相続又は遺贈により取得した不要な土地を国に引き取ってもらう相続土地国庫帰属制度が令和5年4月27日に施行され,制度の利用は年々増えている。もっとも,弁護士が依頼者に助言する際に見落とされがちなのは,土地が国庫に帰属した「その後」に何が起きるのか,という点である。本記事は,不動産が国庫に帰属した後の管理・処分の法的枠組みと実際を整理し,弁護士が手続の選択及び依頼者への説明を行う際の検討事項を示すものである。個別の事案では,土地の物理的状況及び権利関係により結論が異なる。
第1 国庫帰属した不動産をめぐる二つの系統と本記事の射程
1 相続土地国庫帰属法による帰属と民法959条による帰属の区別
「不動産が国庫に帰属する」という現象には,別系統の複数のルートがある。これを最初に切り分けておかないと,適用される手続及び通達を取り違える。
相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和3年法律第25号。以下「相続土地国庫帰属法」という。令和5年4月27日施行)は,相続又は相続人に対する遺贈により土地を取得した者が,法務大臣の承認を受けてその所有権を能動的に国庫へ帰属させる制度を定める。
これに対し,民法959条は,相続人のあることが明らかでない相続財産について,相続財産清算人による清算及び特別縁故者への分与を経てなお処分されなかった残余財産が国庫に帰属する,という別の場面を定める。
両者は,帰属の契機も,帰属の時期も,帰属後の事務を規律する財務省の通達も異なる。相続税の納付に代えて不動産を国に納める相続税の物納は,これらとさらに別の系統であり(後記第5の2),三者を混同しないことが出発点となる。
| 区分 | 相続土地国庫帰属法 | 民法959条(相続人不存在) |
|---|---|---|
| 契機 | 相続等で取得した者の承認申請 | 相続人不存在による残余財産の帰属 |
| 帰属の時期 | 負担金の納付時(法11条1項) | 相続財産清算人からの引継完了時(実務・後記第4の1) |
| 帰属後の財務省通達 | 財理第1193号(令和5年4月20日) | 財理第3992号(令和2年12月14日) |
2 帰属後はいずれも「普通財産」として管理・処分される
国有財産法3条は,国有財産を行政財産と普通財産とに分類し,同条3項は「普通財産とは,行政財産以外の一切の国有財産をいう」と定める。国庫に帰属した土地は,国が公用・公共用等に供すると決定しない限り,定義上当然に普通財産となる。
そして同法6条は「普通財産は,財務大臣が管理し,又は処分しなければならない」と定める。いずれのルートで帰属した不動産も,帰属後は同法20条以下の同一の枠組みで管理・処分される。この点が「その後」を理解する共通の土台であり,第3で扱う。
第2 相続土地国庫帰属法により帰属した不動産のその後
1 帰属の時期と管理機関
相続土地国庫帰属法11条1項は,「承認申請者が負担金を納付したときは,その納付の時において,第五条第一項の承認に係る土地の所有権は,国庫に帰属する」と定める。所有権が移転するのは承認時ではなく,負担金の納付時である。
負担金は,同法10条1項により「国有地の種目ごとにその管理に要する十年分の標準的な費用の額を考慮して政令で定めるところにより算定した額」とされる。同条3項は,負担金の額の通知を受けた日から30日以内に納付しないときは承認が効力を失う旨を定めており,納付は帰属の効力発生要件を兼ねる。
帰属後の管理機関は一様ではない。同法11条2項は,法務大臣は土地が国庫に帰属したときは直ちに財務大臣に通知し,「当該土地が主に農用地又は森林として利用されていると認められるとき」は農林水産大臣に通知しなければならないと定める。すなわち,宅地その他の土地は財務大臣(財務局)が,主に農用地又は森林として利用される土地は農林水産大臣が管理する。依頼者から「国のどこが管理するのか」を問われた場合,地目により管理機関が分かれることを説明できる。
2 帰属後に残る法的リスク──承認の取消しと損害賠償責任
国庫帰属は「手放せば完全に終わる」ものではない。承認申請者側には,帰属後も二つの法的リスクが残る。
第1に,承認の取消しである。相続土地国庫帰属法13条1項は,「承認申請者が偽りその他不正の手段により第五条第一項の承認を受けたことが判明したとき」は,法務大臣が承認を取り消すことができると定める。同条2項は取消しに当たり当該土地を所管する各省各庁の長の意見を聴くものとし,同条3項は,取消しに係る土地の所有権を取得した者又は所有権以外の権利の設定を受けた者があるときは,これらの者の同意を得なければならないと定める。承認が取り消されれば,帰属に基づく所有権移転登記は抹消される。
