不開示事由に該当するとされた下級裁判所の司法行政文書

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最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会によれば,以下の司法行政文書には不開示情報が含まれています。
行政機関情報公開法6条2項は,「開示請求に係る行政文書に前条第一号の情報(特定の個人を識別することができるものに限る。)が記録されている場合において、当該情報のうち、氏名、生年月日その他の特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより、公にしても、個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるときは、当該部分を除いた部分は、同号の情報に含まれないものとみなして、前項の規定を適用する。」と定めており,その意義につき,最高裁平成19年4月17日判決の裁判官藤田宙靖の補足意見が参考になります。

1 「東京地裁が,平成28年1月までに,60代の女性書記官を1ヶ月の停職処分にした際に作成し,又は取得した文書」のうち,被処分者の氏名等(平成28年度(情)答申第6号(平成28年9月1日答申)
→ 「原判断庁が本件各対象文書のうち不開示としたのは,①被処分者の氏名,②級号俸,③事件番号,④刑事裁判との関係欄の年月日,⑤具体的な事件に係る期日の月日,⑥事件当事者の呼称,⑦書証番号,⑧被処分者による行為の月日(同人が自己の事務の誤りに気付いたり,認識した月日を含む。)及び⑨被処分者が誤って作成した期日呼出状に記載された期日の年月日の情報(以下「本件不開示情報」という。)である。
本件各対象文書記載の情報(文書2の書式に相当する情報を除く。)は,全体として被処分者を識別することができることとなる情報(法5条1号)に相当する情報であるが,そのうち本件不開示情報以外の情報は,「懲戒処分の公表指針」に従って,報道機関を通じて公表した情報であることから,慣行として公にされる情報(法5条1号イ)に相当する情報であり,本件不開示情報は,同号ただし書イ,ロ及びハのいずれにも相当しない情報である。さらに,本件不開示情報のうち,上記②及び④を除く情報は,事件当事者を識別することができることとなる情報若しくは個人の権利利益を害するおそれのある情報(法5条1号)又は法人等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある情報(法5条2号イ)に相当する情報である。」そうです。

2 平成28年5月27日の,小池裕最高裁判所判事の水戸地方裁判所視察に関する視察日程案,視察日程細目(平成28年度(情)答申第14号(平成28年10月24日答申)
→ 「最高裁判所は,司法権及び司法行政権の最高機関であるから,最高裁判所判事が要人として犯罪行為等の標的となることは否定できない。そして,憲法週間における最高裁判所判事による下級裁判所の視察が毎年行われるものであることも考慮すると,視察の際の日程等の詳細が公になると,それを蓄積して移動手段や日程等の傾向を分析され,今後の視察の行動を予測されるなどして,犯罪行為等の実行に利用されるおそれがある」そうです。

3 特定の裁判官の退官願のうち,作成年月日,当該裁判官の署名及び押印並びに退官願の理由を記載した部分(平成28年度(情)答申第20号(平成29年2月24日答申)
→ 「本件対象文書を作成した年月日及び退官を願い出る理由については,官報等により公表されているものではないから,法5条1号ただし書イに相当するものではない」そうです。

4 特定裁判官が有報酬兼業として自分名義の著作を販売することを許可してもらうために,東京高等裁判所との間で授受した文書(平成28年度(情)答申第24号(平成29年3月17日答申)
→ 「裁判所法52条2号は,裁判官は,在任中,最高裁判所の許可のある場合を除いて,報酬のある他の職務に従事することができない旨規定しているから,特定の裁判官が報酬のある他の職務に従事することの許可を求めた文書の存否を答えることは,当該裁判官が報酬のある他の職務に従事し,又は従事しようとしている事実の有無に係る情報を明らかにすることと同様の結果を生じるものと認められる。
そして,特定の裁判官が報酬のある他の職務に従事し,又は従事しようとしているか否かという情報は,当該裁判官の個人に関する情報であって,当該情報に含まれる氏名等により当該裁判官という特定の個人を識別することができるものに当たると認められる。そして,当該情報は,法5条1号ただし書イに規定する法令の規定により又は慣習として公にされ,又は公にすることが予定されている情報であるとは認められないし,同ハに規定する当該裁判官の職務遂行に係る情報であるとも認められない。したがって,当該情報は,法5条1号の不開示情報に相当すると認められる。
この点について,苦情申出人は,当該裁判官が,自分名義の著作を販売していることを自身のツイッターで宣伝していることをもって,慣行として公にされている情報であると主張するが,苦情申出人が主張するような事実をもって当該裁判官が申出に係る許可を受けたか否かに係る情報が,慣行として公にされているとは認められない。さらに,他に裁判官が報酬のある他の職務に従事し,又は従事しようとしているか否かを公表する慣行があると認めるに足りる事情はない。したがって,苦情申出人の上記主張は失当である。」そうです。

