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平成21年司法試験民事系科目第1問(民事訴訟法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した24項目と5段階の重み付け(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

平成21年5月16日に実施された新司法試験論文式の民事系科目第1問(民事訴訟法)を扱う。
設問1では,買取りの意思表示をめぐる否認・援用・沈黙を分け,どのときに証拠調べを省けるかを検討する。
設問2では,収去と退去を同じ土地明渡請求の履行態様として扱い,既に取得した債務名義と後訴で求める給付の違いから,双方の論拠を示す。

項目本問の扱い
資料問題,出題の趣旨,採点実感等に関する意見(本問の部分)
設問1事実の提出,証明の要否,裁判上の自白の効力を分ける。
設問2訴えの利益と既判力の問題を分け,建物収去と500万円の条件を検討する。
評価表と答案評価項目24,重み合計95。答案3796字(空白・改行を除く)。

各設問の評価項目は第4に,答案と評価項目の対応は第5の3にまとめた。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

評価項目は,法務省の出題の趣旨と採点実感等に関する意見を手掛かりに,答案で確認できる内容として抽出した。
重みはこの記事の独自分析であり,法務省の公式採点基準や項目別配点ではない。
[注意]は誤りを避ける観点で,同じ理解を二重に加点・減点しない。
条件付き項目は,表に示した構成を採るか比較するときに確認する。

2 5段階の重み

重み判断基準
5その設問の判断を大きく分ける核心
4結論を理由付きで支える主要な論証・当てはめ
3通常押さえる法的処理・事情の評価
2論証を補強する説明・個別事情・誤りの注意
1補充的な引用・記述範囲の確認

重み5は,2(行使がXの収去請求に及ぼす効果),8(Xが提出した事実を,Yの否認後も立証により使えるか),11(擬制自白の通常場面と本問の違い),14(両訴訟の訴訟物が同一という前提),18(一部認容として読む場合の敗訴部分),21(後訴で別の債務名義を得る利益),23(前訴における解除主張の期待可能性)である。
18は一部認容として説明・比較する場合の項目である。
留保の説明は19で扱う。

第3 本問の概要

1 問題文と事実関係

Xは父Aから土地を単独相続し,その上に建物を所有するYに,建物収去と土地明渡しを求めた。
YはAとの土地賃貸借を主張し,Xは賃貸借の成立を争うとともに,予備的に期間満了と更新拒絶を主張した。
前訴の弁論準備手続で,Xは,Yが喫茶店で時価500万円での建物買取りを求めたと述べた。

その後,Yは買取請求権の行使事実を援用した。
前訴では500万円の支払と引換えに建物を退去して土地を明け渡すよう命じる判決が確定した。
Xは後になって,AがYに送った催告と条件付き解除の記載がある内容証明郵便と配達証明書を見つけ,Yに建物収去と土地明渡しを求める後訴を提起した。
解除が実際に成立したかは別途問題になる。

2 設問が求めること

設問1は,賃貸借の終了を前提に,Yが否認,援用又は沈黙した場合ごとに,証拠調べなしで行使事実を判決の基礎にできるかを問う。
設問2は,両訴訟の訴訟物が同一であるとの前提に従い,Yの却下・棄却の論拠を別々に示した上で,Xが両方にどう反論するかを問う。

第4 評価項目と重み

1 設問1の共通事項

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1所有権に基づく土地明渡請求に対し,Yの賃貸借による占有権原と,設問が所与とする契約終了を区別する。33頁・設問1・事案の設定16頁・1・事案の設定
2買取請求権の行使で建物所有権がXに移り,収去を妨げるため,行使事実の主張立証責任を負うYに有利で,これを述べたXには不利益と説明する。53頁・設問1・行使の訴訟法的意義16頁・1・設例
3弁論主義の第1テーゼにより,当事者が主張していない主要事実を判決の基礎にできないことを示す。43頁・設問1・第1テーゼ16頁・1・2(1)
4弁論主義の第2テーゼと民訴法179条を接続し,自白の拘束と不要証の根拠を,主要事実が当事者間で争われていない点から説明する。43頁・設問1・179条の趣旨16頁・1・2(1)
5[注意]弁論主義の第3テーゼを,主要事実について証拠調べを要するかを決める規則として扱わない。2明示の記載なし16頁・2(1)
6[注意]買取請求権そのものと行使の事実を区別し,小問間で,事実の主張を要するという分析の前提を理由なく切り替えない。33頁・設問1・行使の訴訟法的意義(間接)17頁・2(3)
7否認・援用・沈黙の各場合に,証拠調べを経ず判決の基礎にできるかまで明示する。33頁・設問1・全体17頁・2(4)

