訴訟費用

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目次
第1 略称としての費用法及び費用規則
第2 訴訟費用の内容
1 主な訴訟費用の内容
2 訴訟追行に必要なすべての費用が訴訟費用というわけではないこと
第3 訴えの提起手数料及び上訴の提起手数料
1 訴額に基づいて算定されること
2 訴額通知
3 個別の訴額算定事例
4 上訴の提起手数料
5 参考になる文献
第3の2 過納手数料の還付等(令和4年5月31日追加)
1 手数料還付の申立て
2 手数料還付の請求
第4 予納郵券の組み合わせ,特別送達の郵便料金及び書記官送達

1 予納郵券の組み合わせ
2 特別送達の郵便料金
3 書記官送達
第5 期日への出頭旅費の計算方法
1 同一簡易裁判所管内から出頭した場合
2 簡易裁判所を超えて出頭した場合
第6 弁論準備手続期日に電話会議で出席した場合であっても,期日への出頭日当が認められること
第7 当事者尋問と訴訟費用の関係
1 原則として追加の訴訟費用は発生しないこと
2 例外的に追加の訴訟費用が発生する場合
第8 証人尋問の旅費日当
1 総論
2 証人尋問の旅費
3 証人尋問の日当
第9 証人に対する金銭の提供の取扱い

第10 訴訟費用の負担の裁判
1 訴訟費用の敗訴者負担の原則
2 一部敗訴の場合の負担
3 訴訟費用の負担の裁判
第11 平成16年に検討された,弁護士費用の敗訴者負担制度
第12 訴訟費用額の確定手続
1 訴訟費用額の決定権者及び決定時期
2 訴訟費用額の確定処分の申立て
3 訴訟費用額の確定処分
4 訴訟費用額の確定処分に対する不服申立て
第13 関連記事その他

第1 略称としての費用法及び費用規則
・ 本ブログ記事では,民事訴訟費用等に関する法律を「費用法」と略称し,民事訴訟費用等に関する規則を「費用規則」と略称しています。

第2 訴訟費用の内容
1 主な訴訟費用の内容
(1) 主な訴訟費用は以下のとおりでありますところ,自分が依頼した弁護士に支払う弁護士費用は訴訟費用に含まれません。
① 訴えの提起手数料及び上訴の提起手数料(費用法2条1号)
・ 例えば,訴状,反訴状又は控訴状に貼るなどして納付した収入印紙の代金があります。
・ 訴えの変更等により手数料額に変更がある場合,最終的な請求に対応する手数料額となります。
・ 手数料の額が100万円を超える場合,収入印紙に代えて現金で納付することもできます(費用法8条,費用規則4条の2第1項)。
② 書類の送付・送達費用(費用法2条2号)
・ 例えば,被告への訴状副本送達費用,反訴被告への反訴状副本送達費用及び被控訴人への控訴状副本送達費用,並びに当事者への判決正本送達費用があります。
・ 予納郵券のうち現実に使用された部分(費用法11条1項1号・2条2号)のことです。
・ 消費税が10%となった令和元年10月1日以降の特別送達の料金は1回当たり1089円以上であって,その内訳は,通常の郵便料金が84円以上,一般書留料金が435円,特別送達料金が570円です(郵便局HPの「オプションサービスの加算料金一覧」参照)。
③ 当事者又は代理人の,期日への出頭旅費(費用法2条4号イ又は5号)
・ 直線距離に基づく額の償還(費用規則2条1項)又は往復の実費額の償還となります。
・ 当事者及び代理人の両方が期日に出頭した場合,原則として当事者の旅費だけが認められます(費用法2条5号本文の「(当事者等が・・・期日に出頭した場合を除く。)」参照)。
・ 訴訟代理人の旅費は,当事者等が出頭した場合における旅費として裁判所が相当と認める額を超えることができません(費用法2条5号ただし書)。
④ 当事者又は代理人の,期日への出頭日当(費用法2条4号ロ又は5号)

