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訴訟費用とは——費目,計算方法,敗訴者負担と回収手続(令和8年5月のIT化・令和6年10月の郵便料金改定に対応)(AIリライト)

民事訴訟の「訴訟費用」は,訴状に貼る収入印紙代(申立手数料)や書類の送達費用など,法律が費目と額を定めた費用の総称です。自分が依頼した弁護士に支払う報酬は,この訴訟費用には含まれません。この記事では,訴訟費用に何が含まれるか,手数料や送達費用がいくらになるか,敗訴者負担の原則の下でどこまで相手方から回収できるか,そのための費用額確定手続はどう進むかを整理します。

令和8年(2026年)5月21日に民事裁判手続のIT化(令和4年法律第48号)が全面施行され,予納郵券制度の廃止・郵便費用の手数料への一本化・手数料の電子納付・訴状等のオンライン提出義務化などが始まりました。あわせて令和6年(2024年)10月1日に郵便料金が改定されています。この記事はこれらを反映した令和8年7月時点の内容です。個別の金額や取扱いは,事件係属庁や最新の公表資料で確認してください。

本文では,民事訴訟費用等に関する法律を「費用法」,民事訴訟費用等に関する規則を「費用規則」と略します。

第1 訴訟費用の基礎——費目と「弁護士費用は含まれない」こと

1 主な訴訟費用の費目

訴訟費用は,費用法と費用規則が費目と額を定めた費用です。主な費目は次のとおりで,自分が依頼した弁護士に支払う報酬は含まれません。

費目根拠内容の概要
訴えの提起・上訴の提起の手数料費用法2条1号訴状・反訴状・控訴状に貼るなどして納付する収入印紙代(オンライン申立てでは電子納付)。訴えの変更等で手数料額が変わるときは,最終的な請求に対応する額になる。
書類の送付・送達費用費用法2条2号訴状副本・判決正本などの送達費用。従来は予納郵券のうち現実に使用された部分を指したが,オンライン申立てでは手数料に一本化された(第2)。
当事者・訴訟代理人の出頭旅費費用法2条4号イ・5号直線距離に基づく額,又は往復の実費額の償還(第5の1)。
当事者・訴訟代理人の出頭日当費用法2条4号ロ・5号1日当たり3950円(費用規則2条2項)。
証人の旅費費用法18条1項・21条往復の交通費の実費相当額。一定距離を超えると新幹線指定席代が出るが,グリーン席代までは出ない。
証人の日当費用法22条2時間以内の尋問で2960円以上3950円以内(費用規則7条,及び平成14年6月25日付最高裁判所事務総長通達)。
書類の作成・提出の費用費用法2条6号・費用規則別表第二1項審級ごと1500円が基本。準備書面・書証の通数に応じて加算される(下記)。
資格証明書取得費用費用法2条7号相手方が法人のとき,登記事項証明書1通当たり600円(手数料実費)と160円(申請書提出・証明書受領費用)の合計760円(費用規則2条の3)。

「書類の作成・提出の費用」は,審級別に基本1500円で,第一審で終われば1500円,控訴審まで行けば3000円です(費用規則別表第二1項本文)。これに次の通数加算があります(同項ただし書)。

  • 準備書面が6通以上で1000円,21通以上で2000円,36通以上で3000円を加算(以後15通区切りで1000円ずつ加算)。証拠申出書・証拠説明書は当事者の主張を明らかにする書面ではないため,通数加算の対象になりません(民事訴訟費用等に関する執務資料(全訂版)30頁)。
  • 書証が16通以上で1000円,66通以上で2000円,116通以上で3000円を加算(以後50通区切りで1000円ずつ加算)。書証に枝番号があるときは枝番号ごとに1通と数えます(同執務資料31頁)。

例えば地裁で訴状と原告準備書面(20)まで提出し,枝番なしで甲115まで提出した場合,この費用は4500円(1500円+準備書面加算2000円+書証加算1000円)です。文書提出命令の申立てをすると800円が加わります(費用規則別表第二5項イ)。

資格証明書の160円は,消費税5パーセント時代の往復郵便代に由来し,その後の増税でも改定されていません。なお登記事項証明書は,オンライン請求・窓口交付なら490円,オンライン請求・郵送なら520円で取得できます(書面請求の窓口手数料600円は令和7年4月の手数料改定後も据え置かれています)。

