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申請取次者制度――「代理」と「取次ぎ」の違い及び依頼書と委任状の使い分け(AI作成)

第1 この記事が扱う対象

1 対象とする文書と時点

出入国在留管理庁は,令和8年4月,内部で用いている「入国・在留審査要領」を開示した。

同要領は第1編(基本的事項)から第18編(要注意所属機関等リスト)までで構成されており,このうち第2編が「代理・申請取次ぎ」と題する編である。

本記事は,同要領第2編の全文(本文37頁及び様式集)を通読し,記載内容を出入国管理及び難民認定法(入管法),同法施行規則,行政書士法,弁護士法及び国会会議録の原文と照合した上で,弁護士・行政書士が外国人の在留手続を「取り次ぐ」ことができる根拠と範囲,届出の手続,並びに懲戒につながりやすい実務上の陥穽を整理するものである。

同要領第1編から第18編までの原本は,別稿「出入国在留管理庁作成の「入国・在留審査要領」(令和8年4月の開示文書)」からダウンロードできる。

第2編は令和8年4月時点の開示文書であるが,同編が引用する入管法施行規則の一部の条番号は,同年7月1日施行の省令改正によってすでに現行条文と一致しなくなっている。

この点は第7で扱う。

2 「代理」と「取次ぎ」という二つの制度

入管法は,中長期在留者の住居地の届出,在留カードに係る申請・届出及び在留期間更新許可申請等の一定の在留関係の申請について,本人が自ら出頭して行わなければならないという本人出頭の原則を定めている(入管法61条の8の3第1項)。

この原則の例外として,入管法本体が定めるのが「代理」であり,入管法施行規則が定めるのが「取次ぎ」である。

両者は,本人以外の者が申請人等に代わって手続を進めるという外形は共通するが,法的な権限の範囲が異なる。

代理は,本人に代わって申請人・届出人として署名し,記載内容を直接訂正することもできる地位であるのに対し,取次ぎは,申請書や資料の提出等の事実行為を行うことが認められているにすぎない。

弁護士及び行政書士が届出により就くことができるのは,このうち「取次ぎ」の地位である。

第2 入管法が定める「代理」

1 在留資格認定証明書交付申請の代理人

在留資格認定証明書交付申請は,法律の条文上,代理人による申請が明示的に認められている数少ない手続である。

入管法7条の2第2項は,「前項の申請は,当該外国人を受け入れようとする機関の職員その他の法務省令で定める者を代理人としてこれをすることができる」と定める。

ここでいう代理人の範囲は法務省令(施行規則)に委任されており,施行規則6条の2第3項が,当該外国人が行おうとする活動に応じて別表第4の下欄に掲げる者を代理人と定めている。

同じ施行規則6条の2第4項は,この代理人とは別に,弁護士又は行政書士で所属する弁護士会又は行政書士会を経由して地方出入国在留管理局長に届け出た者などが,外国人等から依頼を受けて申請書等の提出を行うことができる旨を定めている。

同一の条文の中に,第3項の「代理人」と第4項の弁護士・行政書士(「〜に代わつて…提出を行うものとする」という事実行為の主体)とが並記されており,両者が別の地位として条文上区別されていることを確認できる。

2 住居地の届出及び在留カードに係る代理

入管法61条の8の3は,第1項で住居地の届出及び在留カードに係る申請・届出等について本人出頭の原則を定めた上で,第2項で,外国人が16歳未満であるとき又は疾病その他の事由により自ら出頭できないときは,配偶者,子,父又は母,その他の親族の順に,同居する親族が本人に代わって行わなければならないと定める。

第3項は,これらの親族が本人の依頼により代行する場合その他法務省令で定める場合には本人の出頭を要しないとし,第4項は,法定代理人が代行する場合その他法務省令で定める場合も同様に出頭を要しないとする。

弁護士・行政書士による取次ぎの根拠は,この第3項及び第4項が施行規則に委任した「その他法務省令で定める場合」の中に置かれている。

委任の受け皿となる具体的な条文は第7で扱う。

第3 施行規則が定める「取次ぎ」

1 取次ぎは書類提出という事実行為にとどまる

入管法施行規則は,弁護士・行政書士を含む一定の者について,「本邦にある外国人…に代わつて…申請書…の提出を行うものとする」という表現を繰り返し用いている(施行規則6条の2第4項,施行規則19条第3項等)。

