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最高裁判所における違憲判決の一覧(AIリライト)

最高裁判所大法廷が法令の規定を憲法に違反すると判断したものは,令和8年2月18日の旧警備業法欠格条項違憲判決までで14類型である。

本記事では,14類型の裁判年月日,事件番号,判例集,違憲とされた規定,憲法上の根拠及び裁判所ウェブサイトの判決・決定本文を時系列で整理する。

また,法令違憲には数えられていない主要な違憲判断等と,違憲判決の効力も区別して掲載する。

第1 法令違憲14類型の数え方

1 本記事の集計基準

本記事では,最高裁判所大法廷の法令違憲判断について一般に用いられている14の区分に従い,同一日に同一規定の同一の憲法問題について複数の裁判書が作成された場合は1類型として数える。

同じ日に同じ規定について複数の裁判書が作成された場合も1類型とするため,14類型は判決書及び決定書の通数を意味しない。

資料によって違憲判決の件数表記が異なることがあるのは,同日複数判決を別々に数えるか,適用違憲又は処分違憲を含めるかなど,集計基準が同一でないためである。

2 判決ではなく決定で示された2類型

14類型のうち,裁判形式が「決定」であるものは,平成25年9月4日の婚外子法定相続分差別規定違憲決定と,令和5年10月25日の性別取扱変更の生殖不能要件違憲決定である。

その余の12類型は判決である。

3 法令違憲,適用違憲及び処分違憲の区別

法令違憲は,法令の規定自体又は規定の一定部分を違憲とする判断である。

これに対し,法令を特定の事件類型へ適用する限度で違憲とする判断を「適用違憲」と呼ぶ場合や,行政処分,公金支出,刑事手続等の具体的な国家行為を違憲とする判断を「処分違憲」と呼ぶ場合がある。

もっとも,これらの用語法及び個々の裁判例の分類は文献によって一致しないため,本記事では法令違憲14類型とその他の主要な違憲判断等を分けて掲載する。

第2 最高裁判所の法令違憲判決・決定一覧

1 昭和期の5類型

No.裁判年月日・事件番号・判例集違憲とされた法令又は規定憲法上の根拠及び判断の要点
1昭和48年4月4日大法廷判決・昭和45年(あ)第1310号・刑集27巻3号265頁刑法200条(尊属殺重罰規定)刑法199条の普通殺人と比べた加重の程度が著しく不合理であり,憲法14条1項に違反するとした。
2昭和50年4月30日大法廷判決・昭和43年(行ツ)第120号・民集29巻4号572頁当時の薬事法6条2項・4項及び26条2項による薬局の距離制限薬局開設の距離制限が職業選択の自由を保障する憲法22条1項に違反するとした。
3昭和51年4月14日大法廷判決・昭和49年(行ツ)第75号・民集30巻3号223頁昭和47年12月10日の衆議院議員総選挙に用いられた議員定数配分規定規定全体が憲法14条1項,15条1項・3項及び44条ただし書に違反するとしたが,事情判決の法理により選挙は無効としなかった。
4昭和60年7月17日大法廷判決・昭和59年(行ツ)第339号・民集39巻5号1100頁昭和58年12月18日の衆議院議員総選挙に用いられた議員定数配分規定規定全体が憲法14条1項に違反するとしたが,事情判決の法理により選挙は無効としなかった。
5昭和62年4月22日大法廷判決・昭和59年(オ)第805号・民集41巻3号408頁森林法186条本文による共有林分割請求の制限共有持分価額が2分の1以下の者による分割請求を一律に禁じることが,憲法29条2項に違反するとした。

2 平成期の5類型

No.裁判年月日・事件番号・判例集違憲とされた法令又は規定憲法上の根拠及び判断の要点
6平成14年9月11日大法廷判決・平成11年(オ)第1767号・民集56巻7号1439頁郵便法68条及び73条の国家賠償責任を免除又は制限する一定部分書留郵便物及び特別送達郵便物について国の損害賠償責任を免除又は制限する一定部分が,憲法17条に違反するとした。
7平成17年9月14日大法廷判決・平成13年(行ツ)第82号・第83号及び同年(行ヒ)第76号・第77号・民集59巻7号2087頁在外国民に国政選挙での投票を全く認めていなかった公職選挙法等憲法15条1項・3項,43条1項及び44条ただし書に違反するとし,立法不作為について国家賠償も認めた。
8平成20年6月4日大法廷判決・平成18年(行ツ)第135号・民集62巻6号1367頁及び同日判決・平成19年(行ツ)第164号・集民228号101頁当時の国籍法3条1項が出生後認知された子の国籍取得に父母の婚姻を求めていたことによる区別準正の有無による区別が憲法14条1項に違反するとし,準正要件を除いた要件を満たす子の日本国籍取得を認めた。
9平成25年9月4日大法廷決定・平成24年(ク)第984号・第985号・民集67巻6号1320頁当時の民法900条4号ただし書前段による婚外子の法定相続分の区別遅くとも平成13年7月当時には憲法14条1項に違反していたとしつつ,既に確定的となった法律関係には影響しないとした。
10平成27年12月16日大法廷判決・平成25年(オ)第1079号・民集69巻8号2427頁当時の民法733条1項のうち100日を超える女性の再婚禁止期間平成20年当時には憲法14条1項及び24条2項に違反していたとした。再婚禁止期間は令和4年法律第102号により令和6年4月1日に廃止された。

