第1 この記事の対象と納付までの結論
令和8年10月3日追補:本記事に関係する準備の手引の10月2日改訂事項を反映した。改訂の全体と事務所内の確認方法は,mints準備の手引の令和8年10月2日改訂―法律事務所が見直す7つの運用を参照されたい。
1 令和8年5月21日以後の第一審訴訟を対象とする
本記事は,令和8年5月21日以後に通常の民事訴訟を第一審裁判所へ提起し,mints(民事裁判書類電子提出システム)に表示された申立手数料を納付する場面を対象とする。
同日前に提起された旧法事件,控訴・上告その他の申立て及び訴訟費用負担の確定では,手数料又は郵便費用の取扱いが異なるため,本記事の金額をそのまま用いることはできない。
訴状の作成から証拠提出までを含む全体の流れは,mintsで訴訟を提起する方法で説明している。
本記事は,そのうち金額の確定,郵便費用相当額,Pay-easyによる支払,納付期限及び還付に対象を絞る。
2 裁判所の納付情報を確認してから支払う
mintsの新規申立てフォームに表示される手数料は概算であり,申立人がその金額を直ちに納付する手続ではない。
訴状を提出した後,裁判所が納付情報を登録すると,納付義務者として選択された者及びその補助者のメールアドレスへ通知が送られる(準備の手引(令和8年10月2日更新版)16頁)。申立てを操作した者や共同受任者全員への通知を前提にせず,選択された納付義務者と実際の納付担当を確認する。
メールを受けた後は,mintsの「手数料納付情報一覧」で,①手数料,②納付期限,③納付番号,④収納機関番号,⑤確認番号を確認する。
その番号をPay-easy対応のインターネットバンキング又はATMへ入力し,表示された支払先と金額を照合してから納付する。
第2 mintsで手数料の確定額を確認する方法
1 新規申立てフォームの金額は概算である
裁判所のフェーズ3準備手引は,新規申立てフォームへ訴額と被告数を入力すると,手数料額の概算が自動計算されると説明している。
同手引は,正確な手数料額は訴状提出後に裁判所から通知される納付情報で確認すると明記する。
訴額は,請求欄へ入力した数字だけで機械的に確定するとは限らない。
複数請求が同一の利益に関するか,利息・損害金その他の付帯請求を訴額へ算入するか,財産権上の請求で訴額算定が極めて困難かといった法的評価により,裁判所の算定額が入力時の想定と異なる場合がある。
2 納付情報一覧で五つの項目を照合する
裁判所による納付情報の登録後,mintsのサイドバーから「手数料納付情報一覧」を開く。
納付番号,収納機関番号及び確認番号は画面上でコピーできるため,手入力による転記誤りを避けるにはコピー機能を利用するのが確実である。
支払前には,事件,手数料及び納付期限が目的の申立てと一致しているかを確認する。
Pay-easyでは入力した番号から金額が自動表示されるため,表示額がmintsの納付情報と異なる場合は支払を確定せず,事件を担当する裁判所の部・係へ確認する。
第3 申立手数料と郵便費用相当額の確認
新法の対象事件では,訴額に応じた部分に郵便費用相当額等を加えて手数料を計算する。オンライン・書面の別,被告数,反訴・請求変更及び審級によって額が変わる。計算式と訴額別早見表は,民事訴訟の申立手数料の計算方法を参照されたい。
mintsの概算額を最終的な納付額と扱わず,裁判所が発行した納付情報の金額・番号・期限を照合する。訴額の争いは訴額の算定に関する最高裁判例で確認する。
第4 Pay-easyで納付する具体的な操作
1 インターネットバンキング又はATMを利用する
インターネットバンキングでは,「Pay-easy」,「ペイジー」又は「税金・料金払込」等のメニューを選び,収納機関番号,納付番号及び確認番号を入力する。
ATMでは,Pay-easy対応機の「税金・料金払込み」等のメニューから同じ番号を入力するが,メニュー名は金融機関により異なる。
Pay-easyでは,番号に対応する支払先及び金額が自動表示される。
金融機関名,支店名,振込先口座及び金額を支払者が指定する通常の銀行振込とは異なるため,裁判所から通知されていない口座へ振り込まない。
2 別名義の口座からも納付できる
Pay-easy公式FAQによれば,収納機関へ支払口座の名義は通知されないため,請求名義と支払口座名義が異なっても納付できる。