・ 3950円です(費用規則2条2項)。
・ 当事者及び代理人の両方が期日に出頭した場合,原則として当事者の日当だけが認められます(費用法2条5号本文の「(当事者等が・・・期日に出頭した場合を除く。)」参照)。
⑤ 証人の旅費(費用法18条1項及び21条)
・ 往復の交通費の実費相当額が出ます。
・ 一定の距離を超えた場合,新幹線の指定席の代金が出るようになります。
・ 距離のいかんを問わず,新幹線のグリーン席の代金までは出ません。
⑥ 証人の日当(費用法22条)
・ 2時間以内に尋問が終わった場合の日当は2960円以上3950円以内です(費用規則7条,及び証人等の日当の支給基準について(平成14年6月25日付の最高裁判所事務総長通達))。
⑦ 書類の作成及び提出の費用(費用法2条6号及び費用規則別表第二・1項)
・ 基本となる額は審級別に1500円ですから,第一審で終わった場合は1500円であり,控訴審で終わった場合は3000円です。
・ 6通以上の準備書面を提出した場合は1000円が加算され,21通以上の準備書面を提出した場合は2000円が加算され,36通以上の準備書面を提出した場合は3000円が加算されます(以後,15通区切りで1000円ずつ加算されます。)。
    なお,証拠申出書及び証拠説明書は,当事者の主張を明らかにする書類ではありませんから,通数加算の対象となりません(民事訴訟費用等に関する執務資料(全訂版)30頁)。
・ 16通以上の証拠書類を提出した場合は1000円が加算され,66通以上の証拠書類を提出した場合は2000円が加算され,116通以上の証拠書類を提出した場合は3000円が加算されます(以後,50通区切りで1000円ずつ加算されます。)。
    なお,書証について枝番号が付されている場合,枝番号ごとに1通として数えることとなります(民事訴訟費用等に関する執務資料(全訂版)31頁)。
・ 例えば,訴状及び原告準備書面(20)まで提出し,かつ,枝番なしで甲115まで提出した場合,書類の作成及び提出の費用は4500円(内訳は,1500円+1000円+2000円)となります。
⑧ 資格証明書取得費用(費用法2条7号の,官庁等からの書類交付費用)
・ 相手方が法人である場合,登記簿謄本1通当たり,600円(取得に要した手数料額実費)及び160円(申請書の提出費用及び証明書等の受領費用)の合計760円を請求できます(費用規則2条の3)。
・ 160円という金額は,消費税が5%であった時期の往復の郵便代であると思いますが,消費税増税後も金額の改定がありません。
(2) 庶民の弁護士伊藤良徳サイト「訴訟費用の取り立て(民事裁判)」に訴訟費用額の計算例が載っています。ただし,資格証明書取得費用は764円ではなく,760円であると思います。
2 訴訟追行に必要なすべての費用が訴訟費用というわけではないこと
(1)ア 裁判所HPの「訴訟費用について」には「(1)訴訟費用の負担」として以下の記載があります。
    法律で定められている訴訟費用は,基本的には敗訴者が負担することになります。訴訟費用には,訴状やその他の申立書に収入印紙を貼付して支払われる手数料のほか,書類を送るための郵便料及び証人の旅費日当等があります。ここでいう訴訟費用は,訴訟を追行するのに必要なすべての費用を含むわけではなく,例えば,弁護士費用は訴訟費用に含まれません。
イ 最高裁令和2年4月7日判決は以下のとおり判示しています。
    費用法2条が法令の規定により民事執行手続を含む民事訴訟等の手続の当事者等が負担すべき当該手続の費用の費目及び額を法定しているのは,当該手続に一般的に必要と考えられるものを定型的,画一的に定めることにより,当該手続の当事者等に予測できない負担が生ずること等を防ぐとともに,当該費用の額を容易に確定することを可能とし,民事執行法等が費用額確定処分等により当該費用を簡易迅速に取り立て得るものとしていることとあいまって,適正な司法制度の維持と公平かつ円滑なその利用という公益目的を達成する趣旨に出たものと解される。
(2)  当事者が準備書面の直送をするためにした支出については,費用法2条2号は類推適用されませんから,訴訟費用になりません(最高裁平成26年11月27日決定)。
(3) 不法行為又は安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求の場合,相手方に弁護士費用を請求できますところ,以下の記事が参考になります。
① 「#モデル契約書の沼 損害賠償条項等における契約書の文言を根拠とする「弁護士費用実額」の請求可能性についての一考察」(改訂版につき自由と正義2021年12月号48頁ないし55頁)
② みずほ中央法律事務所HPの「【損害賠償として弁護士費用を請求することの可否(責任の種類による分類)】」

