メインコンテンツへスキップ
       

敷地権の登記がないマンションの相続登記―土地の共有持分と専有部分,登記の目的,課税価格及び登記事項証明書(AI作成)

第1 本記事の対象と結論

1 本記事の対象

本記事は,マンション(区分建物)の専有部分と,その敷地の共有持分を相続した場合に,建物の登記記録に「敷地権」の登記がないときの相続登記の申請方法を扱う。
敷地権の登記があるマンションでは,建物について相続登記をすれば敷地の権利にも効力が及ぶので,申請書は建物一つ分で足りる。
これに対し,敷地権の登記がないマンションでは,建物と土地が別々の登記記録になっており,土地の共有持分についても相続登記をしなければならない。
調査基準日は令和8年9月26日である。
条文はe-Gov法令検索で,法務局の資料は原本を取得して確認した。

2 結論

①敷地権の登記がないマンションでは,専有部分の建物と,敷地の土地の共有持分の両方について相続登記を申請する。
②被相続人が建物を単独で所有し,土地を共有持分で有していた場合,一つの申請書で申請するときの登記の目的は「所有権移転及び○○持分全部移転」とする(○○は被相続人の氏名)。
③土地については,不動産の表示に移転する持分を書く。
④登録免許税の課税価格は,土地については持分の価格であり,建物の価格と合計して1000円未満を切り捨てる。
⑤昭和59年1月1日より前からある専有部分は,法務大臣の指定がない限り,規約で分離して処分することができると定められたものとみなされたため,敷地権の登記がないことがある。
⑥共有者が多い土地の登記事項証明書は頁数が多くなるので,被相続人の持分を確かめるには,所有者証明書や何区何番事項証明書も使える。
⑦遺言書や遺産分割協議書では,建物だけでなく土地の共有持分も漏れなく記載する。

第2 敷地権とは

1 敷地権の意味

区分所有法22条1項は,敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には,区分所有者は,その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができないと定める。
ただし,規約に別段の定めがあるときは,この限りでない(同項ただし書)。

不動産登記法は,区分建物の敷地利用権(登記されたものに限る。)で,区分所有法22条1項本文により専有部分と分離して処分することができないものを「敷地権」といい,建物の表示に関する登記の登記事項としている(不動産登記法44条1項9号)。
登記官は,区分建物の表題部に敷地権を最初に登記するときは,敷地の土地の登記記録に,職権で,その権利が敷地権である旨の登記をする(同法46条)。

2 敷地権の登記があるときの効力

敷地権付き区分建物についての所有権に係る権利に関する登記は,敷地権である旨の登記をした土地の敷地権についてされた登記としての効力を有する(不動産登記法73条1項本文)。
そのため,敷地権の登記があるマンションを相続したときは,建物について相続登記を一件申請すれば,敷地権についても登記がされたのと同じ効力が生じる。
敷地権である旨の登記をした土地には,原則として敷地権の移転の登記をすることができないので(同条2項本文),土地の登記記録に個々の区分所有者の持分移転の登記が重ねられることはない。

3 敷地権の登記がないのはどのような場合か

敷地権は,登記された敷地利用権で,専有部分と分離して処分することができないものに限られる(第2の1)。
そのため,敷地利用権が登記されていない場合や,規約で分離して処分することができると定めている場合には,敷地権の登記はされない。

古いマンションで敷地権の登記がないことが多いのは,昭和58年の区分所有法の改正の経過措置による。
分離処分の禁止を定めた区分所有法22条は,建物の区分所有等に関する法律及び不動産登記法の一部を改正する法律(昭和58年法律第51号)で設けられ,同法は昭和59年1月1日から施行された(同法附則1条)。
同法附則5条本文は,施行の際に現に存する専有部分及びその専有部分に係る敷地利用権(既存専有部分等)には,新しい22条から24条までの規定を,施行の日から5年を超えない範囲内において政令で定める日から適用するとした。
法務大臣は,既存専有部分等に係る建物について,これらの規定の適用を開始すべき日を指定することができる(同法附則6条1項)。
そして,同法附則8条は,法務大臣の指定に係る建物以外の建物の既存専有部分等は,附則5条本文の政令で定める日に,規約で分離して処分することができると定められたものとみなすとした。
したがって,昭和59年1月1日より前からある専有部分で,法務大臣の指定を受けていない建物については,規約で分離して処分することができると定められたものとみなされ,敷地権の登記がされていないことがある。