2 訴訟に必要な費用のすべてが訴訟費用ではないこと

裁判所は,訴訟費用について「訴訟を追行するのに必要なすべての費用を含むわけではなく,例えば,弁護士費用は訴訟費用に含まれません」と説明しています(裁判所ウェブサイト「訴訟費用について」)。

この点について最高裁は,費用法2条が費目と額を法定した趣旨を,「当該手続に一般的に必要と考えられるものを定型的,画一的に定めることにより,……当事者等に予測できない負担が生ずること等を防ぐとともに,当該費用の額を容易に確定することを可能とし,……適正な司法制度の維持と公平かつ円滑なその利用という公益目的を達成する趣旨に出たもの」と述べています(最高裁令和2年4月7日判決・民集74巻3号646頁。強制執行に要した費用のうち費用法2条各号の費目のものを不法行為の損害として請求することはできないとした事案)。

この趣旨から,法定された費目に当たらない支出は訴訟費用になりません。当事者が準備書面を相手方に直送するためにした支出については,費用法2条2号は類推適用されず,訴訟費用になりません(最高裁平成26年11月27日決定・民集68巻9号1486頁)。

もっとも,訴訟費用として回収できないことと,実体法上の損害賠償として請求できることは別です。不法行為や安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求では,相当因果関係の範囲で弁護士費用を損害として請求できます。契約の文言を根拠とする「弁護士費用実額」の請求可能性については「#モデル契約書の沼」の一考察(改訂版が自由と正義2021年12月号48頁以下に掲載)が,責任の種類による分類はみずほ中央法律事務所の解説が参考になります。

第2 令和8年5月の民事裁判IT化で変わった訴訟費用の扱い

令和8年5月21日に施行された改正民事訴訟法等(令和4年法律第48号)により,訴訟費用の納め方が大きく変わりました。弁護士が代理する事件では次が原則になります。改正の全体像は裁判所「民事裁判手続のデジタル化」を参照してください。

1 予納郵券の廃止と郵便費用の手数料一本化

従来は,申立手数料とは別に,送達用の郵便費用を予納郵券(郵便切手)で納める必要がありました。改正後は,オンラインで行うことができる申立て(費用法3条2項の「特定申立て」)について,郵便費用相当額が手数料に組み込まれ,予納郵券を納める必要がなくなりました(費用法11条1項ただし書)。予納の規定(費用法12条・13条)自体は,特定申立て以外の手続などのために残っています。

2 手数料の電子納付とオンライン提出義務

特定申立て等の手数料は,最高裁判所規則の定めにより現金(電子納付。ペイジー)で納めるのが原則となり,収入印紙の貼付は,書面で申立てができる場合でやむを得ない事由があるときの例外的な方法になりました(費用法8条)。

また,委任を受けた訴訟代理人(弁護士)は,事件の申立て等を電子情報処理組織(裁判所のシステム)を使ってしなければならないとされました(民事訴訟法132条の11第1項1号)。本人訴訟では,従来どおり書面で提出することもできます。送達も,当事者がシステムで裁判書類を閲覧・ダウンロードした時,又は閲覧できる旨の通知から1週間を経過した時に効力を生じるシステム送達が導入されています。

3 オンライン申立てと書面申立てで手数料額が異なること

郵便費用が手数料に組み込まれた結果,同じ訴額でも,オンライン(電子)申立てか書面申立てか,また施行日前に提起された旧法適用事件かによって手数料額が異なります。裁判所の手数料額早見表で確認できます。民事・行政訴訟の訴え提起手数料の例は次のとおりです(被告1名を前提とします。被告が増えると1名につき2000円が加算されます)。

訴額電子申立て書面申立て参考:旧法適用事件・人事訴訟
100万円11,400円12,500円10,000円
500万円31,400円32,500円30,000円
1000万円51,400円52,500円50,000円
3000万円111,400円112,500円110,000円
5000万円171,400円172,500円170,000円

「旧法適用事件・人事訴訟」の欄が,郵便費用相当額を含まない従来の手数料額(費用法別表第一の基本額)です。この額に対し,電子申立てでは訴額にかかわらず一律1400円,書面申立てでは一律2500円の郵便費用相当額が上乗せされています。以下の第3では,まず従来からの基本額の計算方法を説明します。