第2に,損害賠償責任である。同法14条は,承認の時において却下要件(2条3項各号)又は不承認要件(5条1項各号)のいずれかに該当する事由があったことによって国に損害が生じた場合において,「当該承認を受けた者が当該事由を知りながら告げずに……承認を受けた者であるとき」は,国に対して損害賠償責任を負うと定める。
したがって,土壌汚染,地下埋設物,境界に関する争いといった要件該当事由を認識しながら秘して承認を得た場合には,帰属後も取消し及び損害賠償のリスクが残る。依頼者に対して「不利な事情は伏せておけばよい」といった助言をすることは,このリスクに照らして相当でない。財務省理財局長通達(財理第1193号)は,財務局が承認の取消しについて法務局に協議を申し入れる事務,及び損害賠償請求を検討する際に法務局へ承認申請者の認識等の資料提供を依頼する事務を定めており,制度運用上も帰属後の追跡的な対応が予定されている。
3 帰属した不動産の管理・処分の実際と評価方法
条文上の枠組みとは別に,実際に帰属した土地がどのように扱われているかは,財政制度等審議会国有財産分科会に財務省理財局が提出した資料及び法務省の統計から把握できる。ここでは公表資料により確認できる範囲の数値のみを示す。
(1) 売却実績と帰属地の性質
法務省が公表する統計(令和8年6月30日現在の速報値)によれば,申請件数は5698件,帰属件数は2885件,却下件数は83件,不承認件数は93件,取下げ件数は1063件である。取下げのうち562件は,自治体・国の機関による有効活用の決定,隣接地所有者からの引受けの申出,農地としての活用の見込み等,有効活用の見込みによるものとされている。
財務省理財局が国有財産分科会に提出した資料(令和8年2月27日及び同年6月17日)は,財務省所管分について,制度開始以降,売却に至った土地は現時点でない旨を明記し,帰属地は「市場性に乏しいものが多く,長期間保有し続けることが想定される」としている。同資料によれば,財務省所管の帰属地の約85パーセントが,面積1000平方メートル以下かつ台帳価格500万円以下の土地である。帰属地は,宅地その他を財務省が,農用地及び森林を農林水産省が管理するため,件数の内訳も地目により分かれる。
(2) 簡易な評価手法と段階的な価格の見直し
財政法9条1項は,「国の財産は,法律に基く場合を除く外,これを交換しその他支払手段として使用し,又は適正な対価なくしてこれを譲渡し若しくは貸し付けてはならない」と定める。国庫帰属地を売り渡す場合も,適正な対価(時価)を求める必要がある。
国有財産分科会の資料(令和8年6月17日)によれば,帰属地の評価は,財産評価基本通達(国税庁)に基づく相続税評価額を基礎として算定される。一定の面積基準及び金額基準以下の土地(宅地は面積1000平方メートル以下かつ概算評価額5000万円以下,宅地以外は概算評価額3000万円以下)については,鑑定評価ではなく職員による簡易な評価手法が適用され,同資料の令和8年3月末時点の件数1586件のうち,基準を超えて鑑定評価を要するものは28件(1.8パーセント)とされている。
また,現状有姿による売買を導入することに伴い,測量・境界確定・地下埋設物調査等を行わないことによるリスクの移転を反映して,評価額を標準として30パーセント減額(残価率70パーセント)し,その後も需要がない場合には,3か月ごとに10パーセントずつ減額し,残価率の下限を10パーセントとする段階的な見直しが示されている。これらは適正な対価の確保と早期の有効活用との調整として整理されているが,適正な対価の原則(財政法9条)と大幅な減額との関係は,運用上の調整に委ねられている面がある。
第3 普通財産としての管理・処分の法的枠組み
1 処分の手段と貸付・交換・譲与・信託
普通財産の処分手段は,国有財産法20条1項が「貸し付け,管理を委託し,交換し,売り払い,譲与し,信託し,又は私権を設定することができる」と列挙する(出資は特別法がある場合に限る。同条2項)。国庫帰属地の「その後」は,この列挙のいずれかによって処理される。
貸付けについては,同法21条が用途に応じた貸付期間(植樹目的は60年以内,建物所有目的で借地借家法22条1項の借地権を設定するときは50年以上,その他の土地は30年以内,建物その他の物件は10年以内)を定める。無償による貸付けは,同法22条により,地方公共団体等に対し,緑地・公園・ため池・墓地・ごみ処理施設等の用途で行う場合等に限られ,営利又は利益をあげる経営の用に供する場合には行うことができない。
