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サンフランシスコ平和条約第22条と国際司法裁判所|領土問題を一方的に提訴できるのか(AI作成)

第1 単独申立てと管轄権の成立は別である

サンフランシスコ平和条約第22条は,一方の紛争当事国の要請による国際司法裁判所(ICJ)への付託を定めている。
しかし,これを,日本に関係するすべての領土問題について,相手国の同意に関係なく裁判を進められる規定と読むことはできない。
単独で申立てを行うことと,その紛争についてICJの管轄権が成立することは別である。

管轄権の基礎となる同意は,紛争発生後の合意だけでなく,あらかじめ締結した条約や受諾宣言によって示される場合もある(ICJ規程第36条)。
本記事は,2026年8月30日を基準として,第22条の対象,日本の二つの宣言及び竹島をめぐる政府の説明を整理するものであり,領土帰属そのものや特定の訴訟の成否を判断するものではない。
外国語原文については,その内容を仮訳・要約して説明する。

第2 平和条約第22条の前段と後段

1 対象となる紛争と付託の条件

平和条約第22条前段は,この条約のいずれかの当事国が,条約の解釈又は実施に関する紛争が生じたと認める場合を扱う。
その上で,特別請求権裁判所への付託又は他の合意された方法で解決されない紛争を,いずれかの紛争当事国の要請により,ICJへ決定のため付託する旨を定めている。

確認事項は,①当該国との関係で条約及び管轄条項が適用されるか,②争いが条約の解釈又は実施に関するものか,③他の合意された解決方法との関係で条件を満たすか,という点である。
領土条項の解釈が対象となる余地はあるが,「領土問題である」という理由だけでこれらの条件を省略することはできない。

条文が対象とするのは,他の合意された方法で「解決されない」紛争であり,他の方法が一切「存在しない」場合と同じではない。
また,条文の文言だけから,考え得るすべての外交手段を必ず試し尽くす義務を導くこともできず,当事国間の具体的な合意を確認することになる。

一方の国が条約紛争だと主張しても,その主張だけで管轄権が確定するわけではない。
管轄権の有無に争いがある場合は,ICJ自身が判断する(ICJ規程第36条6項)。

2 後段の非当事国とはICJ規程の非当事国である

第22条後段は,日本国及びまだICJ規程の当事国でない連合国が,条約批准時に,一定の一般的宣言書をICJの書記へ寄託することを定めている。
ここで区別されているのは,ICJ規程の当事国であるかどうかであり,平和条約に参加していない国も一律に第22条の管轄を受け入れなければならないという規定ではない。

ICJ規程第35条1項は,同規程の当事国に裁判所が開かれることを定める。
また,ICJの説明によれば,国連加盟国は当然にICJ規程の当事国となるが,この利用資格と,特定の紛争について裁判を受ける同意とは別である。
日本と韓国が国連加盟国であることだけで,竹島問題についての管轄権が成立するわけではない。

第3 ICJの管轄権に対する同意の示し方

1 特別合意・条約・選択条項受諾宣言

ICJ規程第36条は,当事国が付託する事件や条約に規定された事項についての管轄権と,宣言による管轄権の受諾を規定している。
ICJの管轄根拠に関する解説も踏まえると,主な経路は次のとおりである。

経路同意の示し方一方からの申立てとの関係
特別合意特定の紛争をICJに委ねることに合意する。合意に基づいて付託する。
条約の管轄条項一定の紛争をICJに委ねることを条約で定める。条項が適用される場合には,一方から申立てられることがある。
選択条項受諾宣言規程第36条2項に基づき,同じ義務を受け入れる国との間で管轄権を受諾する。双方の宣言が適用される範囲と留保を確認する。
事後の同意一方の申立て後に,相手国が当該事件の管轄権を受諾する。同意がまだない段階では,次項の規則第38条5項が問題となる。

第22条を根拠とする付託は,条約の管轄条項による経路として検討する。
有効な事前同意があれば,紛争の発生後に新たな合意を結ぶことが常に必要になるわけではない。
逆に,選択条項受諾宣言をしていない国でも,特別合意など別の同意根拠が成立する余地はある。

