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企業法務・民事実務

法務局とは何をするところ?できること・相談・管轄を解説(AI作成)

目次

第1 法務局とは何をするところか第2 法務局でできることを目的から探す第3 市区町村・裁判所・公証役場との違い1 戸籍を取得する窓口と相続の登記窓口2 遺言書を保管することと作成・検認3 手続案内と紛争の相談第4 どこの法務局へ行けばよいか第5 予約・受付時間・来庁以外の方法第6 法務局についてよくある疑問1 法務局は何をしに行くところか2 法務局で登記簿の閲覧はできるか第7 出典・参考資料
第1 法務局とは何をするところか

法務局は,不動産や会社・法人の登記,各種証明書の交付,供託,自筆証書遺言書の保管,法定相続情報証明,人権相談などを扱う国の機関である。
「法務局へ行く」ときは,登記を申請するのか,証明書を取得するのか,手続の案内を受けるのかを先に分けると,窓口や準備する書類を選びやすい。

本記事は,令和8年10月17日に確認した法務局・法務省の公式案内に基づき,利用目的から手続を探すための入口を整理する。
同じ庁舎ですべての業務を扱うとは限らず,手続ごとに管轄と取扱庁を確認する必要がある。

第2 法務局でできることを目的から探す
したいこと主な手続・窓口最初に確認すること土地・建物の名義や抵当権などを登記する不動産登記物件の所在・地番・家屋番号,登記の目的,管轄登記所会社を設立し,役員や本店などの変更を登記する商業・法人登記会社・法人の種類,申請する登記,取扱庁登記の証明書や地図・図面を取得する登記事項証明書,地図・図面証明書などの請求提出先が求める証明書の種類,対象物件・法人,請求方法法令で認められた供託をする供託の申請,供託物の払渡請求供託の根拠,原因,金額及び管轄の供託所自分で作成した遺言書を預ける自筆証書遺言書保管制度申請できる保管所,本人による来庁,予約と必要書類相続関係を示す一覧図の認証を受ける法定相続情報証明制度自分で作成する一覧図,戸除籍謄本等,申出先帰化や国籍に関する手続をする国籍事務住所地に応じた取扱庁と手続案内人権に関する問題を相談する人権相談相談内容に合う窓口と相談方法

登記の申請と証明書の取得は,別の手続である。
例えば,土地の登記事項証明書を取って内容を調べることと,その土地の所有者の名義を変更することでは,必要書類や申請先の確認事項が異なる。

供託も,一般の預金のように自由な目的で金銭を預ける制度ではない。
法令上,供託が義務付けられ,又は認められている場合に利用するものであり,供託官による要件の審査がある(出典⑥)。

第3 市区町村・裁判所・公証役場との違い
1 戸籍を取得する窓口と相続の登記窓口

戸籍事務は市区町村で行われ,法務局は全国で正しく処理されるよう専門的な助言や指示等を行っている(出典⑦)。
相続登記や法定相続情報の申出に戸籍が必要であっても,戸籍を集めることと法務局へ申請・申出をすることは分けて準備する。

法定相続情報証明制度では,申出人側が一覧図と戸除籍謄本等を用意し,登記官が確認して認証文付きの写しを交付する(出典⑧)。
戸籍の束だけを持参すれば,法務局が一覧図を一から作ってくれる制度ではない。
申出先と提出・受取方法は,法定相続情報一覧図の申出書の書き方と窓口持参で説明している。

2 遺言書を保管することと作成・検認

法務局の自筆証書遺言書保管制度は,遺言者自身が作成した遺言書を保管する制度である。
遺言内容の相談や遺言書の作成を法務局へ依頼する制度ではなく,保管によって内容の有効性が保証されるわけでもない(出典⑨・⑩)。

公証人が関与して作成する公正証書遺言とは仕組みが異なる。
また,この保管制度を利用した遺言書について家庭裁判所の検認が不要になることと,遺言の有効性に争いがないことは同じではない。
制度の内容は,自筆証書遺言書保管制度を参照されたい。

3 手続案内と紛争の相談

登記手続案内では,登記の流れ,申請書の記載方法,添付書類の収集方法などの説明を受けられる。
一方,遺産を誰にどのように分けるか,売買契約をどのような内容で結ぶかといった判断について助言を受ける場ではない(出典③Q3)。

相続で対立がある場合は,登記書類の準備に加えて,分け方,交渉及び裁判手続への対応を検討する必要がある。
相談先の選び方は,相続は弁護士・司法書士・税理士の誰に相談するかで整理している。

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法務局は予約なしで行ける?登記手続案内・証明書取得・遺言書保管の違い(AI作成)

目次

第1 予約が必要かは利用する手続で分ける第2 手続別の予約・受付の確認表第3 登記手続案内を予約する方法1 対面・電話・ウェブ会議を選ぶ2 予約先と当日の連絡方法を確認する第4 予約前・来庁前に用意するもの1 登記手続案内の準備2 遺言書保管の準備第5 法務局の手続案内で聞けること・聞けないこと第6 予約についてよくある疑問1 法務局は予約なしでも大丈夫か2 法務局の窓口は何時までか3 法務局へ行かずに済む方法はあるか第7 出典・参考資料
第1 予約が必要かは利用する手続で分ける

法務局へ予約なしで行けるかは,何をするために行くかによる。
登記手続案内は完全予約制であり,自筆証書遺言書の保管申請にも予約が必要である。
証明書の交付請求や,作成済みの登記申請書の提出は,登記手続案内とは別の手続として受付方法を確認する。

本記事は,令和8年10月17日に確認した法務局・法務省の公式案内に基づき,予約,来庁先,準備及び相談できる範囲を整理する。
登記の手続案内を受けることと,証明書の請求や申請書の提出をすることを分けて,利用する方法を選ぶとよい。

第2 手続別の予約・受付の確認表
利用する手続予約・受付の確認来庁前にすること登記手続案内完全予約制。対面・電話・ウェブ会議から方法を選ぶ申請予定の登記,取扱庁,予約枠と準備資料を確認する登記事項証明書等の交付請求手続案内の予約とは別。窓口・郵送・オンライン請求の案内を確認する証明書の種類,物件・法人の特定情報,受取方法を決める作成済みの登記申請書の提出手続案内の予約と申請受付を区別し,提出先の案内を確認する管轄,申請書,添付書類,登録免許税及び提出方法を確認する自筆証書遺言書の保管申請予約必須。遺言者本人が来庁する申請できる保管所,作成した遺言書,申請書,添付書類と本人確認書類を確認する法定相続情報一覧図の保管・交付の申出申出先の受付方法と,案内を受ける場合の予約を確認する申出先,一覧図,戸籍等,申出書及び完成後の受取方法を決める

表は,「法務局の用事は全部予約が必要」「書類を取るだけなら何の確認もいらない」と一律に判断しないための区分である。
証明書や申請の種類によって取扱庁・方法が異なるため,目的の業務を扱う庁の公式案内を確認する。

第3 登記手続案内を予約する方法
1 対面・電話・ウェブ会議を選ぶ

登記手続案内は,登記申請を自分で行おうとする人に,申請書の記載方法や添付書類の収集方法などを説明するものである。
公式Q&Aは,1回20分程度の完全予約制とし,対面,電話又はウェブ会議の方法を案内している(出典①Q3・Q4)。

対面は手元資料を直接確認しやすく,ウェブ会議は来庁せずに資料を画面で共有できる。
電話は互いの書類を見ながら説明できないため,質問事項や対象の登記を絞っておくと説明を受けやすい(出典①Q5)。

2 予約先と当日の連絡方法を確認する

予約は,法務局手続案内予約サービス又は管轄法務局への電話で行う方法が案内されている(出典①Q4)。
予約サービスで取扱庁と手続を選び,選択した庁で利用できる方法・日時を確認する。
電話案内やウェブ会議を選ぶ場合は,当日の連絡方法や接続案内にも目を通しておく。

1回の案内で足りない場合は,改めて予約して後日に説明を受けることになる。
予約したから申請がその日に完了する,あるいは申請内容の審査まで終わるというものではない。

予約サービスの入口は次のとおりである。
https://www.legal-ab.moj.go.jp/houmu-bv1h-u/

第4 予約前・来庁前に用意するもの
1 登記手続案内の準備

まず,何の登記をする予定か,どの不動産・会社に関するものか,何を質問したいかを整理する。
既に登記された不動産や会社については,登記事項証明書又は登記事項要約書を事前に取得し,該当する申請書式と手元の関係書類を準備することが公式Q&Aで案内されている(出典①Q6)。

新規の会社設立など,まだ登記のないものまで既存の登記事項証明書を用意する必要はない。

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こども性暴力防止法の従事者研修―施行前の受講計画・演習・受講記録の整え方(AI作成)

目次

第1 施行前研修で最初に決めること1 対象者・時期・内容・受講確認を一緒に整える2 資料の時点とこの記事の範囲第2 誰にいつ受講させるか1 犯罪事実確認等の対象となる業務と照合する2 現職者・新たな従事者・認定申請を分ける第3 標準・要点・独自研修を使い分ける1 標準研修を基本として計画する2 要点研修を全員向けの短縮版としない3 既存研修は必要事項と演習を照合する第4 座学と演習で扱うこと1 必要な研修事項を対応表にする2 個人での動画視聴と演習の関係3 自施設の行動基準と報告経路を練習する第5 受講計画・記録・未受講者への対応1 研修計画と個人別の管理をつなぐ2 欠席者・途中参加者を完了扱いにしない3 研修結果を日常のルール改善へつなぐ第6 よくある質問1 資料を配布しただけで研修は終わるか2 外部研修へ参加させてもよいか3 現職者の犯罪事実確認の猶予まで研修を待てるか4 確認テストは何に使うか第7 出典・公式教材への入口1 研修の手引き・教材2 制度の詳細と施行前準備
第1 施行前研修で最初に決めること
1 対象者・時期・内容・受講確認を一緒に整える

こども性暴力防止法の従事者研修は,教材を配布して終える準備ではない。
誰が対象か,いつまでに何を学ぶか,座学と演習をどう実施するか,受講をどのように確認するかを一体として整える必要がある。
外部研修を利用する場合も,事業者が対象従事者の受講を確認する必要がある。

こども家庭庁の研修の手引きは,義務対象事業者の現職者について,原則として令和8年12月25日の法施行前に受講させることを示している。
現職者の犯罪事実確認には施行後3年以内の仕組みがあるが,この期間を施行前研修にも共通する猶予と考えてはならない。

2 資料の時点とこの記事の範囲

本記事は,令和8年10月17日に確認した施行ガイドライン,義務事業者用準備ガイドVer.1.1,研修の手引き及び同庁の従事者向け教材に基づく。
対象事業者が研修を計画し,受講漏れを防ぎ,現場の対応へつなげるための説明である。
研修の実施計画・受講管理の記入項目や演習例は実務上の例であり,国が一律に指定する追加要件ではない。

制度全体の対象,規程,相談体制及び情報管理を含む準備は,こども性暴力防止法の施行前準備を参照されたい。

第2 誰にいつ受講させるか
1 犯罪事実確認等の対象となる業務と照合する

法に基づく従事者研修の対象範囲は,犯罪事実確認等の措置の対象となる従事者と対応する。
正規職員か,短期の労働者か,ボランティアかという名称だけでは判断せず,対象事業・職種と実際の業務を確認する。
事務職員,送迎運転手等についても,支配性・継続性・閉鎖性の三要件を満たす業務であれば対象になり得る。

対象外の従事者にも必要に応じて受講させることは考えられるが,法定の受講対象者と任意の参加者を混同しない。
派遣労働者については,手引きのFAQは派遣先が受講させる義務を負うと説明している。
派遣元で研修を行っているというだけで終えず,実施方法と派遣先での受講確認を調整する。

2 現職者・新たな従事者・認定申請を分ける

原則として,こどもに接する対象業務へ従事する前に研修を受講させる必要がある。
義務対象事業者の現職者は原則として施行前に,認定を受ける事業者の現職者は認定申請時までに受講させるという時期の違いがある。
手引きは,認定申請時に研修の受講を証する書類を提出することも説明している。

新規採用や異動により対象業務へ就く者については,従事開始予定日と研修完了予定日を照合する。
座学と演習を別の日に行うことは可能であるが,いずれも業務へ従事する前に完了するという原則に注意する。
短期の採用や急な配置を,研修を計画しなくてよい理由として扱わない。

第3 標準・要点・独自研修を使い分ける
1 標準研修を基本として計画する

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こども性暴力防止法の「不適切な行為」とは―SNS・撮影・身体接触と行動基準の作り方(AI作成)

目次

第1 不適切な行為を施行前に具体化する1 犯罪事実確認だけでは予防は完結しない2 この記事の対象と資料第2 性暴力・不適切な行為・重大な不適切な行為を区別する1 不適切な行為は性暴力に至る前の予防にも関わる2 公式の具体例は状況を踏まえて使う3 重大性と防止措置の判断を軽視しない第3 現場で確認したい具体例1 SNS等の私的な連絡・面会2 撮影・写真や動画の管理3 身体接触・排せつ介助・更衣4 個別指導・送迎・特別扱い第4 行動基準を作る手順1 場面ごとに必要な業務を洗い出す2 禁止・実施方法・報告先を対応させる3 規程・周知・研修をつなぐ第5 疑いを把握した場合の対応1 軽微という印象だけで様子見にしない2 安全確保と処分の判断を分ける第6 よくある質問1 身体接触はすべて禁止すべきか2 保護者の承諾があれば問題はなくなるか3 犯罪事実確認で問題がなければ行動基準は不要か第7 出典と確認範囲1 こども家庭庁の公式資料2 個別の運用では最新資料と事実を確認する
第1 不適切な行為を施行前に具体化する
1 犯罪事実確認だけでは予防は完結しない

こども性暴力防止法の施行前準備では,性犯罪前科の確認手続に加え,日常の業務で許される行為と避けるべき行為を具体化する必要がある。
「不適切な行為」とは,その行為自体は児童対象性暴力等に当たらなくても,業務上必ずしも必要とはいえず,続いたり発展したりすることで性暴力につながり得る行為である。
犯罪に当たらなければ放置してよいという考え方では,こどもの尊厳や安全を十分に守れない。

こども家庭庁の義務事業者用準備ガイドVer.1.1は,不適切な行為の範囲を検討・確定し,就業規則等へ反映して周知することを,施行までの最低限の準備に挙げている。
範囲の検討は,現場の従事者と対話しながら進めるものであり,公式の例を一律の禁止一覧として転記すれば足りるものではない。

性犯罪前科の確認の対象となる罪と期間,確認の流れは,こども性暴力防止法の犯罪事実確認とは―対象となる性犯罪・20年と10年の期間・確認の流れと事前通知で説明している。

2 この記事の対象と資料

本記事は,令和8年10月17日に確認した同年9月改訂の施行ガイドライン,義務事業者用準備ガイドVer.1.1及び公式研修資料に基づく。
主に学校・保育施設等の義務対象事業者と,認定を受ける民間教育保育等事業者が,行動基準を作る際の確認事項を扱う。
法の施行日は令和8年12月25日であり,義務対象事業者と認定対象事業者の制度上の区分は分けて確認する。

制度全体の対象,必要書類及び施行前準備の一覧は,こども性暴力防止法の対象・義務と施行準備を参照されたい。
以下の確認項目・整理例は,公式資料を実際の業務へ落とし込むための例であり,国が一律に指定する様式ではない。

第2 性暴力・不適切な行為・重大な不適切な行為を区別する
1 不適切な行為は性暴力に至る前の予防にも関わる

施行ガイドラインは,不適切な行為が繰り返される中で,公私の区別や児童等との適切な距離感が失われ,性暴力へ至る危険を説明している。
行為者が親切や指導のつもりであったと述べることだけで,業務上の必要性やこどもへの影響の確認を終えてはならない。
こどもが相談・拒否をしにくい関係にあることも踏まえ,行為の目的,方法,頻度及び周囲から見える状況を確認する必要がある。

法が防止の対象とする児童対象性暴力等には,児童等との性交等,わいせつな行為,児童買春・児童ポルノに関わる行為や性的姿態の撮影,衣服の上から又は直接の身体接触や盗撮,性的羞恥心を害する言動であって児童等の心身に有害な影響を与えるものが含まれる(法2条2項,教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律2条3項,こども性暴力防止法に関するQ&A基礎編2-2)。
不適切な行為は,それ自体はこれらに当たらない段階の行為であり,Q&Aは,不適切な行為を改め,児童対象性暴力等に至ることを未然に防止することが重要であるとしている(同2-3)。

2 公式の具体例は状況を踏まえて使う

同じ外形の行為でも,事業内容,こどもの発達段階・特性,現場の状況及び必要性によって評価は異なり得る。
例えば,未就学児の保育に必要な抱き上げや,理解を得た範囲で行うスポーツの身体的な補助まで,中高生との私的な接触と同じように扱うことはできない。
他方,必要な介助という説明があっても,その方法・範囲が適切か,こどもの意思や負担に配慮しているかを具体的に確認する。

3 重大性と防止措置の判断を軽視しない

ガイドラインは,加害認識,被害の重大性,悪質性等を踏まえ,「重大な不適切な行為」を判断する考え方を示している。
指導後も同じ行為を繰り返す場合や,こども・保護者の意思に反すると認識しながら執拗に行う場合などは,初回の比較的軽微な行為と同じ対応では足りないことがある。
状況によっては児童対象性暴力等にも当たり得るため,内部で付けた行為の名称だけで重大性を下げて扱わない。

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株式等売渡請求とは―特別支配株主の90%要件,手続,差止めと価格決定(AI作成)

目次

第1 株式等売渡請求の仕組み第2 特別支配株主の90%要件1 株式数ではなく議決権の割合を確認する2 対象となる株式・新株予約権第3 対象会社の承認・通知・開示1 対価と取得日を定めて承認を受ける2 取得日の20日前までの通知第4 少数株主の差止めと価格決定申立て1 取得そのものを止めるための差止め2 価格決定の申立期間第5 価格の検討と保存する資料第6 出典と関連記事
第1 株式等売渡請求の仕組み

株式等売渡請求は,会社の議決権の原則90%以上を有する特別支配株主が,対象会社の承認を得て,他の株主の株式等を取得する制度である。
少数株主の個別の承諾や,対象会社の株主総会決議による株式併合とは異なる手続である。

本記事は,令和8年10月17日に確認した会社法179条から179条の10までを基に,会社側の手続と,通知を受けた少数株主の確認事項を説明する。
株式併合による締出しの手続・救済は,株式併合による少数株主の締出しで扱う。

第2 特別支配株主の90%要件
1 株式数ではなく議決権の割合を確認する

会社法179条1項の基準は,総株主の議決権の10分の9以上である。
定款でこれを上回る割合を定めている場合には,その割合が必要となる。
発行済株式数の90%という説明で済ませず,議決権を基準に算定する。

特別支配株主本人の保有分に加え,発行済株式の全部を有する株式会社その他法務省令で定める特別支配株主完全子法人の保有分を合算する仕組みがある。
単にグループ会社と呼ばれる会社の保有分を,全て合算できるわけではない。
株主名簿,議決権の数,保有構造,定款の加重要件を照合する必要がある。

2 対象となる株式・新株予約権

原則として,対象会社と特別支配株主を除く株主全員の株式全部を対象とする。
特別支配株主完全子法人には請求しないことができるが,特定の少数株主だけを任意に対象から外す一般的な仕組みではない。

株式売渡請求に併せて,新株予約権売渡請求をすることもできる。
新株予約権付社債に付された新株予約権を対象とする場合には社債についての規律も確認する必要があり,株式の手続だけで完結すると考えてはならない(同条2項・3項)。

第3 対象会社の承認・通知・開示
1 対価と取得日を定めて承認を受ける

特別支配株主は,対価となる金銭の額又は算定方法,割当て,取得日等を定め,対象会社へ通知して承認を受ける(会社法179条の2・179条の3)。
対象会社が取締役会設置会社である場合,承認するかどうかは取締役会で決議する。
株主総会を要しないことと,会社による審査・承認が不要であることは異なる。

対象会社は,保有割合・定款の条件に加え,対価の算定資料と手続の適法性を確認する必要がある。
価格算定,利益相反への対応及び意思決定の経過を保存しておくことが,後の争いへの備えとなる。

2 取得日の20日前までの通知

対象会社は,承認した場合,取得日の20日前までに,売渡株主等へ承認した旨,特別支配株主の情報,対価・取得日等の法定事項を通知する(会社法179条の4)。
売渡株主への通知は,同条2項の公告による代替の対象から除かれている。
「公告したから全株主への通知が不要」と一括して扱わない。

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社外取締役の設置義務と社外性の要件―対象会社,独立役員及びガバナンス・コードとの違い(AI作成)

目次

第1 設置義務・社外性・独立性を別々に確認する第2 社外取締役を置く必要がある会社1 監査役会設置会社の設置義務2 委員会を置く会社の構成要件第3 候補者の社外性を確認する1 対象会社・子会社の業務執行歴2 親会社等・兄弟会社との関係3 配偶者・二親等内の親族第4 独立役員・独立社外取締役との違い第5 選任時と就任後の確認資料第6 出典と関連記事
第1 設置義務・社外性・独立性を別々に確認する

社外取締役の選任では,①会社法上,社外取締役を置く必要がある会社か,②候補者が会社法の社外性の要件を満たすか,③取引所の独立役員としての独立性を満たすかを分けて確認する。
外部の専門家であることや,非常勤であることだけで,これらの要件を全て満たすものではない。

本記事は,令和8年10月17日に確認した会社法2条15号,327条の2,331条,400条及び日本取引所グループの独立役員制度の案内に基づき,選任前の確認順序を説明する。
ガバナンス・コード全般は,コーポレートガバナンス・コードとはで扱う。

第2 社外取締役を置く必要がある会社
1 監査役会設置会社の設置義務

会社法327条の2は,監査役会設置会社のうち,公開会社であり,かつ大会社であって,発行する株式について有価証券報告書の提出義務を負う会社に,社外取締役の設置を義務付ける。
上場会社であるかという呼び方だけでなく,条文の条件を順に確認する必要がある。

会社法の「公開会社」は,株式の全部又は一部について譲渡承認を要する定款の定めがない会社をいい,上場会社と同じ意味ではない。
「大会社」は,最終事業年度の貸借対照表の資本金5億円以上又は負債200億円以上等の定義による(会社法2条5号・6号)。

2 委員会を置く会社の構成要件

監査等委員会設置会社では,監査等委員である取締役は3人以上で,過半数が社外取締役でなければならない(会社法331条6項)。
指名委員会等設置会社では,指名・監査・報酬の各委員会を3人以上で組織し,各委員会の過半数を社外取締役とする(400条1項・3項)。

機関設計会社法上の主な確認数え方の注意監査役会設置会社327条の2の条件を満たす場合に設置義務公開・大会社・有報提出義務を確認監査等委員会設置会社監査等委員である取締役3人以上,その過半数が社外取締役全体の過半数とは異なる指名委員会等設置会社各委員会3人以上,各委員会の過半数が社外各委員会について個別に確認

327条の2の対象でない会社に,会社法上その条文による一律の設置義務があると説明してはならない。
ただし,他の機関設計上の条件,定款,上場規則等の確認は残る。

第3 候補者の社外性を確認する

会社法2条15号は,次のような関係について要件を置き,その全てに該当することを求める。
役職名だけでなく,対象会社と子会社・親会社等との関係及び就任時点の経歴を確認する。

1 対象会社・子会社の業務執行歴

現在,対象会社・子会社の業務執行取締役等でなく,就任前10年間にも該当していないことが基本となる。
直前10年間に非業務執行の取締役・会計参与・監査役であった場合には,その就任前にさかのぼる業務執行歴の条件も確認する。
現在退職しているという事情だけでは足りない。

2 親会社等・兄弟会社との関係

自然人である親会社等そのもの,又は親会社等の取締役・執行役・支配人その他の使用人でないことなどが求められる。
親会社等の子会社等である別の会社についても,業務執行取締役等に該当しないかを確認する。
グループ外からの選任という説明と,法律上の関係者の範囲を照合する必要がある。

3 配偶者・二親等内の親族

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会社補償契約とD&O保険の違い―対象費用,決定手続,利益相反と開示(AI作成)

目次

第1 会社補償とD&O保険の違い第2 会社補償の対象と補償できないもの1 責任追及に対処する費用2 第三者への賠償・和解による損失3 不正目的が判明した場合の返還第3 内容決定の機関と利益相反第4 D&O保険で確認する契約条件第5 開示と証拠の保存第6 出典と関連記事
第1 会社補償とD&O保険の違い

会社補償契約は,役員等の防御費用や第三者に対する賠償に伴う一定の損失を,会社が契約に基づいて補償する仕組みである。
D&O保険は,役員等の責任追及等による損害を,保険会社が契約の定めに従って填補する仕組みである。
役員の責任そのものを免除する制度とは異なり,補償・保険があるだけで任務懈怠責任がなくなるわけではない。

本記事は,令和8年10月17日に確認した会社法430条の2・430条の3及び施行規則を基に,株式会社の契約内容の決定と責任追及を受けた役員への対応の基本を説明する。
法律上可能な範囲と,実際の契約・約款上の支払範囲を区別する必要がある。

比較事項会社補償契約D&O保険主な契約関係会社と役員等会社と保険会社。役員等が被保険者となる支払の基礎補償契約と法定の補償制限保険約款・特約と法定の決定手続原資会社の財産保険契約に基づく保険金確認事項対象費用,補償禁止,返還・報告対象者,保険事故,限度額,免責,通知・同意
第2 会社補償の対象と補償できないもの
1 責任追及に対処する費用

会社法430条の2第1項1号は,役員等が職務執行に関して法令違反を疑われ,又は責任追及の請求を受けたことに対処するための費用を対象とする。
弁護士費用等についても,どの請求・調査に対応する費用か,契約の対象か,通常要する範囲かを確認する。
通常要する費用の額を超える部分は補償できない(同条2項1号)。

防御費用と,最終的に責任が認められた場合の賠償金は別の基準で判断する。
株主代表訴訟についても,両者を一括して「全て補償できない」又は「全て補償できる」と扱わない。

2 第三者への賠償・和解による損失

同条1項2号は,職務執行に関して第三者に損害賠償責任を負う場合の,賠償又は和解に基づく支払による損失を対象とする。
ただし,会社がその損害を賠償したなら役員等が会社に423条1項の責任を負う場合の当該責任部分や,役員等の悪意・重過失による第三者責任の損失は補償できない(430条の2第2項2号・3号)。

会社自身に対する賠償責任を,会社が補償して実質的に消すこととは区別する。
責任免除・責任限定契約の要件も,補償契約の決議だけで満たされるものではない。

3 不正目的が判明した場合の返還

防御費用を補償した会社が,役員等が自己・第三者の不正な利益を図り,又は会社に損害を加える目的で職務を執行したことを知った場合には,補償額に相当する金銭の返還を請求できる(同条3項)。
悪意・重過失に関する損失の補償禁止と,この不正目的に基づく防御費用の返還の規律は区別する必要がある。

第3 内容決定の機関と利益相反

補償契約の内容は,株主総会,取締役会設置会社では取締役会の決議で決める(会社法430条の2第1項)。
役員等賠償責任保険契約の内容の決定にも,同様の決議が必要である(430条の3第1項)。
代表取締役の署名と,会社として必要な決議の有無を別々に確認する。

両条は,通常の利益相反取引規制等について適用除外を定める。
しかし,内容決定の決議まで不要になるわけではなく,特別利害関係を有する取締役の議決参加は会社法369条2項等により別に確認する。
対象者,契約範囲,会社の負担,職務の適正性への影響を検討して決議資料に残すことが望ましい。