この文言が示すとおり,取次ぎとは申請書等の提出という事実行為の主体として弁護士・行政書士を位置付けるものであり,申請人・届出人として署名したり,記載内容を直接訂正したりする権限までは与えられていない。

審査要領第2編第1章総則も,「弁護士及び行政書士以外の者が,申請書等の官公署に提出する書類の作成を報酬を得て業として行うことは行政書士法違反に当たるおそれがある」と注記しており,取次者の権限が書類提出の場面に限られることを前提としている。

代理と取次ぎの違いを整理すると,次のとおりとなる。

項目代理取次ぎ
主な根拠入管法本体(7条の2第2項,61条の8の3第2項)入管法施行規則(6条の2第4項,19条3項,59条の4第2項等)
行える者の例受入れ機関の代理人,同居親族,法定代理人受入れ機関等の職員,公益法人・登録支援機関の職員,旅行業者,届出済みの弁護士・行政書士
署名・記載内容の訂正できるできない
行える行為の性質法律行為(申請人・届出人としての意思表示)事実行為(申請書・資料の提出等)

2 弁護士及び行政書士以外の者による書類作成の制限

取次ぎが事実行為にとどまる裏面として,官公署に提出する書類の作成そのものは,弁護士・行政書士の業務独占の対象になる。

行政書士法1条の3第1項は,「行政書士は,他人の依頼を受け報酬を得て,官公署に提出する書類…その他権利義務又は事実証明に関する書類…を作成することを業とする」と定め,同法19条第1項は,行政書士又は行政書士法人でない者が報酬を得て業としてこの業務を行うことを禁止する。

同項但書は,「他の法律に別段の定めがある場合」(弁護士法72条による弁護士の取扱いはこれに当たる)に加えて,「定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続」について「相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者」が電磁的記録を作成する場合を例外としているが,この規定は令和8年5月21日に施行されたばかりであり,本記事の調査時点では,対象となる手続を定める総務省令の内容までは確認できなかった。

入管の在留手続がこの例外の対象に含まれるかどうかは,現時点で明らかではない。

行政書士法19条1項に違反した者は,同法21条の2により1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処せられる。

弁護士については,弁護士法72条が,弁護士又は弁護士法人でない者が報酬を得る目的で行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して代理その他の法律事務を取り扱い又はこれを周旋することを業とすることを禁止している。

無資格者が入管手続の代行を周旋(あっせん)して手数料を得るような行為は,この規定に触れ得る。

無資格の業者が広告等で外国人向けの手続代行を標榜し,実際には弁護士・行政書士でない者が業務を行っていたという類型の弁護士法違反は,入管業務以外の分野では刑事事件として立件された例があり,弁護士法違反一般に対する規制の運用は,令和8年8月に見直されたガイドラインの内容とあわせて別稿「AI活用に伴う弁護士法72条見直しの動き」で扱っている。

第4 弁護士・行政書士が申請等取次者になるための届出手続

1 承認制ではなく届出制であること

審査要領第2編第3章は,取次ぎの主体を,受入れ機関等の職員・旅行業者・公益法人職員(第4節)と,弁護士・行政書士(第5節)とに分けて規定している。

前者は地方出入国在留管理局長による個別の「承認」を要するのに対し,弁護士・行政書士は,所属する単位会(弁護士会・行政書士会)を経由した「届出」により申請等取次者となることができる(施行規則6条の2第4項第2号,施行規則19条第3項第5号)。

単位会は,届出書及び届出者名簿を地方局等に提出し,地方局等の長は届出を受け付ける。

承認と異なり,個々の弁護士・行政書士について地方局が実質審査を行う手続は置かれていない。

2 届出済証明書とその有効期間

地方局の長は,届出を受け付けたときは,「届出済証明書」を作成し,届出のあった日から2週間後を目処に,届出を行った単位会を経由して交付する。

証明書の有効期間は,発行日から3年後の当該月末までである(届出者が外国人である場合は在留期間内に限る)。

届出をした弁護士・行政書士は,取扱いに係る全ての地方局等・出張所に対して申請書等の提出等を行うことができ,管轄が限定されない点は,受入れ機関の職員等が受ける承認(管轄の内外を問わず全ての地方局等で有効である点は共通する)と同様である。