2 相手国の事後同意を待つ申立て

ICJ規則第38条5項は,相手国がまだ示していない同意を管轄権の基礎とする申立てを想定している。
この場合,申立書は相手国へ送付されるが,同国が当該事件について管轄権を受諾するまでは,一般事件表に記載されず,手続上の措置も取られない。

したがって,申立書を提出して相手国に同意を求めることと,本案審理が進むことは区別される。
これは同意を待つ場合の規定であり,既に有効な条約上の管轄根拠がある事件まで,相手国の新たな同意がなければ常に進行できないという意味ではない。

第4 1951年と2015年の日本の宣言

第22条に基づく1951年の宣言と,ICJ規程第36条2項に基づく2015年の選択条項受諾宣言は,法的根拠も対象も異なる。
「特別の合意なしに受諾する」という共通する表現だけで,同じ制度として扱うことはできない。

比較項目1951年の宣言2015年の宣言
根拠平和条約第22条及び同条が参照する安保理決議の仕組みICJ規程第36条2項
対象の中心平和条約の解釈又は実施に関する紛争宣言が定める範囲の紛争
主な限定今後生じる,合意された方法等で解決されない条約紛争相互主義,時間的限定,平和的手段による未解決性及び留保
寄託先ICJの書記国連事務総長

1 第22条に基づく1951年の宣言

第22条後段が参照する国連安全保障理事会決議9(1946年10月15日)は,ICJ規程の当事国でない国が裁判所書記に行う宣言とその条件を定めている。
日本の宣言原文は,国連条約集第137巻・登録番号1842の4頁(PDF14頁)に収録されている。

同原文によれば,日本の宣言は1951年11月24日に東京で作成され,同年12月10日にICJの書記へ寄託された。

対象は,今後生じる平和条約の解釈又は実施に関する紛争で,特別請求権裁判所への付託又は他の合意された方法で解決されないものである。
条約と無関係なすべての紛争について無限定に裁判を受け入れた宣言ではない。

2 2015年の宣言の時間的限定と留保

基準日にICJ及び国連の寄託資料が掲載する日本の選択条項受諾宣言は,2015年10月6日付けの宣言である。
同宣言は,同じ義務を受け入れる他国との関係で,相互主義を条件として管轄権を受諾している。

対象となる紛争は1958年9月15日以後に生じたものとされ,その紛争が関係する事態又は事実についても,同日より後のものという別の時間的限定がある。
他の平和的解決手段によって解決されていないことも,同宣言の文言に含まれる。

さらに,同宣言の留保(1)~(3)は,次の紛争等を除外している。
①当事国が,終局的かつ拘束的な決定のために仲裁又は裁判による解決へ付することに合意した紛争。
②相手方が,その特定の紛争だけを対象又は目的としてICJの強制管轄を受諾した場合。
③相手方の受諾の寄託又は通告が,申立て前12か月未満にされた場合。
④海洋生物資源の調査,保存,管理又は開発等に関する紛争。

このため,相手国が今後受諾宣言を行えば,過去から続く領土問題が直ちにすべて審理できるようになるとはいえない。
双方の宣言の対象範囲と留保の検討が残る。

本記事では,これらの留保が,別の管轄根拠である第22条の文言まで当然に書き換えるものではないと整理する。
もっとも,1951年宣言を現在の特定の事件に援用できるかは,その事件に即した別の検討を要する。

第5 竹島問題と韓国の同意

1 第21条の利益は第22条への同意と異なる

韓国は平和条約の署名国ではなく,第25条による連合国の定義には,条約への署名と批准が要件として含まれる。
署名国の列挙は,国連条約集第136巻の126頁~140頁(PDF19頁~33頁)で確認できる。

一方,第21条が朝鮮について利益を受ける権利を認めるのは,第2条,第4条,第9条及び第12条であり,第22条は列挙されていない。
本記事では,一部の条文の利益を受けることから,第22条に基づいて裁判を受ける韓国の同意まで当然に導くことはできないと整理する。
日本が第22条を挙げるだけで,韓国に対する竹島問題の管轄権を一方的に成立させることはできない。

2 日本の付託提案と2012年の政府答弁

日本国外務省「国際司法裁判所への提訴の提案」は,1954年9月,1962年3月及び2012年8月の提案を韓国側が受け入れなかったと説明している。

同ページの注2は,韓国が強制管轄を受諾しておらず,日本が一方的に提訴しても,韓国が自発的に応じなければ管轄権は成立しないとの説明をしている。
基準日に確認した国連の選択条項受諾宣言の一覧にも,韓国は掲載されていない。

