第1 この記事の対象と結論
平成19年新司法試験の刑事系科目第1問(刑法)では,交通事故の加害者Aから損害金を取り立てる交渉を任された甲が,乙と共に架空の損害を上乗せした200万円を要求してAに20万円を交付させ,乙の制止を受けた後に単独で100万円を交付させて,その一部を費消した事例について,甲乙の罪責が問われた。
出題の趣旨によれば,小問1の詐欺罪・恐喝罪の成否(Aが現金を交付しようと考えるに至った理由と,取立ての委任との関係),小問2の共犯関係の解消,50万円の費消行為の構成要件該当性及び罪数評価が主な検討事項である。
この記事は,法務省の出題の趣旨と,考査委員が採点実感等を述べた刑事系科目のヒアリングの概要を基に20の評価項目を設け,そのうち7項目を重み5とした。
評価項目と重みは本記事独自の整理であり,法務省の採点基準や配点を示すものではない。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 平成19年新司法試験論文式試験・刑事系科目第1問(刑法) |
| 問題文 | 論文式試験問題集[刑事系科目](PDF2~4頁の第1問と添付の最高裁判所決定) |
| 試験日・答案の基準 | 平成19年5月19日(刑事系科目の論文式試験)。答案は試験当時の法令による。 |
| 出題の趣旨 | 平成19年新司法試験論文式試験問題出題趣旨(PDF5頁の刑事系科目〔第1問〕) |
| 採点実感 | 新司法試験考査委員(刑事系科目)に対するヒアリングの概要(PDF1~3頁の刑法の報告と,PDF6~8頁の質疑) |
| 主な事項 | 錯誤に基づく財産的処分行為,畏怖に基づく財産的処分行為,権利行使と恐喝,共犯関係の解消,取立金の費消,罪数 |
| 評価項目 | 20項目。重み5は7項目,重みの合計は84。 |
| 主な裁判例 | 権利行使と恐喝罪について,最高裁昭和30年10月14日第二小法廷判決。共犯関係の解消について,問題文に添付された最高裁平成元年6月26日第一小法廷決定。 |
| 答案の分量 | 4389字(見出しを含み,空白及び改行を除く。) |
| 法令の基準 | 試験当時の刑法による。 |
| 資料の確認日 | 令和8年11月7日 |
本稿の答案は,初回の20万円の交付について,200万円の債務があるとのAの誤信と家族への畏怖がともに交付の原因となったとして,甲乙に詐欺罪と恐喝罪の共同正犯を認める。
2回目の100万円の交付については,真の残額の請求であって前回の誤信がこの交付を導いたとはいえないとして詐欺罪を否定し,前回の畏怖を利用した恐喝罪を認める。
乙は中止と返還を求めて甲の了承を得たが,初回の働きかけがAに残した畏怖を除く措置を講じていないとして共犯関係の解消を否定し,乙にも2回目の恐喝の共同正犯を認める。
甲が50万円を費消した点は,Bのために受領して占有する金員の横領とする。
重み5の7項目は,初回の交付についての誤信と処分の関係(番号3)及び畏怖と処分の関係(番号5),2回目の交付についての畏怖の利用(番号7),取立ての委任があっても許されない取立手段(番号10),添付決定の判断過程の抽出(番号11),初回の働きかけがAに残した影響(番号14),50万円の費消の構成要件該当性(番号17)である。
第3に事実関係と設問の要求,第4に評価項目と重み,第5に答案と解説,第7に出典を置く。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
評価項目は,出題の趣旨と採点実感の指摘を,答案の記載から判定できる単位に言い換えた本記事独自の基準である。
表の番号は記事全体で通している。
出題の趣旨・採点実感の欄は,法務省が公表したPDFの頁と,関連する記載の要旨である。
平成19年の刑事系科目では,採点実感等は司法試験委員会第41回(平成19年10月3日)の考査委員に対するヒアリングの概要として公表されているので,採点実感欄はその刑法部分の頁と要旨を示す。
一方の資料に対応する記載がない場合は「記載なし」,一般的な指摘から導く場合は「間接」と表示する。
特定の結論を選んだこと自体は評価項目とせず,その結論へ至る規範と事実の評価を対象とする。
2 5段階の重み付けの基準
| 重み | 判断基準 |
|---|---|
| 5 | その設問の判断を大きく分ける核心 |
| 4 | 結論を理由付きで支える主要な論証・当てはめ |
| 3 | 通常押さえる法的処理・事情の評価 |
| 2 | 論証を補強する説明・個別事情・誤りの注意 |
| 1 | 補充的な引用・記述範囲の確認 |
重みとその合計は本記事独自の整理であり,法務省の配点,採点基準又は得点の目安を示すものではない。
結論を支える個々の事情の評価と,その事情が左右する中心的な判断を区別して重みを定めた。
