第1 「特定技能」という在留資格の位置づけ
1 制度創設の経緯と対象分野の拡大
本記事は,出入国在留管理庁が情報公開請求により開示した「入国・在留審査要領」(入国・在留審査要領の情報公開で紹介した文書のうち,第12編第2章第18節の3「特定技能」の部分)並びに関係法令及び公的資料に基づき,在留資格「特定技能」について,対象分野の基準構造,技能実習からの移行要件,及び受入れ機関(特定技能所属機関)に求められる基準・欠格事由を整理するものである。
個別の分野の技能試験の詳細や,個々の受入れの可否といった事案ごとの判断は対象としない。
在留資格「特定技能」は,出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律(平成30年法律第百二号)により創設され,平成31年4月1日に施行された。
同法の趣旨説明において,山下貴司法務大臣(当時)は,第197回国会衆議院本会議(平成30年11月13日)で「中小・小規模事業者をはじめとした人手不足は深刻化しており,我が国の経済社会基盤の持続可能性を阻害する可能性が出てきています。このため,生産性向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において,一定の専門性,技能を有し,即戦力となる外国人を受け入れていく仕組みを構築することが求められております」と説明している。
同大臣は同日の答弁で「今回の受入れ制度は,永住を目的として受け入れるものではなく,深刻な人手不足の状況に対応するため…一定の専門性,技能を有し,即戦力となる外国人材を受け入れようとするものであります」とも述べている。
技能実習制度(技能移転による国際貢献)とは制度目的が異なることが,立法時から明確にされている。
特定技能の対象となる産業上の分野は,法律で個別に列挙されているのではなく,法務省令(「出入国管理及び難民認定法別表第一の二の表の特定技能の項の下欄に規定する産業上の分野等を定める省令」平成三十一年法務省令第六号)で指定される。
同省令は令和8年法務省令第二十二号による改正を経て令和8年4月1日から現行の内容で施行されており,e-Gov法令検索で確認できる現行の指定分野は,介護,ビルクリーニング,リネンサプライ,工業製品製造業,建設,造船・舶用工業,自動車整備,航空,宿泊,自動車運送業,鉄道,物流倉庫,農業,漁業,飲食料品製造業,外食業,林業,木材産業,資源循環の19分野である。
出入国在留管理庁が令和8年1月23日に決定した分野別運用方針では,このうち物流倉庫及び資源循環の2分野が「準備中」とされており,技能試験の整備等の関係で実際の受入れが開始される時期は,本記事執筆時点の公表資料からは確認できない。
分野の指定状況は今後も改正され得るため,個別の受入れを検討する際は,出入国在留管理庁が公表する最新の分野別運用方針で確認する必要がある。
2 特定技能1号と2号の違い
入管法別表第一の二の表「特定技能」の項の下欄は,1号を「法務大臣が指定する本邦の公私の機関との雇用に関する契約…に基づいて行う特定産業分野…であって法務大臣が指定するものに属する法務省令で定める相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する活動」,2号を同じ構造で「熟練した技能を要する業務に従事する活動」と規定する。
実務上の相違は,技能水準の違いにとどまらない。
1号は,技能実習2号を良好に修了した場合の技能水準・日本語能力水準の試験免除規定が置かれているのに対し,2号にはこの免除規定がなく,分野別運用方針が定める試験等への合格が常に必要である。
また,1号は原則として通算5年(令和7年9月30日施行の新制度により,一定の要件を満たせば6年)の在留期間上限があるのに対し,2号には条文上の上限がなく,更新を重ねて在留を継続できる。
さらに,入管法2条の5第3項は,1号については同項2号として1号特定技能外国人支援計画の適正な実施を受入れ機関の基準に含めているが,特定技能基準省令における2号の上陸基準はこの支援計画に関する要件を除外する構造になっており,2号では受入れ機関による支援計画の作成・実施が求められない。
なお,2号の対象分野は,指定省令上,19分野のうちビルクリーニング,工業製品製造業,建設,造船・舶用工業,自動車整備,航空,宿泊,農業,漁業,飲食料品製造業及び外食業の11分野に限定されており,介護,リネンサプライ,自動車運送業,鉄道,物流倉庫,林業,木材産業及び資源循環の8分野は,現行の指定省令上は2号の対象に含まれていない。
