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外国司法制度

アメリカ合衆国の司法制度――最高裁判所の開示文書と,その後に条文・規則・判例が動いた部分(AI作成)

第1 この記事が扱う対象

1 開示文書の特定と基準日
2 令和元年5月以降の最新版が存在しないこと
3 開示文書の構成と本記事の射程

第2 連邦裁判所の組織――11年間で条文が動いていない部分

1 連邦と州の二元構造及び連邦裁判所の管轄
2 裁判所の種類,裁判官の任期及び定足数
3 裁判官の定員と2024年の増員法案

第3 連邦検察官及び連邦検察局

1 94の司法地区と93の連邦検察局
2 任期4年,連邦検察官補及び裁判所による任命

第4 弁護士,弁護士会及び法曹養成制度

1 法曹人口とロー・スクール
2 非弁護士による法律事務所の所有
3 司法試験によらない資格取得
4 NextGen統一司法試験の初回実施

第5 民事手続――開示文書の記述と現行規則の相違

1 送達期間の短縮
2 ディスカバリーの範囲に加わった比例性の要件
3 電子情報の保存義務違反に対する制裁

(続きを読む...)アメリカ合衆国の司法制度――最高裁判所の開示文書と,その後に条文・規則・判例が動いた部分(AI作成)

イギリス連合王国(イングランド及びウェールズ)の司法制度――最高裁判所の開示文書とその後の主な改正(AI作成)

第1 対象とする開示文書

1 文書の特定と章構成
2 本記事の射程

第2 開示文書の骨格のうち現在も維持されている部分
第3 高等法院の部門構成――女王座部の改称と大法官部の廃止
第4 治安判事裁判所の科刑権限と罰金限度額

1 科刑権限の6か月と12か月の往復
2 罰金限度額の撤廃と開示文書内部の記述の不一致

第5 少額訴訟トラックの限度額とトラック区分の再編
第6 司法審査――Cart判決の制定法による覆しと排除条項の有効性

1 開示文書が前提とする司法審査
2 上訴審判所の上訴許可拒否決定に対する司法審査の排除
3 取消命令の効力に関する新たな権限
4 排除条項の有効性を認めた判断

第7 雇用審判所――申立手数料の違法判断と申立期限の延長

1 申立手数料制度を違法とした判断
2 申立期限の3か月から6か月への延長

(続きを読む...)イギリス連合王国(イングランド及びウェールズ)の司法制度――最高裁判所の開示文書とその後の主な改正(AI作成)

ドイツ連邦共和国の司法制度――最高裁判所の開示文書とその後の主な改正(AI作成)

第1 この記事が扱う対象
1 開示文書の特定と基準日
2 令和6年10月9日付け不開示通知書
3 開示文書の構成

第2 開示文書の骨格のうち現在も維持されている部分
1 5系列の裁判権と連邦の最上級審
2 審級と上訴の骨格
3 検察官,弁護士強制及び司法補助官

第3 裁判所の数の変化
1 連邦司法庁の一覧による対照
2 高等裁判所の増加と地方裁判所の分割
3 開示文書が記述していない軍務裁判所

第4 連邦憲法裁判所――2024年の基本法改正
1 基本法93条と94条の入替え
2 憲法に書き込まれたものと書き込まれなかったもの
3 代替選出制度と2025年の選出の停滞

第5 民事の事物管轄――2026年1月1日の改正
1 区裁判所の訴額上限と控訴の不服額
2 訴額を問わない管轄と専門部の必置化

第6 開示文書の枠組みに収まらない三つの裁判機関
1 統一特許裁判所
2 再建裁判所
3 商事裁判所と英語による訴訟

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日本と韓国の司法制度の徹底比較――法曹一元化,上告審の負担及び国民の刑事裁判参加(AI作成)

第1 この記事が扱う対象1 比較の対象と時点2 既存記事との役割分担第2 裁判官の任用制度――韓国の法曹一元化は実現していない1 現行の任用資格2 2011年の原設計と13年の経過3 憲法裁判所2012年決定による経過措置の削除4 法曹一元化の受け皿としての裁判研究員制度第3 裁判官の人事構造と比較法研究体制1 高等法院と地方法院の人事の分離2 高等法院部長判事の廃止3 外国司法制度の比較研究を担う常設機関第4 最高裁判所(大法院)の規模――大法官14名から26名へ1 増員の立法理由2 日本の裁判官定員との対比第5 国民の刑事裁判参加――拘束力ある参審と拘束力なき陪審1 国民参与裁判の制度設計と憲法上の理由2 実績――評決に拘束力がなくても大半は一致する第6 2026年の裁判憲法訴願――司法制度そのものを憲法訴訟で争えるか1 制度の内容2 国会での賛否3 日本との対比出典・参考資料1 法令2 韓国の法令3 裁判例・決定4 公的資料・統計5 国会資料第1 この記事が扱う対象1 比較の対象と時点

本記事は,2026年8月現在の日本と韓国の司法制度を,裁判官の任用制度,裁判官の人事構造,最高裁判所(大法院)の規模,国民の刑事裁判参加及び違憲審査制度の5つの場面に絞って比較するものである。韓国側の記述は,韓国国家法令情報センター(국가법령정보센터)に掲載された法院組織法,国民の刑事裁判参加に関する法律,各級法院判事定員法及び憲法裁判所法の現行条文並びに改正理由,憲法裁判所の決定,大法院法院行政処『2025 사법연감』(司法年鑑),司法政策研究院の研究報告書並びに大韓民国国会の議案情報システム及び会議録によって確認した。日本側の記述は,e-Gov法令検索の現行条文,裁判所ウェブサイト掲載の裁判例及び最高裁判所『裁判所データブック2026』によって確認した。生成AIを用いて,これらの一次資料を1件ずつ照合して構成した。

韓国の司法制度をめぐっては,「法曹一元化を採用した」という紹介がしばしば見られる。しかし,本記事が確認したとおり,韓国の法院組織法は2011年に判事任用の最小法曹経歴を10년(10年)とする改正を行いながら,その後2度の延期を経て2024年10月16日改正で本則を5년(5年)に改め,10年という数字自体は条文から姿を消している。この経過を法制処が公表する改正理由の逐語によって時系列で示すことが,本記事の中心的な資料価値の一つである。

2 既存記事との役割分担

最高裁判所に対する司法行政文書開示請求により開示された「諸外国(米英独仏豪加)及び我が国の司法制度の概要(対照表)」を出発点として日本の司法制度の特徴を確定した記事については,外国の司法制度と比べた日本の司法制度の特徴――米英独仏豪加との比較でみる構造,法曹人口及び裁判例を参照されたい。同対照表は米英独仏豪加の7か国を対象とし,韓国を含んでいない。本記事は,同対照表によらず,韓国側の一次資料に直接当たることで,同記事が扱わなかった韓国との比較を独立に行うものである。

日本国内における法曹一元をめぐる議論の経緯については法曹一元で,日本の最高裁判所裁判官15人の任命・定年・国民審査については最高裁判所裁判官とは|現職15人の一覧・任命・定年・国民審査で,それぞれ整理している。

第2 裁判官の任用制度――韓国の法曹一元化は実現していない1 現行の任用資格

法院組織法42条2項は,판사(判事)の任用資格について,「판사는 5년 이상 제1항 각 호의 직에 있던 사람 중에서 임용한다」と定める。すなわち,2021年12月21日改正及び2024年10月16日改正を経た現行条文は,判事の任用に必要な最小法曹経歴を5年としている。同条の3第1項は,42条1項各号の在職期間を合算して10年未満の判事は,弁論を開いて判決する事件について単独で裁判することができないと定め,同条2項は,同項の判事は合議部の裁判長になることができないと定める。任用資格そのものを5年に緩和する一方で,在職期間が10年に満たない判事の職務権限を制限するという形で,これを補っていることになる。

日本の裁判所法42条1項は,高等裁判所長官及び判事の任命資格として,判事補,簡易裁判所判事,検察官,弁護士,裁判所調査官・司法研修所教官・裁判所職員総合研修所教官並びに大学の法律学の教授又は准教授の職に通算10年以上在職した者と定める。他方,同法43条は「判事補は,司法修習生の修習を終えた者の中からこれを任命する。」と定め,判事補についてはこの限定を置かない。日本弁護士連合会が弁護士任官の推進に関するウェブサイトで説明するとおり,日本の裁判官は司法修習を終えて直ちに判事補に任官し,多くがそのまま10年後に判事となる運用が続いており,裁判所法42条1項が定める10年以上の在職要件は,判事補としての在職年数によって満たされるのが通例である。

2 2011年の原設計と13年の経過

韓国が現行の5年という要件に至るまでの経過は,法制処が公表する改正理由(제정・개정이유)の逐語で確認できる。2011年7月18日法律第10861号は,判事任用の最小法曹経歴を本則で10年とする一方,附則2条で経過措置を置き,2017年までは3年,2019年までは5年,2021年までは7年とする段階的な施行を定めた。その後の改正理由は,この原設計について,「이 법 개정(법률 제10861호, 2011. 7. 18. 공포, 2013. 1. 1. 시행)으로 판사 임용을 위한 최소 법조경력을 10년으로 하되, 부칙 제2조에서 최소 법조경력을 2017년까지는 3년, 2019년까지는 5년, 2021년까지는 7년으로 하여 전면적 법조일원화가 단계적으로 시행될 수 있도록 경과규정을 두었으나, 2015년 이후에 배출될 신규 인력이 2018년부터 2021년까지 경과규정이 요구하는 5년과 7년의 최소 법조경력을 갖출 수 없어 판사로 임용될 수 없게 됨으로써 전면적 법조일원화의 단계적 이행에 어려움이 있는바, 판사 임용에 필요한 최소 법조경력 5년의 이행기를 2021년까지로, 최소 법조경력 7년의 이행기를 2025년까지로 연장하여 법관의 원활한 수급을 도모하는 한편, …」と振り返っている。新規に輩出される法曹人材の数が経過規定の要求する経歴年数を満たせず判事になれないという,法曹一元化の段階的移行そのものに内在する需給の問題が,早い段階から表れていたことになる。この2021年12月の延期に先立つ2021年8月31日,最小法曹経歴を10年から5年に改める趣旨の法院組織法改正案が,国会本会議で在席229人のうち賛成111人・反対72人・棄権46人により否決されている。可決に必要な出席議員の過半数(115票)に4票足りなかった。同日の本会議で改正案への賛成討論に立った議員は,現行法を維持すれば7年経歴要件が適用される2022年から4年間で68名,10年経歴要件が適用される2026年から4年間で128名の判事が減少するという試算,法曹経歴10年及びロースクール3年を要求すれば新任判事の年齢が最速でも40代前半となり30代の判事がいなくなるという世代の偏りへの懸念,並びに日本には法曹経歴の制限がなくアメリカ及びイギリスは5年以上,ドイツも3年から5年以上であるという比較法上の説明を述べている。この改正案は否決されたものの,前記のとおり同年12月には別の改正で5年の適用期限が延長されており,経歴要件の緩和そのものは,形を変えて後の改正に引き継がれている。

10年という本則そのものが放棄されたのは,2024年10月16日法律第20465号によってである。同法は,42条2項の本則を「5년 이상」に改め,段階的な引上げを定めていた附則2条を削除した。改正理由は,この転換について,「판사 임용자격으로서의 법조경력요건을 5년으로 완화하고, 충분한 사회적 경험과 연륜을 갖춘 판사에 의한 재판이 실현될 수 있도록 …(20년 이상의 법조경력이 있는 사람을 특정 재판사무만을 담당하는 판사로 임용할 수 있도록 하며)… 원칙적으로 10년 미만의 법조경력을 갖춘 판사는 재판장이 될 수 없도록 하는 등 법조일원화제도를 현실성 있게 개선함」と説明する。すなわち,10年という数字は法曹経歴要件そのものから消えたのではなく,前記1で述べた42条の3の職務権限の制限(10年未満の判事は単独裁判・裁判長を務められない)に姿を変えて残った。2011年の原設計が予定した「本則10年」は,13年間の延期を重ねた末に,2024年改正で正式に放棄されたことになる。

3 憲法裁判所2012年決定による経過措置の削除

前記の経過には,憲法裁判所の決定が関わっている。現行の法院組織法附則(法律第10861号関係)には,「2024. 10. 16. 법률 제20465호에 의하여 2012. 11. 29. 헌법재판소에서 한정위헌 결정된 이 조 단서 중 제42조제2항에 관한 부분을 개정함」との注記が付されている。すなわち,2012年11月29日の憲法裁判所決定を受けて,2024年改正でその部分が改められたことが条文自体に明記されている。

憲法裁判所2012年11月29日決定(2011헌마786・2012헌마188併合,全員裁判部)の主文は,「법원조직법(2011. 7. 18. 법률 제10861호) 부칙 제1조 단서 중 제42조 제2항에 관한 부분 및 제2조는 2011. 7. 18. 당시 사법연수생의 신분을 가지고 있었던 자가 사법연수원을 수료하는 해의 판사 임용에 지원하는 경우에 적용되는 한 헌법에 위반된다」というものである。請求人は,2011年7月18日の改正当時に既に司法研修生の身分にあった821名である。決定要旨は,判事任用資格に関する規定が約40年間維持されてきたことにより,司法試験合格後に司法研修院を修了すれば直ちに判事任用資格を得られるという信頼が保護に値するとし,改正当時既に司法研修院に入所していた者にまでこの規定を適用することは信頼保護原則に反すると判断した。もっとも,同じ経過措置について,憲法裁判所2014年5月29日決定(2013헌마127)は,改正当時にまだ司法研修院に入所していなかった者については信頼保護原則違反も平等権侵害も認めず,請求をいずれも退けている。憲法裁判所は,改正時に既に司法研修生であったか否かで線を引いたことになる。

この限定違憲決定によって無効とされた範囲は,2011年改正時点で既に研修生だった者への適用に限られており,段階的施行のスケジュール自体を無効としたものではない。したがって,2013年から2021年までの延期(前記2)は,この決定の後も進められている。もっとも,法院組織法の附則注記が示すとおり,2024年改正は,この決定を条文上の理由の一つとして明記しており,法曹一元化をめぐる制度設計が,国会の立法裁量だけでなく憲法裁判所の判断にも規律されてきたことがうかがえる。

4 法曹一元化の受け皿としての裁判研究員制度

2011年の同じ改正で,各級法院に裁判研究院(재판연구원)を置く制度が新設された。法曹一元化により司法研修修了者が直ちに判事になれなくなったことを受けた措置であり,改正理由は,裁判研究員としての勤務期間を含めて最小5年の法曹経歴を備えれば判事に任用され得ることを踏まえ,任期を段階的に見直すとしている。裁判研究員の定員は,2018年までに200名,2022年までに300名の範囲で大法院規則によって定めるものとされた。判事の給源を弁護士・検察官等の複数の職種に開くという条文上の建付けと,実際には裁判研究員として一定期間勤務した後に判事に任用されるという運用実態とは,区別して理解する必要がある。