(続きを読む...)会社補償契約とD&O保険の違い―対象費用,決定手続,利益相反と開示(AI作成)

株主総会資料の電子提供制度とは―対象会社,開始時期,書面交付請求と招集通知(AI作成)

目次

第1 電子提供制度で変わること第2 対象会社と対象資料1 定款の定めと上場会社等の義務2 掲載する情報第3 開始日・継続期間と招集通知1 電子提供の開始日2 招集通知に何を記載するか第4 紙の資料を希望する株主の書面交付請求1 基準日までの請求2 書面の省略事項と請求の終了第5 掲載が中断した場合と会社の準備第6 出典と関連記事
第1 電子提供制度で変わること

株主総会資料の電子提供制度は,株主総会参考書類などの情報をウェブサイトに掲載し,株主が閲覧・保存できる状態に置く制度である。
資料を掲載すること,招集通知を送ること,株主が議決権を行使することは別の手続である。
電子提供をしただけで招集通知が不要になるわけでも,株主総会をオンラインだけで開催できるわけでもない。

本記事は,令和8年10月17日に確認した会社法・施行規則を基に,通常の株主総会を招集する会社と資料を受け取る株主の確認事項を説明する。
開催時期,決議事項,出席資格等の基本は,株主総会とはで説明する。

第2 対象会社と対象資料
1 定款の定めと上場会社等の義務

会社法325条の2は,電子提供措置をとる旨を定款で定めることを認めている。
振替株式を発行する会社には振替法159条の2の特則があり,上場会社等では義務的に電子提供制度を利用する仕組みとなっている。
非上場会社でも,定款の定めと招集方法を確認する必要がある。

制度は令和元年会社法改正で設けられ,電子提供関係の改正は令和4年9月1日に施行された。
現在の招集を検討するときは,導入時の経過措置と現在の定款・法令を区別する。

2 掲載する情報

対象は,株主総会参考書類,議決権行使書面,計算書類・事業報告,連結計算書類等に関する情報である。
実際の掲載事項は,書面投票・電子投票の採否,機関設計,定時総会かどうかなどによって異なり,会社法325条の3第1項各号を確認する。
修正した場合には,修正した旨と修正前の事項も電子提供の対象となる。

第3 開始日・継続期間と招集通知
1 電子提供の開始日

開始日は,株主総会の日の3週間前の日と,招集通知を発した日のうち,いずれか早い日である。
招集通知をそれより早く発送する場合は,その発送日までに掲載を始める必要がある。
掲載は株主総会の日後3か月を経過する日まで継続する(会社法325条の3第1項)。

手続基準となる時点確認事項電子提供の開始総会の3週間前の日又は招集通知発送日の早い方資料,掲載先,修正履歴招集通知電子提供を行う場合は総会の2週間前まで日時・場所等とアクセス方法書面交付請求への対応招集通知に際して交付基準日までの請求と交付内容掲載の継続総会の日後3か月を経過する日まで閲覧・保存可能性と障害記録
2 招集通知に何を記載するか

会社法325条の4は,電子提供を行う場合の招集通知の特則を定める。
日時・場所等の法定事項に加え,電子提供措置をとっている旨と,資料を閲覧・保存するために必要な事項を記載する。
会社法施行規則95条の3がアクセス方法等の内容を定めており,「当社ホームページ参照」とだけ書けば常に足りるわけではない。

所定の期限までにEDINETで有価証券報告書を提出する場合には,会社法325条の3第3項の特則がある。
対象事項・提出期限等の要件があるため,有価証券報告書を提出する会社であることだけで,全ての掲載義務がなくなるとは扱わない。

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従業員が社用車を私用・無断で運転した事故と会社の責任―自賠法3条の運行供用者責任,民法715条の使用者責任,従業員への求償及び損害賠償金の税務(AI作成)

目次

第1 結論と確認の順序1 請求の根拠ごとに会社の責任を分ける2 最初に確認する事実第2 人身損害と自賠法3条の運行供用者責任1 運行供用者とは2 会社の車の無断運転でも会社が責任を負う場合3 同乗者に対して会社が責任を負わない場合4 従業員の自家用車を業務に使わせていた場合第3 物損を含む損害と民法715条の使用者責任1 「事業の執行について」は行為の外形から判断される2 私用運転で使用者責任が認められた例3 自家用車の出張利用で使用者責任が否定された例4 規程を作っただけでは責任を免れにくい第4 自賠責保険と任意保険1 自賠責保険は保有者の責任を前提に支払われる2 任意保険は約款の被保険者の範囲を確認する第5 会社から従業員への請求と給与からの控除1 会社の賠償・求償請求は信義則上相当な限度に制限される2 従業員が被害者に賠償した場合3 賠償予定の禁止と賃金全額払第6 会社が支払った損害賠償金の税務第7 確認する資料1 被害者側2 会社側第8 出典と確認範囲1 法令・通達・約款2 裁判例
第1 結論と確認の順序
1 請求の根拠ごとに会社の責任を分ける

従業員が会社の車を私用で,又は会社に無断で運転して事故を起こした場合でも,会社が責任を免れるとは限らない。
最高裁判所は,自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)3条の運行供用者責任についても,民法715条の使用者責任についても,会社と従業員の関係や日常の車の管理状況から,行為の外形を客観的にみて判断してきた。
本記事は,裁判所ウェブサイトで全文を確認した最高裁判所の判決を中心に,被害者,会社及び従業員のそれぞれが確認すべき事項を整理する。
調査基準日は令和8年10月17日である。

結論の要旨は次のとおりである。
①人身損害については,会社が雇用関係にある従業員に車を使わせ,日常の運転・管理の状況から客観的外形的に会社のための運行と認められるときは,私用の無断運転でも会社が自賠法3条の責任を負うとした最高裁判決が複数ある。
②物損を含む損害については,民法715条の「事業の執行について」を行為の外形から判断し,私用運転でも会社の使用者責任を認めた最高裁判決が複数ある。
③他方,従業員が自分の車を会社の許容なく出張に使った事故では使用者責任が否定され,私用禁止を知りながら無断運転をそそのかした同乗者に対しては会社の運行供用者責任が否定された。
④会社が賠償した後に従業員へ請求できる範囲は,信義則上相当な限度に制限される。
⑤会社が支払った損害賠償金は,業務の遂行に関連しない行為によるものであれば,法人税基本通達上,従業員に対する債権として扱われる。

2 最初に確認する事実

①車の所有者,車検証上の使用者及び会社が管理していたか。
②運転した従業員の職務,業務で運転することを許されていたか,その車を使う頻度。
③鍵の保管場所,持出しの管理,私用を禁じる規程の有無と,実際に守られていたか。
④過去の無断使用と,それに対する会社の対応。
⑤事故の日時,場所,運転の目的及び勤務時間との関係。
⑥被害者が無関係の第三者か,無断運転を知りながら同乗した者か。
⑦自賠責保険・任意保険の契約内容と,運転者の範囲を限定する特約の有無。

第2 人身損害と自賠法3条の運行供用者責任
1 運行供用者とは

自賠法3条本文は,「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。」と定める。
同条ただし書は,運行供用者が,自己及び運転者が運行に関し注意を怠らなかったこと,被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったことの全部を証明したときに限り,責任を免れるとしている。
同条は人の生命又は身体の損害についての規定であり,車両の修理費等の物損には適用されない。

2 会社の車の無断運転でも会社が責任を負う場合

最高裁判所第三小法廷昭和39年2月11日判決(昭和38年(オ)第903号,民集18巻2号315頁)は,農業協同組合の運転手が,終業後の無断使用を禁じる建前に反して鍵を持ち出し,組合の自動車を私用で運転して事故を起こした事案である。
組合は無断使用を禁じていたものの,自動車と鍵の管理は従来から必ずしも厳格ではなく,無断運転の例も稀でなかった。
最高裁は,自動車の所有者と運転者との間に雇傭関係等の密接な関係があり,日常の自動車の運転及び管理状況等から客観的外形的に所有者のためにする運行と認められるときは,無断運転でも所有者が自賠法3条の責任を負うとした原審の判断を正当とした。

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株式交付による買収と個人株主の税務―利用範囲,80%要件と同族会社の除外(AI作成)

目次

第1 会社法上の利用可能性と税務上の特例を別に確認する第2 現在の株式交付を利用できる場面1 他の株式会社を新たに子会社とするための制度である2 取得株式数の下限と応募状況を確認する3 株式交換・現物出資との違い第3 個人株主の課税繰延べには別の条件がある1 80%要件は対価の価額で判定する2 一定の同族会社に該当する場合は除外される3 金銭等が交付される場合は全額繰延べではない第4 取得価額と納税資料を買収後まで引き継ぐ第5 弁護士と税理士が契約前に共有する確認事項第6 出典と関連記事
第1 会社法上の利用可能性と税務上の特例を別に確認する

自社株式を対価に他社の株式を取得する買収では,株式交付,株式交換又は株式の現物出資等の方法を検討することになる。
取引を「株式で買う」と説明できても,どの制度を使うかによって,取得できる範囲,必要な手続及び課税関係が異なる。
会社法上の株式交付に該当することだけで,売主株主の課税が当然に繰り延べられるわけではない。

本記事は,令和8年10月17日現在の会社法と,国税庁が公表する個人株主の所得税の取扱いを基に,買収方法を選ぶ際の確認順序を説明する。
日本の居住者である個人が対象会社の株式を譲渡する場面を対象とし,法人株主の法人税,非居住者の国際課税及び具体的な組織再編全体の適格判定は扱わない。

第2 現在の株式交付を利用できる場面
1 他の株式会社を新たに子会社とするための制度である

会社法2条32号の2は,株式会社が他の株式会社を子会社とするため,その株式を譲り受け,譲渡人に自社の株式を交付する制度として株式交付を定める。
ここでいう子会社は,会社法施行規則4条の2により,同規則3条3項1号の議決権の過半数を自己の計算において所有する場合に限定される。
会社法上の子会社概念のすべてが株式交付の対象となるわけではない。

既にこの関係にある子会社の株式を追加取得する取引や,この過半数の関係を新たに生じさせない少数持分の取得には,現在の株式交付制度をそのまま使うことはできない。
対象会社は他の株式会社であり,持分会社や外国会社を対象とする取引とも区別する必要がある。
利用範囲の拡張に関する改正論議と,現在実行できる取引を混同してはならない。

2 取得株式数の下限と応募状況を確認する

株式交付をする株式会社は株式交付計画を作成し,譲り受ける対象会社株式の数の下限,対価となる自社株式,申込期日及び効力発生日等を定める(会社法774条の2,774条の3)。
下限は,効力発生日に対象会社が株式交付親会社の子会社となる数でなければならない。
株式交付は,対象会社の全株主の株式を一律に取得する制度ではないため,誰がどれだけ譲渡するかを契約・応募の段階で確認する。

株主総会の承認の要否,簡易手続の利用,開示,反対株主の権利及び債権者保護手続は,会社法816条の2以下と具体的な計画に即して確認する。
「株式交付だから決議は不要」「債権者保護手続は常に必要」と一括して処理せず,会社の類型,対価及び各例外の条件を検討する。

3 株式交換・現物出資との違い
方法主な構造選択前に確認する事項株式交付対象会社株式を譲り受け,自社株式を交付して新たに子会社化する子会社化の条件,応募・取得下限,対価と税務特例株式交換対象株式会社の発行済株式全部を取得させる組織再編である完全子会社化の目的,当事会社の手続,固有の税務要件株式の現物出資対象会社株式を募集株式の出資財産として給付する募集株式の発行手続,検査役調査の要否,価額不足責任と課税

法務上の方法を変えた場合は,税務の検討もその方法に対応させてやり直す。
株式交付についての課税繰延べの条件を,通常の現物出資や株式交換にそのまま適用してはならない。

第3 個人株主の課税繰延べには別の条件がある
1 80%要件は対価の価額で判定する

国税庁「No.1545 株式等を対価とする株式の譲渡に係る譲渡所得等の課税の特例」は,個人が株式交付で対象会社株式を譲渡し,親会社株式を受け取った場合の特例を説明する。
親会社株式の価額が,交付を受けた金銭と金銭以外の資産の価額の合計に占める割合が80%未満である場合は,特例の対象外である。
株数の80%や,買収後の議決権の80%を意味する要件ではない。

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現物出資の価額証明と弁護士・税理士の責任―設立,増資,DESと評価資料(AI作成)

目次

第1 価額証明を依頼する前に決めること1 最初に区別する四つの事項第2 設立と増資では検査役調査の例外が異なる1 会社設立では会社法33条を確認する2 増資では会社法207条を確認する3 専門家に証明を依頼できるか第3 DESで会社への貸付金を出資する場合第4 価額不足が生じたときの責任1 設立では会社成立時の価額を比較する2 増資では株主となった時の価額を比較する3 検査役調査の免除と無責任を混同しない第5 証明前に確認・保存する資料1 財産,権利帰属,評価条件をそろえる2 税務上の評価目的を確認する第6 出典と関連記事
第1 価額証明を依頼する前に決めること

現物出資を用いて株式会社を設立し,又は成立後の会社が募集株式を発行するときは,出資財産とその価額を明確にし,検査役による調査が必要かを確認する。
弁護士や税理士等による価額の証明は,法定の条件の下で検査役調査を不要とする方法の一つである。
証明書があれば価額不足の責任まで消える制度ではなく,設立と増資では根拠条項も責任を判断する時点も異なる。

本記事は,令和8年10月17日現在の会社法に基づき,企業の担当者と証明業務を検討する専門家が,受任前から証明書交付までに確認する事項を説明する。
以下の資料整理や担当分担は,条文の条件を実務に落とし込むための提案であり,資料をそろえるだけで無過失が認められるとするものではない。

1 最初に区別する四つの事項

最初に,①設立時の出資か成立後の募集株式の発行か,②出資財産は何か,③検査役調査を不要とするどの規定を使うか,④誰がどの資料に基づいて価額を判断するかを決める。
会社設立時の財産引受けも検査役調査等の対象となるが,以下では現物出資を中心に扱う。

財産引受については,会社法28条2号による定款記載と,33条の検査役調査・その例外を別に確認する。
33条10項の価額証明等による調査の例外は,28条2号の定款記載を不要とするものではない。
証明を依頼する段階で,契約締結日,会社の設立登記日,財産・対価・譲渡人に関する定款記載を確認し,現物出資か財産引受か,成立後の新たな購入かを区別する。
設立前支出の契約上の帰属と法人税の処理を分ける手順は,会社設立前の契約・支払と創立費の税務を参照されたい。

第2 設立と増資では検査役調査の例外が異なる
1 会社設立では会社法33条を確認する

設立時の現物出資では,出資者,財産,その価額及び割り当てる設立時発行株式の数等を定款で定める(会社法28条1号)。
検査役の選任申立ては同法33条1項が定め,価額に関する例外は同条10項に置かれている。

主な例外は,①現物出資財産と財産引受けの財産について定款に記載・記録された価額の総額が500万円を超えない場合,②市場価格のある有価証券について定めた価額が法務省令による市場価格を超えない場合,③弁護士・公認会計士・税理士等の証明を受けた場合である。
500万円の判定は,個々の財産を別々に500万円以下とすればよいというものではない。

2 増資では会社法207条を確認する

成立後の会社が募集株式を発行する際の現物出資では,財産の内容と価額を募集事項として定め,原則としてその決定後遅滞なく検査役の選任を申し立てる(会社法199条1項3号,207条1項)。
調査を不要とする場面は207条9項各号に定められている。

例外の根拠増資時に確認する条件207条9項1号現物出資をする引受人に割り当てる株式の総数が,発行済株式総数の10分の1を超えないこと同項2号募集事項として定めた現物出資財産の価額の総額が500万円を超えないこと同項3号市場価格のある有価証券について定めた価額が,法務省令による市場価格を超えないこと同項4号法定の資格を有する者の価額証明を受けること。不動産では鑑定評価も必要であること同項5号会社に対する弁済期到来済みの金銭債権であり,定めた価額が対応する負債の帳簿価額を超えないこと

各号は別の例外である。
1号の株式数の条件や5号の金銭債権の条件を,設立時の33条10項にもそのまま当てはめることはできない。
市場価格の算定方法は,設立では会社法施行規則6条,増資では同規則43条を確認する。

3 専門家に証明を依頼できるか

会社法33条10項3号及び207条9項4号は,弁護士,弁護士法人,弁護士・外国法事務弁護士共同法人,公認会計士,監査法人,税理士又は税理士法人等による証明を定める。

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求人票と実際の労働条件が違うとき-期間の定め・試用期間・定年は求人票どおりになるか(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論1 対象と基準日2 結論の要旨第2 求人票の記載はどこまで労働契約の内容になるか1 求人は申込みの誘引であること2 求人票記載の労働条件は特段の事情がない限り契約内容になること3 会社の内心は表示されなければ契約内容にならないこと4 求人票に書いていない条件は求人票を根拠に求められないこと第3 労働契約はいつ成立するか1 採用内定又は採用決定の通知で成立し得ること2 後日の契約書作成は「確認」にとどまることがあること第4 入社前後の契約書で有期・定年を付けた場合1 変更合意の有効性の判断枠組み2 京都地裁平成29年判決3 大津地裁令和6年判決4 有期への変更を有効とした千代田工業事件との違い第5 有期の合意が認められた場合の検討1 試用目的の期間は試用期間と解され得ること2 雇止めの制限第6 職業安定法上の明示と変更明示1 求人時の明示と契約締結時の明示2 求人時と異なる条件で契約する場合の変更明示3 試用目的の有期契約を使うなら求人時に有期と示すこと第7 実務上の確認事項1 労働者側2 使用者側第8 関連記事第9 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 行政資料
第1 この記事の対象と結論
1 対象と基準日

本記事は,ハローワークの求人票や自社の募集要項で「正社員」「雇用期間の定めなし」「試用期間あり」等と示して採用した後,採用決定の後や入社の前後に,有期の労働契約書や定年を付けた労働条件通知書への署名を求めた場合に,労働契約の内容がどうなるかを扱う。
令和8年10月17日時点の法令を前提とし,裁判例は裁判所ウェブサイト又は判例秘書で確認したものに限って紹介する。
賃金の見込額が求人票と違う場合にも触れるが,中心は契約期間,試用期間及び定年である。

2 結論の要旨

裁判例は,求人票を労働契約の申込みの誘引と位置付けつつ,求人票記載の労働条件は,当事者間でこれと異なる別段の合意をするなどの特段の事情がない限り,労働契約の内容になるとする傾向にある。
採用内定又は採用決定の通知により労働契約が成立した後に作成した契約書は,契約の確認又は変更合意として扱われ,期間の定めのない契約を短期の有期契約に改める合意は,労働者の自由な意思に基づくと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在しなければ,効力が否定され得る。
もっとも,入社から相当期間が経過した後に,意味の明瞭な契約書へ本人が内容を理解して署名した事案では,有期への変更合意を有効とした高裁判決もあり,結論は署名の時期,説明の内容及び本人の認識によって分かれる。
使用者には,職業安定法5条の3第3項により,求人票等で示した労働条件を変更する場合の明示義務がある。

第2 求人票の記載はどこまで労働契約の内容になるか
1 求人は申込みの誘引であること

求人票は,求職者に応募を促すための文書であり,求人票を出しただけで労働契約が成立するわけではない。
東京高裁昭和58年12月19日判決(昭和54年(ネ)第2562号,八州測量事件)は,求人は労働契約申込みの誘引であり,求人票は「本来そのまま最終の契約条項になることを予定するものでない」と述べた。

同判決は,新規学卒者の求人票に「見込額」として記載された基本給について,最低額の支給を保障したものではなく,入社時までに確定される予定の目標額と解した。
他方で,求人者は「みだりに求人票記載の見込額を著しく下回る額で賃金を確定すべきでないことは、信義則からみて明らか」であるとも述べており,求人票の記載が契約内容と無関係になるわけではない。
同事件は,業績悪化の事情や事前の連絡を考慮して信義則違反を否定した事例であり,賃金の見込額という確定前の記載に関する判断である。

2 求人票記載の労働条件は特段の事情がない限り契約内容になること

大阪高裁平成2年3月8日判決(昭和63年(ネ)第644号,判例秘書の判例番号 L04520078,千代田工業事件)は,求人者に真実の労働条件の提示を義務付ける職業安定法の趣旨と,求人票の真実性,重要性及び公共性から,「求人票記載の労働条件は、当事者間においてこれと異なる別段の合意をするなど特段の事情がない限り、雇用契約の内容になるものと解するのが相当である」と判示した。
同判決が根拠とした当時の職業安定法18条の明示義務は,現在の同法5条の3に相当する。

京都地裁平成29年3月30日判決(平成27年(ワ)第1754号,判例秘書の判例番号 L07250797)も,求人票は申込みの誘引であるが,求職者は求人票記載の労働条件が契約内容となることを前提に申し込むとして,同じ一般論を採った。
同判決は,面接で使用者の代表者が定年制は「未定」と答えていても,求人票に定年制なしと記載されていた以上,定年制のない労働契約が成立したと判断した。

3 会社の内心は表示されなければ契約内容にならないこと

使用者が,内心では有期の契約として雇うつもりであったとしても,その意思が求職者に表示され合意されていなければ,契約内容にはならない。
千代田工業事件では,会社は期間の定めのある「特別職」として雇う意思であったが,求人票の雇用期間欄で「常用」に丸を付け,具体的な期間を空欄にし,定年を55歳と記載していたため,期間の定めのない常用従業員として労働契約が成立したとされた。

大津地裁令和6年12月20日判決(令和5年(ワ)第554号,判例秘書の判例番号 L07950875)でも,会社は,求人票の記載は事務担当者の誤りで,本来は2か月の試行的な有期契約を先行させる予定であったと主張した。
同判決は,仮に会社が内心でそのように認識していたとしても,外部に表示されたのは求人票の記載内容であるとして,契約内容に影響しないと判断した。

4 求人票に書いていない条件は求人票を根拠に求められないこと

求人票の記載が契約内容になるという考え方は,労働者に有利な方向にだけ働くものではない。

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証券会社の約款とは―種類・読み方・契約締結前交付書面との違い(AI作成)

目次

第1 証券会社の約款とは第2 約款・契約締結前交付書面・目論見書の違い1 文書ごとに役割が異なる2 「約款」と「約定」も区別する第3 困り事から確認条項を探す方法第4 約款は読んでいなくても効力があるか1 定型約款が契約内容になる条件2 内容の提示と,変更の条件を確認する第5 免責・取引停止・資産返還の読み方1 免責条項は,本文とただし書を一緒に読む2 取引停止・解約と,預り資産の返還を分ける3 住所変更・通知・後見の届出も確認する第6 電子交付の閲覧期間と記録保存は同じか1 5年間という定めを,全記録の保存期間に広げない2 紙での交付を希望する場合第7 相続では,総合取引約款だけで判断しない1 MRF・特定口座・NISAでは規定が異なる2 受入口座の開設と,取引履歴の請求を区別する第8 公式約款と改定版の探し方1 現在の冊子と新旧対照表を組み合わせる2 紛争では,取引時点の版も残す第9 よくある質問1 証券会社の約款は全部読む必要がありますか2 約款と契約締結前交付書面は同じですか3 約款の変更には必ず個別の同意が必要ですか4 免責条項があれば損害賠償を請求できませんか5 電子交付書面が見えなくなったら,記録はなくなったのですか6 名義人が死亡すると,約款によりすべて自動売却されますか第10 主な出典
第1 証券会社の約款とは

証券会社の約款とは,口座の開設,注文の受付,資産の保管,金銭の受払い,電子交付及び口座の解約などについて,証券会社があらかじめ定める契約条件である。
総合取引約款だけで全部が決まるとは限らず,利用する商品・サービスに応じ,特定口座,NISA,オンライン取引等の個別約款も確認する必要がある。

約款は法律そのものではなく,会社ごとに内容が異なる。
本記事は令和8年10月17日を確認基準日とし,SMBC日興証券の「約款・規定集」(2026年4月1日時点)とその後の改定案内を主な具体例として,文書の違いと確認方法を整理する。

最初から全頁を同じ密度で読むより,①利用する口座・サービス,②問題となる出来事,③該当条項,④例外・ただし書,⑤適用時点の版,という順で絞ると読みやすい。
ただし,確認画面に同意する前には,費用,リスク,取引制限その他の重要な条件も確かめる必要がある。

第2 約款・契約締結前交付書面・目論見書の違い
1 文書ごとに役割が異なる
文書主に確認する内容読むときの注意総合取引約款証券会社との取引全般,届出,通知,解約等個別約款の適用関係も確認する。特定口座・NISA等の個別約款口座区分又はサービス固有の条件全商品・全口座へ一律に広げない。契約締結前交付書面対象取引の仕組み,手数料,損失リスク等約款と重なる説明があっても,確認の目的は同一ではない。投資信託の交付目論見書個別ファンドの目的,運用方針,リスク,費用等証券会社の総合取引約款だけでは商品の内容を把握できない。投資信託約款投資信託の信託契約の内容委託者と受託者の信託契約であり,顧客と証券会社の口座約款とは区別する。

SMBC日興証券は,口座の約款類と別に,商品・取引別の契約締結前交付書面等を案内している。
証券口座を開設した事実だけで,後に始める信用取引,外国証券取引その他の条件をすべて確認し終えたことにはならない。
資料は同社のリスク・手数料等の案内で,実際に利用する取引に対応するものを選ぶ。

2 「約款」と「約定」も区別する

「約款」は契約条件を定めた文書であり,株式売買などでいう「約定」は注文に基づく売買の成立を指す。
約定日時や約定価格を調べたい場合は,約款の目次だけでなく,注文履歴,約定履歴又は取引報告書を確認する。

第3 困り事から確認条項を探す方法
確認したいこと探す条項・文書一緒に残す資料注文が受け付けられない注文受付,取引制限,オンライン取引の個別規定注文日時,画面表示,受付・約定の履歴不正ログイン又はシステム障害本人確認,認証方法,免責,会社の補償案内通知,アクセス・取引記録,会社への申告内容口座が停止・解約された取引停止,解約事由,預り資産の返還通知,照会への回答,残高と返還方法電子書面を見られない電子交付の対象,閲覧期間,サービス終了書面名,交付日,閲覧できない画面名義人が死亡した総合取引,特定口座,NISA,商品別の相続規定死亡日残高,現在残高,相続窓口の案内約款が変わった変更条項,改定案内,新旧対照表改定前後の版,周知日,効力発生日

条文の見出しに目的の語がなくても,総則,個別取引,雑則及び別約款に分かれて規定されていることがある。
SMBC日興証券の例では,総合取引約款のオンライン取引の章,雑則及び電子交付サービス約款を行き来して確認する必要がある。

第4 約款は読んでいなくても効力があるか
1 定型約款が契約内容になる条件

民法548条の2は,一定の要件を満たす定型取引について,定型約款を契約内容とする合意,又は約款を準備した者による事前の表示がある場合の取扱いを定めている。
したがって,「全文を読まなかった」という事情だけで,すべての条項の効力が否定されるわけではない。

他方,名称が「約款」であれば必ず同条の定型約款になるわけではない。
同条2項は,相手方の権利を制限し又は義務を加重する条項について,取引の態様・実情及び取引上の社会通念に照らし,信義則に反して相手方の利益を一方的に害する場合の除外を定めている。