第3 訴えの提起・上訴の手数料

1 訴額に基づく算定

(1) 手数料額の計算方法

訴えの提起手数料(費用法3条)は,民事訴訟法8条1項・9条により算定した訴訟の目的の価額(訴額)に基づいて算出されます。従来からの基本額(費用法別表第一)は,訴額の区分ごとに次のように積み上げます。

  • 100万円までの部分は,10万円までごとに1000円
  • 100万円を超え500万円までの部分は,20万円までごとに1000円
  • 500万円を超え1000万円までの部分は,50万円までごとに2000円
  • 1000万円を超え10億円までの部分は,100万円までごとに3000円

この計算により,基本額は訴額100万円で1万円,500万円で3万円,1000万円で5万円,3000万円で11万円,5000万円で17万円になります。オンライン申立て・書面申立ての場合はこれに郵便費用相当額が加わります(第2の3)。区分ごとの具体的な額は,手数料額早見表で確認できます。

(2) 訴額とは

訴額は,原則として訴えで主張する利益を金銭に見積もった額です。財産権上の請求でない請求(非財産権上の請求)に係る訴えでは,訴額は160万円とみなされます。財産権上の請求でも,訴訟の目的の価額を算定することが極めて困難なものは,同じく160万円とみなされます(費用法4条2項)。

(3) 算定が著しく困難な場合の裁量算定

財産権上の請求で訴訟物の価額の算定が著しく困難な場合は,裁判長又は裁判所が,算定にとって重要な諸要因を確定し,これを基礎として裁量により価額を算定することができます(最高裁昭和49年2月5日判決・民集28巻1号27頁)。算定が「極めて困難」なものは前記(2)の160万円みなしによりますが,「著しく困難」でもなお算定が可能な場合は,この裁量算定によることになります。

(4) 算定の方法と基準時

訴額の算定は,必ずしも鑑定その他の証拠調べによる必要はなく,他の方法で認定することも許されます。また,算定は訴え提起の時が基準となります(最高裁昭和47年12月26日判決。判例秘書に掲載。裁判所ウェブサイト未掲載)。

2 訴額通知と個別の算定例

(1) 訴額通知

実務では,訴額は,訴訟物の価額の算定基準について(昭和31年12月12日付の最高裁判所民事局長通知)(訴額通知)に基づいて算定されます。訴額通知は裁判所を拘束するものではありませんが(前掲最高裁昭和47年12月26日判決),訴額の具体的算定を容易とする特段の事情がない限り,訴額は訴額通知の示す基準に従って算定するのが相当とされています(最高裁昭和44年6月24日判決・民集23巻7号1109頁参照)。

(2) 土地を目的とする訴訟

土地を目的とする訴訟物の価額の算定基準は,平成6年4月1日から当分の間,固定資産税評価額に2分の1を乗じた金額が標準とされています(土地を目的とする訴訟の訴訟物の価額の算定基準について(平成6年3月28日付の最高裁判所民事局長の通知))。

(3) 住民訴訟

地方自治法242条の2第1項4号所定の損害賠償請求訴訟(住民訴訟)は,非財産権上の請求として訴額は160万円とされます(最高裁昭和53年3月30日判決・民集32巻2号485頁)。住民訴訟の請求の性質と個数については判例タイムズ1439号(2017年10月1日号)に「住民訴訟の訴額」が掲載されています。実例として,3件の旅費支出行為に関しそれぞれ損害賠償を求める住民訴訟の訴額を160万円×3=480万円とした裁判例があります(東京高裁平成22年4月2日決定・判例時報2121号4頁。裁判所ウェブサイト未掲載)。

被告が控訴する場合について,〔三訂版〕事例からみる訴額算定の手引29頁・30頁は,「住民訴訟においては,請求額にかかわらず,原告の訴え提起時及び控訴提起時の訴額を一律に160万円と解すべきこととの均衡上,被告控訴の訴額も160万円と解するのが相当である」とし,裁判所書記官研修所「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」105頁を引いています。

(4) 労働基準法114条の付加金

労働基準法114条の付加金の請求は,同条所定の未払金の請求とともにされるときは,民事訴訟法9条2項にいう訴訟の附帯の目的である損害賠償又は違約金の請求に含まれ,その価額は訴訟の目的の価額に算入されません(最高裁平成27年5月19日決定・民集69巻4号635頁)。