第3 裁判官の人事構造と比較法研究体制1 高等法院と地方法院の人事の分離

大法院法院行政処『2025 사법연감』130頁によれば,法曹一元化の導入前は,司法研修院修了後に直ちに任用された判事が,地方法院陪席判事,単独判事,高等法院陪席判事,地方法院部長判事,高等法院部長判事という順に補職を移動する段階的な人事類型が採られていた。大法院は,法曹一元化の実施に備えて2010年に方案を策定し,高等法院及び地方法院に所属する判事の人事体系を分離することとした。法官人事規則10条に基づき,一定の経歴を積んだ判事を順次高等法院判事に補任し,以後は特別の事情がない限り高等法院でのみ勤務させる運用が採られ,同年鑑は,ソウル高等法院(院外裁判部を除く。)について2019年の定期人事から高等法院部長判事を除く法官の全員が高等法院判事で構成されているとしている。日本の裁判官が地方裁判所と高等裁判所を繰り返し異動する人事とは対照的な設計である。

2 高等法院部長判事の廃止

前記の人事の分離と一体をなす改革が,2020年3月24日法律第17125号(施行2021年2月9日)による高等法院部長判事の廃止である。改正理由は,「사실상 승진 개념으로 운용되어 법관의 관료화를 심화시킨다는 비판을 받아 온 고등법원 부장판사 직위를 폐지함으로써 대등한 지위를 가진 판사로 구성된 재판부를 통해 충실한 심리가 이루어지도록 하고, 사회관계망서비스(SNS)를 통해 현직 법관의 정치적 의사표명이 늘어나는 등 법관의 정치적 중립성에 대한 논란이 증가하는 점을 고려하여 법관의 임용 결격사유를 강화하는 한편, …」と説明する。すなわち,事実上の昇進として運用され裁判官の官僚化を深めるという批判を受けてきた高等法院部長判事という職位そのものを,法律で廃止したことになる。同じ改正は,SNSを通じた現職裁判官の政治的意思表明の増加を理由に,裁判官の任用欠格事由を強化する内容もあわせて含んでいる。日本では,情報ネットワーク上の投稿を理由とする裁判官の規律の問題は,裁判所法49条の「品位を辱める行状」に関する分限事件(最高裁判所大法廷平成30年10月17日決定,最高裁判所大法廷令和2年8月26日決定)という,既存の懲戒法制の解釈によって扱われてきた。韓国が任用資格の要件そのものを立法によって強化したのに対し,日本は既存の分限手続の中でこの問題に対応してきたことになる。

3 外国司法制度の比較研究を担う常設機関

2013年8月13日法律第12041号(施行2014年1月1日)により,大法院傘下に司法政策研究院が設置された。改正理由は,同院の任務の一つとして,外国の司法制度に関する比較研究並びに海外各国との司法交流の拡大及び韓国司法制度の海外への発信を担う専門的な研究機関として位置付けている。後記第5で引用する2024年の国民参与裁判に関する報告書及び後記第6で引用する裁判に対する憲法訴願をめぐる議論も,この機関が公表した資料に基づくものである。日本については,最高裁判所に対する司法行政文書開示請求により入手された「諸外国(米英独仏豪加)及び我が国の司法制度の概要(対照表)」の作成時点が令和元年5月以降更新されていないことを,外国の司法制度と比べた日本の司法制度の特徴で確認している。外国の司法制度を比較研究する常設の機関を法律上明確に位置付けているかどうかという点も,両国の違いとして指摘できる。

第4 最高裁判所(大法院)の規模――大法官14名から26名へ1 増員の立法理由

法院組織法4条2項は,「대법관의 수는 대법원장을 포함하여 14명으로 한다」と定めてきたが,2026年3月12日法律第21451号は,この員数を26名に増員した。増員は一度に行われるのではなく,附則により2028年3月13日に4名,2029年3月13日に4名,2030年3月13日に4名を,段階的に加える方式が採られている。立法理由は,増員を要する事情について,「2022년 기준 대법원 본안사건 접수 건수는 연간 56,000건을 초과하였고, 대법관 1인당 연간 약 5,000건에 이르는 사건을 처리해야 하는 상황으로 심층적 심리와 숙의가 어려워지고 있으며, 상당수 사건이 '심리불속행 기각'으로 종결되는 구조 속에서 상고심에 대한 국민적 불신이 심화되고 있는바, 현행 14명인 대법관의 수를 단계적으로 증원하여 26명이 되도록 함…」と説明する。大法官1人当たり年間約5,000件という処理件数と,심리불속행(審理不続行)棄却による終結が多いことへの国民の不信を,増員の立法事実として挙げている。審理不続行棄却は,上告理由が法定の事由(憲法違反,判例違反等)に該当しないと判断される場合に,実質審理をせずに棄却する韓国独自の制度である。

日本の裁判所法5条3項は,「最高裁判所判事の員数は,十四人とし」と定め,最高裁判所長官を加えた15人の裁判官が最高裁判所を構成する。上告審への事件集中に対する制度的な対応としては,最高裁判所判事の員数を増やすのではなく,上告受理の申立てという制度によって最高裁判所が扱う事件の範囲を限定する方式が採られている。民事訴訟法318条1項は,最高裁判所が,原判決に最高裁判所の判例と相反する判断がある事件その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むと認められる事件について,申立てにより上告審として事件を受理することができると定める。すなわち,日本は裁判官の数を維持したまま受理する事件の範囲を絞り込む方向で対応し,韓国は事件の範囲を維持したまま裁判官の数を増やす方向で対応したことになる。両国の対応の違いは,同じ「上告審の負担」という問題に対する異なる制度選択として位置付けることができる。

2 日本の裁判官定員との対比

比較の前提として両国の裁判官の規模を確認する。最高裁判所『裁判所データブック2026』22頁によれば,令和8年度の裁判官の定員は,最高裁判所長官・最高裁判所判事・高等裁判所長官の合計23人,判事2,155人,判事補842人及び簡易裁判所判事806人の合計3,826人である。同書28頁の総人口は1億2,305万人である。

韓国側は,大法院法院行政処『2025 사법연감』の別表2-2によれば,2024年12月31日時点の판사(判事)の定員は3,214名,現員は3,094名であり,定員に対し120名の欠員がある。これに大法院長1名及び当時の大法官14名を加えると,裁判官の定員は3,229名となる。国家データ処が2026年7月28日に公表した「2025年人口住宅総調査結果(登録センサス方式)」によれば,2025年11月1日時点の韓国の総人口は5,182万人である。

両国の数値を裁判官1人当たりの人口に換算すると,日本は約32,160人(3,826人で1億2,305万人を除して算出),韓国は約16,050人(3,229名で5,182万人を除して算出)となる(いずれも本記事における計算)。韓国の裁判官は,人口当たりで見ると日本のおよそ2倍の密度にある。ただし,日本側の数値は各年度の定員であるのに対し,韓国側の数値は司法年鑑及び人口統計それぞれの基準時点(2024年末及び2025年末)によるものであり,両者は同一時点の比較ではない。また,韓国の判事定員は,各級法院判事定員法の2025年1月7日改正(法律第20659号)により,2025年から2029年までの5年間で3,214名から3,584名へ370名増員される途上にあり,同法附則により2025年90名,2026年80名,2027年70名,2028年70名,2029年60名と段階的に施行される。この増員も,2024年12月31日時点で既に定員を120名下回っていた状況からの積み増しであることに留意する必要がある。

第5 国民の刑事裁判参加――拘束力ある参審と拘束力なき陪審1 国民参与裁判の制度設計と憲法上の理由

韓国の국민의 형사재판 참여에 관한 법률(国民の刑事裁判参加に関する法律)は,2008年1月1日に施行され,刑事裁判に国民が陪審員として参加する国民参与裁判の制度を導入した。5条1項は,対象事件を法院組織法32条1項の合議部管轄事件(一部の除外事由を除く。)とし,同条2項は,被告人が国民参与裁判を望まない場合又は法院が排除決定をした場合には実施しないと定める。8条1項は,法院が対象事件の被告人に対し国民参与裁判を望むかどうかの意思を書面等の方法で必ず確認しなければならないと定めており,被告人の申請を要件とする点に特色がある。

評決の効力は,46条5項に定められている。同項は,陪審員の有罪無罪に関する評決及び量刑に関する意見は法院を羈束しないと定める。46条2項は,審理に関与した陪審員が有罪無罪について評議し,全員の意見が一致すればその評決によるとする一方,陪審員の過半数の要請があれば審理に関与した判事の意見を聴くことができるとし,同条3項は,全員一致に至らない場合の有罪無罪の評決を多数決の方法によるとした上で,審理に関与した判事は評議に参席して意見を述べることはできても評決には参加できないとする。48条4項は,裁判長が判決宣告の際に被告人へ陪審員の評決結果を告知し,評決結果と異なる判決を宣告するときはその理由を説明しなければならないと定め,49条2項は,評決結果と異なる判決を宣告するときは判決書にその理由を記載しなければならないと定める。

この設計が採られた理由について,司法政策研究院が2024年5月20日に公表した研究報告書『국민참여재판의 현황 및 활성화 방안에 관한 연구――실시요건 개선을 중심으로』は,「헌법 제27조 제1항에서 피고인의 '법관에 의한 재판을 받을 권리'를 보장하고 있는데, 여기서 '법관'은 직업법관을 의미하는 것이지, 배심원과 같은 시민법관까지 포함한다고 해석하기 어렵다. 이에 국민참여재판법에서 피고인 신청주의, 배심원 평결의 권고적 효력, 다수결 평의나 양형 토의에 법관 관여 등 헌법적합성을 고려한 여러 제도를 마련한 것…」と説明する。すなわち,韓国憲法27条1項が保障する「法官による裁判を受ける権利」の「法官」を職業裁判官に限られると解した結果として,被告人の申請主義及び評決の勧告的効力(拘束力を持たせないこと)という制度設計が採られたことになる。同報告書は,制度全体を「국민의 사법 참여 경험이 없고, 헌법에서 '법관에 의한 재판을 받을 권리'를 보장하고 있는 점 등을 고려하여 배심제와 참심제를 혼합한 시범적・타협적인 형태로 출범」したものと位置付けている。

日本の裁判員の参加する刑事裁判に関する法律は,これと異なる設計を採る。2条1項は,対象事件を死刑又は無期拘禁刑に当たる罪に係る事件及び故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係る事件(裁判所法26条2項2号)とし,被告人に対象事件からの選択権を認めていない。67条1項は,事実の認定等に関する評決について,構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見によると定めており,裁判官のみの意見でも裁判員のみの意見でも結論を決めることができない。裁判員が加わった評決は,そのまま判決となる点で,韓国の国民参与裁判のように後から法院が異なる判決を宣告する余地を持たない。裁判員制度の合憲性については,最高裁判所大法廷平成23年11月16日判決が,「憲法は,刑事裁判における国民の司法参加を許容しており,憲法の定める適正な刑事裁判を実現するための諸原則が確保されている限り,その内容を立法政策に委ねている。」と判示し,裁判官と裁判員によって構成される合議体も憲法の定める裁判所に当たるとした上で,制度全体を合憲としている。本記事では,両国の制度が,市民参加の有無ではなく,評決に法的効力を与えるかどうかという一点で分かれていると整理する。

2 実績――評決に拘束力がなくても大半は一致する

大法院『2025 사법연감』は,2008年2月12日の大邱地方法院での第1回国民参与裁判以来,2024年12月31日までに総計3,080件が実施され,そのうち93.8%に当たる2,889件で陪審員の有罪無罪の評決と法院の判決が一致したと記録する。前記1のとおり評決には法的拘束力がないにもかかわらず,17年間の実績で9割を超える一致率が保たれていることになる。

同年鑑は,実施件数の年次推移についても,2013年の345件をピークに,2024年は91件であったと記録する。司法政策研究院の前記報告書は,別の集計として,2008年から2022年までの累積対象事件240,833件のうち,国民参与裁判が申請された事件は9,439件で申請率3.9%であり,実際に実施された事件は2,894件であったとする。実施の減少について,同報告書は,被告人の申請主義そのものに内在する限界(申請しても自由に撤回できること)と,法院に広範な排除決定の権限が与えられていることを主な要因として挙げている。実施件数が伸び悩む一方で,実施された事件に限れば,同報告書は,国民参与裁判の平均無罪率が12.8%であり,全国の1審刑事合議部の平均無罪率4.8%のおよそ2.6倍であったとし,他方で控訴審における破棄率は29.8%にとどまり,全国高等法院の1審合議事件の破棄率41.7%より低かったとしている。無罪率が高い一方で控訴審における破棄率はむしろ低いという2つの数値は,本記事では,市民が加わることで判断の精度が損なわれるという懸念に対する反証と評価し得るものと整理する。

司法政策研究院の報告書は,各国の市民参加型裁判制度の実施状況も比較しており,2022年の日本については,「과거 배심제 실패의 경험을 바탕으로 재판원재판에 대한 피고인의 선택권은 인정되지 않고 있다」(過去の陪審制失敗の経験を踏まえ,裁判員裁判に対する被告人の選択権は認められていない)とし,同年の1審公判事件処理件数43,517件のうち裁判員裁判の処理件数を753件(約1.7%)としている。同じ報告書は,被告人の申請主義を維持しつつ,故意の犯罪行為による生命侵害犯罪を必要的な対象事件として指定することを,制度活性化のための優先的な提言として掲げている。この提言は,日本の裁判員法2条1項2号が定める「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪」という対象事件の設計と対応する内容であり,被告人の選択に委ねる部分を残しつつ,重大な生命侵害犯罪については実施を確保しようとする方向性を示すものである。

第6 2026年の裁判憲法訴願――司法制度そのものを憲法訴訟で争えるか1 制度の内容

2026年3月12日法律第21452号による改正前の憲法裁判所法68条1項は,公権力の行使又は不行使により憲法上保障された基本権を侵害された者は,法院の裁判を除いては憲法裁判所に憲法訴願審判を請求することができると定め,「법원의 재판을 제외하고는」(法院の裁判を除いては)という限定によって法院の裁判を憲法訴願の対象から除外していた。同改正は,法制処の改正文によれば,同項本文中の「법원의 재판을 제외하고는 헌법재판소」を「헌법재판소」に改めるものであり,この限定を削除して,法院の裁判に対する憲法訴願(재판소원,裁判所願)を導入した。

