第1 国籍と地域表示は同じものではない
台湾関係者については、①日本の在留管理上の国籍・地域表示、②住民票の記載、③戸籍の国籍・地域欄、④台湾旅券、⑤中華民国国籍及び台湾の戸籍を区別する必要がある。
本記事の基準日は令和8年8月29日である。
日本の行政書類に「台湾」と記載されていることは、その書類における地域表示を意味するのであって、それだけで日本政府による国家承認又は本人の実体国籍に関する全ての問題が決まるわけではない。
第2 在留カード及び住民票の「台湾」
在留カード及び特別永住者証明書の国籍・地域欄では、台湾の権限ある機関が発行した旅券等を所持する人について「台湾」と表示される取扱いがある。
住民票の国籍・地域欄も、在留カード等の記載を基礎として「台湾」と記載される場合がある。
これらは、日本の在留管理・住民記録における「国籍・地域」の表示であり、中華民国国籍の取得又は喪失そのものを決める制度ではない。
第3 戸籍の「台湾」
法務省は、戸籍の国籍・地域欄における地域名表記の取扱いを改め、令和7年5月26日以後、台湾出身者について「台湾」と記載できるようにした。
従前の戸籍で「中国」と記載されている場合も、一定の資料を添えて「台湾」への訂正を申し出る取扱いが示されている。
この改正は戸籍記載の地域名をより具体化するものであり、中華民国国籍法上の国籍を新たに付与し、又は日本の外国承認政策を変更する手続ではない。
婚姻届、出生届その他の戸籍届出をする際は、旅券その他の提出資料と戸籍の表記が一致しない場合があるため、市区町村に必要書類を確認すべきである。
第4 台湾旅券の意味
台湾の権限ある機関が発行した旅券は、我が国の出入国在留管理法上、入出国手続に用いる旅券として取り扱われている。
もっとも、台湾旅券の所持、旅券上の身分証番号の有無、台湾の戸籍への登録及び中華民国国籍は、それぞれ関連しつつも同一ではない。
旅券だけで相続、親子関係又は国籍喪失の有無まで確定できない場合は、台湾の戸籍資料及び国籍関係資料を併せて確認する必要がある。
第5 中華民国国籍及び台湾の戸籍
中華民国国籍の有無は、中華民国国籍法に基づく出生、認知、帰化、国籍喪失その他の要件によって判断される。
台湾の戸籍は、身分関係及び住所登録に関する制度であり、国籍と密接に関連するものの、国籍という法的地位と戸籍登録の有無を常に同一視することはできない。
日本での帰化、中華民国国籍の喪失又は回復、複数国籍の問題がある場合は、各手続の時期と効力を時系列で確認する必要がある。
第6 歴史的な台湾関係者と現在の台湾出身者
終戦前から日本に在留していた台湾関係者については、昭和27年8月5日の日華平和条約発効に伴う日本国籍喪失と、その後の在留上の地位が問題となり得る。
これに対し、現在、就労、留学、家族滞在その他の在留資格で来日する台湾出身者の在留手続は、通常の入管法上の制度による。
「台湾」表示であることだけから特別永住者であると判断することはできない。
歴史的経緯については、在日韓国・朝鮮人及び台湾関係者の国籍・地域表示と在留上の地位を参照されたい。
第7 出典
① 法務省「戸籍における国籍・地域欄の『台湾』表記について」