2 設問1(i)Yが否認した場合

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
8Yが否認しても,Xが行使事実を主張しているため,主張共通の原則上,その事実は立証されれば判決の基礎にできると説明する。53頁・設問1・第1テーゼと主張共通/小問(1)16頁・1・2(1)
9Yの否認で主張の一致を欠くので,Xの陳述だけを裁判上の自白として扱って証拠調べを省略できないと説明する。43頁・設問1・小問(1)16頁・1,17頁・2(4)

3 設問1(ii)Yが援用した場合

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
10Xの自己に不利益な主要事実の先行陳述は,Yが援用して一致すると裁判上の自白となり,証明を経ず判決の基礎にできると説明する。43頁・設問1・小問(2)16頁・1,17頁・2(4)

4 設問1(iii)Yが争うことを明らかにしなかった場合

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
11民訴法159条1項は,主張責任を負う側が事実を主張し,相手が争うことを明らかにしない場面を想定するため,本問ではそのまま適用できないと説明する。53頁・設問1・小問(3)16頁・1,17頁・2(2)
12釈明後のYの沈黙について,159条1項の趣旨と本件の主張・立証の方向を踏まえ,援用又は事実の合致を認め得るかを理由付きで判断する。43頁・設問1・小問(3)末尾17頁・2(2)
13159条1項の趣旨を本件に及ぼす場合,弁論全体からYが行使事実を争うと読めないかを確認する。(適用条件 本文で同項の趣旨を及ぼす枝を実質的に採用する場合。)33頁・設問1・小問(3)(間接)17頁・2(2)(間接)

5 設問2(1)Yの訴えの利益に関する主張

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
14両訴訟の訴訟物を同一の所有権に基づく土地明渡請求権とし,収去と退去をそれぞれ履行態様として扱う。53頁・設問2・小問(2)の前提16頁・1,17頁・2(4)
15訴えの利益は訴訟要件であり,給付の訴えでは原則認められることを出発点とする。33頁・設問2・小問(1)16頁・1・2(1)(間接)
16Yの立場から,既に同一請求について執行に用い得る債務名義があるため,明渡しを得るための再訴の必要性がないと説明する。43頁・設問2・小問(1)16頁・1・設問2

6 設問2(2)Yの既判力に関する主張

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
17114条1項の主文に包含される判断を特定し,その判断が後訴で前提となり,矛盾する判断は許されないことを説明する。43頁・設問2・小問(2)・既判力の作用16頁・1・設問2
18Yの立場から,一部認容という把握において,収去を伴う無条件の明渡しを退けた部分にも既判力が生じると論じる。(適用条件 一部認容という説明を採用又は比較するとき。)53頁・設問2・小問(2)16頁・1・設問2
19留保付判決と把握する場合,代金との引換えという留保の効力が,後訴で無条件の給付を求めることにどう及ぶかを論じる。(適用条件 留保付判決として説明又は比較するとき。)43頁・設問2・小問(2)・留保付判決16頁・1・設問2
20Yの主張する「少なくとも建物収去を求める部分」について,退去命令と収去命令の差を前訴判断の範囲と結び付ける。43頁・設問2・小問(2)17頁・2(2)

7 設問2(3)Xの反論

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
21Xの立場から,前訴債務名義では代金との引換えによる退去明渡しにとどまり,後訴が求める無条件の収去明渡しを実現できないため,新たな名義を得る利益があると論じる。53頁・設問2・小問(3)前段16頁・1・設問2
22既判力の基準時は前訴事実審の口頭弁論終結時とし,解除事由の時点と書証発見の時点を区別する。43頁・設問2・小問(3)後段16頁・1・設問2(間接)
23前訴確定後にBから手掛かりを得た経緯,A及びCの死亡,書証の所在などから,Xに前訴で解除の主張を期待できたかを検討する。53頁・設問2・小問(3)後段16頁・1・設問2(間接)
24Xの反論を,適時の主張を期待できない場合の手続保障と,確定判決の安定性の双方から評価する。33頁・設問2・小問(3)後段(間接)16頁・1・設問2(間接)