改正後の68条3項は,法院の裁判に対する憲法訴願を,確定した裁判を対象とし,次の3類型のいずれかに該当する場合に限って請求できると定める。すなわち,①法院の裁判が憲法裁判所の決定に反する趣旨で裁判をしたことにより基本権を侵害した場合,②法院の裁判が憲法及び法律で定めた適法な手続を経ないで裁判をしたことにより基本権を侵害した場合,③法院の裁判が憲法及び法律に違反して基本権を侵害したことが明白な場合,である。手続面では,69条1項ただし書が請求期間を確定日から30日以内とし,71条4項が請求書に裁判書及びその確定証明願の添付を求める。71条の2は仮処分の規定であり,憲法裁判所は,憲法訴願の請求を受けたときは,職権又は請求人の申立てにより,終局決定の宣告時まで審判対象となった公権力の効力を停止する決定をすることができるとする。法制処は,これらの改正の理由について,「…법원의 재판은 사법권의 행사라는 점에서 공권력의 일종에 해당하므로 헌법소원심판 사건의 대상에 포함하는 것이 타당하고, 법원의 심급제도로 구제받기 어려운 재판절차에서 발생하는 기본권 침해 등은 헌법소원을 허용하여 국민의 기본권을 충실히 보장할 필요가 있다는 지적이 있는바, …국민의 기본권 보장의 사각지대를 해소하고, 국민의 권리구제 수단을 보다 강화하려는 것임」と説明している。さらに,同じ改正で75条4項が新設されている。国会に提出された議案の説明によれば,同項は,基本権侵害の原因となった公権力の行使が法院の裁判であるときは,憲法裁判所が当該裁判を取り消し,法院は憲法裁判所の決定の趣旨に従って再度裁判をするものとされている。この改正は,前記第4で述べた法院組織法4条2項の大法官14名から26名への増員(法律第21451号)と同じ2026年3月12日に公布されており,連番の法律番号が付されている。上告審の受理容量を拡大する改正と,確定判決に対する新たな外部審査の経路を開く改正が,同時に成立したことになる。

2 国会での賛否

この改正は,全会一致で成立したものではない。国会議案情報システムによれば,議案番号2216845「헌법재판소법 일부개정법률안(대안)(법제사법위원장)」は,2026年2月12日に法制司法委員会の対案として提案され,同月27日の本会議で,在席225人のうち賛成162人・反対63人・棄権0人により原案どおり可決された。委員会審査の段階でも「상정/소위심사보고/찬반토론/의결(대안가결)」という経過が記録されており,賛否の討論を経て可決に至っている。

可決に先立つ2026年2月24日の本会議では,賛否双方の議員が具体的な立法例と統計を挙げて討論している。反対の立場からは,ドイツが裁判に対する憲法訴願を導入している一方,オーストリアは2012年憲法改正後も行政法院の第1審判決に限って認め,行政裁判所自身の裁判には憲法訴願を認めていないという立法例の違いが指摘され,ドイツ連邦憲法裁判所が受理する事件のうち裁判に対する憲法訴願が占める割合は2020年から2024年まで概ね80%前後に達する一方,その認容率は概ね1%台前半にとどまり,特に連邦最高法院の裁判に対する認容率は平均0%台であるという統計が示された。あわせて,韓国はドイツと異なり上訴を制限していないため,裁判に対する憲法訴願は主として大法院の確定判決に集中することになり,訴訟の相手方がこの制度を濫用すれば審理が長期化しかねないという懸念も述べられている。

賛成の立場からは,国会立法調査処が2025年11月に公表した報告書がドイツ・スペイン・台湾の導入例を分析していること,及び,1988年の憲法裁判所法制定当時に憲法裁判所長を務め裁判に対する憲法訴願の導入に反対していた人物が,後年のインタビューで当時の反対意見を誤りであったと述べたことが紹介された。

3 日本との対比

日本国憲法81条は,最高裁判所を「一切の法律,命令,規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所」と定めるが,最高裁判所大法廷昭和27年10月8日判決は,具体的事件を離れて抽象的に法律・命令等の合憲性を判断する権限を最高裁判所は有しないと判示しており,日本の違憲審査は具体的事件に付随してのみ行われる。最高裁判所の確定判決そのものに対する不服申立ての手段は再審に限られ,判決の当否を別の憲法上の機関が審査する制度は存在しない。

これに対し,韓国は,前記1及び2で見たとおり,確定判決を対象とする裁判憲法訴願を2026年に導入し,しかも終局決定までの間,公権力の効力を停止する仮処分の制度まで設けた。韓国憲法111条1項5号は,憲法裁判所が管掌する事項として「법률이 정하는 헌법소원에 관한 심판」(法律の定める憲法訴願に関する審判)を掲げており,憲法自身が憲法訴願の対象範囲を法律に委ねている。他方,韓国憲法101条2項は法院を「最高法院인 대법원」(最高法院である大法院)を頂点とする組織と定め,107条2項は,命令・規則又は処分の憲法・法律適合性が裁判の前提となった場合には大法院がこれを最終的に審査する権限を有すると定めており,前記2の反対討論は,この規定と裁判憲法訴願との整合性を主たる争点の一つとしている。日本にはこの2つの憲法規定に相当するものがなく,したがってこの種の対立自体が生じない構造になっている。

なお,憲法裁判所は,9人の裁判官で構成され(憲法裁判所法3条),うち3人を国会が選出し,3人を大法院長が指名し,残る3人を含めて全員を大統領が任命する(同法6条1項)。すべての裁判官が国会の人事聴聞を経ることも同条2項に定められている。日本の最高裁判所裁判官の任命は,長官については内閣の指名に基づいて天皇が行い(憲法6条2項),その他の裁判官については内閣が行う(憲法79条1項)ものとされており,いずれも国会の関与を経ない。他方,任命後には国民審査(憲法79条2項・3項)という事後の民主的統制の仕組みが置かれている。韓国側の憲法裁判所裁判官の選任過程には,これに相当する事後審査の制度は見当たらない。両国の裁判官の民主的正当性の担保方法が異なることを示している。

出典・参考資料1 法令

①裁判所法(昭和22年法律第59号)5条・42条・43条(e-Gov法令検索)
②裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成16年法律第63号)2条・67条(e-Gov法令検索)
③民事訴訟法(平成8年法律第109号)318条(e-Gov法令検索)
④日本国憲法6条・79条・81条(e-Gov法令検索)

2 韓国の法令

①법원조직법(法院組織法)4条・42条・42条の3(韓国国家法令情報センター)
②국민의 형사재판 참여에 관한 법률(国民の刑事裁判参加に関する法律)5条・8条・46条・48条・49条(韓国国家法令情報センター)
③각급 법원 판사 정원법(各級法院判事定員法)1条(韓国国家法令情報センター)
④헌법재판소법(憲法裁判所法)3条・6条・68条・69条・71条・71条の2・75条(韓国国家法令情報センター)
⑤대한민국헌법(大韓民国憲法)101条・107条・111条(韓国国家法令情報センター)

3 裁判例・決定

①最高裁判所大法廷昭和27年10月8日判決(昭和27年(マ)第23号,民集6巻9号783頁,裁判所ウェブサイト)
②最高裁判所大法廷平成23年11月16日判決(平成22年(あ)第1196号,刑集65巻8号1285頁,裁判所ウェブサイト)
③헌법재판소 2012. 11. 29. 선고 2011헌마786・2012헌마188(併合)전원재판부 결정「법원조직법 부칙 제1조 등」(韓国国家法令情報センター)
④헌법재판소 2014. 5. 29. 선고 2013헌마127 전원재판부 결정「법원조직법 부칙 제1조 단서 등 위헌확인」(韓国国家法令情報センター)

4 公的資料・統計

①最高裁判所『裁判所データブック2026』22頁・28頁(資料上の頁。裁判所)
②大法院法院行政処『2025 사법연감』別表2-2,374頁~376頁,825頁~826頁(大法院)
③司法政策研究院임성민『국민참여재판의 현황 및 활성화 방안에 관한 연구――실시요건 개선을 중심으로』(2024年5月20日)(司法政策研究院)
④韓国国家データ処「2025年人口住宅総調査結果(登録センサス方式)」(2026年7月28日公表)
⑤日本弁護士連合会「弁護士任官の推進(弁護士任官等推進センター)」(日本弁護士連合会)

5 国会資料

①大韓民国国会議案情報システム議案2112201「법원조직법 일부개정법률안(대안)(법제사법위원장)」表決情報(大韓民国国会)
②大韓民国国会議案情報システム議案2216845「헌법재판소법 일부개정법률안(대안)(법제사법위원장)」審査情報・表決情報(大韓民国国会)
③大韓民国国会会議録システム 제21대국회 제390회 제1차 국회본회의(2021年8月31日)・제22대국회 제432회 제8차 국회본회의(2026年2月24日)会議録(大韓民国国会)

外国の司法制度と比べた日本の司法制度の特徴――米英独仏豪加との比較でみる構造,法曹人口及び裁判例(AI作成)

第1 この記事が扱う対象1 比較の枠組みと本記事の射程2 7か国の中で日本だけが持つ組合せ第2 裁判所の組織と規模1 単一の頂点をもつ構造2 庁数と職員定員第3 裁判官の任用,身分保障及び規律1 条文が予定する給源と実際の給源2 任期,身分保障及び定年3 規律をめぐる大法廷の判断第4 違憲審査――明文があり憲法裁判所がないこと1 昭和27年大法廷判決2 司法権の限界3 大法廷回付という担保第5 裁判の公開と非訟事件第6 国民の司法参加1 裁判員法の評決要件2 合憲判断3 実績4 国民審査第7 法曹人口――国際比較の系列が途絶していること1 日本の実数2 2019年時点の人口当たり比較3 単純比較を妨げる要素4 2020年以降の公的な比較の不存在第8 民事手続――弁護士強制主義を採らないこと第9 刑事手続と検察1 令状主義,国家訴追主義及び起訴裁量主義2 検察官に対する指揮権3 有罪率,勾留率及び保釈率第10 判決情報の公開出典・参考資料1 法令2 外国の法令3 裁判例4 公文書・開示文書5 統計・データ6 ウェブ資料第1 この記事が扱う対象1 比較の枠組みと本記事の射程

最高裁判所に対する司法行政文書開示請求により開示された「諸外国(米英独仏豪加)及び我が国の司法制度の概要(対照表)」は,アメリカ,イギリス(イングランド及びウェールズ),ドイツ,フランス,オーストラリア,カナダ及び日本の7か国を列に並べ,裁判所の基本的組織,憲法裁判所及び行政裁判所の有無,裁判官の任用,陪審制・参審制,弁護士資格,法曹養成制度並びに民事・刑事の裁判手続の特徴を行に配置した1枚の表である。7点の開示文書の一覧,対照表の各欄に何が記載されているか,及びその読み方については,諸外国(米英独仏豪加)の司法制度――最高裁判所の開示文書7点と対照表の読み方で整理している。

本記事は,対照表が設定した比較の項目を出発点としつつ,そこに並んだ日本の欄を,現行の条文,最高裁判所の裁判例及び公表された統計によって確かめ直すものである。すなわち,対照表という資料の説明ではなく,日本の司法制度が7か国の中でどの位置にあるのかを,e-Gov法令検索の現行条文,裁判所ウェブサイト掲載の裁判例,最高裁判所『裁判所データブック2026』,日本弁護士連合会『弁護士白書』及び法務省『犯罪白書』の数値によって確定することを目的とする。生成AIを用いて,これらの一次資料を1件ずつ照合して構成した。

対照表の日本欄の記述と現行制度とのずれ(証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度,検察審査会の起訴議決,法定審理期間訴訟手続及び拘禁刑の創設)については前掲の記事で扱っているため,本記事では繰り返さない。各国側の制度の詳細は,アメリカ,イギリス,ドイツ,フランス,オーストラリア及びカナダの各記事を参照されたい。

2 7か国の中で日本だけが持つ組合せ

対照表を3つの欄に絞って読むと,7か国は2つの型に分かれる。アメリカ,イギリス,オーストラリア及びカナダは,憲法裁判所を置かず,行政裁判所を置かず,裁判官の任用を「法曹一元」とする。フランス及びドイツは,憲法裁判所を置き,行政裁判所を置き,裁判官の任用を「キャリアシステム」とする。それぞれの型の内部では,3つの欄の記載が一貫している。

日本は,このいずれの型にも属さない。憲法裁判所も行政裁判所も置かない点では前者の4か国と同じでありながら,裁判官の任用は後者の2か国と同じ「キャリアシステム」とされているからである。7か国のうち,「憲法裁判所なし・行政裁判所なし・キャリアシステム」という組合せを持つのは日本だけであり,本記事では,これを外国と比べた日本の司法制度の最も基本的な特徴として整理する。以下の各節は,この組合せがそれぞれの場面で具体的に何を意味するかを,条文,裁判例及び数値によって確かめるものである。

第2 裁判所の組織と規模1 単一の頂点をもつ構造

日本国憲法76条1項は「すべて司法権は,最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。」と定め,同条2項は「特別裁判所は,これを設置することができない。行政機関は,終審として裁判を行ふことができない。」と定める。これを受けて裁判所法2条1項は,下級裁判所を高等裁判所,地方裁判所,家庭裁判所及び簡易裁判所の4種類とする。行政機関による審判は,裁判所法3条2項が「行政機関が前審として審判することを妨げない」と定めることにより,前審としてのみ許される。

この構造は,最高裁判所が民事,刑事,行政,家事,少年,労働及び知的財産のすべてについて単一の終審となることを意味する。対照表の基本的組織の欄をみると,ドイツは区裁判所,地方裁判所等,高等裁判所等,連邦通常裁判所等及びその他特別裁判所を掲げ,フランスは小審裁判所,大審裁判所,重罪院,控訴院及び破毀院に加えて憲法院及びコンセイユ・デタを別系統として置き,オーストラリア及びカナダは連邦の裁判所と州の裁判所を並べて掲げている。これに対し日本の欄は,簡易裁判所,地方裁判所,家庭裁判所,高等裁判所及び最高裁判所の5種類のみである。ドイツのような裁判権の系列の並立も,フランスのような司法・行政の二元制も,連邦制3か国のような連邦と州の二元構造も持たない点で,日本の裁判所の構造は7か国の中で最も単純な部類に属する。

2 庁数と職員定員

最高裁判所『裁判所データブック2026』1頁によれば,裁判所の庁数は,最高裁判所1,高等裁判所が本庁8及び支部6(このほか東京高等裁判所の特別の支部として知的財産高等裁判所が置かれる),地方裁判所が本庁50及び支部203,家庭裁判所が本庁50,支部203及び出張所77,簡易裁判所が438(地方裁判所の本庁又は支部に併置されたもの253及び独立簡易裁判所185)であり,検察審査会は165置かれている。

令和8年度の裁判所職員(執行官を除く。)の定員は,同書22頁によれば合計25,366人であり,その内訳は,①最高裁判所長官・最高裁判所判事・高等裁判所長官23人,②判事2,155人,③判事補842人,④簡易裁判所判事806人(以上,裁判官の合計3,826人),⑤裁判所書記官9,878人,⑥裁判所速記官180人,⑦家庭裁判所調査官1,613人,⑧裁判所事務官9,317人,⑨その他552人(裁判官以外の合計21,540人)である。女性裁判官数は,令和7年12月1日現在で873人とされている。同書は,これらの定員の根拠法令として裁判所法及び裁判所職員定員法を掲げており,裁判官の員数が法律事項とされていることが確認できる。