5 岡口喜一裁判官に対する厳重注意に関する文書(平成29年度(情)答申第2号(平成29年4月28日答申)
→ 「本件注意は,下級裁判所事務処理規則21条に基づくものであり,同条は,「高等裁判所長官(略)は,所属の裁判所の監督に服する裁判所職員に対し,事務の取扱及び行状について注意を与えることができる。」と規定している。
上記の最高裁判所事務総長の説明及び口頭説明の結果を踏まえるならば,下級裁判所事務処理規則21条に基づく注意は,事務の取扱いや行状についての改善を目的として行うものであって,懲戒処分のような制裁的実質を含んだ処分とは異なるものであると判断される。
そして,裁判官については,憲法上その独立が強く保障されており,懲戒処分も,裁判官分限法に基づく分限裁判によって行われることとされていて(裁判所法48条,49条参照),下級裁判所事務処理規則21条に基づく注意がされたとしても,そのことにより,当該裁判官に具体的な不利益が課されることは,予定されていない。また,裁判官の懲戒である分限裁判が確定したときは,官報に掲載して公告されることとされている(裁判官の分限事件手続規則9条)のに対し,下級裁判所事務処理規則21条に基づく注意は,公表が予定されていない。
下級裁判所事務処理規則21条に基づく裁判官に対する注意が上記のような性質のものであることからすると,その運用自体が裁判官の個人的事情に関わる機微なものであるというべきであり,その手続きについては,当該裁判官の行状等の改善に対する実効性を確保する目的で,適切な時期に効果的な形でされるべきであるという観点等から慎重であるべきものと認められる。したがって,司法行政手続の中でその運用においてどのような手続がとられるのか,文書が作成されるのか,作成されるとしてどのような文書が作成,管理,保存されるのかなどについて,本来,これを公にすると,下級裁判所事務処理規則21条に基づく注意という人事管理に係る事務に関与する判断権者及び職員に対し,文書の作成,管理,保存について好ましくない影響が生ずる等,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあると認められる。
そうすると,本件については,本件対象文書の存否を答えるだけで,上記のような人事管理に係る事務の遂行に支障を及ぼすおそれがある情報を開示することになるというべきであり,当該情報は,法5条6号ニに規定する不開示情報に相当する情報であるから,原判断においては,取扱要綱記第5に基づき,本件対象文書の存否を明らかにしないで不開示とすべきであったと認められる。」そうです。
→ 東京高裁長官が下級裁判所事務処理規則21条に基づき注意を与える際の事務手続が分かる文書が存在しないことは,平成29年3月23日付の司法行政文書不開示通知書によって明らかにされています。

6 名古屋高裁がマスコミに提供した,名古屋高裁平成28年11月28日判決(被告人は藤井浩人美濃加茂市長)の判決要旨(平成29年度(情)答申第4号(平成29年5月25日答申)
→ 「判決要旨の作成は,報道機関からの申請を受けて対応するのが一般的であるところ,この判決要旨の交付申請は,報道機関の取材活動そのものである。当該申請が個別の記者の独自の取材活動の一環として行われた場合はもとより,幹事社を経由しての司法記者クラブ全体からの申請で行われた場合であっても,判決要旨が作成されたことが公開され,報道機関の取材活動の存在,内容が推知されてしまうことは,取材源の秘匿を基本原則とする報道機関と裁判所との信頼関係を大きく損なうおそれがあり,ひいては,裁判報道に係る広報事務の遂行を困難にする可能性が高い。」そうです。

7 文書管理簿(投書等)のうち,内容,提出方法及び備考の各欄(平成29年度(情)答申第5号(平成29年6月9日答申)
→ 「宛先欄の不開示部分のうち個人名以外が記載されている部分には,東京高等裁判所の特定部署等の名称が記載されており,これらの記載部分は,投書等の内容を推測させるものであるから,公にしたときには投書等を行った個人の権利利益を害するおそれがあるものと認められる。
また,内容欄には,投書等の概要として個人の氏名,投書等を行った者の意見や信条等が記載されており,このうち個人の氏名は,個人識別部分である。その他の記載部分については,意見や信条等が記載されていることからすれば,公にしたときには個人の権利利益を害するおそれがあるものと認められる。
さらに,提出方法等欄には,東京高等裁判所の特定部署等に関する記載及び投書等が郵送で提出された場合の消印が押された郵便局名の記載があり,このうち特定部署等に関する記載については,宛先欄と同様に判断すべきである。また,郵便局名の記載については,投書等を行った者の最寄りの郵便局である蓋然性があると考えられるところ,当委員会庶務に調査させた結果によれば,人口の少ない地域に複数の郵便局が存在する例もあることから,投書等を行った者の住居を推測することが可能である。よって,この記載も,個人識別部分に該当すると判断すべきである。
さらに,備考2欄の不開示部分には,東京高等裁判所を含む複数の裁判所の特定部署に関する記載や,投書等を行った者に関する情報等の記載があり,これらの記載については,宛先欄及び内容欄と同様に判断すべきである。」そうです。

8 札幌高裁が所持品検査の実施に関して民間業者との間で締結している契約書(平成30年度(情)答申第1号(平成30年6月15日答申)
→ 「当委員会において本件開示文書を見分した結果,本件不開示部分には,警備業務の具体的な内容や警備体制が記載されていることが認められる。このような記載内容に照らすならば,本件不開示部分を公にすることにより,警備レベルの低下を招くことになり,警備事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるという最高裁判所事務総長の上記説明の内容が不合理とはいえない。」そうです。