届出の更新は,有効期限月の2か月前から受け付けられる。

3 取次ぎができる範囲と出頭が免除される範囲

出頭が免除されるのは,弁護士・行政書士に対して入国・在留審査手続に関する書類の作成・提出等の手続を「依頼した」外国人,及び施行規則別表第4の下欄に掲げる在留資格認定証明書交付申請の代理人である。

取次ぎができる手続の範囲は,在留資格認定証明書交付申請,資格外活動許可申請,在留カードの記載事項変更届出・有効期間更新申請・再交付申請,在留資格変更許可申請,在留期間更新許可申請,永住許可申請,在留資格取得許可申請,再入国許可申請,就労資格証明書交付申請,申請内容の変更申出,在留資格抹消の願出,証印転記の願出及び在留カードの受領に及ぶ。

もっとも,申請人等本人から在留状況等について事情を聴取する必要がある場合や,在留状況に問題がある場合等,出頭を免除することが相当でないと認められるときは,取次ぎによる場合でも本人の出頭が求められる。

第5 「依頼書」と「委任状」は別の書面である

1 審査要領が定める「依頼書」の内容

審査要領第2編が参考書式2として掲げる「依頼書」は,依頼者(外国人本人)の国籍・氏名・生年月日を記載した上で,在留資格変更許可申請等のうちどの申請に係る在留カードの受領の手続を取次者に依頼するかをチェックボックスで示し,依頼者が署名するだけの,1枚の簡易な書式である。

施行規則が取次ぎの要件として求めているのも,「当該外国人…から依頼を受けた」という事実にとどまり(施行規則19条第3項等),民法上の委任状や委任契約書の提出までは要求していない。

つまり,入管当局が定める依頼書は,取次ぎという事実行為を行うための行政手続上の要件を満たすための書面であって,それ以上の意味を持たない。

2 民法上の委任契約書との違い

これに対し,弁護士・行政書士が依頼者との間で取り交わす委任契約書及び委任状は,民法643条が定める委任契約(「当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し,相手方がこれを承諾することによって,その効力を生ずる」)に基づく書面である。

委任契約が成立すると,受任者は善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負い(民法644条),委任事務の処理に当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡す義務を負う(民法646条)など,報酬,事務の範囲及び注意義務の程度を含む私法上の権利義務関係全体を規律する。

入管当局提出用の依頼書が対外的・行政手続的な書面であるのに対し,委任契約書・委任状は依頼者と弁護士・行政書士との間の私法上の権利義務を証する書面であり,規律する場面が異なる。

3 両者を混同することの実務上のリスク

この二つの書面は,性質が異なるにもかかわらず,実務上しばしば同一視される。

依頼書があることをもって受任事務の範囲や報酬に関する合意も当然に確定していると誤解すれば,事後に受任範囲や報酬をめぐる依頼者との紛争を招きかねない。

逆に,依頼者との間で委任契約書を取り交わしていることをもって入管手続上の取次要件を当然に満たすと誤解すれば,本人からの直接の依頼という取次ぎの要件を欠いたまま手続を進めてしまう危険がある。

特に,親族や紹介者が依頼者本人に代わって窓口となり,弁護士・行政書士が依頼者本人と直接やり取りをしないまま取次ぎを行う例では,どちらの書面が何を証明しているのかが曖昧になりやすい。

この点は,次に述べる懲戒事由と直結する。

第6 懲戒請求につながる不正行為の類型

1 第三者を介した依頼の取次ぎ

審査要領第2編第3章第4節第4及び第5節第4は,地方局等の長が弁護士・行政書士等について懲戒の請求を行うことができる事由を列挙している。

このうち,依頼書・委任状の実務トラブルに最も直結するのが,「申請人等又は代理人から直接に依頼を受けることなく第三者を介して依頼を受けた申請等を取り次いだ場合」である。

施行規則各条が取次ぎの要件として定める「当該外国人…から依頼を受けた」という文言(施行規則19条第3項等)は,依頼者本人からの直接の依頼を前提としており,紹介者やブローカーを介して依頼を受けた取次ぎは,この要件を欠くことになる。

このような周旋が常態化すれば,周旋を行った無資格の第三者について弁護士法72条の「周旋をすることを業とする」禁止に触れ得ることは第3の2で述べたとおりである。

これを認識しながら取次ぎに応じた弁護士・行政書士の側も,行政書士については行政書士法14条(行政書士たるにふさわしくない重大な非行)による戒告,2年以内の業務停止又は業務禁止の対象となり得る。