第3 訴えの提起手数料及び上訴の提起手数料
1 訴額に基づいて算定されること
(1)ア 訴えの提起手数料(費用法3条1項)は,民事訴訟法8条1項及び9条により算定された訴訟の目的の価額(略称は「訴額」です。)に基づいて算出されます(費用法4条1項)ところ,裁判所HPの「手数料額早見表」を見れば,訴額に応じた訴え提起手数料が分かります。
イ 具体的な訴え提起手数料は,訴額100万円の場合は1万円,訴額500万円の場合は3万円,訴額1000万円の場合は5万円,訴額3000万円の場合は11万円,訴額5000万円の場合は17万9000円です。
(2) 財産権上の請求でない請求(いわゆる「非財産権上の請求」です。)にかかる訴えの場合,訴額は160万円とみなされます(費用法4条2項)。
(3) 財産権上の請求にかかる訴訟物の価額の算定が著しく困難な場合,裁判長又は裁判所は,その算定にとって重要な諸要因を確定し,これを基礎とし,裁量によって右価額を算定することができます(最高裁昭和49年2月5日判決)。
(4) 訴額の算定にあたり,必ずしも鑑定その他の証拠調べによりこれを認定しなければならないものではなく,その他の方法によりこれを認定することも許されますし,訴額の算定は訴え提起の時が基準となります(最高裁昭和47年12月26日判決(判例秘書に掲載))。
2 訴額通知
(1) 実務上,訴額は,訴訟物の価額の算定基準について(昭和31年12月12日付の最高裁判所民事局長通知)(略称は「訴額通知」です。)に基づいて算定されます。
(2) 訴額通知は裁判所を拘束するものではありません(最高裁昭和47年12月26日判決(判例秘書に掲載))が,訴額の具体的算定を容易とする特段の事情の存しない限り,訴額は,訴額通知の示す基準に従って算定するのが相当とされています(最高裁昭和44年6月24日判決参照)。
(3) 土地を目的とする訴訟物の価額の算定基準については,平成6年4月1日から当分の間,固定資産税評価額に2分の1を乗じた金額が標準となっています(土地を目的とする訴訟の訴訟物の価額の算定基準について(平成6年3月28日付の最高裁判所民事局長の通知))。
3 個別の訴額算定例
(1)ア 地方自治法242条の2第1項4号所定の損害賠償請求訴訟(いわゆる住民訴訟)の訴額は160万円であります(最高裁昭和53年3月30日判決)ところ,判例タイムズ1439号(2017年10月1日号)に「住民訴訟の訴額-住民訴訟の請求の性質とその個数について-」が載っています。
イ 県知事に対し,違法又は不当な旅費の支出があったとして,3件の旅費支出行為に関し,それぞれ損害賠償を請求するよう求める住民訴訟の訴額は,160万✕3=480万円とされました(東京高裁平成22年4月2日決定(判例時報2121号4頁))。
ウ 三訂版 事例からみる訴額算定の手引29頁及び30頁には,「(山中注:住民訴訟に関して)被告が控訴の提起をする場合、被告の不服申立て部分の算定は可能であるが、上述のように、住民訴訟においては、請求額にかかわらず、原告の訴え提起時及び控訴提起時の訴額を一律に160万円と解すべきこととの均衡上、被告控訴の訴額も160万円と解するのが相当である(裁判所書記官研修所「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」 105頁)。」と書いてあります。
(2)  労働基準法114条の付加金の請求については,同条所定の未払金の請求に係る訴訟において同請求とともにされるときは,民訴法9条2項にいう訴訟の附帯の目的である損害賠償又は違約金の請求に含まれるものとして,その価額は当該訴訟の目的の価額に算入されません(最高裁平成27年5月19日決定)。
4 上訴の提起手数料
(1) 控訴の提起手数料は,訴えの提起手数料の1.5倍です(費用法別表第一・2項)。
(2) 上告の提起又は上告受理の申立て手数料は,訴えの提起手数料の2倍です(費用法別表第一・3項)。
5 参考になる文献
・ 「〔三訂版〕事例からみる訴額算定の手引 」が参考になります。

第3の2 過納手数料の還付等
1 手数料還付の申立て
(1) 訴えの提起又は上訴提起の手数料を納めすぎた場合,手数料還付の申立てをすることで,納めすぎた手数料の還付を受けることができます(費用法9条1項1号)。
(2) 口頭弁論を経ない却下の裁判が確定したり,第1回口頭弁論期日前に訴訟を取り下げたりした場合,手数料還付の申立てをすることで,手数料の半分(ただし,手数料の半分が4000円に満たないときは,4000円)を控除した金額の手数料を還付してもらえます(費用法9条3項1号)。
(3)ア 手数料還付の申立ては,申立てをすることができる事由が生じた日(例えば,却下の裁判の確定日)から5年以内にしなければなりません(費用法9条7項)。
イ 裁判確定後に手数料還付の申立てをする場合であっても,手数料還付の申立書の提出先は当時の事件係属部となります。
(4) 地裁の還付却下決定に対しては即時抗告ができるのに対し(費用法9条9項・非訟事件手続法66条2項),高裁の還付却下決定に対しては即時抗告はできません。
2 手数料還付の請求
(1)ア 手数料の還付決定が出た場合,①手数料還付の請求書及び②還付の決定正本を裁判所事務局出納課に提出すれば,還付金請求書に記載した振込先への振込により手数料を還付してもらえます。
イ 大阪地裁本庁の還付決定の場合,大阪地裁事務局出納第一課出納第一係(新館1階)が書類の提出先となります。
(2) 最高裁判所事務総局の総務局第三課長及び経理局監査課長の事務連絡(平成15年12月18日付)の本文は以下のとおりですから,手数料の還付請求に際して確定証明書の添付は不要です。
 本日付け最高裁総三第89号総務局長,経理局長通達「「過納手数料等の還付金の支払及び旅費,鑑定費用等の概算払等の取扱いについて」の一部改正について」が発出されました。これまで還付金の請求に際しては,国庫債務の適正な支払を確保するために,還付決定又は還付処分の正本のほか,その確定証明書等の「確定を証する書面」の提出を求めていましたが,実務におけるこれまでの事務処理状況等に照らすと,当事者から一律に確定証明書等の「確定を証する書面」を求めなくとも,前記の目的を果たし得るものと考え,「その確定を証する書面」の提出を求めない取扱いに改めることとしました。
 ついては,前記の趣旨を裁判所書記官等の関係職員に周知していただくようよろしくお取り計らいください。
 なお,簡易裁判所に対しては,所管の地方裁判所から,この趣旨をお知らせください。

