メインコンテンツへスキップ
       

人身事故証明書入手不能理由書の書き方――必要なケース,署名者,添付資料及び提出先ごとの違い(AI作成)

第1 本記事の対象と最初に確認すること

1 最初に提出先と請求の種類を確認する

人身事故証明書入手不能理由書は,人身事故扱いの交通事故証明書を提出できない事情と,負傷を伴う事故であったことを説明する書類である。
ただし,同じ名称の書類でも,自賠責保険,健康保険,国民健康保険及び労災保険では,署名者,添付資料及び裏面の記載方法が同じとは限らない。

令和8年8月29日現在,最初に確認すべき事項は,①提出先,②自賠責保険の請求であれば被害者が直接請求する法16条請求か,被保険者が支払後に請求する法15条請求か,③交通事故証明書が物件事故扱いなのか,発行されていないのか,負傷者名が記載されていないのか,④提出先から交付された用紙の注記の四点である。
この順序を逆にして一般的なひな形から書き始めると,確認欄の署名者又は代替書類を取り違えることがある。

2 理由書が果たす役割

本記事では,様式名に従い「人身事故証明書」と表記するが,実際に問題となるのは,事故種別が人身事故とされた交通事故証明書を提出できるかどうかである。
交通事故証明書の取得経路,申請期間及び記載事項については,交通事故証明書の取得方法――申請経路,手数料,申請期間及び記載事項の読み方(AI作成)で説明している。

理由書は,警察が作成する記録を物件事故から人身事故へ変更する書類ではなく,保険会社又は保険者等に提出する補足資料である。
また,理由書の提出だけで,事故と受傷との因果関係,過失割合,損害額又は保険金等の支払が確定するものでもない。

第2 理由書が必要となるケース

1 物件事故扱い,証明書未発行又は負傷者名の不記載

理由書が必要となる代表的な場面は,①交通事故証明書が物件事故扱いである場合,②交通事故証明書が発行されていない場合,③人身事故扱いの交通事故証明書はあるものの,給付又は賠償を求める負傷者の氏名が記載されていない場合である。
例えば,協会けんぽの申請案内は,物件事故の交通事故証明書を添付するときに理由書が必要であるとしている。

協会けんぽの現行様式は,交通事故証明書を入手できない場合又は物件処理のため人身事故証明書がない場合を対象としている。
これに対し,AXAダイレクトの理由書は,人身事故扱いの交通事故証明書に被害者名がない場合も記入対象に含めているため,提出先の用紙により対象範囲を確認する必要がある。

2 警察への事故報告との関係

道路交通法72条1項は,交通事故があった場合の停止,負傷者の救護,危険防止及び警察官への報告を定めている。
したがって,保険会社等へ理由書を提出することによって,事故時の警察への報告を代替することはできない。

事故後に負傷が判明した場合の警察への相談,人身事故としての取扱い又は必要資料は,事故を取り扱った警察署へ確認する事項である。
理由書には,実際に警察へ報告した年月日,警察署名及び判明している担当官名を記載し,報告していない場合には報告済みであるかのような記載をしてはならない。

第3 理由書の書き方

1 提出先指定の用紙を使う

まず,保険会社,健康保険者又は労働基準監督署から,今回の手続に使用する用紙を入手する。
保険会社のウェブサイトにある一般的な記入例と,実際に交付されたPDFの注記が異なる場合には,提出先に確認した上で,実際の用紙の注記に従うことになる。

記載前に,①交通事故証明書,②事故発生状況報告書,③自賠責保険証明書又は保険会社から通知された契約情報,④事故当事者の氏名・住所・連絡先,⑤受診日及び治療経過が分かる資料を手元に置くとよい。
ただし,相手方だけが保有する情報を推測で補わず,不明欄の取扱いは提出先へ確認すべきである。

2 表面の理由欄と警察への届出欄

理由欄には,実際の事情に該当する選択肢だけを選ぶ。
AXAダイレクトの理由書及び奈良労働局の理由書には,①受傷が軽微で検査通院のみであったこと,②受傷が軽微で短期間に治療を終了したこと,③公道以外の場所で発生したこと,④事故当事者の事情,⑤その他という選択肢がある。