2 虚偽資料の提出その他の懲戒事由

審査要領が列挙する懲戒請求事由は,第三者を介した依頼の取次ぎのほか,①申請等の窓口で当局の指導等に従わず制度の円滑な実施に支障が生じるおそれがある場合,②許可を受けさせることを目的として資料の内容が偽りであると知りながら提出した場合,③申請等の内容に係る虚偽の説明を行った場合,④入管法に基づく諸手続に関する刑事裁判で有罪判決の言渡しがあった場合(判決確定前を含む),⑤在留申請オンラインシステムの利用規約に掲げる禁止事項に該当し又は加担する行為を行った場合,⑥その他申請等取次の承認又は届出の継続を認めることが相当でない行為を行った場合,の6類型に及ぶ。

行政書士については,日本行政書士会連合会が平成20年1月に改正した「申請取次行政書士管理委員会規則」に基づき,各単位会に置かれる管理委員会が,出入国在留管理庁からの不正行為情報の提供を受ける窓口として機能する。

3 懲戒の請求手続

弁護士に対する懲戒請求は弁護士法58条第1項により,何人も,懲戒の事由があると思料するときは,その事由の説明を添えて所属弁護士会に懲戒を求めることができる。

懲戒の実体的な事由は弁護士法56条第1項に定められており,弁護士法若しくは所属弁護士会等の会則に違反し,秩序又は信用を害し,その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があったときに懲戒を受ける。

懲戒の種類(戒告,2年以内の業務停止,退会命令,除名)を含む弁護士の懲戒制度の一般的な仕組みは,別稿「弁護士の懲戒事由」で扱っている。

行政書士に対する懲戒請求は行政書士法14条の3第1項により,何人も,事務所所在地を管轄する都道府県知事に対し事実を通知し,適当な措置を求めることができる。

審査要領は,これらの一般的な懲戒請求手続に加えて,地方局等の長自身が入国審査官の報告に基づき,弁護士については所属単位会に,行政書士については事務所所在地を管轄する都道府県知事に対して事実を通知し懲戒を求める運用を定めている。

第7 施行規則の条文番号が令和8年7月に変わっている

1 審査要領第2編が引用する条番号と現行条文のずれ

審査要領第2編は,住居地の届出の代理及び在留カードに係る取次ぎの根拠として,入管法施行規則第59条の3及び第59条の6を引用している。

しかし,令和8年8月時点の現行条文を確認すると,第59条の3の見出しは「公示送達の方法」であり,出入国在留管理庁の電子計算機を用いた公示事項の閲覧等,行政不服審査法の準用に関する電子的な送達方法を定めるものであって,代理・取次ぎとは無関係である。

第59条の6という条番号は,現行の施行規則には存在しない。

2 現行の根拠条文と改正省令

代理・取次ぎに関する規定は,現行の施行規則59条の4(見出し「出頭を要しない場合等」)に統合されている。

同条第2項第1号は,外国人に代わって在留カード関係の行為をすることができる者として,受入れ機関等・公益法人・登録支援機関の職員(イ),「弁護士又は行政書士で所属する弁護士会又は行政書士会を経由してその所在地を管轄する地方出入国在留管理局長に届け出たもの」(ロ)及び法定代理人(ハ)を掲げており,審査要領が第59条の3・第59条の6として引用していた内容は,この条文に置き替わっている。

この条ずれは,令和8年法務省令第41号「出入国管理及び難民認定法施行規則の一部を改正する省令」(令和8年6月23日公布,同年7月1日施行)による条文の繰下げ・統合によって生じたものである。

すなわち,出入国在留管理庁自身が令和8年4月に公表した審査要領第2編の条文引用は,その約2か月後に施行された同庁自身の省令改正によって,現行条文と一致しなくなっている。