8 重みの分布

重み1重み2重み3重み4重み5合計
01610724項目

重みの単純合計は95である。
各重みの件数を用い,1×0+2×1+3×6+4×10+5×7で計算する。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

設問が適用を指定した旧借地法と,試験実施時を基準とした民事訴訟法を用いる。
X・Y・A等は問題文と同じである。
第1訴訟を前訴,第2訴訟を後訴と呼ぶ。
沈黙に関する結論は,本答案で採用する解釈である。

2 答案

第1 設問1

1 各場合に共通する前提
Xの請求は,所有権に基づく建物収去土地明渡請求である。
Xの土地所有とYが建物所有により土地を占有する事実は争いがない。
Yは,Aとの土地賃貸借及びこれに基づく引渡しを占有権原として主張するが,設問に従い,賃貸借は期間満了で終了し,更新されなかったものとする。

Yが借地法4条2項の買取請求権を行使すると,Xの承諾を待たず,時価による売買が成立して建物所有権がXに移る。
XはYに建物収去を求めることができなくなる。
Yが主張立証すべき主要事実は,YがXに対して買取りを求める意思表示をしたという行使の事実である。
これをX自身が述べたことが本問の特徴である。
Xに早期明渡しを得たい意向があっても,収去を求める本件請求との関係では,この事実はXに不利益である。
意思表示をしたかという事実と,その表示から生じる法的効果とは区別する。
本答案は,訴訟外で既に行使された事実の主張を要するという立場を採る。
訴訟上の権利援用を行使と同視する構成は採らない。
以下,弁論準備手続の結果が口頭弁論で陳述されることを前提とする(民訴法173条)。

弁論主義の第1テーゼにより,当事者の主張しない主要事実を判決の基礎とすることはできない。
もっとも,主要事実が訴訟に提出されていれば,主張責任を負う当事者自身が提出したことは要しない(主張共通の原則)。
これは事実の主張に関する原則であり,当該事実が証明なしに真実として扱われるかは,別に判断する。

2 Yが否認した場合
行使の事実はXの主張によって訴訟に提出されているので,Yが否認しても,証明されれば判決の基礎にできる。
他方,Yが否認する以上,Xの自己に不利益な陳述はYの主張と一致せず,裁判上の自白とはならない。
Xが陳述したことだけを理由に,証拠調べなしにその事実を判決の基礎とすることはできない(民訴法179条)。
弁論の全趣旨も心証形成の資料となるが(同法247条),本件の記載だけから,否認された喫茶店での意思表示を真実と認めるに足りる事情は読み取れない。
真偽不明なら,Yがその不利益を負う。

3 Yが援用した場合
裁判上の自白とは,裁判所に対する,相手方の主張と一致する自己に不利益な主要事実の陳述である。
主要事実について双方の陳述が一致すれば,当事者はその事実についての判断を争点から外したといえる。
そこで裁判所はその事実に拘束され(弁論主義の第2テーゼ),証明を要しない(同法179条)。

Xが先に行使の事実を述べていても,Yがこれを自己の主張として援用すれば,行使の事実について陳述は一致する。
契約の成立を争いつつ,契約が認められる場合の主張としてXが行使の事実を述べたことも,設問の前提の下での合致を妨げない。
したがって,Xの陳述は先行自白として効力を生じ,証拠調べをすることなく行使の事実を判決の基礎とすることができる。

4 Yが争うことを明らかにしなかった場合
同法159条1項は,相手方が主張した事実について争うことを明らかにしないときに,弁論の全趣旨から争っていると認められる場合を除き,自白を擬制する。
その通常の適用場面は,主張責任を負う当事者の主張に対して相手方が沈黙する場合である。
本件は,主張責任を負うYが沈黙し,相手方であるXが自己に不利益な事実を述べた場合であるから,同項をそのまま適用することはできない。

そこで同項の趣旨を及ぼせるかを検討する。
釈明の機会が与えられ,相手方が争う姿勢を示さない以上,立証を省いて審理を進めてよいとの考え方はあり得る。
しかし,本件で沈黙から導くべきものは,相手方の主張への消極的な応答にとどまらず,Y自身が利益を受ける行使事実を援用したという積極的な訴訟上の意味である。
Yは賃貸借の継続を主張しており,契約終了の場合に備えて買取りの効果を求めるかは,沈黙からは確定できない。
Xの陳述を拘束的な自白として扱う基礎となる合致を,Yの沈黙だけで補うべきではない。
したがって,釈明後に沈黙したという事情だけでは証明を省けず,証拠調べなしに行使の事実を判決の基礎にはできない。
なお,賃貸借が続くとの主張だけで,喫茶店での意思表示そのものを争ったことにもならない。

