検討する答案第3の1。Fの間接占有を独立検討。
285A・Fの占有者責任と所有者責任を注意による免責と関係付ける答案第3の1。占有者の併存と所有者責任を条件付きで接続。
294Dが契約相手以外の第三者にも安全の注意義務を負うと理由付ける答案第3の1。
315疾患と疾患に至らない身体的特徴を区別する答案第3の2。
324722条2項の公平な損害分担の趣旨から調整の基準を示す答案第3の2。
334Hの身体機能低下を疾病なし等の事実に即して法的に評価する答案第3の2。
344Hの疲労蓄積を機能低下と併せて評価し減額の結論を示す答案第3の2。
354要件に具体的事実を結び付けて丁寧に論証する答案全体。
364論理の一貫性と構成の明快さを保つ答案全体。

(2) 設問1(1)

出題の趣旨は,受益の捉え方と具体的数額,未回収の労務提供に相当する損失,Aの無資力を介した因果関係,AB間の賃貸借全体の対価関係による法律上の原因の判断を求めている(PDF4頁)。
採点実感は,受益と損失だけでなく,因果関係と法律上の原因の欠如まで適切に答えたかによって評価が分かれることを示している(PDF12頁)。
本答案は支出の節約としての5000万円を受益とし,Aの無資力で代金債権が無価値となった限度で因果関係を認めた上で,賃料の相場との差額7200万円と工事費合計7000万円を比較する(番号1~6)。

売却による増加額相当額を受益と捉える考え方も出題の趣旨が挙げるものであるが,甲建物の増価6000万円にはDのエレベーター工事の寄与も含まれるため,内装工事による部分を区別する必要がある。
Cの損失2500万円と受益額とを同じものとして説明しないよう注意を要する。
本答案は法律上の原因の欠如を否定するため,回収額を0円としている。
この判断は,最高裁平成7年9月19日判決(平成4年(オ)第524号,民集49巻8号2805頁)が,建物所有者が法律上の原因なく利益を受けたといえるのは賃貸借契約を全体としてみて対価関係なしに利益を受けたときに限られ,所有者が利益に相応する出捐ないし負担をしたときに返還を認めると所有者に二重の負担を強いる結果となるとした判示に沿う。

(3) 設問1(2)

出題の趣旨は,CのAに対する2500万円の請負残代金債権を被保全債権とし,受益者Fを被告とする詐害行為取消権の行使を検討することを求め,敷金返還請求権の放棄を敷金返還債務の免除と捉える考え方と,損害賠償請求権への充当と捉える考え方を挙げている(PDF4頁)。
採点実感は,免除と捉えて詐害性を認めながら他の要件を検討しない答案を良好の例にとどめ(PDF11頁),放棄されているから債権者代位により行使できないとだけ述べる答案や,不当利得返還請求について解答する答案を低く評価している(PDF12頁)。
本答案は放棄を債務免除と捉え,被保全債権の先行,財産権を目的とする法律行為であること,無資力と責任財産の減少,Aの詐害意思とFの悪意を順に論じる(番号7~11・13)。

放棄を将来賃料相当の損害賠償請求権への充当と捉える別構成では,偏頗弁済がどのような場合に詐害行為となるかを論じる必要がある(番号12)。
本答案はその構成を採らないため,番号12を欠落として扱わない。
取消し後の代位行使と700万円の計算は,設問への到達点を示すために本記事が補ったものであり,公式資料がこの数額や回収方法を示しているわけではない。
敷金からの控除は,Bに対する2月~7月の未払賃料1200万円がFへの承継前に,Fに対する8月~10月の未払賃料600万円が明渡し時に充当されるという理解による。

(4) 設問2

出題の趣旨は,売主の義務を主たる給付義務と捉えるか付随義務と捉えるか,将来債権が発生しない可能性という特性をどう評価するか,売主の義務は将来債権を帰属させることにとどまるとする反論をどう処理するかを求め,解除の根拠として旧543条と旧541条の双方を挙げている(PDF4頁~5頁)。
採点実感は,解除の根拠規定を指摘してその要件を検討したか,帰責事由等の要件を落としていないか,義務の検討と要件の検討が一貫しているかによって答案を区別している(PDF12頁)。
本答案は主たる給付義務を採り,売主自身が債権の発生を左右できる地位にあることから拘束の範囲を限定した上で,履行不能,帰責事由,解除と原状回復の順に処理する(番号14・15・17~20・23)。

