労働者災害補償保険(労災保険)の給付に関する書類は,労働局,労働基準監督署及び公共職業安定所(ハローワーク)が保有しており,個人情報保護法の保有個人情報開示請求によって本人又はその代理人が入手できます。
この記事では,療養補償給付・休業補償給付・障害補償給付の請求書や決議書,レセプト,災害調査復命書などを対象に,請求先,必要書類,手数料,「開示を請求する保有個人情報」の書き方,書類がそろう時期,代理人弁護士による請求の可否を,労働局の公表資料と厚生労働省の通達に基づいて整理します。
本記事は令和7年10月時点で確認した情報に基づきます。
目次
第1 労災の書類を開示請求で入手する仕組みの概要
労災保険の給付に関する書類は,行政機関である労働局や労働基準監督署が保有する「保有個人情報」です。
被災労働者本人(死亡事案では遺族)は,個人情報保護法に基づく保有個人情報開示請求によって,自己を本人とする書類の開示を受けることができます。
根拠となる開示請求権は,個人情報保護法76条1項が定めています。同法は,令和3年の改正により従前の行政機関個人情報保護法等を統合したもので,国の行政機関に関する部分は令和4年4月1日に施行されました。
開示請求の対象となる書類は,例えば次のものです。
療養補償給付・休業補償給付・障害補償給付の請求書及び添付書類,これらの支給を決定した決議書(調査書を含む。),レセプト(診療報酬明細書),災害調査復命書,労働者死傷病報告などです。
どの機関がどの書類を保有しているか,請求書にどう書けば書類を特定できるかが,開示請求の実務上の要点になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠 | 個人情報保護法76条1項(保有個人情報開示請求権) |
| 請求できる人 | 本人,法定代理人,本人の委任による代理人(令和4年4月1日以降) |
| 請求先 | 都道府県労働局(総務部総務課)。監督署・ハローワーク保管文書も労働局へ |
| 宛先 | 「○○労働局長」 |
| 手数料 | 行政文書1件につき300円(収入印紙) |
第2 開示請求の手続(誰が,どこへ,何を,いくらで)
1 請求先と宛先
労災保険に関する書類の保有個人情報開示請求は,都道府県労働局の総務部総務課に対して行います。
労働基準監督署や公共職業安定所(ハローワーク)が保管している文書についても,請求書の郵送先は都道府県労働局です。
請求書の宛先自体は「○○労働局長」となります。例えば大阪労働局に郵送する場合の宛先は「大阪労働局長」です。
全国の都道府県労働局の所在地は,厚生労働省が公表する都道府県労働局(労働基準監督署,公共職業安定所)所在地一覧で確認できます。
2 必要書類と手数料(1件300円)
保有個人情報開示請求に必要な書類は,次のとおりです。
1つ目は,300円分の収入印紙を貼付した保有個人情報開示請求書です(手数料は行政文書1件につき300円です。)。
2つ目は,本人確認書類(運転免許証,健康保険被保険者証など)のコピーです。
3つ目は,マイナンバー(個人番号)の記載がない住民票です。
これらを労働局総務部総務課に郵送すれば足ります(神奈川労働局が公表する行政機関が保有する個人情報の開示制度の案内を参照)。
本人確認書類に生年月日が記載されているため,開示請求文書を特定する際に,開示請求者の生年月日をあらためて記載する必要はありません。
3 代理人弁護士による請求
令和4年4月1日以降は,本人の委任による代理人となった弁護士も,保有個人情報開示請求をすることができます。
これは,個人情報保護法76条2項が,開示請求をすることができる者として「未成年者若しくは成年被後見人の法定代理人又は本人の委任による代理人」を定めているためです。
これに対し,令和4年3月31日までは,保有個人情報開示請求について任意代理人による請求が認められていませんでした(当時の行政機関個人情報保護法は,開示請求をできる代理人を法定代理人に限っていました。)。
そのため当時の実務では,本人名義で請求しつつ,開示請求書の末尾欄外に「* ○○弁護士会所属の弁護士○○(電話番号)が代筆しました。」と記載しておくことで,労働局からの問い合わせの電話を,請求者本人ではなく代理人弁護士に対して行ってもらう運用がとられていました。
4 大阪労働局の窓口
大阪労働局の情報公開・個人情報保護窓口は,次のとおりです(大阪労働局「情報公開・個人情報保護窓口」を参照)。
| 部署 | 大阪労働局総務部総務課 |