第2 設問2

1 訴えの利益に関するYの論拠
両訴訟の訴訟物は,Xの所有権に基づく本件土地の明渡請求権であり,収去と退去はそれぞれ明渡しの履行態様である。
給付の訴えには原則として訴えの利益が認められるが,同じ給付について執行に用い得る債務名義を既に得ていれば,通常,再び給付判決を得る必要はない。

Yは,Xが前訴の確定判決を債務名義として,代金500万円を支払えばYを建物から退去させて同じ土地の明渡しを受けられると主張できる。
同じ土地の返還を求めながら,既に得た名義と異なる条件や履行態様を希望するだけでは,改めて判決を得る必要は生じないというものである。
したがって,訴訟要件である訴えの利益を欠き,後訴は却下されるべきであると主張する。

2 既判力に関するYの論拠
既判力は,確定判決の主文に包含される判断に生じる(同法114条1項)。
その判断は,後訴の判断に必要な限度で前提となり,前訴の判断と矛盾する裁判は許されない。

前訴でXが求めた給付は建物収去による無条件の土地明渡しであったが,前訴判決が認めたのは500万円の支払と引換えの建物退去土地明渡しであった。
Yは,これを一部認容判決と捉え,認容された給付を超える部分,少なくとも建物を収去させる方法での明渡しは退けられたと主張できる。
この敗訴部分にも既判力が生じるなら,同じ土地明渡請求権に基づいてその給付を求める後訴は,その限度で棄却される。

引換給付判決を,反対給付を留保して土地明渡請求権を認めた判決と捉えても,Yは次のように主張できる。
代金を支払うまで退去・明渡しを拒めるという留保は主文が定めた給付の範囲に含まれるから,Xが基準時に無条件の明渡しを求め得たと判断することは,前訴判決と矛盾する。
さらに,前訴の給付は退去による明渡しに限られ,Yに収去までさせるものではない。
別個の不動産である建物を収去するには,その執行を可能にする主文が必要であり,この履行態様の差は代金支払の条件とは別に残る。
この議論は,代金債権自体の存否が独立に確定されるというものではなく,土地明渡請求権について確定した給付内容を後訴で覆せるかというものである。

既判力の基準時は前訴の事実審口頭弁論終結時である。
Xが主張する賃料不払による解除は,仮に成立していたとしても平成18年の事由であり,基準時前のものである。
書類が平成21年に発見されたとしても,その発見により解除の効果が新たに生じたわけではない。
Yは,その解除を理由に前訴と矛盾する判断を求めることは遮断されると主張できる。

3 Xの反論
(1) 訴えの利益
前訴の債務名義で実現できるのは,Xが500万円を支払うことと引換えに,Yを建物から退去させ,建物が残った状態で土地の明渡しを受けることである。
退去の命令を根拠に建物を収去することはできない。
後訴で得ようとするのは,Xが代金を支払わず,Yの負担で建物が収去された土地を取り戻すための名義である。
同一の訴訟物でも,既存の名義で実現できる給付と後訴で求める給付は,執行の対象と代金負担の双方において異なる。
したがって新たな名義を得る利益があり,前訴の既判力が請求を妨げるかは本案で判断すべきだと反論できる。

(2) 既判力
第一に,Xは,前訴主文が直接命じたのは代金との引換えによる退去明渡しであって,買取請求権行使の有効性や建物所有権の帰属は,その判断を導く理由中の事項であると主張できる。
留保部分を通じて土地明渡しの給付範囲に拘束を認めるとしても,代金請求権の存否まで独立に確定するわけではない。
もっとも,前訴では収去による無条件の明渡しが現に求められたため,収去が命じられなかったことはその部分を退けた判断と読む余地がある。
理由中の判断自体に既判力がないというだけでは,前訴主文に反する後訴請求を基礎付けられない。