2 内容の提示と,変更の条件を確認する

民法548条の3は,契約前又は契約後の相当期間内に請求を受けた場合の定型約款の内容の提示等を定めている。
契約締結前の提示請求を拒んだ場合には,正当な事由等の例外を除き,同法548条の2による組入れの規定を適用しないとする取扱いもある。

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証券会社の契約締結前交付書面とは―交付義務・読むべき項目・電子交付と目論見書の違い(AI作成)

目次

第1 契約締結前交付書面とは第2 交付義務・提供時期と紙・電子の違い1 いつ確認する書類か2 令和7年4月からのデジタル化3 交付書面が不要といわれた場合第3 約款・目論見書・契約締結時交付書面との違い第4 SMBC日興証券の書面集を例にした読み方1 商品と契約の種類を先に選ぶ2 手数料とリスクを分けて確認する3 ウェブの案内と紙の交付請求4 銘柄数だけで分散の程度を判断しない第5 相続で証券口座を開設する場合第6 もらっていない・説明が分からない場合1 提供の有無と内容を確認する2 受領・閲覧と説明内容を分ける3 相談前にまとめる資料第7 よくある質問1 契約締結前交付書面は義務ですか2 契約締結前交付書面が不要な場合はありますか3 契約締結前交付書面はいつ確認しますか4 契約締結時交付書面とは何ですか5 契約締結前交付書面と目論見書の違いは何ですか6 電子交付の資料が読めないときはどうしますか7 交付書面を確認すると商品を買ったことになりますか第8 出典・参考資料
第1 契約締結前交付書面とは

証券会社の契約締結前交付書面は,取引の仕組み,手数料,損失が生じるリスク等を,契約前に確認するための資料である。
口座を開設するときや金融商品を取引するときに確認を求められることがあるが,書面を受け取ることと,その商品を購入する契約が成立することは同じではない。

金融商品取引法37条の3第1項は,金融商品取引業者等に対し,契約を締結しようとするときに,あらかじめ所定の情報を顧客へ提供することを原則として義務付けている。
現在の制度は紙の書面だけを前提とせず,法令の要件に従った電子提供等も含むため,「紙が届いていない」という事情だけで,情報提供がなかったと判断することはできない。

本記事は,令和8年10月17日に確認した法令及び公開資料に基づき,証券会社を利用する個人が交付書面を確認する場面を扱う。
商品の売買,保管・振替,目論見書及び相続手続では資料の役割が異なるため,何の契約について,どの資料を確認しているのかを最初に確かめる必要がある。

第2 交付義務・提供時期と紙・電子の違い
1 いつ確認する書類か

契約締結前の情報提供は,原則として契約を結ぶ前に行われる。
取引後に受け取る取引報告書とは目的が異なり,取引条件やリスクを理解して契約するかを判断するためのものである。

証券会社から口座開設時に書面集を受け取った場合も,その中に将来取引し得る複数の商品や契約についての説明がまとめられていることがある。
書面集に外貨建て債券等の説明が含まれているだけで,その商品を購入済みである,又は購入しなければならないという意味にはならない。

2 令和7年4月からのデジタル化

金融庁は,令和7年4月1日から,証券会社等が顧客のデジタル機器の利用能力に応じて,書面又はデジタルによる情報提供を選択できるようになったと説明している。
金融商品取引業等に関する内閣府令79条は,契約締結前交付書面の交付や,その記載事項の電磁的方法による提供等を定めている。

紙の交付を希望する場合は,証券会社へその旨を請求する。
利用している会社の対応方法を確認し,画面を開けない,文字が読めない又は資料を保存できない場合には,その状態を伝えて確認方法を相談することが必要である。

3 交付書面が不要といわれた場合

紙を毎回受け取らないこと,別の資料やウェブによって情報が提供されること,法令上の情報提供の適用除外があることは,区別して確認する必要がある。
府令79条は目論見書等による方法も定め,府令80条は契約締結前の情報提供を要しない場合を定めている。

「一度受け取れば永久に不要」「1年ごとにすべての書面を郵送する」と一律に考えず,対象商品,取引内容,過去の提供内容及び適用される要件を証券会社へ確認する。
「不要」と説明されたときは,何の資料を省略し,必要な情報をどの方法で提供するのかを具体的に尋ねると整理しやすい。

第3 約款・目論見書・契約締結時交付書面との違い
書類・情報主な役割確認する点契約締結前交付書面契約前の判断に必要な条件・費用・リスク等の説明どの契約・商品を対象とするか約款・規定集口座やサービスの契約条件・手続の規律入出金,移管,解約,届出等の条件投資信託等の目論見書商品の仕組み,運用方針,リスク及び費用等の情報商品名,作成日,費用,換金条件等契約締結時交付書面・取引報告書等成立した契約・取引の内容に関する確認銘柄,数量,価格,手数料及び受渡日等

これらの資料は役割が異なるが,法令上の情報提供方法として関係する場合がある。
目論見書を用いる方法では,必要事項が不足するときに補完する情報等が問題となるため,「目論見書を見れば他の書類はすべて不要」とは限らない。

金融商品取引法37条の4は,契約が成立したとき等の情報提供について別に定めている。
取引前の判断材料と,取引成立後の確認資料を時系列で分けて保存すると,注文内容との食違いを確認しやすい。

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就業規則のハラスメント条項の点検―古い定義,廃止規程の引用,懲戒事由との対応と令和8年10月1日改正(AI作成)

目次

第1 この記事の対象1 規程の文言が認定と処分を左右する2 基準日と資料第2 定義の新旧を照合する1 法令と指針の三つの要素2 モデル就業規則の定義の変化3 「継続的に」等の独自の要件第3 引用している法令・規程を確かめる1 廃止・改称した規程の引用2 令和8年10月1日の条番号の移動第4 禁止条項と懲戒事由を対応させる1 懲戒の種別・事由の定めと周知2 付属規程の「懲戒処分を行う」と懲戒しない措置3 同僚間・部下から上司への言動4 規程と実際の措置を対応させる点検表第5 令和8年10月1日施行の改正に合わせて足す事項1 カスタマーハラスメント2 求職者等に対するセクシュアルハラスメント第6 規程を改めるときの手続1 意見聴取・届出・周知2 労働契約上の効力と変更の時期第7 点検表第8 関連記事第9 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 行政資料
第1 この記事の対象
1 規程の文言が認定と処分を左右する

職場でハラスメントの申告があったとき,会社は,事実を確かめた上で,就業規則やハラスメント防止規程の定義に当てはめ,注意指導又は懲戒処分を検討する。
その際,規程の定義が法令や厚生労働省の指針と違う言葉で書かれていたり,既に廃止した規程を引用していたりすると,認定や懲戒事由への当てはめが難しくなる。

本記事は,就業規則と付属規程のハラスメント条項について,定義,引用している法令・規程,懲戒事由との対応及び令和8年10月1日施行の改正への対応を点検する手順を整理するものである。
個別の規程が有効か,特定の懲戒処分が相当かは,事業場の規程の全体,周知の状況及び具体的な事実に即して判断する必要がある。

2 基準日と資料

本記事は,令和8年10月16日現在の法令,厚生労働省の指針及びモデル就業規則に基づく。
モデル就業規則は,令和7年12月版と平成30年1月版を比べて用いる。

第2 定義の新旧を照合する
1 法令と指針の三つの要素

労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下「労働施策総合推進法」という。)31条1項は,事業主に対し,職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって,業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより労働者の就業環境が害されることのないよう,雇用管理上必要な措置を講ずることを義務付けている。
同条は,令和8年10月1日に施行された令和7年法律第63号による改正の前は,30条の2であった。

厚生労働省のパワーハラスメント指針(令和2年厚生労働省告示第5号)は,職場のパワーハラスメントを,①優越的な関係を背景とした言動であって,②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより,③労働者の就業環境が害されるものであり,①から③までの要素を全て満たすものとしている。
同指針は,同僚又は部下による言動であっても,行為者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており,その協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの等は,優越的な関係を背景とした言動に含まれるとしている。

2 モデル就業規則の定義の変化

厚生労働省のモデル就業規則の令和7年12月版の第12条は,「職務上の地位や人間関係などの職場内の優越的な関係を背景とした、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。」と定めている。
これに対し,平成30年1月版の第12条は,「職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景にした、業務の適正な範囲を超える言動により、他の労働者に精神的・身体的な苦痛を与えたり、就業環境を害するようなことをしてはならない。」としていた。

平成30年1月版の解説は,平成24年3月に厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」が取りまとめた提言の概念整理を参考として掲げており,同版の定義はこの整理に沿うものと考えられる。
古い時期に作った就業規則に「優位性」「業務の適正な範囲」等の言葉が残っている場合は,現行の三つの要素と照らし合わせ,意味の違いが生じていないかを確かめる。

3 「継続的に」等の独自の要件

平成30年1月版の解説は,何が業務の適正な範囲を超えるかの具体的な判断について,行為が行われた状況や行為が継続的であるかどうかによっても左右される部分があるとしていた。
現行の指針も,業務上必要かつ相当な範囲を超えたかの判断に当たり,言動の態様・頻度・継続性等の様々な要素を総合的に考慮するとしている。
これらは考慮する要素であり,言動が継続していることをパワーハラスメントの成立に欠かせない要件とするものではない。

就業規則の禁止条項や懲戒事由が,継続的に誹謗中傷する等の形でパワーハラスメントを定めていると,一回の大声での叱責や威圧的な言動に懲戒処分をするときに,その条項には当てはめにくくなる。
その場合は,粗暴な言動の禁止や互いの人格の尊重といった服務規律の条項への違反として構成できるかを別に検討し,次の改定の機会に条項の文言を指針に合わせることを検討する。

第3 引用している法令・規程を確かめる
1 廃止・改称した規程の引用

パワーハラスメントとセクシュアルハラスメントの防止規程を一本のハラスメント防止規程にまとめ直したときは,就業規則の禁止条項や懲戒事由が旧規程の名称を引用したまま残っていないかを確かめる。

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マンション共用部分の損害賠償請求権は誰に帰属するか―区分所有法26条・旧区分所有者・管理者の和解権限(AI作成)

目次

第1 結論―請求権者,代理人及び和解権限を分ける第2 損害賠償請求権は誰に帰属するか1 共用部分の持分と損害賠償請求権は同じではない2 区分所有権の譲渡だけでは契約上の請求権は当然に移らない第3 改正区分所有法26条による管理者の代理1 請求及び受領の代理2 旧区分所有者の別段の意思表示3 訴訟追行と通知第4 標準管理規約24条の2と実際の管理規約1 標準管理規約が示す一元的な権利行使2 既に譲渡した旧区分所有者には後の規約変更が当然に及ばない第5 管理者はどこまで和解できるか1 請求・受領の代理と権利処分を区別する2 裁判上の和解と裁判外の和解3 責任不承認条項と清算条項は役割が異なる第6 和解・合意書で確認する事項1 権利者と授権資料2 給付と清算の範囲3 資料の保存第7 相談時に準備する資料第8 関連する記事第9 主な出典と記事の基準日
第1 結論―請求権者,代理人及び和解権限を分ける

マンション共用部分の欠陥を理由とする損害賠償請求では,①誰が請求権を取得したか,②管理者が誰を代理して請求・受領できるか,③規約又は集会決議に基づいて訴訟追行できるか,④請求の減額・放棄又は清算を含む和解を誰がどこまで決められるかを分けて確認する必要がある。
管理組合が共用部分を管理していることだけで,個々の区分所有者が取得した契約上の損害賠償請求権が当然に管理組合へ移るわけではない。

令和8年4月1日に施行された改正区分所有法26条は,管理者が,現区分所有者だけでなく一定の旧区分所有者を含む請求権者を代理して,保険金,損害賠償金又は不当利得返還金の請求及び受領を行えることを明確にした。
ただし,請求権そのものを管理組合へ当然に移転させる制度ではなく,旧区分所有者には書面又は電磁的方法による別段の意思表示も認められている。

実際の交渉又は和解では,権利者の範囲,請求原因,規約,集会決議,委任,別段の意思表示及び和解対象を照合する。
解決金の支払又は補修への協力に合意することと,争われていた事実又は法的責任を認めることも同じではないため,責任不承認条項と清算条項の役割を区別することが重要である。

第2 損害賠償請求権は誰に帰属するか
1 共用部分の持分と損害賠償請求権は同じではない

区分所有者は共用部分を共有するが,共用部分について問題が見つかったときに生じる請求権の内容は,請求原因によって異なる。
分譲契約の契約不適合を理由とする請求権は,原則として売主と売買契約を締結した買主が取得する。
不法行為,請負契約,保証,保険又は不当利得を根拠とする場合は,それぞれの要件と当事者関係を別に確認する。

したがって,「現在の区分所有者である」「管理組合が修繕を行う」「共用部分に関する問題である」という一事だけで,すべての請求権者が決まるわけではない。
誰が契約を締結し,いつどの請求権を取得し,債権譲渡,代位弁済,保険金支払その他の権利移転があったかを確認する必要がある。

2 区分所有権の譲渡だけでは契約上の請求権は当然に移らない

法務省民事局長は令和7年5月14日の国会答弁で,分譲契約の契約不適合に基づく損害賠償請求権は区分所有権とは別個の財産権であり,区分所有権が譲渡されても当然に移転するものではないと説明している。
改正法は,この請求権を現区分所有者へ当然承継させる仕組みではなく,管理者による代理行使を整備する方法を採った。

売買契約に債権譲渡条項があるか,別途の債権譲渡がされたか,権利の一部が既に行使又は清算されていないかも確認する。
旧区分所有者に権利が残る場面と,現区分所有者が別の契約又は不法行為に基づく権利を取得する場面は併存し得るため,一括して処理しない方がよい。

第3 改正区分所有法26条による管理者の代理
1 請求及び受領の代理

建物の区分所有等に関する法律26条は,管理者がその職務に関し区分所有者を代理することを定めている。
改正後の同条は,共用部分等に関する保険金,損害賠償金及び不当利得返還金の請求・受領について,請求権を有する現区分所有者又は旧区分所有者を管理者が代理できることを明確にした。

この制度の目的は,区分所有権の転売があっても,共用部分に関する請求を管理者がまとめて行いやすくすることにある。
もっとも,管理者は権利者の代理人であり,管理組合が請求権を当然に取得するわけではない。
管理者が金銭を受領した後の保管,修繕への充当又は権利者への分配についても,法令,規約,集会決議及び権利者の承諾を確認する必要がある。

2 旧区分所有者の別段の意思表示

旧区分所有者が,管理者に対し書面又は電磁的方法で別段の意思表示をしたときは,改正区分所有法26条による代理又は訴訟追行の仕組みがその旧区分所有者に適用されない。
したがって,転売履歴があるマンションでは,旧区分所有者の特定,連絡先,請求権の有無,債権譲渡及び別段の意思表示の有無が実務上の重要な確認事項となる。

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同僚間のパワハラが疑われたときの会社対応―優越的な関係,事実調査,暫定分離,厳重注意及び配置転換(AI作成)

目次

第1 この記事の対象1 上司から部下への言動だけが対象ではない2 法令上の三つの要素第2 同僚間の「優越的な関係」を具体化する1 役職名だけで決めない2 優越性は言動が行われた時点で確認する第3 一連の出来事を場面ごとに分ける1 業務上の指示と私的・感情的な追及を分ける2 前後の経緯を切り離さない第4 初動では保護と証拠保全を並行する1 最終認定前でも暫定措置を検討する2 消える資料から保全する第5 聴取と記録の作り方1 自分が見聞きした事実と伝聞を分ける2 資料の種類を混同しない第6 パワーハラスメントの認定と対応を分ける1 三要素を場面ごとに当てはめる2 認定と措置の重さは別に検討する第7 厳重注意と懲戒処分を区別する1 非懲戒の厳重注意にする場合2 懲戒処分を行う場合第8 配置転換の目的と手続を分ける1 暫定分離と恒久的な配置転換は目的が異なる2 配転命令の有効性を別に確認する第9 当事者への説明と事後確認1 行為者への説明2 相談者への説明3 再発防止と見直し4 調査結果への異議と追加確認の範囲第10 実務チェックリスト1 初動と調査2 暫定措置,注意及び異動第11 出典・参考資料1 法令・行政資料2 関連記事
第1 この記事の対象
1 上司から部下への言動だけが対象ではない

職場のパワーハラスメントは,上司から部下への言動に限られない。
同僚又は部下であっても,業務上必要な知識・経験を持ち,その協力がなければ業務を円滑に進めることが難しいなど,相手が抵抗又は拒絶しにくい関係があれば,「優越的な関係」を背景とする言動になり得る。

本記事は,同僚間の言動について,会社が相談を受けてから,事実確認,調査中の接触回避,認定,注意・懲戒の選択,配置転換及び事後確認へ進む実務上の順序を整理するものである。
個別の言動がパワーハラスメントに当たるか,懲戒処分又は配転命令が有効かは,具体的な事実,就業規則及び雇用契約に即して別に判断する必要がある。

2 法令上の三つの要素

労働施策総合推進法31条1項及び厚生労働省の指針によれば,職場のパワーハラスメントは,①優越的な関係を背景とした言動,②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動,③労働者の就業環境が害されることの三要素を全て満たすものである。
客観的に見て業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示又は指導は,これに当たらない。

法令上の類型と他のハラスメントとの関係は,職場のハラスメント防止-種類・事業主の措置義務・主要最高裁判例(AIリライト)で説明している。

第2 同僚間の「優越的な関係」を具体化する
1 役職名だけで決めない

同僚間の事案では,勤続年数が長い,声が大きい又は性格が強いという抽象的な評価だけで,「優越的な関係」を認定しない方がよい。
会社は,業務分担,作業手順を実際に決めている者,質問・承認・引継ぎの経路,代替要員の有無,特定の知識又は技能への依存,二人だけになる時間,相手が拒絶した場合の業務上の影響などを確認する。

形式上の役職が同じでも,一方が事実上作業を割り振り,他方がその者の協力なしに仕事を続けにくい状態であれば,関係の実態を記録する必要がある。
反対に,勤続年数の差だけで相手が抵抗又は拒絶できない蓋然性が高いとまではいえない場合もある。

言動を受けた者がその場で反論したことや,一時的に声を強めたことだけで,日常の業務上の関係まで対等であったとは判断できない。
反論・拒絶の実情は一つの判断資料となるが,実際の指示系統,知識・技能への依存及び協力を得られない場合の支障などと併せて確認する。

同僚間の行為も対象に含むと定める社内規程でも,その定義が優越的な関係を要件としている限り,同僚間であることだけで要件の確認が不要になるわけではない。
認定の前に,規程の定義,就業規則の禁止条項及び懲戒事由がどの文言で書かれているかを確かめ,「継続的に」を要件とする古い定義等が残っていれば,一回の言動への当てはめを別に検討する。
規程の点検の方法は,就業規則のハラスメント条項の点検―古い定義,廃止規程の引用,懲戒事由との対応と令和8年10月1日改正で説明している。

2 優越性は言動が行われた時点で確認する

優越的な関係の有無は,会社が後に配置転換をした結果ではなく,問題となる言動が行われた時点の関係を基準に確認する。
組織図,職務分掌,勤務表及び資格一覧だけでなく,実際の指示系統を知る上司・同僚の説明も対応させることが重要である。

第3 一連の出来事を場面ごとに分ける
1 業務上の指示と私的・感情的な追及を分ける

同じ日に複数の応酬がある場合は,「一日中怒鳴られた」又は「仕事の注意をしただけ」という一括した評価から始めず,場面ごとに分ける。
例えば,機械又は運搬作業の速度に関する指示,休憩中の私的な話題を理由とする追及,謝罪の言葉,退職を示唆する発言は,目的も業務上の必要性も異なるため,それぞれ日時,場所,発言,声量,距離,継続時間及び同席者を確認する。

作業の安全又は納期のために一定の指示が必要であったとしても,そのことから,別の場面の人格攻撃,威圧的な反復又は私的な話題への過度な追及まで正当化されるわけではない。

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NISAで困ったときの法律問題――相続・離婚・自己破産・差押え・贈与・成年後見(AI作成)

目次

第1 結論――NISAは非課税制度であって財産保護制度ではない1 最初に確認する五つの事項2 場面ごとの短い答え第2 NISAとは何か1 非課税になるもの2 非課税にならないもの第3 NISA口座の名義人が死亡した場合1 相続人のNISAには移せない2 死亡届と税務を分けて確認する第4 離婚時にNISAは財産分与の対象になるか1 口座区分ではなく取得時期と原資を見る2 相手方のNISAへ直接移すことはできない第5 自己破産・差押えではNISAを残せるか1 NISAだから残せるわけではない2 iDeCoとは法律上の扱いが異なる第6 NISAを家族へ贈与できるか1 商品を受贈者のNISAへ入れることはできない2 親が子のために拠出するとき第7 認知機能が低下したときのNISA口座1 家族であるだけでは取引権限にならない2 事前の備えと制度の限界第8 海外転出時のNISA1 出国理由と届出で扱いが変わる2 国外転出時課税とは別に判定する第9 相談時にそろえる資料第10 主な公式資料

NISAは投資で生じた一定の利益を非課税にする制度であり,口座内の株式・投資信託が誰の財産か,相続できるか,財産分与や破産手続の対象になるかを一括して決める制度ではない。
相続,離婚,債務整理,贈与,認知機能の低下又は海外転出が生じたときは,非課税の問題と,財産の帰属・処分・評価・手続の問題を分けて確認する必要がある。
本記事は,NISAに関する法律問題の入口を示し,詳しい個別記事へ案内するものである。

第1 結論――NISAは非課税制度であって財産保護制度ではない
1 最初に確認する五つの事項

NISAで法律問題が生じたときは,①口座名義人,②保有商品と数量,③取得時期と原資,④問題が生じた基準日,⑤その後に行われた売却・移管・払出しを確認する。
口座名だけを見て結論を出すと,相続税,財産分与,破産財団,贈与税又は成年後見の問題を取り違えるおそれがある。

2 場面ごとの短い答え

相続では,被相続人のNISA口座や非課税枠を相続人が引き継ぐことはできず,相続した商品は相続人の課税口座で受け入れる。
離婚では,NISA口座にあるという理由だけで共有財産又は特有財産になるのではなく,取得時期,原資,夫婦の寄与及び取引履歴で判断する。
自己破産や差押えでは,NISAであること自体による差押禁止はなく,口座内の商品は財産として検討対象になる。
贈与では,贈与された商品を受贈者のNISA口座へそのまま入れることはできず,課税口座で受け入れた上で贈与税等を検討する。
認知機能が低下した場合は,家族であることだけで取引できるわけではなく,事前の代理契約,金融機関のサービス又は成年後見等の権限を確認する。

第2 NISAとは何か
1 非課税になるもの

金融庁のNISA説明のとおり,NISAは少額投資非課税制度であり,NISA口座で取得した対象商品の売却益及び配当・分配金を一定の要件で非課税とする。
令和6年以後の制度では,つみたて投資枠と成長投資枠を併用でき,非課税保有期間は無期限である。

2 非課税にならないもの

NISAは,相続税,贈与税,離婚時の財産分与,破産手続又は民事執行を一律に免除する制度ではない。
また,国税庁のNISA案内が説明するように,NISA口座内の商品を売却して損失が生じても,その損失はないものとみなされ,課税口座の利益との損益通算や繰越控除はできない。

第3 NISA口座の名義人が死亡した場合
1 相続人のNISAには移せない

日本証券業協会のNISA FAQは,相続により取得した上場株式等を相続人のNISA口座へ受け入れることはできず,特定口座又は一般口座へ受け入れると説明している。
相続人が特定口座で受け入れるには,被相続人のNISA口座と同じ証券会社に相続人の特定口座があることなどの条件があるため,遺産分割前に受入口座と必要書類を確認する。

2 死亡届と税務を分けて確認する

相続人は,死亡を知った日以後遅滞なく,NISA口座を開設している金融機関へ非課税口座開設者死亡届出書を提出する。
死亡から届出までにNISA口座で支払われた配当等は遡って課税されることがあるため,死亡日,配当の基準日・支払日及び届出日を記録する。
相続税評価,死亡日後の取得価額及び遺産分割・移管の詳しい手順は,NISAを相続するとどうなるかを参照されたい。

第4 離婚時にNISAは財産分与の対象になるか

(続きを読む...)NISAで困ったときの法律問題――相続・離婚・自己破産・差押え・贈与・成年後見(AI作成)

NISAは自己破産・差押えでどうなる?換価・自由財産・iDeCoとの違い(AI作成)

目次

第1 結論――NISAであること自体は換価・差押えを妨げない1 自己破産の結論2 差押えの結論3 iDeCoとの違い第2 NISAとiDeCoを混同しない1 制度の目的と法的効果が異なる2 比較表第3 自己破産でNISAはどう評価されるか1 開始時点の財産を基準にする2 評価額と換価額は一致しないことがある3 NISAの上限額は資産価値の上限ではない第4 自由財産として残せる場合があるか1 99万円以下という説明の範囲2 自由財産拡張は裁判所の判断である3 少額なら必ず残るわけではない第5 申立前に売却・出金してよいか1 売却しても財産が消えるわけではない2 家族名義への移転や一部債権者への弁済に注意する3 損失は他口座と通算できない第6 債権者がNISAを差し押さえる場合1 まず金融機関と権利の内容を特定する2 差押えと直ちに全商品が売却されることは同じではない3 税金の滞納処分は別手続である第7 個人再生・任意整理との違い1 個人再生では清算価値に影響する2 任意整理でも返済可能性の資料になる第8 相談時にそろえる資料第9 よくある質問1 NISAが100万円未満なら自由財産になるか2 自己破産の前にNISAを解約すれば申告しなくてよいか3 NISAとiDeCoはどちらも差し押さえられないか4 NISAを売却すると税金がかかるか第10 関連記事と主な一次・公式資料

NISA口座にある株式・投資信託は,自己破産を申し立てても当然に残せる財産ではなく,債権者から当然に差し押さえられない財産でもない。
NISAは運用益を非課税にする制度であり,保有商品を差押禁止財産にする制度ではないからである。
本記事は,破産財団,自由財産,民事執行,iDeCoとの違い及び申立前後にそろえる資料を整理する。

第1 結論――NISAであること自体は換価・差押えを妨げない
1 自己破産の結論

破産法34条1項は,破産手続開始時に破産者が有する一切の財産を原則として破産財団に属させる。
NISA口座内の上場株式や投資信託も経済的価値を有する本人の財産であり,NISAであることだけを理由に破産財団から外れる規定はない。

2 差押えの結論

民事執行でも,NISA口座内の商品又は証券会社に対する権利が,NISAであるという理由だけで差押禁止になるわけではない。
実際の執行方法は,上場株式,投資信託,預り金その他の資産の種類,保管・管理の仕組み及び証券会社との契約により異なるため,差押命令の対象を特定する必要がある。

3 iDeCoとの違い

確定拠出年金法32条1項は,給付を受ける権利について,譲渡,担保提供及び差押えを原則として禁止している。
この差押禁止は法律が特に設けたものであり,NISAには同じ規定がない。

第2 NISAとiDeCoを混同しない
1 制度の目的と法的効果が異なる

NISAは,金融庁のNISA説明のとおり,対象商品の売却益及び配当・分配金を非課税にする制度である。
iDeCoは,老後の所得確保を目的とする確定拠出年金制度であり,加入者等が有する給付請求権について法律上の処分・差押制限がある。