支払者がmintsへサインインするのではなく,納付義務者から得た納付番号等を金融機関の画面へ入力して支払う仕組みである。
もっとも,納付番号等は特定の事件と金額に結び付く情報である。
第三者へ番号を伝える場合は,事件,金額及び期限を併せて確認し,別事件の番号を使わないよう管理する必要がある。
3 mintsで表示された番号を入力して納付する
裁判所のフェーズ3準備手引は,mintsで確認した収納機関番号,納付番号及び確認番号を用い,インターネットバンキング又はATMから納付する流れを示している。
金融機関との事前登録口座から収納機関のシステム上で引き落とす別の公金納付方法と混同せず,mintsが発行した番号を金融機関の画面へ入力する。
4 納付日と支払記録を確認する
納付が完了すると,mintsの手数料納付情報に納付日が表示され,ホーム画面にも「手数料の納付が完了しました」とのメッセージが表示される。
金融機関は,インターネットバンキング又はATMによるPay-easy納付について通常の領収書を発行しないため,取引履歴又はATM利用明細票も保存する。
金融機関の履歴では支払済みであるのにmintsへ反映されない場合は,直ちに再度納付しない。
支払日時,金額,事件番号及び金融機関の利用履歴を整理し,事件を担当する裁判所の部・係へ連絡する。
5 金融機関の限度額と利用時間を確認する
Pay-easyの利用可能時間及び1日当たりの支払限度額は金融機関ごとに異なる。
国又は地方公共団体への支払はほとんどの場合にPay-easyの支払手数料を要しないが,ATMの時間外手数料が生じる場合がある。
Pay-easy公式FAQは,夜間・休日でも支払操作が完了した時点を取扱日と説明する。
もっとも,mintsの納付期限日の何時まで既存の納付情報が利用できるかを全国一律に示した公開資料は確認できないため,期限日の夜間に納付できると決めつけず,余裕を持って処理するのが安全である。
第5 納付期限を過ぎた場合と不納付時の手続
1 期限経過後は既存の納付情報を使えない
mints操作マニュアルは,納付期限の14日前,7日前,2日前,1日前及び当日に,納付義務者及び補助者へリマインドを送ると説明する。
納付期限を経過すると,その手数料納付情報に基づいて手数料を納付することはできない。
公開資料には,納付情報の登録から期限までを全国一律の日数とする定めは示されていない。
各事件の手数料納付情報一覧に表示された日を確認し,期限を過ぎた場合は,独自の方法で納めたり二重に支払ったりせず,事件係へ新しい納付情報又は次の手続を確認する。
2 期限切れだけで直ちに訴状却下とはならない
民事訴訟法137条の2第1項は,訴え提起の手数料が納付されていないとき,裁判所書記官が相当の期間を定めて納付を命じると定める。
書記官の処分に対する異議は,告知を受けた日から1週間の不変期間内に申し立てなければならず,異議には執行停止の効力がある。
定められた期間内にも手数料を納付しないとき,裁判長は命令で訴状を却下する。
したがって,mints上で既存の納付情報が使えなくなったことだけから直ちに訴状却下が確定するとはいえないが,期限切れを放置すれば不納付を理由とする却下へ進み得る。
mintsに表示される納付期限が個別事件で民事訴訟法137条の2の期間とどのように対応するかは,公開資料だけでは一律に判別できない。
表示された期限を実務上の納付期限として扱い,期限前に間に合わない事情が判明した時点で事件係へ連絡する必要がある。
訴状の記載に関する補正と手数料未納への対応の区別は,mintsの訴状訂正・補正の方法を参照されたい。
第6 収入印紙及び100万円超の納付方法
1 収入印紙を用いる例外は限定される
民事訴訟費用等に関する法律8条1項本文により,特定申立ての手数料は最高裁判所規則の方法による現金納付が原則である。
書面による申立てができる場合で,Pay-easyを利用できる環境がないなどのやむを得ない事由があるときに限り,申立書等へ収入印紙を貼って納めることができる。
書面で申立てをしたという事情だけで,当然に収入印紙納付を選択できるわけではない。
裁判所のシステム障害時も,書面提出が可能であることと,直ちに収入印紙を貼ることは同じではないため,裁判所の稼働状況と指示を確認する。