交換は同法27条が公用・公共用・公益事業の用に供するため必要がある場合に限り認め,価額の差額が高価なものの価額の4分の1を超えるときは認めない。譲与は同法28条が火葬場・墓地・ごみ処理施設・と畜場等として公共の用に供する場合等に限定する。信託は同法28条の2が土地に限って認め,同条2項はあらかじめ財政制度等審議会又は地方審議会への諮問を要するとしている。売払い又は譲与をする場合には,同法29条により用途及び供用の期日・期間を指定し,同法31条により売払代金を原則として引渡前に納付させる(公共団体等には5年以内の延納特約が可能)。
これらの規定から,国庫帰属地の処分は,無償譲渡や無償貸付けが原則として広くは認められず,公共的用途又は限定された相手方に対してのみ優遇的な処理が可能である,という枠組みにあることが読み取れる。
2 適正な対価の原則と競争入札・随意契約
財政法9条1項の適正な対価の原則を受けて,契約手続については会計法29条の3が,売買等の契約は原則として公告して競争に付さなければならない(一般競争入札)と定める(同条1項)。国有地の売却も原則として一般競争入札による。
もっとも,同条4項は,契約の性質・目的が競争を許さない場合等に政令の定めるところにより随意契約によることができるとし,同条5項は予定価格が少額である場合等に指名競争又は随意契約を認める。これを受けた予算決算及び会計令99条は随意契約によることができる場合を列挙しており,土地の処分に関わるものとして,予定価格が100万円を超えない財産を売り払うとき(同条5号),公共用・公用・公益事業の用に供するため必要な物件を直接に公共団体又は事業者に売り払い・貸し付け・信託するとき(同条21号),土地等を特別の縁故がある者に売り払い又は貸し付けるとき(同条22号)が定められている。
国有財産分科会の資料が示す「隣接土地所有者を相手方とする場合又は予定価格が100万円以下の売却における随意契約の活用」は,予算決算及び会計令99条5号・22号に対応する運用として理解できる。
3 評価及び台帳価格に関する規律
国有財産法施行令21条は,国有財産を新たに台帳に登録する場合の価格について,土地は「類地の時価を考慮して算定した金額」により,租税の物納に係るものは収納価格によると定める。同施行令23条は,各省各庁の長が毎会計年度末の現況において財務大臣の定めるところにより評価し,その評価額により台帳価格を改定しなければならないと定める。
処分価格の評価については,財務省理財局長通達「国有財産評価基準について」(平成13年3月30日財理第1317号)が評価及び審査の手順を定め,原則として鑑定評価等により適正な対価(評定価格)を求めるとしつつ,経済性の低い財産については簡易な評価(特例評価)を認めている。第2の3(2)で述べた相続土地国庫帰属地に対する職員評価及び段階的な減額は,この簡易評価の枠組みの中に位置付けられる運用である。
第4 民法959条により帰属した不動産のその後
1 残余財産の国庫帰属と財務局への引継手続
民法959条は「前条の規定により処分されなかった相続財産は,国庫に帰属する」と定める。相続人のあることが明らかでない相続財産は,相続財産清算人による清算及び特別縁故者への分与(同法958条の2。分与の請求は相続人捜索の公告期間満了後3か月以内にしなければならない)を経て,なお残った財産が国庫に帰属する。
この場面の帰属後事務を定めるのが,財務省理財局長通達「国庫に帰属する不動産等の取扱いについて」(令和2年12月14日財理第3992号)である。同通達は,相続財産清算人からの相談を受けた財務局長等が,境界確定・測量・動産の撤去等を依頼した上で,事前協議(財産目録・公図・実測図・登記事項証明書・相続財産清算人の資格証明・特別縁故者分与に関する裁判所の証明書等の提出)を行い,現地調査を経て,国庫帰属不動産引継書及び引継引受財産受渡証書の取交しにより不動産を引き受け,所有権移転登記の嘱託及び国有財産台帳への登載を行う,という手続を定める。
同通達は,基本方針として,国庫帰属不動産の管理費用が国民負担となることを踏まえ,多額の管理費用を要する事案等については相続財産清算人に事案の経緯の説明を求め,実態把握に努めるものとしている。所有権の国庫帰属の時期については,相続財産清算人が国に現実に引き渡した時(引継完了時)に帰属すると解する扱いが実務上採られており,同通達も,引継引受財産受渡証書に記載された受渡日をもって国有財産台帳に登載するものとしている。
2 権利付財産の承継と担保権・農地の取扱い
民法959条による帰属では,被相続人の財産関係がそのまま国に引き継がれるため,権利関係の処理に固有の問題がある。財理第3992号は,これらについて具体的な取扱いを定めている。