第二に,前訴主文が後訴の給付を否定するものとしても,Xは,解除の主張を前訴で提出することを期待できなかったとして遮断効の限界を主張する。
AとCはともに死亡し,内容証明郵便と配達証明書はX方ではなく,Aの相談先であったCの家族の下にあった。
Xがその所在の手掛かりを得たのは前訴確定後にBの話を聞いたためであり,Xは直ちにCの家族を訪ねている。
前訴当時に通常期待される調査をしても解除を知り得なかったといえるなら,前訴で攻撃防御の機会があったことを根拠に,当該主張を一律に遮断することは妥当でないと反論し得る。

他方,基準時前の事由につき書証を後から得たというだけでは,確定判決の安定を破るに足りない。
XはAから不法占拠だと聞いていたので,前訴当時にどのような調査が可能であったかも問われる。
本件での反論は,書証の発見時期だけでなく,解除の主張を提出する機会が実質的になかったことを具体的に説明する必要がある。
遮断を免れ,Yが催告期間内にも支払わず賃貸借が適法に解除されたことが認められるなら,期間満了に伴う買取りの効果は生じず,Xは建物を所有するYに対し,代金支払を条件としない収去土地明渡しを求め得る。

以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 答案と評価項目の対応

表の番号は第4の評価項目の番号である。
以下の対応表には,重み5・4及び条件付き項目を掲げる。
その他の番号のうち,1は第1の1,5〜7は第1の1〜4,15は第2の1,24は第2の3(2)に対応する。
5は第3テーゼとの混同を避けたことを確認する項目である。

番号重み評価項目答案の該当箇所・留保
25買取請求権の行使で建物所有権がXに移り,収去を妨げるため,行使事実の主張立証責任を負うYに有利で,これを述べたXには不利益と説明する。第1の1。行使から収去障害への効果。
34弁論主義の第1テーゼにより,当事者が主張していない主要事実を判決の基礎にできないことを示す。第1の1末段。主要事実の提出。
44弁論主義の第2テーゼと民訴法179条を接続し,自白の拘束と不要証の根拠を,主要事実が当事者間で争われていない点から説明する。第1の3第1段落。拘束と不要証。
85Yが否認しても,Xが行使事実を主張しているため,主張共通の原則上,その事実は立証されれば判決の基礎にできると説明する。第1の1末段・2。事実の提出と証明を分離。
94Yの否認で主張の一致を欠くので,Xの陳述だけを裁判上の自白として扱って証拠調べを省略できないと説明する。第1の2。否認では事実が合致しない。
104Xの自己に不利益な主要事実の先行陳述は,Yが援用して一致すると裁判上の自白となり,証明を経ず判決の基礎にできると説明する。第1の3第2段落。先行陳述と援用。
115民訴法159条1項は,主張責任を負う側が事実を主張し,相手が争うことを明らかにしない場面を想定するため,本問ではそのまま適用できないと説明する。第1の4第1段落。条文の文言と通常の適用範囲を区別。
124釈明後のYの沈黙について,159条1項の趣旨と本件の主張・立証の方向を踏まえ,援用又は事実の合致を認め得るかを理由付きで判断する。第1の4第2段落。審理上の利点と擬制の方向を比較。
133159条1項の趣旨を本件に及ぼす場合,弁論全体からYが行使事実を争うと読めないかを確認する。(適用条件 本文で同項の趣旨を及ぼす枝を実質的に採用する場合。)第1の4末尾。弁論の全趣旨による争いの有無は補足。本答案は拡張しない。
145両訴訟の訴訟物を同一の所有権に基づく土地明渡請求権とし,収去と退去をそれぞれ履行態様として扱う。第2の1冒頭。両訴訟の訴訟物を固定。
164Yの立場から,既に同一請求について執行に用い得る債務名義があるため,明渡しを得るための再訴の必要性がないと説明する。第2の1。前訴名義に基づくYの論拠。
174114条1項の主文に包含される判断を特定し,その判断が後訴で前提となり,矛盾する判断は許されないことを説明する。第2の2冒頭。主文の範囲と二つの作用。
185Yの立場から,一部認容という把握において,収去を伴う無条件の明渡しを退けた部分にも既判力が生じると論じる。(適用条件 一部認容という説明を採用又は比較するとき。)第2の2第2段落。一部認容と把握する場合のYの論拠。
194留保付判決と把握する場合,代金との引換えという留保の効力が,後訴で無条件の給付を求めることにどう及ぶかを論じる。(適用条件 留保付判決として説明又は比較するとき。)第2の2第3段落・3(2)。代金債権自体と給付範囲を区別。
204Yの主張する「少なくとも建物収去を求める部分」について,退去命令と収去命令の差を前訴判断の範囲と結び付ける。第2の2第2・3段落。退去と収去の範囲を比較。
215Xの立場から,前訴債務名義では代金との引換えによる退去明渡しにとどまり,後訴が求める無条件の収去明渡しを実現できないため,新たな名義を得る利益があると論じる。第2の3(1)。前訴で実現できる給付との差。
224既判力の基準時は前訴事実審の口頭弁論終結時とし,解除事由の時点と書証発見の時点を区別する。第2の2末段。解除の事実と書証の発見を区別。
235前訴確定後にBから手掛かりを得た経緯,A及びCの死亡,書証の所在などから,Xに前訴で解除の主張を期待できたかを検討する。第2の3(2)第2〜3段落。Bからの情報・保管先・当時の調査可能性。