|---|---|
| 所在地 | 〒540-8527 大阪市中央区大手前4-1-67 大阪合同庁舎第2号館 8階 |
| 電話 | 06-6949-6482 |
| 受付時間 | 月曜日から金曜日まで 9時00分から17時00分まで(12時00分から13時00分までを除く。) |
第3 「開示を請求する保有個人情報」の記載方法
1 記載例
保有個人情報開示請求書の「開示を請求する保有個人情報」欄は,次の例のように記載すれば書類を特定できます。
以下は,業務災害の被災者が労災保険指定医療機関で治療を受け,治療費,休業補償及び後遺障害に関する支給を労災保険から受けた場合の例です。
(A) ○○が令和○年○月○日に大阪府○○市で被災した業務災害(管轄労基署は○○労基署)に関する以下の書類
- ① 療養補償給付たる療養の給付請求書及び添付書類,並びに決議書(決定に関する調査書及び添付書類を含む。)
- ② 休業補償給付支給請求書及び添付書類,並びに決議書(決定に関する調査書及び添付書類を含む。)
- ③ 障害補償給付支給請求書及び添付書類,並びに決議書(決定に関する調査書及び添付書類を含む。)
- ④ 加害者が被保険者となっている任意保険会社との間で授受した文書(第三者行為災害の場合)
(B) ○○が令和○年○月○日に大阪府○○市で被災した業務災害(管轄労基署は○○労基署)に関して,○○が受診した医療機関全部のレセプト
(A)の書類は労働基準監督署が保管しているのに対し,(B)のレセプトは労働局労働基準部労災補償課が保管しています。
保有機関が異なるため,(A)について300円,(B)について300円の収入印紙がそれぞれ必要になります。
2 レセプトの請求先と件数の数え方
レセプト(診療報酬明細書)については,治療を受けた労災保険指定医療機関が大阪府外にある場合,その病院を管轄する都道府県労働局長に対して開示請求をする必要があります。
また,労災保険指定医療機関以外の病院で治療を受け,労基署から療養(補償)給付たる療養の「費用」を支給されていた場合には,労働局にレセプトは存在しません。
療養の費用の支給は,療養の給付をすることが困難な場合等に,現物給付である療養の給付に代えて費用を支給する制度で,労災保険法13条3項及び同法施行規則11条の2が根拠です。
受診した病院が労災保険指定医療機関かどうかは,厚生労働省の労災保険指定医療機関検索で確認できます。
レセプトの開示請求は,件数の数え方に注意が必要です。
福岡労働局が公表する保有個人情報開示請求制度の案内によれば,労災給付における診療費請求内訳書(いわゆるレセプト)は,診療費の支払期間1年度(4月1日から翌年3月31日まで)ごとに1件とみなされます。
そのため,支払期間が2年度にわたる場合(例えば平成29年3月分から同年4月分まで)は,平成28年度分と平成29年度分の2件分の開示請求となり,収入印紙も300円の2年度分が必要になります。
3 不開示となる部分(医師の氏名等)
開示請求をしても,一部が不開示となる書類があります。
労働基準監督署が作成した障害認定調査復命書について開示請求をした場合,意見書を作成した医師の氏名等は不開示となります(情報公開・個人情報保護審査会の平成30年度(行個)答申第99号〔平成30年9月18日答申〕を参照)。
4 各労働局が公表する記載例
各都道府県労働局は,開示請求書の記載例を公表しています。
大分労働局が公表する開示請求する保有個人情報の特定に係る記載例には,次の書類について開示請求をする場合の記載例が載っています。
- ① 労災保険給付関係 = 労災認定時の書類,労災不支給決定に係る調査書,レセプト,遺族補償年金(一時金)給付の決定に係る調査書,障害補償給付支給決定に係る調査書(後遺障害認定・症状固定後)
- ② 労働災害関係 = 災害調査復命書,労働者死傷病報告
- ③ 公共職業安定所での職業相談関係 = 求職票
- ④ 労働局や労働基準監督署での相談関係 = あっせん関係,未払賃金等で監督署に相談した関係
第4 療養補償給付の全書類がそろう時期
療養補償給付に関するすべての書類の開示請求ができるようになる時期は,レセプトと決議書が作成される時期から逆算できます。
労災保険指定医療機関は,都道府県労働局に対し,毎月10日までに前月分の労災保険の診療費請求書・明細書(レセプト)及び療養の給付請求書を提出しています(厚生労働省の資料「業務フロー・コスト分析における業務改善検討について(労災診療費審査業務)」〔平成29年2月20日付〕の2頁「労災診療費の仕組み」を参照)。
