搭乗者傷害保険


目次

1 総論
2 自賠責保険金等とは別枠の支払であること
3 人身傷害補償保険との違い
4 搭乗者傷害保険の内容
5 搭乗者傷害保険の医療保険金
6 関連記事

1 総論
(1) 搭乗者傷害保険に加入しているクルマに乗っている人(運転手及び同乗者)が交通事故でケガをしたり,死亡したりした場合,過失に関係なく定額の保険金が支給されます。
    そのため,例えば,運転手の過失割合が100%の場合であっても,わざと交通事故を起こしたような場合でない限り,運転手及び同乗者に対して保険金が支払われます。
(2) 搭乗者傷害保険を利用したとしても,ノンフリート等級が下がることはありません(「ノンフリート等級」参照)。

2 自賠責保険金等とは別枠の支払であること
    搭乗者傷害保険は,加害者からの損害賠償金,自賠責保険金等とは別枠で支払いを受けることができます(最高裁平成7年1月30日判決参照)。
    そのため,例えば,加害者の過失割合が100%の交通事故のため,加害者の任意保険で治療費等を全部まかなえる場合であっても,それとは別枠で被害者に対して保険金が支払われます。

3 人身傷害補償保険との違い
(1) 被保険自動車に乗車中に交通事故にあった場合において何らかの過失がある場合,搭乗者傷害保険に加えて,過失部分について人身傷害補償保険が適用されます(「人身傷害補償保険」参照)。
    そのため,搭乗者傷害保険は,人身傷害補償保険の上乗せ保険みたいな位置づけになっています。
(2) 搭乗者傷害保険の場合,定額の保険金が支払われるのに対し,人身傷害補償保険の場合,実際の損害額を基準とした保険金が支払われます。
(3) おとなの自動車保険HPの「人身傷害と搭乗者傷害の選び方」に,加入パターン別お支払い例が掲載されています。

4 搭乗者傷害保険の内容
・ 搭乗者傷害保険では,被保険自動車の事故により運転手や同乗者が死傷したときに定額の保険金が支払われますところ,その内容は以下のとおりです。
① 死亡保険金
→ 事故発生日から180日以内に死亡した場合に,保険金額100%の保険金が支払われます。
② 後遺傷害保険金
→ 事故発生日から180日以内に後遺障害が発生した場合に,後遺障害等級に応じて保険金額の4%から100%の保険金が支払われます。
③ 医療保険金
→ 日数払い及び部位・症状別払いの2種類があります。

5 搭乗者傷害保険の医療保険金
(1)   日数払いの場合
ア 事故発生の日から180日までの入院又は通院に対して,保険証券記載の入院保険金日額×入院日数,及び通院保険金日額×通院日数という計算で保険金が支払われます。
イ 重傷のケースでは保険金額が多くなる反面,通院日数の認定基準に曖昧なところがあるため,保険金額が不明確になることがあります。
(2) 部位・症状別払いの場合
ア   傷害の部位・症状に応じてあらかじめ定められた保険金が支払われます。
イ   認定基準が明確なので保険金額が明確である反面,治療期間が長引いた場合,日数払いと比べて保険金額が少なくなります。
ウ 骨折等がない場合において5日以上入通院した場合,医学的他覚所見(理学的検査,神経学的検査,臨床検査及び画像検査等により認められる異常所見)があることを条件に,10万円の入通院一時金が支払われることが多いです。

6 関連記事
・ 政府保障事業及び無保険車傷害特約
・ 自賠責保険の支払基準
・ 「自動車損害賠償保障法及び関係政省令の改正等に伴う事務の実施細目について」と題する,国土交通省自動車交通局保障課長の通知(平成14年3月11日付)
・ 昭和48年9月1日付の,日本損害保険協会及び日弁連交通事故相談センターの覚書(交通事故損害賠償に関するもの)
・ 損益相殺
・ 東京地裁民事第27部(交通部)
・ 弁護士費用特約


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