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訴訟手数料の還付―取下げ・過納の場合の金額,申立期限及び異議(AI作成)

目次

第1 還付には二つの場面がある

「裁判所へ納めた手数料を返してもらう手続」と,「相手方から訴訟費用を回収する手続」は別である。
本記事は,前者の手数料の還付を扱う。

これらに加え,裁判所へ預けた保管金・予納金の残額を返してもらう手続も,手数料の還付とは区別する。
裁判所の公式案内は,電子納付した保管金の残額を登録口座へ自動的に振り込むと説明しているが,この案内によって訴訟手数料の還付申立てまで不要になるわけではない。
保管金の登録口座,口座変更及び事務所内の精算は,裁判所の保管金・予納金の還付―電子納付,口座名義・変更と法律事務所の事件別精算(AI作成)で説明する。

確認すること手数料の還付相手方からの訴訟費用の回収
何を根拠にするか過納や,法律所定の時期までの取下げ等(費用法9条)判決等の費用負担の定め。金額が未確定なら費用額確定手続(民事訴訟法71条等)
何の額を定めるか裁判所へ納めた手数料のうち返される額相手方が償還すべき法定費用の額
どこへ進むか担当裁判所の還付処分と,会計担当への支払請求費用額確定処分の申立てと相手方への支払請求

訴えを取り下げても,納付済みの手数料が自動的に返金されるわけではない。
民事訴訟費用等に関する法律9条に基づく申立てが必要であり,還付額も一律に「納付額の半額」ではない。
裁判所書記官の還付処分と,実際に指定口座へ振り込んでもらうための請求を分けて進める。
還付の根拠と額は,次の二つの場面に分けて確認する。

場面根拠還付される額
納付額が納めるべき手数料額を超えるとき(過納)民事訴訟費用等に関する法律9条1項超過額
口頭弁論を経ない却下が確定したとき,最初にすべき口頭弁論期日の終了前に訴えを取り下げたとき等同条2項納付済み額から,納めるべき手数料額の2分の1と4,000円のいずれか高い額を控除した額

いずれもPay-easyの運営主体又は金融機関に決済の取消しを求めるのではなく,事件を担当する裁判所の還付手続を利用する。

第2 過納による還付

納付額が納めるべき手数料額を超える場合,申立てによって裁判所書記官から超過額の還付を受けることができる(同法9条1項)。

複数請求が同一利益か,付帯請求を訴額へ算入するかといった裁判所の判断によって,申立人の計算より手数料が少なくなり,過納が生じる場合がある。

納付前に裁判所の登録額を確認することが過納防止の基本であるが,既に納付した場合は事件係へ還付申立ての方法を確認する。

第3 取下げ等による還付

1 「最初にすべき口頭弁論期日の終了前」であること

同法9条2項1号により,訴えを最初にすべき口頭弁論期日の終了前に取り下げた場合,申立てにより手数料の一部が還付される。
条文上の基準は「最初の口頭弁論期日の前」ではなく「その期日の終了前」である。

もっとも,相手方の同意を要する事件では,取下書を提出しただけでは取下げの効力が生じない。
取下書の提出が期日終了前であっても,同意又はみなし同意が期日終了後となる場合に同号の還付要件を満たすかは,確認した公開資料から明らかでない。

還付を予定するときは,可能であれば期日終了前に取下同意書も提出して取下げの効力発生時点を明確にし,担当部へ確認するのが安全である。

2 還付額は常に半額ではない

納付額と納めるべき手数料額が同じ全部取下げの単純な場合,還付額は,納付済み手数料から「納めるべき手数料額の2分の1」と「4,000円」のいずれか高い方を控除した金額である。

納付済み手数料控除額還付額
6,000円4,000円2,000円
10,000円5,000円5,000円
20,000円10,000円10,000円

例えば,納付済み手数料が6,000円の場合は,その半額3,000円ではなく,4,000円を控除するため,還付額は2,000円となる。

このため,「早期取下げなら印紙代又は手数料の半額が戻る」とだけ説明すると,納めるべき手数料額の半額が4,000円未満となる事件では正確でない。

3 一部取下げの場合

一部取下げの場合は,既納手数料が残った請求についても納付されたものと扱われる範囲では還付されない。
そのため,取下げ前後の訴額と手数料を再計算する必要がある。

複数請求の一部だけを取り下げた場合等には,同条3項による調整がある。

第4 申立期間と異議期間

還付申立ては,還付事由が生じた日から5年以内にしなければならない。
共同申立人が納付した場合は各申立人が還付を申し立てることができるが,実際の申立人及び振込口座の扱いは裁判所の書式で確認する。

裁判所書記官の還付処分に対する異議は,処分の告知を受けた日から1週間の不変期間内である。

5年は還付を求める期間,1週間は処分内容へ異議を述べる期間であり,両者を混同しない。

1 差押債権者による還付申立て

最高裁判所第二小法廷令和8年9月30日決定は,旧法9条3項の手数料還付請求権を差し押さえた債権者が,民事執行法155条1項の取立権として還付を申し立てることができると判断した。還付申立ては納付者の身分又は人格と密接に結び付く行為ではなく,還付請求権を現実に取り立てるために必要であり,要件及び金額を事件記録から形式的に判断できることが理由である。

本決定の直接の対象は改正前の費用法9条3項である。現行9条2項についても同様に扱うのが自然であるものの,これは本決定の直接判示ではない。差押債権者が申し立てるときは,差押命令正本,国及び債務者への送達日,取立可能日並びに差押債権目録を確認し,担当部と会計担当の双方へ提出方法及び振込先を照会する。