第2 対象産業分野と分野別基準の構造
1 分野該当性の判断方法
特定技能外国人が従事する業務が特定産業分野に該当するかどうかは,分野ごとに設置される協議会への加入の有無で判断するのが基本的な取扱いである(工業製品製造業分野及び建設分野は,所管大臣が登録する法人への加入で判断する)。
複数の分野にまたがる業務を行わせる場合は,法務大臣が複数分野を指定することで対応可能であり,在留資格認定証明書交付申請書には,主たる分野を最上段に,従たる分野を2段目以降に記載する取扱いとなっている。
2 分野別運用方針・運用要領という基準体系
「入国・在留審査要領」は,特定技能雇用契約及び受入れ機関の基準の各所で「分野特有の告示基準に適合すること」という留保を置いており,分野ごとの技能試験の内容や業務区分の細目そのものは審査要領の本文には記載されていない。
これらは,出入国在留管理庁が分野ごとに公表する分野別運用方針及び分野別運用要領という別建ての文書群に定められる構造になっている。
出入国在留管理庁の特定技能制度ページ(令和8年1月23日決定分。19分野それぞれの運用方針PDFへのリンクを掲載)で確認できるとおり,分野別基準の内容を正確に把握するには,審査要領の総論的な枠組みに加えて,当該分野の運用方針・運用要領を個別に確認する必要がある。
3 審査要領で確認できる分野特有の上乗せ要件の例
審査要領の本文からも,一部の分野について,1号の標準的な技能水準・日本語能力水準の証明方法に対する上乗せ又は例外が確認できる。
まず,日本語能力水準について,介護分野は,介護職種・介護作業の技能実習2号を良好に修了した者を除き,介護日本語評価試験の合格が試験免除の対象とならない。
また,自動車運送業分野のうちタクシー・バス運転者及び鉄道分野の運輸係員は,技能実習2号を良好に修了した場合であっても,日本語能力試験N3相当の試験等による証明が必要とされる。
次に,雇用形態について,特定技能所属機関による直接雇用が原則とされる中で,労働者派遣の形態が認められるのは農業分野及び漁業分野に限られる。
これらはいずれも審査要領本文で確認できた限度の例であり,各分野の技能試験の詳細な出題範囲や業務区分の線引きは,当該分野の運用要領を個別に参照しなければ正確に把握できない。
第3 特定技能1号の上陸基準――外国人本人に求められる要件
1 基本要件
上陸基準省令は,特定技能1号の上陸許可基準として,申請人が,18歳以上であること,健康状態が良好であること,従事しようとする業務に必要な相当程度の知識又は経験を必要とする技能を有していることが試験その他の評価方法により証明されていること,本邦での生活及び業務に必要な日本語能力を有していることが試験その他の評価方法により証明されていること,退去強制令書の円滑な執行に協力するとして法務大臣が告示で定める外国政府等の権限ある機関発行の旅券を所持していること,のいずれにも該当することを求めている。
年齢要件について,審査要領は「本邦入国時において18歳以上であることを要するものであり,本国において成人であるか否かを問わない」と説明しており,在留資格認定証明書交付申請時点では18歳未満でも,入国予定日までに18歳に達する見込みであれば交付を妨げないとされている。
2 技能水準・日本語能力水準の証明方法
技能水準の証明は,試験等に合格する方法(試験ルート)と,技能実習2号を良好に修了している場合に試験を免除する方法(技能実習ルート)の2通りがある。
審査要領は「技能実習2号を良好に修了している」とは,技能実習を2年10か月以上修了し,技能実習2号の技能実習計画における目標である技能検定3級若しくはこれに相当する技能実習評価試験(専門級)の実技試験に合格していること,又はこれに合格していなくとも実習実施者が作成する評価調書によって良好な修了が認められることをいうと説明する。
実務上留意すべきは,技能検定3級による証明では実技試験及び学科試験の双方への合格が必要とされるのに対し,技能実習ルートでは実技試験への合格のみが確認対象とされているという非対称性である。
日本語能力水準についても,技能実習2号を良好に修了している場合は,原則として修了した職種・作業の種類を問わず試験等による証明が免除されるが,前記のとおり介護分野及び自動車運送業(タクシー・バス運転者)・鉄道(運輸係員)分野には免除の及ばない例外が置かれている。
