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亡くなった家族の入通院先を調べる方法―遺族のレセプト開示とカルテの取得(AI作成)

第1 受診先が分からないときの調査順序

被相続人の生前の入通院先を調べるには,手元の診察券や医療費の資料を確認し,不足する期間について,当時加入していた医療保険の保険者にレセプトの開示を依頼する方法がある。
病院・診療所・薬局の名称が判明した後は,必要に応じて,それぞれの窓口へ診療記録等の開示を求めるという順序で進めるとよい。
協会けんぽの遺族向け案内などには,遺族自身が利用できる手続が用意されており,最初から弁護士への依頼や訴訟提起が必要というわけではない。

レセプトは,医療機関等が保険診療の費用を請求するために作成する明細書であり,診療の経過を記したカルテそのものではない。
ジェイアールグループ健康保険組合の説明にあるとおり,月単位で作成される請求資料であるから,受診先を探す手掛かりと,詳しい診療経過を確認する資料とを分けて考えることが重要である。

第2 当時加入していた医療保険を特定する

まず,診察券,領収書,医療費通知,お薬手帳,入退院の案内,手元に残る死亡診断書の写しなどを確認する。
見つかった医療機関名と年月を一覧にし,家族から聞いた情報は,書面で確認できた情報と分けて記録するとよい。
死亡診断書そのものの交付や写しの確保については,弁護士のための死亡診断書の実務で扱っている。

保険者を探すときは,資格確認書,資格情報のお知らせ,過去の保険証の控え,保険料の通知などから,加入先の名称と加入期間を確認する。
死亡時の加入先だけでなく,調べたい診療年月当時の加入先を確認することがポイントである。
転職,退職,転居又は制度の変更を挟む場合には,保険者ごとに期間を分けて問い合わせる。

当時の加入制度最初の問い合わせ先確認の手掛かり
協会けんぽ加入していた協会けんぽの支部遺族向けレセプト開示案内
健康保険組合の健康保険当時の健康保険組合組合名を確認し,遺族用の開示依頼手続を尋ねる。公表例はジェイアールグループ健康保険組合
市町村の国民健康保険当時加入していた市区町村の国保担当窓口厚生労働省の国保案内。遺族請求の公表例は見附市
国民健康保険組合当時加入していた国民健康保険組合市町村国保とは別の加入先である。厚生労働省の国保案内
後期高齢者医療当時加入していた後期高齢者医療広域連合公表例は大阪府後期高齢者医療広域連合。遺族用の書式と担当窓口を確認する

共済組合等の名称が記載されている場合も,その加入先に遺族の照会窓口を確認する。
加入先自体が不明であれば,手元の資格・保険料資料を整理した上で,当時の勤務先や市区町村に,加入先を確認するための手続を尋ねることから始める。

なお,社会保険診療報酬支払基金の案内は,レセプトの開示等への対応は保険者で行うとしている。
支払基金を,遺族が全国の受診歴を一括照会するための窓口と考えて進めるのは適切ではない。

第3 遺族としてレセプトの開示を依頼する

1 請求できる遺族と必要書類

請求できる遺族の範囲は,窓口ごとに確認する必要がある。
例えば,協会けんぽは配偶者,子,父母,孫,祖父母及び兄弟姉妹を対象に掲げるのに対し,見附市の国保の案内は,遺族として父母,配偶者及び子を掲げている。
単に「相続人である」と伝えるだけでなく,亡くなった本人との続柄を示して,その窓口の対象者に当たるか確認するとよい。

準備する書類は,①請求する遺族自身の本人確認,②本人が死亡したこと,③本人と請求者との続柄,④代理人を使う場合の代理権,という証明対象ごとに整理する。
戸籍,除籍,住民票の除票等のうち何を出すかは,提出先の案内に従って選び,1通の書類で死亡と続柄の両方を確認できるとは限らないことに注意する。
原本か写しか,発行後の期間に指定があるか,郵送時に追加書類が必要かも,申請前に確認する。

協会けんぽの案内には,遺族・代理人の区分ごとの必要書類が掲載されている。
氏名,生年月日,当時の住所及び被保険者の記号・番号は,確認できた資料と照合して記載し,番号が不明な場合には,推測した番号を確定情報として書かず,別の情報で特定できるか窓口に相談するとよい。

2 対象の指定,費用及び所要期間

受診先の把握が目的であれば,既に知っている病院だけを指定して,未知の受診先を請求範囲から外してしまわないようにする。
調べたい診療年月を示し,医科の入院・外来,歯科,調剤など,どの種類の明細が対象になるかを確認する。
これは請求範囲を整理するための方法であり,その期間の全ての種類の記録が必ず残っているという意味ではない。

協会けんぽは,レセプト開示の手数料を無料とし,開示・不開示の決定までを約1か月としているが,医療機関への意見照会等で長くなる場合も案内している。
この期間は書類が手元に届くまでの保証ではなく,戸籍等の取得費用まで無料になるわけでもない。
他の保険者については,閲覧・写し・郵送の別と,写しの枚数に応じた費用を確認してから依頼する。