第3 裁判官の任用,身分保障及び規律1 条文が予定する給源と実際の給源

裁判所法42条1項は,高等裁判所長官及び判事を,判事補,簡易裁判所判事,検察官,弁護士,裁判所調査官・司法研修所教官・裁判所職員総合研修所教官並びに大学の法律学の教授又は准教授の職に通算10年以上在職した者の中から任命すると定める。条文の建付けは,給源が複数あることを前提としている。他方,裁判所法43条は「判事補は,司法修習生の修習を終えた者の中からこれを任命する。」と定め,判事補については司法修習の修了者に限っている。

日本弁護士連合会は,弁護士任官の推進に関するウェブサイトにおいて,現在の日本の裁判官は司法試験合格後に司法修習を経て直ちに判事補に任官し「そのほとんどが10年後にそのまま『判事』になっていきます」と記述し,弁護士経験のある者から裁判官を任用する常勤任官について,2024年10月1日現在で60名の弁護士任官者が全国で活躍しているとしている。裁判官の定員3,826人に対し,弁護士から常勤の裁判官となった者は60名であるから,条文が予定する給源の多元性は,数の上では実現していない。司法制度改革の過程では判事補の他職経験が方策として採られ,判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律1条は,判事補及び検事が「一定期間その官を離れ,弁護士となってその職務を経験するために必要な措置を講ずる」ことを目的とすると定めているが,これは給源そのものを変える仕組みではない。日本国内の議論の経緯については法曹一元を参照されたい。

2 任期,身分保障及び定年

憲法78条は「裁判官は,裁判により,心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては,公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は,行政機関がこれを行ふことはできない。」と定め,憲法79条6項及び80条2項は在任中の報酬の減額を禁ずる。裁判所法48条も,公の弾劾又は国民の審査による場合及び心身の故障により職務を執ることができないと裁判された場合を除き,その意思に反して免官,転官,転所,職務の停止又は報酬の減額をされることはないと定める。行政機関による懲戒を憲法典で全面的に禁じている点は,比較法的にみて強い保障である。

他方,憲法80条1項は,下級裁判所の裁判官について「その裁判官は,任期を十年とし,再任されることができる。」と定める。任期及び定年は対照表の比較項目に含まれていないため,比較対象6か国の憲法又は法律を確認すると,次のとおりである。

国任期及び定年根拠日本下級裁判所の裁判官は任期10年(再任可)。定年は最高裁判所及び簡易裁判所の裁判官が70歳,高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所の裁判官が65歳憲法80条1項,裁判所法50条アメリカ最高裁判所及び下位の裁判所の裁判官は良好な行状の間その職を保持するものとされ,任期及び定年の定めはない合衆国憲法第3編第1節イギリス定年は75歳(当該職についてより低い年齢が定められている場合はその年齢)1993年裁判官年金及び退職法26条1項ドイツ終身裁判官は原則として67歳に達した月の末日に退職する。退職の時期を延ばすことはできないドイツ裁判官法48条1項・2項フランス司法官の定年は67歳。破毀院の第一院長及び検事総長は68歳1958年12月22日オルドナンス第58-1270号76条オーストラリア連邦最高裁判所の裁判官は70歳に達するまで。議会が創設した裁判所の裁判官の上限も70歳(議会はこれより低い年齢を定めることができる)オーストラリア憲法72条カナダ上級裁判所の裁判官は良好な行状の間その職を保持するものとされるが,75歳に達したときに退職する1867年憲法法99条

この表からは2点を指摘することができる。第1に,定期の任期を定め,その満了ごとに再任の手続を経ることとしているのは,本記事が確認した限りでは7か国のうち日本だけである。アメリカ及びカナダは良好な行状を要件として任期を定めず,イギリス,ドイツ,フランス及びオーストラリアは定年のみを定めている。憲法78条が罷免の要件を厳格に限定する一方で,10年ごとの再任という別の仕組みが置かれていることになる。

第2に,職又は裁判所の種別によって定年年齢が分かれること自体は,日本に固有の現象ではない。フランスは破毀院の第一院長及び検事総長について68歳という別の年齢を定めており,イギリスの1993年裁判官年金及び退職法26条1項も,当該職についてより低い年齢が定められている場合にはその年齢によるとしている。日本の70歳と65歳という区分を,日本だけの特徴として説明することはできない。なお,イギリスの75歳という年齢は,2022年公務員年金及び司法職法121条及び別表1が1993年法26条1項の「70」を「75」に改めたことによるものであり,同法121条は国王裁可の日に施行されている。日本の定年年齢が定められた経緯については裁判官の定年が70歳又は65歳とされた根拠で扱っている。

3 規律をめぐる大法廷の判断

裁判官の規律は,最高裁判所の大法廷が正面から判断してきた領域である。最高裁判所大法廷平成10年12月1日決定は,裁判所法52条1号にいう「積極的に政治運動をすること」とは,組織的,計画的又は継続的な政治上の活動を能動的に行う行為であって裁判官の独立及び中立・公正を害するおそれがあるものをいうとした上で,同号の規定は憲法21条1項に違反しないとし,あわせて裁判官分限事件には憲法82条1項が適用されないと判示した。

裁判所法49条にいう「品位を辱める行状」の意義については,最高裁判所大法廷平成30年10月17日決定が,「職務上の行為であると,純然たる私的行為であるとを問わず,およそ裁判官に対する国民の信頼を損ね,又は裁判の公正を疑わせるような言動をいう」と判示し,情報ネットワーク上の投稿がこれに当たるとされた事例を示した。同じ枠組みは,最高裁判所大法廷令和2年8月26日決定でも用いられている。行政機関による懲戒が禁じられている以上,裁判官の規律は裁判所自身の裁判によって画されることになり,その基準が大法廷の判断として蓄積している点は,日本の制度に固有の現れ方である。

第4 違憲審査――明文があり憲法裁判所がないこと1 昭和27年大法廷判決

憲法81条は「最高裁判所は,一切の法律,命令,規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」と定める。この明文の規定にもかかわらず,日本の違憲審査が具体的事件を前提とするものにとどまることを確定させたのが,最高裁判所大法廷昭和27年10月8日判決である。同判決は,判示事項を「具体的事件を離れて最高裁判所は抽象的に法律命令等の合憲性を判断できるか」とした上で,「最高裁判所は,具体的事件を離れて抽象的に法律,命令等が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有するものではない。」と判示した。

対照表において憲法裁判所を「あり」とするのはフランス(憲法院)及びドイツ(連邦及び州の憲法裁判所)だけであり,日本は「なし」の側に置かれている。もっとも,憲法裁判所を置かないことと,憲法典に違憲審査の根拠規定を持たないこととは別である。カナダの1982年憲法法52条1項は,カナダ憲法がカナダの最高法規であり,憲法の規定と抵触する法律はその抵触の限度において効力を有しない旨を定めており,憲法裁判所を置かない国であっても,法律の効力を憲法によって否定する根拠を憲法典に置く例がある。これに対し,アメリカ合衆国憲法第3編は司法権の帰属と管轄の範囲を定めるにとどまり,違憲審査について明文の規定を置いていない。

したがって,日本の憲法81条の位置付けは,明文の規定があるかどうかではなく,その明文の規定を最高裁判所自身が付随的審査に限定して解した点にある。憲法適合性の判断が,専門の機関ではなく通常の民事・刑事・行政の事件の中で行われるという構造は,違憲判断の数と時期がどのような事件が提起されるかに依存することを意味する。最高裁判所が実際に法令を違憲とした事例については最高裁判所の違憲判決一覧|法令違憲14類型で整理している。

2 司法権の限界

裁判所法3条1項は,裁判所が「日本国憲法に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し」と定める。この「法律上の争訟」の外側については,最高裁判所大法廷昭和35年6月8日判決が,衆議院解散の効力を扱い,「衆議院解散の効力は,訴訟の前提問題としても,裁判所の審査権限の外にある。」と判示した。同判決は参照法条として憲法76条,81条,7条及び69条並びに裁判所法3条1項を挙げており,司法権の範囲そのものの画定として位置付けられる。

3 大法廷回付という担保

付随的審査制の下で憲法判断の水準を確保する仕組みが,裁判所法10条である。同条ただし書は,①当事者の主張に基づいて法律,命令,規則又は処分の憲法適合性を判断するとき(意見が前に大法廷でした合憲の裁判と同じである場合を除く。),②これらが憲法に適合しないと認めるとき,③憲法その他の法令の解釈適用について意見が前に最高裁判所のした裁判に反するときは,小法廷では裁判をすることができないと定める。憲法判断を15人の裁判官全員による大法廷に集約する仕組みであり,専門の憲法裁判所を置かない代わりに機能している部分がある。最高裁判所の構成については最高裁判所裁判官とは|現職15人の一覧・任命・定年・国民審査を参照されたい。

第5 裁判の公開と非訟事件

憲法82条1項は「裁判の対審及び判決は,公開法廷でこれを行ふ。」と定める。この規定と,公開の法廷によらない非訟の手続との関係は,大法廷が2度にわたって扱っている。最高裁判所大法廷昭和35年7月6日決定は,戦時民事特別法19条2項及び金銭債務臨時調停法7条に従い純然たる訴訟事件についてされた調停に代わる裁判について,同条に違反するばかりでなく,憲法82条及び32条に照らし違憲を免れないと判示した。

これに対し,最高裁判所大法廷昭和40年6月30日決定は,家事審判法9条1項乙類1号の夫婦の同居その他夫婦間の協力扶助に関する処分の審判についての規定が憲法32条及び82条に違反しないとし,あわせて,夫婦の同居義務等を前提とする審判が確定した場合でも同居義務等自体については別に訴えを提起することを妨げないと判示した。両決定を併せて読むと,公開の法廷による裁判を受ける権利が確保されているかどうかが判断の分かれ目であり,実体的な権利義務の存否を終局的に確定する手続は公開の法廷によらなければならないという枠組みが取られていることになる。対照表は各国の家事事件を扱う裁判所の名称を並べるにとどまるが,日本では,どの事件をどの手続で扱うかが憲法問題として争われてきた点に特色がある。

第6 国民の司法参加1 裁判員法の評決要件

裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2条1項は,対象事件を,死刑又は無期拘禁刑に当たる罪に係る事件及び裁判所法26条2項2号に掲げる事件であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るものと定め,同条2項は合議体の裁判官の員数を3人,裁判員の員数を6人とする。同法6条1項は,事実の認定,法令の適用及び刑の量定を構成裁判官及び裁判員の合議によるものとし,同条2項は,法令の解釈に係る判断及び訴訟手続に関する判断を構成裁判官の合議によるものとする。

日本の制度の内容を最もよく示すのは評決要件である。同法67条1項は「前条第一項の評議における裁判員の関与する判断は,裁判所法第七十七条の規定にかかわらず,構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見による。」と定める。単純な多数決ではなく,職業裁判官の意見と裁判員の意見の双方を含む多数でなければならないから,裁判官3人だけの意見でも裁判員6人だけの意見でも結論を決めることはできない。同条2項は,量刑について意見が分かれた場合に,被告人に最も不利な意見の数を順次利益な意見の数に加えていく方法を定めている。

対照表には評決要件を比較する行がないため,各国との対比には当該国の法令に当たる必要がある。イギリスについてみると,1974年陪審法17条1項は,刑事法院又は高等法院における陪審の評決について,陪審員が11人以上のときは10人が,10人のときは9人が一致すれば,全員一致でなくてよいと定めている。同条3項は,有罪の多数評決については,陪審長が公開の法廷で評決に同意した者及び同意しなかった者の数を述べた場合でなければ受理しないものとし,同条4項は,2時間以上の評議を経ることを要件としている。同条2項は,郡裁判所の民事の陪審(8人)について7人の一致で足りるとする。すなわち,陪審制を採る国であっても全員一致が要件であるとは限らず,「陪審制か参審制か」という対照表の1語からは評決の要件を読み取ることができない。

2 合憲判断

裁判員制度の合憲性は,最高裁判所大法廷平成23年11月16日判決が判断した。同判決は,「憲法は,刑事裁判における国民の司法参加を許容しており,憲法の定める適正な刑事裁判を実現するための諸原則が確保されている限り,その内容を立法政策に委ねている。」とした上で,裁判員制度は憲法31条,32条,37条1項,76条1項及び80条1項に違反せず,同条3項にも同条2項にも違反せず,裁判員の職務等は憲法18条後段が禁ずる「苦役」に当たらないと判示した。

同判決が参照法条として裁判所法3条3項を挙げている点は見落とされやすい。同項は「この法律の規定は,刑事について,別に法律で陪審の制度を設けることを妨げない。」と定めており,現在も効力を有する。日本法は,裁判員制度を採用した後も,刑事についての陪審制の導入を法律事項として留保したままである。

3 実績

法務省『令和7年版犯罪白書』によれば,令和6年の裁判員裁判対象事件の第一審における新規受理人員の総数は889人,判決人員の総数は848人であり,審理期間の平均は14.2月,開廷回数の平均は5.6回である。他方,同年の通常第一審における終局処理人員は48,388人である。前者を後者で除すると約1.8パーセントであり(本記事において両白書の数値から算出した。),裁判員裁判は刑事の通常第一審の2パーセントに満たない範囲で行われていることになる。国民の司法参加の有無を対照表の1語で比較するときには,それが刑事事件全体のどの範囲に及んでいるかが表れないことに注意を要する。

4 国民審査

対照表には行がないが,日本には比較対象の6か国に存在しない制度がある。憲法79条2項は,最高裁判所の裁判官の任命について,任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際に国民の審査に付し,その後10年を経過した後初めて行われる総選挙の際に更に審査に付すと定め,同条3項は,投票者の多数が罷免を可とするときはその裁判官が罷免されると定める。国民が裁判官を直接罷免し得る制度である。

この制度をめぐっては,最高裁判所大法廷令和4年5月25日判決が,最高裁判所裁判官国民審査法が在外国民に審査権の行使を全く認めていないことは憲法15条1項,79条2項及び3項に違反するとし,国が在外国民に対して次回の審査において審査権の行使をさせないことが違法であることの確認を求める訴えを公法上の法律関係に関する確認の訴えとして適法であるとし,立法措置がとられなかったことが国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けると判示した。

第7 法曹人口――国際比較の系列が途絶していること1 日本の実数

『裁判所データブック2026』28頁によれば,令和8年の数値は,裁判官定員3,826人(簡易裁判所判事を除くと3,020人),検察官定員2,757人(副検事を除くと1,893人),弁護士48,119人,法曹人口53,032人(簡易裁判所判事及び副検事を除く。),総人口1億2,305万人である。なお,弁護士数については,日本弁護士連合会『弁護士白書2025年版』79頁が2025年3月31日現在46,243人としており,両者は基準日が異なるため一致しない。異なる資料の数値を同一の表に並べる場合には,基準日の差を確認する必要がある。