2 比較表
項目NISAiDeCo中心的な法的効果一定の運用益・配当等の非課税老後給付のための年金制度と税制優遇差押禁止NISA固有の差押禁止規定はない確定拠出年金法32条により給付を受ける権利は原則として差押禁止中途換金保有商品を売却できるが,商品・市場・金融機関の手続による原則として一定年齢まで給付を受けられず,例外は限定される破産時の出発点保有商品を財産として評価する差押禁止財産として破産財団に属しないかを検討する

iDeCo,小規模企業共済及び中小企業退職金共済の扱いは,自己破産するとiDeCo・小規模企業共済・中退共はどうなるかを参照されたい。

第3 自己破産でNISAはどう評価されるか
1 開始時点の財産を基準にする

破産手続では,原則として破産手続開始時に保有する財産が破産財団の基準になる。
NISA口座については,金融機関,口座区分,銘柄,数量,基準価額・市場価格,預り金及び未受渡取引を明らかにし,申立時と開始決定時の変動も説明できるようにする。

2 評価額と換価額は一致しないことがある

上場株式の市場価格,投資信託の基準価額,売却手数料,受渡日及び価格変動により,残高報告書の表示額と実際の換価額は一致しないことがある。
申立書へ記載する評価の基準日と,破産管財人が実際に売却する時点を区別する。

3 NISAの上限額は資産価値の上限ではない

非課税保有限度額は買付代金を基礎に管理される税制上の枠であり,現在の時価の上限ではない。

(続きを読む...)NISAは自己破産・差押えでどうなる?換価・自由財産・iDeCoとの違い(AI作成)

自由診療・栄養療法・サプリメントの医療費控除―治療,予防,医師の指示及びセルフメディケーション税制(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論第2 通常の医療費控除は支出の目的と法的な性質で判断する1 所得税法と施行令の枠組み2 自由診療であることだけでは決まらない第3 治療と予防・健康増進を区別する1 治療又は療養に必要な医薬品2 健康診断,検診及び予防接種第4 栄養療法・サプリメントは診療費と商品代を分けて確認する1 医薬品と食品は同じではない2 医師の処方又は指示は十分条件ではない3 支出ごとの確認表第5 セルフメディケーション税制は通常の医療費控除とは別に選択する1 対象商品と一定の取組2 通常の医療費控除との選択第6 弁護士・税理士が確認し,保存する資料1 医療機関又は販売者に確認する事項2 申告と紛争に備えて保存する資料第7 税務,医学的根拠,薬事承認,保険適用及び広告は別の問題である第8 出典と確認範囲
第1 この記事の対象と結論

自由診療の費用は,公的医療保険が適用されないという理由だけで医療費控除から除外されるものではない。
他方,医療機関で支払い,医師から勧められ,又は領収書に「治療用」と記載されていても,栄養補助食品,健康食品又はサプリメントの購入費が当然に医療費控除の対象となるわけではない。

通常の医療費控除では,支出ごとに,①医師又は歯科医師による診療・治療の対価か,②治療・療養に必要な医薬品の購入費か,③診療等を受けるため直接必要な費用か,④予防・健康増進又は日常生活のための支出かを区別する必要がある。
本記事は令和8年10月16日時点の法令,国税庁の公表資料,公表裁決及び裁判例に基づき,この確認順序を整理するものである。

第2 通常の医療費控除は支出の目的と法的な性質で判断する
1 所得税法と施行令の枠組み

所得税法73条は,居住者が自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の医療費を支払った場合の所得控除を定めている。
所得税法施行令207条は,医師又は歯科医師による診療・治療,治療・療養に必要な医薬品の購入等の対価のうち,病状等に応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分を対象としている。

控除額を計算するときは,その年に実際に支払った対象医療費から,保険金,給付金又は損害賠償金等で補填される部分を差し引く。
未払額は支払った年の対象であり,領収書の合計額と控除額は同じではない。

2 自由診療であることだけでは決まらない

医療費控除の要件は,健康保険が適用されたかどうかではなく,支出の内容が法令上の診療・治療等の対価に当たるか,病状等に応じた通常必要な水準かという点にある。
国税庁「医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例」も,自由診療による歯科治療について,一般的な水準を著しく超える特殊なものを除き,対象になり得ると説明している。

医療機関への一括支払に,診察料,検査料,施術料,医薬品代,食品・サプリメント代又は会費等が含まれる場合は,明細を分ける必要がある。
診察料が対象になり得ることと,併せて販売された全商品が対象になることは別問題である。

第3 治療と予防・健康増進を区別する
1 治療又は療養に必要な医薬品

国税庁「医療費控除の対象となる医療費」は,治療又は療養に必要な医薬品の購入費を対象とする一方,ビタミン剤等であっても,疾病の予防又は健康増進のために用いられるものの購入費は対象外としている。
したがって,同じ医薬品でも,具体的な疾病の治療に用いたのか,健康維持又は予防のために用いたのかを確認する必要がある。

2 健康診断,検診及び予防接種

人間ドック,健康診断その他の検診費用は,疾病の治療を目的としないため,原則として通常の医療費控除の対象にならない。
ただし,国税庁のQ&Aは,健康診断等によって重大な疾病が発見され,かつ,引き続きその疾病の治療を行った場合には,治療に先立つ診察と同様に扱い,その費用も対象になるとしている。

予防接種の費用は,通常は疾病の予防のための支出であり,通常の医療費控除の対象ではない。
もっとも,一定の予防接種を受けた事実は,後述するセルフメディケーション税制の「一定の取組」に当たり得るが,そのことは予防接種費用自体が同税制による控除対象になるという意味ではない。

第4 栄養療法・サプリメントは診療費と商品代を分けて確認する
1 医薬品と食品は同じではない

所得税基本通達73-5は,施行令207条2号の医薬品を,医薬品医療機器等法2条1項の医薬品とし,医薬品であっても予防又は健康増進のために用いられるものは医療費に当たらないとしている。
サプリメント,健康食品,栄養補助食品又は特別用途食品という表示だけから医療費控除の可否は決まらないが,食品であって医薬品ではない商品を,「治療用」という説明だけで医薬品の購入費として扱うことはできない。

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弁護士・税理士が事例をウェブ公開するときの確認事項―守秘義務,匿名化,同意,広告表示及び生成AI(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論第2 最初に区別する情報1 原資料,内部処理及び公開表示2 確認済み事実,評価及び仮想事例第3 弁護士の守秘義務と広告規程1 守秘義務は個人情報だけを対象としない2 依頼者の同意と匿名化による例外を混同しない3 勝訴率,成果及び保証の表示第4 税理士の守秘義務と広告表示1 税理士法上の守秘義務2 所属税理士会の規則を確認する第5 同意だけで公開できるとは限らない1 同意の対象を具体化する2 依頼者以外の情報を確認する3 再識別の危険を確認する第6 生成AIを事例作成に使う場合1 入力前に処理条件を確認する2 公開用コピーを作る3 出力を原資料と照合する第7 公開前の確認手順1 事例カードを作る2 公開用文章を別に承認する第8 公開後の管理と効果測定1 訂正,非表示及び削除2 件数より判断の質を測る第9 短いチェックリスト第10 一次資料と裁判例の位置付け第11 関連記事第12 出典・参考資料
第1 この記事の対象と結論

この記事は,弁護士又は税理士が,法律相談,受任事件,税務相談又は税務業務に関する事例を,事務所のウェブサイト,ブログ,SNS,動画その他の外部媒体で紹介するときの確認事項を扱う。
顧客の資料を事務所内部で処理することと,その内容を第三者が閲覧できる媒体に掲載することは,目的,閲覧者及び危険が異なる別の行為である。

氏名を削除し,又は依頼者の同意を得ただけで,常に公開できるわけではない。
相談者又は依頼者以外の情報,複数の事実を組み合わせた再識別,公表による不利益,広告表示の正確性及び生成AIへの入力条件を,それぞれ確認する必要がある。

公開前には,少なくとも次の順序で確認する。

1. 原資料と利用目的を特定する。
2. 守秘義務,個人情報,契約上の秘密及び第三者の権利を分けて検討する。
3. 実在事例,複数事例を統合した事例及び仮想事例を区別する。
4. 同意の対象,媒体,期間及び撤回・削除の扱いを明確にする。
5. 氏名を外した後も,再識別と不利益のおそれを確認する。
6. 広告規程,所属会の規則及び表示の裏付けを確認する。
7. 生成AIを使う場合は,入力範囲と処理条件を先に決める。
8. 公開する文章を原資料と照合し,承認者と確認日を記録する。
9. 公開後の訂正,非表示及び削除の窓口を決める。

第2 最初に区別する情報
1 原資料,内部処理及び公開表示

原資料には,依頼者から受領した文書,聞取り記録,メール,帳簿,申告書,証憑,裁判所提出書面,相手方の主張及び第三者の個人情報等が含まれる。
これらを事件又は税務業務の遂行のために内部で検討することと,事例紹介のために公開することを同じ利用として扱わない。

公開用の文章を作る際は,原資料から必要事項を抽出した作業用メモと,公開候補の文章を分ける。
公開候補には,元のファイル名,住所,日付,金額,業種,家族関係,珍しい取引又は紛争経過等,単独では氏名でなくても本人を推測させる情報が残ることがある。

2 確認済み事実,評価及び仮想事例

事例には,原資料で確認できる事実,専門家による評価,依頼者の感想及び説明のために置いた仮定が混在しやすい。
公開文では,これらを混同せず,どの部分が実際の取扱事例で,どの部分が一般化又は仮想化した説明であるかを読者に分かるようにする。

複数事例を組み合わせた場合は,特定の一件をそのまま紹介したものではないことを明示する。
架空の依頼者の声,実在しない成功実績又は確認していない数値を,実際の経験のように表示してはならない。

第3 弁護士の守秘義務と広告規程
1 守秘義務は個人情報だけを対象としない

弁護士法23条は,弁護士又は弁護士であった者について,職務上知り得た秘密を保持する権利及び義務を定めている。

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税理士事務所がクラウド会計・給与サービスの漏えい通知を受けたとき―顧問先別の影響確認,マイナンバー,e-Tax及び業務継続(AI作成)

目次

第1 税理士事務所に固有の初動課題1 一つの通知を顧問先ごとの影響へ分解する2 直ちに行うこと,当日中に行うこと第2 契約主体,利用者及びデータを固定する1 提供事業者,事務所及び顧問先の三者を分ける2 顧問先別の影響表を作る第3 認証情報,API及び証拠を点検する1 パスワードだけで終わらせない2 通知,ログ及び操作履歴を保全する3 税理士用電子証明書の所在と失効を確認する第4 e-Taxと期限管理を切り離さない1 税理士の認証と納税者の情報を区別する2 送信結果とメッセージを独立して確認する3 業務継続表を顧問先ごとに作る第5 マイナンバーを含むかを別に判定する1 個人データ一般と特定個人情報を分ける2 委託元・再委託先の役割を確認する第6 報告・通知・顧客連絡を整理する1 個人情報保護委員会への報告2 顧問先と本人への説明第7 保存義務と不要な複製を分ける1 税理士法41条の帳簿2 削除と証拠保全を両立させる第8 提供事業者への質問と契約の見直し1 提供事業者へ確認する事項2 契約と平時の台帳へ戻す第9 税理士事務所の確認チェックリスト第10 関連記事第11 出典
第1 税理士事務所に固有の初動課題
1 一つの通知を顧問先ごとの影響へ分解する

税理士事務所がクラウド会計,給与計算,証憑保管又は電子申告に関する漏えい通知を受けた場合,提供事業者の全体発表を読むだけでは足りない。
事務所自身の契約,職員アカウント,各顧問先から付与された権限,保存された申告・給与・マイナンバー関係資料及び申告期限への影響を分けて確認する必要がある。

本記事は,令和8年10月16日時点の公表資料に基づき,税理士事務所が提供事業者から不正アクセス,設定不備その他の漏えい等の通知を受けた場合の確認順序を整理するものである。
個別サービスの安全性又は個別事案の違法性を判定するものではなく,事実,提供事業者の説明,実務上の推認及び未確認事項を分けて扱う。

2 直ちに行うこと,当日中に行うこと

直ちに行うことは,公式サイト又は契約書記載の窓口から通知の真偽を確認し,不審な通信・セッション・アカウントを止め,消去又は上書きされる前に関係ログと通知原本を保全することである。
メール本文のリンクだけを起点にせず,普段のブックマーク又は手入力した公式URLから案内を確認する。

当日中に,①影響を受けたサービスと期間,②事務所・職員・顧問先のアカウント,③保存又は連携していたデータ,④次の申告・納付・給与処理期限,⑤行政報告・本人通知・顧客通知の担当を一覧にする。
原因調査の完了を待ってから期限管理を始めるのではなく,封じ込め,証拠保全,影響確認及び代替業務を並行する。

第2 契約主体,利用者及びデータを固定する
1 提供事業者,事務所及び顧問先の三者を分ける

同じクラウド画面を利用していても,契約者,個人データの取扱主体,管理者,通常利用者及び費用負担者が同じとは限らない。
顧問先が契約したアカウントに事務所が招待されている場合と,事務所が契約した環境へ顧問先データを取り込んでいる場合とでは,権限停止,ログ取得,通知及び契約上の連絡先が異なる。

委託先で事故が起きたことは,委託元の確認・報告・本人通知が当然に不要になることを意味しない。
契約名義と実際のデータフローを照合し,誰が個人情報取扱事業者又は個人番号関係事務実施者となるかを事案ごとに確認する。

2 顧問先別の影響表を作る

対象件数の総数だけでは,個別顧問先の影響を判断できない。
次の表のように,顧問先ごとにアカウント,データ,期間,期限及び連絡担当を対応させる。

項目確認する内容証拠・担当契約・権限契約者,管理者,職員の役割,顧問先からの招待又は委任,停止すべき権限契約書,管理画面,権限台帳データ仕訳,証憑,給与,従業員情報,口座情報,申告データ,マイナンバー関係資料,API連携先データ台帳,連携一覧時間不正アクセス又は設定不備の期間,最終正常時点,ログの保存期限提供者通知,ログ,時刻表業務直近の申告・納付・給与・年末調整等の期限,代替手段,送信結果の確認期限表,受信通知,受付結果連絡提供事業者,顧問先,従業員等の本人,保険会社,専門家及び行政への担当連絡網,受付番号,対応記録

一つの顧問先についても,登録情報,保存ファイル,取引データ及び認証情報のどれが対象かを分ける。
「流出可能性のある全項目」と「その本人又は顧問先について対象となった項目」を同一視しない。

第3 認証情報,API及び証拠を点検する
1 パスワードだけで終わらせない

対象サービスのパスワードを公式手順で変更し,同一又は類似のパスワードを使っている他のサービスも変更する。
その上で,多要素認証,登録メール・電話,復旧先,継続中のセッション,連携アプリ,APIトークン,管理者権限及び退職者アカウントを確認する。

認証は利用者が誰かを確かめる仕組みであり,認可はその利用者がどの顧問先・データへアクセスできるかを決める仕組みである。
API事故では,ログインの有無だけでなく,要求ごとの認可,返却項目の最小化,利用量の異常検知及びトークンの失効を確認する。

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オートローン車の引上げ・換価で生じた剰余金を別口債務と相殺できるか―破産法71条と管財人の返還請求(AI作成)

目次

第1 問題の所在と結論1 担保の清算と相殺は別の問題である2 結論は剰余金債務を負担した時期によって大きく異なる第2 最初に作る時系列1 少なくとも七つの時点を分ける2 債権者と債務者の同一性を確認する第3 剰余金返還請求権が生じる理由1 清算義務を先に確定する2 クロス担保条項と法定相殺を混同しない第4 破産手続開始前に剰余金債務を負担した場合1 破産法71条1項3号と2項2号2 大阪高裁昭和63年10月28日判決3 別口のクレジット債務との違い第5 破産手続開始後に剰余金債務を負担した場合1 最高裁昭和47年7月13日判決2 最高裁平成17年1月17日判決3 平成28年司法試験公式資料が示す検討事項第6 管財人の返還請求と相手方の抗弁1 管財人側の請求構成2 ローン会社側で予想される主張第7 収集する契約・換価・会計資料1 契約と通知2 換価と会計の突合せ第8 公布済み・未施行の譲渡担保法との関係第9 実務上のまとめ1 管財人側で確認する順序2 関連記事第10 出典1 一次資料2 公的な検討資料
第1 問題の所在と結論
1 担保の清算と相殺は別の問題である

所有権留保付のオートローンについて,ローン会社が自動車を引き上げて換価し,換価額からオートローン残高及び合理的な処分費用を控除しても剰余が残ることがある。
その剰余を購入者又は破産管財人へ返還すべきかという問題と,ローン会社が別口のクレジット債権・物販債権等を自働債権として剰余金返還債務と相殺できるかという問題は区別する必要がある。
所有権留保が特定のオートローン債権だけを担保することから,直ちに別口債権との法定相殺まで禁止されるわけではない。

2 結論は剰余金債務を負担した時期によって大きく異なる

支払停止後・破産手続開始前に剰余金返還債務を負担した場合は,破産法71条1項3号と同条2項2号が中心となる。
大阪高裁昭和63年10月28日判決は,支払停止前の所有権留保付売買契約が剰余金債務の直接の基礎であるとして,別の車両から生じた残債権との相殺を認めた。
したがって,管財人が「所有権留保の被担保債権の範囲外である」という理由だけで返還を求めても,同判決に対する十分な区別にはならない。

他方,破産手続開始後に換価・清算して初めて剰余金返還債務を負担したと評価される場合は,破産法71条1項1号が問題となり,同条2項の例外は適用されない。
この場面では,最高裁昭和47年7月13日第一小法廷判決が相殺を否定しているが,最高裁平成17年1月17日第二小法廷判決との関係も検討する必要がある。

本記事は令和8年10月16日時点の法令・裁判例を基準とする。
大阪高裁判決は判例秘書で全文を確認したが,裁判所ウェブサイトでは全文を確認できなかったため,最高裁判決とは出典層を分けて表示する。

第2 最初に作る時系列
1 少なくとも七つの時点を分ける

①所有権留保付売買・立替払契約の締結日
②支払不能及び支払停止の日
③ローン会社が支払停止等を知った日
④自動車の引上げ日
⑤売却日又は査定日と,剰余額が確定した日
⑥相殺の意思表示日及び到達日
⑦破産申立日及び破産手続開始決定日

剰余金債務の負担が支払停止後・開始前であれば破産法71条1項3号と2項の例外が問題となり,開始後であれば同条1項1号が問題となる。
相殺の意思表示が開始後であることと,相殺に用いる受働債権に対応する債務を開始後に負担したことは同じではない。

2 債権者と債務者の同一性を確認する

オートローン会社,クレジットカード会社,販売会社及び債権回収会社が同じ企業グループに属していても,別法人であれば当然には相殺の相互性を満たさない。
契約書,請求書,債権譲渡通知及び相殺通知に記載された法人名を照合し,自働債権と受働債権が同じ当事者間にあるかを確認する。

第3 剰余金返還請求権が生じる理由
1 清算義務を先に確定する

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出産無償化はいつから?2026年改正法と対象費用・出産育児一時金の変更(AI作成)

目次

第1 出産無償化はいつから始まるか1 法律の公布と実際の開始を分ける2 「2026年度から」という情報と検討スケジュールの読み方第2 何が無料になるのか1 標準的な分娩費用と追加のサービスを区別する2 「保険適用」と「3割負担」を直結させない第3 出産育児一時金50万円はどうなるか1 現行制度と新しい二つの給付2 一時金が全国一斉になくなるわけではない第4 帝王切開・無痛分娩・妊婦健診も無料になるか1 帝王切開などの保険診療2 無痛分娩の追加費用3 妊婦健診は別の負担軽減策である第5 出産無償化のメリットと残る課題1 費用負担の軽減と選びやすさ2 施設の経営・移行時期・追加費用第6 出産前に何を確認すればよいか1 施設と保険者に確認する項目2 出産費用への給付と休業中の所得保障を分ける第7 出典・関連記事1 制度の枠組みと検討状況2 現行の給付と関連情報
第1 出産無償化はいつから始まるか
1 法律の公布と実際の開始を分ける

出産無償化は,出産に伴う標準的な費用の自己負担をなくすため,医療保険からの給付の仕組みを見直すものである。
令和8年10月16日現在,制度の枠組みを定めた健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)は公布されているが,今回確認した厚生労働省資料では,具体的な開始日は確定日付で示されていない。
出産関係の施行時期は「公布後2年以内に政令で定める日」とされているため,法律が成立したことと,既に窓口負担がなくなったことを混同してはならない。

同法の公布日は令和8年6月5日である。
厚生労働省が同年10月1日の検討会に提出した資料2の3~4頁は,法律全体の原則的な施行日である令和9年4月1日と,出産支援に関する施行時期を分けている。
この原則的な施行日だけを根拠として,出産無償化も令和9年4月1日に始まると断定することはできない。

2 「2026年度から」という情報と検討スケジュールの読み方

従前の政府方針にあった「2026年度を目途」という説明は,検討や制度設計の経緯に属する。
厚生労働省の令和8年10月1日資料1-2「今後の検討スケジュールについて(案)」は,10~11月の検討と12月頃の取りまとめを示している。
この資料は検討の予定であり,その取りまとめの日が無償化の開始日になるわけではない。

厚生労働省が令和8年10月16日の第218回社会保障審議会医療保険部会に提出した資料2「医療保険制度における出産に対する支援の強化について」も,PDF実頁8で「施行時期」を今後の論点の一つに挙げ,PDF実頁9で給付水準を含めた制度全体像を同年12月頃を目途に取りまとめる進め方(案)を示すにとどまり,開始日は示していない。
出産予定日が制度開始に間に合うかを判断するときは,その後に公表される施行日と,出産する施設が採用する給付方式を確認する必要がある。

第2 何が無料になるのか
1 標準的な分娩費用と追加のサービスを区別する

厚生労働省資料2の7頁は,保険診療以外の分娩対応について国が基本単価を設定し,保険者から施設へ直接支給する仕組みを示している。
標準的な分娩対応に妊婦の自己負担が生じないようにする一方,保険診療とアメニティ等のサービスを別に整理している。
「出産無償化」という言葉から,妊娠から産後までの請求額が全て0円になると理解するのは適切でない。

費用の区分新制度の枠組み出産前に確認すること保険診療以外の標準的な分娩対応国が基本単価を定め,施設へ直接給付する基本単価に含まれる具体的な内容と,施設の対応状況帝王切開などの保険診療療養の給付と,別の現金給付による負担軽減を整理する保険診療の自己負担,給付額と適用条件お祝い膳などの付加サービス自己負担となるサービスを区別し,内容・費用を見える化する希望するサービス,追加料金,選択・変更の条件
2 「保険適用」と「3割負担」を直結させない

新制度は,通常の保険診療と全く同じ方式を,現在の分娩料金の全額へ単純に当てはめるものではない。
資料2は,保険診療以外の分娩対応の基本単価について現物給付化を示し,従来の保険診療部分とは分けている。
したがって,「保険が使えるなら分娩料金全体の3割を必ず払う」「保険が使えるなら追加サービスも無料になる」といういずれの説明も避ける必要がある。

基本単価の給付水準と施設の体制・役割を評価する加算は告示事項とされている。
手出し額の比較には,給付額だけでなく,どの費用がその給付に含まれるかを確認する必要がある。

第3 出産育児一時金50万円はどうなるか
1 現行制度と新しい二つの給付

厚生労働省の現行案内では,公的医療保険に加入し,妊娠4か月(85日)以上で出産した場合,出産育児一時金の対象となり,支給額は子1人につき原則50万円である。

(続きを読む...)出産無償化はいつから?2026年改正法と対象費用・出産育児一時金の変更(AI作成)

重加算税の隠蔽・仮装とは―本税との違い,申告前後の証拠,会社・税理士・弁護士の確認手順(AI作成)

目次

第1 本税の誤りだけで重加算税は決まらない第2 税額の誤りと隠蔽・仮装を分ける1 過少申告型の基本的な要件2 科目名や年度誤りだけで断定しない第3 申告前後の時系列で証拠を読む1 申告後の説明から何を推認するのか2 質問応答記録と元資料を対応させる第4 修繕費の繰上計上と仮装を分けた裁決1 工事の完了と請求書の作成経緯が争われた例2 代表者の認識と税理士作成書類の評価第5 対象税額を項目ごとに計算する第6 会社・税理士・弁護士の確認手順1 資料と説明を先に分けて保全する2 修正申告と重加算税への対応を別々に決める第7 出典
第1 本税の誤りだけで重加算税は決まらない

法人税の税務調査で経費の計上時期や資産の評価を否認されても,そのことだけで重加算税が決まるわけではない。
本税の計算,過少申告加算税,重加算税は,それぞれの要件と対象額を分けて検討する必要がある。
本稿は,令和8年10月16日に確認した法令・公表資料を基に,申告済みの法人税について国税通則法68条1項の重加算税が問題になる場面を中心に整理する。
過年度の事件では,当該申告・処分に適用される改正前後の条文と経過措置を確認する。

重加算税の検討では,①誰が何を隠し又は装ったのか,②いつ行ったのか,③その行為と申告内容がどう結び付くのか,④どの税額が対象になるのかを,証拠と対応させる。
以下の整理表や確認手順は,法定の提出様式ではなく,会社,税理士及び弁護士が事実と争点を共有するための実務上の提案である。

第2 税額の誤りと隠蔽・仮装を分ける
1 過少申告型の基本的な要件

国税通則法68条1項は,課税の基礎となる事実の全部又は一部を隠蔽・仮装し,その隠蔽・仮装したところに基づいて申告書等を提出した場合を定めている。
同項の基本割合は対象となる基礎税額の35%であり,通常の過少申告加算税に代えて課される。
本税そのものの35%が常に追加されるという意味ではなく,対象税額の切分けと,同条4項による加重の適用も別途確認する。

修正申告書を提出したという一事だけでも結論は決まらない。
同条1項には,更正があるべきことを予知してされたものでない修正申告を除く旨の規定がある。
調査通知と更正予知の区別,通常の過少申告加算税への影響は,修正申告と加算税―行政指導,調査通知及び更正予知の前後で何が変わるか(AI作成)で整理している。

2 科目名や年度誤りだけで断定しない

国税庁の法人税の重加算税に関する事務運営指針は,二重帳簿,帳簿書類の隠匿・改ざん,相手方と通謀した虚偽書類などを例示している。
他方,同指針第1の3は,翌期の収益計上や支出が確認できる計上時期の誤り,寄附金等を単に他の費用科目へ記載した場合などについて,一定の条件の下で帳簿書類の隠匿・虚偽記載等に該当しないとする。
この取扱いには,相手方との通謀や証ひょうの破棄・隠匿・改ざん等によるものではないという条件が付いている。

したがって,「科目を間違えただけだから問題がない」とも,「経費を否認されたから仮装である」とも即断しない。
請求書,発注内容,検収,実際の役務提供,支払及び仕訳作成の経緯を比較し,税額の修正理由と事実の隠蔽・仮装の根拠を別々に説明する。
同指針は行政の取扱基準であり,条文に代わるものではない。

第3 申告前後の時系列で証拠を読む
1 申告後の説明から何を推認するのか

調査時に事実と異なる回答をしたというだけで,過去の申告時点に隠蔽・仮装があったと当然に扱うことはできない。
一方,申告後の回答や書類作成の経緯が,申告前からの認識や工作を裏付ける証拠になる場合はある。
申告後の行動を証拠から一律に除外するのではなく,どの過去の事実を,どの資料と併せて推認するのかを示す必要がある。

時系列は,取引時,決算時,税理士への資料交付時,申告時,調査開始後に分けると整理しやすい。
各出来事に,行為者,作成日,実際の対象日,資料の所在,当時知っていた事実及び申告への反映を記録する。