また,労働局は,これらを受領した月の翌月15日頃に,労災保険指定医療機関へ労災診療費を支払っています。
この流れからすると,労働局は,症状固定日までの治療に関する療養の給付請求書及び添付書類並びにレセプトを翌月10日までに取得し,決議書を翌々月15日までに作成していると考えられます。
そのため,例えば令和6年9月に症状固定となった場合は,翌々月である同年11月15日以降であれば,療養補償給付に関するすべての書類の開示請求ができるようになると考えられます。
第5 労災保険支給決定証明願及び給付等支払証明願
1 2つの証明願の違いと使う場面
労災保険支給決定証明願及び労災保険給付等支払証明願は,労災保険の支給決定通知及び支払振込通知が一体となったはがきを紛失した場合に,その代わりの証明を得るために利用するものです(はがきの様式は,厚生労働省の労災保険給付の受給者向けページに掲載された案内「労災保険給付等の支払通知の方法が変わります」を参照)。
2つの証明願は,証明する対象が異なります。
支給決定証明は,支払「決定」通知書の代わりとなる書類です。
支払証明は,支払「振込」通知書の代わりとなる書類です。
この運用の詳細は,「労災保険給付等に係る支給決定証明願及び支払証明願の取扱について」(令和3年3月25日付の厚生労働省労働基準局補償課長及び労災保険業務課長の書簡)に記載されています。
厚生労働省の受給者向けページには,支払証明書で証明できる事項について,次の趣旨の説明があります。
支払証明書で証明する事項は,受給者の氏名及び住所,給付の種類,給付期間又は支払日,支払金額及び給付を特定する補足的事項です。
支給決定通知書の内容(支給決定年月日,給付基礎日額,障害等級等)の証明はできず,その証明は,別途「支給決定証明願」を実際に処分決定を行った処分庁に提出する必要があります。
2 提出先
提出先は,どちらの証明願かによって異なります。
支給決定証明願 令和3年4月1日以降にこれを提出する場合,都道府県労働局又は労働基準監督署が提出先となります。
実務上は,労災保険を支給した労基署に電話で問い合わせるのが確実です。
給付等支払証明願 平成23年5月に,休業補償給付や障害補償一時金等の支払事務が厚生労働省本省に一本化されました(「本省払い化の対象となる労災保険給付及びその時期の一部変更について」〔平成23年4月20日付の厚生労働省労働基準局労災保険業務課長の通知〕を参照)。
そのため,給付等支払証明願を提出する場合は,厚生労働省労働基準局労災保険業務課(〒177-0044 東京都練馬区上石神井4-8-4)が提出先となります。
なお,本人が証明願を提出する場合は,運転免許証その他の本人確認書類のコピーも提出する必要があります。
3 遺族の代理人が請求する場合の添付書類
被災労働者が救急搬送後に死亡した後,遺族の代理人弁護士が「療養の給付」に関する労災保険給付等支払証明願を厚生労働省労働基準局労災保険業務課に提出する場合の添付書類は,例えば次のとおりです。
- ① 被災労働者の除籍謄本のコピー
- ② 請求人である遺族の戸籍謄本のコピー
- ③ 請求人である遺族の住民票のコピー
- ④ 委任状((a)労災保険給付等支払証明願の交付申請をする件,(b)交付された証明書を受領して個人情報を受領する件,(c)これらに準ずる一切の件を委任事項とするもの)
この場合,証明を希望する給付の種類としては「療養の給付(診療費給付)」と,証明が必要な事項としては支払年月日,支払額,受診機関及び給付期間と記載すれば足ります。
4 様式・委任状と現物給付の取扱い
労災保険支給決定証明願及び労災保険給付等支払証明願は,必要事項(様式4の①から⑥までの項目)を記載しておけば,適宜の書式で作成することができます。
⑥の項目については,別途,委任状を作成しておけば,①から⑤までの項目を記載した適宜の書式で,代理人弁護士が証明願を作成できます。
現物給付である「療養の給付」(「診療費給付」と同じ意味です。)の取扱いには沿革があります。
令和3年3月31日までは,現物給付である療養の給付等は,金銭の支払の事実がない点で,労災保険給付等支払証明願の対象になりませんでした。
療養(補償)給付には,現物給付としての「療養の給付」と,現金給付としての「療養の費用の支給」の2種類があり,労災病院や労災指定病院等にかかれば原則として傷病が治癒するまで無料で療養を受けられる「療養の給付」が原則です。
これに対し「療養の費用の支給」は,労災病院や労災指定病院以外で療養を受けた場合等に,その費用を支給する制度です。
