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生活道路の法定速度引下げ-対象道路の見分け方,速度標識がある場合の優先関係,反則金・点数及び民事賠償への影響(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

1 結論

令和8年9月1日から,道路標識等による中央線又は車両通行帯がなく,構造上も往復の方向別に分離されていない一般道路について,自動車の法定速度が時速60キロメートルから時速30キロメートルに引き下げられた。
警察庁及び都道府県警察は,この種の道路を「生活道路」と呼んでいるが,これは説明のための呼称であり,道路交通法施行令の条文に「生活道路」という語があるわけではない。
対象となるかどうかは,速度規制標識の有無ではなく,中央線又は車両通行帯があるかどうかという道路の構造によって決まる。

2 この記事が扱う範囲と基準日

この記事は,①改正の根拠条文,②対象道路の判断基準,③速度標識がある道路との優先関係,④違反した場合の刑事罰・反則金・行政処分及び⑤民事の損害賠償への影響を扱う。
高速自動車国道及び自動車専用道路の速度は今回の改正の対象ではないため扱わない。

法令は,令和8年9月2日現在のe-Gov法令検索の現行条文により確認した。
反則金額及び基礎点数は,同日現在で警視庁が公表している一覧表(いずれも令和8年4月1日付更新)により確認した。

第2 改正の根拠条文

1 道路交通法22条1項と施行令11条の関係

道路交通法22条1項は,車両は,道路標識等により最高速度が指定されている道路ではその最高速度を,その他の道路では政令で定める最高速度を超える速度で進行してはならないと定める。
ここでいう「政令で定める最高速度」が法定速度であり,その内容は道路交通法施行令11条に置かれている。
したがって,今回の変更は法律の改正ではなく,政令である道路交通法施行令の改正によるものである。

2 改正後の施行令11条が定める2つの区分

改正後の施行令11条は,自動車が一般道路を通行する場合の最高速度について,次の2つの区分を設けている。

①同条1号に掲げる一般道路 時速60キロメートル
②前号に掲げる一般道路以外の一般道路 時速30キロメートル

すなわち,条文は「生活道路とは何か」を積極的に定義しているのではなく,時速60キロメートルとなる道路を1号で限定列挙し,それ以外の一般道路を2号で時速30キロメートルとする構造になっている。
そのため,1号に当たるかどうかを確認することが,対象道路を判断する唯一の方法である。

なお,原動機付自転車の最高速度は,同条本文により従前から時速30キロメートルであり,今回の改正による変更はない。

3 施行の時期

この改正は,道路交通法施行令の一部を改正する政令(令和6年政令第248号)によるものである。
令和6年に公布された政令であるが,速度に関する規定の施行は令和8年9月1日とされ,2年程度の周知期間が置かれた。

第3 どの道路が時速30キロメートルになるか

1 引き続き時速60キロメートルとなる4類型

施行令11条1号は,時速60キロメートルとなる一般道路として,次の4類型を掲げる。

①高速自動車国道のうち,本線車道並びにこれに接する加速車線及び減速車線以外のもの
②自動車専用道路
③道路標識等による中央線又は車両通行帯が設けられている一般道路
④道路の構造上又は柵その他の内閣府令で定める工作物により自動車の通行が往復の方向別に分離されている一般道路

運転者が日常的に判断することになるのは③及び④である。
中央線が引かれている道路,車線が区画されている道路及び中央分離帯又は柵によって対向車線と物理的に分けられている道路は,改正後も時速60キロメートルのままである。

2 法令上の判断基準は道路構造であること

警察庁及び都道府県警察が作成した周知用リーフレットは,「生活道路」を「主に地域住民の日常生活に利用されるような、中央線などがない道路」と説明した上で,引き続き時速60キロメートルとなる道路として前記1の4類型を掲げている。
判断基準として示されているのは道路の構造であり,通行量の多寡,住宅地であるかどうか,市道か国道かといった事情は基準とされていない。

したがって,幹線道路であっても中央線及び車両通行帯がなく構造上の分離もなければ時速30キロメートルとなり,逆に住宅街の中の道路であっても中央線があれば時速60キロメートルのままとなる。
「住宅街だから生活道路である」という理解は,法令上の基準と一致しない。

3 速度標識がある道路では標識の速度が優先すること

見落とされやすいのは,速度規制標識がある道路には今回の改正が影響しないという点である。
道路交通法22条1項は,最高速度が道路標識等により指定されている道路ではその指定速度によるとしており,法定速度は標識による指定がない道路について適用される補充的な基準だからである。