3 上訴の手数料

控訴の提起手数料は訴えの提起手数料の1.5倍,上告の提起又は上告受理の申立て手数料は2倍です(費用法別表第一)。具体的な額は,控訴・上告についても手数料額早見表に,旧法適用事件・書面申立て・電子申立ての別に掲載されています。

4 過納手数料の還付

(1) 還付を受けられる場合

手数料を納めすぎたときは,手数料還付の申立てにより,過大に納めた分の還付を受けられます(費用法9条1項)。また,口頭弁論を経ない却下の裁判が確定したり,最初にすべき口頭弁論期日の終了前に訴えを取り下げたりした場合は,納めた手数料から,その2分の1の額(4000円未満のときは4000円)を控除した額の還付を受けられます(費用法9条2項)。

(2) 申立ての期限と手続

還付の申立ては,申立てができる事由が生じた日(例えば却下の裁判の確定日)から5年以内にしなければなりません(費用法9条5項)。裁判の確定後に申し立てる場合でも,申立書の提出先は当時の事件係属部です。裁判所書記官の処分に対しては,告知を受けた日から1週間の不変期間内に異議を申し立てることができます(費用法9条6項)。

(3) 還付金の受領

還付決定が出たら,還付請求書と還付決定正本を裁判所事務局の出納課に提出すれば,指定した口座への振込みで還付を受けられます。還付請求に際して確定証明書を添付する必要はありません(過納手数料等の還付金の支払等の取扱いに関する平成15年12月18日付の事務連絡)。

第4 郵便費用と特別送達

1 予納郵券から手数料一本化への移行

前記のとおり,オンラインで行うことができる申立てでは郵便費用が手数料に一本化され,予納郵券は不要です(第2の1)。もっとも,特定申立て以外の手続では,従来どおり郵便切手による予納が求められる場面が残ります。予納郵券の組み合わせは裁判所ごとに異なるため,提訴先の裁判所のウェブサイトや事件係で確認してください。

2 特別送達の料金(令和6年10月改定)

訴状副本や判決正本の送達に使われる特別送達の料金は,基本の郵便料金に一般書留料金と特別送達料金を加算した額です。令和6年10月1日の郵便料金改定で基本料金が上がり,令和6年10月1日以降の特別送達の最低料金は1220円以上になりました。内訳は,通常の郵便料金が110円以上,一般書留料金が480円,特別送達料金が630円です(日本郵便「オプションサービスの加算料金一覧」)。

枚数の目安として,第一種郵便物(定形外・規格内)の基本料金は,令和6年10月改定後,50gまで140円,100gまで180円,150gまで270円,250gまで320円,500gまで510円,1kgまで750円です(日本郵便「国内の料金表」)。特別送達では,これに一般書留480円と特別送達630円を加算します。用紙が数枚で定形郵便物(110円)に収まる場合は,最低額の1220円になります。

第5 出頭・尋問と訴訟費用

1 当事者・訴訟代理人の出頭旅費・日当

(1) 旅費の計算

同一の簡易裁判所の管内から出頭した場合,住所地から直線距離で500mまでは0円,500mを超えると300円です(費用法2条4号イ(1)本文,費用規則2条1項2号)。直線距離はグーグルマップの「地点間の距離を測定する」で計測できます。

簡易裁判所を超えて出頭した場合は,次のいずれかで算定します。

  • 直線距離に基づく額の償還(費用法2条4号イ(1)本文,費用規則2条1項1号)。往復分の旅費に相当します(民事訴訟費用等に関する執務資料(全訂版)14頁注3)。住所地の簡易裁判所と出頭地の簡易裁判所の直線距離を基準に,近距離(10km以上100km未満)は1km当たり30円,中距離(100km以上301km未満)は1km当たり50円,長距離(301km以上)は301km未満の部分が1km当たり50円・301km以上の部分が1km当たり40円で計算し,最低額は300円です。
  • 実費額の償還(費用法2条4号イ(1)ただし書)。通常の経路・方法により,直線距離に基づく額を超える交通費を実際に支払ったことを明らかにする領収書等を提出すれば,実費額の償還を受けられます。

例えば,大阪簡裁と堺簡裁の直線距離は13kmで1回当たり390円,大阪簡裁と東京簡裁の直線距離は401kmで1回当たり1万9040円です。実務では,乗車区間と宛名を補充した領収書を提出することで,指定席利用の東海道新幹線の往復料金(通常期で2万9440円)が実費額として認められた例があります。