2 2019年時点の人口当たり比較

日本弁護士連合会『弁護士白書2019年版』65頁から66頁までは,最高裁判所編『裁判所データブック』の該当年版の数値を用いて,「1人あたりの国民数」を各国比較している。2019年の数値は次のとおりである。

区分日本アメリカイギリスドイツフランス弁護士1人あたりの国民数3,075人260人382人498人999人裁判官1人あたりの国民数45,581人10,056人19,687人3,992人11,562人検察官1人あたりの国民数63,989人9,864人25,365人15,045人33,920人法曹三者1人あたりの国民数2,757人247人369人430人895人

同白書は,弁護士について,2019年の日本は約3,100人であるのに対し他の4国はいずれも1,000人以下であるとし,裁判官については,日本は1人あたり約4万6,000人であって他の4国と比べかなり多いとしている。表の数値を割り算すると,裁判官1人あたりの国民数は,日本がドイツの約11.4倍,アメリカの約4.5倍である。法曹三者1人あたりでみても,日本はアメリカの約11.2倍,ドイツの約6.4倍である(いずれも本記事において表の各国の数値で日本の数値を除して算出した。)。日本の司法制度を人的規模の面から特徴付ける数値は,この4行に集約されている。

3 単純比較を妨げる要素

もっとも,この比較には日本弁護士連合会自身が留保を付している。『弁護士白書2025年版』80頁は,「法律を扱う登録士業としては,弁理士,税理士,司法書士,行政書士,公認会計士等があげられる。諸外国では,これらの職種が扱う業務の一部を弁護士が行うところもあり,諸外国との人口比較においては,注意が必要である。」と明記し,隣接士業等の人口の合計を2025年で314,135人としている。この数は弁護士46,243人を含むものである。

さらに,この合計を人数としてそのまま用いることにも限界がある。弁護士法3条2項は「弁護士は,当然,弁理士及び税理士の事務を行うことができる。」と定めており,資格の重複が制度上予定されているから,登録数の合計は実人数と一致しない。したがって,隣接士業を含めれば日本の法律関係業務の担い手が諸外国と同水準になる,という形で単純に読み替えることもできない。本記事では,弁護士数だけを比較した数値と,隣接士業を含む登録数とを,いずれも確定した事実として併記するにとどめる。

4 2020年以降の公的な比較の不存在

比較を試みる際に確認しておくべきことがある。前記の4つの比較を掲げているのは『弁護士白書2019年版』であり,2020年版以降の同白書の該当章は「諸外国との弁護士数比較」となっていて,裁判官及び検察官を含む3職種の比較は掲載されていない。他方,これらの比較の基礎とされていた最高裁判所編『裁判所データブック』についても,2026年版の本文には諸外国の法曹人口に関する記載がない。同書の該当章は,日本における法曹人口及び総人口の推移,弁護士の数と人口との関係,司法修習生の数並びに終了者の進路別人数で構成されており,各国の数値を掲げる項目自体が置かれていない。

すなわち,日本の公的資料による法曹人口の国際比較は,本記事が確認した限りでは2019年の数値をもって途絶している。日本の司法制度の人的規模を諸外国と比べようとする者は,現在,日本の公的資料からは2019年より新しい比較を得ることができない。この点は,比較を行う際の制約として明示しておく必要がある。

第8 民事手続――弁護士強制主義を採らないこと

対照表は,フランスの民事の特徴として大審裁判所における弁護士強制主義を,ドイツについて代理人強制主義を掲げる一方,日本の欄には争点整理手続,集中証拠調べの原則化及び少額訴訟手続を掲げるにとどまる。日本の民事訴訟には,地方裁判所以上の事件について当事者に弁護士の選任を義務付ける規定がない。

その帰結は統計に表れている。『裁判所データブック2026』36頁によれば,令和7年の民事第一審通常訴訟既済事件(全地方裁判所)の総数は143,859件であり,弁護士選任状況の内訳は,双方に選任があるもの55,307件,原告側のみ71,280件,被告側のみ4,038件,本人のみ13,234件である。同書はこれを円グラフとして,双方38パーセント,原告側のみ50パーセント,被告側のみ3パーセント,本人のみ9パーセントと表示している。双方に弁護士が付いている事件は4割に満たず,被告側に弁護士が付いていない事件が過半を占めることになる。

弁護士強制主義を採るかどうかは,単に代理人の要否の問題にとどまらない。ドイツでは,区裁判所の管轄訴額の上限が引き上げられると,その範囲の事件について弁護士強制が外れるという関係にあり,管轄の変更が代理人選任の要否の変更を伴う。日本には,訴額の区分が代理人選任の要否を左右するという構造がそもそも存在しない。

なお,民事訴訟法等の一部を改正する法律(令和4年法律第48号)は令和4年5月18日に成立し同月25日に公布されたところ,法務省民事局の説明によれば,オンライン提出,訴訟記録の電子化及び法定審理期間訴訟手続の創設を内容とする全面施行は令和8年5月21日である。本記事が掲げた令和7年の弁護士選任状況は,この全面施行より前の数値であり,手続の電子化が本人訴訟の割合にどのような影響を及ぼすかは,今後の統計を待つほかない。改正の全体像については民事裁判手続のIT化を参照されたい。

第9 刑事手続と検察1 令状主義,国家訴追主義及び起訴裁量主義

憲法33条は「何人も,現行犯として逮捕される場合を除いては,権限を有する司法官憲が発し,且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ,逮捕されない。」と定める。対照表がアメリカ,イギリス及びオーストラリアの欄に無令状逮捕を掲げ,日本の欄にのみ令状逮捕を掲げているのは,この憲法上の原則の差である。

訴追については,刑事訴訟法247条が「公訴は,検察官がこれを行う。」と定め,同法248条が,犯人の性格,年齢及び境遇,犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは公訴を提起しないことができると定める。起訴裁量主義を採る点ではフランスと共通し,起訴法定主義を原則とするドイツとは異なる。もっとも,日本には,この裁量を統制する仕組みとして検察審査会が置かれており,検察審査会法41条の6第1項は,起訴議決をするには検察審査員8人以上の多数によらなければならないと定める。検察審査会の議決に対する不服申立ての方法については,最高裁判所第一小法廷昭和41年1月13日判決が「検察審査会の議決に対しては,行政訴訟の提起が許されないと解すべきである。」と判示している。

公判の構造についても特徴がある。刑事訴訟法256条6項は「起訴状には,裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添附し,又はその内容を引用してはならない。」と定める。対照表は,日本のほかアメリカ,イギリス及びオーストラリアの欄に起訴状一本主義を掲げる一方,ドイツ及びフランスの欄には職権主義を掲げ,注記において,担当裁判官が公判前にあらかじめ当該事件に関する一件記録を吟味した上で審理に臨むと説明している。日本は,裁判官の給源についてはドイツ及びフランスと同じキャリアシステムを採りながら,公判の構造についてはアメリカ及びイギリスと同じ起訴状一本主義を採っていることになる。

2 検察官に対する指揮権

検察庁法14条は「法務大臣は,第四条及び第六条に規定する検察官の事務に関し,検察官を一般に指揮監督することができる。但し,個々の事件の取調又は処分については,検事総長のみを指揮することができる。」と定める。個別事件についての指揮を検事総長に対するものに限る点で,法務大臣と検察官との間に一段の遮断が設けられている。検察官の身分や検察庁の組織は対照表の行に現れないため,この点は各国編又は個別の資料によって補う必要がある。日本の検察制度の成り立ちについては検察制度の沿革で扱っている。

3 有罪率,勾留率及び保釈率

日本の刑事司法については,有罪率の高さと身柄拘束の在り方が国内外から指摘されてきた。法務省は,「我が国の刑事司法について,国内外からの様々なご指摘やご疑問にお答えします。」と題する文書において,「日本では,起訴するかどうかを検察官が判断します。最近の統計では,検察官が起訴する事件の割合は37%(起訴人員÷(起訴人員+不起訴人員))です。「99%を超える有罪率」という場合は,起訴された37%の事件が分母となっています。」と説明し,検察当局において「的確な証拠によって有罪判決が得られる高度の見込みのある場合に初めて起訴するという運用が定着して」おり,これが有罪率の高さに影響しているとしている。同文書は,取調べへの弁護人の立会いについても,法制審議会における議論を経て導入しないこととされ,代わりに取調べの録音・録画制度が導入された経緯を説明している。

身柄拘束の数値は,『令和7年版犯罪白書』の勾留と保釈に関する記述が示している。通常第一審における勾留率は,地方裁判所では平成17年の82.3パーセントをピークに平成26年まで80パーセント前後で推移した後に低下し,令和6年は71.4パーセントである。簡易裁判所は令和6年で60.4パーセントである。保釈率は,地方裁判所では平成15年の12.7パーセントを境に上昇し,令和6年は32.3パーセントであり,簡易裁判所は同年19.5パーセントである。過去20年をとれば,勾留率は低下し保釈率は上昇しているという方向が数値から読み取れる。

もっとも,この数値をそのまま国際比較に用いることはできない。同白書のいう勾留率は通常第一審の終局処理総人員に占める勾留総人員の比率であり,保釈率は勾留総人員に占める保釈人員の比率であって,いずれも裁判所が処理した人員を母集団とする指標である。母集団及び定義を揃えて日本と6か国とを比較した公的資料は,本記事の調査では確認できなかったため,この数値から国際的な位置付けを述べることはしない。

第10 判決情報の公開

裁判所ウェブサイトの裁判例検索は,その掲載範囲について,全ての裁判例が掲載されているものではないと明記し,収録の対象を,最高裁判所(判例集及び裁判集に登載されたもの並びに最近の主な判決),高等裁判所(高等裁判所判例集に登載されたもの),下級裁判所の主要判決速報,行政事件,労働事件及び知的財産事件の6種としている。日本において公表される裁判例は,判例集への登載を軸としてきたことになる。

この状態を変える立法として,民事裁判情報の活用の促進に関する法律(令和7年法律第49号)が制定された。同法1条は,民事裁判情報の活用の促進に関し,国の責務,法務大臣による基本方針の策定並びに民事裁判情報を加工して第三者に提供する業務等を行う法人の指定等について定めることにより,民事裁判情報の適正かつ効果的な活用のための基盤の整備を図ることを目的とすると定める。同法5条1項は,法務大臣が営利を目的としない法人を全国に一を限って指定することができると定め,同法2条1項3号は,指定法人が最高裁判所から提供を受けた保有民事裁判情報から特定の個人を識別することができないように加工した「仮名加工民事裁判情報」を定義している。同法の内容については民事裁判情報の活用の促進に関する法律の解説で扱っている。

裁判例へのアクセスの範囲は,比較の前提そのものに関わる。本記事が引用した裁判例は,いずれも裁判所ウェブサイトに掲載されているものであるが,同サイトの掲載範囲が前記のとおり限定されている以上,ここに掲げた裁判例をもって日本の裁判例を網羅したものということはできない。司法行政文書の開示手続を含む裁判所の情報公開の仕組みについては裁判所の情報公開――通達・司法行政文書の開示手続と判決情報の公開を参照されたい。

出典・参考資料1 法令

①日本国憲法33条・76条・78条・79条・80条・81条・82条(e-Gov法令検索)
②裁判所法(昭和22年法律第59号)2条・3条・10条・42条・43条・48条・49条・50条・52条(e-Gov法令検索)
③裁判所職員定員法(昭和26年法律第53号)(e-Gov法令検索)
④裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成16年法律第63号)2条・6条・67条(e-Gov法令検索)
⑤検察庁法(昭和22年法律第61号)14条(e-Gov法令検索)
⑥弁護士法(昭和24年法律第205号)3条(e-Gov法令検索)
⑦刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)247条・248条・256条(e-Gov法令検索)
⑧検察審査会法(昭和23年法律第147号)41条の6(e-Gov法令検索)
⑨判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律(平成16年法律第121号)1条(e-Gov法令検索)
⑩民事裁判情報の活用の促進に関する法律(令和7年法律第49号)1条・2条・5条(e-Gov法令検索)

2 外国の法令

①アメリカ合衆国憲法第3編第1節(アメリカ国立公文書記録管理局)
②1867年憲法法99条及び1982年憲法法52条(カナダ司法省。カナダ憲法の統合版)
③1993年裁判官年金及び退職法26条(legislation.gov.uk)
④2022年公務員年金及び司法職法121条及び同法別表1(legislation.gov.uk)
⑤1974年陪審法17条(legislation.gov.uk)
⑥ドイツ裁判官法48条(連邦司法省・連邦司法庁)
⑦1958年12月22日オルドナンス第58-1270号76条(Légifrance)
⑧オーストラリア憲法72条(オーストラリア連邦議会)

3 裁判例

①最高裁判所大法廷昭和27年10月8日判決(昭和27年(マ)第23号,民集6巻9号783頁,裁判所ウェブサイト)
②最高裁判所大法廷昭和35年6月8日判決(昭和30年(オ)第96号,民集14巻7号1206頁,裁判所ウェブサイト)
③最高裁判所大法廷昭和35年7月6日決定(昭和26年(ク)第109号,民集14巻9号1657頁,裁判所ウェブサイト)
④最高裁判所大法廷昭和40年6月30日決定(昭和36年(ク)第419号,民集19巻4号1089頁,裁判所ウェブサイト)
⑤最高裁判所第一小法廷昭和41年1月13日判決(昭和39年(行ツ)第89号,集民82号21頁,裁判所ウェブサイト)
⑥最高裁判所大法廷平成10年12月1日決定(平成10年(分ク)第1号,民集52巻9号1761頁,裁判所ウェブサイト)
⑦最高裁判所大法廷平成23年11月16日判決(平成22年(あ)第1196号,刑集65巻8号1285頁,裁判所ウェブサイト)
⑧最高裁判所大法廷平成30年10月17日決定(平成30年(分)第1号,民集72巻5号890頁,裁判所ウェブサイト)
⑨最高裁判所大法廷令和2年8月26日決定(令和2年(分)第1号,集民264号41頁,裁判所ウェブサイト)
⑩最高裁判所大法廷令和4年5月25日判決(令和2年(行ツ)第255号,民集76巻4号711頁,裁判所ウェブサイト)

4 公文書・開示文書

①諸外国(米英独仏豪加)及び我が国の司法制度の概要(対照表)(最高裁判所の司法行政文書開示による開示文書,1頁)
②法務省「我が国の刑事司法について,国内外からの様々なご指摘やご疑問にお答えします。」(法務省)
③法務省民事局「民事訴訟法等の一部を改正する法律について」(令和8年3月25日最終更新。改正法の成立日,公布日及び段階的な施行日。法務省)

5 統計・データ

①最高裁判所『裁判所データブック2026』1頁・22頁・28頁・36頁(資料上の頁。PDFでは6頁・27頁・33頁・41頁。裁判所)
②日本弁護士連合会『弁護士白書2019年版』65頁~66頁(資料1-2-20から資料1-2-23まで。日本弁護士連合会)
③日本弁護士連合会『弁護士白書2025年版』79頁(資料1-2-21。日本弁護士連合会)