賃貸借契約が締結されている不動産については,国は従前所有者の貸主としての地位を承継する。国庫帰属後の貸付料は,引受日から3年間は原則として従前の賃料の額とし,権利者に対しては国からの購入を勧めるとともに,購入が困難な場合には将来一般競争入札に付して第三者に売却する可能性があることを明示するものとされている。
担保権については,同通達は,担保権が設定されたままの不動産は担保権の抹消登記がされるまで清算が終了しておらず,残余不動産に該当しないとする。相続財産法人を当事者とする権利帰属を巡る訴訟が係属している場合も,残余不動産に該当するか未確定であるとして,訴訟で残余不動産であることが確定した後に引受手続を行うものとしている。農地については,農業委員会その他関係者との調整を経た上で処分することとされ,耕作等を行う権利者がいる場合には国が貸主の地位を承継する。
これらの取扱いは,相続財産清算人として業務を行う弁護士が,引継ぎに先立ってどのような資料の準備及び権利関係の整理を求められるかを示すものであり,相続放棄をせず清算に関与する場合の実務に直結する。
第5 制度の到達点と現在の論点
1 立法趣旨と「長期の国有管理」という制度設計
相続土地国庫帰属法1条は,同法の目的を,所有者不明土地が増加していることに鑑み,相続等により土地の所有権を取得した者等がその所有権を国庫に帰属させることができる制度を創設し,所有者不明土地の発生の抑制を図ることにあると定める。
制度設計として重要なのは,帰属後の土地が広く再処分されることを当然の前提とはしていない点である。第204回国会の審議において,政府参考人(法務省民事局長)は,参議院法務委員会(令和3年4月13日)で,国庫帰属した土地は「一般には売払いや貸付けに至らず,国が長期にわたって管理し続けるものが多くなると見込まれ」る旨を答弁している。第2の3(1)で示した売却実績のない状態は,立法時の想定と整合する。
負担金についても,同局長は衆議院法務委員会(令和3年3月23日)で,帰属後は国が永続的に管理する可能性が高く,その費用が長期間にわたり国民全体の負担で賄われること,他方で承認を受けた者は本来負担すべき管理費用を免れることから,実質的公平の観点及び管理を怠って国に転嫁するモラルハザードの防止の観点から一定の負担金を求めるものである旨を説明している。
2 相続税の物納との異同,土地所有権放棄の可否
相続税の物納と相続土地国庫帰属制度は,いずれも不動産が国に移転する点で外見が似るが,制度の目的が異なる。政府参考人(法務省民事局長)は,参議院法務委員会(令和3年4月20日)で,相続税の物納は基本的に財産を換価することが予定されているのに対し,相続土地国庫帰属制度は「土地の換価の可能性をその要件において考慮していない点で物納とは異なる」旨を答弁している。物納不動産は国が売却して歳入とすることが予定されるのに対し,国庫帰属地は換価の見込みを問わずに受け入れ,長期の国有管理も許容される,という設計上の対比がある。
また,土地の所有権を単独で放棄することの可否は,同法によって立法的に解決されておらず,解釈に委ねられている。国会審議では,放棄を認めない解釈が有力になるとの政府の見解が示された。したがって,「不要な土地を放棄したい」という相談に対しては,一般的な所有権放棄の制度があることを前提とせず,本制度,売却,寄附等の個別の手段を検討することになる。
3 施行後5年の検証と運用の見直し
両法案の可決に際し,衆議院法務委員会(令和3年3月30日)及び参議院法務委員会(令和3年4月20日)は,それぞれ附帯決議を付した。その第一項は,経済価値の乏しい相続土地の国庫帰属について,施行後5年間の運用状況を踏まえ,土地所有権の放棄の在り方,承認申請者の要件,国庫帰属後の土地の利活用の方策等について検討し,必要な措置を講ずることを政府に求めている。施行が令和5年4月であることから,この検証はおおむね令和10年頃が目途となり,現在はその検証のためのデータが蓄積されている段階にある。
運用面では,国有財産分科会の資料により,次の見直しが進められていることが確認できる。第1に,令和8年1月から,審査手続における境界確認の通知と併せて,隣接地所有者に対する引取りの意向確認が各法務局等で開始された。第2に,国庫帰属の承認前に民間での処分を促す仕組みとして,宅地建物取引業者の業界団体の相談窓口・ネットワークとの連携が検討されている。第3に,却下要件・不承認要件の該当性について,審査を担う法務局と管理を担う財務局との間で判断の目線が異なる場合があることが課題として認識され,判断基準の統一に向けた関係省庁間の協議が行われている。これらは,本記事の作成時点で確認できる運用の方向性であり,最終的な制度改正の内容は今後の検証を待つ必要がある。
第6 依頼者対応で確認・検討すべき事項