警察庁及び都道府県警察のリーフレットも,道路標識により最高速度が時速40キロメートルと指定されている生活道路では,最高速度は時速30キロメートルではなく時速40キロメートルとなると明示している。
中央線のない道路であっても,時速40キロメートルの標識が立っていれば,従前どおり時速40キロメートルが最高速度である。

4 「道幅5.5メートル未満」という説明の位置付け

報道及び民間のコラムには,対象道路を「道幅5.5メートル未満の道路」と説明するものがある。
しかし,施行令11条は幅員を要件としておらず,警察庁及び都道府県警察のリーフレット並びに警察庁及び警視庁のウェブページにも,幅員の数値を判断基準とする記載は確認できない。

本記事では,この数値は,中央線が設けられていない道路には幅員の狭いものが多いという実態を説明したものにとどまり,法令上の要件ではないと整理する。
現場で幅員を測っても対象道路であるかどうかは確定できないのであって,確認すべきは中央線及び車両通行帯の有無である。

第4 標識がなくても適用されるという運用上の意味

今回引き下げられたのは法定速度であるから,対象道路に時速30キロメートルの標識が新たに設置されるわけではない。
公安委員会による速度規制のように標識の設置を前提とする制度とは異なり,条文上の要件を満たす道路であれば,何の表示もないまま,令和8年9月1日から最高速度が時速30キロメートルになっている。

その結果,運転者は,見慣れた道路について,自分の記憶や体感ではなく道路構造を確認して速度を判断しなければならないことになる。
従来から時速40キロメートル前後で走行することが常態化していた中央線のない道路では,運転者の意識が変わらない限り,これまでどおりの運転がそのまま速度超過となる。

第5 違反した場合の刑事罰,反則金及び行政処分

1 罰則の条文

最高速度違反の罰則は,道路交通法118条1項1号であり,6月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金である。
過失による場合は,同条3項により3月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金となる。

なお,刑法12条は拘禁刑を定め,同法13条は削除されており,従前の懲役及び禁錮は拘禁刑に一本化されている。
そのため,最高速度違反の法定刑も現行条文では拘禁刑であり,「6月以下の懲役」と説明する資料は改正前の条文に基づくものである。

2 反則金額

警視庁が公表する反則行為の種別及び反則金一覧表によれば,一般道路における普通自動車の速度超過の反則金額は次のとおりである。

①超過15キロメートル未満 9,000円
②超過15キロメートル以上20キロメートル未満 12,000円
③超過20キロメートル以上25キロメートル未満 15,000円
④超過25キロメートル以上30キロメートル未満 18,000円

同一覧表には,一般道路について超過30キロメートル以上の区分が掲載されていない。
このことから,一般道路で30キロメートル以上超過した場合は交通反則通告制度による処理の対象とならず,前記1の罰則により刑事手続で処理されることになると整理される。

3 基礎点数

警視庁が公表する交通違反の点数一覧表によれば,速度超過の基礎点数は次のとおりである。

①超過20キロメートル未満 1点
②超過20キロメートル以上25キロメートル未満 2点
③超過25キロメートル以上30キロメートル未満 3点
④超過30キロメートル以上50キロメートル未満 6点
⑤超過50キロメートル以上 12点

これらの区分は超過した速度の幅によって定まるものであり,今回の改正によって区分自体が変更されたわけではない。
変わったのは,超過幅を計算する際の基準となる法定速度である。

4 前歴がない運転者でも30日間の免許停止となる場合

警察庁が公表する運転免許の効力の停止等の処分量定基準によれば,前歴がない者について,累積点数が6点,7点又は8点に達した場合の処分の基本量定は30日間の免許の効力の停止である。

そうすると,従来は法定速度が時速60キロメートルであった道路を時速60キロメートルで走行していた運転者は,同じ運転を続けた場合,改正後は超過幅30キロメートルとなり,基礎点数6点に該当することになる。
その結果,過去に違反のない運転者であっても,1回の違反で30日間の免許停止処分の対象となり得る。

同じ処分量定基準は,速度超過のうち一般道路で30キロメートル以上(高速道路では40キロメートル以上)50キロメートル未満のものを,点数が6点から14点までの違反行為,すなわち重大違反の一つとして掲げている。
時速30キロメートルの道路における時速30キロメートルの超過は,従来の感覚では「時速60キロメートルで走った」というにすぎないが,制度上はこの区分に位置付けられる。

