目次
1 被疑者カルロス・ゴーンの身柄拘束及び接見禁止決定は個人識別情報として不開示情報であること
2 被疑者カルロス・ゴーンの勾留理由開示に関する文書は個人識別情報として不開示情報であること
3 被告人カルロス・ゴーンに関する保釈請求及び準抗告は個人識別情報として不開示情報であること
4 被疑者カルロス・ゴーンが平成31年4月4日に再逮捕されたことは個人識別情報として不開示情報であること
5 被疑者カルロス・ゴーンの刑事事件に関して,平成30年12月21日頃に東京地裁が公表した文書は個人識別情報に該当すること
6 関連記事その他
1 被疑者カルロス・ゴーンの身柄拘束及び接見禁止決定は個人識別情報として不開示情報であること
(1) 平成31年3月15日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には,「(3) 最高裁判所の考え方及びその理由」として以下の記載があります。
ア 申出人が,原判断庁に対し,上記(1)の文書(以下「本件文書」という。)の開示を求めたのに対し,原判断庁は,上記(2)のとおり不開示とした。これに対し,申出人は,被疑者カルロス・ゴーンに関する身柄拘束及び接見禁止決定は,東京地方裁判所又は東京地方検察庁によって公にされている事実であるから,法第5条第1号に定める不開示情報に相当しない旨の主張をして本件苦情を申し出た。
イ 本件開示申出の内容からすれば,本件文書の存否を明らかにすると,特定の個人の身柄拘束及び接見禁止決定の事実の有無が公になる。この情報は,法第5条第1号に規定する個人識別情報に相当する。
この点について,苦情申出人は, 当該特定の個人の身柄拘束及び接見禁止決定は,東京地方裁判所又は東京地方検察庁によって公にされている事実であるから,法第5条第1号に定める不開示情報に相当しない旨主張する。しかし, 当該特定の個人の身柄拘束及び接見禁止決定に関する報道は,報道機関の責任において当該報道がされたものであり,それをもって,上記情報が「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」とはいえない。
ウ そうすると,本件文書につき,その存否を明らかにしないで不開示とした原判断は相当である。
(2) 本件文書は,「被疑者カルロス・ゴーンの身柄拘束及び接見禁止決定に関与している裁判官の氏名が分かる文書」です。
2 被疑者カルロス・ゴーンの勾留理由開示に関する文書は個人識別情報として不開示情報であること
(1) 平成31年3月15日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には,「(3) 最高裁判所の考え方及びその理由」として以下の記載があります。
ア 申出人が,原判断庁に対し,上記(1)の文書(以下「本件文書」という。)の開示を求めたのに対し,原判断庁は,上記(2)のとおり不開示とした。これに対し, 申出人は, 「被疑者カルロス・ゴーンに関する勾留理由開示公判は,東京地裁又は東京地検によって公にされている事実であるから,法5条1号に定める不開示情報に相当しない。」との主張をして本件苦情を申し出た。
イ 本件開示申出の内容からすれば,本件文書の存否を明らかにすると,特定の個人の勾留理由開示公判に関する事実の有無が公になる。この情報は,法第5条第1号に規定する個人識別情報に相当する。
この点について,苦情申出人は, 当該特定の個人の勾留理由開示公判は,東京地方裁判所又は東京地方検察庁によって公にされている事実であるから,法第5条第1号に定める不開示情報に相当しない旨主張する。しかし, 当該特定の個人の勾留理由開示公判に関する報道は,報道機関の責任において当該報道がされたものであり,それをもって,上記情報が「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」とはいえない。
ウ そうすると,本件文書につき,その存否を明らかにしないで不開示とした原判断は相当である。
(2) 本件文書は,「平成31年1月8日にあったカルロス・ゴーンの勾留理由開示公判に関して,東京地裁事務局が作成し,又は取得した文書(大使館職員等に対する傍聴席の優先割当に関する文書を含むものの,一般の傍聴者から回収した裁判所傍聴券は除く。)」です。
3 被告人カルロス・ゴーンに関する保釈請求及び準抗告は個人識別情報として不開示情報であること
(1) 平成31年3月15日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には,「(3) 最高裁判所の考え方及びその理由」として以下の記載があります。
ア 申出人が,原判断庁に対し,上記(1)の文書(以下「本件文書」という。)の開示を求めたのに対し,原判断庁は,上記(2)のとおり不開示とした。これに対し, 申出人は, 「被告人カルロス・ゴーンに関する保釈請求及び準抗告は,東京地裁又は東京地検によって公にされている事実であるから,法5条1号に定める不開示情報に相当しない。」との主張をして本件苦情を申し出た。
イ 本件開示申出の内容からすれば,本件文書の存否を明らかにすると,特定の個人の保釈請求及び準抗告の事実の有無が公になる。この情報は,法第5条第1号に規定する個人識別情報に相当する。
この点について,苦情申出人は,当該特定の個人の保釈請求及び準抗告は,東京地方裁判所又は東京地方検察庁によって公にされている事実であるから,法第5条第1号に定める不開示情報に相当しない旨主張する。しかし, 当該特定の個人の保釈請求及び準抗告に関する報道は,報道機関の責任において当該報道がされたものであり,それをもって,上記情報が「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」とはいえない。
ウ そうすると,本件文書につき,その存否を明らかにしないで不開示とした原判断は相’当である。
(2) 本件文書は,「被告人カルロス・ゴーンの保釈請求及び準抗告に関与している裁判官の氏名が分かる文書(例えば,既済事件一覧表の抜粋)」です。
4 被疑者カルロス・ゴーンが平成31年4月4日に再逮捕されたことは個人識別情報として不開示情報であること
(1) 令和元年6月26日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には,「(3) 最高裁判所の考え方及びその理由」として以下の記載があります。
