メインコンテンツへスキップ
       

ガバメントAI「源内」の回答は行政文書か―個人利用・組織共有と情報公開(AI作成)

第1 源内の回答がすべて同じ扱いになるわけではない

行政機関の職員が生成AIを使った場合,その回答は情報公開請求の対象になるのか。
結論は,AIが生成したという理由だけで一律に決まるものではない。
誰が何のために作成・取得し,どのように共有・利用され,行政機関が保有しているかを確かめる必要がある。

本記事は,令和8年10月20日制定の源内基準と,行政機関の保有する情報の公開に関する法律を基に,行政文書への該当性と開示の可否を分けて説明するものである。
国会や裁判所の文書公開制度を,この法律だけで説明するものではない。

第2 行政文書の法律上の定義

行政機関情報公開法2条2項は,職員が職務上作成・取得した文書等のうち,組織的に用いるものとして行政機関が保有するものを行政文書とし,電磁的記録も対象に含めている。
同項には除外規定もあるため,職員の端末に何かが存在するという一点だけで,対象文書であると断定することはできない。
AIの出力についても,この要件に即して具体的な状態を検討することになる。

例えば,職員が個人的な試行のために受け取った回答と,担当課内で検討資料として共有した回答とでは,組織的利用の判断に関わる事情が異なる。
正式な決裁を終えたかどうかだけに着目し,検討段階の資料を一律に対象外とするのも適切ではない。

第3 源内基準が説明している個人利用と組織共有

1 職員個人の利用にとどまる場合

源内基準の1-6(印刷20頁・PDF22頁)は,職員が個人として管理し,個人の利用にとどまる回答等について,通常は組織的に用いるものに当たらず,行政文書には該当しないという整理を示している。
ここで大切なのは,個人としての管理と利用にとどまるという条件である。
AIが作ったから行政文書ではない,という説明ではない。

2 業務のために共有した場合

同じ箇所は,業務上の必要から回答等を同僚に共有し,共有フォルダーやチャンネル等に保存して利用する場合には,行政文書となり得ることも示している。
チャット画面の外に出したかどうかだけでなく,共有先,利用目的,組織としての取扱いを確認する必要がある。

源内基準は,デジタル庁が提供する源内の利用・運用に関する説明である。
行政文書の法的な範囲を独自に変更するものではなく,他のシステムについても,まず法律上の要件から判断する必要がある。

第4 学習に使わないこととログの保有は別である

源内基準には,入力・出力をモデルの学習に利用しないことに関する説明がある。
他方,同基準の3-4(印刷29頁以下)には,認証,利用者,機能,利用日時,モデル,入力・出力等に関するログを,必要な範囲で収集・保存する取扱いも示されている。
したがって,学習に利用しないという説明から,入力・出力の記録自体が存在しないと推定することはできない。

もっとも,保存されるログがあるということと,特定の請求対象に対応する記録が現に残っていることも別である。
具体的な請求を検討する際には,利用時期,対象業務,記録の種類,保存先,保存期間,保有する機関を絞ることが有用である。
これは請求対象を特定するための実務上の提案であり,すべてのプロンプトやログが必ず行政文書となり,永久に保存されるという意味ではない。

第5 行政文書に当たることと全部開示は別である

行政機関情報公開法3条は行政文書の開示請求権を定め,5条は不開示情報を除く開示義務について定めている。
行政文書に当たる場合でも,個人情報等の不開示情報の該当性などを検討する必要があり,すべてをそのまま公表しなければならないわけではない。
逆に,一部に不開示情報が含まれるという理由だけで,行政文書そのものが存在しないことになるわけでもない。

確認の順序としては,対象となる記録の特定と保有の有無,行政文書への該当性,開示・不開示の判断を分けると整理しやすい。
情報公開制度全般については,行政機関等に対する情報公開請求の基礎を参照されたい。

第6 組織が決めておきたいこと

源内を業務に組み込む組織では,AIの回答だけでなく,確認した根拠,職員による修正,採用した内容と採用しなかった内容を,必要に応じて業務の記録と結び付けておく方法が考えられる。
担当職員の個人領域に置くものと,組織で利用・保存するものの境界を曖昧にしないことが,本記事の運用上の提案である。
法令・文書管理規則や実際のシステム仕様に基づく保存義務と,この提案とは区別する必要がある。

生成AI利用の一般的な文書管理については,内閣府の「業務システムと公文書管理のルールについて」も参考になる。
ただし,源内基準の個別の記述と,同資料が説明する業務システム一般の文書管理を,同一の根拠として混ぜないことが大切である。

第7 一次資料

行政機関の保有する情報の公開に関する法律(2条2項,3条,5条)
源内基準(令和8年10月20日初版。1-6,3-4。印刷頁とPDF通し頁は2頁ずれる)
業務システムと公文書管理のルールについて(内閣府,令和7年2月14日)