第3 本問の概要
1 問題文と事実関係
Aは,赤色信号を見落として交差点に進入し,B運転の自動車と衝突する事故を起こして,Bに傷害を負わせた。
Bの損害は合計240万円であり,そのうち120万円は自賠責保険の保険金で支払われたが,残りの120万円は支払われなかった。
Aは,事故の全責任が自らにあり,Bに合計120万円の損害賠償義務を負っていることは認めながら,損害金の支払には応じなかった。
甲は,Bの損害金に自らの取り分を上乗せした金額をAに支払わせようと企て,その意図を伏せてBから交渉を任された。
甲は,かつての不良仲間で先輩格であった乙に対し,80万円を上乗せした200万円をAに請求し,Bに120万円を渡して80万円を山分けすること,脅してでも金を出させることを持ち掛け,乙の同意を得た。
甲乙はAと面談し,甲が,Bは現在も仕事を休んで治療を続けており未払分は既に200万円になっていると嘘を言い,乙も200万円の支払を要求したが,Aは拒否する態度を変えなかった。
甲が,家族が事故に遭ってから200万円を支払っておけば良かったと悔やんでも遅いなどと語気を強めて申し向けると,Aは,未払額が200万円に及ぶと誤信するとともに,家族に危害を加えられるのではないかと畏怖し,手持ちの20万円を手渡した。
甲は,残金180万円から甲乙の取り分を得ようと考え,乙の了解を得て,その20万円全額をBに渡した。
その後,乙は,甲の脅し文句が予想以上に強かったことから警察沙汰になることを恐れ,自分は手を引くこと,甲もやめること,20万円も返した方がよいことを強い口調で告げた。
甲は,未練を示しながらも,この話はなかったことにし,20万円もAに返すと答えたが,内心ではあきらめきれずにいた。
甲は,間もなく単独でAと面談し,前回の行為によってAがなお畏怖し続けていることを知りながら,残りの100万円を,金がないなら借金してでも用意するよう要求した。
Aは,ヤミ金融業者から現金100万円を高利で借り入れて甲に手渡し,その後,同業者に元利合計200万円を返済した。
甲は,受け取った時には全額をBに渡すつもりだったが,入手後に一部を自分のものにしたいと考えるようになり,Bに50万円しか受け取れなかったと嘘を言って50万円だけを渡し,残りの50万円を費消した。
乙は,甲から何の連絡もなかったことから,甲が20万円をAに返し,残金180万円の受取りも断念したものと考えていた。
2 設問が求めること
| 設問 | 立場・対象 | 指定・除外 | 到達点 |
|---|---|---|---|
| 全体 | 甲及び乙の罪責 | 特別法違反の点を除く。小問1及び2に対する解答を必ず含める。 | 成立する罪と罪数 |
| 小問1 | Aから2回にわたり受けた現金合計120万円の交付 | Aが現金を交付しようと考えるに至った理由に留意し,具体的事実を示す。 | 甲に詐欺罪及び恐喝罪が成立するか |
| 小問2 | 甲乙間の共犯関係 | 問題文に添付された最高裁判所決定を踏まえ,具体的事実を示す。 | 共犯関係の解消が認められるか |
第4 評価項目と重み
1 小問1・2回の現金交付と権利行使
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | Aが事故責任と120万円の債務を認めながら払わず,虚偽の200万円請求にも直ちには応じなかった経過を,交付原因の認定に用いる。 | 4 | 5頁。Aが損害金の支払に応じず,甲の説明を受けた時にも200万円の支払要求に応じなかったこと等の事実の意味を評価すること | 間接(2頁。事実をただ並べるのでなく,その意味を吟味して規範に当てはめること) |
| 2 | 休業・治療継続と追加損害80万円に関する虚偽が,Aの支払判断の基礎に関わることを説明する。 | 4 | 5頁。未払分が既に200万円になっているとの甲の発言 | 記載なし |
| 3 | 200万円と誤信したことが20万円の処分を導いたかを,畏怖との併存と当初の拒否を踏まえて説明する。 | 5 | 5頁。「錯誤に基づく財産的処分行為」への該当性を,Aが現金を交付しようと考えるに至った理由から判断すること | 間接(1~2頁。小問では,事例に即して結論に至る思考過程を示すこと) |
| 4 | 家族の事故への言及を,支払要求と結び付いた黙示の害悪告知として評価し,反抗を抑圧する程度かも区別する。 | 4 | 5頁。家族が事故に遭ってから悔やんでも遅いとの申し向けと200万円の強い要求 | 記載なし |
| 5 | 家族への危害を恐れたAが,その畏怖に基づいて手持ちの20万円を交付した経緯を説明する。 | 5 | 5頁。「畏怖に基づく財産的処分行為」への該当性。Aが200万円を支払わなければならないと考え,手持ちの20万円を手渡したこと | 間接(1~2頁。事例に即して結論に至る思考過程を示すこと) |