訴訟代理人の旅費は,当事者本人が出頭した場合の旅費として裁判所が相当と認める額を超えることができません(費用法2条5号ただし書)。ここでいう「裁判所」は,費用額確定処分が裁判所書記官の権限とされていること(民事訴訟法71条1項)に照らし,裁判所書記官を指すと解されています(同執務資料19頁)。

(2) 出頭日当

出頭日当は1日当たり3950円です(費用規則2条2項)。当事者と訴訟代理人の両方が出頭した場合,原則として当事者の旅費・日当だけが認められます(費用法2条5号本文の括弧書き参照)。もっとも,当事者尋問の期日で尋問を受ける当事者と訴訟代理人の双方が出頭した場合や,当事者が出頭命令・呼出しを受けて出頭した場合は,双方の旅費・日当が認められます。

(3) 電話会議・ウェブ会議で出席した場合

弁論準備手続の期日に電話会議で出席した場合でも,出頭日当(費用法2条4号ロ又は5号)が訴訟費用として認められます。電話会議の方法で期日に関与した当事者は出頭したものとみなされ(民事訴訟法170条4項),費用法もこの場合を日当の対象から除外していないためです(札幌高裁平成26年6月25日決定・判例時報2291号16頁。裁判所ウェブサイト未掲載。この決定に対する許可抗告は最高裁平成26年12月17日決定が棄却)。

双方がウェブで参加するウェブ会議についても,それが弁論準備手続の期日として行われた場合(令和5年3月1日以降の取扱い)は,期日が開かれた以上,同様に出頭日当を請求できます。他方,書面による準備手続の協議としてウェブ会議が行われた場合は,期日が開かれたわけではないため,出頭日当は請求できません。

2 当事者尋問と訴訟費用

当事者尋問では,証人のような尋問自体に対する旅費日当の支給はなく,期日への出頭旅費・出頭日当が訴訟費用として認められるにとどまります。当事者と訴訟代理人の双方が出頭している場合,原則として当事者についてのみ認められるため,訴訟代理人が主尋問をした場合でも,訴訟代理人の出頭旅費・日当が別に発生することはありません。

例外は,当事者が呼出しを受けて出頭した場合です。呼出状(民事訴訟規則127条本文・108条)の送達を受けた当事者の当事者尋問では,当事者とは別に,訴訟代理人の出頭旅費・出頭日当(1日3950円)も訴訟費用になります。

3 証人の旅費・日当

(1) 旅費日当の請求と放棄

証人尋問に出頭した証人は,旅費日当を請求できます(費用法18条1項)。ただし,証人からの請求が見込まれる場合,証人尋問を申請した当事者(主尋問をする当事者)が旅費日当相当額を事前に裁判所に予納する必要があります(費用法11条・12条)。そのため,余計な事務手続を避けるべく,証人が旅費日当を放棄することが多くあります。民事実務講義案にも,申出当事者側に属するか近しい証人は,申出当事者が旅費日当を事実上処理することが多いため,裁判所に請求しないことが多い旨の指摘があります。

証人が請求した場合は,尋問終了後に裁判所から旅費日当が支払われ,これが訴訟費用額に含まれます。他方,申請当事者が予納せずに直接証人に支払ったお金は訴訟費用にならず,勝訴しても相手方に請求できません。

(2) 旅費

鉄道・フェリー・航空機の実費が支給されるほか(費用法18条1項・21条),徒歩による移動分は1km当たり37円以下が別途支給されます(費用規則6条1項。佐藤法律事務所「証人は徒歩でも旅費が出る?」参照)。最寄り駅から裁判所までのタクシー代は,費用法21条の「鉄道賃,船賃,路程賃及び航空賃」のいずれにも当たらず,支給されないと考えられます。

(3) 日当

証人の日当は8000円以下です(費用規則7条。裁判所「証人等日当及び宿泊(止宿)料」)。平成14年6月25日付の最高裁判所事務総長通達によれば,尋問の所要時間に応じ,2時間以内は2960円以上3950円以内,2時間超4時間以内は3950円を超え5780円以内,4時間超は5780円を超え8050円以内となっています。