4 敷地権の登記の有無の確かめ方

建物の登記事項証明書の表題部を見る。
敷地権付き区分建物であれば,表題部に「敷地権の目的である土地の表示」と「敷地権の表示」の欄があり,敷地権の種類と割合が記録されている(不動産登記規則4条3項,別表三)。
これらの欄がなく,一棟の建物の表示と専有部分の建物の表示だけが記録されていれば,敷地権の登記はない。
その場合は,敷地の土地の登記事項証明書を別に取り,権利部(甲区)に被相続人の持分が登記されているかを確かめる。

第3 登記記録の読み方と登記事項証明書の取り方

1 建物の登記記録

専有部分の建物の登記記録には,表題部に一棟の建物の表示(所在,構造,床面積)と専有部分の建物の表示(家屋番号,建物の名称,種類,構造,床面積)があり,権利部(甲区)に所有者が記録されている。
被相続人が専有部分を単独で所有していれば,甲区の最新の所有権の登記に「所有者」として被相続人が記録されている。

2 土地の登記記録

敷地権の登記がないマンションの敷地の登記記録には,権利部(甲区)に,分譲以来の区分所有者の持分の取得と移転が順に積み重なっている。
住戸の数が多いマンションでは,登記事項証明書が数十頁になることも珍しくない。
甲区の各順位番号には,「○○持分一部移転」「○○持分全部移転」等の登記の目的と,取得した共有者の住所・氏名・持分が記録されている。

被相続人の持分を確かめるには,甲区から被相続人の氏名を探し,被相続人が持分を取得した登記の順位番号と持分を控える。
その後の順位番号に,被相続人の持分を移転する登記や,被相続人の持分を目的とする差押え等がないかも確かめる。
持分の分母は,取得の経緯によって順位番号ごとに違うことがあるので,分母と分子をそのまま書き写す。

3 登記事項証明書の種類

不動産登記規則196条1項は,登記事項証明書の種類として次のものを定めている(このほか一棟建物現在事項証明書がある。)。

種類記載される事項
全部事項証明書登記記録に記録されている事項の全部
現在事項証明書登記記録に記録されている事項のうち現に効力を有するもの
何区何番事項証明書権利部の相当区に記録されている事項のうち請求に係る部分
所有者証明書現在の所有権の登記名義人の氏名又は名称,住所等と,登記名義人が二人以上であるときは登記名義人ごとの持分
一棟建物全部事項証明書一棟の建物に属するすべての区分建物の登記記録に記録されている事項の全部

相続登記の申請書を作るために被相続人の持分を確かめるだけであれば,土地について所有者証明書を取れば,現在の共有者とその持分を一覧できる。
被相続人が持分を取得した登記の順位番号が分かっていれば,何区何番事項証明書でその部分だけを取ることもできる。
もっとも,差押えや仮登記等の有無を含めて権利関係を確かめるには,全部事項証明書を取るのが安全である。

4 敷地が複数の筆にわたる場合

マンションの敷地が複数の土地(筆)にわたることがある。
その場合は,筆ごとに登記事項証明書を取り,被相続人の持分が登記されている全部の土地を申請の対象にする。
敷地の一部の筆を書き落とすと,その筆の持分だけが被相続人名義のまま残る。

第4 申請書の書き方

1 登記の目的

東京ブロック管内法務局・地方法務局の「相続登記ガイドブック 相続登記の手続について(詳細編)Q&A編」問46は,全部又は一部の不動産が共有の場合の登記の目的について,全部が共有の場合は「○○(被相続人の氏名)持分全部移転」と,一部の場合は「所有権移転及び○○(被相続人の氏名)持分全部移転」と記載するよう案内している。
佐賀地方法務局の「不動産登記申請書提出前のチェックリスト 所有権移転(相続)」も,複数の不動産で所有権全部を移転するものと持分を移転するものがある場合は「所有権移転及び○○持分全部移転」と記載するとしている。

敷地権の登記がないマンションで,被相続人が専有部分を単独で所有し,敷地を共有持分で有していた場合は,建物が所有権移転,土地が持分全部移転になるので,一つの申請書で申請するときの登記の目的は「所有権移転及び○○持分全部移転」となる。
申請情報は不動産ごとに作成するのが原則であるが,同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一であるときは,一つの申請情報で申請することができる(不動産登記令4条)。
建物と土地を別々の申請書で申請することもでき,その場合は建物の登記の目的を「所有権移転」,土地の登記の目的を「○○持分全部移転」とする。