| 6 | 100万円が真の残債権額に一致することを踏まえ,前回の錯誤が残っていた可能性と,それが今回の交付を導いたかを区別する。 | 4 | 間接(5頁。Aが現金を交付しようと考えるに至った理由に留意した要件への当てはめ) | 記載なし |
| 7 | 甲が前回の害悪告知による畏怖を知り,借入れを求めて積極的に利用し,Aが現金100万円を交付した連鎖を評価する。 | 5 | 間接(5頁。Aが現金を交付しようと考えるに至った理由に留意した要件への当てはめ) | 記載なし |
| 8 | Bの残債権120万円と甲の取立委任を確認し,甲乙自身に80万円分の請求権が生じないことを示す。 | 3 | 5頁。甲がBから損害金120万円の取立を委任されていることと恐喝罪等の成否との関係 | 記載なし |
| 9 | 初回の200万円請求が,甲乙の分け前80万円の上乗せにより取立権限の範囲を超えることを示す。 | 4 | 5頁。自己の取り分を上乗せして120万円を大きく超える200万円を請求していること | 記載なし |
| 10 | 権利の範囲内であっても,家族への危害の示唆やその畏怖を利用する取立手段が許容限度を超えることを説明する。 | 5 | 5頁。Aの家族の生命・身体に危害を加えることをほのめかして脅迫する手段を用いていること | 記載なし |
2 小問2・共犯関係の解消
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 11 | 添付決定が,後行暴行のおそれが残り,防止措置を講じずに立ち去った事実から共犯の解消を否定した論理を抽出する。 | 5 | 5頁。決定が共犯関係の解消を認めない帰結に至る過程で着目した事実と,その評価から結論を導いた過程の検討 | 1~2頁,7頁。判例の考え方を基礎となった事案との関連で理解し,結論に至った思考過程を分析すること |
| 12 | 乙が元不良仲間の先輩格であることが,甲の協力要請・乙の中止要求・甲の応答の評価にどう作用するかを示す。 | 3 | 5頁。甲乙の人的関係 | 間接(7頁。決定の事案と本件との違い・類似点の分析) |
| 13 | 上乗せ利益の折半と威迫による回収の合意,乙の同行・督促,甲の虚偽・威迫から,共同正犯の成立と射程を示す。 | 4 | 5頁。共犯関係が成立した経緯,共謀の内容,20万円の交付を受ける際に甲乙それぞれが果たした役割 | 記載なし |
| 14 | 初回の甲乙の働きかけがAに残した畏怖を特定し,2回目の取立てを容易にした影響が消えたかを検討する。 | 5 | 5頁。甲乙の行為がAに与えた影響 | 間接(1頁,7頁。決定の事案との類似点・相違点に留意して論じること) |
| 15 | 乙の中止・返還要求,念押し,甲の了承と未練を,添付決定で有効な防止の働きかけがなかったことと比較する。 | 4 | 5頁。支払要求をやめようとした際の乙の言動と,これに対する甲の対応 | 7頁。判例から抽象的な基準を一応読み取ったような論述の上で突然結論を出す答案が多かったこと |
| 16 | 甲の単独行動,100万円への減額,Bへの面目という目的と,乙が続行を予測できた事情を示し,後行行為が当初共謀に含まれるかを論じる。 | 4 | 5頁。その後の甲の行動とこれに対する乙の予測可能性 | 間接(7~8頁。最高裁判例を踏まえ,問題の事例と対比しながら具体的に論じること) |
3 50万円の費消と最終罪責
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 17 | 甲の受領時の目的,Bの委託,受領後の領得意思及び費消から,委託占有・他人の財物・横領行為を検討する。 | 5 | 5頁。50万円の費消行為について,成立が考えられる犯罪の構成要件該当性を具体的事実に基づいて論述すること | 間接(2頁。罪責の全体ではなく小問1と2に対してだけ解答した答案が相当数あったこと) |
| 18 | Bへの受領額の虚偽報告について,報告によって別の財産処分があったかを検討する。 | 3 | 間接(5頁。成立が考えられる犯罪についての構成要件該当性) | 記載なし |
| 19 | 甲乙それぞれの最終罪責を示し,初回の欺罔・威迫の行為単位,2回の交付の関係及び後発の費消との関係を説明する。 | 4 | 5頁。甲乙の罪責を罪数評価を含めて論述すること | 2頁。小問だけに解答した答案,罪数の理解が十分でない答案 |
| 20 | 取得に至らなかった請求残額について,詐欺・恐喝の実行の着手を検討し,部分既遂との関係を示す。 | 4 | 間接(5頁。甲乙の罪責の論述) | 2頁。当然問題となるはずの未遂犯への言及がない答案 |
4 重みの分布