3 通算在留期間の上限――原則5年,例外6年
特定技能1号の在留資格をもって在留した期間は,通算して5年に達すると,同一の在留資格での在留継続が認められなくなる。
審査要領は「通算」の意義について,特定産業分野を問わず実際に特定技能1号で在留した期間をいい,出国を挟んでも通算されると説明しており,妊娠・出産(労働基準法上の産前産後休業に相当する期間),育児休業に相当する期間,及び病気・怪我による休業(原則1年,労災の場合は3年を上限とする連続1か月超の期間)は通算在留期間から除外される。
令和7年9月30日施行の新たな取扱いでは,特定技能2号への移行に必要な技能評価試験で合格基準点の8割以上を得点しているなど一定の要件を満たす1号特定技能外国人について,通算在留期間の上限を6年とする取扱いが導入された。
この要件には,残存期間中に当該試験を受験し,合格すれば速やかに2号への変更許可申請を行い,不合格の場合は速やかに帰国することを誓約することなどが含まれる。
4 保証金・違約金契約の不存在
上陸基準省令は,申請人又はその配偶者,直系若しくは同居の親族その他申請人と社会生活において密接な関係を有する者が,特定技能雇用契約に基づく活動に関連して金銭その他の財産を管理されておらず,かつ,契約の不履行について違約金を定める契約その他不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約が締結されておらず,締結される見込みもないことを求めている。
審査要領は,労働基準監督官署への相談を禁じてこれに違約金を課す契約や,休日の外出制限・作業時間中の離席禁止に違約金を課す契約,商品・サービスの対価として不当に高額な料金の徴収を予定する契約なども「不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約」に該当し得ると説明している。
この保証金・違約金の禁止は,後述する受入れ機関側の欠格事由及び基準にも重ねて規定されており,制度全体として複数の角度から規制する構造になっている。
第4 特定技能2号の上陸基準――1号との相違
特定技能2号の上陸基準は,1号とほぼ共通の構造をとりつつ,法2条の5第3項のうち1号特定技能外国人支援計画の適正な実施を求める部分(同項2号)が適用除外とされている点で異なる。
外国人本人の要件も,18歳以上であること,健康状態が良好であること,従事しようとする業務に必要な熟練した技能を有していることが試験その他の評価方法により証明されていること,及び退去強制令書の円滑な執行に協力する国・地域の旅券を所持していることが求められるにとどまり,1号にある日本語能力要件及び通算在留期間の上限に相当する規定は置かれていない。
審査要領は「熟練した技能」について,長年の実務経験等により身につけた熟達した技能をいい,自らの判断により高度に専門的・技術的な業務を遂行できる,又は監督者として業務を統括しつつ熟練した技能で業務を遂行できる水準のものをいうと説明しており,「技術・人文知識・国際業務」等の専門的・技術的分野の在留資格を有する外国人と同等以上の技能水準を想定していることが分かる。
技能水準の証明方法についても,1号と異なり技能実習の修了による試験免除の規定がなく,分野別運用方針が定める試験等への合格が常に必要とされる。技能検定による証明の場合も,実技試験及び学科試験の双方への合格が必要とされ,1号の技能実習ルートのように実技試験の合格証明のみで足りる取扱いはない。
雇用契約基準及び受入れ機関基準については,1号の基準がそのまま準用される構造になっており,欠格事由・労働社会保険租税関係法令の遵守・非自発的離職者及び行方不明者の不発生といった要件は,1号・2号を通じて共通である。
第5 技能実習から特定技能への移行
1 技能実習2号良好修了の意義とみなし救済
技能実習から特定技能への移行は,前記第3の2で述べた技能実習ルートによる技能水準・日本語能力水準の試験免除が実務上の中心となる。
審査要領はこれに加え,技能実習生を雇用していた実習実施者が引き続き特定技能所属機関になろうとする場合について,当該実習実施者が過去1年以内に技能実習制度上の改善命令や改善勧告を受けていないときは,技能実習を2年10か月以上修了していることのみをもって技能実習2号を良好に修了したものと取り扱うという救済的な運用を置いている。