第6 民事の損害賠償に与える影響

1 過失相殺の枠組みと速度の位置付け

民法722条2項は,被害者に過失があったときは,裁判所はこれを考慮して損害賠償の額を定めることができると定める。
交通事故の損害賠償実務では,双方の過失の有無及び程度を評価する際に,速度超過を含む道路交通法違反の有無が考慮要素となる。

法定速度が引き下げられた道路では,同じ走行速度であっても超過幅が大きくなるから,改正後に発生した事故については,運転者側の速度に関する評価が従前より厳しい方向に働く可能性がある。

2 事故日が施行日の前か後かで基準が異なること

もっとも,適用される法定速度は事故当時の法令によって決まる。
令和8年9月1日より前に発生した事故については,中央線のない一般道路であっても法定速度は時速60キロメートルであり,同日以後に発生した事故について時速30キロメートルが基準となる。

したがって,事故の相談を受けた場合には,事故発生日が同日の前後いずれであるかを最初に確認する必要がある。
現場が対象道路に当たるかどうかも,実況見分調書,現場写真又は現地の状況により,中央線及び車両通行帯の有無を個別に確認すべきである。

3 具体的な修正幅を示す公表資料は確認できないこと

本記事の作成時点は改正の施行直後であり,本改正を踏まえて過失相殺率の認定基準を改めた公表資料及び本改正を適用した公表裁判例は確認できなかった。
したがって,前記1で述べたのは民法722条2項の枠組みと改正内容から導かれる方向性にとどまり,具体的にどの程度の修正がされるかを本記事の段階で示すことはできない。

4 損害賠償請求権の消滅時効

事故日を確認する際には,あわせて消滅時効を確認しておくのが安全である。
民法724条は,不法行為による損害賠償請求権について,損害及び加害者を知った時から3年間,不法行為の時から20年間と定め,同法724条の2は,人の生命又は身体を害する不法行為については,前者の期間を5年間とする。

なお,交通事故証明書の申請期間(人身事故につき5年間,物件事故につき3年間)は,自動車安全運転センターにおける証明書交付の取扱いに関する期間であって,損害賠償請求権の消滅時効期間とは別のものである。
交通事故証明書の申請経路及び記載事項の読み方については,交通事故証明書の取得方法――申請経路,手数料,申請期間及び記載事項の読み方で整理している。

第7 刑事事件及び事業者の管理体制への影響

速度超過は,それ自体が道路交通法違反となるほか,人身事故が生じた場合には過失運転致死傷罪における過失の内容としても問題となり得る。
もっとも,速度超過があることと,その速度超過が結果を生じさせた過失であることとは別の問題であり,適法な速度であっても結果を回避できなかった場合には,速度超過を過失の内容とすることは難しい。
この点を含む過失の特定の方法については,過失運転致死傷罪の起訴状における過失の記載方法で整理している。

事業者の側では,従業員が業務中に免許停止処分を受けた場合,配車及び要員配置に直ちに影響が生じる。
中央線のない道路を日常的に通行する配送業務等では,従来の運転を続けることが前記第5の4で述べた区分に該当し得るため,運転者への周知が実際上の課題となる。
自動車運送事業における運行管理の枠組みについては,自動車運送事業の運行管理者―選任人数・資格・点呼・補助者で整理している。

出典・参考資料

1 法令

道路交通法(昭和35年法律第105号)22条1項,118条1項1号,118条3項(e-Gov法令検索)
道路交通法施行令(昭和35年政令第270号)11条(e-Gov法令検索。令和8年9月1日施行。道路交通法施行令の一部を改正する政令(令和6年政令第248号)による改正)
民法(明治29年法律第89号)722条2項,724条,724条の2(e-Gov法令検索)
刑法(明治40年法律第45号)12条,13条(e-Gov法令検索)

2 所管行政機関の資料

警察庁「生活道路における自動車の法定速度が引き下げられます」(警察庁)
警察庁・都道府県警察「生活道路における自動車の法定速度が引き下げられます!!」(周知用リーフレット)(警察庁・都道府県警察)
警視庁「生活道路における法定速度について」(警視庁)
警視庁「反則行為の種別及び反則金一覧表」(警視庁。令和8年4月1日付更新)
警視庁「交通違反の点数一覧表」(警視庁。令和8年4月1日付更新)
警察庁「別紙第1 運転免許の効力の停止等の処分量定基準」(警察庁。1頁~3頁)