(2) 設問1

出題の趣旨は,建物の買取りを求める意思表示の事実を,本来Yが主張すべきところをXが述べた場合の扱いを問う。
3・8・9のように,Xが提出した事実を考慮できることと,証明なしに真実として扱えることを分ける。
Yが援用した場合は,4・10のように,事実の合致を理由に裁判所の拘束と不要証につなげる。

沈黙の場合の中心は11・12である。
主張責任を負う側が沈黙している点が159条1項の通常場面と異なる。
答案は,釈明を経た審理の効率という考え方を検討し,Yが積極的に行使事実を援用したとまでは扱えないと判断した。
これは本答案の解釈である。
採点実感は,建物買取請求権を権利抗弁としながら,小問によっては事実の主張であるとの立場に立って自白の成否を論じる答案を指摘している(6)。

(3) 設問2

出題の趣旨は,訴訟物の同一性を前提に,訴えの利益と既判力を区別し,双方の立場で検討するよう求めている。
14〜16ではYの論拠を既存の債務名義から説明し,21ではXの側から,代金負担と収去の執行の可否という具体的な差を示している。

17〜20では,前訴が一部認容として収去を退けたという説明と,引換えの留保が給付範囲を拘束するという説明を区別した。
採点実感が注意を促すのは,「少なくとも建物収去を求める部分については」との点を注意深く検討せず,既判力の一般論から結論を導く書き方である。
22〜24では,書証を得た時期と解除の効果が生じたと主張する時期を分け,Xが前訴で当該主張を提出することを期待できたかを,資料の保管先やその所在を知った経緯から論じている。

(4) 答案の弱点と扱わなかった事項

Xが前訴で実質的に主張できなかったという反論の成否は,当時どのような調査が可能であったかに左右される。
書証が後から見つかったことだけで遮断効が外れるとは扱っていない。
賃貸借の成立,更新拒絶の正当事由,賃料不払と解除の成立については,設問の前提又は反論に必要な限度で触れている。

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引換給付判決で何が確定するか―同時履行の抗弁,反対債権の既判力,代金回収と強制執行

5 司法試験資料の索引

法務省HPの司法試験・予備試験の資料の所在

第7 出典

1 問題・出題の趣旨・採点実感

資料参照した範囲
法務省・論文式試験問題集(民事系科目)PDF1頁~7頁の第1問,別紙訴状及び旧借地法の資料
法務省・平成21年新司法試験の出題の趣旨(必須科目)PDF3頁の民事系科目第1問
法務省・平成21年新司法試験の採点実感等に関する意見PDF16頁~17頁の民事訴訟法の部分
法務省・平成21年新司法試験の実施日程等についてPDF1頁の実施日程

2 法令・判決

旧借地法4条は,問題PDF7頁の資料による。
民事訴訟法114条,159条,173条,179条及び247条は,衆議院掲載の制定本文の各条を参照した(いずれも現行の条文と同じ文言である)。
借地人の債務不履行を理由とする解除が成立した場合に旧借地法4条2項の買取請求権を認めない点は,最高裁第三小法廷昭和35年2月9日判決の理由第二点を参照した。

衆議院・民事訴訟法(平成8年法律第109号)の制定本文
最高裁昭和35年2月9日判決(昭和32年(オ)第840号,民集14巻1号108頁)

法務省資料のうち,本問を検討するための範囲を掲げた。
評価項目の重みと具体的な答案構成は,この記事の分析によるものである。