2 不動産の表示

土地については,所在,地番,地目及び地積を書き(不動産登記令3条7号),前記の佐賀地方法務局のチェックリストに従って,移転する持分を書く。
区分建物については,一棟の建物の所在及び地番,家屋番号,種類,構造及び床面積,建物の名称があるときはその名称,一棟の建物の名称があるときはその名称並びに一棟の建物の構造及び床面積(一棟の建物の名称を書くときは不要)を書く(同条8号)。
法務局の記載例は,不動産番号を書けば,所在,地番,地目及び地積(建物の所在,家屋番号,種類,構造及び床面積)の記載を省略できるとしている。

記載例を示すと,次のとおりである(数値は架空のものである。)。

欄記載例
登記の目的所有権移転及び甲野太郎持分全部移転
原因令和8年5月1日相続
土地所在 ○○市○○町一丁目 地番 2番 地目 宅地 地積 800・00平方メートル 移転する持分 100000分の2500(甲野太郎持分)
一棟の建物所在 ○○市○○町一丁目2番地 構造 鉄骨鉄筋コンクリート造陸屋根10階建 床面積 1階 500・00平方メートル(以下各階)
専有部分家屋番号 ○○町一丁目2番の101 建物の名称 101号 種類 居宅 構造 鉄骨鉄筋コンクリート造1階建 床面積 1階部分 70・00平方メートル

3 相続人が複数いる場合

表題登記又は権利の保存,設定若しくは移転の登記を申請する場合に,登記名義人となる者が二人以上であるときは,その者ごとの持分を書く(不動産登記令3条9号)。
土地の共有持分を複数の相続人が取得する場合は,被相続人の持分に相続人の取得割合を掛けた持分になる。
前記の東京ブロック管内法務局・地方法務局のQ&A問47は,持分2分の1の不動産を配偶者と子ども2人で相続する場合の持分を,4分の1,8分の1,8分の1としている。

4 敷地権付き区分建物との比較

項目敷地権の登記があるマンション敷地権の登記がないマンション
登記記録建物の登記記録に敷地権が記録される建物と土地が別々の登記記録
相続登記の対象建物だけ(敷地権にも効力が及ぶ)建物と土地の共有持分の両方
登記の目的所有権移転所有権移転及び○○持分全部移転(一つの申請書の場合)
課税価格建物の価格と敷地権の価格建物の価格と土地の持分の価格

第5 課税価格と登録免許税

1 税率と端数処理

相続による所有権の移転の登記の登録免許税は,不動産の価額の1000分の4である。
法務局の「登録免許税の計算」は,課税標準の額は固定資産課税台帳の価格であって「固定資産税課税標準額」ではないこと,課税標準は1000円未満を切り捨てること,税額は100円未満を切り捨て,1000円未満のときは1000円とすることを説明している。

2 土地は持分の価格

佐賀地方法務局のチェックリストは,所有者の持分について所有権移転をする場合は,課税価格として持分の価格を記載するとしている。
不動産が複数ある場合は,全ての評価額を合計し,1000円未満を切り捨てる。

マンションの敷地の固定資産評価証明書や課税明細書には,土地全体の価格が書かれている場合と,持分に対応する価格が書かれている場合がある。
どちらの価格なのかを確かめ,土地全体の価格であれば持分の割合を掛けて持分の価格を出す。

3 どの年度の価格を使うか

課税標準となる価格は,登記の申請日が1月1日から3月31日までであれば,その年の前年12月31日現在において固定資産課税台帳に登録された価格を基礎とし,4月1日から12月31日までであれば,その年の1月1日現在において登録された価格を基礎とする(登録免許税法附則7条,登録免許税法施行令附則3項)。
4月以降に申請するときは,その年度の評価証明書等で価格を確かめる。

4 計算例

架空の数値で計算すると,次のとおりである。
建物の価格が600万円,土地全体の価格が3億円で,被相続人の持分が100000分の2500であれば,土地の持分の価格は750万円になる。
課税価格は,合計して1350万円となり,登録免許税は,その1000分の4の5万4000円となる。

5 土地の免税措置

不動産の価額が100万円以下の土地について,令和9年3月31日までに相続による所有権の移転の登記を受ける場合は,登録免許税が課されない(租税特別措置法84条の2の2第2項)。
法務局の「相続登記の登録免許税の免税措置について」は,土地の持分を取得する場合は,不動産全体の価額に持分の割合を乗じて計算した額が不動産の価額になるとし,申請書に「租税特別措置法第84条の2の2第2項により非課税」と記載するよう案内している。
マンションの敷地は,持分の割合が小さくても土地全体の価格が高いことが多いので,持分の価格が100万円以下になるかは計算して確かめる。
建物はこの免税措置の対象にならない。

