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「高度専門職」のポイント計算と優遇措置――永住許可要件緩和の法的性質(AI作成)

第1 この記事が扱う対象

1 検討の対象と時点

「高度専門職」は,出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)別表第一の二に定める在留資格の一つであり,学歴,職歴,年収等を点数化するポイント制により,我が国の学術研究又は経済の発展に寄与すると見込まれる高度な能力を持つ外国人材を受け入れるためのものである。

本記事は,令和8年8月22日現在で確認できる入管法,高度専門職省令(平成26年法務省令第37号)及び特別高度人材の基準を定める省令(令和5年法務省令第25号)の条文,出入国在留管理庁が公表するポイント計算表・優遇措置の内容,並びに関連する裁判例の有無を確認した上で,ポイント計算の仕組みと優遇措置の内容を整理するものである。

なお,高度専門職省令は令和7年法務省令第45号により既に改正されているが,この改正の施行日は令和9年4月1日であり,本記事作成時点ではまだ施行されていない。したがって,以下で紹介する内容は,令和8年8月22日現在で効力を有する規定に基づくものであることに留意されたい。

出入国在留管理庁が作成した内部の審査基準である「入国・在留審査要領」(令和8年4月開示文書)第12編第9節「高度専門職」は,本記事が扱うポイント計算表及び優遇措置の運用を最も詳細に記載した一次資料である。

当該文書は,出入国在留管理庁作成の「入国・在留審査要領」第12編第9節「高度専門職」(令和8年4月の開示文書)として全編を掲載しているので,個別の条文や運用の詳細を原文で確認したい場合はそちらを参照されたい。

2 この記事の位置付け

以下では,まず「高度専門職」という在留資格の定義とポイント制導入の経緯を確認し(第2),高度専門職1号イ・ロ・ハのポイント計算表を項目ごとに整理する(第3)。

次に,1号での在留を経て移行する高度専門職2号の要件(第4),そして本記事の主題である優遇措置の内容を確認する(第5)。優遇措置のうち永住許可要件の緩和については,条文上の根拠と行政の運用指針との関係を整理する。

さらに,令和5年に導入された特別高度人材制度(J-Skip)及びこれとは別制度である未来創造人材制度(J-Find)を確認した上で(第6),ポイントの維持義務や不許可となった場合の争い方といった実務上の留意点を扱う(第7)。

第2 「高度専門職」とはどのような在留資格か

1 入管法上の定義とポイント制導入の経緯

入管法別表第一の二の「高度専門職」の項の下欄第一号は,「高度の専門的な能力を有する人材として法務省令で定める基準に適合する者が行う次のイからハまでのいずれかに該当する活動であって,我が国の学術研究又は経済の発展に寄与することが見込まれるもの」と定める。

イに研究・研究の指導・教育をする活動,ロに自然科学若しくは人文科学の分野に属する知識若しくは技術を要する業務に従事する活動,ハに貿易その他の事業の経営又は管理に従事する活動を掲げる。

同項第二号は,第一号の活動を行った者であって,その在留が我が国の利益に資するものとして法務省令で定める基準に適合するものが行う活動を定めており,これが「高度専門職2号」に対応する。

この在留資格が創設される前提となったのが,高度人材ポイント制である。平成22年3月の第4次出入国管理基本計画等を踏まえ,平成24年3月30日に高度人材上陸告示(平成24年法務省告示第126号)及び高度人材在留指針(同第127号)が制定された。

同年5月7日から,ポイント制により認定された高度人材外国人には「特定活動」の在留資格を付与し,家事使用人の帯同等の優遇措置を講ずる制度が開始された。

その後,平成25年12月24日に認定基準や優遇措置の一部見直しが行われた。

これを踏まえ,第186回通常国会において,高度人材を対象とした独立の在留資格を新設する入管法改正(平成26年法律第74号)が平成26年6月11日に成立し,平成27年4月1日から施行された。

同国会の衆議院法務委員会(平成26年5月23日)において,谷垣禎一法務大臣は法律案の趣旨説明の中で,「現在『特定活動』の在留資格を付与している高度の専門的な能力を有する外国人材を対象とした新たな在留資格『高度専門職(第一号)』を設けるとともに,この在留資格をもって一定期間在留した者を対象とした,活動制限を大幅に緩和し在留期間が無期限の在留資格『高度専門職(第二号)』を設けるもの」と説明している。