20項目の内訳は,重み5が7項目,重み4が10項目,重み3が3項目,重み2が0項目,重み1が0項目であり,重みの合計は84点である。
表の区分ごとには,小問1・2回の現金交付と権利行使が10項目・43点,小問2・共犯関係の解消が6項目・25点,50万円の費消と最終罪責が4項目・16点である。
問題文は第1問全体の配点(100点)だけを示しており,区分ごとの配点は示していない。
重み5の7項目は,次のとおりである。
①番号3と番号5は,初回の20万円の交付が錯誤と畏怖のいずれに基づくかを分ける項目であり,出題の趣旨は,Aが現金を交付しようと考えるに至った理由に関する事実の意味を評価して要件に当てはめる思考過程を求めている(5頁)。
②番号7は,2回目の100万円の交付を恐喝として評価できるかを決める。
③番号10は,取立ての委任があっても,家族への危害をほのめかす手段で交付させた場合に恐喝罪の成立を妨げないかを決める。
④番号11と番号14は,添付決定の判断過程と,初回の働きかけがAに残した影響から,共犯関係の解消の成否を決める項目であり,考査委員は,決定の事案と本件との違い・類似点を分析しながら論じた答案はかなり少なかったとしている(7頁)。
⑤番号17は,50万円の費消について成立する犯罪を決める項目であり,考査委員は,罪責の全体ではなく小問1と2に対してだけ解答した答案が相当数あったとしている(2頁)。
主要な理由付けと当てはめは重み4に,取立委任の確認,甲乙の人的関係及びBへの虚偽報告は重み3に整理した。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
答案は,試験当時(平成19年5月19日)の刑法による。
答案の条文は,特記のない限り刑法の条文である。
答案は,初回の20万円の交付については誤信と畏怖がともに処分の原因となったと評価し,2回目の100万円の交付については畏怖だけが原因であると評価する。
共犯関係については,乙の中止の働きかけと甲の了承を検討した上で,初回の働きかけの影響が残っていたとして解消を否定する構成を採る。
2 答案
第1 Aから20万円を受領した行為
1 詐欺罪(246条1項)
甲は,実際の未払損害が120万円であると知りながら,Bがなお休業・治療中で,追加損害のため200万円に達したと告げた。
損害の発生と額は,支払の要否及び範囲を判断する基礎である。
架空の80万円を実在する損害と信じ込ませて金員を交付させるこの言動は欺罔行為である。
Aは,面談前は支払う意思が全くなかったが,面談後は追加損害が発生し未払額が200万円であると信じ,かつ家族への危害を恐れ,200万円を支払うべきだと考えた。
その一部として,手持ちの20万円を自ら手渡した。
Aは,事故の全責任と真の債務額120万円を認めながら支払を拒み,虚偽を告げられた直後も態度を変えなかった。
支払へ転じた直接の契機は畏怖である。
そこから,Aは真額を知っていても,家族への危害を免れるために同じ20万円を渡したとみる余地がある。
しかし,欺罔が単独で交付を生じさせることまで要しない。
本件では,Aは,200万円の債務があるとの誤信と家族への畏怖を併せて支払を決意している。
20万円にとどまった理由は手持ちの制約であり,その交付は200万円を支払う決意の一部実行である。
誤信もこの具体的な処分の原因になったと評価できる。
20万円は真実の債務額以下で,甲は後に全額をBに渡したが,現実には虚偽を含む一体の200万円要求に応じて交付された金員であり,架空分の取得が残金から予定されていたことは交付時の因果を否定しない。
甲は真実の額との差額を取得する目的で,虚偽を用いてAに現金を処分させることを認識していた。
交付によってAは現金20万円の支配を失い,甲はその支配を取得した。
したがって,甲に同罪が成立する。
2 恐喝罪(249条1項)
甲は,家族が事故に遭ってから支払えばよかったと悔やんでも遅いと,語気を強めて告げた。
額を争うAに対し,支払の有無と家族への危害を結び付けた発言であり,甲乙側が危害を加える趣旨を暗に告げたものといえる。
Aを畏怖させるに足りる。
もっとも,危害は将来の家族の事故という形で間接に示唆され,その場で直ちに危害を実行する態勢や暴行は示されていない。
Aも手持ちを理由に20万円だけを差し出している。
これらを総合すると,反抗を抑圧する程度の脅迫とはいえない。
Aは実際に家族への危害を恐れ,この畏怖によって交付した。
前記の錯誤も作用したことは,畏怖と交付との因果を妨げない。
甲はBから交渉を任されたが,真実の債権は120万円であって200万円の請求は権利の範囲を超える。
また,権利実行は,権利の範囲内で,かつ方法が社会通念上許容される程度にとどまる場合に正当化される(最判昭和30年10月14日参照)。