(続きを読む...)重加算税の隠蔽・仮装とは―本税との違い,申告前後の証拠,会社・税理士・弁護士の確認手順(AI作成)

個人事業主の学費・資格取得費は必要経費になるか―研修費,家事関連費,開業費と証拠の残し方(AI作成)

目次

第1 学費という名称だけで経費にしない第2 必要経費と家事費・家事関連費の順に確認する1 売上げと個別に対応しない費用も検討対象になる2 私的な性格がある場合は必要部分を特定する第3 資格取得の学費を否認した大阪高裁判決1 接骨院の経営者が自ら資格を取得した事案2 「開業費にする」という名称変更だけでは解決しない第4 業務との関係と区分の根拠を残す1 受講の前後で保存する資料2 税理士へ渡す情報を支払額だけにしない第5 従業員の研修費と給与所得者の制度を混同しない第6 関連記事と出典
第1 学費という名称だけで経費にしない

個人事業主本人が学校や講座へ支払う学費は,事業に役立つという理由だけで全額を必要経費にできるものではない。
現在の業務に必要な知識を更新する研修,本人が新たな職業資格を取得する教育,趣味や教養のための学習を,支出当時の目的と具体的な履修内容から区別する必要がある。
本記事は,令和8年10月16日に確認した所得税法,国税庁資料及び大阪高裁令和2年5月22日判決に基づき,個人事業主とその申告を担当する税理士の確認手順を整理する。

必要経費の可否と,必要経費に算入する年分は別の問題である。
支払済みの授業料でも私的な支出は控除できず,業務上の費用であっても前払いや債務の確定など,計上時期の確認が残る。
領収書は支払の資料であり,業務との関係や私的部分の区分まで当然に証明するものではない。

第2 必要経費と家事費・家事関連費の順に確認する
1 売上げと個別に対応しない費用も検討対象になる

所得税法37条1項は,売上原価等のほか,「販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」を必要経費の対象としている。
学費や研修費について,特定の売上げとの直接対応を一律に要求するのは適切ではない。
担当業務,講座の内容,受講時の課題及び受講後の利用状況から,業務との関連性と業務遂行上の必要性を具体的に説明する。

当年の売上げが増えなかったことだけで,一般的な業務費用を否定することもできない。
反対に,後から売上げが増えたことだけで,もともと趣味や私的な能力形成のために支出した費用が当然に業務費用へ変わるわけでもない。
目的の説明と売上げの結果を分けて記録する必要がある。

2 私的な性格がある場合は必要部分を特定する

所得税法45条1項1号は家事上の経費等を必要経費から除き,所得税法施行令96条が家事関連費の範囲を定める。
同条1号は主たる部分の業務上の必要性と必要部分の明確な区分を,2号は青色申告承認を受けた者について取引記録等による業務遂行上直接必要な部分の明確化を定めている。
青色申告であることだけで学費全額が経費になるものではない。

所得税基本通達45-2は,主たる部分の判定を50%超としつつ,必要部分が50%以下でも,その部分を明らかに区分できれば当該金額の算入を認める取扱いを示している。
したがって,白色申告で業務割合が半分以下なら一切控除できない,という説明も適切ではない。
私的な学習を含む支出について,実際の業務に必要な部分と金額を特定することが中心となる。

第3 資格取得の学費を否認した大阪高裁判決
1 接骨院の経営者が自ら資格を取得した事案

大阪高裁令和2年5月22日判決は,接骨院を経営していた者が柔道整復師の資格取得のために支出した学校への支払額を扱う。
判決は,経営者本人が免許を取得することは接骨院経営に必須ではなかったことや,取得資格によって他の事業者に雇用されるなど,期間の限定なく利用できる地位を得ることを検討した。
その上で,当該接骨院の業務に必要な部分と金額について具体的な主張立証がなく,全額の算入も,算入できる一部の特定も認められないとした(PDF実頁5~7)。

この判決を,資格取得費は常に全額控除できないという一般則へ広げることはできない。
また,既に資格を持つ弁護士の業務上の活動費と,本人が新たな職業資格を取得する費用とを同じ事案として扱わない。

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大使館・外交官向け取引の消費税―免税指定店舗,免税カード,購入表と保存義務(AI作成)

目次

第1 大使館への販売でも自動的に免税にはならない第2 売手の指定と買手の免税範囲を先に確認する1 指定を受けていない売手はカードを見せられても免税にできない2 大使館名や外交官という肩書だけで対象を判断しない第3 通常の物品・サービスの取引で受け取るもの1 紙の方式ではカード・身分証明票・購入表を確認する2 自動車・揮発油・公共料金は専用の手続を確認する第4 デジタル方式でも指定と本人確認は必要である第5 7年間の保存は取引日から数えるとは限らない第6 弁護士・税理士が取引前に確認する事項第7 出典・関連記事
第1 大使館への販売でも自動的に免税にはならない

日本の事業者が駐日大使館や外交官に物品を販売し,サービスを提供する場合,相手方の身分だけで消費税を請求しなくてよいと判断することはできない。
外国公館等に対する取引の免税には,対象者・取引内容・売手の指定・購入手続・証拠保存を確認する必要がある。
本記事は,令和8年10月16日に確認した法令及び国税庁・外務省の資料に基づき,国内の売手が取引前から保存までに確認する事項を整理する。

外交関係に関するウィーン条約34条は外交官の租税免除を定める一方,通常,物品又は役務の価格に含まれる種類の間接税を例外に挙げている。
日本における外国公館等向け取引の消費税免除は,租税特別措置法86条,同法施行令45条の4,同法施行規則36条の2に基づく制度として確認する。
公館の不可侵から消費税の結論を導いたり,国内の大使館への納品だけを理由に輸出免税として扱ったりしないことが必要である。

公館の不可侵,裁判権免除及び税の免除の位置付けは,外交関係に関するウィーン条約の解説(AI作成)を参照されたい。
本記事が扱うのは外国公館等向け取引の免税であり,外国人旅行者向け免税販売や,売手自身の納税義務が免除される免税事業者の制度とは区別する。

第2 売手の指定と買手の免税範囲を先に確認する
1 指定を受けていない売手はカードを見せられても免税にできない

外国公館等に対してこの制度による免税取引を行えるのは,国税庁長官の指定を受けた事業者である。
国税庁の個別通達3は,指定店舗以外の事業者が証明書の提示又は提出を受けても,免税で取引できないことを明記する。
買手の免税カードと,売手の免税指定は別の確認事項である。

指定を希望する場合は,指定を受ける店舗別に申請書を作成し,外務省を通じて申請する。
国税庁の申請案内は,最寄りの税務署への提出も認め,指定には審査期間を要するため余裕をもって申請するよう案内している。
請求日になってから初めて指定の有無を確認する運用は避け,見積り・契約の段階で指定通知と対象店舗を確認しておくべきである。

消費税法9条1項により納税義務が免除される事業者は,この指定を受けることができないと個別通達4の注で示されている。
「免税事業者」と「外国公館等向けの免税指定店舗」は,同じ意味ではない。

2 大使館名や外交官という肩書だけで対象を判断しない

制度の対象となる機関・人,購入する物品・サービスの範囲及び1回の取引の最低金額等は,相互条件や免税カードの種類によって異なる。
外務省発行の証明書,対象となる買手,カードに記載された条件及び有効性を具体的に確認する。
「すべての国の外交官について,全品目が同じ金額から免税になる」という一律の基準を置かない。

国税庁の個別通達1・2は対象となる機関・人の範囲を示し,名誉領事館・名誉領事官等を対象から除いている。
大使館の名称を請求書に記載したことや,外交官の知人が代金を支払ったことだけで,制度の対象者・対象取引であると判断してはならない。

第3 通常の物品・サービスの取引で受け取るもの
1 紙の方式ではカード・身分証明票・購入表を確認する

揮発油,自動車及び電気・ガス・水道・電気通信役務の特別な手続に当たらない通常の取引について,外務省は,免税カードと身分証明票(IDカード)の提示,外国公館等用免税購入表の提出,消費税を除いた価格での取引,購入表の保存という流れを案内している。
購入表は買手が持参するほか,指定店舗側で様式を準備することもできる。

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従業員が撮った写真の著作権は誰のものか―職務著作・退職時のデータ管理と差止め(AI作成)

目次

第1 会社の写真かどうかを最初に確認する第2 職務著作の5つの確認事項第3 社内だけで使う写真と公表名義第4 退職時の返還・削除と証拠の保全第5 印刷・販売の差止めとデータ廃棄第6 外注写真との違いと税務資料第7 出典と関連記事
第1 会社の写真かどうかを最初に確認する

会社のカメラで撮影し,会社のサーバーに保存した写真でも,それだけで会社が著作者になるわけではない。
構図,光の選択,撮影角度などに創作性のある写真については,著作権法15条1項の職務著作が成立するか,撮影者から著作権の譲渡を受けたかを確認する。
カメラや記録媒体の所有と,写真の著作権の帰属は区別する必要がある。

退職者が業務写真を持ち出したときも,写真ごとの権利の帰属,保持しているデータ,予定されている利用行為を分けて整理する。
本記事は,令和8年10月16日時点の法令と文化庁資料を基礎に,会社側・撮影者側が確認する事項を示す。

第2 職務著作の5つの確認事項

写真について会社が著作者となるには,著作権法15条1項の要件を満たす必要がある。
確認するのは,①法人等の発意,②その業務に従事する者による作成,③職務上の作成,④法人等の著作名義で公表するものといえること,⑤作成時の契約・勤務規則等に別段の定めがないこと,の5点である。
文化庁「著作権テキスト」令和8年度版も,従業員が作った著作物のすべてが会社の著作物になるわけではないと説明している。

写真台帳には,撮影日,撮影指示者,利用目的,担当業務,撮影者,公表予定の名義,適用される契約・就業規則を記録する。
これは法定様式ではなく,後日の帰属判断に必要な事実を残すための整理方法である。
勤務時間中に撮ったことだけで全要件を満たすと判断せず,私的な撮影と業務上の撮影を区別する。

職務著作が成立すれば会社が著作者となる。
撮影した個人から会社へ著作権が移るという説明とは異なる。
成立しない場合には,撮影者の権利を前提に,譲渡や利用許諾の有無・範囲を別に確認する。

第3 社内だけで使う写真と公表名義

写真を社内資料や制作の参考に使い,外部への公表を予定していない場合には,公表名義の要件をどう満たすかが問題となる。
プログラムの著作物には15条2項の特則があるが,写真にその特則をそのまま適用することはできない。

令和3年司法試験知的財産法第2問の出題の趣旨は,内部利用だけを予定した写真について,仮に公表するとすれば法人等の名義で公表するものも含めるという解釈を示している。
内部利用であるために,かえって従業員に公表権等が帰属する不合理を避けるという理由付けである。
この公式資料は試験の解説であり,個別事件の判決ではない。

実務では,撮影依頼の経緯,会社の制作工程での位置付け,利用目的,名義に関する合意や運用を確認し,仮に公表する場合の名義を説明できる資料を残す。
会社の商品やゲームが会社名で公表されたというだけで,制作参考用の写真も公表されたと扱わない。
商品と写真は別個の著作物であり,写真が商品に複製されているかどうかも別の事実である。

第4 退職時の返還・削除と証拠の保全

退職時は,業務用端末,共有フォルダ,個人クラウド,バックアップ等について,業務写真の保存先とアクセス権を確認する。
写真の著作権,会社との返還・削除合意,端末の所有者を区別し,対象ファイルと処理方法を一覧にする。
会社が著作権を有するという理由だけで,退職者の私物端末へ自由にアクセスできると判断してはならない。

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販売奨励金・リベートと消費税―売上割戻し,役務対価及び返還インボイスの区別(AI作成)

目次

第1 結論と本記事の対象第2 売上割戻しと別の役務の対価を分ける1 販売数量・販売高に応じた販売奨励金2 数量連動でも役務の対価となる場合第3 複数の商品と税率が混在する場合1 増販率を測る商品と支払額の計算基礎を分ける2 返還等の税率は元取引と対応させる第4 売手・買手の調整時期と課税方式1 当初の販売時期と返還等の時期を区別する2 免税・簡易課税等は同じ計算と決めつけない第5 販売店作成の精算書と返還インボイス1 誰の登録番号を記載するか2 相手方作成の書類で共有できる場合3 税込1万円未満の免除と帳簿保存を分ける第6 契約審査・紛争対応で残す資料第7 関連記事第8 出典と確認範囲
第1 結論と本記事の対象

販売奨励金・リベートの消費税は,勘定名だけでは決まらない。
商品の販売数量・販売高等に応じた売上割戻しなのか,広告,展示,販路拡大等の別の役務の対価なのかを,契約と実際の給付から判定する。
数量に連動する計算式でも,別の役務の対価となる場合がある。

本記事は,令和8年10月16日に確認した法令・国税庁資料に基づき,国内の課税取引に関係する金銭の販売奨励金を扱う。
一般課税での調整を中心とし,課税・免税の変動,簡易課税等の適用がある場合は計算方式を別に確認する。
将来の税率変更に関する制度全体や,所得税・法人税の収益計上時期を一括して説明するものではない。

第2 売上割戻しと別の役務の対価を分ける
1 販売数量・販売高に応じた販売奨励金

消費税法基本通達14-1-2は,販売促進の目的で,対象となる課税資産の販売数量・販売高等に応じ,取引先へ金銭で支払う販売奨励金等を,売上げに係る対価の返還等として扱う。
国税庁No.6359もこの取扱いを示している。
対象商品,対象期間,数量・金額,支給率及び返品・値引きの反映方法を,契約書と精算書で対応させることが必要である。

通達の取引先には,直接の売上先である卸売業者等だけでなく,その販売先である小売業者等の取引関係者も含まれる。
メーカーから小売店への直接支払であるという理由だけで,返還等への該当性を否定しない。
卸売業者を含む商品の流れ,金銭の流れ及び対象売上げを確認する。

2 数量連動でも役務の対価となる場合

販売店がメーカーに広告,展示,販売支援等の別の役務を提供し,その反対給付を受ける場合は,その役務の対価として判定する。
国税庁No.6113は,資産の譲渡・貸付け又は役務提供の反対給付を受けることが対価性の基本であると説明している。
単に販売促進という目的が共通することを理由に,全額を売上割戻しへ分類しない。

国税庁の軽減税率制度の手引きは,自動販売機の設置等に係る販売手数料と,物流センターの使用等に係るセンターフィーを挙げている。
これらは販売数量等に応じて計算されても,役務の対価であり,飲食料品の売上げ・仕入れに係る対価の返還等には当たらない。
契約上どの作業・施設利用に対して支払うのかと,その履行記録を確認する。

確認する実態消費税上の整理優先して集める資料対象商品の販売数量・販売高等に応じた金銭の割戻し売手の対価返還・買手の仕入対価返還を検討商品別の取引明細,支給規程,対象期間と精算書広告・展示・施設利用等の別の役務への支払役務の対価として課税関係を検討委託内容,成果・実施記録,請求書と費用負担一つの支払に割戻しと役務対価が含まれるそれぞれの実質と算定根拠を分けて検討内訳合意,金額の根拠,商品・役務別の照合表
第3 複数の商品と税率が混在する場合
1 増販率を測る商品と支払額の計算基礎を分ける

例えば,甲商品の増販率で支給率を決め,その率をメーカーの全取扱商品の仕入額に掛ける制度を考える。
この場合,甲商品の増販を条件にしたという事情だけで,支払額の全てを甲商品の値引きと決めることはできない。
支給対象商品の範囲と,率を決める指標を分け,元取引との対応を示す必要がある。

この整理は,独占禁止法上の誘因の強さと,消費税上の対価返還の対象をそれぞれ確かめるための実務上の検討手順である。

(続きを読む...)販売奨励金・リベートと消費税―売上割戻し,役務対価及び返還インボイスの区別(AI作成)

民事再生計画の取消しと手続廃止―不正な決議・不払い・遂行不能を弁護士と税理士が見分ける(AI作成)

目次

第1 認可後の問題は,まず手続の段階から確認する1 認可決定の確定と手続終結を分ける2 認可前の不認可とも区別する第2 不正な決議を理由とする再生計画の取消し1 不正と計画成立への影響を調べる2 申立ての制限と裁判所の裁量第3 不払い,計画変更,遂行不能を区別する1 履行懈怠による取消申立てには申立人の要件がある2 変更による継続を検討できる場面3 遂行の見込みがないことが明らかなら必要的廃止第4 廃止,取消し,破産開始の効果を分ける1 廃止だけで変更前の債権へ戻るわけではない2 職権破産は先行する破産手続の有無でも異なる第5 弁護士から税理士へ渡す資料と貸倒れの検討1 切捨額,残存額,その後の権利変動を別にする2 役務請求権や前払金を売掛金に置き換えない第6 関連記事と出典1 関連記事2 一次資料と確認範囲
第1 認可後の問題は,まず手続の段階から確認する

取引先の再生計画に問題が生じたときは,認可決定の確定,手続の終結,支払の遅れ,計画を遂行できる見込みを順に確認する。
不正な決議を理由とする計画取消し,一部の不払いを理由とする取消し,遂行不能が明らかになった場合の手続廃止には,それぞれ申立人・要件・効果がある。
「予定どおり入金がない」という事実だけで,取消し,破産開始又は税務上の全額貸倒れが決まるわけではない。

本記事は,法人の通常の民事再生を中心に,令和8年10月16日に確認した現行法で整理する。
小規模個人再生・給与所得者等再生の特則,個別事件の申立期限の計算及び税額の計算は,事件資料に即した追加確認を要する。

1 認可決定の確定と手続終結を分ける

民事再生法188条は,監督委員・管財人の選任の有無等に応じて手続の終結を定める。
監督委員がいる場合は,計画の遂行又は認可決定確定後3年の経過が終結の基準となる。
管財人がいる場合には別の基準があるので,「認可された」「3年たった」という情報だけで現在の手続状態を決めず,終結決定と公告を確認する。

2 認可前の不認可とも区別する

認可審査の段階では,計画の遂行見込みがないことや,決議が不正な方法で成立したことが,同法174条2項2号・3号の不認可事由となる。
認可決定が確定した後は,同法189条の計画取消し,手続が続いている場合の同法194条の廃止等を検討する。
申立書を作る前に,何を取り消し,又はどの手続を終わらせるのかを特定する必要がある。

第2 不正な決議を理由とする再生計画の取消し
1 不正と計画成立への影響を調べる

同法189条1項1号は,「再生計画が不正の方法により成立したこと」を取消事由とし,再生債権者の申立てによる取消しを定める。
条文の「により」という関係を確かめるため,不正と疑われる行為だけでなく,その行為が計画成立に与えた影響も整理する。
これは条文に沿った検討の順序であり,ある不正行為を発見すれば必ず計画を取り消せるという意味ではない。

例えば,架空債権の届出や賛否の操作が疑われる場合は,債権の実在性,届出書,認否書,議決権の認否,投票記録及び関与者の連絡を保全する。
頭数と議決権額の要件は異なるため,疑わしい票を除いた集計と,真実を知らされなかった債権者の意思形成への影響を分けて検討する。
後者についても,後日の発言だけを結論にせず,当時の説明・投票経緯と照合する。

2 申立ての制限と裁判所の裁量

同条2項は,不正を知った時から1月,認可決定が確定した時から2年という制限を置く。
認可決定への即時抗告でその事由を主張した場合や,知りながら主張しなかった場合にも申立ての制限がある。
事由を知った日,認可確定日,即時抗告の経過をそれぞれ確認する。

同条1項は,裁判所が取消決定を「することができる」と定める。
取消事由の有無を検討した後に,取消しをするかという判断が残る。
申立てを検討する際は,行為の重大性や決議の公正に加え,既にされた履行,今後の資金繰り,取消しによる債権者への影響を具体的資料で示すことが考えられる。

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注文者が破産したときの工事代金と消費税―完成・引渡し・前受金・貸倒れを分ける(AI作成)

目次

第1 報酬を請求できることと消費税の時期を分ける第2 注文者の破産と未払工事代金1 解除する主体と完成時点を確かめる2 既払金・未払報酬・解除損害を区分する第3 消費税では前受金・完成・引渡しを確かめる1 前受金の入金だけで売上げを計上しない2 建設工事の引渡しは書類の表題だけで決まらない3 未収金と特例も別に確認する第4 破産債権になっただけで貸倒れとしない1 法人税は切捨て・全額回収不能・一定の取引停止を分ける2 消費税は元の課税売上げと貸倒事由を対応させる第5 弁護士と税理士が共有する資料第6 関連記事第7 出典と確認範囲
第1 報酬を請求できることと消費税の時期を分ける

注文者が破産しても,既にした仕事の報酬債権がすべて消えるわけではない。
一方,その債権が破産手続で配当の対象となることと,消費税上の売上げがいつ生じるかは別の問題である。
工事の完成,税務上の引渡し,代金の入金,解除及び貸倒れを,一つの「倒産日」や決算上の科目名だけで処理しないことが出発点となる。

本記事は,国内の法人間の建設工事請負を中心に,請負人側の弁護士と税理士が共有する確認事項を示す。
法令・国税庁資料の確認日は令和8年10月16日である。
請負人自身が破産した場合,海外取引,個人事業者の所得税,インボイスの保存要件,契約不適合による値引き及び返還インボイスの詳細は,それぞれ別に確認する。

第2 注文者の破産と未払工事代金
1 解除する主体と完成時点を確かめる

民法642条1項は,注文者が破産手続開始決定を受けた場合の請負契約の解除を定める。
同項ただし書の「請負人による契約の解除については、仕事を完成した後は、この限りでない」という制限は,請負人についてのものである。
仕事が完成したという理由だけで,破産管財人の解除も当然にできなくなると扱わない。

完成していても引渡しと残代金支払が残る場合には,注文者破産の特則を検討する。
請負人が破産した場合の破産法53条・54条による処理と,主体を入れ替えないことが大切である。
管財人への確答催告は,破産法53条3項による同条2項の準用も確認する。

2 既払金・未払報酬・解除損害を区分する

民法642条2項は,既にした仕事の報酬及びその中に含まれていない費用について,破産財団の配当に加入できるとする。
同条3項の管財人解除による損害も,既往の報酬・費用と請求原因を分ける。
未払報酬が残ることと,全額を直ちに財団から受け取れることは同じではない。

また,完成済みの仕事の報酬の一部として支払われた金銭を,解除だけを理由に全額返還するものと扱わない。
支払額が出来高報酬を超える場合や,成果物の帰属・担保の問題がある場合は,別の判断が必要となる。
民事上の処理は注文者破産と民法642条の解説(AI作成)に詳しい。

第3 消費税では前受金・完成・引渡しを確かめる
1 前受金の入金だけで売上げを計上しない

国税庁No.6165は,前受金や前払金があっても,原則として実際に引渡しやサービスの提供があった時を,売上げや仕入れの時期と説明する。
前受金を受け取った日や,注文者が前払金を支払った日だけで決めない。

請負人の前受金残高と注文者の前払金残高を照合するときも,入出金の一致だけでなく,どの工事・出来高・給付に充てられた金額かを確認する。
買主・注文者側の前払金返還請求と,請負人側の未収工事代金を,同じ消費税の貸倒れとして処理しない。

2 建設工事の引渡しは書類の表題だけで決まらない

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USDT(テザー)を個人で売買・保有するときの日本法上のリスク―無登録の電子決済手段等取引業,口座凍結及び取引所破綻時の回収(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論第2 USDTは資金決済法上の「電子決済手段」として扱われる1 電子決済手段と暗号資産の定義2 電子決済手段等取引業は登録制である第3 USDTの相対販売を業として行うと刑事罰の対象になる1 福島地裁いわき支部令和7年1月21日判決2 この判決から読み取れる注意点第4 USDTの売買に使った預金口座が凍結されることがある1 振り込め詐欺救済法による取引停止の仕組み2 東京地裁令和7年10月22日判決3 USDTの相対取引に預金口座を使う人への示唆第5 取引所が破綻したときに預けたUSDTを取り戻せるか1 ビットコインは所有権の客体ではないとした東京地裁平成27年8月5日判決2 利用規約に基づく送信請求を認めた東京地裁令和4年4月27日判決3 USDTに当てはめるときの留意点第6 USDTを売買・保有する前に確認する事項第7 関連記事第8 出典
第1 この記事の対象と結論

この記事は,米ドル建てのステーブルコインであるUSDT(テザー)を,個人が知人や取引所の利用者との間で相対で売買し,又は保有するときに,日本法の下でどのようなリスクがあるかを,令和8年10月15日時点の法令と公刊されている裁判例に基づいて整理するものである。
USDTの値動き,発行体の信用力,投資としての適否及び税務上の取扱いは扱わない。

結論は,次の3点である。
①USDTを資金決済に関する法律(以下「資金決済法」という。)上の「電子決済手段」と認定した裁判例があり,内閣総理大臣の登録を受けずにUSDTの売買を業として行うと,無登録の電子決済手段等取引業として刑事罰の対象となる(福島地裁いわき支部令和7年1月21日判決)。
②海外の無登録の取引所でUSDTを売買し,その代金の受払いに自分の預金口座を使うと,買い手が詐欺の被害金を振り込んでくることがあり,振り込め詐欺救済法に基づいて口座の取引が停止され,払戻しの請求も認められないことがある(東京地裁令和7年10月22日判決)。
③USDTを預けた取引所が破綻した場合,所有権に基づいて取り戻すという構成は,ビットコインについて否定された裁判例があり(東京地裁平成27年8月5日判決),取引所に対する請求は利用規約上の権利として組み立てることになると考えられる(東京地裁令和4年4月27日判決参照)。

第2 USDTは資金決済法上の「電子決済手段」として扱われる
1 電子決済手段と暗号資産の定義
(1) 電子決済手段(資金決済法2条5項)

資金決済法2条5項は,「電子決済手段」を次のとおり定義している。
同項1号は,「物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されている通貨建資産に限り、」有価証券等を除く。)「であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの」と定める。
同項2号は,不特定の者を相手方として1号のものと相互に交換を行うことができる財産的価値を,同項3号は特定信託受益権を,同項4号はこれらに準ずるものとして内閣府令で定めるものを掲げている。

(2) 通貨建資産と暗号資産の切り分け

電子決済手段の要件となる「通貨建資産」について,同条7項は,「本邦通貨若しくは外国通貨をもって表示され、又は本邦通貨若しくは外国通貨をもって債務の履行、払戻しその他これらに準ずるもの(以下この項において「債務の履行等」という。)が行われることとされている資産」と定義している。
他方,同条14項1号の「暗号資産」の定義は,同じ構造の財産的価値から「本邦通貨及び外国通貨、通貨建資産並びに電子決済手段(通貨建資産に該当するものを除く。)」を除いている。
このため,法定通貨で表示され,又は法定通貨で払戻し等が行われることとされているステーブルコインは電子決済手段の側に,そうでないビットコイン等は暗号資産の側に,それぞれ分類される構造になっている。
後記第3の福島地裁いわき支部令和7年1月21日判決は,USDTを「電子決済手段であるUSDT」と認定している。

2 電子決済手段等取引業は登録制である
(1) 電子決済手段等取引業の範囲(資金決済法2条10項)

資金決済法2条10項は,「電子決済手段等取引業」を,同項各号の行為の「いずれかを業として行うこと」と定義している。
その1号は「電子決済手段の売買又は他の電子決済手段との交換」,2号は「前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理」,3号は他人のために電子決済手段の管理をすること(内閣府令で定めるものを除く。)である。
自分の保有するUSDTを売ること自体も,業として行えば1号の「売買」に当たる。

