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譲渡制限株式の譲渡承認請求と「承認したものとみなされる」場合―会社法136条から145条の期間,指定買取人,撤回,売買価格及び名義書換(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

1 対象と基準日

本記事は,定款で株式の譲渡に会社の承認を要すると定めている会社(非公開会社の大半がこれに当たる。)の株式を,株主が第三者に売りたい場合,又は第三者が既に取得した場合に,会社法136条から145条までの譲渡承認の手続がどのように進むかを整理する。
中心となるのは,会社が法定の期間内に必要な通知をしなかったときに,会社が承認をしたものとみなされる場面(会社法145条)である。
法令は,令和8年9月28日現在の条文をe-Gov法令検索(法令API)で確認し,裁判例は裁判所ウェブサイトで判示事項・裁判要旨(一部は判決全文)を確認したものに限って紹介している。

2 結論

①譲渡制限株式の譲渡は,会社の承認がなくても譲渡の当事者間では有効であるが,会社の承認がなければ株主名簿の名義書換を請求できず,会社に対して株主であることを主張できない。
②承認の請求は,譲り渡そうとする株主(136条)からも,既に取得した者(137条。原則として株主名簿上の株主と共同して請求する。)からもできる。
③請求の際に「承認しないなら会社又は指定買取人が買い取れ」と請求しておくと(138条1号ハ・2号ハ),会社は承認しないときに,自ら買い取るか,買い取る者を指定しなければならない(140条)。
④会社が請求の日から2週間以内に承認するかどうかを通知しないとき(145条1号),又は承認しない旨の通知の日から40日以内に会社の買取りの通知をせず,指定買取人も10日以内に買取りの通知をしないとき(145条2号)等には,会社は承認をしたものとみなされる。
⑤承認がみなされれば,譲受人は株主名簿の名義書換を請求でき(134条1号),会社が正当な事由なく書換えを拒み,又は過失で書き換えなかったときは,会社は書換えがないことを理由に譲渡を否認できないとした最高裁判所の判例がある。
⑥会社又は指定買取人が買い取る場合の売買価格は,協議が調わなければ,買取りの通知の日から20日以内に裁判所に決定を申し立てることができ,期間内に申立ても協議の成立もなければ,1株当たり純資産額を基準とする額になる(144条)。

第2 譲渡制限株式の譲渡と会社の承認の関係

1 承認がなくても当事者間では有効である

最高裁判所第二小法廷昭和48年6月15日判決(昭和47年(オ)第91号,民集27巻6号700頁)は,定款で株式の譲渡に取締役会の承認を要すると定めている場合に,その承認を得ないで株式が譲渡されても,「右株式の譲渡は,譲渡当事者間においては有効であると解すべきである」とした。
また,最高裁判所第三小法廷平成5年3月30日判決(平成元年(オ)第1006号,民集47巻4号3439頁)は,いわゆる一人会社の株主がした株式の譲渡は,定款所定の取締役会の承認がなくても,会社に対する関係においても有効であるとした。
いずれも会社法制定前の商法204条1項についての判断であるが,譲渡の制限が会社の利益(好ましくない者が株主になることを防ぐこと)のためのものであることを前提とする点で,現行法の下でも同じように考えられている。

2 会社に対して株主であることを主張するには承認と名義書換が要る

株式の譲渡は,取得した者の氏名等を株主名簿に記載しなければ,会社その他の第三者に対抗することができない(会社法130条1項。株券発行会社では会社に対してのみ。同条2項)。
そして,株式取得者が名義書換を請求できるのは,取得した株式が譲渡制限株式である場合には,原則として,その取得について会社の承認を受けているときに限られる(会社法134条1号・2号)。
したがって,承認を受けていない譲受人は,当事者間では株主であっても,会社に対しては株主として権利を行使できない。

第3 承認の請求の二つのルート

1 株主からの請求(会社法136条)

譲渡制限株式の株主は,その株式を他人に譲り渡そうとするときは,会社に対し,その他人が株式を取得することについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる(会社法136条)。
譲渡の相手方が決まった段階で,譲渡の前に請求するのが通常の使い方である。

2 株式取得者からの請求(会社法137条)

譲渡制限株式を既に取得した者も,会社に対し,取得したことについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる(会社法137条1項)。
この請求は,原則として,株主名簿に株主として記載された者(譲渡人)又はその相続人その他の一般承継人と共同してしなければならない(同条2項)。
共同請求が要らない例外は法務省令で定められており,譲渡人に対して請求をすべきことを命ずる確定判決を得た場合,競売により取得した場合等である(会社法施行規則24条1項)。

3 請求で明らかにする事項と買取りの請求

請求では,譲り渡そうとする(又は取得した)株式の数と,譲受人(又は取得者)の氏名又は名称を明らかにしなければならない(会社法138条1号イ・ロ,2号イ・ロ)。
さらに,会社が承認しない場合に会社又は指定買取人が買い取ることを請求するときは,その旨も明らかにする(同条1号ハ・2号ハ)。
この買取りの請求をしておかないと,会社が承認しなかった場合に,株主は株式を手放す手段を確保できない。
譲渡を実現したい株主にとって,買取りの請求を併せてすることが実務上の基本になる。