債務者の家族への危害を示唆する方法は,Aが債務を認めながら支払を拒んだとしても,許容される範囲を超える。
債務の一部が消滅するとしても,具体的財物の交付を不当な方法で強いた侵害は消えない。
甲は事情を知って現金を取得させる意思で行動しており,交付された20万円全部につき同罪が成立する。
3 乙の共同正犯と残額
甲が架空の80万円を上乗せして200万円を請求し,必要なら脅し,成功すれば利益を折半すると提案し,乙は承諾した。
乙も面談に同行し,甲の虚偽を前提にAを非難して200万円を要求した。
分け前を予定し,役割を分担して実現した以上,乙にも自己の犯罪として遂行する意思と関与がある。
甲の発言が乙の予想以上に強かったとしても,反抗抑圧には至らず,当初から合意した威迫による同額の回収を実現したもので,共謀の射程内にある。
乙にも詐欺・恐喝の共同正犯(60条)が成立する。
200万円全体について甲乙は欺罔・恐喝を開始したが,現金交付は20万円にとどまった。
初回の残り180万円については実行に着手して結果を得なかったにとどまり(250条),同一機会に同じ要求で生じた一部既遂に包摂され,別個の未遂罪を数えない。
Aが残額の支払を約束したとの記載もある。
しかし,約束の時期・方法や履行を確保する手段は示されず,甲乙は改めて取立てをする予定だった。
この段階で甲乙に新たな請求権や具体的な事実上の経済的利益が帰属したとは認め難く,246条2項及び249条2項の既遂は成立しない。
第2 Aから100万円を受領した行為
1 詐欺と恐喝
甲は残りの100万円を求めた。
この額は真の損害120万円から支払済み20万円を引いた額であり,虚偽の休業・治療継続を改めて述べていない。
「残り」との表現で先の取立てを持ち出しているが,先の誤信が残っていたとしても,問題文上Aはなお続く畏怖から要求に応じて借入れまでしたのであり,誤信がこの支払を導いたとは認められない。
甲の後発の領得意思を受領前に遡らせることもできない。
100万円につき詐欺既遂は成立せず,新たな欺罔による着手もない。
一方,甲は,Aが前回の言動によって家族への危害をなお恐れていることを知りつつ,ほどなく同じ取立ての残りとして支払を強く求め,金がなければ借りてでも用意するよう迫った。
既存の畏怖に乗じるだけの受動的な受領と異なり,前回の害悪の現実味を利用して交付を迫るこの要求は,畏怖を維持・利用する恐喝行為に当たる。
これによりAは現金を借り入れ,自ら甲へ交付した。
交付時には全額をBに渡すつもりだったが,Bに引き渡すためAの支配を排除して金員を取得する意思があり,自ら利得する目的は要しない。
Bが100万円を請求でき,甲に回収の委託があったとしても,危害への恐れを利用して借入れを迫る手段は社会的相当性を欠く。
実際にAは高利で100万円を借りて元利200万円を返済し,債務額と交付額が等しくても財産上の負担を余儀なくされた。
恐喝の客体はAが交付した100万円であり,後に貸主に払った金員は甲への交付額に加えない。
よって甲に恐喝既遂罪が成立する。
2 乙との共犯関係の解消
最決平成元年6月26日は,共謀に基づく暴行の後,なお共犯者が制裁を加えるおそれが残っていたのに,それを防止する格別の措置を講ぜず現場を去った者について,共犯の解消を否定した。
既に共同で実行を始めた以上,離脱の意思表示のほかに,後行行為を容易にする物理的・心理的影響が解消されたかを,続行の危険とこれを防ぐ行動に照らし判断すべきである。
添付決定では,立ち去った者は共犯者の舎弟分であり,「おれ帰る」と言っただけで,共犯者に以後の暴行をやめるよう求めなかった。
本件では,甲は当初から先輩格の乙に協力を求め,乙は回収の方法をともに決める立場にあった。
その乙が甲に止めるよう強く求め,既交付の20万円も返すよう指示し,迷惑が及ぶことまで念押しした。
先輩格の乙に甲は了承を明言し,その後に甲から連絡がなかったため,乙は中止と返金を信じた。
甲は次の要求で甲乙の利得分を放棄し,Bへの面目を保つため一人で真の残額だけを請求した。
これらは共犯を解消し,又は後行行為が当初の共謀を外れたとみる方向に働く。
しかし,当初の合意には,Bの被害回復と上乗せ分の取得の双方が含まれ,威迫によるBの残損害の回収はその一部である。
甲は制止に先立ち,残額はAに借金させて支払わせることまで乙に提案しており,後に用いた取立方法の一つを乙に明示していた。
さらに,甲はBへの約束と20万円返還の難しさに未練を示し,乙も念を押した。
乙が了承を得たことは重要であるが,甲の態度に照らすと続行の危険は残っていた。
20万円の返還を確かめず,Aに追加請求をしないことや家族に危害を加えないことを伝えるなど,両名で生じさせた畏怖を除く働きかけもしていない。
その畏怖がほどなく実際に利用された。
取立てを容易にした共同の影響は残っており,金額を減らし分け前の意図を捨てても,当初の共謀の範囲内にある。