第4 予納郵券の組み合わせ,特別送達の郵便料金及び書記官送達
1 予納郵券の組み合わせ
(1) 訴訟提起時に必要となる予納郵券(費用法12条及び13条)の組み合わせは裁判所ごとに異なりますから,提訴先の裁判所HPを見るか,事件係に電話で聞く必要があります。
(2) 大阪地裁HPに「民事訴訟等手続に必要な郵便切手一覧表」が載っていて,大阪家裁HPの「大阪家庭裁判所の手続案内」に「申立時に必要な手数料・予納郵便切手について」等が載っています。
2 特別送達の郵便料金
(1) 通常の郵便料金の目安

    定形外郵便物の場合,A4換算と値段の対応関係は,角形2号封筒の重さ約15gをも考慮すれば,通常の郵便料金は以下のとおりです(普通のA4用紙の重さは約4gであるものの,余裕を見た目安です。)。
・ 7枚以下であれば,50gまでの120円
・ 8枚から17枚であれば,100gまでの140円
・ 18枚から30枚であれば,150gまでの210円
・ 31枚から53枚であれば,250gまでの250円
・ 54枚から111枚であれば,500gまでの390円
・ 113枚から232枚であれば,1kgまでの580円
(2) 特別送達の郵便料金の目安
    特別送達の場合,通常の郵便料金に1005円(内訳は,一般書留料金435円及び特別送達料金570円)が加算されますから,枚数別の金額の目安は以下のとおりとなります。
・ 7枚以下であれば,1125円
→ このサイズであれば定形郵便物が利用されますから,実際には1089円となります。
・ 8枚から17枚であれば,1145円
・ 18枚から30枚であれば,1215円
・ 31枚から53枚であれば,1255円
・ 54枚から112枚であれば,1395円
・ 113枚から232枚であれば,1585円


第5 期日への出頭旅費の計算方法
1 同一簡易裁判所管内から出頭した場合
・ 住所地から直線距離で500m以内であれば0円であり,住所地から直線距離で500m以上であれば300円です(費用法2条4号イ(1)本文,費用規則2条1項2号)。
2 簡易裁判所を超えて出頭した場合
(1) 以下のいずれかの計算式で算定されます。
① 直線距離に基づく額の償還(費用法2条4号イ(1)本文,費用規則2条1項1号)
・ 往復分の旅費に相当するものです(民事訴訟費用等に関する執務資料(全訂版)14頁の注3参照)。
・ 住所地簡易裁判所と出頭地簡易裁判所の直線距離を基準として,近距離,中距離及び長距離に区分して,各区分に相応した旅費単価が設定されています(最低額は300円です。)。
近距離(10km以上100km未満)の場合,1km当たり30円。
中距離(100km以上301km未満)の場合,1km当たり50円
長距離(301km以上)の場合,301km未満の部分は1km当たり50円,301km以上の部分は1km当たり40円
② 実費額の償還(費用法2条4号イ(1)ただし書)
・ 旅行が通常の経路・方法であること及び現に支払った交通費の額が,直線距離に基づく額を超えることを明らかにする領収書,乗車券,航空機の搭乗券の控え等の文書が提出された場合,現に支払った交通費の額の償還を受けることができます。
(2)ア 大阪簡裁と堺簡裁の直線距離は13kmですから,1回当たりの出頭旅費は390円となります。
イ 大阪簡裁と東京簡裁の直線距離は401kmですから,1回当たりの出頭旅費は1万9040円となります。
    なお,私の経験では,乗車区間(例えば,「東京~新大阪利用分」という記載)及び宛名を自分で補充した領収書を提出すれば,「旅行が通常の経路及び方法によるものであること並びに現に支払つた交通費の額が当該最高裁判所が定める額を超えることを明らかにする領収書・・・が提出された」ということで,指定席利用の東海道新幹線の往復料金(通常期の場合,2万9440円)が実費額の償還として認められました。
3 訴訟代理人の旅費
(1) 訴訟代理人の旅費は,当事者等が出頭した場合における旅費として裁判所が相当と認める額を超えることができません(費用法2条5号ただし書)。
(2) 民事訴訟費用等に関する執務資料(全訂版)19頁には以下の記載があります。
    費用額確定処分が裁判所書記官の権限とされていること(民訴法71条1項)に鑑みると,法2条5号ただし書の「裁判所」とは,広義の司法機関のうち裁判所書記官を指すと考えられる。裁判所書記官としては,当事者間の公平を図るという観点から代理人の旅費等の上限額が設定された趣旨を踏まえた上で,相当と認める額を決めることになる。