第4 会社の決定と通知の期限

1 決定する機関

会社が承認をするか否かの決定をするには,株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の決議によらなければならない(会社法139条1項本文)。
ただし,定款に別段の定めがある場合は,その定めによる(同項ただし書)。

2 請求の日から2週間以内の通知

会社は,決定をしたときは,請求をした者(以下「譲渡等承認請求者」という。)に対し,決定の内容を通知しなければならない(会社法139条2項)。
この通知を請求の日から2週間(これを下回る期間を定款で定めた場合はその期間)以内にしなかったときは,会社は承認をしたものとみなされる(会社法145条1号)。

3 承認しない場合の会社の買取り又は指定買取人

買取りの請求を受けた会社が承認しない旨を決定したときは,会社は,対象株式を買い取らなければならない(会社法140条1項)。
会社が買い取る旨と買い取る株式の数の決定は,株主総会の特別決議による(同条2項,309条2項1号)。
この株主総会では,譲渡等承認請求者は,原則として議決権を行使することができない(会社法140条3項)。
他方,会社は,自ら買い取る代わりに,対象株式の全部又は一部を買い取る者(指定買取人)を指定することができ(同条4項),その指定は,株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の決議による(同条5項。定款に別段の定めがある場合を除く。)。
会社が自ら買い取る場合には,分配可能額による財源の規制(会社法461条1項1号)も問題になる。

4 買取りの通知と供託

会社が買い取る場合は,会社が買取りの事項を譲渡等承認請求者に通知する(会社法141条1項)。
その際,会社は,1株当たり純資産額に買い取る株式の数を乗じた額を本店所在地の供託所に供託し,供託を証する書面を譲渡等承認請求者に交付しなければならない(同条2項)。
指定買取人が買い取る場合は,指定買取人が指定を受けた旨と買い取る株式の数を通知し(会社法142条1項),同じく供託をして書面を交付する(同条2項)。

第5 会社が承認をしたものとみなされる場合(会社法145条)

1 三つの場面

会社法145条は,次の場合に,会社は承認をする旨の決定をしたものとみなすと定めている。

場面期間の起算点と長さ根拠
承認するか否かの通知をしない請求の日から2週間(定款で短縮可)145条1号
承認しない旨を通知したが,会社の買取りの通知をしない(指定買取人の通知もない)承認しない旨の通知の日から40日(会社の買取り)・10日(指定買取人)(定款で短縮可)145条2号
買取りの通知はしたが,期間内に供託を証する書面を交付しない等同上145条3号,会社法施行規則26条1号・2号
譲渡等承認請求者が会社又は指定買取人との売買契約を解除した―145条3号,会社法施行規則26条3号

2 承認しない旨の通知をした後に放置した場合(145条2号)

会社が承認しない旨を2週間以内に通知しても,それで手続が終わるわけではない。
買取りの請求を受けている会社は,その通知の日から40日以内に会社の買取りの通知をするか,指定買取人がその通知の日から10日以内に買取りの通知をしなければ,承認をしたものとみなされる(会社法145条2号)。
例えば,8月10日に承認しない旨を通知した場合,初日を算入しないで数えると(民法140条),指定買取人の通知の期限は8月20日,会社の買取りの通知の期限は9月19日となる。
会社が「承認しない」と伝えただけで何もしないでいると,株主は,買取りを求めたにもかかわらず放置されたことになるから,法は,この場合に株主が当初の相手方に譲渡できるようにしたのである。

3 別段の合意

以上のみなし承認は,会社と譲渡等承認請求者との合意により別段の定めをしたときは,適用されない(会社法145条ただし書)。
この合意は,会社と請求者との間のものである。
株主と第三者(例えば創業者)との間で買戻しを約束していても,会社がその合意の当事者でなければ,ただし書の別段の合意には当たらないと考えられる(本記事の解釈)。

第6 請求の撤回と売買価格

1 請求の撤回

買取りの請求をした譲渡等承認請求者は,会社の買取りの通知を受けた後は会社の承諾を得た場合に限り,指定買取人の通知を受けた後は指定買取人の承諾を得た場合に限り,請求を撤回することができる(会社法143条1項・2項)。
会社法制定前については,最高裁判所第一小法廷平成15年2月27日決定(平成14年(許)第10号,民集57巻2号202頁)が,譲渡の承認と相手方の指定を請求した株主は,取締役会から指定された者が株式を売り渡すべき旨を請求するまで,その請求を撤回することができるとしていた(反対意見がある。)。
現行の143条は,撤回が制限される時点を,買取りの通知を受けた時として明文で定めている。

