東京地裁民事第27部(交通部)

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目次
1 東京地裁27民の状況
2 民事交通訴訟事件の新受件数が顕著な増加傾向を示している原因等
3 交通事件における一覧表の活用及びその狙い
4 交通事件におけるカルテの提出方法の検討例
5 東京地裁交通部の執筆記事及び書籍
6 関連記事その他

1 東京地裁27民の状況
(1) 東弁リブラ2021年11月号「東京地裁書記官に訊く-交通部編(2021年版)-」には「はじめに」として以下の記載があります。
    東京地方裁判所民事第 27部は,当庁の民事訴訟事件係において受け付けた事件のうち,交通事故に関する事件のみを取り扱う専門部です。
    令和 3年 4月時点において,裁判官 14名,書記官 17名(主任書記官 3名,書記官 14名),速記官2名及び事務官 3名,単独事件を担当する係が 12係(1・2・3・4・5・6・7・A・B・C・D・E),合議事件を担当する係が 5係(甲 1・2・3,乙 A・B)で審理にあたっています。
(2) 法曹時報69巻7号(平成29年7月1日発行)73頁及び74頁によれば,東京地裁27民の状況は以下のとおりです(ナンバリングを追加した上での引用です。)。
① 東京地裁27民(交通部)は,平成28年4月以降,裁判官11名ないし12名(平成29年4月1日現在,未特例判事補1名を含む12名),書記官16名(うち主任書記官3名),速記官2名及び事務官3名の総勢32名ないし33名が所属し,合議5係,単独11係を構成して,事件処理に当たっています。
②   東京地裁27民の平成28年度の新受件数は,全体で2091件,うち地方裁判所を第一審とする事件(ワ号事件)は1956件,簡易裁判所を第一審とする控訴事件(レ号事件)は135件でした。
③   東京地裁27民が発足した昭和37年度の新受件数は428件であり,発足後間もないころには,交通事故の増加に比べて訴訟件数が少ないことが課題とされた時期もあったようでしたが,その後,新受件数は次第に増加し,ピークになった昭和45年度には2184件に達しました。
   昭和58年度には457件にまで減少しましたが,平成12年度には再び1000件を超え,以後ほぼ増加の一途をたどり,平成28年度にはついに2000件を超えるに至りました。
   平成20年度(全体で1369件,ワ号事件1313件,レ号事件56件)と比較すると,全体で約52.7%,ワ号事件については約49.0%,レ号事件については約141.1%もの増加(レ号事件は約2.4倍)となっています。


2 民事交通訴訟事件の新受件数が顕著な増加傾向を示している原因等
(1) 法曹時報69巻7号(平成29年7月1日発行)74頁によれば,交通事故の発生件数自体は平成16年以降減少が続いており,民事訴訟の新受件数も全体としては減少傾向(過払金等事件を除くと横ばい傾向)にある中で,このように民事交通訴訟事件の新受件数が顕著な増加傾向を示している原因として,以下の事情が指摘されています。
① 社会経済情勢の変化により,損害保険会社の保険金の支払の査定が厳しくなる一方,当事者の権利意識が高揚している。
② 高次脳機能障害により高額の将来介護費を請求する事案など,示談では容易に解決し得ない問題を含む事案が増加している。
③ 自動車保険における弁護士費用補償特約により,訴訟経済的には見合わないように思われる事件を含め,少額の訴訟の提起及び控訴も増加している。
(2) 東弁リブラ2021年11月号「東京地裁書記官に訊く-交通部編(2021年版)-」には「当部における令和 2年の交通訴訟の新受件数は,1940件で,令和元年の 2190件から 11.4%減少しました。これは,明らかにコロナ禍の影響によるもので,東京地裁民事部の通常訴訟の新受件数も,令和 2年は前年より約 6.1%減少しています」と書いてあります。
(3) 二弁フロンティア2022年4月号「【前編】交通事故訴訟の最新の運用と留意点~東京地裁民事第27部(交通部)インタビュー~」には「既済件数についてですが、当部における令和2年の交通訴訟の既済件数は、1838件で、令和元年の2156件から14.7%減少しました。令和2年4月の緊急事態宣言下における審理の停止により、新受件数以上にコロナ禍の影響があったものと考えられます。既済事件を終局内容別に見ますと、判決が15.5%、和解が72.7%、取下げその他が11.8%となっており、当部における和解率は、ここ数年70%を超える高水準が維持されています。」と書いてあります。