第6 添付情報

遺言によらない法定相続や遺産分割による相続登記では,被相続人の出生から死亡までの戸籍,相続人の戸籍,不動産を取得する相続人の住民票の写し等を添付し,遺産分割による場合は遺産分割協議書と相続人の印鑑証明書も添付する。
法定相続情報一覧図の写しを提出すれば,戸籍の添付に代えることができ,一覧図に相続人の住所が記載されていれば住所を証する情報にも代えられる(不動産登記規則37条の3)。
令和8年10月5日以後に申請する場合は,所有権の登記名義人となる申請人について国籍等を含む検索用情報を申し出て,原則として国籍等を証する情報も提供する(改正後の不動産登記規則158条の39第1項6号,2項)。
住民票コードが提供され,登記官が住基ネットで日本の国籍を有することを確認できるときは,国籍等を証する情報は要らない(同項ただし書)。

敷地権の登記がないマンションでも,添付情報は建物と土地で共通であり,一つの申請書で申請すれば一通ずつで足りる。
添付情報の詳細は,相続させる遺言に基づく相続登記を弁護士が代理する方法―申請人の選び方,添付情報,委任状,登記識別情報及び国籍等の申出,国籍等の申出は不動産登記で国籍等を申し出る手続―令和8年10月5日からの記載方法,国籍等を証する情報,住民票コード及び相続登記の注意点で説明している。

第7 遺言書と遺産分割協議書の注意点

1 土地の共有持分も漏れなく記載する

敷地権の登記がないマンションでは,土地の共有持分は建物とは別の財産として登記されている。
遺言書や遺産分割協議書に建物だけを書き,土地の共有持分を書き落とすと,その持分の帰属が遺言書や協議書からは定まらないことになる。
遺言書にその他の財産の帰属を定める条項があればそれによることになり得るが,そうでなければ,その持分について改めて遺産分割協議をしなければならないことが考えられる。
遺言書を作るときや遺産分割協議書を作るときは,建物の登記事項証明書だけでなく,敷地の登記事項証明書も取り,土地の所在,地番及び持分を書き入れる。

2 遺言書に持分の記載がない場合

遺言書の財産の表示に,敷地の土地が所在,地番,地目及び地積だけで記載され,持分が書かれていないことがある。
被相続人が有していたのが共有持分だけであれば,その記載は被相続人の持分を指すと読むのが通常であろうが,遺言の解釈に関わるので,疑義があるときは申請前に管轄登記所に確かめておくのが安全である。
「相続させる」遺言の解釈と登記の関係は,相続させる遺言と特定財産承継遺言――違い,効力,登記及び遺言執行者の権限で説明している。

第8 関連記事

①相続させる遺言に基づく相続登記を弁護士が代理する方法―申請人の選び方,添付情報,委任状,登記識別情報及び国籍等の申出
②不動産登記で国籍等を申し出る手続―令和8年10月5日からの記載方法,国籍等を証する情報,住民票コード及び相続登記の注意点
③相続させる遺言と特定財産承継遺言――違い,効力,登記及び遺言執行者の権限
④法定相続情報一覧図の作成方法―戸籍謄本の読み方と相続人の確認
⑤不動産登記記録例の読み方―表題部・甲区・乙区と法務省通達
⑥遺産相続における共有状態の解消方法
⑦不動産登記の主要判例・調査資料・関連記事一覧

第9 出典

1 法令

①e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」22条及び附則(昭和58年法律第51号)1条,5条,6条,8条
②e-Gov法令検索「不動産登記法」44条,46条,73条
③e-Gov法令検索「不動産登記令」3条,4条
④e-Gov法令検索「不動産登記規則」4条,37条の3,158条の39,196条及び別表三
⑤e-Gov法令検索「登録免許税法」別表第一,附則7条
⑥e-Gov法令検索「登録免許税法施行令」附則3項
⑦e-Gov法令検索「租税特別措置法」84条の2の2(いずれも令和8年9月26日確認)

2 法務省・法務局の資料

①東京ブロック管内法務局・地方法務局「相続登記ガイドブック 相続登記の手続について(詳細編)Q&A編」問46,問47
②佐賀地方法務局「不動産登記申請書提出前のチェックリスト 所有権移転(相続)」
③法務局「登録免許税の計算」
④法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」
⑤法務局「不動産登記の申請書様式について」
⑥法務省「不動産登記規則の一部を改正する省令(令和8年法務省令第23号)」
⑦法務省民事局長通達「不動産登記規則の一部を改正する省令の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて」(令和8年9月4日付け法務省民二第872号)