2 売買価格の決め方

会社又は指定買取人が買い取る場合の売買価格は,まず当事者の協議によって定める(会社法144条1項・7項)。
会社(指定買取人)又は譲渡等承認請求者は,買取りの通知があった日から20日以内に,裁判所に売買価格の決定を申し立てることができる(同条2項)。
裁判所は,譲渡等承認請求の時における会社の資産状態その他一切の事情を考慮して価格を決める(同条3項)。
20日以内に申立てがなく,協議も調わなかったときは,1株当たり純資産額に株式数を乗じた額が売買価格となる(同条5項)。
価格決定の考え方は,「会社法の株式価格決定と相続税評価の違い」及び「経営者の離婚をめぐる四つの局面」で扱っている。

第7 承認の後の名義書換と二重譲渡

1 名義書換の請求

承認を受けた(又は承認がみなされた)譲受人は,株主名簿上の株主と共同して,名義書換を請求することができる(会社法133条1項・2項,134条1号)。
株券を発行していない会社では,名義書換が会社及び第三者に対する対抗要件になる(会社法130条1項)。

2 会社が書換えを拒み又は遅らせた場合

最高裁判所第一小法廷昭和41年7月28日判決(昭和39年(オ)第48号,民集20巻6号1251頁)は,「正当の事由なくして株式の名義書換請求を拒絶した会社は,その書換のないことを理由としてその譲渡を否認し得ない」とする大審院判例を引いた上で,会社が過失により書換えをしなかったときも同様であるとし,会社は株式譲受人を株主として取り扱わなければならないとした。
承認がみなされた後に,会社が「承認していない」と主張して書換えを拒むことは,正当な事由にならないと考えられる。

3 株式が二重に譲渡された場合

株主が同じ株式をAとCに二重に譲渡した場合,株券不発行会社では,どちらが株主として会社や相手方に対抗できるかは,原則として株主名簿の記載の先後で決まる(会社法130条1項)。
もっとも,先に適法な名義書換請求をした者がいるのに,会社が他方と通じて書換えの順序を入れ替えたような場合に,形式どおり名簿の先後で決めてよいかは問題になる。
令和8年司法試験の論文式試験(民事系科目第2問)は,みなし承認,名義書換の遅延及び二重譲渡が組み合わさった事例を出題している(「令和8年度司法試験民事系第2問の模範解答と予想される評価項目」)。

第8 会社側・株主側の実務上の確認事項

1 会社側

①請求書を受け取った日を記録し,2週間の期限を管理する。
②承認しない場合は,請求書に買取りの請求があるかを確認し,あれば,40日(会社の買取り)又は10日(指定買取人)の期限までに,株主総会の特別決議又は指定買取人の指定と,供託・書面の交付まで済ませる。
③財源規制(会社法461条1項1号)に抵触しないかを,買取りの決定の前に確認する。
④期限を過ぎたら承認がみなされることを前提に,名義書換請求を受け付ける。
⑤創業者等との間の買戻しの合意があっても,それだけでは145条ただし書の別段の合意にならないことを踏まえ,会社として必要な手続を採る。

2 株主(譲渡人)・譲受人側

①請求書には,株式数,譲受人の氏名又は名称のほか,買取りの請求をする旨を必ず書く。
②請求書の到達日を証拠に残す(内容証明郵便等)。
③会社の通知の有無と日付を記録し,期間の経過でみなし承認を主張できるかを確認する。
④みなし承認後は,譲渡人と譲受人の共同で名義書換を請求し,会社が応じないときは,昭和41年判決を踏まえて株主の地位の確認を求めることを検討する。
⑤会社又は指定買取人による買取りの通知を受けたら,20日以内に価格決定の申立てをするかを判断する。

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⑤相続した譲渡制限株式を会社が買い取る方法―会社法174条から177条,定款,株主総会,価格決定及び期限
⑥会社法等に関する最高裁判例―裁判所HP掲載判例の論点別索引

第10 出典

1 法令

①会社法(e-Gov法令検索)
②会社法施行規則(e-Gov法令検索)
③民法(e-Gov法令検索)

2 裁判例

①最高裁判所第二小法廷昭和48年6月15日判決(昭和47年(オ)第91号,民集27巻6号700頁)
②最高裁判所第三小法廷平成5年3月30日判決(平成元年(オ)第1006号,民集47巻4号3439頁)
③最高裁判所第一小法廷平成15年2月27日決定(平成14年(許)第10号,民集57巻2号202頁)
④最高裁判所第一小法廷昭和41年7月28日判決(昭和39年(オ)第48号,民集20巻6号1251頁)

第11 確認状態

会社法136条から145条まで,130条,133条,134条,309条2項1号及び461条1項,会社法施行規則24条及び26条は,e-Gov法令検索(法令API)で令和8年9月28日現在の条文を確認した。
裁判例は,いずれも裁判所ウェブサイトの判示事項・裁判要旨で確認し,昭和41年判決は判決全文の該当部分も確認した。
第5の3の別段の合意の範囲と,第7の3の二重譲渡の処理は,本記事の解釈であり,直接判断した最高裁判所の判例は確認していない。
判例秘書等の有料データベースは用いていない。