4 証人への金銭提供の可否

証人の出廷や打合せの負担を考慮して一定額の金銭の提供を申し出ることが許されるかについて,解説弁護士職務基本規程(第3版)208頁は,事前の打合せに要する旅費等は国から支給されないため,証人の現実の負担を考慮すれば一切許されないというのは疑問があるとしつつ,金額の多寡(実費を基本とすべき)や提供の時期・方法など,公正さを疑われることのないよう十分に留意すべきとしています。

これに対し,虚偽の陳述をした証人が翻意し,真実を陳述する対価として金員を要求したのに応じて締結された金員支払契約は,公序良俗に反します(最高裁昭和45年4月21日判決・集民99号99頁)。

第6 訴訟費用の負担の裁判

1 敗訴者負担の原則と例外

訴訟費用は,原則として敗訴の当事者が負担します(民事訴訟法61条)。一部敗訴の場合の各当事者の負担は裁判所が裁量で定め,事情により一方に全部を負担させることもできます(同法64条)。また,全部勝訴しても,不必要な行為をしたり訴訟を遅延させたりした場合は,訴訟費用の一部を負担させられることがあります(同法62条・63条)。準備書面等の提出期限を慢性的に徒過した当事者に,民事訴訟法63条を活用して訴訟費用を負担させた運用例も紹介されています。

さらに,法定代理人・訴訟代理人・裁判所書記官・執行官が故意又は重大な過失によって無益な訴訟費用を生じさせたときは,裁判所は,申立て又は職権により,これらの者にその費用額の償還を命ずることができます(民事訴訟法69条1項)。

2 負担の裁判の方法

裁判所は,事件を完結する裁判(通常は終局判決)において,職権で,その審級の訴訟費用の全部について負担の裁判をしなければなりません(民事訴訟法67条1項)。判決主文では負担の割合だけが示され,例えば全部認容判決では「訴訟費用は被告の負担とする。」,一部認容判決では「訴訟費用はこれを10分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。」などと記載されます。

上級審が本案の裁判を変更する場合(例えば高裁が地裁判決を取り消す場合)は,訴訟の総費用について負担の裁判をします(同条2項)。この場合,主文では「訴訟費用は,第1,2審を通じて被控訴人の負担とする。」などと記載されます。

3 平成16年に廃案となった弁護士費用敗訴者負担制度

訴訟係属後に当事者双方の共同の申立てがあったときに,訴訟代理人の報酬に係る費用を訴訟費用として敗訴者に負担させることを主な内容とする民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案(第159回国会閣法第65号)は,平成16年3月2日に提出されましたが,同年12月3日に審査未了で廃案となりました。

敗訴者の負担とする弁護士報酬額は,訴額に応じて必要最小限の法定額(訴額100万円で10万円,1000万円で30万円,1億円で57万円など。法テラス基準の着手金程度の水準)とし,代理人が複数でも増額せず,実際に代理人に支払う額とは関係しないものとされていました。詳細は法務省の開示文書(法律案審議録)が,反対の立場は日弁連「弁護士報酬敗訴者負担」法案に反対する決議(平成16年10月8日付)が参考になります。

第7 訴訟費用額の確定手続

1 決定権者,時期及び申立期限

訴訟費用の負担の額は,負担の裁判が執行力を生じた後に,申立てにより,第一審裁判所の裁判所書記官が定めます(民事訴訟法71条1項)。判決の場合は,判決の確定後に訴訟費用額確定処分の申立てをして定められます。この申立ては,訴訟費用の負担の裁判が確定した日から10年以内にしなければなりません(同条2項)。

もっとも,訴訟費用額確定処分の利用は低調で,法制審議会の資料では,ここ20年で申立て件数が終局件数の1パーセントを超えたことはないとされています(民事裁判手続のIT化に関する法制審議会の議事録による)。原告としても,敗訴した相手方から訴訟費用を回収するかどうかは,回収額と手間を見比べて判断することになります。

2 確定処分の申立ての方法

申立ては書面でしなければなりません(民事訴訟規則24条1項)。当事者は,費用計算書と費用額の疎明に必要な書面を第一審裁判所の裁判所書記官に提出するとともに,申立書と費用計算書を相手方に直送します(同条2項,同規則47条1項)。もっとも,旅費について実費額の償還を求める場合でない限り,事件記録から費用額を計算できるため,疎明資料は通常不要です。費用計算書には,支出した費目の種目と額を具体的に記載します。