④又は⑤を選ぶ場合は,「相手方と連絡が取れないため」など,入手できない経緯を具体的に書く。
一方,治療が継続しているのに短期治療を終了したと記載するなど,診療記録又は他の提出書類と矛盾する理由を選んではならない。

警察へ事故発生を報告している場合は,届出警察,判明している担当官名及び届出年月日を記載する。
複数の選択肢に該当するか,余白への追記が必要かは用紙の指示に従う。

3 裏面の交通事故概要記入欄

交通事故証明書が発行されていない場合又は発行された証明書に負傷者名がない場合には,裏面の事故当事者,発生日時,発生場所及び車両情報等を記載する様式がある。
事故発生状況報告書を別に提出するときは,当事者の立場,進行方向,衝突地点及び事故態様を相互に一致させる必要がある。

他方,AXAダイレクト及び奈良労働局の各様式は,物件事故扱いの交通事故証明書に当事者名が記載されている場合,裏面の交通事故概要記入欄を記載不要としている。
この省略は用紙の注記に基づくものであり,他の提出先でも当然に省略できるという意味ではない。

4 訂正と他の書類との整合

訂正方法も提出先により異なる。
例えば,AXAダイレクトの記入案内は二重線と訂正印を案内し,岸和田市の案内も修正液を使用せず訂正印を押すよう求めている。

事故年月日,発生場所,当事者,車両番号及び受傷者は,交通事故証明書,診断書,事故発生状況報告書及び第三者行為による傷病届と照合する。
署名を依頼する前に空欄と記載済み部分を写しで残しておけば,後から別の内容が追記された場合にも確認しやすい。

第4 誰が署名するか

1 用紙の記入者と確認欄の署名者は同じとは限らない

理由書には,事故情報や入手不能理由を記入する部分と,「人身事故の事実に相違ない」ことを確認する署名欄がある。
被害者又は保険会社担当者が事故情報を記入しても,確認欄には別の者の署名を求める様式があるため,「誰が用紙を書くか」と「誰が確認署名するか」を分けて読む必要がある。

確認欄の文言は負傷を伴う事故であったことの確認であり,通常の様式には過失割合又は損害額を確定する欄はない。
もっとも,理由書も事故に関する資料の一つであるから,事故態様又は当事者の立場について事実と異なる記載をしてはならない。

2 自賠責保険の法16条請求と法15条請求

自動車損害賠償保障法15条は,被保険者が被害者へ損害賠償額を支払った限度で保険会社へ保険金を請求できることを定め,同法16条は,被害者が保険会社へ損害賠償額を直接請求できることを定めている。
AXAダイレクト及び奈良労働局の各理由書は,この請求類型に応じて確認欄の記入者を次のように分けている。

請求の種類各様式の確認欄に記入する者
被害者が直接請求する法16条請求保険契約者側の者(契約者,運転者等)又は目撃者
賠償をした側が請求する法15条請求賠償を受けた側の者又は目撃者

この区別を確認せず,被害者本人がすべての欄へ署名すると,提出後に署名の取り直しを求められる可能性がある。
実際に使用する理由書の注記に請求類型が書かれていない場合は,提出先の保険会社へ確認する必要がある。

3 協会けんぽと市町村国保

協会けんぽの現行記入例は,事故の相手方又は目撃者の署名・捺印を得られない場合,空白欄に理由を書き,負傷者又は親権者が署名・捺印するよう案内している。
したがって,協会けんぽへ提出する理由書では,相手方が非協力であることだけを理由に届出を止めず,この代替方法を検討できる。

市町村国保では自治体の用紙と指示を確認する必要がある。
例えば,河内長野市の案内は,やむを得ず被害者が記入・押印する場合,その他欄に加害者の署名・押印を得られない理由を書くこととし,印鑑を省略できないとしている。

岸和田市の案内も,原則として加害者が署名・押印し,取得できない場合は被害者が理由を記載して署名・押印する方法を示している。
他方,書類全体の押印,写しの可否及び追加書類は自治体ごとに異なるため,これらは全国共通の押印ルールではない。