(続きを読む...)外国の司法制度と比べた日本の司法制度の特徴――米英独仏豪加との比較でみる構造,法曹人口及び裁判例(AI作成)

カナダの司法制度――最高裁判所の開示文書とその後の主な改正(AI作成)

第1 この記事が扱う対象1 開示文書の特定と基準日2 令和6年10月9日付け不開示通知書3 開示文書の構成と本記事が扱う範囲第2 開示文書が作成された時点で既に現行でなかった記述1 略式起訴犯罪の罰金の上限2 ブリティッシュ・コロンビア州の少額民事訴訟の管轄額3 サマリー・ジャッジメントの要件4 離婚法の条文番号の誤り第3 裁判所の名称と補助裁判官の職名1 州上級裁判所の名称の変更2 アルバータ州の下級裁判所の改称と民事管轄額3 補助裁判官(Master)という職名の消滅第4 連邦任命裁判官の懲戒手続の全面改編1 開示文書が記述する仕組み2 2023年改正後の多段階手続3 任命資格に加わった継続教育の誓約第5 弁護士会――名称の変更と全国移動協定の実施状況第6 民事訴訟手続の改正1 オンタリオ州の訴額基準2 ケベック州――訴額基準の引上げに対する違憲判断3 クラス・アクション――全州導入の完了と認定要件の厳格化4 オンタリオ州の民事訴訟規則を全面的に改める動き第7 刑事訴訟手続の改正1 犯罪の分類,予備審問及び陪審員の忌避2 陪審員の忌避の廃止と憲法適合性3 その後の刑事司法制度の改正第8 家事事件――監護権及び面会交流権という概念の消滅第9 裁判外紛争処理――行政審判所の拡大と司法審査の憲法上の保障1 ブリティッシュ・コロンビア州の民事解決審判所2 行政審判所への権限移譲と司法審査第10 民事執行――成立したが施行されない新法第11 開示文書を利用する際の留意点出典・参考資料1 法令・規則2 裁判例3 公文書・開示文書4 ウェブ資料第1 この記事が扱う対象1 開示文書の特定と基準日

本記事は,最高裁判所に対する司法行政文書開示請求によって開示されたカナダの司法制度(全62頁)を対象とし,同文書が記述する制度のうち,どの部分が現在も維持され,どの部分がその後の法改正によって現行制度と食い違うに至ったかを整理するものである。開示文書はテキスト情報を含まない画像形式の文書であるため,生成AIを用いて全62頁を読み取った上で,記載された法律名,条文番号及び数値を,カナダ連邦の法令データベース(Justice Laws Website),各州の法令データベース及びカナダ最高裁判所の判決データベースの現行内容と照合して構成した。

開示文書自体に作成年月日の記載はないが,原本の文書情報から取得の経緯をたどることができる。作成ソフトはPFU ScanSnap Manager 6.5.40(#iX500),作成日時は2016年12月25日19時34分57秒と記録されており,紙で交付された文書をスキャンして作成されたものであることが分かる。同じ日の19時31分に作成されたイギリス連合王国(イングランド及びウェールズ)の司法制度の開示文書と3分違いで作成されていることからすると,米英独仏豪加の各国分は,同一の情報公開請求に基づいて同日にまとめてスキャンされたものと考えられる。全62頁の用紙寸法は,いずれも約592ポイントから約594ポイント×約841ポイントから約845ポイントの範囲にあり,A4(595.28ポイント×841.89ポイント)に適合している。

記述内容の基準時点も,本文の記載から推定することができる。開示文書は,ブリティッシュ・コロンビア州が2012年に制定した Civil Resolution Tribunal Act による新たな裁判外紛争処理機関について「業務開始は2015年中が予定されている」と将来形で記し,弁護士の全国移動協定についても「2013年10月に締結され」「施行されれば」と記している。これらの記述から,本記事では,開示文書の内容は平成26年(2014年)から平成27年(2015年)ころまでの資料に基づいて作成されたものと整理する。もっとも,後述するとおり,作成の時点で既に改正済みであった事項がそのまま記載されている箇所もあるため,「2014年から2015年ころの制度が正確に写し取られている」と考えることはできない。

2 令和6年10月9日付け不開示通知書

この開示文書がいつの時点までの制度を示すものかは,その後の不開示決定によって確定している。最高裁判所事務総長は,令和6年10月9日付け司法行政文書不開示通知書(最高裁秘書第2739号)により,カナダの司法制度を含む7件の文書について「令和元年5月以降の最新版」を開示するよう求める申出に対し,当該文書は作成又は取得していないとの理由でこれを開示しないこととした。文書の不存在を理由とするものであるから,最高裁判所が令和元年5月以降にこれらの司法制度資料を改訂していないことを意味する。開示文書の一覧及び不開示通知書は,諸外国の司法制度の記事から確認することができる。司法行政文書の開示手続そのものについては,裁判所の情報公開――通達・司法行政文書の開示手続と判決情報の公開及び開示文書の利用目的は一切問われないこと等を参照されたい。

3 開示文書の構成と本記事が扱う範囲

開示文書は,第1「連邦制と司法制度」,第2「裁判所・裁判官」,第3「検察庁・検察官」,第4「弁護士会・弁護士」,第5「法曹養成」,第6「裁判手続」(民事事件,刑事事件,家事事件及び少年事件),第7「裁判外紛争処理」,第8「ブリティッシュ・コロンビア州における債務名義実現制度」という構成を採り,巻末に一般的な裁判所構成図とオンタリオ州民事事件審級図が付されている。カナダは連邦制を採り,裁判所の設置及び民事手続の多くが州の権限に属するため,同じ「カナダの司法制度」といっても州ごとに内容が異なる。開示文書も,民事訴訟手続についてはオンタリオ州を,裁判外紛争処理及び債務名義実現制度についてはブリティッシュ・コロンビア州を主たる素材としている。

本記事は,開示文書の章立てに沿って,2017年以降に確認できた改正のうち制度の骨格に関わるものを取り上げる。連邦制の基本的な権限配分,最高裁判所の定員及びケベック州枠,検察制度の基本構造については,開示文書の記述と現行制度との食い違いを確認できなかったため,独立の項目を設けない。少年事件,法曹養成及び検察の各章についても,一次資料による確認が及ばなかったため本記事では扱わない。同種の開示文書についての整理としては,フランス共和国の司法制度――最高裁判所の開示文書とその後の主な改正がある。

第2 開示文書が作成された時点で既に現行でなかった記述1 略式起訴犯罪の罰金の上限

開示文書は,略式起訴犯罪(Summary Conviction Offence)の法定刑の上限を,原則として拘禁6か月及び(又は)罰金2000ドルと記述している。しかし,刑法典(Criminal Code)787条1項の罰金の上限は,開示文書の作成よりはるか以前の2008年の改正(2008, c. 18, s. 44)により5000ドルとなっていた。現行条文は,同項について「a fine of not more than $5,000 or to a term of imprisonment of not more than two years less a day, or to both」と定め,沿革として2008年改正と2019年改正(2019, c. 25, s. 316)の双方を掲げている。すなわち,2019年の改正で変わったのは拘禁刑の上限(6か月から2年未満へ)だけであり,罰金額はそれ以前から5000ドルであった。開示文書の記述だけを見て「2019年の改正で罰金額も引き上げられた」と読むと,改正の時期を一つずらして理解することになる。

2 ブリティッシュ・コロンビア州の少額民事訴訟の管轄額

開示文書は,同州の州裁判所が管轄する少額民事訴訟について「訴額2万5000ドル未満(当時1万ドル)」と記述している。しかし,Small Claims Act 3条の額を定める Small Claims Court Monetary Limit Regulation(B.C. Reg. 179/2005)1条は,B.C. Reg. 120/2017 による改正により,2017年6月1日から3万5000ドルとされている。開示文書がスキャンされた2016年12月の時点では2万5000ドルであったが,記述の基準時点(2014年から2015年ころ)との関係でも,公表・利用の局面では既に古い数値となっていた。

3 サマリー・ジャッジメントの要件

開示文書は,サマリー・ジャッジメント(Summary Judgment)について「人証による証拠調べを必要とするだけの真正な争点(genuine issue)がなく,書証のみで判断できる場合」に行われると説明し,オンタリオ州の Rules of Civil Procedure 20条を根拠として挙げている。しかし,同州の規則20.04(2.1)は,真正な争点の有無を判断するに当たり,裁判官が,正義の利益上その権限を審理においてのみ行使すべき場合を除き,①証拠の重み付け,②供述者の信用性の評価,③証拠からの合理的な推認という権限を行使することができると定め,同(2.2)は,これらの権限を行使するために口頭証拠の提出を命ずることができる(ミニ・トライアル)と定めている。これらは開示文書の作成以前の改正(O. Reg. 438/08 s. 13)によって設けられた規定であり,「書証のみで判断できる場合」という説明は,現行規則の文言とも,開示文書作成当時の規則の文言とも一致しない。

4 離婚法の条文番号の誤り

開示文書は,離婚法(Divorce Act)が定める付随的処分として,①子への養育費(Child Support,15.1条),②離婚後の配偶者扶養(Spousal Support,15.2条)とともに,③子の監護権(Custody,15.3条)を挙げている。しかし,同法15.3条は「養育費の優先(Priority to child support)」に関する規定であり,監護権に関する規定ではない。改正前の同法において子の監護権に関する裁判所の権限を定めていたのは16条であって,開示文書の条文番号は誤りである。開示文書を引用して条文を特定する場合は,この点を確認する必要がある。

第3 裁判所の名称と補助裁判官の職名1 州上級裁判所の名称の変更

開示文書は,アルバータ州,サスカチュワン州,マニトバ州及びニューブランズウィック州の上級裁判所を,いずれも「Court of Queen's Bench」と表記している。これらの名称は現在使用されていない。2022年9月8日のエリザベス2世女王の逝去及びチャールズ3世の即位に伴い,各州の上級裁判所は「Court of King's Bench」となった。アルバータ州,サスカチュワン州及びマニトバ州の各上級裁判所の公式サイトは,いずれも改称後の名称で運用されている。

このうちサスカチュワン州では,名称の置き換えを内容とする新法が制定されている。The King's Bench Act(SS 2023, c 28)は,2023年5月17日に裁可され,同法18-1条により裁可の日に施行された。同法は,16-1条で従前の The Queen's Bench Act, 1998(SS 1998, c Q-1.01)を,16-2条で The Queen's Bench Revision Act をそれぞれ廃止し,17-13条及び附表1・附表2により,他の州法令中の「Queen's Bench」及び「The Queen's Bench Rules」の語を一括して置き換えている。なお,同法の正式な引用名は「The King's Bench Act」であって,年号は付されていない。ブリティッシュ・コロンビア州(Supreme Court of British Columbia),オンタリオ州(Ontario Superior Court of Justice)及びケベック州(Superior Court of Quebec)のように,元来この型の名称を用いていない州の上級裁判所には,この改称は関係しない。

2 アルバータ州の下級裁判所の改称と民事管轄額

開示文書が「州裁判所(Provincial Court)」として記述する下級裁判所についても,アルバータ州では名称が変わっている。根拠法である Court of Justice Act(RSA 2000, c C-30.5)は,その題名自体が「Court of Justice Act」に改められ,同州の King's Printer による公定版には,改称が Alta. Reg. 75/2023 により2023年4月1日に効力を生じた旨が注記されている。裁判官の呼称も Judge から Justice に変わった。

同州の民事管轄額も大きく動いている。Court of Justice Act 9.6条(1)(a)(i)は,同裁判所が管轄する債務請求等の上限額を規則で定めるものとし,Court of Justice Civil Procedure Regulation(AR 176/2018)2条は,Alta. Reg. 86/2023 による改正の結果,この額を10万ドルと定めている。同規則の公定版は「2023年8月1日現在」とされており,同日から10万ドルとなったものである。開示文書は,州裁判所の民事管轄について州ごとに上限があると記述するにとどまるが,その水準は現在では州によって大きく異なる。

3 補助裁判官(Master)という職名の消滅

開示文書は,上級裁判所に置かれる補助裁判官(Master)について独立の項目を設け,また連邦裁判所の首席書記官(Prothonotaries)についても記述している。これらの職名も,現在では主要な法域で用いられていない。連邦裁判所及び租税裁判所については,現行の裁判官法(Judges Act)2条が「associate judge」を定義規定に置き,同法の各規定はこの呼称による。オンタリオ州については,同州の Courts of Justice Act 19条(1)(c)が経過的に「a master, case management master or associate judge」と併記した上で,未施行の改正(2021, c. 4, Sched. 3, s. 2 (2))により「an associate judge」への一本化が予定されている旨が同州法令データベースに注記されている。アルバータ州でも,Court of Justice Act の下の規則の一覧に「Provincial Judges and Applications Judges Compensation」が掲げられており,「applications judge」の呼称が用いられている。

この点は開示文書の一箇所の問題にとどまらない。開示文書は,補助裁判官の項目のほか,連邦裁判所の首席書記官の説明,オンタリオ州のケース・マネージメントの説明,ブリティッシュ・コロンビア州の執行のための尋問の説明及び巻末のオンタリオ州民事事件審級図においても,同じ職名を用いている。開示文書を手掛かりに現行の裁判所組織を調べる場合には,これらの語がいずれも改称されていることを前提とする必要がある。

第4 連邦任命裁判官の懲戒手続の全面改編1 開示文書が記述する仕組み

開示文書は,連邦が任命する裁判官の懲戒について,カナダ司法評議会(Canadian Judicial Council)が苦情を調査し,重大な非行が認められた場合に法務大臣へ罷免を勧告し,法務大臣が上院及び庶民院の承認を得て罷免するという単線的な仕組みを記述している。罷免に至らない事案について評議会が科し得る措置についての記述はない。

2 2023年改正後の多段階手続

この仕組みは,An Act to amend the Judges Act(S.C. 2023, c. 18。いわゆる Bill C-9)により全面的に置き換えられた。同法には施行期日を定める条項が置かれておらず,末尾は経過規定(14条から16条まで)で終わっているから,同法は裁可の日である2023年6月22日に施行されたことになる。

改正後の裁判官法によれば,苦情は,まず審査官(screening officer)による初期審査を受け(88条から90条まで),却下されなかったものが審査委員(reviewing member)に付される(91条から96条まで)。審査委員が却下しない苦情については,評議会の委員1名,名簿に登載された裁判官1名及び名簿に登載された一般市民1名で構成する審査部会(review panel)が設置される(98条)。審査部会は,罷免が正当化され得ると判断すれば聴聞部会の設置のために評議会へ付託し(101条),そうでない場合には,苦情を却下するか,①私的又は公開の懸念の表明,②私的又は公開の警告,③私的又は公開の譴責,④私的又は公開の謝罪の命令,⑤カウンセリングの受講又は継続教育課程の履修その他の特定の措置を採るべき旨の命令,⑥これらと同等と認める措置,⑦本人の同意を得た上での適当な措置を採ることができる(102条)。