行政書士・弁護士が申請等取次者の根拠条文を確認する際は,審査要領の条番号をそのまま引用せず,現行の施行規則59条の4を確認する必要がある。

第8 制度の沿革――1987年の創設から1989年の行政書士拡大まで

1 1987年,学校・企業限定での発足

申請取次制度は,昭和62年(1987年)5月の省令改正により創設され,同年9月から運用が始まった。

第108回国会衆議院法務委員会第7号(1987年8月26日)において,橋本文彦委員の質問に対し,小林俊二・法務省入国管理局長は,「この五月に省令を改正いたしまして,それまで在留中の外国人が在留期間の更新とか資格の変更の手続をする場合には本人が一々出頭することを求めておったわけでございますが,これを緩和して,一定の枠内においては免除することを可能ならしめる」ものであり,「法務大臣が指定をした,在留管理上信用ができるというふうに認定をした一定の学校あるいは企業等が,それぞれの学校なり企業なりが抱えている外国人の在留管理上の申請について,法務大臣が承認をした職員をしてその在留管理上の申請を代行させることができることにする」制度であると答弁した。

創設当初の取次者は学校・企業の職員に限られており,行政書士はまだ対象に含まれていなかった。

2 1989年,行政書士への対象拡大

行政書士が取次者に加わったのは,平成元年(1989年)6月15日の入管法施行規則改正によってである。

第114回国会参議院法務委員会第5号(1989年6月20日)において,股野景親・法務省入国管理局長は,「在留資格の変更,在留期間の更新,永住権及び再入国の申請,こういう手続につきましては,法務大臣が適当と認める行政書士が申請の取り次ぎを行うことができるように入管法の施行規則を改正いたしまして,六月十五日に公布をいたした」と答弁している。

同答弁は,行政書士会連合会との協議を経て改正が行われたことにも言及しており,学校・企業限定であった制度が,行政書士会との調整を経て2年後に行政書士へ拡大されたという経緯がうかがえる。

第9 裁判例の到達点

1 東京高裁平成19年判決の内容と射程

裁判所ウェブサイトの裁判例検索システムで「申請取次」という語を含む裁判例を検索すると,東京高等裁判所平成19年8月29日判決(平成19年(行コ)第159号,懲戒処分取消請求控訴事件,原審・千葉地方裁判所平成17年(行ウ)第33号)が唯一該当する。

同判決は,県知事が行政書士に対してした1か月間の業務停止処分の取消しを求める訴えについて,業務停止期間の経過により訴えの利益が消滅したとして訴えを却下したものであり,業務停止処分の理由となった非行の内容そのものには判文上触れていない。

判決は,同処分に伴って申請取次行政書士の届出済証明書を地方入国管理局長に返還しなければならないことについて,これは日本行政書士連合会が自主的に定めた内部的取扱いに基づく事実上の措置であって業務停止処分の法的効果とはいえないとし,この点を理由として訴えの利益を認めることもできないと判断している。

この判決からは,業務停止処分と申請取次行政書士としての届出済証明書の返還とが実務上連動していることは読み取れるが,第6で述べたような懲戒事由(第三者を介した依頼の取次ぎ等)を正面から扱った公刊裁判例は見当たらない。

委任状・依頼の実務トラブルは,訴訟という形で裁判所の判断が公刊される前に,都道府県知事又は弁護士会による懲戒手続の中で処理されている可能性が高いと考えられる。

出典・参考資料

1 法令

出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)7条の2,61条の8の3(e-Gov法令検索)
出入国管理及び難民認定法施行規則(昭和56年法務省令第54号)6条の2,19条,21条の3,21条の4,29条,59条の4(e-Gov法令検索。59条の4は令和8年法務省令第41号による改正後の条文)
行政書士法(昭和26年法律第4号)1条の3,14条,14条の3,19条,21条の2(e-Gov法令検索)
弁護士法(昭和24年法律第205号)56条,58条,72条(e-Gov法令検索)
民法(明治29年法律第89号)643条,644条,646条(e-Gov法令検索)

2 裁判例

東京高等裁判所平成19年8月29日判決(平成19年(行コ)第159号,懲戒処分取消請求控訴事件,原審・千葉地方裁判所平成17年(行ウ)第33号,裁判所ウェブサイト)

3 公的資料

①出入国在留管理庁「入国・在留審査要領」第2編(代理・申請取次ぎ)(令和8年4月開示文書。山中弁護士ブログ掲載版
②日本行政書士会連合会「申請取次行政書士管理委員会規則」(平成20年1月改正。前記①の資料に抄録あり)

4 国会会議録

第108回国会衆議院法務委員会議録第7号(1987年8月26日,小林俊二・法務省入国管理局長答弁。国立国会図書館国会会議録検索システム)
第114回国会参議院法務委員会議録第5号(1989年6月20日,股野景親・法務省入国管理局長答弁。国立国会図書館国会会議録検索システム)