以上を踏まえ,国庫帰属に関する相談を受けた場合に確認・検討すべき事項を整理すると,次のとおりである。個別の事案では,土地の物理的状況及び権利関係により結論が異なるため,資料に基づく確認が必要である。
- 相続人が存在するか。相続人があれば相続土地国庫帰属法のルート(負担金納付時に帰属),相続人不存在であれば民法959条のルート(相続財産清算人による清算・引継ぎ)となり,手続が全く異なる。
- 却下要件(相続土地国庫帰属法2条3項)及び不承認要件(同法5条1項)に該当し得る事情の有無。建物・担保権の登記・境界の不明・土壌汚染・崖・地上及び地下の有体物・災害の危険等を,登記事項証明書,現況,資料により事前にスクリーニングする。
- 要件該当事由がある場合に,これを秘して承認を得ることは,承認の取消し(同法13条)及び国に対する損害賠償責任(同法14条)のリスクを生じさせる。事情聴取の段階で,土地の瑕疵に関する情報を正確に把握する。
- 費用と見込みの説明。審査手数料及び負担金(種目ごとに10年分の標準的管理費を基礎とする)を要すること,帰属後は国が長期に管理し,売却に至らないことが多いことを説明し,過度な期待を避ける。
- 売却・寄附の先行検討。承認前の民間処分や寄附受けが国の運用方針とも整合するため,まず売却可能性及び自治体等への寄附の可否を検討する。
- 民法959条のルートでは,相続財産清算人の選任申立て(家庭裁判所への予納金を含む)及び特別縁故者分与の手続を経る必要があり,財務局への引継ぎに先立って境界確定・測量・動産撤去等の準備を求められる。
- 農用地又は森林として利用される土地は農林水産大臣が管理するため,管理機関が財務局とは異なることを踏まえて手続を確認する。
出典
本記事が根拠とした法令・資料は次のとおりである。法令の条文は,いずれも電子政府の総合窓口(e-Gov)法令検索により現行条文を確認している。
1 法令
- 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和3年法律第25号)1条・2条3項・5条1項・10条・11条・13条・14条
- 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令(令和4年政令第316号)
- 民法(明治29年法律第89号)958条の2・959条
- 国有財産法(昭和23年法律第73号)3条・6条・20条・21条・22条・27条・28条・28条の2・29条・31条・32条・33条
- 国有財産法施行令(昭和23年政令第246号)21条・23条
- 財政法(昭和22年法律第34号)9条
- 会計法(昭和22年法律第35号)29条の3
- 予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)99条
2 通達・公的資料
- 財務省理財局長通達「国庫に帰属する不動産等の取扱いについて」(令和2年12月14日財理第3992号,令和5年12月22日改正)──民法959条ルートの帰属後事務。財務省ウェブサイト
- 財務省理財局長通達「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する事務の取扱いについて」(令和5年4月20日財理第1193号)──相続土地国庫帰属法ルートの財務局側事務。財務省ウェブサイト
- 財務省理財局長通達「国有財産評価基準について」(平成13年3月30日財理第1317号)──評価及び審査の手順。財務省ウェブサイト
- 財務省理財局「相続土地国庫帰属制度への対応」(財政制度等審議会国有財産分科会・令和8年2月27日資料1)。財務省ウェブサイト
- 財務省理財局「相続土地国庫帰属財産の評価」(財政制度等審議会国有財産分科会・令和8年6月17日資料1)。財務省ウェブサイト
- 法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」(令和8年6月30日現在の速報値)──申請・帰属・却下・不承認・取下げの件数。法務省ウェブサイト
- 第204回国会衆議院法務委員会会議録(令和3年3月23日・同月30日)及び参議院法務委員会会議録(令和3年4月13日・同月20日)──立法趣旨,負担金の考え方,物納との異同,附帯決議に関する政府答弁。国立国会図書館国会会議録検索システム
本記事が言及する期間・件数・割合等の数値は,上記の法務省統計及び財務省国有財産分科会資料に記載された公表値であり,いずれも作成時点のものである。統計は速報値であり,最新の数値は各公表機関により更新される。相続財産清算人の予納金の額等,家庭裁判所ごとに運用が異なる事項は,本記事では具体的な金額を示していない。