また,協会けんぽは,開示した旨を医療機関・薬局へ通知する取扱いを示している。
医療機関への意見照会が関係する場合もあるため,受診先に知られずに調査できるとは考えない方がよい(同協会の遺族向け案内)。

第4 保存期間の「5年」をどう確認するか

古い期間を調べる場合,保存期間の年数だけでなく,現在開示できる最古の診療年月を確認することが重要である。
大阪府後期高齢者医療広域連合のレセプト案内は保管分を過去5か年分と表示し,見附市の案内は診療を受けた月から5年以内としている。
こうした表示だけから,全国共通の起算日や,申請日に対応する最古月まで決めることはできない。

そこで,必要な期間を最初に伝えた上で,①実際に残っている最古の診療月,②期間の数え方,③今後の廃棄予定,④対象期間の記録を保存してもらえるかを,それぞれ確認するとよい。
窓口の説明を聞く前に,請求者の側で希望期間を一律に「直近5年」に縮める必要はない。
ただし,保存の依頼だけで廃棄が止まると決めつけず,対応の可否を確かめる必要がある。

病院側のカルテについては,医師法24条2項が,病院・診療所の管理者又は医師による診療録の5年間の保存を定めている。
これは保険者が保有するレセプトの保存期間を定めた条文ではなく,5年を過ぎた診療録が必ず廃棄されるという規定でもない。
保険者と医療機関は別々に確認し,既に受診先が分かっている場合は,レセプトの回答を待たずに記録の有無を問い合わせる方法も考えられる。

第5 判明した病院・薬局から受診歴をたどる

1 病院・診療所の診療記録

病院名が判明したら,その病院の診療情報開示窓口に,対象期間と調べたい事項を伝える。
厚生労働省の「診療情報の提供等に関する指針」第9は,配偶者,子,父母及びこれに準ずる者に対する提供について,開示の原則,手続,費用及び提供を拒み得る場合等の定めを準用し,本人の生前の意思や名誉の尊重にも留意を求めている。
これは診療情報の提供に関する行政上の指針であり,相続人があらゆる資料の交付を当然に強制できるという法律上の権利と同一ではない。

同指針第9は,相続人全員の同意を一律の条件として掲げてはいない。
一方,獨協医科大学病院の受付案内は,亡くなった患者の法定相続人が請求する場合に,他の法定相続人全員分の同意書を必要書類として掲げている。
同意書を求められて準備できない場合は,全国共通の法律上の条件だと即断せず,その病院が求める理由と,代わりに取り得る手続を確認するとよい。

他院への紹介や転院の経過を調べるときは,カルテに加え,診療情報提供書,退院時の要約,看護記録等が残っているかを尋ねる方法がある。
前記指針第2は紹介状等も診療記録に含める一方,前記病院の案内には,他院からの紹介状など自院からは提供できない書類がある旨の説明もある。
関連文書を一括して受け取れるとは限らないため,紹介元・紹介先が判明したら,必要に応じて作成元の医療機関へも問い合わせる。

2 薬局の記録

病院名がまだ分からなくても,お薬手帳や調剤の明細から薬局名が分かることがある。
その場合は,処方元の医療機関を確認できる記録や,対象期間の薬剤服用歴等について,薬局の開示窓口に相談する方法がある。
医療・介護ガイダンスのQ&A・Q2-10は,薬局でも,亡くなった患者に関する遺族の開示請求について,診療情報の提供等に関する指針に従うとしている。

レセプトの薬剤名や摘要欄は,追加で問い合わせる記録を選ぶ手掛かりになる。
ただし,算定項目があることだけで特定の報告書が必ず存在すると判断したり,処方の記載だけで実際の服薬状況や当時の判断能力まで確定したりすることは避けるべきである。

3 介護の記録

介護サービスの利用が分かっている場合は,担当していた事業所等に,受診先や連携医療機関を確認できる記録があるかを尋ねる方法もある。
医療・介護ガイダンスのQ&A・Q2-7は,医療・介護事業者から遺族への診療情報・介護関係記録の提供について,前記指針第9の取扱いによるとしている。

市区町村が保有する要介護認定の資料は,事業所の介護記録とは別に考える必要がある。
市区町村の介護保険担当窓口へ,死者の情報について利用できる提供手続と必要書類を確認し,単に相続人であるという理由だけで,個人情報保護法により当然に開示されるとは考えない(個人情報保護委員会Q&A・Q5-1-3)。

第6 資料が出ない場合の確認と次の手段

1 出ない理由と請求制度を確認する

レセプトが出ない月があっても,その月には受診していなかったと即断することはできない。
加入保険者が違う,請求した種類・期間から外れている,既に廃棄されている,保険診療以外である,開示されない部分があるなど,確認すべき理由を分けて問い合わせる。
受け取った記録についても,最初と最後の年月だけでなく,途中の月と明細の種類を確認しておくとよい。

病院等に開示を断られた場合,前記指針第8は,原則として文書で理由を示し,苦情処理の体制も説明するものとしている。
口頭で「出せない」と言われた場合は,適用される開示規程,具体的な理由及び相談窓口を確認するとよい。