(2) 登録義務と罰則(資金決済法62条の3・107条8号)

資金決済法62条の3は,「電子決済手段等取引業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行ってはならない。」と定めている。
これに違反して「第六十二条の三の登録を受けないで電子決済手段等取引業を行ったとき」(同法107条8号)は,「三年以下の拘禁刑若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」(同条柱書き)とされている。
なお,暗号資産の売買等を業として行う暗号資産交換業についても,同法63条の2が同じ形の登録制を定めている。
暗号資産の規制を金融商品取引法へ移す令和8年の改正については,暗号資産に関する令和8年金融商品取引法改正の内容と施行時期(AI作成)で扱っている。

(3) 円建ての電子決済手段と国内の登録業者

(続きを読む...)USDT(テザー)を個人で売買・保有するときの日本法上のリスク―無登録の電子決済手段等取引業,口座凍結及び取引所破綻時の回収(AI作成)

代金を買い叩かれた・取引を打ち切られた受注者は裁判で何を請求できるか―取適法の買いたたき,相当報酬額の請求及び継続的取引の打切りの裁判例(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論第2 取適法の禁止行為と民事上の効力1 買いたたきと一方的な代金決定の禁止2 施行日と適用範囲3 違反があっても契約が当然に無効になるわけではない第3 買いたたきを不法行為として争った東京地裁令和6年2月15日判決1 事案と判断の枠組み2 当てはめ3 相当報酬額による予備的請求は一部認められた4 この判決から読み取れること第4 継続的取引を打ち切られた場合1 一般的な規定はない2 最高裁の判断3 予告期間が不足するとして損害賠償を認めた例4 令和の裁判例は契約条項と交渉の経緯を重く見る5 これらの裁判例からうかがわれる傾向第5 相談を受けたときに確認する事項第6 関連記事第7 出典1 法令2 裁判例
第1 この記事の対象と結論

この記事は,発注者から代金を低く抑えられた受注者や,長く続いた取引を打ち切られた事業者が,民事訴訟で何を請求でき,何を立証する必要があるかを,令和8年10月16日時点の法令と公刊されている裁判例に基づいて整理するものである。
取適法の適用範囲や禁止行為の全体像,取引を終了させる側の手続は関連記事(第6)で扱っているので,この記事では裁判例が示した判断の枠組みと,受注者の側で用意すべき資料に絞る。

結論は,次の4点である。
①取適法の買いたたき(5条1項5号)や協議に応じない一方的な代金決定(5条2項4号)に当たる行為があっても,それだけで代金の合意が無効になったり,不法行為が成立したりするわけではない(最高裁昭和52年6月20日判決,東京地裁昭和63年7月6日判決)。
②買いたたきが不法行為になるのは,受注者の適正な原価に一定の利益率を加えた「受け取るべき対価」と支払額との間に著しい乖離があり,協議状況等を考慮しても正当化されない場合に限られるとした裁判例がある(東京地裁令和6年2月15日判決)。
③他方,受注の時点で具体的な代金額が合意されていなければ,請負契約に基づいて相当額の報酬を請求することができ,同じ判決はこの構成で約3164万円の請求を認めている。
④継続的取引の打切りを一般的に制限する明文の規定はなく,契約条項に基づく解約や更新拒絶は原則として有効とされ,損害賠償が認められるのは,予告期間が不相当に短い場合や,継続への信頼を抱かせた上で不当に交渉を破棄した場合など,特別な事情がある場合に限られている。

第2 取適法の禁止行為と民事上の効力
1 買いたたきと一方的な代金決定の禁止
(1) 買いたたき(取適法5条1項5号)

製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(以下「取適法」という。)5条1項は,委託事業者が中小受託事業者に対し製造委託等をした場合に,同項各号に掲げる行為を「してはならない」と定めている。
その5号は,「中小受託事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い製造委託等代金の額を不当に定めること。」である。
改正前の下請代金支払遅延等防止法(以下「旧下請法」という。)4条1項5号と実質的に同じ文言であり,「下請代金」が「製造委託等代金」に,「下請事業者」が「中小受託事業者」に改められている。

(2) 協議に応じない一方的な代金決定(取適法5条2項4号)

取適法5条2項は,同項各号に掲げる行為を「することによつて、中小受託事業者の利益を不当に害してはならない。」と定めている。
令和7年の改正で新たに設けられた同項4号は,「中小受託事業者の給付に関する費用の変動その他の事情が生じた場合において、中小受託事業者が製造委託等代金の額に関する協議を求めたにもかかわらず、当該協議に応じず、又は当該協議において中小受託事業者の求めた事項について必要な説明若しくは情報の提供をせず、一方的に製造委託等代金の額を決定すること。」である。
5条1項の行為とは異なり,中小受託事業者の利益を不当に害することが要件とされている。

2 施行日と適用範囲

取適法は,下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律(令和7年法律第41号)によって旧下請法を改正・改題したものであり,同法附則1条は「この法律は、令和八年一月一日から施行する。」と定めている。
同法附則2条2項により,改正後の5条等は「この法律の施行後にした」製造委託等について適用され,施行前にした製造委託等については「なお従前の例による」とされている。

適用範囲には,資本金の額による基準に加えて,常時使用する従業員の数による基準が設けられた(2条8項5号は300人,同項6号は情報成果物作成委託と役務提供委託について100人)。
また,製造や販売の目的物を取引の相手方まで運送する行為を委託する「特定運送委託」(2条5項)も対象に加わっている。
資本金の小さい発注者との取引であっても,従業員数によって取適法が適用される場合がある。

3 違反があっても契約が当然に無効になるわけではない
(1) 最高裁昭和52年6月20日判決

最高裁第二小法廷昭和52年6月20日判決(昭和48年(オ)第1113号,民集31巻4号449頁)は,拘束された即時両建預金を取引条件とする信用組合の貸付を,独占禁止法19条に違反する不公正な取引方法に当たるとした上で,「独禁法一九条に違反した契約の私法上の効力については、その契約が公序良俗に反するとされるような場合は格別として、上告人のいうように同条が強行法規であるからとの理由で直ちに無効であると解すべきではない。」と判示した。
同判決は,契約自体は公序良俗に反しないとしつつ,実質金利が利息制限法の制限を超える部分の是正のため,原判決中上告人敗訴部分を破棄して名古屋高裁に差し戻している。

(2) 東京地裁昭和63年7月6日判決

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賃料増額請求を拒否できるか―借主の回答書,家賃の支払と供託(AI作成)

目次

第1 増額の通知を受けたときの考え方1 提示額への合意と法定の増額請求を区別する2 通知を無視せず支払期日を確認する第2 どのような点を争うことができるか1 理由と比較資料を確認する2 特約と現在の賃料の決定経緯を確認する第3 借主からの回答書の文例1 資料の提示を求めつつ提示額への合意を留保する例2 回答の記録と合意書の確認第4 争っている間の家賃はいくら払うか第5 貸主が受け取らないときは供託を検討する1 値上げ通知だけで直ちに供託できるとは限らない2 供託所,供託額,対象月と通知を確認する第6 退去の要求,定期借家及び裁判所の書類を区別する1 普通借家の増額と契約終了は別の問題である2 定期借家の再契約と混同しない3 調停等が始まったら主張と支払履歴をまとめる第7 出典
第1 増額の通知を受けたときの考え方
1 提示額への合意と法定の増額請求を区別する

貸主から賃料増額の通知が届いても,提示された金額へ直ちに合意する必要はない。
他方,借地借家法32条の要件を満たす増額請求について,「借主が同意しなければ賃料は絶対に変わらない」と理解することも適切ではない。
争うべき点は,増額の法律上の根拠,現在の賃料が不相当となった事情,相当な継続賃料及び請求の開始時期等である。

本記事は,普通建物賃貸借の継続中に増額請求を受けた借主が,回答と支払を整理する場面を主に扱う。
定期借家の満了後の再契約や,借主自身から賃料減額を請求する場合には,異なる検討が必要となる。
制度全体と特約・鑑定の論点は,地代・家賃の増減額請求を参照されたい。

2 通知を無視せず支払期日を確認する

届いた通知書,封筒,メール及び添付資料を,受領日が分かる状態で保存する。
契約書,更新書面,覚書及び過去の支払記録と照合し,対象物件,請求者,増額後の月額,開始日及び回答希望日を確認する。
増額への異議と,既に負っている賃料の支払を止めることは別の問題であり,通知への対応中も支払期日を管理する必要がある。

第2 どのような点を争うことができるか
1 理由と比較資料を確認する

借地借家法32条1項は,土地・建物に対する租税その他の負担,価格その他の経済事情又は近傍同種建物の借賃との比較により,現在の借賃が不相当となった場合を定めている。
貸主が挙げる事情について,どの期間の変化を,どの資料で裏付け,どのように本件の金額へ結び付けているかを確認する。

近隣の募集賃料だけが示された場合には,募集と成約,新規契約と継続契約を区別する。
用途,面積,築年数,階,設備,契約時期,共益費,保証金等の条件が異なる資料を,そのまま本件と比較しない。
比較資料の確認方法は,家賃相場・土地価格相場等の調べ方で説明している。

2 特約と現在の賃料の決定経緯を確認する

一定期間賃料を増額しない旨の特約があるときは,32条1項ただし書と特約の期間・対象を確認する。
最後の更新で賃料を据え置いた経緯,一時的な減額や猶予,設備・修繕の負担等も整理する。
契約書に改定条項があるというだけで,貸主の提示額や計算方法を無条件に受け入れる必要があると判断しない。

「何%までなら増額できる」という一律の数値を先に当てはめるのではなく,契約と資料に即して判断する。
増額への生活上・経営上の負担は協議事項になるが,その負担を訴えるだけで法律上の要件や相当賃料の検討を省くことはできない。

第3 借主からの回答書の文例
1 資料の提示を求めつつ提示額への合意を留保する例

次の文例は,借主が現行賃料を相当と判断し,請求の根拠資料を求めて協議する場面を想定した独自の例である。
増額後の一部の金額に合意する場合や,既に新賃料の合意書へ署名した場合に,そのまま使うことはできない。

(続きを読む...)賃料増額請求を拒否できるか―借主の回答書,家賃の支払と供託(AI作成)

賃料増額請求書の書き方と文例―内容証明郵便,増額理由,到達日と注意点(AI作成)

目次

第1 賃料増額請求書で何を伝えるか1 協議の申入れと法定の増額請求を区別する2 文例をそのまま使えない場面第2 通知する前に確認する資料1 契約と現在の賃料を確認する2 増額理由と希望額を資料に結び付ける第3 賃料増額請求書の文例1 普通建物賃貸借についての記載例2 回答希望日と資料送付を取り違えない第4 内容証明郵便と配達証明を使い分ける1 内容証明は増額の正当性を証明しない2 到達を示す記録も残す第5 何か月前に通知するか,いつから請求するか第6 送付後の協議と調停に備える第7 出典
第1 賃料増額請求書で何を伝えるか
1 協議の申入れと法定の増額請求を区別する

賃料増額請求書は,貸主が借主に対し,対象となる賃貸借,増額後の金額及び開始時期等を明らかにして賃料の増額を求める文書である。
本記事は,普通建物賃貸借の継続中に,借地借家法32条に基づく増額請求をする貸主を主な対象とする。
文例は記載方法を示す独自の例であり,裁判所の公式書式又は個別事件への完成済み通知書ではない。

「賃料を上げたいので相談したい」という協議の申入れと,「本書面により賃料の増額を請求する」という意思表示は,趣旨を区別して作成する必要がある。
題名が「お願い」「通知書」であることだけで法的性質は決まらないが,金額や時期,意思が曖昧であると,何をいつ請求したのかが争いになりやすい。

借地借家法32条の要件を満たす請求であれば,借主の承諾がないことだけで効果が否定されるものではないが,貸主の希望額がそのまま正当になるわけではない。
要件,特約及び継続賃料の検討は,地代・家賃の増減額請求で整理している。

2 文例をそのまま使えない場面

建物所有目的の土地の地代は借地借家法11条の対象となり,建物の家賃と適用条文や比較資料が異なる。
定期建物賃貸借で借賃改定特約がある場合は同法38条9項の特則があり,満了後の再契約の賃料提示も現在の契約の増額請求と区別する。
貸主の地位の承継,転貸借又は代理人による請求では,誰が誰に対して通知する権限を持つかも確認する。

第2 通知する前に確認する資料
1 契約と現在の賃料を確認する

当初契約書,更新契約書,覚書,過去の賃料改定合意及び支払記録をそろえ,現在の賃料を合意した経緯を確認する。
不増額特約,改定時期の条項,賃料と共益費の区分,敷金・保証金,修繕や設備の負担も確認する。
据置き更新でも,協議の結果として同額を合意した場合と,協議せず従前の支払を続けた場合を区別する必要がある。

2 増額理由と希望額を資料に結び付ける

「物価が上がった」「長年据置きだった」という表現だけで終わらせず,何がいつからどの程度変わったかを具体化する。
税負担を理由とするなら課税明細等,周辺との比較なら用途,面積,築年数,階,設備,契約時期及び一時金等をそろえた資料を用意する。

募集賃料は貸主側の提示額であり,成約賃料や既存契約の継続賃料と同じではない。
募集事例の平均額をそのまま本件の改定額にするのではなく,契約固有の事情も含めて希望額の根拠を整理する。
資料の調べ方は,家賃相場・土地価格相場等の調べ方を参照されたい。

第3 賃料増額請求書の文例
1 普通建物賃貸借についての記載例

次の文例は,借地借家法32条の適用される契約で,通知が相手方に到達した後の日を増額開始日として指定することを想定している。
○印には事実と根拠を確認した値を入れ,賃料と共益費,消費税の扱いを契約に合わせて明示する。
当てはまらない増額理由を形式的に並べてはならない。

(続きを読む...)賃料増額請求書の書き方と文例―内容証明郵便,増額理由,到達日と注意点(AI作成)

防衛特別法人税の会計処理・税効果会計と実効税率―基礎控除500万円との関係(AI作成)

目次

第1 申告税額と会計上の税率を分けて考える第2 当期の防衛特別法人税はどう会計処理するか1 地方法人税と同様の取扱いが基本となる2 納付額だけから当期の費用を決めない第3 税効果会計では何を確認するか1 税効果会計の対象となる税金に含まれる2 対象事業年度と一時差異の解消時期を対応させる第4 実効税率が一律4ポイント上がるわけではない1 法人税額に対する4%と所得に対する割合は異なる2 ASBJの法定実効税率の算式と算定例第5 基礎控除500万円を実効税率の式から引くのか1 実際の申告税額には基礎控除を適用する2 ASBJの標準的な算式は基礎控除を考慮していない第6 実務対応報告第48号と令和8年改正基準の適用関係第7 決算担当者が揃える資料第8 よくある質問1 防衛特別法人税の勘定科目は何か2 法定実効税率はすべての会社で31.52%になるか3 防衛特別法人税が0円なら税効果会計も不要か第9 出典・関連記事
第1 申告税額と会計上の税率を分けて考える

防衛特別法人税の導入では,申告して納める税額の計算と,決算での費用計上・税効果会計を分けて確認する必要がある。
税率4%は会社の所得に直接掛ける割合ではなく,法人税率や法定実効税率へ一律に4ポイントを加えるものでもない。
本記事は,令和8年10月15日に確認したASBJの公表済み会計基準・実務対応報告・補足文書と国税庁資料に基づき,日本基準を適用する会社の基本的な確認点を説明する。

当期の防衛特別法人税額が0円であることだけで,税効果会計への影響も必ずないとはいえない。
実際の申告税額,繰延税金資産・負債の計算に用いる税率,決算書の税負担率は,目的と計算の前提が異なるためである。
対象法人と申告税額の基本は,防衛特別法人税の総合記事を参照されたい。

第2 当期の防衛特別法人税はどう会計処理するか
1 地方法人税と同様の取扱いが基本となる

ASBJの実務対応報告第48号は,防衛特別法人税の会計処理について,地方法人税と同様に法人税等会計基準に従うと定めている。
表示も地方法人税と同様に取り扱う。
一般的な当期の損益に対応する税金を計上する場面では,売上や仕入れと同じ経費処理として考えず,法人税等として整理する。

例えば,通算法人以外で,12か月の事業年度の基準法人税額が1,000万円,留保金課税や税額控除等がない場合,防衛特別法人税額は20万円となる。
この20万円を当期の税金費用として認識し,決算日時点で未納である単純な例では,次の仕訳となる。

時点借方貸方決算で計上法人税等20万円未払法人税等20万円後日納付未払法人税等20万円普通預金20万円

この仕訳は,通算税効果額,還付,中間納付,純資産・その他の包括利益に対応する税金等がない例である。
科目名や補助科目は会社の会計方針に従って設定し,他の税目との内訳が追跡できるようにする。

2 納付額だけから当期の費用を決めない

中間納付や税額控除等がある場合,当期の税金費用と決算後の追加納付額は一致しないことがある。
納付書や銀行口座の支出額だけを決算仕訳へ転記するのではなく,当期税額,既納付額,未払額又は還付額を照合する必要がある。
税務申告における損金算入の可否と,会計上の費用計上も別の問題である。

第3 税効果会計では何を確認するか
1 税効果会計の対象となる税金に含まれる

実務対応報告第48号は,繰延税金資産・負債の計算に用いる防衛特別法人税の税率について,地方法人税と同様に税効果会計の適用指針に従うと定めている。
また,法定実効税率の算定では防衛特別法人税率を考慮する。

税効果会計では,将来の税金に影響する一時差異について,その解消時期と適用税率等を確認する。
今期にいくら納めるかという当期税額の計算を,そのまま繰延税金資産・負債の計算へ置き換えることはできない。
繰延税金資産の回収可能性は,税率を選ぶこととは別に検討する必要がある。

2 対象事業年度と一時差異の解消時期を対応させる

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防衛特別法人税の申告書・納付方法―別表一次葉一,税額0円とe-Taxの注意点(AI作成)

目次

第1 防衛特別法人税の申告と納付は別に確認する第2 申告前に対象事業年度と期限を確かめる1 申告する日ではなく事業年度の開始日で判定する2 確定申告の期限と納付の予定を分けて管理する第3 別表一次葉一のどこを確認するか1 別表一の一枚目だけで提出を終えない2 所得・基準法人税額・課税標準法人税額を区別する3 税額0円でも空欄のまま省略しない第4 e-Taxで申告するときの確認順序1 申告データと受信通知を確認する2 申告の受信通知は納付完了の証明とは限らない第5 令和9年5月までの暫定的な納付方法1 受信通知から納付情報登録依頼を作成する2 納付書で納める場合の記載3 グループ通算法人の一括ダイレクト納付第6 中間申告は確定申告の開始年度と分ける第7 提出後に残す記録と誤りが分かった場合第8 よくある質問1 防衛特別法人税が0円でも申告書は必要か2 防衛特別法人税の納付書の税目番号は何か3 e-Taxで申告したら自動的に納付も済むのか第9 出典・関連記事
第1 防衛特別法人税の申告と納付は別に確認する

防衛特別法人税は,対象となる法人では税額が0円でも確定申告が必要である。
申告書を送信したことと,納付すべき税額を納めたことは別であり,申告内容,受信通知,納付結果を分けて確認する必要がある。
本記事は,令和8年10月15日に確認した国税庁の申告書様式・記載要領とe-Taxの案内に基づき,国内の普通法人を中心に,申告書の確認箇所と納付の手順を整理する。

令和9年5月までの納付には暫定的な取扱いが案内されている。
申告書の適用事業年度と,納付手続を行う時点のシステム対応を確認し,過去の画面や他の税目の操作をそのまま当てはめない。
対象法人,計算方法及び事業年度の判定は,防衛特別法人税とは―対象法人・計算方法・申告時期と税額0円の場合の注意点(AI作成)を参照されたい。

第2 申告前に対象事業年度と期限を確かめる
1 申告する日ではなく事業年度の開始日で判定する

原則として,令和8年4月1日以後に開始する事業年度が対象となる。
例えば,令和8年1月1日から同年12月31日までの事業年度は,終了日が同年4月以後でも,この税の対象事業年度ではない。
通算子法人は通算親法人の事業年度との関係も確認する。

国税庁の別表一覧には「令和8年4月1日以後終了事業年度等分」と表示されているが,様式の適用関係の表示だけで防衛特別法人税の課税対象を判断してはいけない。
国税庁の令和8年6月改訂リーフレットは,同年3月31日以前に開始した事業年度について,防衛特別法人税の別葉及び他の別表の防衛特別法人税欄を記載しないよう説明している。

2 確定申告の期限と納付の予定を分けて管理する

確定申告書の提出期限は,原則として課税事業年度終了の日の翌日から2か月以内である。
法人税の確定申告期限が延長されている場合,防衛特別法人税の確定申告期限もその延長された期限となる。
納付資金の準備や延長期間の利子税の扱いは,申告期限の確認とは分けて税理士等と確認する。

令和8年4月1日から令和9年3月31日までの事業年度で,期限延長等がない場合,通常の申告・納付期限は令和9年5月31日となる。
設立,決算期変更,清算等がある会社では,通常の12か月の事業年度と同じ前提で処理しない。

第3 別表一次葉一のどこを確認するか
1 別表一の一枚目だけで提出を終えない

防衛特別法人税の申告書は,法人税・地方法人税の申告書と一体の様式である。
内国法人の別表一では,防衛特別法人税額の計算が別表一次葉一に設けられている。
別表一の一枚目を作成したことだけで,防衛特別法人税の申告が完成したとは判断できない。

国税庁の青色申告用の別表一は3枚構成で,2枚目が別表一次葉一である。
申告ソフトを使用する場合も,対象事業年度に対応する様式が選ばれ,必要な別葉が作成・送信対象に含まれているかを確認する。
外国法人には別表一の二次葉一があるため,国内の普通法人の様式をそのまま用いない。

2 所得・基準法人税額・課税標準法人税額を区別する

(続きを読む...)防衛特別法人税の申告書・納付方法―別表一次葉一,税額0円とe-Taxの注意点(AI作成)

情報漏洩が相次ぐ今,企業の信頼を守る法務の備え―平時の体制,発覚後の初動,報告・通知・公表(AI作成)

目次

第1 企業の信頼を守る法務の備えとは1 事故を完全になくす約束ではなく,発見して説明できる体制を整える2 「情報漏洩」と法令上の「漏えい等」を区別する第2 なぜ今,企業法務が平時から関与する必要があるか1 攻撃経路と委託関係が複雑になっている2 令和8年10月の注意喚起と現行義務を混同しない第3 最初に情報と法的関係を分類する1 個人情報だけを見ない2 自社,委託元,委託先及びクラウド事業者の役割を固定する第4 平時に整える六つの備え1 情報資産・システム・委託先の台帳2 権限・認証・ログ・バックアップ3 社内規程と教育4 初動連絡網と判断票5 契約とサイバー保険6 机上訓練と更新第5 発覚直後の初動1 被害拡大防止と証拠保全を並行する2 確認済み事実,可能性及び不明を分ける3 関係者への連絡と守秘第6 個人情報保護委員会への報告,本人通知及び公表1 報告対象となる四つの類型2 速報と確報3 本人通知と対外公表は目的が異なる第7 信頼を損なわない対外説明1 最初の発表で断定し過ぎない2 更新履歴を残す3 再発防止策を抽象語で終わらせない第8 情報漏洩と企業法務に関するよくある質問1 情報漏洩を防ぐ三原則は何ですか2 情報漏洩の原因一位は何ですか3 情報漏洩で会社はどのような責任を負いますか4 会社で情報漏洩が起きたら最初に何をしますか5 従業員が漏えいさせたら直ちに解雇できますか6 生成AIへ社内情報を入力することは情報漏洩ですか7 情報漏洩の公表は必ず必要ですか8 法務部門だけで準備できますか第9 企業法務の確認チェックリスト第10 関連記事第11 出典
第1 企業の信頼を守る法務の備えとは
1 事故を完全になくす約束ではなく,発見して説明できる体制を整える

情報漏洩が相次ぐ今,企業の信頼を守る法務の備えは,「事故を一件も起こさない」と表明することではない。
保有する情報と利用するシステムを把握し,異常を早期に発見し,被害拡大を止め,証拠を残し,必要な相手へ期限内に報告・通知し,確認済みの事実を継続して説明できる体制を平時から整えることである。

本記事は,一般企業が個人データ等の漏えい,滅失又は毀損のおそれを把握した場合を中心に,企業法務が確認する順序を整理する。
金融,医療,通信,上場会社等には業法上の報告又は適時開示が加わることがあるため,個別業種の規制は別に確認する必要がある。

2 「情報漏洩」と法令上の「漏えい等」を区別する

一般に「情報漏洩」と呼ばれる事象には,外部への流出だけでなく,誤送信,紛失,盗難,不正アクセス,設定不備,内部不正,ランサムウェアによる利用不能及びデータの改変が含まれ得る。
個人情報保護法の実務では,個人データの「漏えい,滅失又は毀損」を分け,それぞれ発生又は発生のおそれがあるかを判断する。

第2 なぜ今,企業法務が平時から関与する必要があるか
1 攻撃経路と委託関係が複雑になっている

近時の公的注意喚起は,既知の脆弱性,認証情報の窃取,クラウド設定,APIの認可不備,グループ会社,委託先及び個人用領域など,事故の入口が一つではないことを示している。
法務部門は,情報システム部門だけに対応を委ねず,誰がどの情報をどのサービスで扱い,誰に委託し,異常時に誰が決定するかを契約と社内体制の両面から確認する必要がある。

2 令和8年10月の注意喚起と現行義務を混同しない

個人情報保護委員会が令和8年10月7日に示した資料は,大規模漏えい等を踏まえ,異常の早期検知,横展開防止,ログ取得・保存・分析及び遮断等を重視している。
同資料は,見直しの内容の確定を令和9年4月に予定すると説明し,見直し予定の内容を先取りして示している。
この記載を令和9年4月からの適用開始が確定したという意味に読み替えず,現行の義務,手法の例示及び今後の見直しを区別する。

個人情報保護法上の安全管理措置義務,現行ガイドライン,将来改正の予告及びMFA・EDR等の技術上の手法例は,根拠と時点を分けて検討する。
具体策は,取り扱う情報の性質,件数,システム構成,事業規模,委託関係及び当時の技術水準に応じて選ぶ。

第3 最初に情報と法的関係を分類する
1 個人情報だけを見ない

初動では,氏名や連絡先を含む個人情報だけでなく,要配慮個人情報,決済情報,認証情報,営業秘密,契約上の秘密,顧客から預かった資料,マイナンバー,知的財産及び業務継続に必要なデータを分類する。
同じファイルでも,個人情報保護法,番号法,不正競争防止法,秘密保持契約,委託契約及び業法上の義務が重なることがある。

2 自社,委託元,委託先及びクラウド事業者の役割を固定する

クラウド又は委託先で事故が起きても,自社の本人通知,行政報告,契約通知及び顧客対応が当然に不要になるわけではない。
平時の契約では,事故の定義,第一報の期限,提供すべきログと事実,調査協力,証拠保全,再委託,費用負担及び対外公表の調整方法を確認する。

事故発生後は,事実を知らないまま責任の押し付け合いをしないよう,意思決定者,技術調査担当,法務担当,広報担当及び外部専門家の連絡線を一本化する。

第4 平時に整える六つの備え
1 情報資産・システム・委託先の台帳

(続きを読む...)情報漏洩が相次ぐ今,企業の信頼を守る法務の備え―平時の体制,発覚後の初動,報告・通知・公表(AI作成)