2 100万円超は日本銀行納付も選択できる
現行の民事訴訟費用等に関する規則4条の2第2項は,納付すべき手数料が100万円を超える場合,所定の納付書により日本銀行の本店,支店,代理店又は歳入代理店へ納付できると定める。
これは選択できる別方法であり,100万円を超えたことだけでPay-easyの利用が法律上禁止されるとの規定ではない。
日本銀行納付を選択した場合は領収証書を裁判所へ提出し,弁護士等は原則としてその画像情報を電子提出する。
裁判所は必要があると認めるとき,領収証書の原本提示を求めることができ,Pay-easy等の方法と日本銀行納付とを一回の手数料について分割することはできない。
100万円を超える事件では,利用金融機関のPay-easy限度額も確認した上で,納付書の取得,画像提出及び原本保管を含む具体的な手順を事件係へ事前に確認するのが確実である。
公開資料からは,納付書の交付時期及び裁判所ごとの連絡経路まで全国一律に確定できない。
第7 過納・取下げによる還付と,費用の回収
過納の還付と早期取下げ等による還付は,戻る額と条件が異なる。還付は常に全額又は単純な半額とは限らず,還付申立ては理由が生じた日から5年以内,処分への異議は告知から1週間の不変期間内である。還付処分後には支払請求も必要になる。計算・申立て・mintsの提出場所は,訴訟手数料の還付を参照されたい。
裁判所からの還付と,費用負担の裁判に基づく相手方からの回収は別である。後者は訴訟費用額確定処分の申立てで扱う。手数料等を支払えない場合の制度は,訴訟上の救助で確認する。
第8 関連記事
反訴・請求拡張の手数料の算定と入力は,mintsで反訴・訴えの変更をする方法で,目的同一による控除及び変更前後の差額計算を含めて説明している。
①mints操作マニュアル~当事者ユーザ編~の解説は,mintsの各画面と機能を広く確認する場合に参照できる。
②mints(ミンツ)とは―料金・対象事件・登録・ログイン・提出・送達の実務Q&Aは,電子申立て,送達,記録閲覧その他の実務上の疑問を扱う。
③mintsの義務化はいつからかは,システム障害又は利用環境の問題で電子申立てができない場合を扱う。
訴額に応じた部分の累進計算,反訴・請求変更・上訴の計算方法は民事訴訟の申立手数料の計算方法,還付の要件・金額・申立期間は訴訟手数料の還付で,それぞれ詳しく説明している。
訴額の算定と不足手数料の追完に関する最高裁判例は,訴額の算定に関する最高裁判例で詳しく説明している。
第9 出典・参考資料
1 法令・規則
①e-Gov法令検索「民事訴訟費用等に関する法律」3条,4条,6条,8条~11条及び別表第2
②e-Gov法令検索「民事訴訟法」137条の2及び附則12条
③民事訴訟費用等に関する規則4条の2,4条の4及び4条の5(令和8年7月1日現在,裁判所ウェブサイト)
2 裁判例
①最高裁判所第三小法廷平成27年5月19日決定(平成26年(許)第36号,民集69巻4号635頁,裁判所ウェブサイト)
②最高裁判所第三小法廷令和3年4月27日決定(令和2年(行フ)第2号,裁判集民事265号143頁,裁判所ウェブサイト)
③最高裁判所第一小法廷平成27年12月17日決定(平成27年(行フ)第1号,裁判集民事251号121頁,裁判所ウェブサイト)
3 裁判所・Pay-easy公表資料
①民事裁判書類電子提出システム操作マニュアル~当事者ユーザ編~バージョン2.356頁~59頁(PDF59頁~62頁,裁判所)
②民事訴訟フェーズ3に向けた準備の手引11頁・15頁~16頁(裁判所)
③手数料額早見表(裁判所)
④過納手数料等の還付金の支払及び旅費,鑑定費用等の概算払等の取扱いについて(平成7年3月30日総三第28号,令和8年3月24日最終改正,裁判所)
⑤Pay-easy公式FAQ及びPay-easyの使い方(日本マルチペイメントネットワーク推進協議会)
⑥Pay-easyを利用できる金融機関(日本マルチペイメントネットワーク推進協議会)
4 文献
①最高裁判所事務総局民事局監修『条解民事訴訟規則(デジタル化関係等)』(司法協会,2025年)585頁~588頁
②脇村真治編著『一問一答 新しい民事訴訟制度(デジタル化等)』(商事法務,2024年)17頁~35頁・149頁~152頁