第6 弁論準備手続期日に電話会議で出席した場合であっても,期日への出頭日当が認められること
1 札幌高裁平成26年6月25日決定の理由の概要は以下のとおりであって,当事者又は訴訟代理人が弁論準備手続期日に電話会議で出席した場合であっても,3950円の「日当」(費用法2条4号ロ(当事者の場合)又は2条5号(代理人の場合))が訴訟費用として認められると判示しました。
    費用法2条4号,5号は,当事者等又は代理人が期日に出頭するための「日当」が,当事者等又はその他の者が負担すべき民事訴訟等の費用の範囲であり,その額は「出頭・・・に現実に要した日数」に応じて最高裁判所が定める額である旨定めているところ,電話会議の方法による弁論準備手続期日に出頭しないでその手続に関与した場合でも,「期日に出頭しないで同項(注:民訴法170条3項)の手続に関与した当事者は、その期日に出頭としたものとみなす」とされており(同条4項),費用法は,前記の場合を「日当」の対象から除外していない。そうすると,前記の場合においても「日当」を訴訟費用額として認めた本件処分は相当である。
    また,訴訟費用額確定処分は,基本事件について,その訴訟記録に基づき,訴訟費用の負担の額を費用法等で定められた算定方法により確定するものであり,基本事件ごとに算定されるものである。したがって,基本事件の代理人が基本事件の期日を利用して他の事件の期日に出頭している可能性がある場合であっても,基本事件の「旅費」を算定するに当たり,基本事件の訴訟記録及び当事者が提出した訴訟費用額の疎明に必要な書面において基本事件の期日を利用した他事件への出頭状況を示す証拠資料があるなど特段の事情がない限り,これを考慮する必要はないというべきである。そして,本件において前記特段の事情は認められない(また,訴訟費用額確定処分においては特別な証拠調べが予定されていない上,異議審ないし抗告審において調査嘱託等の証拠調べをすることが許されるとしても,本件において代理人が同一日に他の事件の期日に出頭したことの有無に関する調査嘱託等の証拠調べを行う必要は認められない。)。そうすると,Y代理人が出頭した期日の「旅費」の全額を訴訟費用額として認めた本件処分は相当である。
2 最高裁平成26年12月17日決定は,「所論の点に関する原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。」と判示して許可抗告を棄却しました。
3 判例時報2291号(2016年6月11日号)16頁及び17頁が出典です。

第7 当事者尋問と訴訟費用の関係
1 原則として追加の訴訟費用は発生しないこと
(1) 当事者尋問の場合,旅費日当の支給はなく,期日への出頭旅費及び出頭日当が訴訟費用として認められるに過ぎません。
(2) 当事者と訴訟代理人の両方が期日に出頭した場合,期日への出頭旅費及び出頭日当は当事者についてしか認められません(費用法2条5号本文の「(当事者等が・・・期日に出頭した場合を除く。)」参照)。
    そして,訴訟代理人に主尋問をしてもらった場合,当事者及び訴訟代理人の両方が期日に出頭しているわけですから,訴訟代理人の期日への出頭旅費及び出頭日当が訴訟費用として発生することはありません。
2 例外的に追加の訴訟費用が発生する場合 
(1) 当事者が呼出しを受けて期日に出頭した場合,期日への出頭旅費及び出頭日当は当事者及び訴訟代理人の双方について認められます(費用法2条5号本文の「(当事者等が出頭命令又は呼出しを受けない期日に出頭した場合を除く。)」の反対解釈)。
    そのため,呼出状(民事訴訟規則127条本文・108条)の送達を受けた当事者の当事者尋問の場合,訴訟代理人の期日への出頭旅費及び出頭日当が当事者のそれとは別に訴訟費用として発生します。
(2) 期日への出頭日当は1日当たり3950円です(費用法2条4号ロ・費用規則2条2項)。