また,技能実習計画認定待ちの期間中に「特定活動」の在留資格で就労していた期間についても,実質的に技能実習と同一と扱われる場合は技能実習を行ったものとして扱われる。
2 移行に伴う実務上の留意点
技能実習生を特定技能外国人として引き続き雇用する場合,報酬の同等性(日本人が従事する場合の報酬額と同等以上であること)の審査においては,技能実習2号修了者はおおむね3年間,技能実習3号修了者はおおむね5年間の経験を有する労働者として取り扱うという運用が確認できる。この取扱いは,技能実習期間中の実務経験を報酬水準の算定に反映させるものであり,移行に伴う待遇の設計に直接関わる。
他方で,令和6年法律第60号による改正で導入が予定される育成就労制度(技能実習法の題名改正により「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」となる。一部規定を除き令和9年4月1日施行予定)の下では,育成就労から特定技能1号への移行に,技能検定3級等又は特定技能1号評価試験への合格に加えて,日本語教育参照枠A2相当以上の日本語試験への合格が要件とされる予定であることが,出入国在留管理庁の公表資料で確認できる。
現行の技能実習制度からの移行要件とは適用時点が異なるため,育成就労外国人の受入れを検討する場合は,移行時点でどちらの制度が適用されるかを個別に確認する必要がある。
3 移行支援を怠った監理団体の責任が問われた裁判例
技能実習から特定技能への移行をめぐっては,鹿児島地方裁判所令和8年3月3日判決(令和5年(ワ)第699号)が参考になる。
同判決は,技能実習の監理団体及びその職員が,海外送出機関の誤った説明を鵜呑みにし,特定技能1号への在留資格変更及び就労先変更にはフィリピンへの一時帰国が必要である旨の誤った説明を行い,その結果,実習生が特定技能1号への移行を断念して4か月間就労できなかった事案について,監理団体の注意義務違反と損害との因果関係を認め,逸失利益相当額(77万5028円)の支払を命じたものである。
この判決は,特定技能制度そのものの法的評価が争点になったものではないが,技能実習から特定技能への移行支援において,監理団体又は実習実施者が誤った情報提供を行った場合に不法行為責任が生じ得ることを示す事例として位置付けられる。
裁判所ウェブサイトの裁判例検索で「特定技能」を全文検索した限りでは,特定技能制度の適用そのものが実質的な争点となった公刊裁判例は乏しく,この点は正直に指摘しておく必要がある。
第6 特定技能所属機関(受入れ機関)に求められる基準
1 特定技能雇用契約自体の基準
入管法2条の5第1項及び第2項を受けた特定技能基準省令1条は,特定技能雇用契約について,従事させる業務が当該分野に係る相当程度の知識若しくは経験を必要とする技能又は熟練した技能を要する業務であること,外国人の所定労働時間が通常の労働者の所定労働時間と同等であること,外国人に対する報酬の額が日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であること,外国人であることを理由とする差別的取扱いをしていないこと,一時帰国を希望した場合に必要な有給休暇を取得させるものとしていること,労働者派遣の対象とする場合は派遣先の氏名・名称・住所及び派遣期間が定められていること,並びに分野特有の告示基準に適合することを求めている。
審査要領は,フルタイムの雇用形態について,原則として労働日数が週5日以上かつ年間217日以上であって,かつ週労働時間が30時間以上であることをいうと具体的な数値基準を示している。
報酬の同等性は,賃金規程がある場合は同規程への準拠で足りるが,賃金規程がない場合は比較対象となる日本人労働者の報酬と比較する審査手法がとられ,最低賃金と同額であることのみをもって基準不適合とはしない一方,その場合は比較対象労働者に関する追加資料の提出を求める運用となっている。
2 受入れ機関自体に求められる基準