3 交通事件における一覧表の活用及びその狙い
(1) 令和3年度専門訴訟担当裁判官事務打合せ 協議結果要旨8頁(PDF14頁)には「交通事件における一覧表の活用及びその狙い」として以下の記載があります。
◯ 令和3年から,交通事件につき,審理の早期の段階から定型の一覧表を用いて審理を行うこととした。一覧表の有用性として,主張等の漏れをなくせること,主張・争点・証拠等の争点整理を可視化でき,それを裁判所と代理人の共通認識として審理を進めることができることが挙げられる。また,ウェブ会議による期日では画面共有機能を用いて,一覧表を基に,現時点の争点整理の状況や今後の方針を口頭議論することができる。新しい一覧表の書式の浸透度としては,新件段階で書式が用いられているのは1割程度であるが,提訴後に作成を促すことで,合議事件では全件,単独事件では多い係で7割から8割程度使用されている。
◯ 一覧表の効用として,まず,準備書面のみだと記載漏れや記載順序にばらつきが多く,訴状審査をする書記官や裁判官の負担が大きかったが,定型の一覧表により一覧できるようになり,負担が減った。また,定型の一覧表を使用することより損害の把握計算がしやすくなる。一覧表は当事者が作成するので,裁判所は準備書面から手控えを作成する作業を省略でき審理に集中することができる。また,書記官の事案把握が容易化し,書記官事務の効率化が図れる。さらに,主張対比による主張・争点整理の促進及び和解案作成時の労力の削減も図れるし,弁護士は該当する欄に証拠を記入することになるので,証拠提出の促進にもつながる。IT化に向けて,様々なフォーマットの一覧表が乱立するのを避けたいという狙いもある。
(2) 東京地裁HPの「民事第27部(交通部)」に,交通事故事件の訴状,事案の概要及び損害額一覧表の書式が載っています。


4 交通事件におけるカルテの提出方法の検討例
・ 令和3年度専門訴訟担当裁判官事務打合せ 協議結果要旨11頁(PDF17頁)には「証拠の提出方法」として以下の記載があります。
◯ カルテの証拠提出の方法について,病院へ送付嘱託すると,ほとんどの事案で大量に書類が届き保管に苦心しているため,全体をPDF化してもらい重要なもののみ紙で提出してもらう等の方法を検討している。これに限らず,IT化に伴い,大量の証拠が未整理のまま裁判所に提出されることも懸念されるが,それでは,真に重要な証拠が分かりづらくなってしまう。主張と証拠の対応関係を裁判所が主導して明らかにさせることが必要であり,一覧表にカルテの重要部分を書いてもらい該当部分のみ提出するとか,いずれは一覧表のリンクからカルテが見られるなどの方法も考えられるのではないか。
◯ 電子カルテを証拠提出する場合には,記載箇所を判決書で特定するためにページ数を付ける必要があることから,代理人には,一旦紙に出力してページ数を付してから,それをPDF化して提出してもらっている。IT化後の提出方法について弁護士会とも議論していく必要があると思われる。


5 東京地裁交通部の執筆記事及び書籍
(1) 東京地裁交通部の執筆記事
ア 東弁リブラ2013年8月号「東京地裁書記官に訊く-交通部編」が載っていて,東弁リブラ2021年11月号「東京地裁書記官に訊く-交通部編(2021年版)-」が載っています。
イ 二弁フロンティア2022年4月号「【前編】交通事故訴訟の最新の運用と留意点~東京地裁民事第27部(交通部)インタビュー~」が載っていて,二弁フロンティア2022年5月号「【後編】EDR(イベント・データ・レコーダー)の技術と交通事故紛争への活用」が載っています。
(2) 東京地裁交通部の書籍
・ 東京地裁交通部の書籍としては以下のものがあります。
① 交通関係損害訴訟(2013年7月1日付)
② 交通関係訴訟の実務(2016年8月31日付)
③ 裁判官が説く民事裁判実務の重要論点(交通損害賠償編)(2021年3月24日付)

6 関連記事その他

(1) 「高齢者の死亡慰謝料額の算定」(筆者は38期の大島眞一 大阪高裁6民部総括)によれば,名古屋地裁の交通専門部は昭和37年9月に設置され,大阪地裁の交通専門部は昭和38年9月に設置されました(判例タイムズ1471号7頁参照)。
(2) 大阪地裁交通部は,「大阪地裁における交通損害賠償の算定基準〈第4版〉」(2022年5月6日付)を執筆しています。
(3) 榎木法律事務所HPに「東京地裁交通部のモデル書式(一覧表)を用いた対応について」(2021年11月24日付)が載っています。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 東京地裁裁判官会議の概況説明資料
・ 地方裁判所の専門部及び集中部
・ 弁護士費用特約

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