第8 証人尋問の旅費日当
1 総論
(1)ア 証人尋問に出席した証人の場合,旅費日当(費用法18条1項)を請求できます。
    ただし,証人からの旅費日当の請求が予想される場合,証人尋問を申請した当事者(つまり,主尋問をする当事者)が旅費日当相当額を事前に裁判所に納付する必要があります費用法11条1項1号・2項及び12条1項)から,当事者及び裁判所に余計な事務手続が発生しないよう,証人が旅費日当を放棄することが多いです。
イ 民事実務講義案1(三訂版)180頁には「申出当事者側に属するか近しい証人にあっては,裁判所に対し旅費日当等の請求をしないことが多い。これは,申出当事者において旅費日当等について事実上処理することが多いためと思われる。そのため,申出当事者に事前に確認しておくことも必要である。」と書いてあります。
(2)ア 証人が旅費日当を請求した場合,証人尋問終了後に裁判所から旅費日当を支払ってもらえます。
    この場合,証人の旅費日当は訴訟費用額に含まれることとなります。
イ 証人尋問を申請した当事者が旅費日当相当額を予納せずに直接,証人に支払った場合,そのお金は訴訟費用とはなりませんから,勝訴したとしても相手方に請求することはできません。
2 証人尋問の旅費

(1) 鉄道,フェリー及び飛行機の実費を支給される他(費用法18条1項及び21条),徒歩による移動分については別途,1km当たり37円以下のお金を支給されます(費用規則6条1項のほか,佐藤法律事務所HPの「証人は徒歩でも旅費が出る?(証人の旅費について)」参照)。
(2) 最寄り駅から裁判所までのタクシー代については,費用法21条所定の「鉄道賃、船賃、路程賃及び航空賃」のいずれにも該当しないから出ないと思います。
3 証人尋問の日当 
・ 証人等の日当額は8000円以下であります(費用規則7条のほか,裁判所HPの「証人等日当及び宿泊(止宿)料」参照)ところ,証人等の日当の支給基準について(平成14年6月25日付の最高裁判所事務総長通達)によれば,尋問所要時間に応じて以下のとおりとなっています。
① 2時間以内の場合,2960円以上3950円以内
② 2時間を超え4時間以内の場合,3950円を超え5780円以内
③ 4時間を超える場合,5780円を超え8050円以内

第9 証人に対する金銭の提供の取扱い
1 解説弁護士職務基本規程第3版208頁には以下の記載があります。
    証人の出廷や打合せの負担を考慮し、一定額の金銭の提供を申し出ることは許されるか。証人は、請求すれば国から旅費・日当が支給されるが、事前の打合せに要する旅費等は支給されない。証人の現実の負担を考慮すれば、いかなる場合も一切許されないというのは疑問があるが、金額の多寡(実費を基本とすべきであろう)や提供の時期、方法等、公正さを疑われることのないよう、十分に留意すべきである。
2 民事訴訟において,証人又は当事者本人として,一方の当事者(甲)に不利な虚偽の陳述をした者(乙)が,その後翻意し,甲に対し,真実を陳述する旨申し出るとともに,その対価として金員を要求した場合,甲が自己の権利を守るため必要であると考えて,乙との間で,真実を陳述することに対する対価として金員を支払う旨の契約を締結したとしても,右契約は,公序良俗に反します(最高裁昭和45年4月21日判決)。

第10 訴訟費用の負担の裁判
1 訴訟費用の敗訴者負担の原則
・ 訴訟費用は敗訴の当事者の負担となります(民事訴訟法61条)。
2 一部敗訴の場合の負担
・ 一部敗訴の場合における各当事者の訴訟費用の負担は,裁判所がその裁量で定めます。
    ただし,事情により,当事者の一方に訴訟費用の全部を負担させることができます(民事訴訟法64条)。
3 訴訟費用の負担の裁判
(1) 裁判所は,事件を完結する裁判(通常は,終局判決です。)において,職権で,その審級における訴訟費用の全部について,その負担の裁判をしなければなりません(民事訴訟法67条1項)。
    例えば,全部認容判決の場合,判決主文において「訴訟費用は被告の負担とする。」などと記載され,一部認容判決の場合,判決主文において「訴訟費用はこれを10分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。」などと記載されるのであって,判決主文では訴訟費用の負担割合だけが記載されています。
(2) 不必要な行為をしたり,訴訟を遅滞させたりした場合,全部勝訴したとしても訴訟費用の一部を負担させられることがあります(民事訴訟法62条及び63条)。
(3) 上級の裁判所が本案の裁判を変更する場合(例えば,高裁が地裁判決を取り消す場合),訴訟の総費用について,その負担の裁判をしなければなりません(民事訴訟法67条2項)。
    例えば,高裁が地裁判決を取り消して控訴人の請求をすべて認容した場合,判決主文において「訴訟費用は,第1,2審を通じて被控訴人の負担とする。」などと記載されます。
4 法定代理人等の費用償還
・ 法定代理人,訴訟代理人,裁判所書記官又は執行官が故意又は重大な過失によって無益な訴訟費用を生じさせたときは,受訴裁判所は,申立てにより又は職権で,これらの者に対し,その費用額の償還を命ずることができます(民事訴訟法69条1項)。