確定処分自体の送達費用も訴訟費用になります。ただし,確定処分は必ずしも送達を要しないため(民事訴訟法71条4項参照),費用を請求される側は,自分への送達を裁判所窓口での受領とし,相手方への送付を普通郵便に依頼することで,送付費用を抑えることが考えられます。もっとも,システム送達が原則となる事件では,この点は電子的な送達に置き換わります。申立書の書式は各裁判所のウェブサイトに掲載されています。

3 確定処分と相殺のみなし

裁判所書記官は,確定処分の前に,相手方に対し,費用計算書等と,申立人の費用計算書の記載内容についての陳述を記載した書面を一定期間内に提出すべき旨を催告します(民事訴訟規則25条1項)。相手方がこの期間内に費用計算書等を提出しないときは,申立人の費用のみについて負担の額を定めることができます(同条2項本文)。

当事者双方が訴訟費用を負担する場合で,相手方が期間内に費用計算書を提出したときは,各当事者の負担すべき費用は,その対当額について相殺があったものとみなされます(民事訴訟法71条3項,民事訴訟規則27条)。確定処分は,これを記載した書面を作成し,処分をした裁判所書記官が記名押印してし,相当と認める方法で告知することによって効力を生じます(民事訴訟規則26条,民事訴訟法71条4項)。確定処分は,判決と同様に,その正本に基づいて相手方の財産に強制執行をすることができます。

4 確定処分に対する不服申立て

確定処分に対する異議の申立ては,告知を受けた日から1週間の不変期間内にしなければならず(民事訴訟法71条5項),執行停止の効力を有します(同条6項)。裁判所は,異議を理由があると認め,訴訟費用の負担の額を定めるべきときは,自らその額を定めなければなりません(同条7項)。異議の申立てについての決定に対しては即時抗告ができ(同条8項),抗告審の決定に対しては特別抗告(同法336条)・許可抗告(同法337条)ができます。

第8 関連する論点と資料

1 破産・更生手続との関係

更生債権に関する訴訟が更生手続開始前に係属し,会社更生法156条又は158条により受継されることなく終了したときは,その訴訟に係る訴訟費用請求権は更生債権に当たります(最高裁平成25年11月13日決定・民集67巻8号1483頁)。破産債権に関する訴訟が破産手続開始決定前に係属し,破産管財人に受継されることなく終了した場合の訴訟費用請求権も,同様に破産債権になると考えられます(破産法44条3項の反対解釈のほか,前掲決定参照)。

なお,抗告提起手数料の納付を命ずる補正命令を受けた者が期間内に納付しなかった場合でも,不納付を理由とする抗告状却下命令が確定する前に納付すれば,瑕疵は補正され,抗告状は当初に遡って有効になります(最高裁平成27年12月17日決定・集民251号121頁)。

2 訴訟上の救助

訴訟上の救助の決定を受けた者の全部敗訴が確定し,かつ,その者に訴訟費用を全部負担させる裁判が確定した場合には,救助決定は当然にその効力を失い,裁判所は,救助決定を民事訴訟法84条に従って取り消すことなく,猶予した費用の支払を命ずることができます(最高裁平成19年12月4日決定・民集61巻9号3245頁)。救助により納付を猶予された費用の取立決定には執行力があります(費用法16条1項)。

また,弁護士費用を含む訴訟費用の全額を一方の当事者に負担させる外国裁判所の裁判は,実際に生じた費用の範囲内でその負担を命ずるものである限り,民事訴訟法118条3号の「公の秩序」に反しません(最高裁平成10年4月28日判決・民集52巻3号853頁)。

3 掲載資料(最高裁通達等)

訴訟費用の運用に関する最高裁の通達・規程等を掲載しています。

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出典

法令

裁判例

公的資料・手続案内

文献

  • 民事訴訟費用等に関する執務資料(全訂版)(最高裁判所事務総局民事局監修,司法協会)14頁・19頁・30頁・31頁
  • 〔三訂版〕事例からみる訴額算定の手引(新日本法規)29頁・30頁
  • 民事実務講義案1(司法協会)
  • 解説弁護士職務基本規程(第3版)(日本弁護士連合会)208頁
  • 破産事件における書記官事務の研究——法人管財事件を中心として——(司法協会)