令和8年9月1日からの36協定と労基署の監督指導―月45時間規制は緩和されたのか(AI作成)

目次

第1 結論と本記事の対象1 月45時間の上限規制が緩和されたわけではない2 資料の範囲と確認日第2 変更されていない法律上の上限1 一般の事業における原則2 特別条項にも超えられない上限がある3 変わった点と変わらない点第3 令和8年9月1日から何が変わったか1 時間数だけに着目した一律の指導を見直した2 相談・支援も拡充された第4 特別条項の健康・福祉確保措置1 協定届で選ぶだけでは足りない2 実施記録の保存3 措置は労働者ごとのリスクに結び付けて確認する第5 36協定を点検するときの実務1 協定の成立・内容・届出・運用を分ける2 記録を一つの時系列へまとめる第6 残業代・残業命令・安全配慮義務との関係1 割増賃金の支払義務は別問題である2 36協定だけで残業命令権が決まるわけではない3 安全配慮義務は緩和されていない第7 弁護士・税理士が確認する資料1 弁護士が受任時に確認する事項2 税理士が気付きやすい資料と連携第8 監督統計の読み方第9 関連記事第10 出典・参考資料
第1 結論と本記事の対象
1 月45時間の上限規制が緩和されたわけではない

厚生労働省は,令和8年9月1日から,時間外・休日労働時間数だけに着目して1か月45時間以内への削減を求める一律の監督指導を見直した。
もっとも,労働基準法36条が定める原則月45時間・年360時間の限度時間や,特別条項を設ける場合の法律上の上限は改正されていない。
今回変わったのは法令上の上限ではなく,労働基準監督署が各事業場の事情をどのように確認し,指導するかという行政上の運用である。

監督署は,特別条項付き36協定で定めた健康及び福祉を確保するための措置が実際に実施されているかを重点的に確認し,事業場の状況に応じて必要な指導を行う。
過重労働による健康障害のおそれが高い場合には,改正後も必要な指導が行われるため,月45時間を超えても問題がないという制度ではない。

2 資料の範囲と確認日

本記事は,令和8年10月15日現在の労働基準法,同法施行規則,厚生労働省の令和8年8月19日付け報道発表,同年9月1日の厚生労働大臣会見,令和8年版36協定届の記載例及び令和7年度の監督指導結果を中心に整理する。
監督指導の変更は厚生労働省の公表資料で確認できるが,個別事案で用いられる内部の監督要領や各署の具体的運用をすべて確認したものではない。

第2 変更されていない法律上の上限
1 一般の事業における原則

労働基準法36条は,36協定で定める時間外労働の限度時間を,原則として1か月45時間・1年360時間としている。
対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制では,1か月42時間・1年320時間である。
これらは36協定を締結すると当然に働かせることができる標準時間ではなく,臨時的な事情がない通常の場合の限度時間である。

2 特別条項にも超えられない上限がある

通常予見できない業務量の大幅な増加等へ対応する必要がある場合は,労使の手続を経て特別条項を設けることができる。
それでも,時間外労働は年720時間以内,時間外労働と休日労働の合計は単月100時間未満,同じ合計の2か月平均から6か月平均まではいずれも月80時間以内でなければならない。
また,原則の月45時間を超えることができるのは年6か月以内である。
建設事業,自動車運転の業務及び医師等には別の特例があるため,対象業務を確認して一般則と混同しないことが必要である。

3 変わった点と変わらない点
確認事項令和8年9月1日以後の扱い原則月45時間・年360時間労働基準法上の限度時間は変わらない特別条項の年720時間等法律上の上限は変わらない割増賃金の支払監督指導の見直しとは別であり,支払義務は変わらない監督署の確認時間数だけによる一律指導を見直し,健康・福祉確保措置の実施状況を重点的に確認する健康障害のおそれが高い場合事業場の実態に応じた必要な指導が続く
第3 令和8年9月1日から何が変わったか
1 時間数だけに着目した一律の指導を見直した

厚生労働省の令和8年8月19日付け報道発表は,時間外・休日労働時間数だけに着目して1か月45時間以内への削減を求める一律の指導を見直すと明記している。
その上で,各事業場が36協定で定める健康及び福祉を確保するための措置の実施状況を重点的に確認し,確認した状況に応じた必要な指導を行うとしている。

この説明は,月45時間という法定の限度時間を廃止し,又は特別条項なしの時間外労働を適法にするものではない。
監督指導の着眼点を,時間数のみの一律評価から,労使が定めた措置の履行と個別の健康リスクを含む確認へ改めたものと理解すべきである。

2 相談・支援も拡充された

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株主総会とは―開催時期,出席できる人,決議事項,普通決議・特別決議及び手続(AI作成)

目次

第1 株主総会とは何か第2 株主総会はいつ,年に何回開くか1 定時株主総会は事業年度ごとに開く2 事業年度終了後3か月以内という絶対的な期限ではない3 6月開催が多い理由と2026年の日程第3 株主総会に出席できる人1 基準日と議決権を確認する2 100株あれば必ず出席できるとは限らない3 代理人,家族及び弁護士第4 株主総会で決める主な事項第5 普通決議と特別決議第6 招集から議事録までの手続1 日時,場所及び議題を決める2 招集通知と電子提供措置3 当日の運営と議事録第7 株主総会を開かない場合と書面決議第8 オンライン参加とバーチャルオンリー株主総会第9 よくある質問1 株主総会に出られる人は誰か2 2026年の株主総会の日程はいつか3 株主総会は年に何回あるか4 株主総会はなぜ6月が多いのか5 株主総会を開かないとどうなるか6 100株はいくらか第10 会社側と株主側の確認事項第11 出典と関連記事1 公開一次資料2 山中弁護士ブログの関連記事
第1 株主総会とは何か

株主総会は,株式会社の株主が議決権を行使し,会社法又は定款により株主総会の権限とされた事項を決める機関である。
取締役会を置かない会社では,株主総会は会社法に規定する事項のほか,会社の組織,運営,管理その他会社に関する一切の事項を決議できる。
取締役会設置会社では,会社法に規定する事項と定款で定めた事項に限って決議できるため,株主総会がすべての業務執行事項を決めるわけではない(会社法295条)。

株主総会には,毎事業年度の終了後一定の時期に招集する定時株主総会と,必要がある場合に招集する臨時株主総会がある(会社法296条1項・2項)。
会社ごとの開催日,出席資格,議案及び議決権行使方法は,その会社の定款,株主名簿,招集通知及び株主総会参考書類で確認する必要がある。

第2 株主総会はいつ,年に何回開くか
1 定時株主総会は事業年度ごとに開く

会社法296条1項は,定時株主総会を「毎事業年度の終了後一定の時期」に招集しなければならないと定めている。
したがって,通常は事業年度ごとに1回の定時株主総会があり,必要があれば臨時株主総会を追加して開く。
「株主総会は年1回」とだけ説明すると臨時株主総会を見落とすため,定時総会は事業年度ごと,臨時総会は必要に応じて,と区別するのが正確である。

2 事業年度終了後3か月以内という絶対的な期限ではない

法務省「定時株主総会の開催時期について」は,会社法上,事業年度の終了後3か月以内に必ず定時株主総会を招集しなければならないわけではないと説明している。
もっとも,議決権行使の基準日を定める場合,基準日株主が行使できる権利は基準日から3か月以内に行使するものに限られる(会社法124条2項)。
定款の基準日から3か月を超えて開催する場合は,新たな基準日の設定と公告の要否を検討する。

3 6月開催が多い理由と2026年の日程

3月末を事業年度末とする上場会社が多く,決算,監査,招集通知等の準備と基準日の有効期間を踏まえて6月に定時株主総会を開く会社が多い。
しかし,すべての会社が6月に開催するわけではなく,会社ごとに事業年度と開催日が異なる。

東京証券取引所の2026年6月5日公表資料によれば,2026年3月期決算の東証上場内国会社のうち集計対象2142社では,6月26日が最多で,656社,30.6%が同日に開催を予定していた。
この数値は予定日の集計であり,個別会社の日程は変更されることがある。
最新の日程は,会社のIRページ,招集通知,適時開示資料及び東証上場会社情報サービスで確認する。

第3 株主総会に出席できる人
1 基準日と議決権を確認する

出席して議決権を行使できるかは,株式を買った日だけでなく,基準日,株主名簿への記載又は記録,保有株式の内容,単元株式数及び議案ごとの議決権の有無によって決まる。
会社は基準日を定め,その日に株主名簿に記載又は記録された株主を権利行使者と定めることができる(会社法124条)。
総会直前に株式を取得しても,その総会の基準日株主でなければ議決権を行使できないことがある。

2 100株あれば必ず出席できるとは限らない

東京証券取引所などの内国株式の売買単位は,2018年10月1日に100株へ統一された。
上場会社が単元株式数を100株と定めている場合,100株が1単元となり,原則として1個の議決権を有する(会社法308条1項)。

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消費税の不課税・非課税・免税の違い―一覧表・具体例・免税事業者との区別(AI作成)

目次

第1 結論―四つの区分を一覧で見る第2 不課税・非課税・免税を判定する順序1 最初に課税対象となる取引かを確認する2 課税対象なら法定の非課税取引かを確認する3 非課税でなければ輸出免税の要件を確認する4 取引の区分と事業者の納税義務を分けて確認する第3 不課税取引の具体例と注意点1 対価を得て行う取引に当たらない例2 損害賠償金・解決金は実質で判定する第4 非課税取引の具体例と理由1 消費の負担を求めることになじまない取引2 社会政策的配慮による取引第5 輸出免税と免税事業者の違い1 輸出免税は取引についての免税である2 免税事業者は事業者についての免税である第6 誤分類すると何が変わるか1 請求額と申告上の集計が変わる2 課税売上割合と仕入税額控除が変わる第7 よくある質問1 非課税と不課税は同じですか2 非課税と不課税を間違えるとどうなりますか3 消費税が非課税かどうかはどう判定しますか4 非課税仕入れと非課税売上げの違いは何ですか5 不課税の勘定科目は何ですか第8 判定のために確認する資料第9 出典・参考資料
第1 結論―四つの区分を一覧で見る

消費税の「不課税」は消費税の課税対象となる要件を満たさない取引をいい,「非課税」は課税対象となる取引のうち消費税法が課税しないものとして列挙した取引をいう。
「輸出免税」は課税対象となる輸出取引等について消費税を免除する制度であり,「免税事業者」は取引の種類ではなく事業者の納税義務に関する区分である。
したがって,不課税,非課税,輸出免税及び免税事業者は,同じ「消費税を請求しない場面」に見えても,判定対象と仕入税額控除への影響が異なる。
以下は,令和8年10月15日現在の法令・国税庁資料に基づく整理である。

区分何を判断する区分か主な例仕入税額控除等への影響不課税(課税対象外)国内取引,事業性,対価性又は資産の譲渡等という課税要件を満たすか国外取引,寄附金,単なる贈与,配当金,純粋な損害賠償金課税売上割合の分母・分子に原則として算入しない非課税課税対象の取引であるが,消費税法6条・別表第2により課税しないか土地の譲渡・貸付け,有価証券,商品券,利子,社会保険医療,住宅の貸付け非課税売上げは課税売上割合の分母に算入し,対応する仕入れは原則として仕入税額控除の対象外輸出免税課税対象の輸出取引等について消費税法7条の免税要件と証明を満たすか商品の輸出,国際輸送,非居住者に対する一定の役務提供免税売上げは課税売上割合の分母・分子に算入し,対応する課税仕入れは原則として仕入税額控除の対象免税事業者事業者に納税義務があるか基準期間の課税売上高等により納税義務が免除される事業者その事業者の通常の課税取引が非課税取引に変わるわけではない
第2 不課税・非課税・免税を判定する順序
1 最初に課税対象となる取引かを確認する

国内で事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡,資産の貸付け又は役務の提供に当たるかを最初に確認する。
この段階で国外取引,寄附金,単なる贈与,配当金その他の対価性を欠く取引であれば,不課税,すなわち課税対象外となる。
契約書に「解決金」,「協力金」又は「負担金」と書かれていても,名称だけで決めず,何の対価として支払われるかを確認する必要がある。

2 課税対象なら法定の非課税取引かを確認する

課税対象となる取引であっても,消費の負担を求めることになじまない取引又は社会政策的配慮を要する取引として,消費税法6条・別表第2が定める取引には消費税を課さない。
非課税取引は法律上の列挙によって決まるため,当事者が契約書で「非課税」と表示するだけでは非課税にならない。

3 非課税でなければ輸出免税の要件を確認する

輸出取引等は,課税対象となる取引であることを前提に消費税が免除される。
輸出免税の適用には,輸出許可書その他の帳簿・書類によって輸出取引等であることを証明する必要がある。

4 取引の区分と事業者の納税義務を分けて確認する

取引が課税,不課税,非課税又は輸出免税のいずれに当たるかを判定した後に,売主・受任者等が課税事業者か免税事業者かを別に確認する。
免税事業者が行う通常の課税取引は,取引の性質としては課税取引のままであり,土地の譲渡や社会保険医療のような非課税取引に変わるものではない。

第3 不課税取引の具体例と注意点
1 対価を得て行う取引に当たらない例

寄附金,祝い金,見舞金,補助金,単なる贈与及び株主・出資者の地位に基づく配当金は,通常,資産の譲渡等の対価ではないため不課税となる。
給与・賃金は雇用契約に基づく労務の提供であり,事業として行う役務の提供ではないため不課税となる。
保険事故の発生によって受け取る保険金,資産の滅失・盗難による損失及び心身・資産への損害を補う純粋な損害賠償金も,通常は対価性を欠く。

2 損害賠償金・解決金は実質で判定する

損害賠償金という名称でも,損害を受けた資産を加害者へ引き渡す場合の代金,特許権等の使用料に相当する金銭又は事務所の明渡し遅延に伴う賃貸料相当額などは,対価性が認められれば課税対象となる。
建物の補修費を当事者間で負担する場合も,補修工事の発注者,請求書の宛名,所有権の移転,立替払いの有無及び精算の根拠を分けて確認する必要がある。
詳しくは,建物の補修費を解決金で負担するときの消費税―消費税相当額,仕入税額控除と合意書の書き方(AI作成)で説明している。

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IT重説とは―重要事項説明書の電子交付との違い,宅建士証,録画及び証拠(AI作成)

目次

第1 IT重説と書面電子化を分けて理解する1 結論2 本記事の資料範囲第2 制度の経緯と現在の位置付け1 IT重説の本格運用2 書面電子化の施行3 平成26年資料の位置付け第3 重要事項説明書等を電子交付する場合1 相手方の承諾が必要である2 電子書面の要件3 受領の記録だけでは足りない第4 IT重説を適法かつ実効的に行うための条件1 双方向の映像・音声2 重要事項説明書の事前交付3 宅地建物取引士証の提示4 本人・代理人及び同席者の確認第5 外国人取引,通訳及び翻訳1 日本語書面の受領と理解は同じではない2 通訳者がいる場合の確認第6 録画・録音と個人情報1 録画・録音は法定要件ではない2 録画・録音を行う場合3 証拠としての保全方法第7 説明義務違反を争う場合の考え方1 四つの論点を分ける2 因果関係と損害3 集めるべき資料第8 宅建業者・買主等の実務チェックリスト1 宅建業者側2 買主・借主側3 弁護士が紛争相談を受けた場合第9 税理士との連携が必要となる場面1 IT重説は税務説明を代替しない2 連携時に共有する資料第10 一次資料と関連記事1 一次資料2 関連記事3 裁判例の確認状況
第1 IT重説と書面電子化を分けて理解する
1 結論

IT重説とは,テレビ会議等を用いて,宅地建物取引士が宅地建物取引業法(以下「宅建業法」といいます。)35条の重要事項説明を対面と同様に行う方法です。

これに対し,書面電子化とは,宅建業法34条の2,35条又は37条に基づく書面を,紙に代えて電子メール,ウェブサイトからのダウンロード,CD-ROM又はUSBメモリ等により提供することです。

両者は別の制度ですから,重要事項説明書を電子交付しながら説明を対面で行うことも,紙の重要事項説明書を事前交付してIT重説を行うこともできます。

電子ファイルが届いたという事実だけで,適切な重要事項説明を受けたこと,内容を理解したこと,又は契約上のリスクを承諾したことまで当然に証明されるわけではありません。

2 本記事の資料範囲

本記事は,2026年10月15日現在の宅建業法と,国土交通省の「重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明 実施マニュアル」(令和6年12月版)及び同FAQを中心に整理しています。

国土交通省のマニュアルには,法令上必ず対応すべき「遵守すべき事項」と,トラブル防止の観点から可能な限り対応する「留意すべき事項」が併記されています。

そのため,個別の紛争では,法令違反の有無,行政上の取扱い,契約上又は不法行為上の民事責任及び証拠評価を区別する必要があります。

第2 制度の経緯と現在の位置付け
1 IT重説の本格運用

国土交通省は,平成26年4月に「ITを活用した重要事項説明等のあり方に係る検討会」を設置し,平成27年1月に最終とりまとめを公表しました。

その後の社会実験を経て,賃貸取引は平成29年10月1日から,売買取引は令和3年3月30日からIT重説の本格運用へ移行しました。

IT重説を行うための事前登録は不要であり,顧客から希望された場合に宅建業者が必ず応じなければならない制度でもありません。

2 書面電子化の施行

宅建業法上の重要事項説明書等を電磁的方法で提供できる制度は,令和4年5月18日に施行されました。

これにより,媒介契約締結時書面,重要事項説明書及び契約締結時書面について,それぞれ法令所定の要件を満たせば電子提供が可能になりました。

もっとも,売買契約書が宅建業法37条書面を兼ねる場合でも,宅建業法に根拠のない民間の取引慣行上の文書や押印まで国土交通省のマニュアルが一律に扱っているわけではありません。

3 平成26年資料の位置付け

今回提供された「ITを活用した重要事項説明等のあり方に係る検討会」資料は,社会実験前の検討段階における課題整理として有用です。

しかし,現在の実施要件を確認する際は,社会実験後の制度改正を反映した令和6年12月版マニュアル,FAQ,宅建業法並びに関係政省令を優先して参照する必要があります。

第3 重要事項説明書等を電子交付する場合
1 相手方の承諾が必要である

宅建業者は,電子書面を提供する前に,相手方が利用するIT環境が予定する提供方法及びファイル形式に対応できるかを確認する必要があります。

また,電子書面を提供する方法と,PDF等のファイル形式及びバージョン等を示した上で,電子提供を受けることについて相手方の承諾を得る必要があります。

提供方法又はファイル形式を変更する場合は,変更後の内容を示して改めて承諾を得ることが必要です。

2 電子書面の要件

電子書面は,相手方が出力して紙の書面を作成でき,電子書面に記録された内容について改変の有無を確認できる措置が講じられ,必要事項が明瞭に読むことのできる状態で提供されなければなりません。

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物流効率化法の2026年改正とは-4月全面施行,特定荷主・CLO及び中継輸送(AI作成)

目次

第1 結論-2026年の物流効率化法は二つに分けて理解すること1 4月1日の全面施行2 5月20日に公布された中継輸送改正3 直ちに確認すべき事業者第2 2025年施行事項と2026年施行事項の違い1 すべての事業者に関係する2025年の措置2 一定規模以上に上乗せされる2026年の措置3 貨物自動車運送事業法の改正と混同しないこと第3 特定事業者の指定基準1 特定荷主及び特定連鎖化事業者2 特定貨物自動車運送事業者等及び特定倉庫業者3 届出と指定第4 特定荷主に必要なCLO,中長期計画及び定期報告1 物流統括管理者(CLO)2 中長期計画3 定期報告4 勧告,公表,命令及び罰則第5 特定事業者でない荷主にも必要な対応1 基準未満でも努力義務はなくならないこと2 実務で優先する事項第6 2026年5月の中継輸送改正1 中継輸送とは何か2 計画認定制度と支援措置3 2026年4月の義務的措置との違い4 中継輸送の契約実務第7 PAAで問われやすい事項1 物流効率化法はいつ改正されたか2 物流法は2026年に改正されるのか3 運送業の残業時間規制は2026年も続くか4 トラック運賃は2026年に一律に値上げされるか5 2026年度の物流分野で重要な事項は何か第8 実務対応のチェックリスト1 指定基準と届出2 社内体制とデータ3 契約と現場運用第9 出典・参考資料1 法令及び国会資料2 2026年4月施行に関する国土交通省資料3 中継輸送改正に関する国土交通省資料

「物流効率化法改正 2026年」という言葉は,一つの改正だけを指すものではない。
2026年4月1日には令和6年法律第23号による特定事業者向けの義務的措置が施行され,2026年5月20日には中継輸送を促進する令和8年法律第21号が公布された。
本記事は,2026年10月15日現在の一次資料に基づき,二つの制度変更を区別した上で,対象事業者,届出・計画・報告,CLO,罰則及び実務対応を整理するものである。

第1 結論-2026年の物流効率化法は二つに分けて理解すること
1 4月1日の全面施行

令和6年法律第23号による改正は,2025年4月1日と2026年4月1日の二段階で施行された。
2025年4月からは,すべての荷主・連鎖化事業者・物流事業者等に物流効率化の努力義務が課された。
2026年4月からは,一定規模以上の荷主,連鎖化事業者,貨物自動車運送事業者等及び倉庫業者が「特定事業者」として,中長期計画,定期報告等を行う制度が施行され,特定荷主・特定連鎖化事業者には物流統括管理者の選任も義務付けられた。

2 5月20日に公布された中継輸送改正

これとは別に,令和8年法律第21号は,一つの長距離輸送を複数の運転者で分担する貨物自動車相互間の中継輸送を促進する制度を設けた。
同法は,中継輸送に関する基本方針,国・地方公共団体・関係事業者の責務,関係者が共同作成する貨物自動車中継輸送実施計画の認定及び認定計画への支援措置を定める。
2026年10月15日現在,国土交通省が公表した政令案の概要では主要部分を同年11月1日に施行する予定とされているが,最終的な施行日は公布された政令で確認する必要がある。

3 直ちに確認すべき事業者

前年度の取扱貨物量,保有車両台数又は保管量が指定基準に近い事業者は,自社が特定事業者に該当するかを確認する必要がある。
基準未満の事業者にも2025年4月から努力義務は適用されているため,「大企業だけの制度」と理解するのは正確でない。
長距離幹線輸送を行う運送事業者,荷主,倉庫業者,物流施設運営者等は,中継輸送改正による計画認定・支援の利用可能性と,参加者間の役割分担を別途検討する必要がある。

第2 2025年施行事項と2026年施行事項の違い
1 すべての事業者に関係する2025年の措置

2025年4月1日から,荷主には,トラック事業者との連携の下で,積載効率の向上,荷待ち時間の短縮及び荷役等時間の短縮に資する措置を講ずる努力義務が課された。
第一種荷主は主として運送を委託する側,第二種荷主は主として運転者から貨物を受け取り,又は運転者へ貨物を引き渡す日時等を指示できる側である。
一つの会社が取引場面により第一種荷主と第二種荷主の双方になることもあるため,発荷主か着荷主かを会社単位で固定せず,取引・拠点ごとに確認する必要がある。

貨物自動車運送事業者等には,複数荷主の貨物の積合せ,共同配送,配送量に応じた適正な車種の選択等により,運転者一人当たり一回の運送ごとの貨物重量を増やすことなどが求められる。
倉庫業者等にも,入出庫の平準化,予約受付,情報連携その他の判断基準に沿った取組が求められる。

2 一定規模以上に上乗せされる2026年の措置

2026年4月1日からは,前年度実績が政令の指定基準以上となる事業者に,届出を経た特定事業者としての義務が上乗せされた。
中長期計画と定期報告は,単に書類を提出する制度ではなく,取扱貨物量,積載効率,荷待ち時間,荷役等時間及び実施措置を継続的に把握・改善する制度である。
特定荷主と特定連鎖化事業者では,これらを部門横断で統括する物流統括管理者の選任が必要となる。

3 貨物自動車運送事業法の改正と混同しないこと

同じ令和6年法律第23号には,貨物自動車運送事業法の改正も含まれている。

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グレーゾーン解消制度とは―申請方法,回答一覧,規制のサンドボックス及び新事業特例制度との違い(AI作成)

目次

第1 グレーゾーン解消制度とは1 制度の目的と根拠条文2 確認できること3 確認できないこと第2 申請から回答までの流れ1 事業計画と確認事項を整理する2 事前相談を行う3 確認申請書を提出する4 規制所管大臣から回答を受ける第3 回答の公表と探し方1 回答はどこに掲載されるか2 公表には申請者の同意が関係する3 制度全体の利用状況第4 公表回答の読み方1 結論だけを横展開しない2 回答後に事業内容を変更した場合3 民事責任等は別に検討する第5 他の規制改革制度との違い1 規制のサンドボックス制度2 新事業特例制度3 ノーアクションレター制度第6 弁護士法72条に関する回答例1 法務サービスとグレーゾーン解消制度2 令和4年10月14日付けの二つの回答第7 よくある質問1 制度を利用するデメリットはあるか2 すでに開始している事業でも申請できるか3 回答があれば裁判でも適法と扱われるか第8 出典
第1 グレーゾーン解消制度とは
1 制度の目的と根拠条文

グレーゾーン解消制度は,事業者が新たな事業活動を行おうとするときに,具体的な事業計画に即して,現行法令上の規制の解釈及び適用の有無を事前に確認する制度である。

根拠条文は産業競争力強化法7条であり,事業所管大臣を通じて規制所管大臣に確認を求める仕組みである。

産業競争力強化法の目的と規制改革制度全体の位置付けは,産業競争力強化法とはで整理している。

令和8年10月15日現在,経済産業省の手引は,申請が受け付けられてから原則として1か月以内に回答する制度として案内している。

2 確認できること

確認の対象は,事業者が実施しようとする新たな事業活動について,特定の法令上の規定が適用されるか,及びその規定に照らして必要となる許認可,届出その他の規制上の取扱いである。

申請では,サービス名だけでなく,利用者,取引の流れ,報酬,担当者の役割,使用するシステム,提供する情報及び責任分担など,規制適用の判断に必要な事実を具体的に示す必要がある。

抽象的な法律相談や,法令全体について一般論を照会する制度ではない。

3 確認できないこと

グレーゾーン解消制度の回答は,照会された事業計画と申請書に記載された事実関係を前提とする行政上の見解である。

経済産業省の手引も,実施しようとする事業が現行の全ての法令に照らして適法であることを確認する制度ではないと説明している。

回答は,事実関係が異なる別の事業に当然に及ぶものではなく,裁判所の判断を拘束するものでもない。

第2 申請から回答までの流れ
1 事業計画と確認事項を整理する

最初に,誰が,誰に対し,どのような商品又は役務を,どのような対価及び方法で提供するのかを整理する。

次に,適用が問題となる法令,条項,許認可又は禁止規定と,確認したい結論を特定する。

規制適用を左右する重要な事実を省略すると,回答の前提が不明確になり,回答を事業判断に利用しにくくなる。

2 事前相談を行う

正式な確認申請書を提出する前に,事業を所管する省庁の窓口へ相談し,制度の対象となるか,規制所管省庁はどこか,どの事実と資料を示すべきかを確認することが実務上有用である。