3 令和期の4類型

No.裁判年月日・事件番号・判例集違憲とされた法令又は規定憲法上の根拠及び判断の要点
11令和4年5月25日大法廷判決・令和2年(行ツ)第255号及び同年(行ヒ)第290号・第291号・第292号・民集76巻4号711頁最高裁判所裁判官国民審査法が在外国民に審査権の行使を全く認めていなかったこと憲法15条1項及び79条2項・3項に違反するとし,制度を創設しなかった立法不作為について国家賠償も認めた。
12令和5年10月25日大法廷決定・令和2年(ク)第993号・民集77巻7号1792頁性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号の生殖不能要件生殖不能要件が憲法13条に違反するとした。同項5号の外観要件については判断せず,事件を原審へ差し戻した。
13令和5年(受)第1319号・民集78巻3号382頁令和4年(受)第1050号令和4年(受)第1411号令和5年(オ)第1341号及び令和5年(受)第1323号の各令和6年7月3日大法廷判決旧優生保護法3条1項1号から3号まで,10条及び13条2項の優生規定優生規定が憲法13条及び14条1項に違反するとし,国会議員の立法行為も国家賠償法1条1項の適用上違法とした。
14令和8年2月18日大法廷判決・令和5年(オ)第360号・同年(受)第445号令和元年法律第37号による改正前の警備業法14条及び3条1号のうち,被保佐人を警備員の欠格事由とした部分平成29年3月時点で憲法22条1項及び14条1項に違反していたとした。