特定技能基準省令2条1項は,受入れ機関(特定技能所属機関)自体に対しても,労働,社会保険及び租税に関する法令の遵守,特定技能雇用契約の締結の前後を通じて同種業務の従事者を非自発的に離職させていないこと,特定技能外国人の行方不明者を発生させていないこと,後記3の欠格事由に該当しないこと,活動状況に関する帳簿を特定技能雇用契約の終了後1年以上備え付けること,保証金の徴収等及び違約金契約の締結を行っておらず行う見込みもないこと,1号特定技能外国人支援に要する費用を特定技能外国人に負担させないこと,労働者派遣の対象とする場合の派遣元・派遣先双方の基準(農業分野及び漁業分野に限る),労働災害保険関係の措置,特定技能雇用契約を継続して履行するための財政的基盤(直近事業年度が債務超過でないこと等),報酬の口座振込等の方法によること,地方公共団体が実施する地域における外国人との共生施策への協力,及び分野特有の告示基準への適合を求めている。
審査要領は,非自発的離職者について「発生人数についての多寡は問わず,1名でも発生させていれば,本基準に適合しないものとして取り扱う」と明記しており,人数の多寡にかかわらず1件の発生が基準不適合に直結する点は,受入れを検討する事業者が特に留意すべき実務上のポイントである。
財政的基盤の審査については,直近事業年度が債務超過であれば前々事業年度の状況や中小企業診断士・公認会計士等の第三者評価書面による審査に移行し,2期連続で債務超過の場合はより厳格な総合判断(増資・救済予定の有無,社会保険料等の滞納の有無等)が行われる。
3 欠格事由
特定技能基準省令2条1項4号は,受入れ機関の役員又は職員が一定の欠格事由に該当する場合,当該機関を特定技能所属機関とすることができないと定めている。
主な類型は,拘禁刑以上の刑に処せられ執行終了又は執行を受けなくなってから5年を経過しない者,労働基準法・職業安定法・入管法・労働者派遣法・技能実習法等の労働関係法令違反により罰金刑に処せられ5年を経過しない者,暴力団排除法や刑法上の一定の罪により罰金刑に処せられ5年を経過しない者,健康保険法・厚生年金保険法等の社会保険関係法令違反により罰金刑に処せられ5年を経過しない者,精神の機能の障害により契約の内容を理解して履行するために必要な認知,判断及び意思疎通を適切に行うことができない者,破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者,技能実習計画の認定を取り消され5年を経過しない者及びその取消し当時の役員であった者,出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為を行い5年を経過しない者,並びに暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者である。
このうち「出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為」には,暴行・脅迫・監禁,旅券又は在留カードの取上げ,手当・報酬の不払,外出等私生活の自由の不当な制限,その他人権を著しく侵害する行為,偽変造文書等の行使・提供,保証金の徴収又は違約金契約の締結,届出の懈怠又は虚偽届出,報告徴収の拒否・妨害又は虚偽報告,改善命令違反などが含まれ,審査要領は「これらの契約の締結の有無及び内容の如何に関わらず,実際に保証金を徴収するなど,不当に金銭その他の財産の移転を行う行為に及んだ場合には」,この欠格事由に該当すると説明している。
4 1号特定技能外国人支援計画に基づく義務的支援
特定技能1号の受入れ機関には,2号にはない支援計画の作成・実施が求められる。特定技能基準省令3条1項が定める義務的支援は,事前ガイダンス,出入国する際の送迎,適切な住居の確保及び生活に必要な契約に係る支援,生活オリエンテーション,日本語学習の機会の提供,相談又は苦情への対応,日本人との交流促進,非自発的離職時の転職支援,定期的な面談の実施及び行政機関への通報,並びに登録支援機関への委託等に関する記載の10項目からなる。
審査要領は,事前ガイダンスについて「対面又はテレビ電話装置若しくはその他の方法…により,本人であることの確認を行った上で,実施しなければならず,文書の郵送や電子メールの送信のみによることは認められない」とし,目安として3時間程度を大きく下回らないことを求めている。
生活オリエンテーションは入国後遅滞なく少なくとも8時間以上実施することが求められ(技能実習2号良好修了者等が引き続き当該機関で就労する場合は4時間),定期面談は3か月に1回以上実施し,労働基準関係法令違反や旅券・在留カードの取上げを知ったときは労働基準監督署等又は地方出入国在留管理局への通報義務が課される。
これらの義務的支援は,受入れ機関が自ら実施することもできるが,その全部を登録支援機関に委託することも認められている。