労災保険支給決定証明願及び労災保険給付等支払証明願の様式は,厚生労働省が労災保険給付の受給者向けページで公表しています。
なお,厚生労働省労働基準局にあった労災補償部は平成26年7月11日に廃止され,現在は補償課及び労災保険業務課が労働基準局の直属となっています。
第6 災害調査復命書,災害時監督復命書及び安全衛生指導復命書
1 3つの復命書の違い
労働災害について労働基準監督署が事業場を調査した結果は,調査の目的に応じて,次の3種類の復命書のいずれかにまとめられます。
災害調査復命書 死亡災害又は重篤な労働災害が発生した場合に,同種の労働災害の再発を防止するために作成されるものです。
災害時監督復命書 労働者死傷病報告等に基づき,事業主に何らかの労働安全衛生法令等違反があると想定される場合に,その法令違反を是正させるために作成されるものです。
安全衛生指導復命書 労働災害の発生の有無にかかわらず,又は労働災害が発生したとしても災害調査を行うほど重篤とはいえない場合に,事業場に対して安全衛生に関する調査・指導を行ったときに,その結果をまとめるものです。
情報公開・個人情報保護審査会の平成29年度(行個)答申第96号〔平成29年9月19日答申〕は,安全衛生指導復命書を「事業場に対して安全衛生に関する指導・調査を行った担当官がその所属する労働基準監督署長に指導・調査結果を復命するため,事業場ごとに作成される文書である。」と説明しています。
2 災害調査復命書
労災死亡事故の場合には,災害調査が実施されます。
また,後遺障害等級7級以上の後遺障害が残ると見込まれる労働災害が発生したような場合には,災害調査又は災害時監督が実施されます(「監督業務運営要領の改善について」〔令和3年5月24日付の厚生労働省労働基準局長の通達〕のPDF21頁及び22頁を参照)。
災害調査等の復命は,原則として災害調査復命書によることとされています。
災害調査復命書の書式(監督業務運営要領の改善について(令和3年5月24日付の厚生労働省労働基準局長の通達)からの抜粋)を添付しています。 pic.twitter.com/OiBMSKF7jx
— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) April 8, 2023
3 災害時監督復命書
災害時監督を実施した場合には,災害調査復命書の記載を省略し,監督復命書に災害原因を付記します(前掲「監督業務運営要領の改善について」のPDF22頁を参照)。
監督復命書の書式(監督業務運営要領の改善について(令和3年5月24日付の厚生労働省労働基準局長の通達)からの抜粋)を添付しています。 pic.twitter.com/nF1AQmzbUA
— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) April 8, 2023
4 安全衛生指導復命書
安全衛生指導復命書の様式は,「安全衛生業務運営要領について」(平成15年3月12日付の厚生労働省労働基準局長の通達)を改正した「安全衛生業務運営要領の改正について」(平成17年3月25日付の厚生労働省労働基準局長の通達)に掲載されています。
安全衛生指導復命書の書式(安全衛生業務運営要領の改正について(平成17年3月25日付の厚生労働省労働基準局長の通達)からの抜粋)を添付しています。 pic.twitter.com/xv8jhEITby
— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) April 8, 2023
第7 臨検監督の4類型(定期,申告,災害時及び再監督)
復命書の背景にある労働基準監督官の臨検監督には,4つの種類があります。
臨検監督は,労働基準法101条1項が定める労働基準監督官の権限(事業場等への臨検,帳簿・書類の提出要求,尋問)に基づくものです。
以下の分類は,書籍「未払い残業代請求の法律相談」(青林書院・令和4年9月20日付)の109頁及び110頁を参考にしています。
- 定期監督 当該年度の監督計画に基づき,調査対象となった事業場に対して,法令の全般にわたって行われる調査です。原則として抜き打ちで行われますが,書面や電話等で日程調整をしてから行われる場合もあります。
- 申告監督 労働者からの法令違反等の申告(労働基準法104条1項)があった場合に,その申告内容について行われる調査です。申告者名が本人の了承なく使用者側に伝わることはなく,申告監督であることが分からないように定期監督を装って行われる場合もあります。