4 相手方が署名しない場合

相手方が署名を拒否し,又は連絡が取れないときは,無断で代筆せず,まず提出先にその事実を伝える。
その上で,①目撃者による確認,②負傷者又は親権者が理由を記載して署名する方法,③提出先による医療機関・運転者・修理工場等への追加確認のうち,その様式で認められた方法を選ぶことになる。

相手方の署名取得だけに時間をかけ,保険請求又は第三者行為届の手続を放置すべきではない。
取得できないことが判明した段階で提出先へ連絡し,代替方法と提出可能な部分を確認するのが低負担の初期対応となる。

第5 理由書と一緒に提出する資料

1 自賠責保険に提出する場合

自動車損害賠償保障法施行令3条2項は,法16条請求について,診断書又は検案書,当事者・事故日時・事故場所等を証するに足りる書面及び請求額の算出基礎を証するに足りる書面の添付を求めている。
同項は交通事故証明書だけを名指ししていないが,国土交通省の請求案内は,人身事故の交通事故証明書,事故発生状況報告書,診断書及び診療報酬明細書等を請求書類として掲げている。

したがって,物件事故の交通事故証明書がある場合には,通常,その証明書と理由書を一緒に提出し,事故発生状況報告書及び損害項目ごとの資料を添えることになる。
理由書だけを提出しても,事故,受傷及び損害額の調査に必要な資料がそろうわけではない。

2 健康保険又は国民健康保険に提出する場合

協会けんぽの現行申請書は,第三者行為による傷病届,事故発生状況報告書,同意書及び必要な場合の理由書で構成されており,交通事故の場合には交通事故証明書を添付する。
物件事故扱いであれば,物件事故の交通事故証明書も省略せず,理由書と組み合わせる。

国保の必要書類は自治体によって異なるが,第三者行為による傷病届,事故発生状況報告書,同意書又は誓約書,交通事故証明書及び理由書が中心となる。
例えば,岩出市の案内は,これらに加え,医療費助成制度を利用している場合の委任状を挙げている。

3 労災保険に提出する場合

業務中又は通勤中の交通事故では,健康保険ではなく労災保険の手続を確認する。
大阪労働局の案内は,第三者行為災害届に,交通事故証明書又は交通事故発生届,念書兼同意書及び該当する場合の示談書・支払証明書等を添える運用を示している。

大阪労働局の交通事故発生届には,被災者と相手方,事故日時・場所,災害発生状況及び証明書を得られない理由を記載し,被災者,目撃者及び相手方の各確認欄がある。
相手方が業務中であった場合に限って,その事業場の代表者による証明欄を使用する。

第6 提出先ごとの違い

1 自賠責保険会社又は任意保険会社

自賠責保険では,法15条請求か法16条請求かを確認した上で,保険会社から交付された理由書を使用する。
保険会社又は損害保険料率算出機構は,事故の発生,受傷との因果関係及び損害額を別途調査するため,理由書の受理は支払を保証するものではない。

任意保険会社の提出書類は,保険契約及び処理方法によって異なる。
三井ダイレクト損保の案内も,理由書以外の追加資料を求める場合があり,提出資料全体によって支払対象となる事故かを判断すると説明している。

2 協会けんぽ,健康保険組合,国保及び後期高齢者医療

健康保険法施行規則65条は,第三者の行為によって保険給付の事由が生じたとき,被保険者が遅滞なく第三者行為による被害の届書を保険者へ提出することを定めている。
理由書はこの第三者行為届に付随する書類であり,理由書だけを健康保険者へ送る手続ではない。

協会けんぽ以外の健康保険組合,国保及び後期高齢者医療では,独自の様式を設けている場合がある。
加入先の保険者名を確認し,別の自治体又は保険者の用紙を流用しないことが基本となる。

3 労働基準監督署

労災保険では,所轄労働基準監督署又は労働局が案内する代替書類を確認する。
大阪労働局は「交通事故発生届」を案内する一方,奈良労働局の添付書類一覧は「人身事故証明書入手不能理由書」を掲載している。