乙にも第2回の恐喝の共同正犯が成立する。
乙の中止要請により既に受領した20万円について既遂が覆ることはない。
第2回も交付結果が生じ,乙はそれを防止していない。
上乗せ分80万円は実現しなかったが,既述のとおり初回の部分既遂と別個の未遂罪を構成しない。
乙が警察沙汰を恐れたことだけから任意性の有無を決める必要はなく,仮に別個の未遂を検討しても,乙は共同の働きかけの影響を除去する措置を講じていない。
第3 Bとの関係での甲の罪責
Bが上乗せの意図を知らず交渉を了承した段階では,Bが財物又は財産上の利益を処分した事実はない。
Bの債権は残り,委託時点でこれを失わせた事情もなく,甲が上乗せを企てただけでBに対する詐欺や背任既遂は成立しない。
甲は,Bの債権についてBから取立てを委託され,100万円をBに全額渡すつもりで,その債権の弁済として受領した。
Bの依頼は自己の損害金を取り立ててもらう趣旨である。
先にAから受け取った20万円も甲は全額Bへ渡している。
2回目も真の残額をBのために受け取っており,受領代理人は甲,本人はBである。
Aの交付に至る手段が違法であることと,甲が誰のために受領したかは別の問題である。
甲は現金を自らに帰属させる趣旨で受領したのではなく,Bの債権の弁済として受領し,Bに属するその金員を引渡しまで委託に基づき占有したと評価できる。
Aが強迫を理由に意思表示を取り消したとの事実はない。
甲は,委託に基づき自己が占有するBの金員のうち50万円につき,受領額を偽って引渡しを免れ,自己のために費消した。
受領額を偽ったことは領得意思を裏付ける。
少なくとも費消の時点で,委託の趣旨に反して所有者でなければできない処分を実行しており,横領罪(252条1項)が成立する。
反復継続する業務として取り立てた事実はない。
虚偽報告でBが事情を誤信しても,残る50万円の引渡請求権を放棄した事情はなく,報告により別の財産処分をしたとは認められない。
同じ50万円の領得を背任として別個に数えることもしない。
乙は受領後に生じた甲の領得に関与しておらず,その罪責を負わない。
第4 罪数
第1回の詐欺と恐喝は虚偽と威迫が連続して一体となり同じ20万円を交付させたもので,社会的に一個の行為として観念的競合(54条1項前段)となる。
2回の恐喝は同じAに対する損害金の回収で,前回生じた畏怖を共通に利用している。
しかし,初回は虚偽を含む200万円の請求で手持ちの20万円を得ていったん終わった。
甲はその後,100万円に請求を改め,借入れを迫り,Aが新たに調達した現金を取得した。
別の取立てと処分行為があるため,第2回を独立の恐喝と評価する。
後から領得意思を生じて行った横領も,被害者と行為を異にする。
甲につき第1回の観念的競合,第2回の恐喝及び横領が,乙につき第1回の観念的競合と第2回の恐喝が,それぞれ併合罪(45条前段)となる。
以上
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(1) 答案と評価項目の対応
答案の第1は初回の20万円の交付,第2は2回目の100万円の交付と乙の共犯関係,第3は50万円の費消,第4は罪数を扱う。
重み3の番号8は第1の2第2段落,番号12は第2の2第2段落,番号18は第3第3段落に対応する。
第4の重み5・4の項目について,模範解答との対応を次の表に示す。
| 番号 | 重み | 評価項目 | 答案の該当箇所・留保 |
|---|---|---|---|
| 1 | 4 | Aが事故責任と120万円の債務を認めながら払わず,虚偽の200万円請求にも直ちには応じなかった経過を,交付原因の認定に用いる。 | 第1の1第2段落 |
| 2 | 4 | 休業・治療継続と追加損害80万円に関する虚偽が,Aの支払判断の基礎に関わることを説明する。 | 第1の1第1段落 |
| 3 | 5 | 200万円と誤信したことが20万円の処分を導いたかを,畏怖との併存と当初の拒否を踏まえて説明する。 | 第1の1第2段落 |
| 4 | 4 | 家族の事故への言及を,支払要求と結び付いた黙示の害悪告知として評価し,反抗を抑圧する程度かも区別する。 | 第1の2第1段落 |
| 5 | 5 | 家族への危害を恐れたAが,その畏怖に基づいて手持ちの20万円を交付した経緯を説明する。 | 第1の1第2段落,第1の2第1段落 |
| 6 | 4 | 100万円が真の残債権額に一致することを踏まえ,前回の錯誤が残っていた可能性と,それが今回の交付を導いたかを区別する。 | 第2の1第1段落 |
| 7 | 5 | 甲が前回の害悪告知による畏怖を知り,借入れを求めて積極的に利用し,Aが現金100万円を交付した連鎖を評価する。 | 第2の1第2段落 |