この改正により,従来「特定活動」の形で運用されていたポイント制の優遇措置が,独立した在留資格として整理された。

2 高度専門職1号イ・ロ・ハの活動類型と他の在留資格との重複

高度専門職1号イは,法務大臣が指定する本邦の公私の機関との契約に基づく研究,研究の指導又は教育をする活動であり,主に「教授」「研究」「教育」の各在留資格に相当する活動と重複する。

1号ロは,自然科学若しくは人文科学の分野に属する知識若しくは技術を要する業務に従事する活動であり,主に「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に相当する活動と重複する。

ただし,同資格の活動のうち「外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務」(通訳・翻訳・語学指導等の国際業務部分)は1号ロには含まれない。審査要領は,この理由について,国際業務は思考や感受性のレベルの高低をポイントで測ることが困難であるためと説明している。

1号ハは,本邦の公私の機関において行う貿易その他の事業の経営又は管理に従事する活動であり,主に「経営・管理」の在留資格に相当する活動と重複する。

もっとも,「経営・管理」が営利を目的とする事業の経営・管理を前提とするのに対し,1号ハは営利を目的としない機関の経営・管理活動も対象に含む点で異なる。

上陸基準省令第1号は,高度専門職1号の在留資格を取得するための前提として,行おうとする活動が「教授」から「報道」までの各在留資格,又は「経営・管理」から「技能」までの各在留資格(「外交」「公用」「技能実習」を除く。)のいずれかに該当し,かつ当該在留資格の上陸許可基準に適合することを求めている。

したがって,高度専門職1号の該当性審査は,まず既存の在留資格の該当性・基準適合性を審査した上で,これに加えて高度専門職省令のポイント計算による基準適合性を審査するという二段階の構造をとる。次の第3では,このポイント計算の内容を確認する。

第3 高度専門職1号のポイント計算

1 学歴・職歴・年収・年齢による基本項目

高度専門職省令(平成26年法務省令第37号)第1条第1項は,高度専門職1号イ・ロ・ハのそれぞれについて,学歴,職歴,年収,年齢(1号ハを除く。),研究実績,資格(1号ロのみ),地位(1号ハのみ),特別加算の各項目に配点した表を定め,これらを合計した点数が70点以上であることを基準とする。

入国・在留審査要領原本に掲げられた各表の内容は,次のとおりである。

項目高度専門職1号イ(研究・教育活動)1号ロ(自然科学・人文科学分野の業務)1号ハ(経営・管理活動)
学歴博士30点/修士若しくは専門職学位20点/大卒10点(複数分野の学位で5点加算)博士30点/経営管理に関する専門職学位25点/修士若しくは専門職学位20点/大卒10点(複数分野の学位で5点加算)経営管理に関する専門職学位25点/博士若しくは修士20点/大卒10点(複数分野の学位で5点加算)
職歴7年以上15点/5年以上7年未満10点/3年以上5年未満5点10年以上20点/7年以上10年未満15点/5年以上7年未満10点/3年以上5年未満5点10年以上25点/7年以上10年未満20点/5年以上7年未満15点/3年以上5年未満10点
年収年齢帯ごとに下限が異なり,1000万円以上で最高50点同左。ただし年収300万円未満の場合は他の項目にかかわらず合計点が0点になる年齢による区別はなく,3000万円以上で最高50点。1000万円未満の場合は他の項目にかかわらず合計点が0点になる
年齢30歳未満15点/30歳以上35歳未満10点/35歳以上40歳未満5点同左項目自体が存在しない
研究実績特許・競争的資金・責任著者論文等のうち2つ以上該当で25点,1つ該当で20点同種の実績のいずれか1つに該当で15点項目自体が存在しない
資格項目自体が存在しない従事する業務に関連する国家資格等を異分野で2以上10点/同分野で2以上10点/1つ5点項目自体が存在しない
地位項目自体が存在しない項目自体が存在しない代表権を有する役員10点/その他の役員5点

年収の項目は,契約機関(1号ハでは活動機関)及び外国所属機関から受ける報酬の年額の合計を基準とする。

1号イ・ロについては,申請人の年齢が30歳未満のときは年収400万円以上から10点,30歳以上35歳未満のときは500万円以上から15点,35歳以上40歳未満のときは600万円以上から20点,40歳以上のときは800万円以上から30点というように,適用される年収帯の下限が年齢によって異なる。

審査要領は,この理由について,我が国の企業では年功序列的な賃金体系が根強く残っており,年齢によって評価すべき賃金水準に差を設ける必要があるためと説明している。年齢の項目も同様に,年功序列的な賃金体系の下では若年層が年収ポイントで高得点を得にくいことを補正する趣旨で設けられている。