奈良労働局の理由書には法15条請求・法16条請求に応じた確認者の注記があり,大阪労働局の交通事故発生届には被災者・目撃者・相手方の別個の確認欄がある。
この差からも,「労災へ出す理由書」という名称だけで用紙を選ばず,所轄署に確認する必要がある。

4 政府保障事業

ひき逃げ又は無保険事故等に関する政府保障事業では,一般の自賠責請求用理由書をそのまま流用できるとは限らない。
損害保険料率算出機構の「政府の保障事業のご案内」は,令和8年1月1日現在の共通必要書類として「交通事故証明書」(人身事故扱いのもの)を掲げている。

現行の公開請求キットには,一般的な人身事故証明書入手不能理由書が請求者用様式として掲載されていない。
人身事故扱いの交通事故証明書を取得できないときは,独自判断で他制度の理由書を提出せず,請求を受け付ける損害保険会社又は共済組合の窓口へ,現行の取扱いと必要な補足資料を確認する必要がある。

第7 提出時期と期間制限

理由書それ自体について全国共通の独立した提出期限が定められているとは確認できないが,理由書が付随する本体の手続には期限又は速やかな届出が求められる。
健康保険の第三者行為届は健康保険法施行規則65条により遅滞なく提出する必要があり,大阪労働局は第三者行為災害届を労災保険給付の請求書と同時又はその後速やかに提出するよう案内している。

自賠責保険の被害者請求について,自動車損害賠償保障法19条は,被害者又は法定代理人が損害及び保有者を知った時から3年の時効を定めている。
国土交通省の請求期限表は,傷害について事故発生の翌日から3年以内,後遺障害について症状固定日の翌日から3年以内,死亡について死亡日の翌日から3年以内と案内しているため,理由書又は署名の準備だけを理由に請求手続を放置してはならない。

第8 関連記事

交通事故証明書の申請方法,申請期間及び記載事項については,交通事故証明書の取得方法――申請経路,手数料,申請期間及び記載事項の読み方(AI作成)を参照されたい。
健康保険の第三者行為届については,交通事故でも健康保険は使える―第三者行為による傷病届と利用時の注意点で説明している。

政府保障事業の対象事故,請求窓口及び無保険車傷害特約との違いについては,政府保障事業と無保険車傷害特約|ひき逃げ・無保険事故の補償と請求手続を参照されたい。
労災保険と損害賠償の調整については,労災保険又は障害年金を支給される可能性がある事案における示談(AIリライト)で説明している。

出典・参考資料

1 法令

道路交通法72条1項
自動車損害賠償保障法15条,16条及び19条
自動車損害賠償保障法施行令3条
健康保険法施行規則65条

2 所管行政機関等の手続案内及び様式

①国土交通省「支払までの流れと請求方法」(令和8年8月29日確認)
②全国健康保険協会「交通事故や第三者行為による傷病届」(令和8年8月29日確認)
③全国健康保険協会「交通事故や第三者行為による傷病届等」4頁(PDF4頁)
④全国健康保険協会「交通事故や第三者行為による傷病届等記入例」4頁(PDF4頁)
⑤大阪労働局「第三者行為災害に関する提出書類について」及び「交通事故発生届」1頁(PDF1頁)
⑥奈良労働局「保険給付の手続き」及び「人身事故証明書入手不能理由書」1頁~2頁(PDF1頁~2頁)
⑦損害保険料率算出機構「政府の保障事業のご案内」(令和8年1月1日現在)7頁(PDF8頁)及び「請求キット」(令和8年8月29日確認)

3 自治体及び保険会社の記入案内

①河内長野市「交通事故等の治療で,国民健康保険を医療機関等で使う場合」(令和7年12月10日更新)
②岸和田市「交通事故や暴行等にあったときの届出について」(令和7年8月28日更新)
③岩出市「人身事故証明書入手不能理由書」(令和8年3月18日更新)
④AXAダイレクト「人身事故証明書入手不能理由書」1頁~2頁(PDF1頁~2頁)及び「人身事故証明書入手不能理由書の書き方」(令和8年8月29日確認)
⑤三井ダイレクト損害保険「人身事故証明書入手不能理由書の書き方・ひな形」(令和8年8月29日確認)