第3 一覧を読む際の注意点

1 同日複数判決を1類型としている事件

昭和48年4月4日には尊属殺人罪及び同未遂罪について3件の違憲判決が言い渡されているが,本記事の一覧表は刑集登載の代表判例を掲げた。

平成20年6月4日の国籍法違憲判決は2件,令和6年7月3日の旧優生保護法違憲判決は5件あるが,それぞれ同一規定の同一の憲法問題に関する1類型として数えた。

2 平成27年12月16日に違憲判決が2件あったわけではない

女性の再婚禁止期間を扱った平成25年(オ)第1079号判決と同じ日に,夫婦同氏を定める民法750条を扱った平成26年(オ)第1023号大法廷判決も言い渡された。

もっとも,後者は民法750条を合憲と判断しているため,平成27年12月16日に法令違憲判決が2件言い渡されたわけではない。

3 性別取扱変更決定が違憲としたのは4号要件である

令和5年10月25日決定が違憲としたのは,性別取扱変更の要件のうち生殖不能要件を定めた3条1項4号である。

外観要件を定めた同項5号については原審の審理が尽くされていないとして差し戻したため,最高裁が同決定で5号を違憲としたものではない。

4 旧警備業法判決と国家賠償の結論は異なる

令和8年2月18日判決が対象とした欠格条項は,判決前の令和元年法律第37号によって既に削除されていた。

最高裁は同条項を違憲とした一方,平成29年3月までに条項を改廃しなかった立法不作為については,国家賠償法1条1項の適用上違法とはいえないとした。

第4 法令違憲に数えられていない主要な違憲判断等

1 分類上の限界

以下の裁判例には,特定の適用場面,裁判手続,公金支出又は行政上の取扱いを違憲としたもののほか,法令違憲との区別を理解するために関連する裁判例を含む。

「適用違憲」,「処分違憲」又は「手続違憲」のどれに分類するかは文献により異なるため,最高裁判所が統一的な公式分類を示しているものとして扱うべきではない。

2 主要裁判例の一覧

No.裁判例判断の要点
1昭和23年7月19日大法廷判決・昭和22年(れ)第170号・刑集2巻8号944頁単純な窃盗事件で109日間に及ぶ不当に長い拘禁後の自白を有罪の証拠とした判決を,憲法38条2項違反として破棄した。
2昭和24年4月6日大法廷判決・昭和23年(れ)第454号・刑集3巻4号445頁第一審公判における被告人の自白だけを証拠として有罪とした原判決を,憲法38条3項違反として破棄した。
3昭和25年7月12日大法廷判決・昭和23年(れ)第927号・刑集4巻7号1298頁補強証拠を必要とする2つの自白だけで有罪とした原判決を,憲法38条3項違反として破棄した。
4昭和28年7月22日大法廷判決・昭和27年(あ)第2868号・刑集7巻7号1562頁関連する同日判決・昭和24年(れ)第189号・集刑85号105頁昭和28年12月16日大法廷判決・昭和27年(あ)第669号・刑集7巻12号2457頁及び昭和30年4月27日大法廷判決・昭和27年(あ)第2011号・刑集9巻5号947頁占領中の連合国最高司令官の指令に関する処罰について,講和条約発効後は刑の廃止があったものとして免訴すべきであるとした一連の判決であり,法令違憲14類型には含めていない。
5昭和35年7月6日大法廷決定・昭和26年(ク)第109号・民集14巻9号1657頁純然たる訴訟事件についてなされた調停に代わる裁判を,憲法82条及び32条に違反するとした。
6昭和37年11月28日大法廷判決・昭和30年(あ)第995号・刑集16巻11号1577頁第三者に告知,弁解及び防御の機会を与えずにその所有物を没収することを,憲法31条及び29条に違反するとした。
7昭和40年4月28日大法廷判決・昭和36年(あ)第1510号・刑集19巻3号203頁第三者に対して刑法197条の4による追徴を命ずることを,憲法31条及び29条に違反するとした。
8昭和42年7月5日大法廷判決・昭和40年(あ)第2611号・刑集21巻6号748頁起訴されていない犯罪事実を実質上処罰する趣旨で重い刑を科することを,憲法31条及び38条3項に違反するとした。
9昭和45年11月25日大法廷判決・昭和42年(あ)第1546号・刑集24巻12号1670頁偽計により得られた自白を証拠に採用したことを,刑事訴訟法319条1項及び憲法38条2項に違反するとした。
10昭和47年12月20日大法廷判決・昭和45年(あ)第1700号・刑集26巻10号631頁約15年間にわたって審理を行わず放置した刑事裁判を,憲法37条1項の迅速な裁判を受ける権利に反するとした。
11平成9年4月2日大法廷判決・平成4年(行ツ)第156号・民集51巻4号1673頁愛媛県が靖国神社及び愛媛県護国神社に玉串料等を公金から支出して奉納したことを,憲法20条3項及び89条に違反するとした。
12平成22年1月20日大法廷判決・平成19年(行ツ)第260号・民集64巻1号1頁市が市有地を神社施設の敷地として無償で利用させていた行為を,憲法89条及び20条1項後段に違反するとした。
13令和3年2月24日大法廷判決・令和元年(行ツ)第222号・民集75巻2号29頁那覇市長が都市公園内の孔子廟施設の敷地使用料を全額免除した行為を,憲法20条3項に違反するとした。

第5 違憲判決の効力

1 個別的効力説

我が国の違憲審査は,具体的な争訟の解決に必要な限度で行われる付随的違憲審査であるため,違憲判決の法的効力は当該事件に限られるとする個別的効力説が通説とされている。

最高裁判所が法令を違憲と判断しても,その判決だけで当該規定が法令集から削除されるわけではない。

2 官報公告と国会・内閣への送付

最高裁判所裁判事務処理規則14条は,法律,命令,規則又は処分が憲法に適合しないとの裁判がされた場合,その要旨を官報に公告し,裁判書の正本又は電子裁判書記録事項証明書を内閣へ送付することを定めている。

法律が憲法に適合しないと判断した裁判については,裁判書の正本又は電子裁判書記録事項証明書を国会にも送付することとされている。

3 実務上の一般的影響と過去の法律関係

最高裁判所の違憲判断は先例として下級裁判所に影響し,行政機関は違憲とされた規定を適用しない取扱いをし,国会は規定の削除又は改正を行うことがあるため,実務上は当該事件を超える影響を持つ。

尊属殺重罰規定違憲判決後,刑法200条が平成7年まで条文上存続した一方,検察実務では同条を適用せず刑法199条を適用したことがその例である。

過去の法律関係への影響は個々の判決によって異なり,平成25年9月4日決定は,婚外子の法定相続分に関する違憲判断が既に確定的となった法律関係には影響しないと明示した。

第6 関連資料

最高裁判所大法廷の判決及び決定の一覧

一票の格差とは何か|違憲状態・違憲判決の違いと最高裁判例一覧

日本国憲法外で法的効力を有していたポツダム命令

最高裁判所裁判事務処理規則

第7 出典

1 法令・規則

① e-Gov法令検索「日本国憲法

② 最高裁判所「最高裁判所裁判事務処理規則

2 裁判例・公的資料

① 最高裁判所「裁判例検索」及び本記事の各一覧表からリンクした裁判例結果詳細・裁判全文

② 衆議院憲法審査会事務局『「司法制度及び憲法裁判所」に関する基礎的資料』(2013年)資料30頁~31頁(PDF実頁35頁~36頁)

③ 法務省「民法等の一部を改正する法律について

3 文献

① 泉徳治『私の最高裁判所論―憲法の求める司法の役割』(日本評論社,2013年)154頁~155頁(PDF実頁169頁~170頁)

② 山田隆司『最高裁の違憲判決―「伝家の宝刀」をなぜ抜かないのか』(光文社新書,2012年)25頁~30頁及び313頁~314頁(PDF実頁26頁~30頁及び313頁~314頁)

③ 新井誠・曽我部真裕・佐々木くみ・横大道聡『憲法Ⅰ 総論・統治[第3版]』(日本評論社,2026年)239頁~241頁

④ 本秀紀編『憲法講義[第4版]』(日本評論社,2026年)377頁

⑤ 小林直三・大江一平・薄井信行編『判例で学ぶ憲法』(法律文化社,2022年)66頁