第11 平成16年に検討された,弁護士費用の敗訴者負担制度
1 訴訟係属後,当事者双方による共同の申立てがあったときは,訴訟代理人の報酬に係る費用を訴訟費用として敗訴者の負担とすることを主な内容とする,民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案(第159回国会閣法第65号)は,平成16年3月2日に第159回国会に提出されたものの,同年12月3日に第161回国会の閉会により審査未了で廃案となりました。
2(1) 訴訟費用として敗訴者の負担となる弁護士報酬は以下のとおりとすることが検討されていました。
訴額が  10万円の場合,1万円
訴額が  50万円の場合,5万円
訴額が 100万円の場合,10万円
訴額が 500万円の場合,20万円
訴額が1000万円の場合,30万円
訴額が5000万円の場合,42万円
訴額が   1億円の場合,57万円
訴額が  10億円の場合,327万円(以後,増額なし。)
(2) 法テラス基準の着手金ぐらいの水準でした。
3 費用法の一般原則に即して,訴額に応じて必要最小限の法定額を定めるものであって,当事者が複数の代理人を選出しても増額はしませんし,負担額の合意を認めるものでもありませんでしたし,実際に訴訟代理人に支払うべき額とは関係がないとされました。
4 民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案(弁護士費用の敗訴者負担制度に関するもの。平成16年12月廃案)に関する法律案審議録(法務省の開示文書)15頁ないし18頁が分かりやすいです。
5 日弁連HPに「弱者の裁判を受ける権利を侵害する「弁護士報酬敗訴者負担」法案に反対する決議」(平成16年10月8日付)が載っています。

