第1 本記事の位置付け
本記事は,不動産登記の効力,中間省略登記その他の主要な最高裁判例と,不動産登記記録を調査するための本ブログの記事を案内するものである。
コンピューター化,登記記録例,保存期間及び住所等変更登記の詳細は,それぞれ独立した専門記事で扱う。
第2 登記記録を調査するための記事
1 紙登記簿から電子登記記録への移行
不動産登記のコンピューター化では,紙登記簿から電磁的記録への移行時期,移記される事項,省略できる事項及び改製不適合登記簿を整理している。
2 表題部,甲区及び乙区の記録例
不動産登記記録例の読み方では,平成28年6月8日付け法務省民二第386号通達と,表題部,甲区及び乙区の記録例を整理している。
3 閉鎖登記記録・申請情報・図面の保存期間
不動産登記簿等の保存期間では,現用記録,閉鎖登記記録,申請情報,添付情報,地図,各種図面及び旧土地台帳を区別している。
4 住所等変更登記
令和8年4月から義務化された不動産の住所等変更登記では,申請期限,経過措置,過料,検索用情報の申出及びスマート変更登記を扱っている。
第3 民法177条の第三者に関する判例
1 順次譲渡と元所有者
最高裁昭和39年2月13日判決は,不動産が甲から乙,乙から丙へ順次譲渡された場合に,現在の登記名義人である甲は,丙から直接移転登記手続を求められる関係で,民法177条の第三者として丙の物権取得を否認できる立場にはないとした。
2 背信的悪意者
最高裁昭和43年8月2日判決は,長期間の占有を知りながら,登記の欠缺に乗じて高値で売りつけて利益を得る目的で取得した者について,背信的悪意者として登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に当たらないとした。
最高裁平成18年1月17日判決は,取得時効完成後の譲受人が占有の事実を認識し,登記の欠缺を主張することが信義に反する事情がある場合の背信的悪意者該当性を示した。
第4 中間省略登記に関する判例
1 当事者の同意を欠く直接請求
最高裁昭和40年9月21日判決は,不動産の所有権が甲から乙,乙から丙へ順次移転したのに登記名義が甲に残る場合,甲及び乙の同意がなければ,丙が甲へ直接自己への移転登記を請求することはできないとした。
2 真正な登記名義の回復
最高裁平成22年12月16日判決は,順次移転の事案で,現在の所有者が元の所有者に対し,真正な登記名義の回復を原因とする直接の所有権移転登記を請求することは許されないとした。
3 登記申請を受任した司法書士の注意義務
最高裁令和2年3月6日判決は,中間省略登記の方法による申請を受任した司法書士の注意義務について,正当に期待された役割の内容等を十分に審理せず直ちに義務違反を認めた原審判断を違法とした。
第5 登記の効力及び登記官の審査に関する判例
1 未登記建物の譲受人
最高裁昭和31年6月5日判決は,未登記建物の譲受人が譲渡人に対して移転登記を請求することを妨げないとした。
2 夫婦間の名義と特有財産
最高裁昭和34年7月14日判決は,夫婦間の合意で夫が買い入れた土地の登記名義を妻としただけでは,妻の特有財産と解すべきではないとした。
3 登記官の形式的審査
最高裁昭和35年4月21日判決は,登記官吏の審査は,申請書及び附属書類によって形式上の要件を具備するかを審査するものであり,登記事項が真実かを実質的に審査する権限を有しないとした。
第6 その他の登記関係判例
1 仲裁判断に基づく登記申請
最高裁昭和54年1月25日判決は,仲裁判断に基づいて登記申請をするには執行判決を要するとした。
2 過大に納付した登録免許税
最高裁平成17年4月14日判決は,過大に登録免許税を納付して登記等を受けた者が,登録免許税法31条2項の請求手続によらず,国税通則法56条に基づく過誤納金の還付を請求できるとした。
3 遺産分割調停調書による所有権移転登記
最高裁平成20年12月11日判決は,遺産分割調停調書に代償として相続人所有建物を他の相続人へ譲渡する条項がある事案で,登記原因証明情報の提供を欠くとして登記申請を却下した処分を違法とした。
第7 不動産取引との関係
登記記録は権利関係を調査する中心資料であるが,現況,境界,占有,建築法令上の制限,私道・配管及び契約上の負担をすべて示すものではない。
不動産取引では,登記事項証明書だけでなく,公図,地積測量図,建物図面,各種行政証明,現地及び契約書を照合する必要がある。
宅地建物取引業者による媒介,重要事項説明及び関連分野の記事については,宅建業法・不動産取引の実務ガイドを参照されたい。
第8 出典
① e-Gov法令検索「民法」177条
② e-Gov法令検索「不動産登記法」
③ 前記各最高裁判決の裁判所ウェブサイト掲載ページ