判断枠組み及び弁護士・司法書士・税理士の役割分担は,訴訟手数料還付請求権の差押え―差押債権者による還付申立てと最高裁令和8年9月30日決定で詳しく説明している。

第5 還付処分と支払請求を分けて処理する

1 二段階の手続である

還付では,まず事件を担当する部・係へ還付を申し立て,裁判所書記官の還付処分を受ける。
その後,会計担当へ還付請求書その他の必要書類を提出して,指定口座への支払を請求する。

東京地方裁判所の窓口案内も,手数料還付申立ては担当部,還付決定後の請求書提出は出納担当への問合せとして分けている。

2 還付請求書の記載事項

京都地方裁判所の還付請求書は,還付額,裁判所名,事件番号,請求者,連絡先及び振込口座の記載欄を設け,旧法事件では還付決定正本又は処分正本の添付を求める。

必要書類,新法事件における処分書面の扱い及び提出先は裁判所により案内が異なり得るため,事件係の還付処分と会計担当の支払請求を一つの提出で終わると考えない。
法律事務所内の精算では,手数料を実際に負担した者,還付請求者,振込先及び最終的に還付金を返す相手を分けて記録することが有用である。
依頼者の預り金から納付したのか,事務所が立て替えたのか,依頼者が後から精算済みなのかを確認し,還付処分・請求書・入金記録・清算書を事件番号で対応させる。
事務所口座に入金されたことだけで,還付金を報酬に充当できるわけではない。

3 mints上の提出方法

最高裁判所の現行「準備の手引」の提出場所一覧は,取下書及び同意書のmints提出場所を示す一方,通常事件の手数料還付申立ての提出画面までは示していない。
還付申立てのmints上の提出方法及び処分後の請求書提出先は,係属裁判所の担当部が案内する最新方法を確認する必要がある。

第6 手数料再使用証明との違い

民事訴訟費用等に関する法律10条の手数料再使用証明は,収入印紙により納付した手数料の制度である。
Pay-easyによる現金納付を別事件へそのまま振り替える制度ではない。

第7 確認の手順

①還付の根拠が過納(9条1項)か取下げ等(同条2項)かを確定する。
②取下げ等であれば,最初にすべき口頭弁論期日の終了前であるかを確認する。
③相手方の同意を要する事件では,同意又はみなし同意の時点を確認する。
④納めるべき手数料額を計算し,控除額(半額と4,000円の高い方)を確定する。
⑤申立人を確認する。差押債権者が申し立てる場合は,差押命令,国及び債務者への送達並びに取立可能日を確認する。
⑥還付事由が生じた日から5年以内に,担当部へ還付を申し立てる。
⑦還付処分を受けた後,会計担当へ還付請求書を提出し,実際の受領者と振込口座を確認する。
⑧処分内容に不服があれば,告知を受けた日から1週間以内に異議を申し立てる。

本記事は裁判所へ納めた手数料の還付を扱う。判決等で相手方に費用負担を命じられた場合の費用計算書・相殺・異議と回収は,訴訟費用額確定処分の申立てを参照されたい。還付を受けた手数料は,費用計算書で二重に計上しないよう確認する。

1 返金についてよくある疑問

Q 勝訴判決に「訴訟費用は被告の負担とする」と書かれていれば,裁判所から手数料が戻るのか。
A その文言だけで裁判所から還付されるわけではない。
相手方からの費用償還と,費用法9条の還付要件を区別する。
Q 裁判上の和解が成立しただけで,手数料の半額を返してもらえるのか。
A 和解成立それ自体は,同条2項1号の還付事由ではない。
裁判外で合意して訴えを取り下げる場合は,取下げの効力と最初にすべき口頭弁論期日の終了時を確認する。
「各自負担」の合意の意味については,訴訟費用の総合記事を参照されたい。
Q 新法事件でも,訴額に応じた部分だけの半額を計算すればよいのか。
A 通常の訴え提起では郵便費用相当額が手数料に組み込まれているため,納付済み手数料額と納めるべき手数料額を確認して同条2項の算式へ当てはめる。
例えば,訴額100万円・被告1人の新法事件の電子申立てで1万1400円を正しく納付し,訴え全部について同項1号の早期取下げの要件を満たすなら,控除額は半額5700円と4000円の高い方である5700円,還付額も5700円となる。
書面申立てで1万2500円を正しく納付した同条件なら,控除額・還付額とも6250円となる(裁判所の手数料額早見表1頁,費用法9条2項)。
過納,手数料のみなし納付,請求の一部のみの取下げなどがある場合は,この例をそのまま使わない。
Q 還付された手数料も,後から相手方に全額請求できるのか。
A 費用法2条1号は,9条2項により還付される額がある場合にその額を控除することを定めている。
過納分も本来納めるべき手数料とは異なるため,納付額・過納額・還付額を整理し,二重計上を避ける。

第8 関連記事

①mintsで訴えを取り下げる方法-取下書・相手方の同意・2週間のみなし同意・手数料還付
②mintsの手数料をPay-easyで納付する方法
③民事訴訟の申立手数料の計算方法―訴額別早見表と郵便費用相当額
④訴訟費用とは――費目,計算方法,敗訴者負担と回収手続
⑤収入印紙と弁護士業務
還付の可否が訴額の算定によって変わった最高裁判例は,訴額の算定に関する最高裁判例で紹介している。

出典・参考資料

①民事訴訟費用等に関する法律(昭和46年法律第40号)2条・9条・10条
②裁判所「民事裁判手続のデジタル化に関する準備の手引」
③東京地方裁判所の窓口案内
④京都地方裁判所の手数料還付請求書
⑤最高裁判所第二小法廷令和8年9月30日決定(令和7年(許)第23号)
⑥民事執行法155条
⑦裁判所手数料額早見表1頁(新法事件の計算例の基礎となる納付額)