この改正で新設された重要な仕組みとして,措置を受けた裁判官の側からの不服申立てがある。102条の措置を受けた裁判官は,通知の送付から30日以内に,評議会の委員1名,名簿裁判官1名及び弁護士1名で構成する縮小聴聞部会(reduced hearing panel)の設置を請求することができる(104条,110条)。罷免の可能性がある事案については,評議会の委員2名,名簿裁判官1名,一般市民1名及び弁護士1名の計5名で構成する全面聴聞部会(full hearing panel)が設置され(117条),この弁護士委員は原則として法務大臣が指名し,通知を受けてから30日以内に指名がなければ評議会が指名する(同条(2))。全面聴聞部会は,罷免が正当化されるか否かを証拠の優越(balance of probabilities)により判断する(119条,120条)。その決定に対しては,評議会の委員3名及び名簿裁判官2名で構成する上訴部会(appeal panel)への上訴が認められ(130条),上訴部会は当該裁判官が居住する州の控訴裁判所と同一の権限を有する(131条)。上訴部会の決定に対しては,30日以内に最高裁判所への上告許可の申立てをすることができる(137条)。これらの手続が終了した後に,全面聴聞部会が罷免の要否に関する勧告を含む報告書を法務大臣に提出する(139条)。

改正の特色は,手続の各段階に一般市民が必ず加わる点にある。評議会は,弁護士資格を有したことがなく,カナダでパラリーガルとして稼働したこともない者等を要件として一般市民の名簿を作成し,任期は4年とされている(82条)。名簿の作成に当たっては公用語への配慮(83条)とカナダの人口構成の多様性の反映(84条)が求められ,名簿は公表される(85条)。また,性的非違行為若しくはセクシュアル・ハラスメントの申立て又はカナダ人権法上の禁止事由による差別の申立てについては,審査官の段階で却下することができない(90条(3))。他方,総督が上院及び庶民院の合同アドレスに基づいて裁判官を罷免するという憲法上の最終的な手続(1867年憲法法律99条)自体は変更されていない。

3 任命資格に加わった継続教育の誓約

裁判官の任用についても,開示文書の記述にない要件が加わっている。裁判官法3条(b)は,2021年の改正(2021, c. 8, s. 1)により,州の上級裁判所の裁判官に任命される資格として,性的暴行に関する法及び社会的文脈(制度的な人種主義及び制度的な差別を含む。)に関する継続教育に参加する旨を誓約することを要求している。これに対応して,同法60条(2)(b)はカナダ司法評議会が当該研修を設けることができる旨を定め,62.1条は,実施した研修の題名,内容,期間,実施日及び参加裁判官数を毎年法務大臣に報告し,大臣がこれを両議院に提出すべき旨を定めている。研修の対象事項は,2023年の改正(2023, c. 7, s. 3)により,親密なパートナー間の暴力並びに親密なパートナー間及び家族関係における強制的支配(coercive control)にも拡大された。

第5 弁護士会――名称の変更と全国移動協定の実施状況

開示文書は,オンタリオ州の弁護士規制団体を「Law Society of Upper Canada」として引用し,同団体のウェブサイト(lsuc.on.ca)を出典としている。この名称は現存しない。オンタリオ州の Law Society Act 2条(1)は,「The Law Society of Upper Canada is continued under the name Law Society of Ontario in English and Barreau de l'Ontario in French.」と定めており,改正法は SO 2018, c. 8, Sched. 15 である。同附則は,審判機関の名称も Law Society Tribunal Hearing Division 及び Law Society Tribunal Appeal Division に改めている(同法49.21条(1),49.29条(1))。団体の統治構造や弁護士資格付与手続の骨格が変わったものではないが,開示文書の記載する名称及びウェブサイトはいずれも現在のものではない。

弁護士の全国移動については,開示文書の予測が実現していない。開示文書は,コモン・ロー各州とケベック州との間の相互移動を広く認める「National Mobility Agreement 2013」が2013年10月に締結され,施行されればケベック州との移動も広く認められる予定であると記述している。カナダ法曹協会連合会(Federation of Law Societies of Canada)の公式サイトによれば,同協定を実施しているのはニューブランズウィック州,オンタリオ州,マニトバ州,サスカチュワン州及びブリティッシュ・コロンビア州の5法域にとどまり,ケベック州政府による承認はなお得られていない。同サイトは,ケベック州政府の承認が得られれば,コモン・ロー法域の弁護士が容易にケベック州へ移籍できるようになる旨を将来形で記載しており,実施されていない協定を扱う3準州向けの Territorial Mobility Agreement 2013 及びケベック州との関係で限定的な業務資格を認めるにとどまる Quebec Mobility Agreement が併存する状態が続いている。開示文書の作成から約10年が経過してもなお,この点の状況は変わっていない。

第6 民事訴訟手続の改正1 オンタリオ州の訴額基準

開示文書の巻末に付されたオンタリオ州民事事件審級図は,少額訴訟裁判所(Small Claims Court)の訴額の上限を2万5000ドル,同裁判所の裁判に対して控訴することができない訴額の上限を2500ドル,Divisional Court と控訴裁判所との管轄の分岐点となる訴額を5万ドルとし,Ontario Regulation 626/00 及び Courts of Justice Act の条文番号を根拠として掲げている。これらの基準額は,その後2度の引上げを経ている。

項目開示文書2020年1月1日2025年10月1日(現行)少額訴訟裁判所の訴額の上限2万5000ドル3万5000ドル5万ドル控訴することができない訴額2500ドル3500ドル5000ドル簡易手続(Rule 76)の訴額の上限10万ドル20万ドル20万ドルDivisional Court と控訴裁判所の分岐額5万ドル5万ドル5万ドル

現行の Ontario Regulation 626/00 1条(1)は「The maximum amount of a claim in the Small Claims Court is $50,000.」と定め,同2条は,Courts of Justice Act 31条(a)及び(b)にいう規則所定の額をいずれも5000ドルと定めている。いずれも Ontario Regulation 42/25 による改正であり,同規則の公定版は「2025年10月1日から現在まで」を編集期間とする。他方,Divisional Court と控訴裁判所との分岐点となる訴額は,Courts of Justice Act 19条(1.2)により,2007年10月1日以後に控訴の申立てを提出する事件について5万ドルとされたまま変わっていない。その結果,2025年10月以降,少額訴訟裁判所が管轄する訴額の上限と,控訴審の管轄が分かれる訴額とが,いずれも5万ドルで一致することになった。

簡易手続についても,Rules of Civil Procedure 76.02等の訴額の上限は,Ontario Regulation 344/19 により10万ドルから20万ドルへ引き上げられた。同規則には,2010年1月1日から2020年1月1日までの間に提起された訴えについては「20万ドル」を「10万ドル」と読み替える旨の経過規定が置かれており(同76.02(11)),引上げの時期を条文自体から確認することができる。あわせて,同76.14は,2020年1月1日前に陪審申立てがされた事件を除き,簡易手続における陪審に関する規定を適用しない旨を定めており,簡易手続では陪審裁判が行われないこととなった。

開示文書の記述に対応する変化としては,訴えの提起先の規律も加わっている。Courts of Justice Act 23条(1.1)(2023, c. 12, Sched. 3 による新設)は,少額訴訟裁判所の管轄に属する訴えは,上級裁判所の許可を得なければ上級裁判所に提起することができない旨を定めた。反訴,交差請求及び第三者請求については,本訴が上級裁判所に提起されている限りこの制限は及ばない(同条(1.2))。

2 ケベック州――訴額基準の引上げに対する違憲判断

訴額基準の引上げは,カナダでは司法へのアクセスを改善する手段として位置付けられてきたが,その限界を画したのがカナダ最高裁判所の Reference re Code of Civil Procedure (Que.), art. 35, 2021 SCC 27(2021年6月30日)である。ケベック州は,2016年に民事訴訟法典35条を改正し,ケベック州裁判所(Court of Québec)が専属的に管轄する民事事件の訴額の上限を7万ドル未満から8万5000ドル未満に引き上げた。最高裁判所の多数意見は,1867年憲法法律96条が保障する上級裁判所の中核的管轄を侵害するとして,この引上げを違憲と判断した。

多数意見は,連邦成立当時の下級裁判所の管轄額の上限が100ドルであったこと,専門家証拠によればこれが今日の6万3698ドルから6万6008ドルに相当することを確認した上で,金額の換算は分析の第一段階にすぎず,引上げの当否は他の要素を併せて判断すべきであるとした。その上で,8万5000ドル未満という水準は,ケベック私法の中核に属する広範な事件類型を専属的にケベック州裁判所へ移すものであり,上級裁判所が憲法上保障された権限を行使することを妨げると結論した。あわせて,州政府が主張した司法へのアクセスの改善という効果についても,立証がされていないとされている。首席裁判官及び他の1名の裁判官は,同条は合憲であるとして結論を異にする意見を述べており,判断が一致した事案ではない。この照会では,ケベック州裁判所の行政不服審査権限に関する第二の照会事項についても回答が求められたが,最高裁判所は,Canada (Minister of Citizenship and Immigration) v. Vavilov 判決及びその後のケベック州法により回答の必要がなくなったとして,これに答えていない。

3 クラス・アクション――全州導入の完了と認定要件の厳格化

開示文書は,オンタリオ州の Class Proceedings Act, 1992 5条が定める5要件を紹介した上で,プリンス・エドワード・アイランド州のみがクラス・アクション制度を採用していないと記述している。この二つの記述は,いずれも現在では成り立たない。

まず,オンタリオ州では,同法5条(1.1)が新設され(2020, c. 11, Sched. 4, s. 7 (2)),5条(1)(d)にいう「クラス・アクションが共通争点の解決にとって望ましい手続であること」といえるためには,最低限,①準司法手続若しくは行政手続,民事訴訟における個別請求の進行管理又は訴訟外の救済制度を含む,合理的に利用可能な他のあらゆる手段に優越すること(superiority),②クラス構成員に共通する事実上又は法律上の問題が,個々の構成員にのみ関わる問題に優越すること(predominance)の二つを満たす必要があるとされた。あわせて,認定申立てに先行して,訴訟の全部若しくは一部を処理し,又は争点若しくは証拠を絞り得る申立てがされた場合には,裁判所が併合審理を命じない限り,その申立てを認定申立てより先に審理し処理しなければならないとする規定(同法4.1条)も新設されている。

次に,プリンス・エドワード・アイランド州は,Class Proceedings Act(2021, c. 30)を制定し,同州の Table of Public Acts によれば,同法は2022年6月1日に施行された(現行の編纂番号は R.S.P.E.I. 1988, c. C-9.01)。これにより,カナダの10州すべてにクラス・アクション制度が存在することとなり,開示文書が記述する「未採用の州がある」という状況は解消している。

4 オンタリオ州の民事訴訟規則を全面的に改める動き

現在進行中の動きとして,オンタリオ州上級裁判所長官と州法務総裁が2024年1月に共同で開始した民事規則見直し(Civil Rules Review)がある。作業部会は,2025年10月31日付けの最終政策報告書(全281頁)を提出し,同年12月に公表された。同報告書は,オンタリオ州の民事司法制度が危機にあり,緊急かつ実質的な改革を要すると述べ,1985年に導入された完全な証拠開示(discovery)の仕組み等を機能不全の原因として挙げている。

提案の骨格は,①訴状と申立書を廃してオンライン記入式の「Notice of Claim」に入口を一本化すること,②提訴前に当事者間の連絡,中核的な文書の交換及び早期の調停の検討を求める提訴前プロトコルを設けること,③事件を Application Track,Summary Track 及び Trial Track の三つの経路に振り分けること,④伝統的な証拠開示を,先に中核的な証拠を提出させる方式(up-front evidence)に置き換えることである。Summary Track の対象は,金銭又は動産の請求で,少額訴訟裁判所の上限額(現行5万ドル)を超え50万ドル未満のもの等とされている。協議段階では口頭の証拠開示を全廃する案が示されていたが,最終報告書はこれを撤回し,Trial Track において当事者1名当たり90分という時間制限を付して存置し,異議を厳しく制限した上で録音録画するものとしている。本記事の執筆時点で,同報告書は長官及び法務総裁による採否の判断を待つ段階にあり,規則としては実現していない。

第7 刑事訴訟手続の改正1 犯罪の分類,予備審問及び陪審員の忌避

開示文書が記述する刑事手続は,2019年6月21日に裁可された刑法典改正(2019, c. 25。いわゆる Bill C-75)により構造的に変わっている。第一に,略式起訴犯罪の拘禁刑の上限が,前記のとおり6か月から「two years less a day」(2年に1日足りない期間)に引き上げられた(刑法典787条(1))。第二に,予備審問(Preliminary Inquiry)については,刑法典535条が,対象を「拘禁14年以上に処せられ得る正式起訴犯罪」に限定した。開示文書は,被告人が放棄しない限り全ての正式起訴犯罪について予備審問を実施できるという前提で記述しているが,この前提は現行法では成り立たない。第三に,検察官及び被告人が理由を示さずに陪審員候補を排除することができる忌避(peremptory challenge)を定めていた刑法典634条は削除され,現行の条文は「634 [Repealed, 2019, c. 25, s. 269]」と表示されるにとどまる。

身柄の取扱いに関する規定も改められている。刑法典493.1条は,同改正により新設された規定であり,警察官,治安判事又は裁判官は,498条(1.1)又は515条(10)所定の事由を考慮しつつ,合理的に可能な最も早い時期における釈放と,事情に照らして適切であり,かつ,被告人が現実に遵守することが合理的に可能な最も負担の少ない条件による釈放とを第一次的に考慮しなければならないと定めている。開示文書は,出頭確保の手段として,出頭の約束(promise to appear)や500ドル以下の誓約保証金といった旧来の類型を列挙しているが,これらの枠組みは同改正による釈放形式の整理を経ており,金額を含めて現行の記述としては用いることができない。

2 陪審員の忌避の廃止と憲法適合性

忌避制度の廃止は,制度の廃止が施行された2019年9月19日に陪審員選任が開始された第一級殺人被告事件の被告人から,カナダ権利及び自由憲章11条(d)及び(f)に違反するとして争われた。カナダ最高裁判所は,R. v. Chouhan, 2021 SCC 26(2020年10月7日判決,理由書は2021年6月25日付け)において,陪審員選任手続を全体として評価すべきであるとした上で,独立した公平な陪審による裁判を受ける権利は現行の手続によっても保障されているとして,忌避制度の廃止は憲章に違反しないと判断した。多数意見は,あわせて,この改正が権利の行使方法に関する手続的な改正であることを理由として,施行日である2019年9月19日以後に開始された全ての陪審員選任手続に適用されるとし,被告人の有罪判決を回復した。

もっとも,最高裁判所の判断は一枚岩ではない。1名の裁判官は,改正自体は合憲であるとしつつ,被告人の実体的な権利に影響するものであるから係属中の事件には適用すべきでなかったとし,別の1名の裁判官は,改正自体が憲章に違反するとして,いずれも結論の一部又は全部について反対意見を述べている。