複数の規制が関係するときは,規制ごとに所管省庁及び確認事項を整理する必要がある。

経済産業省は,申請様式,記載要領及び相談窓口をウェブサイトで公開している。

3 確認申請書を提出する

申請者は,産業競争力強化法施行規則の様式第9による確認申請書に,事業活動の内容,関係法令,確認を求める事項及び自らの見解などを記載して提出する。

規制の適用がないこと又は許認可等が不要であることを求める場合でも,申請者自身が考える法的根拠と事実関係を示す必要がある。

追加資料の提出や記載の補正を求められたときは,回答期間の起算や審査の進行に影響し得る。

4 規制所管大臣から回答を受ける

事業所管大臣は,申請内容を踏まえて規制所管大臣に照会し,規制所管大臣の見解を申請者に通知する。

(続きを読む...)グレーゾーン解消制度とは―申請方法,回答一覧,規制のサンドボックス及び新事業特例制度との違い(AI作成)

令和8年改正産業競争力強化法―施行日,特定生産性向上設備等及び三つの事業適応(AI作成)

目次

第1 令和8年改正の成立と施行状況1 改正法の正式名称と日付2 改正の背景第2 特定生産性向上設備等と国内成長投資1 特定生産性向上設備等とは2 法案説明に示された基準3 税制上の支援との関係第3 国際経済事情激変事業適応1 対象となる変化2 計画認定と支援第4 事業費上昇事業適応1 制度の対象2 認定計画に記載する事項第5 生活維持物品役務需要減等事業適応1 地域の生活基盤を支える制度2 支援措置第6 申請前の実務上の確認事項1 利用目的から制度を選ぶ2 基準日と施行状態を確認する3 事前相談と社内決定を進める第7 よくある質問1 令和8年改正はいつから施行されたか2 35億円以上を投資すれば必ず税制を利用できるか3 中小企業も対象となるか第8 出典
第1 令和8年改正の成立と施行状況
1 改正法の正式名称と日付

令和8年の産業競争力強化法改正は,「経済社会情勢の変化を踏まえた企業の事業活動の持続的な発展を図るための産業競争力強化法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第29号)によるものである。

同法案は令和8年3月6日に第221回国会へ提出され,同年5月29日に成立し,同年6月5日に公布された。

令和8年10月15日現在,産業競争力強化法には同年6月5日施行及び同年7月31日施行の改正部分が反映されている一方,公布日から6か月以内の政令指定日に施行される部分が残っている。

したがって,令和8年改正の施行日は一日だけではなく,利用する条項と支援措置に応じて確認する必要がある。

産業競争力強化法の目的と主要制度の全体像は,産業競争力強化法とはで整理している。

2 改正の背景

経済産業省は,物価及び事業費の上昇,国際経済事情の急激な変化,国内投資の伸び悩み,人口減少並びに少子高齢化による地域の生活基盤の弱体化などを改正の背景としている。

改正法は,大規模な国内成長投資を促す制度,経済環境の変化に対応する事業適応計画の新類型,地域の生活維持に必要な事業の転換を支援する制度を整備した。

改正は産業競争力強化法だけでなく,地域経済牽引事業促進法,貿易保険法,租税特別措置法その他の関係法令にも及ぶ。

第2 特定生産性向上設備等と国内成長投資
1 特定生産性向上設備等とは

改正法は,産業競争力強化法上の生産性向上設備等のうち,事業の将来における高い生産性の確保に特に資するものとして経済産業大臣の確認を受けたものを「特定生産性向上設備等」と定義した。

これは単に新しい設備を購入すれば該当するという制度ではなく,設備を用いる事業計画,投資効果,投資規模,取得及び使用の時期その他の法令上の要件を満たし,所定の確認を受けることを前提とする。

建物だけの取得,貸付けを目的とする設備その他の除外対象が定められるため,投資総額だけで判断することはできない。

2 法案説明に示された基準

経済産業省の令和8年3月6日付け法案説明では,特定生産性向上設備等について,投資利益率15%以上,投資規模35億円以上,中小企業等については5億円以上などの要件を満たす投資を対象とする制度として説明されている。

これらの数値は制度の中心的な目安であるが,最終的な適用は,施行後の省令,告示,確認手続及び租税特別措置法上の要件によって判定される。

設備の種類,事業年度,取得時期及び供用時期によって扱いが異なり得るため,公表資料の概要だけで投資判断や税務処理を確定すべきではない。

3 税制上の支援との関係

経済産業省は,令和8年度税制改正における「大胆な投資促進税制」として,原則全業種を対象に即時償却又は税額控除7%等を措置する制度と説明している。

ただし,産業競争力強化法上の確認又は計画認定は,税額控除等を受けるための一つの前提であり,それだけで税務上の適用が確定するものではない。

租税特別措置法,対象設備の取得価額,供用時期,控除限度額,繰越しその他の税務要件を別に確認する必要がある。

第3 国際経済事情激変事業適応
1 対象となる変化

国際経済事情激変事業適応は,予見し難い国際経済事情の急激な変化に対応して行う事業適応である。

典型的には,関税その他の通商措置,地政学的な変化又は国際的な供給網の急変に対応するため,国内における生産能力や供給体制を再構築する投資が問題となる。

通常の景気変動や当初から予測されていたコスト変化まで当然に含まれるわけではなく,実施指針,事業分野別実施指針及び個別計画との適合が審査される。

(続きを読む...)令和8年改正産業競争力強化法―施行日,特定生産性向上設備等及び三つの事業適応(AI作成)

産業競争力強化法とは―目的・主要制度・認定のメリット及び令和8年改正をわかりやすく解説(AI作成)

目次

第1 産業競争力強化法とは1 産業競争力強化法の位置付け2 法律の目的3 成立,公布及び当初施行の日付第2 主要な制度の全体像1 規制改革に関する制度2 投資及び事業適応に関する制度3 事業再編及び事業再生に関する制度4 創業,中堅企業,スタートアップ及び中小企業に関する制度第3 認定を受けるメリットと注意点1 認定の効果は制度ごとに異なる2 想定される支援措置3 申請前に確認すべき事項第4 令和8年改正の要点1 令和8年法律第29号2 国内成長投資に関する制度3 経済環境の変化に対応する計画認定第5 よくある質問1 産業競争力強化法の所管省庁はどこか2 産業競争力強化法施行令及び施行規則は何を定めているか3 産業技術力強化法との違いは何か4 中小企業や創業者にも関係するか第6 出典
第1 産業競争力強化法とは
1 産業競争力強化法の位置付け

産業競争力強化法(平成25年法律第98号)は,経済社会情勢の変化に対応して我が国の産業競争力を強化するため,規制改革,事業の新陳代謝,投資,事業再編,事業再生,創業及び中小企業支援などの制度を一つの法律にまとめたものである。

同法は特定の業種だけを規制する法律ではなく,事業者による新たな取組を促進し,国が計画認定,規制の特例,税制,金融その他の支援措置を組み合わせるための横断的な政策法である。

令和8年10月15日現在,同法には令和8年法律第29号による改正の一部を含む複数の改正が反映されており,e-Gov法令検索では未施行部分があることも表示されているため,具体的な制度を利用するときは基準日と施行状態を確認する必要がある。

2 法律の目的

産業競争力強化法1条は,産業競争力の強化に関する基本理念並びに国及び事業者の責務を定めることに加え,規制改革,産業活動における新陳代謝の活性化,株式会社産業革新投資機構による支援及び中小企業の活力の再生を円滑化する措置を講じ,国民生活の向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的としている。

経済産業省は,制定時の問題意識を「過剰規制」,「過小投資」及び「過当競争」という日本経済の三つの歪みの是正として説明している。

この三つは法律上の認定要件そのものではなく,複数の制度を束ねる政策目的を理解するための整理である。

3 成立,公布及び当初施行の日付

産業競争力強化法案は平成25年10月15日に国会へ提出され,同年12月4日に成立し,同月11日に平成25年法律第98号として公布された。

同法の主要部分は平成26年1月20日に施行された。

その後,経済社会情勢や産業政策の変化に応じて改正が重ねられているため,制定時の制度説明だけで現在の制度全体を把握することはできない。

第2 主要な制度の全体像
1 規制改革に関する制度

新しい商品,サービス又は事業方法を計画する事業者にとって,既存の規制が適用されるか分からないことや,既存の規制を前提にすると実証自体が難しいことがある。

産業競争力強化法は,この問題に対応するため,具体的な事業計画について現行規制の解釈及び適用の有無を事前に確認するグレーゾーン解消制度,期間や参加者などを限定した実証を行う規制のサンドボックス制度,並びに事業者から提案された規制の特例措置を整備して利用する新事業特例制度を設けている。

グレーゾーン解消制度は適法性を一般的に保証する制度ではなく,照会された事業計画と事実関係を前提に規制所管大臣の見解を得る制度である。

申請方法,回答の公表及び三制度の違いは,グレーゾーン解消制度とはで詳しく整理している。

2 投資及び事業適応に関する制度

事業適応は,デジタル化,エネルギー利用による環境負荷の低減,国際経済事情の急激な変化又は事業費の上昇などの経済社会情勢の変化に対応し,生産性の向上又は新たな需要の開拓を目指して行う事業の変更である。

事業者が事業適応計画を作成し,法令及び実施指針に定められた要件を満たして主務大臣の認定を受けた場合,計画の類型に応じた税制又は金融上の支援の対象となり得る。

令和8年改正では,特定生産性向上設備等に関する制度のほか,国際経済事情激変事業適応及び事業費上昇事業適応が追加された。

改正内容と施行日の違いは,令和8年改正産業競争力強化法で整理している。

3 事業再編及び事業再生に関する制度

産業競争力強化法は,事業再編計画などの認定制度を通じて,会社分割,事業譲渡その他の組織再編や,収益性の低い事業から成長分野への経営資源の移動を促進する仕組みを設けている。

また,事業再生の円滑化,中小企業の再生支援及び経営資源の有効活用に関する制度も含まれる。

どの認定制度を用いるかによって,申請先,認定基準,計画期間及び支援措置が異なる。

4 創業,中堅企業,スタートアップ及び中小企業に関する制度

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特許法102条とは―1項・2項・3項・4項・5項の違い,損害額の計算及び推定覆滅(AI作成)

目次

第1 特許法102条の結論第2 特許法102条の1項・2項・3項の違い第3 1項による損害額の計算1 1項1号の基本式2 1項1号から差し引かれる事情3 1項2号の役割第4 2項による侵害者利益の推定1 2項は利益吐出しそのものではない2 2項が適用されるための関係3 侵害者利益は売上高ではなく限界利益である4 2項の推定覆滅第5 3項・4項・5項による実施料相当額1 3項の基本式2 4項は侵害を前提とした交渉事情を考慮する3 5項と3項を超える損害第6 同じ事例で見る1項・2項・3項の計算第7 原告側と被告側で準備する資料1 特許権者等が準備する資料2 侵害者側が準備する資料3 期間と数量を先に固定する第8 重要な知財高裁大合議判決1 令和元年6月7日判決2 令和4年10月20日判決3 令和7年3月19日判決第9 特許法102条についてよくある質問1 特許法102条とは何ですか2 1項・2項・3項はどう違いますか3 2項の侵害者利益は売上高ですか4 特許発明を実施していない特許権者も2項を使えますか5 2項と3項を同時に請求できますか6 4項は実施料を自動的に増額する規定ですか7 特許法103条との違いは何ですか8 差止請求と損害賠償請求の違いは何ですか9 特許が無効になれば102条の損害はどうなりますか第10 関連する記事及び一次資料1 関連する記事2 一次資料
第1 特許法102条の結論

特許法102条は,特許権侵害による損害額の立証を容易にするため,1項の特許権者等の販売利益,2項の侵害者利益及び3項の実施料相当額という算定方法を定めた規定である。
同条は損害賠償請求権そのものを新設する規定ではなく,民法709条に基づく損害賠償請求における損害額の立証を支える規定である。

1項は「侵害品がなければ特許権者等が売れた数量」を,2項は「侵害者が侵害行為で得た限界利益」を,3項は「特許を適法に実施するなら支払うべき実施料」をそれぞれ出発点とする。
4項は1項2号及び3項の実施料相当額を定める際に特許権侵害があったことを考慮できる旨を定め,5項は3項による請求をした後でも,これを超える損害の請求を妨げない旨を定める。

どの項が最も有利かは,特許権者等の製品と侵害品の競合関係,販売数量,利益率,実施能力,代替品,特許発明の顧客吸引力及びライセンス実績によって変わる。
請求時には一つの算定方法だけを早期に決め打ちせず,1項・2項・3項の各計算に必要な資料と,相手方が主張し得る控除・推定覆滅事情を並行して整理する必要がある。

以下は令和8年10月15日現在の現行法と公表裁判例を基準とする。

第2 特許法102条の1項・2項・3項の違い
規定計算の出発点主に必要となる資料主な減額・反論要素1項1号特許権者等の製品1個当たりの利益額×販売できた数量特許権者等の販売実績,限界利益,実施能力販売能力の上限,侵害品がなくても販売できなかった事情1項2号1項1号で数えない数量×実施料相当額侵害品の数量,合理的な実施料率侵害がなくても実施許諾しなかった事情2項侵害者が侵害行為で受けた利益侵害者の売上高,変動費・個別固定費,販売数量市場の相違,競合品,営業努力,特許発明以外の特徴など3項侵害品の売上高等×合理的な実施料率売上高,契約例,業界相場,特許の価値発明の寄与,代替技術,競争関係,ライセンス方針など

1項・2項・3項は,常に単純に足し合わせる選択肢ではない。
同じ損害について重複した回復は認められないため,各規定が対象とする数量と損害の範囲を区別しなければならない。

令和4年10月20日の知財高裁大合議判決は,2項の推定が覆滅された部分について,特許権者等にライセンス機会の喪失が認められるときは3項による損害を認め得るとした。
ただし,2項の覆滅部分であれば常に3項分を上乗せできるわけではなく,覆滅理由とライセンス機会の有無を個別に検討する必要がある。

第3 1項による損害額の計算
1 1項1号の基本式

1項1号は,侵害者が譲渡した侵害品の数量のうち,特許権者等の実施能力に応じた数量を上限として,特許権者等が販売できた数量に1個当たりの利益額を乗じる考え方である。
そこから,侵害品が存在しなくても特許権者等が販売できなかった事情に相当する数量を控除する。

計算の骨格は,「特許権者等の製品1個当たりの限界利益額×特許権者等が販売できた数量」である。
ここでいう1個当たりの利益額は,通常,売上高から販売数量の増加に伴って追加的に必要となる費用を控除した限界利益を基礎とする。

実施能力は,現実に製造・販売していた数量だけに固定されず,侵害がなければ合理的に追加できた製造委託,仕入れ,設備,人員及び販売網を含めて具体的に主張立証することが重要である。

2 1項1号から差し引かれる事情

侵害品と特許権者等の製品の市場・価格帯・用途が異なること,競合品が多数存在すること,侵害者のブランド・広告・販売網が需要を生み出したこと及び特許発明以外の機能が購買動機となったことは,販売できなかった事情として問題になり得る。
もっとも,事情が存在するというだけで全量が除外されるのではなく,その事情がどの程度の数量に影響したかを証拠に結び付ける必要がある。

3 1項2号の役割

1項2号は,特許権者等の実施能力を超える数量や,1項1号で販売できなかったとされた数量について,実施料相当額を損害として算定する規定である。
令和元年改正で設けられ,1項1号だけでは評価されにくかったライセンス機会の喪失を補う役割を持つ。

ただし,侵害がなければ特許権者等がその数量について実施許諾をしなかったと認められる事情があるときは,その数量は1項2号の計算対象にならない。

第4 2項による侵害者利益の推定

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共同開発・開発委託・製造委託で知財は誰に帰属するか―背景知財,成果,出願及び契約終了(AI作成)

目次

第1 契約名より実際の役割を先に確認する第2 背景知財と開発成果を分ける1 契約前から持つ技術を一覧にする2 成果を一つの言葉でまとめない第3 共同開発では貢献と利用条件を決める1 共同であること自体から共有とは限らない2 共有後の利用を先送りしない3 役割・費用・成果記録を対応させる第4 開発委託では移転と利用許諾を選ぶ1 ひな形の帰属条項をそのまま使わない2 納品物と知財を別々に特定する第5 製造委託では開発要素を見落とさない1 仕様・性能が確定している取引2 研究・開発を伴う取引第6 出願・権利化を管理する第7 利用・改良・再委託を定める第8 契約終了後の知財を決める第9 発注明示と対価を知財条項へ接続する第10 契約審査と証拠保存の確認表第11 一次資料と確認範囲
第1 契約名より実際の役割を先に確認する

【基準日:令和8年10月15日】

共同開発,開発委託及び製造委託では,契約名だけで成果の知的財産権の帰属は決まらない。
誰が課題を設定し,既存技術を持ち込み,研究・設計を担当し,費用と失敗リスクを負担し,成果を利用するかを確認した上で,契約類型と知財条項を選ぶ必要がある。

公正取引委員会等が令和8年6月24日に公表した契約書ひな形は,秘密保持,共同開発,開発委託及び製造委託の例を示す。
各ひな形は法定の統一契約ではなく,個別取引に応じて選択・修正する素材である。

第2 背景知財と開発成果を分ける
1 契約前から持つ技術を一覧にする

契約締結前から保有する特許権,出願,著作権,営業秘密,ソースコード,図面,製造条件,データ及び第三者から許諾を受けた技術を,背景知財又は固有知的財産権等として特定する。
契約後に相手方の秘密情報へ依拠せず独自に生み出した技術も,背景知財と同様に各当事者へ残すのかを定める。

一覧では,名称だけでなく,版,作成日,権利者,第三者の制限,利用可能な目的及び開示の可否を記録する。
既存技術を特定しないまま開発を始めると,後に開発成果との境界や相手方の利用権をめぐって争いになりやすい。

2 成果を一つの言葉でまとめない

成果には,発明,考案,意匠,著作物,ソースコード,設計図,中間成果物,試作品,実験データ,学習データ,製造ノウハウ及び失敗記録等がある。
権利化できる成果と秘密として管理する成果,納品する成果と当事者内部に残す成果を分ける。

発明者・創作者,着想,実験,設計,レビュー及び完成の時系列を残し,単に費用を支払った者を発明者又は著作者として扱わない。
従業員・役員・再委託先から必要な権利承継又は利用許諾を得る手続も定める。

第3 共同開発では貢献と利用条件を決める
1 共同であること自体から共有とは限らない

共同開発では,各当事者の単独成果,共同成果及び相手方の秘密情報へ依拠した成果を区分する。
公正取引委員会等の共同開発ひな形は,相手方の秘密情報に依拠した成果について,別段の合意がなければ共有とし,貢献比率を考慮して持分を協議する例を示す。

これは法令上の一律の結論ではなく,ひな形が採用した契約例である。
共同研究という名称だけで,すべての成果を折半又は共有にする必要はない。

2 共有後の利用を先送りしない

共有にする場合は,持分だけでなく,各当事者の自己実施,第三者への実施許諾,譲渡,担保設定,訴訟,費用負担及び収益分配を定める。
一方当事者が成果を実施しない代わりに対価を受けるのか,独占分野・地域を分けるのかも検討する。

共同開発ひな形は,共有成果の実施条件・費用を別途協議し,第三者への実施許諾に相手方の事前承諾を要する例を示す。
「共有」と書くだけで事業化の条件が決まるわけではないため,実際の販売・製造計画に合わせて具体化する。

3 役割・費用・成果記録を対応させる

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取適法・フリーランス法で知財の譲渡・許諾を発注するとき―令和8年10月1日改正,明示及び対価(AI作成)

目次

第1 この記事の結論と基準日第2 まず適用する法律を分ける1 取適法の対象となる取引2 フリーランス法の対象となる取引3 独占禁止法の検討が残る場合第3 譲渡・許諾等の対象を特定する1 「等」は権利だけを指さない2 利用範囲を構成する要素第4 取適法4条の発注明示へ落とす1 給付の内容に含める場合2 別の取引にする場合第5 フリーランス法の3条通知へ落とす1 給付内容と報酬を対応させる2 給付内容に含めない場合第6 対価を決めるときの実務1 価格に含めるなら根拠を残す2 追加利用は変更管理の対象にする第7 発注書・契約書の確認項目第8 紛争時に確認する証拠第9 一次資料と確認範囲
第1 この記事の結論と基準日

【基準日:令和8年10月15日】

成果物を発注したことと,受注者が持つ著作権,特許を受ける権利,図面,ノウハウ又はデータを発注者が自由に使えることは別の問題である。
令和8年10月1日に改正された取適法運用基準とフリーランス法の考え方は,知的財産権等の譲渡・許諾等を給付の内容に含める場合,その範囲を発注時に明らかにし,対価を代金又は報酬へ反映する考え方を明確にした。

もっとも,取適法とフリーランス法は,適用対象となる当事者と取引が異なる。
また,両法が適用されない取引でも,独占禁止法上の優越的地位の濫用や契約上の問題がなくなるわけではない。
最初に適用法を分け,次に発注対象,利用範囲,対価及び変更手続を一組で記録する必要がある。

第2 まず適用する法律を分ける
1 取適法の対象となる取引

取適法は,製造委託,修理委託,情報成果物作成委託及び役務提供委託について,当事者の規模要件等を満たす場合に適用される。
契約書の名称ではなく,実際に何を委託し,当事者がどの規模要件に該当するかを確認する。

取適法4条は,委託後直ちに給付の内容,代金額,支払期日等を明示することを求める。
契約が成立したかという民法上の問題と,取適法上の明示義務を履行したかという問題は別に確認する。

2 フリーランス法の対象となる取引

フリーランス法は,業務委託事業者が特定受託事業者へ業務委託をする場合に,3条通知による取引条件の明示等を求める。
3条の明示義務は,特定業務委託事業者だけでなく,すべての業務委託事業者に適用される点に注意する。

相手が個人名義であるというだけで適用を決めず,従業員の使用,法人の役員数その他の定義を確認する。
取適法とフリーランス法のいずれにも該当し得る取引では,それぞれの要件と義務を別々に照合する。

3 独占禁止法の検討が残る場合

両法の規模要件等を満たさなくても,発注者が受注者に対して取引上優越する地位にあり,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合は,独占禁止法上の優越的地位の濫用が問題となり得る。
会社規模の差だけで結論を出さず,取引依存度,取引先変更の可能性,専用投資,協議経過及び取引継続への影響を具体的に確認する。

第3 譲渡・許諾等の対象を特定する
1 「等」は権利だけを指さない

改正資料にいう「知的財産権等」は,特許権や著作権等の権利だけでなく,技術上又は営業上の秘密等を含み,ノウハウも対象になる。
公正取引委員会は,令和8年10月1日の意見募集結果で,「譲渡・許諾等」には技術上又は営業上の秘密等の提供も含まれると説明した。

したがって,注文書では「知財は発注者に帰属する」とだけ書かず,少なくとも対象となる成果物,既存技術,図面,素材,中間成果物,生産データ及びノウハウを分ける。
権利を移転するのか,目的内で利用を許すのか,閲覧・引渡し・アクセス付与をするのかも区別する。

2 利用範囲を構成する要素

利用許諾では,目的,期間,地域,独占性,利用主体,関係会社・委託先への提供,再許諾,改変,複製,二次利用及び終了後の取扱いを確認する。

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不動産クラウドファンディングの契約・鑑定・情報開示―令和8年改正と相続税評価案(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と基準日1 不動産クラウドファンディングと不動産特定共同事業法2 令和8年改正と相続税通達案を分ける第2 事業類型と契約当事者を確認する1 第1号事業と特例事業2 募集・運用・売却を担う者第3 利害関係人との取引と鑑定評価1 利害関係人と独立した不動産鑑定士2 鑑定評価額の1割は安全圏を示すものではない3 比較資料を示せない場合の鑑定評価第4 契約成立前書面の価格・賃料情報を読む1 比較事例は数字だけでは足りない2 価格査定と鑑定評価を区別する3 契約済み・意向表明・相手方探索を区別する第5 開発・改修案件の資金と許認可1 開発許可等と資金計画2 出資金の使途と期中報告第6 投資判断で確認する収支と出口1 賃料・空室・費用と評価額2 借入れ,優先劣後及び流動性3 売却時の価格と契約状態第7 相続税評価案との関係第8 相談・審査のチェックリスト第9 関連記事と出典
第1 この記事の対象と基準日

【基準日:令和8年10月15日】

本記事は,不動産クラウドファンディングのうち,不動産特定共同事業法に基づく事業について,契約,鑑定評価,情報開示及び相続税評価案の境界を整理するものである。
個別ファンドの安全性又は収益性を保証するものではなく,実際の契約では事業者の許可・登録,契約約款,契約成立前書面,財産管理報告書及び対象不動産の資料を確認する必要がある。

1 不動産クラウドファンディングと不動産特定共同事業法

不動産特定共同事業は,投資家から出資を受けて不動産を売買・賃貸等し,その収益を分配する事業について,許可・登録,業務運営及び投資家保護の仕組みを設ける制度である。
平成29年の法改正で,オンライン契約を行う電子取引業務に対応した環境が整備された。
インターネットで募集される不動産投資商品がすべて同法の同じ類型に属するわけではないため,契約の法的形式と事業者の役割を先に確認すべきである。

2 令和8年改正と相続税通達案を分ける

不動産特定共同事業法施行規則は令和8年内閣府・国土交通省令第4号により改正され,国土交通省の監督指針も令和8年8月21日付で改正された。
監督指針の改正は,投資勧誘,利害関係人との取引,鑑定評価,契約成立前の情報及び財産管理報告等に関する実務を扱う。
これとは別に,国税庁は令和8年9月18日,不動産小口化商品等の相続税・贈与税評価を見直す法令解釈通達案を公表した。
同通達案は令和8年10月18日17時まで意見募集中であり,本記事の基準日現在,確定した通達ではない。
事業法上の投資家保護と,相続税法22条の時価評価は,目的と法的根拠が異なるため,一方の評価を他方へそのまま転用してはならない。

第2 事業類型と契約当事者を確認する
1 第1号事業と特例事業

第1号事業では,不動産特定共同事業者が投資家と契約し,自ら不動産取引を行って収益を分配する。
特例事業では,特例事業者が不動産取引を行い,第3号事業者へ不動産取引業務を,第4号事業者へ契約締結の代理・媒介を委託する仕組みが用いられる。
倒産隔離の有無,対象不動産の所有主体,借入れの主体,投資家が有する権利及び損失負担は,類型と契約内容によって異なる。
名称や広告表示だけで判断せず,契約成立前書面に記載された事業の仕組みと当事者を図にして確認するとよい。

2 募集・運用・売却を担う者

募集サイトの運営者,契約締結の代理・媒介をする者,対象不動産を取得・管理する者,賃貸運営をする者及び売却を決定する者が同じとは限らない。
各事業者の許可・登録の種類,業務委託契約,手数料,利害関係及び責任分担を確認する必要がある。
電子取引業務をシステム会社へ委託しても,委託元の事業者は,委託先の選定,監督,役割分担,監査権限,再委託及び情報管理を自ら管理しなければならない。
投資家側では,ウェブ画面の表示だけでなく,ダウンロードできる契約成立前書面,約款及びリスク説明を保存しておくことが重要である。

支払の遅延や対象不動産の差押えが生じたときは,募集サイトの運営者,営業者,販売代理人,登記上の所有者及び請求の相手方を分けて確認する。
匿名組合型では,商法536条1項により出資が営業者の財産に属するため,出資をしたというだけで対象不動産の共有持分又は担保権を取得するわけではない。
契約原本,変更合意,登記及び通知から,誰に対してどの請求権を持つかを特定する必要がある。

競売による配当の参加資格と,営業者等に対する出資価額の返還請求は別の問題である。

(続きを読む...)不動産クラウドファンディングの契約・鑑定・情報開示―令和8年改正と相続税評価案(AI作成)