9 大阪高裁が入庁検査の実施に関して民間業者との間で締結している契約書(平成30年度(情)答申第2号(平成30年7月20日答申)
→ 「当委員会において本件開示文書を見分した結果,本件不開示部分には,警備業務の具体的な内容や警備体制が記載されていることが認められる。このような記載内容に照らせば,本件不開示部分を公にすることにより,警備レベルの低下を招くことになり,警備事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるという最高裁判所事務総長の上記説明の内容が不合理とはいえない。」そうです。

10 東京高等裁判所において特定の裁判官のツイートに関する抗議を受けた際に作成し,又は取得した文書(平成30年度(情)答申第9号(平成30年9月21日答申)
→ 「本件開示申出の内容からすれば,本件開示申出文書の存否を明らかにすると,特定の裁判官が私的にツイートした内容に関して第三者から抗議がされた事実の有無が公になると認められる。このような情報は,法5条1号に規定する不開示情報に相当する。苦情申出人は,上記の事実は慣行として公にされていると主張するが,最高裁判所事務総長の説明によれば,裁判所として公表したことはないとのことであり,同号ただし書イに相当するとは認められない。」そうです。

11 特定の裁判官がツイッターに投稿した件に関して東京高等裁判所が作成した全文書(平成30年度(情)答申第22号(平成31年3月15日答申)
→ 「本件対象文書を見分した結果によれば,本件対象文書の全体について,氏名等の個人識別情報のほか,下級裁判所事務処理規則21条に基づく注意に関する情報が記録されていることが認められる。そこで検討すると,同条に基づく注意は,事務の取扱いや行状についての改善を目的として行うものであって,懲戒処分のような制裁的な効果を伴わない措置であると解される。また,同条に基づく注意を実施する手続等に関する定めはない。そうすると,同条に基づく注意の性質上,その運用自体が個人的事情に関わる機微なものというべきであり,本件対象文書中の同条に基づく注意に関する情報については,その内容に照らして,これを開示することにより,人事管理に係る事務について好ましくない影響が生ずる等,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるものと認められる。」そうです。

12 東京高等裁判所が作成し,又は取得した同裁判所に所属する裁判官のツイート内容を印刷した文書(平成30年度(情)答申第23号(平成31年3月15日答申)
→ 「最高裁判所事務総長の上記説明によれば,本件開示申出文書は,裁判官の私的領域における言動についての文書であり,裁判官という自己の身分を明らかにした上での私的領域における言動については,その内容次第では裁判所又は裁判官の信用の失墜につながり得ることから,人事上の措置等に関係する文書となり得る性質を有するものであって,本件開示申出文書の保有の有無を明らかにすると,人事上の措置の必要性から作成,取得,管理,保存される文書の存否や内容を推認ないし憶測させることになり,人事管理に係る事務に関与する判断権者及び職員に対し,文書の作成,取得,管理,保存について好ましくない影響が生ずる等,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるとのことである。本件開示申出の内容からすれば,このような説明の内容が不合理とはいえず,本件開示申出文書の保有の有無を明らかにすることにより,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあると認められる。」そうです。

13 東京高等裁判所長官,東京高等裁判所事務局長及び特定の東京高等裁判所判事の間で特定の日時に行われた会話に関する文書(平成31年度(情)答申第3号(平成31年4月19日答申)
→ 「本件開示申出文書が特定の日時に東京高等裁判所長官,東京高等裁判所事務局長及び特定の東京高等裁判所判事の間で行われた会話に関する文書であることを踏まえれば,本件の開示申出に係る会話は人事管理に関する内容となり得るものといえ,本件開示申出文書の存否を明らかにすると公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるという最高裁判所事務総長の上記説明の内容が不合理とはいえない。」そうです。

14 東京高等裁判所が特定の裁判官のブログに関して作成し,又は取得した文書(平成31年度(情)答申第4号(平成31年4月19日答申)
→ 「本件開示申出の内容からすれば,本件開示申出文書の存否を明らかにすると,特定の裁判官が特定のブログを管理しているという個人に関する情報が公になると認められる。
また,最高裁判所事務総長は,本件開示申出文書の存否を明らかにすると,人事上の措置等の必要性から作成,取得,管理又は保存がされる文書の存否や内容を推認させ,又は憶測させることになり,人事管理に係る事務に関与する判断権者等に対し,文書の作成,取得,管理又は保存について好ましくない影響が生ずること等によって,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあると説明する。本件開示申出文書が裁判官の私的領域における言動についての文書であることを踏まえれば,私的領域における言動については,本来はその個人の領域に属するものではあるが,その内容次第では裁判所の信用の失墜につながり得ることから,人事上の措置等に関係する文書となり得る性質を有するものである。よって,そのような性質を有する本件開示申出文書の存否を明らかにすると公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるという最高裁判所事務総長の上記説明の内容が不合理とはいえない。」そうです。

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