ア 申出人が,原判断庁に対し,上記(1)の文書(以下「本件文書」という。)の開示を求めたのに対し,原判断庁は,上記(2)のとおり不開示とした。これに対し, 申出人は,平成31年4月4日に被疑者カルロス・ゴーンが東京地方検察庁に逮捕された事実については,東京地方検察庁が報道機関に説明文書を配布したようであるし,東京地方検察庁次席検事が公式の会見で説明している事実であるため,慣行として公にされている事実である旨主張して,本件苦情を申し出た。
イ 本件開示申出の内容からすれば,本件開示申出に係る文書の存否を明らかにすると,特定の個人の逮捕に関する事実の有無が公になる。この情報は,法第5条第1号に規定する個人識別情報に相当する。
この点について,苦情申出人は, 当該特定の個人が東京地方検察庁に逮捕されたことは,慣行として公にされている事実であるから,法第5条第1号に定める不開示情報に相当しない旨主張するものと解される。しかし,当該特定の個人の逮捕に関する報道は,報道機関の責任においてなされたものであり,それをもって上記情報が「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」であるとはいえない。
ウ そうすると,本件文書につき,その存否を明らかにしないで不開示とした原判断は相当である。
(2) 本件開示申出に係る文書は,「平成31年4月4日に執行された,被疑者カルロス・ゴーンの逮捕状を出した裁判官の氏名が分かる文書(例えば,既済事件一覧表の抜粋)」です。
5 被疑者カルロス・ゴーンの刑事事件に関して,平成30年12月21日頃に東京地裁が公表した文書は個人識別情報に該当すること
(1) 令和元年6月26日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には,「(3) 最高裁判所の考え方及びその理由」として以下の記載があります。
ア 申出人が,原判断庁に対し,上記(1)の文書(以下「本件文書」という。)の開示を求めたのに対し,原判断庁は,上記(2)のとおり不開示とした。これに対し, 申出人は, 「少なくとも,平成30年12月21日に公表した,東京地検の準抗告を退けた理由の要旨が書いてある文書は,不開示情報に該当しないといえる。」と主張して,本件苦情を申し出た。
イ 本件開示申出の内容からすれば,本件開示申出に係る文書の存否を明らかにすると,特定の個人の刑事事件に関する事実の有無が公になる。この情報は,法第5条第1号に規定する個人識別情報に相当する。
この点について,苦情申出人は,少なくとも, 当該特定の個人の刑事事件に関する東京地方検察庁の準抗告が退けられた理由の要旨は,平成30年12月21日に公表されているから,法第5条第1号に定める不開示情報に相当しない旨主張するものと解される。しかし, 当該特定の個人の準抗告に関する報道は,報道機関の責任においてなされたものであり,それをもって上記情報が「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」であるとはいえない。
ウ そうすると,本件文書につき,その存否を明らかにしないで不開示とした原判断は相当である。
(2) 本件開示申出に係る文書は,「平成30年11月以降,東京地裁事務局が司法行政目的で取得したカルロス・ゴーンの刑事事件に関する文書(例えば,平成30年12月21日に公表した,東京地検の準抗告を退けた理由の要旨が書いてある文書)」です。
日本では記者が必死に捜査関係者に食い込んで貰おうとする資料が、アメリカではクリック一つで手に入る。国民の知る権利に応えるものだから。記者クラブなどがやるべきは、クラブへの情報提供の強化よりも、こういう万人に開かれた情報公開の流れを進めることだと思う。https://t.co/LYIRzEU8gM
— 古田大輔 (@masurakusuo) March 5, 2021
6 関連記事その他
(1) カルロス・ゴーンに関する刑事手続の存在は,東京地検が報道機関に公表している事実であると思います(「東京地検が,報道機関に対し,平成31年4月4日のカルロス・ゴーンの逮捕に関して提供した文書は,翌日までに廃棄されたこと等」参照)。
(2) カルロス・ゴーンが代表取締役であった当時の住所は誰でも分かることについては,アゴラHPの「ゴーン容疑者の住所がダダ洩れ!晒し過ぎの登記簿制度」(平成30年11月23日付)を参照してください。
(3) 自由権規約14条1項は以下のとおりです。
すべての者は、裁判所の前に平等とする。すべての者は、その刑事上の罪の決定又は民事上の権利及び義務の争いについての決定のため、法律で設置された、権限のある、独立の、かつ、公平な裁判所による公正な公開審理を受ける権利を有する。報道機関及び公衆に対しては、民主的社会における道徳、公の秩序若しくは国の安全を理由として、当事者の私生活の利益のため必要な場合において又はその公開が司法の利益を害することとなる特別な状況において裁判所が真に必要があると認める限度で、裁判の全部又は一部を公開しないことができる。もっとも、刑事訴訟又は他の訴訟において言い渡される判決は、少年の利益のために必要がある場合又は当該手続が夫婦間の争い若しくは児童の後見に関するものである場合を除くほか、公開する。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 保釈保証金の没取
・ 保釈中の被告人が罪証隠滅に成功した事例等に関する文書は存否応答拒否の対象となること
平成31年4月26日付の東京地検の不開示通知書によれば,東京地検が,報道機関に対し,平成31年4月4日のカルロス・ゴーンの逮捕に関して提供した文書は,翌日までに廃棄されました。 pic.twitter.com/pok379ogBN
— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) May 7, 2019
刑事弁護を実際にやってみて痛感した日本の刑事手続の問題点のひとつに検察官の訴追裁量が広範すぎて、かつ、その基準がほとんどブラックボックスすぎて統制しようがないという点が挙げられますね。
— 弁護士戸舘圭之オフィシャル/とってぃ/袴田事件弁護団 (@todateyoshiyuki) February 6, 2022