- 災害時監督 一定規模以上の労働災害が発生した際に,原因究明や再発防止の指導を行うために実施される調査です。
- 再監督 ①から③までの監督の結果,是正勧告した違反が是正されたかどうかを確認するために行われる調査です。
労働基準監督官の主な庁外活動業務としては,定期監督,災害時監督,災害調査,申告監督及び再監督に係る業務のほか,司法警察事務に係る業務があります(前掲「監督業務運営要領の改善について」のPDF6頁を参照)。
第8 裁判所の文書提出命令等に対する厚生労働省の取扱い資料
労災関係の書類を訴訟で用いる場面では,開示請求のほか,裁判所からの文書提出命令や文書送付嘱託が問題になります。
これらに対する厚生労働省の取扱いを示す資料として,次のものがあります。
- ① 「裁判所等からの文書提出命令等に対する具体的な対応について」の改正について(令和4年9月8日付の厚生労働省労働基準局総務課長の通達)
- ② 裁判所からの文書送付嘱託等に対する監督復命書の取扱いについて(平成19年2月15日付の厚生労働省労働基準局監督課の文書) = 監督復命書に関する取扱い
- ③ 裁判所からの文書送付嘱託等への対応に係る標準事務処理要領(平成27年5月・厚生労働省労働基準局安全衛生部の文書) = 災害調査復命書,労働者死傷病報告,安全衛生指導書及び安全衛生指導復命書に関する取扱い
- ④ 厚生労働省労働基準局の,文書送付嘱託に対する対応(要旨) = 平成30年度全国労災補償課長会議資料のうち,資料Ⅵ-5「文書提出命令等に係る業務参考資料の送付について」(平成30年3月26日付事務連絡)に含まれるもの
- ⑤ 開示請求等の対応に当たっては本省協議の取扱いについて(令和4年9月8日付の厚生労働省労働基準局総務課長補佐〔総務・広報担当〕の事務連絡)
裁判所からの文書送付嘱託等に対する監督復命書の取扱いについて(平成19年2月15日付の厚生労働省労働基準局監督課監督・監察担当中央労働基準監察監督官の文書)を添付しています。 pic.twitter.com/Te7008kXHW
— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) April 8, 2023
これらの取扱いに関しては,文書提出命令をめぐる裁判例として,最高裁判所平成17年10月14日決定(民集59巻8号2265頁)があります。
この決定は,民事訴訟法220条4号ロの「公務員の職務上の秘密に関する文書」の意義や,開示によって公共の利益を害し又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれの有無について判断したもので,労働基準監督機関が作成した災害調査復命書に関する事案です。
第9 関連する論点と参考資料
1 死者に関する個人情報の開示請求
開示請求の対象は,原則として「生存する個人に関する自己を本人とする保有個人情報」です。
もっとも,死者に関する個人情報であっても,それが同時に遺族等の個人情報となる場合には,当該遺族が,自己を本人とする個人情報として開示請求をすることができると解されています(独立行政法人等の保有する個人情報に関する平成30年度(独個)答申第26号〔平成30年9月12日付〕を参照)。
被災労働者が死亡した労災事案で,遺族が書類を入手する際の根拠となる考え方です。
2 労災支給決定に対する事業主の原告適格
労災保険の支給決定を,保険料負担の観点から争いたい事業主の立場については,最高裁判所の判断があります。
最高裁判所第一小法廷令和6年7月4日判決(民集78巻3号662頁)は,労働保険の保険料の徴収等に関する法律12条3項所定の事業(いわゆるメリット制の対象事業)の事業主は,当該事業についてされた業務災害に関する保険給付の支給決定の取消訴訟の原告適格を有しない,と判断しました。
もっとも,この判決は,事業主が支給決定そのものを取消訴訟で争う道を認めなかったにとどまります。
事業主が労働保険料の認定処分について不服申立て又は取消訴訟を提起し,その中で,客観的に支給要件を満たさない労災保険給付であると間接的に争う余地は残されていると受け止められています。
樋口弁護士から教えてもらいましたが、今回会社側は敗訴しましたが、労災支給処分を使用者が争う道は残されているようです。最後のところで使用者は保険料認定処分について不服申立又は取消訴訟で間接的に「客観的に支給要件を満たさない労災保険給付」であると争うことができると判断しています。 https://t.co/Fx34rlRGPo