3 その後の刑事司法制度の改正

開示文書の作成後には,有罪判決の見直し制度にも変更が加えられている。Miscarriage of Justice Review Commission Act (David and Joyce Milgaard's Law)(S.C. 2024, c. 33)は,法務大臣による有罪判決の見直しに代えて,独立の冤罪救済委員会を設置することを内容とし,2024年12月17日に裁可された。同法20条は,各規定の施行日を総督府令で定めるものとしており,カナダ官報(Canada Gazette Part II,SI/TR-2025-27)により,1条,4条及び14条から18条までが2025年3月6日に施行された。もっとも,カナダ法務省の説明によれば,委員会自体はなお設置されておらず,委員も任命されておらず,申請の受付も始まっていない。同省内の刑事有罪判決見直しグループが引き続き従前の手続により申請を処理する状態が続いている。

第8 家事事件――監護権及び面会交流権という概念の消滅

開示文書は,離婚法上の管轄(1年以上の常居所を要件とする3条),離婚事由を婚姻関係の破たんに限る規定(8条),離婚事件は陪審によらないとする規定(7条)及び離婚判決が言渡しから31日で効力を生ずるとする規定(12条,13条)を記述している。これらの規定は,条文番号及び内容のいずれも現在まで変わっていない。

これに対し,子に関する用語は全面的に置き換えられた。2019年に成立した改正(2019, c. 16)により,「監護権(Custody)」及び「面会交流権(Access)」の語は現行法上用いられていない。現行の離婚法は,裁判所が「親責任命令(parenting order)」により,子の健康,教育,文化・言語・宗教及び重要な課外活動等に関する重要事項を決定する責任(decision-making responsibility)と,子が親の監護の下で過ごす時間(parenting time)とを父母の間に配分する仕組みを採る(16.1条)。父母以外の者と子との接触を認める「contact order」(16.5条)も新設され,転居を予定する者には,原則として少なくとも60日前の通知義務が課された(16.9条(1))。子の最善の利益の判断(16条)では,新たに定義された「家族間暴力(family violence)」(2条)が明文の考慮要素とされている。

用語の置き換えと同時に,当事者及び代理人の義務に関する規定も新設された。開示文書は,代理人弁護士の和解勧奨義務等を離婚法9条によるものとして記述しているが,同条は前記改正により削除されており(「9 [Repealed, 2019, c. 16, s. 9]」),対応する規定は同法7.7条に移されている。あわせて,当事者の義務として,①親責任及び接触を子の最善の利益に沿って行使すべきこと(7.1条),②手続から生ずる紛争から子を保護すべきこと(7.2条),③適当な範囲で裁判外の家族紛争解決手続を試みるべきこと(7.3条),④完全,正確かつ最新の情報を提供すべきこと(7.4条),⑤命令を遵守すべきこと(7.5条),⑥手続を開始し又はこれに応答する書面に,これらの義務を認識している旨の記載をすべきこと(7.6条)が定められた。他方,裁判所が証拠調べの前に和解の可能性を確認すべき義務(10条)及び馴合い等を理由とする離婚阻却の規定(11条)は,現在も残っている。

第9 裁判外紛争処理――行政審判所の拡大と司法審査の憲法上の保障1 ブリティッシュ・コロンビア州の民事解決審判所

開示文書は,ブリティッシュ・コロンビア州が2012年に Civil Resolution Tribunal Act を制定し,区分所有建物に関する一定の紛争のほか,訴額2万5000ドル以下の紛争について当事者双方が同手続の利用に合意した場合にも裁決をすることができると記述している。現行法の設計はこれと異なる。現行の同法118条は,少額請求について当事者の合意を要件とせず,規則で定める上限額(現行5000ドル)以下の債務又は損害賠償,動産の回復等の請求について審判所が管轄を有するものとし,同条(3)は,この上限額が Small Claims Act 3条所定の額(前記のとおり3万5000ドル)を超えることができない旨を定めている。

同審判所の管轄はその後段階的に拡大し,現行法は,区分所有(121条),協同組合(125条),社団法人(129条),自動車事故(133条)及び性的画像(136.2条)の各区分を置いている。自動車事故については,同法133条(1)が,①保険者による給付受給資格の判断,②傷害が「軽傷(minor injury)」に当たるか否かの判断,③審判所限度額以下の責任及び損害,④事故についての責任割合の判断を管轄事項として掲げ,同条(2)(a)は①及び②を審判所の専属管轄としている。

2 行政審判所への権限移譲と司法審査

自動車事故に関する管轄の追加は,1867年憲法法律96条に違反するとして訴訟に発展した。ブリティッシュ・コロンビア州最高裁判所は該当規定を無効と判示したが,同州控訴裁判所は,Trial Lawyers Association of British Columbia v. British Columbia (Attorney General), 2022 BCCA 163(2022年5月12日)において,人身傷害及び不法行為に関する訴訟について州最高裁判所が引き続き重要な役割を保持していること,州最高裁判所が司法審査を通じて相応の役割を果たすこと等を理由に原判決を取り消し,このスキームは合憲であると判断した。同判決には反対意見が付されている。

他方,開示文書が「司法審査は国民の権利として認められたものではなく,例外的で裁量的な救済手段であると理解されている」と説明する点については,その後の展開を踏まえる必要がある。カナダ最高裁判所は,Democracy Watch v. Canada (Attorney General), 2026 SCC 28(2026年7月30日)において,委任された権限の行使の適法性を審査する権限は裁判所の専属領域であり,1867年憲法法律96条から101条までの司法条項によって司法部門に配分されていること,憲法は行政決定のあらゆる側面についての適法性審査の利用可能性を保障しており,公権力のあらゆる行使は,その法的限界を超えないことを確保するための裁判所の監督管轄に服することを判示した。その上で,利益相反・倫理コミッショナーの決定について事実問題及び法律問題に関する司法審査を禁ずる Conflict of Interest Act 66条は,この保障を侵害する限度で効力を有しないとした。この判断は,行政審判所へ一次的な判断権を移譲することと,裁判所による適法性審査の道を立法によって塞ぐこととを区別するものと整理することができる。

第10 民事執行――成立したが施行されない新法

開示文書は,ブリティッシュ・コロンビア州の債務名義実現制度について Court Order Enforcement Act(COEA)を素材とし,給与の差押えにおける7割の免除,扶養家族の有無に応じた月100ドル又は200ドルという免除額の下限,及び差押えを理由として従業員を解雇した雇用主に対する500ドル以下の罰金又は3か月以下の拘禁という制裁を記述している。これらの内容は,同法の現行条文(2026年8月4日現在)と一致しており,変更されていない。同法3条(5)は給与の70パーセントを差押えから免除した上で免除額の下限を扶養家族のない者につき月100ドル,扶養家族が1人以上ある者につき月200ドルとし,同条(7)は扶養料等の請求については免除を50パーセント(月600ドルを超える部分は3分の1)に減ずるものとし,27条(1)及び(2)が解雇等の禁止と制裁を定めている。

他方,この分野には,成立から3年近くを経てもなお施行されていない新法がある。COEA の民事執行部分を全面的に置き換える Money Judgment Enforcement Act(SBC 2023, c 29)は,2023年10月26日に成立したが,同法215条は「This Act comes into force by regulation of the Lieutenant Governor in Council」と定めており,州法令データベースの現行版(2026年8月4日現在)では,1条から214条までの全ての規定に「[Not in force.]」の注記が付されたままである。したがって,現時点でブリティッシュ・コロンビア州の民事執行を規律しているのは,開示文書が記述する COEA である。

第11 開示文書を利用する際の留意点

以上を通じてみると,開示文書と現行制度との間には,性質の異なる三つのずれがある。第一に,開示文書が作成された時点で既に改正されていた事項がそのまま記載されている箇所がある(略式起訴犯罪の罰金額,ブリティッシュ・コロンビア州の少額民事訴訟の管轄額,サマリー・ジャッジメントの要件)。第二に,条文番号の誤りがある(離婚法の監護権に関する条文番号)。第三に,作成後の法改正によって現行制度と食い違うに至った箇所がある(裁判所及び補助裁判官の名称,裁判官の懲戒手続,弁護士会の名称,訴額基準,クラス・アクションの認定要件,犯罪の分類と予備審問と陪審員選任,離婚法上の用語,行政審判所の管轄)。したがって,この開示文書は,カナダの司法制度の全体像をつかむための出発点としては有用であるが,条文番号,金額又は名称をそのまま引用する用途には適さない。

本記事が扱えなかった範囲についても述べておく。開示文書のうち検察,法曹養成及び少年事件の各章については,記述と現行制度との異同を一次資料で確認するに至らなかったため取り上げていない。特に少年事件については,開示文書が記述する成人判決の要件のうち推定に関わる部分について,現行の少年刑事裁判法及び関連する判例との整合を確認する必要がある。また,カナダ司法評議会が改正後の懲戒手続について定める細則は,同評議会のウェブサイトに到達できなかったため確認していない。これらは,開示文書と現行制度との対比が可能でありながら,本記事では扱わなかった論点である。

出典・参考資料1 法令・規則

①Judges Act, R.S.C., 1985, c. J-1 2条,3条,60条,62.1条,80条から139条まで(Justice Laws Website,現行版)

②An Act to amend the Judges Act, S.C. 2023, c. 18(Justice Laws Website,裁可2023年6月22日)

③Criminal Code, R.S.C., 1985, c. C-46 493.1条,535条,634条,787条(Justice Laws Website,現行版)

④Divorce Act, R.S.C., 1985, c. 3 (2nd Supp.) 2条,3条,7条,7.1条から7.7条まで,8条,9条,10条,11条,12条,13条,15.1条から15.3条まで,16条から16.9条まで(Justice Laws Website,現行版)

⑤Miscarriage of Justice Review Commission Act (David and Joyce Milgaard's Law), S.C. 2024, c. 33 20条(Justice Laws Website)

⑥Courts of Justice Act, R.S.O. 1990, c. C.43 6条,19条,23条,31条(オンタリオ州e-Laws,現行版)

⑦Ontario Regulation 626/00(Small Claims Court Jurisdiction and Appeal Limit)(オンタリオ州e-Laws,編集期間2025年10月1日から)

⑧Rules of Civil Procedure, R.R.O. 1990, Reg. 194 20.04,76.02,76.14(オンタリオ州e-Laws,現行版)

⑨Class Proceedings Act, 1992, S.O. 1992, c. 6 4.1条,5条(オンタリオ州e-Laws,現行版)

⑩Law Society Act, R.S.O. 1990, c. L.8 2条,49.21条,49.29条(オンタリオ州e-Laws,現行版)

⑪The King's Bench Act, SS 2023, c 28 16-1条,16-2条,17-13条,18-1条及び附表1・附表2(サスカチュワン州Publications Centre)

⑫Court of Justice Act, RSA 2000, c C-30.5 9.6条(アルバータ州King's Printer,2025年6月11日現在)

⑬Court of Justice Civil Procedure Regulation, Alta. Reg. 176/2018 2条(アルバータ州King's Printer,2023年8月1日現在)

⑭Civil Resolution Tribunal Act, S.B.C. 2012, c. 25 118条,121条,125条,129条,133条,136.2条(BC Laws,2026年8月4日現在)

⑮Court Order Enforcement Act, R.S.B.C. 1996, c. 78 3条,27条(BC Laws,2026年8月4日現在)

⑯Money Judgment Enforcement Act, S.B.C. 2023, c. 29 215条(BC Laws,2026年8月4日現在,未施行)

⑰Small Claims Court Monetary Limit Regulation, B.C. Reg. 179/2005 1条(BC Laws,2026年8月4日現在)

⑱Table of Public Acts(プリンス・エドワード・アイランド州。Class Proceedings Act, 2021, c. 30 の施行日を2022年6月1日と記載)

2 裁判例

①Reference re Code of Civil Procedure (Que.), art. 35, 2021 SCC 27(カナダ最高裁判所2021年6月30日判決,事件番号38837,[2021] 2 SCR 291)

②R. v. Chouhan, 2021 SCC 26(カナダ最高裁判所2020年10月7日判決・理由書2021年6月25日付け,事件番号39062,[2021] 2 SCR 136。リンク先は同裁判所公式のCase in Brief)

③Democracy Watch v. Canada (Attorney General), 2026 SCC 28(カナダ最高裁判所2026年7月30日判決,事件番号41576)

④Trial Lawyers Association of British Columbia v. British Columbia (Attorney General), 2022 BCCA 163(ブリティッシュ・コロンビア州控訴裁判所2022年5月12日判決,事件番号CA47320・CA47332,原審2021 BCSC 348)

3 公文書・開示文書

①カナダの司法制度(最高裁判所の司法行政文書開示による開示文書,全62頁)

②諸外国(米英独仏豪加)及び我が国の司法制度の概要(対照表)(最高裁判所の司法行政文書開示による開示文書,1頁)

③令和6年10月9日付け司法行政文書不開示通知書(最高裁秘書第2739号,最高裁判所事務総長)

④イギリス連合王国(イングランド及びウェールズ)の司法制度(最高裁判所の司法行政文書開示による開示文書。作成日時の対比のために参照)

⑤Order Fixing the Day on Which this Order is Made as the Day on Which Sections 1 and 4 and 14 to 18 of the Miscarriage of Justice Review Commission Act (David and Joyce Milgaard's Law) Come into Force(SI/TR-2025-27)(Canada Gazette, Part II)

⑥Civil Rules Review – Final Policy Report(オンタリオ州上級裁判所及び同州法務総裁,2025年10月31日付け,全281頁)

4 ウェブ資料

①Judgments of the Supreme Court of Canada(カナダ最高裁判所の判決データベース。年別の判決一覧により事件名,中立的引用及び判決年月日を確認した。)

②National Mobility of the Legal Profession(Federation of Law Societies of Canada)

③The Miscarriage of Justice Review Commission(カナダ法務省)

④Court of King's Bench of Alberta,Court of King's Bench for Saskatchewan及びCourt of King's Bench of Manitoba(各州上級裁判所の公式サイト)

フランス共和国の司法制度――最高裁判所の開示文書とその後の主な改正(AI作成)

第1 この記事が扱う対象

1 開示文書の特定と基準日
2 令和6年10月9日付け不開示通知書
3 開示文書の構成と対照表における位置付け

第2 開示文書が記述する司法制度の骨格

1 司法裁判所系統と行政裁判所系統の二元制
2 破毀院・検察官の地位
3 裁判官の地位と司法官職高等評議会

第3 民事第一審裁判所の統合

1 大審裁判所・小審裁判所から司法裁判所へ
2 保護事件裁判官の新設

第4 近隣裁判所の廃止――開示文書自身の予測とも異なる帰結
第5 重罪院から県別刑事裁判所へ

1 開示文書が記述する重罪院の参審制
2 県別刑事裁判所の創設と全国化
3 2026年7月の新法による再編

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