個人情報保護法2条1項・76条による行政機関等への開示請求は,遺族が故人の全情報を取得するための包括的な制度ではない。
個人情報保護委員会の前記Q&Aは,遺族であることや相続手続に必要であることだけでは足りず,その情報が生存する遺族自身の保有個人情報に当たるかを検討する必要があると説明している。
この法定の請求と,窓口が別に設ける遺族向けの提供手続とは区別する必要がある。

健康保険組合についても,厚生労働省のQ&A・問408は,遺族からの依頼を,原則として組合の要領による開示依頼として扱うと説明している。
「個人情報保護法では対象外」との回答を受けた場合は,そこで終わらせず,遺族向けの別の開示依頼手続があるか確認する意味がある。
死者情報の法的な位置付けの詳しい検討は,死者の医療情報の二次利用で扱っている。

本人のマイナンバーカードが残っていても,そのことから本人としてオンラインサービスにログインして調べられると考えない方がよい。
公的個人認証サービスの案内では,本人の死亡は電子証明書の失効事由であり,遺族として利用できる正規の提供手続を確認することになる。

なお,労災関係の資料が手元にある場合は,医療保険のレセプトとは別の取得経路が問題になる。
労災保険に関する書類の開示請求方法を参照しつつ,死亡した労働者の記録が遺族自身の保有個人情報に当たるかなど,対象書類ごとの条件を確認する。

2 弁護士・裁判所を通じた取得を検討する

紛争に必要な記録が直接の依頼では得られない場合には,これまでの請求書と回答を持参して弁護士に相談する方法がある。
弁護士法23条の2の弁護士会照会は,弁護士が受任事件について所属弁護士会に申し出,会が照会する制度であり,遺族が自分で弁護士会へ情報の取り寄せを申し込む制度ではない。
利用すれば必ず全資料が得られるというものでもない。

民事訴訟では,民事訴訟法226条により,文書の所持者から裁判所への送付を求める文書送付嘱託を申し立てる方法がある。
ただし,同条ただし書は,当事者が法令により正本又は謄本の交付を求められる場合を除いており,直接の取得制度との関係も検討する必要がある。
保険者のレセプト,病院の診療記録,自治体の介護関係資料は所持者が異なるため,それぞれについて対象文書,期間及び何を証明するために必要なのかを具体化する。

訴え提起前にも,同法132条の4の証拠収集の処分という制度があるが,予告通知等を前提とし,立証に必要であることが明らかで,自ら収集することが困難であるなどの条件がある。
申立ては,原則として予告通知の日から4か月の不変期間内に行うこととされ,期間経過後は相手方の同意がある場合に限られる。
受診先が分からないというだけで,直ちに使える一括調査制度ではない。

記録が失われ,後に証拠として使うことが困難になる事情がある場合は,同法234条・235条の証拠保全も検討対象となる。
証拠保全は訴え提起前にも申し立てられるが,単なる資料の取り寄せとは要件・手続が異なるため,廃棄予定や記録の所在が分かった時点で相談するとよい。

裁判所を通じた取得が直接請求より必ず安い,又は速いとは限らない。
必要性の説明,送付後の記録の利用方法,費用及び時間を確認して選び,既に調査目的を満たしている資料を重ねて取得する必要があるかも検討する。
また,記録の開示依頼と,相続や損害賠償等の権利行使の期限の確認は別に行う必要がある。

第7 出典

1 法令

個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)2条1項・76条。
医師法(昭和23年法律第201号)24条2項。
弁護士法(昭和24年法律第205号)23条の2。
民事訴訟法(平成8年法律第109号)132条の4,226条,234条・235条。

2 行政の指針・解説・Q&A

①厚生労働省「診療情報の提供等に関する指針の策定について」(平成15年9月12日医政発第0912001号)別添第2,第7~第9。
②個人情報保護委員会掲載「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」Q&A Q2-7Q2-10
③個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのQ&A(行政機関等編)」Q5-1-3(令和6年3月追加)。
④厚生労働省「健康保険組合等における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」を補完する事例集(Q&A)(令和5年6月15日事務連絡掲載版)問408。
⑤厚生労働省「国民健康保険制度」の制度概要及び問い合わせ先。

3 保険者・医療機関等の手続案内

①全国健康保険協会「診療報酬明細書等(レセプト)の開示について(ご遺族用)」
②大阪府後期高齢者医療広域連合「情報公開・個人情報保護制度」のレセプト開示及び死者情報の提供案内。
③見附市「診療報酬明細書(レセプト)の開示について」(令和6年12月2日更新)。
④ジェイアールグループ健康保険組合「かかった医療について知りたいとき」
⑤社会保険診療報酬支払基金「情報保護管理体制」(令和8年4月1日更新)3(2)。
⑥獨協医科大学病院「診療記録(カルテ等)の開示について」の必要書類⑤及び費用に関する注記。
⑦地方公共団体情報システム機構・公的個人認証サービス「電子証明書の有効期間と失効」