付随義務を採る場合には,価値維持義務の根拠と,その違反が解除に値する程度に重大であることを論ずる必要がある(番号16・21)。
旧541条を採る場合は,催告等の要件に合わせた検討が必要である(番号22)。
これらは本答案の必答項目に加えず,別構成として位置付ける。
旧569条による資力の担保との区別と,旧545条1項による代金の返還は,本記事が契約解釈と条文から補ったものであり,公式資料がその条文と数額を指定したものではない。

(5) 設問3(1)

出題の趣旨は,事故発生時の直接占有者Aと,間接占有者であり所有者であるFを717条1項の相手方として挙げ,土地の工作物と設置又は保存の瑕疵の意味を示すこと,A・Fの関係を工作物責任の法的な性質と同項ただし書を踏まえて検討することを求めている(PDF5頁)。
採点実感は,直接占有者Aを取り上げない答案を良好の例にとどめ,占有者の責任と所有者の責任の関係を明らかにしてA・Fの検討を関係付けた答案を高く評価している(PDF13頁)。
本答案は,工作物と瑕疵の意味を示し,A・Fの占有者責任,必要な注意による免責,Fの所有者責任を関係付けている(番号24~28)。
Fについて,所有者であることだけを挙げ,Aが免責された後にしか請求の相手方にならないと単純化しないよう注意を要する。

Dについては,注文者以外の第三者の安全に対する注意義務の根拠と,ボルトの締付け・確認を怠った義務違反を示す(番号29・30)。
716条との区別と二重の填補の否定は,公式資料に記載のない補足である。
間接占有者も717条1項の占有者に当たるとの理解について,本記事は判決の原文を示して論じたものではない。

(6) 設問3(2)

出題の趣旨は,身体的素因が疾患か,疾患にまで至らない身体的特徴かによって扱いを分けるべきかの理解を基礎に,Hの身体機能の低下と疲労の蓄積を,722条2項の趣旨と【事実】に即して評価することを求めている(PDF5頁)。
本答案は,公平な損害の分担という722条2項の趣旨と,疾患に至らない身体的特徴は特段の事情がない限り斟酌しないという考え方を示し,加齢,疾病の不存在,日常生活に支障がないこと,看病による疲労を個別に評価している(番号31~34)。
減額を寄与の事実だけから導かず,特段の事情又は具体的な過失を要するという構成である。

この考え方は,最高裁平成8年10月29日判決(平成5年(オ)第875号,民集50巻9号2474頁)に沿う。
同判決は,被害者の疾患を722条2項の類推適用により斟酌できるとする最高裁平成4年6月25日判決(昭和63年(オ)第1094号,民集46巻4号400頁)を引いた上で,疾患に当たらない身体的特徴は特段の事情がない限り斟酌できないとし,その理由として,その程度に至らない身体的特徴は個々人の個体差の範囲として当然に存在が予定されていることを挙げている。

(7) 答案の弱点と扱わなかった事項

敷金返還請求権の放棄を無償の債務免除と捉えること,将来債権の売主が負う主たる給付義務の範囲,複数の占有者と所有者の責任の関係には,解釈上の検討の余地がある。
設問1(2)で取消し後に代位して自己への支払を求める構成,間接占有者の工作物責任,請負人の第三者に対する安全上の注意義務については,本記事は判例の原文を示して論じたものではない。
答案は主要な構成を一貫させる一例として読むべきものである。

248条に基づく請求,利息・遅延損害金,設問2の損害賠償,合意解除・債権売買の有効性そのものは,設問の指定に従い論じていない。
令和2年施行の債権法改正後の条文を当時の答案へ持ち込まず,別構成を採らなかったことだけで減点もしない。