— 向井蘭 (@r_mukai) July 4, 2024
3 掲載資料と関連記事
開示請求や事務分掌に関する資料として,次のものがあります。
- 開示請求に係る標準事務処理要領(平成27年4月の厚生労働省労働基準局安全衛生部の文書)
- 東京労働局組織細則
- 中央労働基準監督署の平成30年度事務分掌
- 大阪労働局組織細則(平成25年当時のもの)
- 大阪中労働基準監督署の事務分掌(平成25年当時のもの)
- 監督指導実務実習・演習(定期監督)(記載例) = 令和2年度新任労働基準監督官(後期)研修の資料
関連する記事として,次のものも参照してください。
- 厚生労働省労働基準局の,文書提出命令等に対する具体的な対応
- 労災保険の給付内容
- 損益相殺
- 労災保険の特別加入制度
- 弁護士の社会保険
- 民間労働者と司法修習生との比較
- 業務が原因で心の病を発症した場合における,民間労働者と司法修習生の比較
- 平成30年度全国労災補償課長会議資料
- 厚生労働省労働基準局の,労災保険に係る訴訟に関する対応の強化について
出典・参考資料
1 法令
- 個人情報の保護に関する法律76条(保有個人情報開示請求権・代理人)
- 労働者災害補償保険法13条3項,同法施行規則11条の2(療養の費用)
- 労働基準法101条1項(労働基準監督官の権限),104条1項(監督機関に対する申告)
- 労働保険の保険料の徴収等に関する法律12条3項(メリット制)
2 裁判例
- 最高裁判所第一小法廷令和6年7月4日判決(令和5年(行ヒ)第108号・民集78巻3号662頁) https://www.courts.go.jp/hanrei/93169/detail2/index.html
- 最高裁判所第三小法廷平成17年10月14日決定(平成17年(許)第11号・民集59巻8号2265頁) https://www.courts.go.jp/hanrei/52435/detail2/index.html
3 答申・公文書
- 情報公開・個人情報保護審査会 平成30年度(行個)答申第99号(平成30年9月18日答申) https://www.soumu.go.jp/main_content/000574249.pdf
- 情報公開・個人情報保護審査会 平成29年度(行個)答申第96号(平成29年9月19日答申) https://www.soumu.go.jp/main_content/000507942.pdf
- 情報公開・個人情報保護審査会 平成30年度(独個)答申第26号(平成30年9月12日付) https://www.soumu.go.jp/main_content/000573622.pdf
- 本省払い化の対象となる労災保険給付及びその時期の一部変更について(平成23年4月20日付の厚生労働省労働基準局労災保険業務課長の通知) http://www.joshrc.org/files2011/20110420-001.pdf
- 監督業務運営要領の改善について(令和3年5月24日付の厚生労働省労働基準局長の通達) PDF
- 安全衛生業務運営要領の改正について(平成17年3月25日付の厚生労働省労働基準局長の通達) PDF
4 行政機関の案内・様式
- 大阪労働局「情報公開・個人情報保護窓口」 https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/kokai.html
- 神奈川労働局「行政機関が保有する個人の情報を本人に対して開示する制度について」 リンク
- 福岡労働局「保有個人情報開示請求制度について」 リンク
- 大分労働局「開示請求する保有個人情報の特定に係る記載例」 PDF
- 厚生労働省「労災保険給付の受給者向けページ(労災保険支給決定証明願・給付等支払証明願の様式を含む。)」 リンク
- 厚生労働省「労災保険指定医療機関検索」 http://rousai-kensaku.mhlw.go.jp/
5 文献
- 杜若経営法律事務所ほか 未払い残業代請求の法律相談(青林書院・令和4年9月20日)109頁から110頁 書誌情報
裁判例2件は,いずれも裁判所ウェブサイトに掲載されているもので,同ウェブサイトの詳細ページで裁判年月日,事件番号,掲載誌及び判示事項を確認しています。法令の条文は,e-Gov法令検索の現行条文で確認しています。