| 9 | 4 | 初回の200万円請求が,甲乙の分け前80万円の上乗せにより取立権限の範囲を超えることを示す。 | 第1の2第2段落 |
| 10 | 5 | 権利の範囲内であっても,家族への危害の示唆やその畏怖を利用する取立手段が許容限度を超えることを説明する。 | 第1の2第2段落,第2の1第3段落 |
| 11 | 5 | 添付決定が,後行暴行のおそれが残り,防止措置を講じずに立ち去った事実から共犯の解消を否定した論理を抽出する。 | 第2の2第1段落 |
| 13 | 4 | 上乗せ利益の折半と威迫による回収の合意,乙の同行・督促,甲の虚偽・威迫から,共同正犯の成立と射程を示す。 | 第1の3第1段落 |
| 14 | 5 | 初回の甲乙の働きかけがAに残した畏怖を特定し,2回目の取立てを容易にした影響が消えたかを検討する。 | 第2の2第3段落 |
| 15 | 4 | 乙の中止・返還要求,念押し,甲の了承と未練を,添付決定で有効な防止の働きかけがなかったことと比較する。 | 第2の2第2・第3段落 |
| 16 | 4 | 甲の単独行動,100万円への減額,Bへの面目という目的と,乙が続行を予測できた事情を示し,後行行為が当初共謀に含まれるかを論じる。 | 第2の2第2・第3段落 |
| 17 | 5 | 甲の受領時の目的,Bの委託,受領後の領得意思及び費消から,委託占有・他人の財物・横領行為を検討する。 | 第3第2・第3段落 |
| 19 | 4 | 甲乙それぞれの最終罪責を示し,初回の欺罔・威迫の行為単位,2回の交付の関係及び後発の費消との関係を説明する。 | 第4 |
| 20 | 4 | 取得に至らなかった請求残額について,詐欺・恐喝の実行の着手を検討し,部分既遂との関係を示す。 | 第1の3第2段落,第2の2第4段落 |
(2) 小問1・2回の現金交付と権利行使
出題の趣旨は,Aが120万円の損害賠償を求められた際に支払に応じなかったこと,甲の説明を受けた時にも200万円の支払要求に応じなかったこと,家族の事故に触れた申し向けの後に手持ちの20万円を手渡したこと等の具体的事実を示した上で,これらの事実が持つ意味を評価し,要件への当てはめという思考過程を論述するよう求めている(5頁)。
答案は,畏怖が支払へ転じた契機であることを踏まえた上で,200万円の債務があるとの誤信も具体的な20万円の交付に作用したと評価した(番号1~5)。
2回目の100万円の交付について,出題の趣旨は個別の事実を挙げていない。
答案は,請求額が真の残額に一致することを踏まえて前回の錯誤と処分との因果を分け,借入れを求める言動と継続する畏怖を結び付けた(番号6・7)。
この2回目の個別評価は,出題の趣旨の一般的な要求と問題文を基にした本記事の理解である。
出題の趣旨は,取立ての委任と恐喝罪等の成否との関係について,200万円の請求と,家族の生命・身体への危害をほのめかす手段という具体的事実を示して論じるよう求めている(5頁)。
答案は,請求額が権利の範囲内かと,手段が社会通念上許容される程度にとどまるかを分けて検討し,許容される程度を超える手段で交付させた20万円の全額について恐喝罪を認めた(番号8~10)。
第7の3①の最高裁判決は,権利行使の方法として社会通念上一般に許容すべき程度を逸脱した恐喝手段による場合には,債権額のいかんにかかわらず,交付を受けた金員の全額について恐喝罪が成立するとしている。
(3) 小問2・乙の共犯関係
出題の趣旨は,添付決定が共犯関係の解消を認めない帰結に至る過程で着目した事実とその評価の過程を検討した上で,決定の事案との類似点・相違点に留意しつつ,甲乙の人的関係,共謀の内容,乙の言動と甲の対応,その後の甲の行動と乙の予測可能性等の具体的事実を評価して結論を導くよう求めている(5頁)。
答案は,乙の中止の働きかけと甲の了承を評価した上で,初回の取立てでAに生じた畏怖が続いていたことと,借入れによる回収が乙の制止の前に乙に示されていたことを重視した(番号11~16)。
考査委員は,問題文に掲げた最高裁判例は,その存在に言及するだけではプラスの評価にならず,それを踏まえた具体的な検討が求められると説明している(2頁)。
また,判例の中から抽象的な基準を一応読み取ったような論述をした上で,突然結論を出す答案が多く見られたとしている(7頁)。
(4) 50万円の費消と罪数
出題の趣旨は,50万円の費消行為について成立が考えられる犯罪の構成要件該当性を具体的事実に基づいて論述し,甲乙の罪責を罪数評価を含めて論述するよう求めている(5頁)。
答案は,甲がBのために受領した時点と,領得意思が生じて費消した時点を分け,費消を横領と構成した(番号17・18)。
考査委員は,罪責の全体ではなく小問1と2に対してだけ解答した答案が相当数あったこと,当然問題となるはずの未遂犯への言及がない答案や罪数の理解が十分でない答案が散見されたことを指摘している(2頁)。