第6 関連記事

1 同じ年度の司法試験の記事

①平成23年公法系第1問(憲法)の模範解答と評価項目
②平成23年公法系第2問(行政法)の模範解答と評価項目
③平成23年民事系第3問(民事訴訟法)の模範解答と評価項目
④平成23年刑事系第1問(刑法)の模範解答と評価項目

同年度の公式問題・出題の趣旨・採点実感への入口は,法務省HPの司法試験・予備試験の資料の所在で案内している。

2 同じ科目の別の年度の記事

①平成24年民事系第1問(民法)の模範解答と評価項目
②平成25年民事系第1問(民法)の模範解答と評価項目
③平成26年民事系第1問(民法)の模範解答と評価項目
④平成27年民事系第1問(民法)の模範解答と評価項目

3 本問の論点に関連する山中弁護士ブログの記事

①司法試験の出題法令の基準日―年度別六法リンク
②司法試験の過去問・参考答案一覧

法令の基準時を確かめる際は①,別年度の答案を探す際は②を参照されたい。
これらの記事を,本問の法理の一次資料に代えるものではない。

第7 出典及び確認状態

1 公式資料

①平成23年司法試験・民事系科目の問題PDF
②平成23年新司法試験論文式試験問題出題趣旨の掲載PDF
③平成23年新司法試験の採点実感等に関する意見(民事系科目第1問)の掲載PDF

問題はPDF2頁~4頁の第1問全体を確かめた。
出題の趣旨はPDF3頁の民事系第1問の見出しから5頁の第2問の直前まで,採点実感はPDF11頁~14頁の民事系第1問全体を読んだ。
他問の本文を本記事の根拠にしていない。

2 法令

日本法令外国語訳データベースシステム掲載の民法(第一編第二編第三編)の日本語PDFは,平成18年の改正を反映した版である。
この版と,e-Gov法令検索で遡ることのできる最も古い平成28年10月13日施行の版の双方で,423条~425条,541条,543条,545条,569条,703条,709条,716条,717条及び722条の文言が一致することを確認した。

平成23年の試験時はこの両版の間にあるが,試験時の法令統合版そのものを確認したものではない。
本記事は,当時の公式資料が示す条項と法律関係を中心に答案を組み立てている。

3 裁判例

最高裁平成7年9月19日判決(平成4年(オ)第524号,民集49巻8号2805頁)について,裁判所掲載の転用物訴権に関する最高裁第三小法廷判決本文を全3頁確認した。
本文は,建物賃借人から請け負って修繕工事をした者の建物所有者に対する不当利得返還請求について,賃貸借契約を全体としてみて対価関係なしに利益を受けたときに限るとし,上告を棄却している。

最高裁平成8年10月29日判決(平成5年(オ)第875号,民集50巻9号2474頁)について,裁判所掲載の身体的特徴の斟酌に関する最高裁第三小法廷判決本文を全3頁確認した。
本文は,疾患に当たらない身体的特徴は特段の事情がない限り損害賠償の額を定めるに当たり斟酌できないとし,原判決中の上告人敗訴部分を破棄して差し戻している。

両判決の本文のPDFには事件番号・裁判年月日が表示されていないため,これらと掲載誌は裁判所HPの裁判例検索の結果詳細で確認した。
最高裁平成4年6月25日判決は,平成8年判決の本文が引用する先例であり,その書誌も裁判所HPの結果詳細で確認した。
答案には判例の書誌や「判例同旨」を付けず,判決本文の法理と理由だけを用いた。

4 確認状態

問題・出題の趣旨・採点実感は,前記の範囲で確かめた。
公式資料の記載と,本記事による評価単位化・重み付け・契約解釈・事実評価は区別した。
後者は独自の分析であり,公式の採点基準又は唯一の正解ではない。

法令の確認は第7の2に記した範囲に限られる。
設問1(2)の代位による自己への支払請求,間接占有者の工作物責任,請負人の第三者に対する注意義務については判例の原文を示していないので,学習に用いる際は当時の法令集・基本書等とも照合されたい。
試験後の法令改正を本問の答案要求に遡及させるものではない。