第7 行政による監督――届出,指導助言,報告徴収,改善命令
入管法19条の18は,特定技能所属機関に対し,特定技能雇用契約の変更・終了・新規締結の届出及び在籍者・活動内容等に関する定期届出の義務を課している。
同法19条の19は,出入国在留管理庁長官が,特定技能雇用契約の適合性及び支援計画の適正な実施を確保するために必要があると認めるときは,特定技能所属機関に対して指導及び助言を行うことができると定める。
同法19条の20(見出しは「報告徴収等」)は,同庁長官が必要な限度において報告若しくは帳簿書類の提出等を命じ,又は入国審査官若しくは入国警備官に事業所への立入検査等をさせることができると定める。
同法19条の21(見出しは「改善命令等」)は,19条の19各号に掲げる事項が確保されていないと認めるときに期限を定めた改善命令を発することができると定めるとともに,同条2項で,改善命令をした場合にはその旨を公示しなければならないとしている。この改善命令の公示義務は,受入れ機関にとって,是正の実効性を担保するだけでなく,企業としての信用にも関わる制度上の仕組みである。
出典・参考資料
1 法令
①出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)2条の5,19条の18から19条の21まで,別表第一の二,e-Gov法令検索,https://laws.e-gov.go.jp/law/326CO0000000319
②特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令(平成三十一年三月十五日法務省令第五号)1条,2条,3条,e-Gov法令検索,https://laws.e-gov.go.jp/law/431M60000010005
③出入国管理及び難民認定法別表第一の二の表の特定技能の項の下欄に規定する産業上の分野等を定める省令(平成三十一年法務省令第六号,令和8年法務省令第二十二号による改正後・令和8年4月1日施行),e-Gov法令検索,https://laws.e-gov.go.jp/law/431M60000010006
④出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律(平成三十年法律第百二号,平成三十年十二月十四日公布,平成三十一年四月一日施行)
⑤出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律(令和六年法律第六十号,令和六年六月二十一日公布)
2 裁判例
①鹿児島地方裁判所令和8年3月3日判決(令和5年(ワ)第699号,損害賠償請求事件,裁判所ウェブサイト掲載,https://www.courts.go.jp/hanrei/95984/detail4/index.html)
3 公的資料
①出入国在留管理庁「入国・在留審査要領」第12編第2章第18節の3「特定技能」(情報公開請求により令和8年4月開示,本文は入国・在留審査要領の情報公開で公開)
②出入国在留管理庁「特定技能制度に係る制度の運用に関する基本方針・分野別運用方針・運用要領」(令和8年1月23日決定分を含む),https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/nyuukokukanri01_00132.html
③出入国在留管理庁「特定技能2号の対象分野の追加について」(令和5年6月9日閣議決定),https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/03_00067.html
④出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」(Q75,Q76ほか),https://www.moj.go.jp/isa/applications/faq/ikusei_qa_00002.html
⑤第197回国会衆議院本会議第5号(平成30年11月13日)山下貴司法務大臣の趣旨説明及び浜地雅一議員に対する答弁,国会会議録検索システム,https://kokkai.ndl.go.jp/txt/119705254X00520181113/3,https://kokkai.ndl.go.jp/txt/119705254X00520181113/27