第12 訴訟費用額の確定手続
1 訴訟費用額の決定権者及び決定時期
(1) 訴訟費用の負担の額はその負担の裁判が執行力を生じた後に申立てにより,第一審裁判所の裁判所書記官が定めます(民事訴訟法71条1項)。
(2) 判決の場合,判決の確定後に訴訟費用額の確定処分の申立てがされて定められることとなります。
2 訴訟費用額の確定処分の申立て
(1) 訴訟費用額の確定処分の申立ては,書面でしなければなりません(民事訴訟規則24条1項)。
(2)ア この申立てにより訴訟費用の額を定める処分を求める場合,当事者は,費用計算書及び費用額の疎明に必要な書面を第一審裁判所の裁判所書記官に提出するとともに,申立書及び費用計算書を相手方に郵便又はFAXにより直送(民事訴訟規則47条1項)しなければなりません(民事訴訟規則24条2項)。
    ただし,旅費について実費額の償還を求める場合でない限り,裁判所の事件記録を見れば訴訟費用額の計算ができるため,「費用額の疎明に必要な書面」は通常,ありません。
イ 費用計算書には,支出した費目についてその種目とその額を具体的に記載しなければなりません。
(3) 訴訟費用額の確定処分の申立てをする場合,訴訟費用額の確定処分について自分及び相手方への送達のための郵券を納める必要がありますところ,この郵券代も訴訟費用となります。
    ただし,訴訟費用額の確定処分は必ずしも送達を要しません(民事訴訟法71条3項参照)から,訴訟に敗訴して訴訟費用を請求される立場となった場合,自分への送達については裁判所の窓口で受領することとし,相手方への送達については普通郵便で送付するように依頼すれば,郵券代を84円に抑えることができます。
(4) 松江地裁HPに「訴訟費用額確定処分申立書の提出について」が載っています。
 訴訟費用額の確定処分
(1) 裁判所書記官は,訴訟費用額の確定処分をする前に相手方に対し費用計算書及び費用額の疎明に必要な書面並びに申立人の費用計算書の記載内容についての陳述を記載した書面を、一定の期間内に提出すべき旨を催告しなければなりません(民事訴訟規則25条1項)。
    相手方がこの期間内に費用計算書又は費用額の疎明に必要な書面を提出しない場合,裁判所書記官は,申立人の費用のみについて,訴訟費用の負担の額を定める処分をすることができます(民事訴訟規則25条2項本文)。
(2) 当事者双方が訴訟費用を負担する場合で,相手方が期間内に費用計算書等を提出したときは,各当事者が負担すべき費用は,その対当額について相殺があったものとみなされます(民事訴訟法71条2項,民事訴訟規則27条)。
(3) 訴訟費用額の確定処分は,これを記載した書面を作成し,その書面に処分をした裁判所書記官が記名押印してしなければなりません(民事訴訟規則26条)。
    この処分は、相当と認める方法で告知することによって、その効力を生じます(民事訴訟法71条3項)。
(4) 訴訟費用額の確定処分は,判決と同様に,その正本に基づいて,相手方の財産に対して強制執行をすることができます。
(5)ア 破産債権に関する訴訟が破産手続開始決定前に係属した場合において,当該訴訟が破産管財人に受継されることなく終了した場合,当該訴訟にかかる訴訟費用請求権は破産債権になると思います(破産法44条3項反対解釈の他,更生債権に関する最高裁平成25年11月13日決定参照)。
イ 破産事件における書記官事務の研究-法人管財事件を中心として- 385頁には「訟当事者の一方に破産手続開始決定がされたときには,訴訟の場合と同様に,訴訟費用確定処分の申立てを認めるべきではなく,既に申立てがある場合には,破産手続開始決定によって中断すると考えることができる。」と書いてあります。
4 訴訟費用額の確定処分に対する不服申立て
(1) 訴訟費用額の確定処分に対する異議の申立ては,その告知を受けた日から1週間の不変期間内にしなければなりませんし(民事訴訟法71条4項),執行停止の効力を有します(民事訴訟法71条5項)。
(2) 裁判所は,訴訟費用額の確定処分に対する異議の申立てを理由があると認める場合において,訴訟費用の負担の額を定めるべきときは,自らその額を定めなければなりません(民事訴訟法71条6項)。
(3) 異議の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることで,抗告審の判断をもらうことができますし(民事訴訟法71条7項),抗告審の決定に対しては特別抗告(民事訴訟法336条)及び許可抗告(民事訴訟法337条)をすることができます。


第13 関連記事その他
1 司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律(平成15年7月25日法律第128号)により,平成16年1月1日以降については,①当事者及び代理人の旅費日当,並びに②書類の作成及び提出の費用の計算が簡素化されました(民事訴訟費用等に関する執務資料(全訂版)1頁ないし3頁参照)。
2 家事事件の場合,別表第一事件の調停申立ての手数料は800円であり(費用法別表第一・15項),別表第二事件の申立て手数料は1200円であり(費用法別表第一・15項の2),高裁への抗告提起の手数料はそれらの1.5倍です(費用法別表第一・18項(1))
3(1) 裁判員裁判における旅費日当については,国税庁HPの「証人、裁判員に対する旅費等の支給について」が参考になります。
(2) エール少額短期保険HP「【保存版】裁判でかかる費用のすべて|負担を減らす工夫も紹介」が載っています。
4 刑事事件の訴訟費用の具体例としては,国選弁護人の報酬及び証人に支給された日当になります(検察庁HPの「裁判の執行等について」参照)。
5(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 「民事訴訟費用等に関する法律」,「刑事訴訟費用等に関する法律」等の運用について(平成9年12月22日付の最高裁判所事務総長通達)
・ 訴訟上の救助により支払を猶予した裁判費用に関する債権管理について(平成22年3月16日付の最高裁判所経理局監査課課長補佐及び総務局第三課課長補佐の事務連絡)
・ 鑑定委員に対する日当等の支給について(平成4年7月8日付の最高裁判所民事局長,総務局長及び経理局長通達)
・ 片道100キロメートル未満の区間の鉄道旅行における特別急行料金等の支給について(平成22年11月9日付の最高裁判所経理局長の通知)
・ 片道100キロメートル未満の区間の鉄道旅行における特別急行料金等の支給について(平成28年7月29日付の最高裁判所経理局長の通知)
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 宣誓書及び宣誓拒絶
・ 証人が正当な理由なく出頭しなかった場合の取扱い
・ 裁判員等の日当
・ 陳述書作成の注意点
 新様式判決
 処分証書と報告文書の違い
・ 二段の推定
・ 文書鑑定
 裁判所が考えるところの,人証に基づく心証形成
 尋問の必要性等に関する東京高裁部総括の講演での発言
 通常は信用性を有する私文書と陳述書との違い
 陳述書の機能及び裁判官の心証形成

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