他方,日本政府は,平成24年11月9日付け答弁書の「七について」で,ICJへの日本単独での付託についても準備していると述べた。
この答弁を踏まえると,「単独では申立て自体が不可能である」とまで言い切るのは適切でない。

ただし,同答弁は,予定していた具体的な管轄根拠までは明らかにしていない。
準備に関する答弁を,第22条により韓国の同意なしに裁判を進められるとの判断が示されたものと読むこともできない。

3 韓国側の説明と領有権判断の区別

韓国外交部の問答集・問14は,1954年の付託提案に対し,韓国は独島に対する領有権を有しており,その権利を国際裁判で証明すべき理由はないとの立場を伝えた旨を説明している。
同ページは,当時の立場は現在も変わらないとしている。

これは韓国政府自身の見解であり,ICJがその領有権を認めたことを意味しない。
また,付託を拒否したという行為だけから,敗訴を自認しているという動機や領有権の正否を推定することもできない。

第6 管轄権と判決の効力をめぐる誤読

管轄権はICJがその紛争を裁けるかという問題であり,領土帰属はどちらの国に権利があるかという本案の問題である。
管轄権が成立しないことから,一方の国の領有権が正しいという結論が自動的に導かれるわけではない。
逆に,自国の領有権が明白であるとの主張だけで,裁判所の管轄権が成立するわけでもない。

1 相手国が欠席しても自動勝訴にはならない

ICJ規程第53条は,一方の当事国が出廷せず,又は自己の主張を弁護しない場合を扱っている。
同条は,裁判所が管轄権を有することに加え,請求が事実上及び法律上十分な根拠を持つことを確認した上で判断することを求めている。

したがって,既に有効な管轄根拠がある場合に,相手国が出廷しないだけで当然に裁判ができなくなるわけではない。
他方で,欠席しただけで原告国が自動的に勝訴するわけでもない。

2 別の国を被告にしても第三国を当然には拘束しない

ICJ規程第59条によれば,裁判の拘束力は,当事者間のその特定の事件に限られる。
このため,別の平和条約当事国を被告に選び,その国との間で条約の解釈を争えば,韓国を拘束する領土判決が当然に得られると考えることはできない。

そもそも,その国との間に裁判の対象となる紛争と管轄根拠があるかも別に検討される。
相手国を替えることだけで,第22条の適用条件や判決の拘束範囲を解決できるわけではない。

第7 関連記事

サンフランシスコ平和条約の署名・発効,主権回復及び全27条の法的構造
サンフランシスコ平和条約の署名国・批准国・非参加国
サンフランシスコ平和条約第2条と領土の帰属

第8 出典

1 条約・裁判所規程・規則

日本国との平和条約第21条・第22条・第25条(1951年9月8日署名,外務省掲載)。
国連条約集第136巻・登録番号1832(国際連合,1952年),英語正文72頁・74頁(PDF15頁・16頁),署名欄126頁~140頁(PDF19頁~33頁)。
国際司法裁判所規程・日本語文第35条・第36条・第38条・第53条・第59条(国連広報センター掲載,ICJ掲載の英語原文と照合)。
国際司法裁判所規則第38条5項(ICJ掲載,英語原文)。

2 決議・宣言・政府答弁

国連安全保障理事会決議9(1946年10月15日),掲載冊子14頁~15頁(PDF1頁~2頁)。
日本の1951年11月24日付け宣言(国連条約集第137巻・登録番号1842,1952年)4頁本文及び脚注(PDF14頁)。
日本の2015年10月6日付け選択条項受諾宣言(日本政府,ICJ掲載)。
ICJ規程第36条2項に基づく強制管轄受諾宣言(国連条約寄託資料),参加国一覧及び日本欄。
平成24年11月9日付け答弁書(内閣参質181第7号,参議院掲載)「七について」。

3 裁判所の制度解説・政府の立場

管轄権の基礎及び裁判所を利用できる国(ICJの制度解説)。
国際司法裁判所への提訴の提案(日本国外務省)本文及び注2。
独島に関する問答集・問14(韓国外交部,韓国語原文)。