番号20は,支払われなかった額について実行の着手と一部の既遂との関係を説明できるかを確認する項目である。
Bへの虚偽報告と2回の取立ての罪数については,問題文を踏まえた本記事の法的評価である。
(5) 答案の弱点と扱わなかった事項
初回の詐欺については,真の額を知っていてもAが20万円を渡したと評価する構成を採れば,詐欺既遂の結論は異なる。
乙の明示的な制止と甲の了承を重く評価して共犯関係の解消を認める構成を採る場合も,当初の共謀の範囲と,初回の働きかけが後行行為に与えた影響を個別に説明する必要がある。
2回の恐喝を包括して一罪とみる構成もあり得るが,答案は,請求額と処分行為が異なることから併合罪とした。
特別法違反,貸主の罪責及び民事上の返還請求は設問の範囲外とした。
第6 関連記事
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②平成19年司法試験公法系科目第2問(行政法)の模範解答と評価項目
③平成19年司法試験民事系科目第1問(商法)の模範解答と評価項目
④平成19年司法試験民事系科目第2問(民法・民事訴訟法)の模範解答と評価項目
⑤平成19年司法試験刑事系科目第2問(刑事訴訟法)の模範解答と評価項目
⑥平成19年度旧司法試験論文式試験の模範答案
同年度の他の問題は,平成19年新司法試験試験問題の一覧で確認できる。
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②平成21年司法試験刑事系科目第1問(刑法)の模範解答と評価項目
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3 本問の論点に関連する山中弁護士ブログの記事
①共犯関係が途中で変わった場合の傷害責任-共謀の射程,共犯からの離脱及び刑法207条(AI作成)
②法務省HPの司法試験・予備試験の資料の所在―年度別の実施・結果・出題趣旨・採点実感のページ一覧(AI作成)
③司法試験の出題法令の基準日―平成18年以降の年度別六法リンク(AI作成)
第7 出典
1 公式資料
①法務省「論文式試験問題集[刑事系科目]」(平成19年新司法試験)(PDF2~4頁の第1問と添付の最高裁判所決定)
②法務省「平成19年新司法試験論文式試験問題出題趣旨」(PDF5頁の刑事系科目〔第1問〕)
③法務省「新司法試験考査委員(刑事系科目)に対するヒアリングの概要」(PDF1~3頁の刑法の報告とPDF6~8頁の質疑。司法試験委員会第41回(平成19年10月3日)の議事要旨として掲載)
④法務省「平成19年新司法試験の実施日程等について」(平成18年9月20日司法試験委員会決定。PDF1頁の試験日程)
2 法令
刑法の条文は,e-Gov法令検索で取得できる最も古い版(平成28年6月23日施行)によった。
試験日の後,この版までの刑法の改正(平成19年法律第54号,平成22年法律第26号,平成23年法律第74号,平成25年法律第49号,平成25年法律第86号及び平成28年法律第54号)は,答案が用いる45条,54条,60条,246条,249条,250条及び252条を改めていない。
3 裁判例
①最高裁昭和30年10月14日第二小法廷判決(昭和27年(あ)第6596号,刑集9巻11号2173頁):債権取立てのために執った手段が,権利行使の方法として社会通念上一般に許容すべきものと認められる程度を逸脱した恐喝手段である場合には,債権額のいかんにかかわらず,その手段により債務者から交付を受けた金員の全額について恐喝罪が成立するとした。
②最高裁平成元年6月26日第一小法廷決定(昭和63年(あ)第948号,刑集43巻6号567頁):共謀して暴行を加えた後に現場から立ち去った者について,共犯者においてなお暴行を加えるおそれが消滅していなかったのに,格別これを防止する措置を講じなかったときは,当初の共犯関係が立ち去った時点で解消したということはできないとした(問題文に決定理由の抄録が添付されている)。
4 留意事項
出題の趣旨はPDF5頁の刑事系科目〔第1問〕の部分を,採点実感はヒアリングの概要のPDF1~3頁の刑法の報告とPDF6~8頁の質疑を,評価項目の根拠とした。
平成19年の刑事系科目の採点実感等は,司法試験委員会第41回の議事要旨に掲載された考査委員に対するヒアリングの概要として公表されており,採点実感欄に示した答案の傾向は考査委員の所感である。
答案と解説は試験当時の刑法によっており,令和4年法律第67号による拘禁刑の導入など試験後の改正は用いていない。
評価項目,重み,答案の結論及び出題の趣旨の具体化は本記事独自の分析であり,法務省が一つの結論を指定したものではない。