2 研究実績・資格・地位・特別加算による加点

研究実績の項目は,1号イ・ロに設けられており,①発明者として特許を受けた発明が1件以上あること,②外国政府から補助金,競争的資金その他の金銭の給付を受けた研究に3回以上従事したことがあること,③我が国の国の機関において利用されている学術論文データベースに登録されている学術雑誌に掲載された論文(責任著者であるものに限る。)が3本以上あること,④これらと同等の実績として法務大臣が認めるもの,のいずれかへの該当を基礎とする。

1号イでは①から④までのうち2つ以上に該当すれば25点,1つに該当すれば20点が付与されるのに対し,1号ロでは1つに該当すれば15点にとどまる。審査要領は,1号イに従事する外国人については研究実績の評価をより高める趣旨であると説明している。

学術論文データベースについては,オランダのエルゼビア社が提供する「SciVerse Scopus」が出入国在留管理庁の各地方局等に導入されているほか,Web of Science及びPubMedについても対象データベースとして扱われる。

特別加算の項目は,1号イ・ロ・ハに共通して,契約機関(活動機関)が中小企業者であり,かつ法務大臣が告示で定める法律の規定に基づく認定・承認又は補助金等の支援措置を受けている場合に最大20点が付与される。

このほか,本邦の大学を卒業し又は大学院の課程を修了して学位を授与された場合に10点,日本語能力試験N1相当の能力を試験により証明された場合に15点(N2相当は10点),世界大学ランキング3機関(クアクアレリ・シモンズ社,タイムズ社,シャンハイ・ランキング・コンサルタンシー)のいずれか2つ以上で300位以内の大学等を卒業した場合に10点等が設けられている。

1号ロには金融商品取引法上の投資運用業等に従事する場合の加算(10点)が,1号ハには自ら1億円以上を投資して貿易その他の事業を経営する場合の加算(10点)が,それぞれ固有の項目として追加されている。

3 年収による足切り――1号ロ・ハの300万円未満0点ルール

高度専門職1号ロ及び1号ハには,他の在留資格のポイント制度には見られない特徴として,年収の下限を満たさない場合に他の項目の点数にかかわらず合計点が一律0点になるという規定がある。

1号ロは契約機関及び外国所属機関から受ける報酬の年額の合計が300万円未満の場合,1号ハは同合計が1000万円未満の場合に,それぞれこの取扱いとなる。

審査要領によれば,1号ロの300万円という基準額は,厚生労働省の賃金構造統計基本調査を参考に,比較的規模の小さい企業や若年層の年収等を考慮して設定されたものである。学歴や研究実績で高得点を得ていても,年収がこの基準額に達しなければ高度専門職1号としては認定されない点に注意を要する。

第4 高度専門職2号への移行

高度専門職2号は,1号での在留を経た者を対象に,活動制限を大幅に緩和し,在留期間を無期限とする在留資格である。

高度専門職省令第2条第1項は,2号への変更許可の要件として,①1号イ・ロ・ハのいずれかの活動要件(ポイント70点以上等)を満たすこと,②高度専門職1号の在留資格をもって本邦に3年(特別高度人材にあっては1年)以上在留して同号に掲げる活動を行っていたこと,③素行が善良であること,④当該外国人の在留が日本国の利益に合すると認められること,の4つをいずれも満たすことを求めている。

④の国益要件は,永住許可の要件と異なり,長期間にわたり我が国社会の構成員として居住していると認められることまでは要しないとされている。

2号への在留資格変更許可と同時に,②の3年以上在留の要件を満たしている場合は永住許可申請も可能になることから,審査要領は,この場合にポイント計算の結果を改めて通知する必要はないものとしている。

高度専門職2号を取得すると,1号イ・ロ・ハのいずれかの活動と併せて,「教授」「芸術」「宗教」「報道」「法律・会計業務」「医療」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「介護」「興行」「技能」の各在留資格に対応する活動も行うことができるようになる。

また,1号と異なり,法務大臣が所属機関を個別に指定する手続を要しないため,在留期間中に複数の機関に所属し,又は所属機関を変更する際の負担が軽減される。次の第5では,1号・2号を通じて認められる優遇措置の内容を確認する。

第5 優遇措置の内容

1 複合的な在留活動の許容・在留期間5年・優先処理

出入国在留管理庁が公表する優遇措置の一覧によれば,高度専門職1号には次の優遇措置が認められる。①複数の在留資格にまたがる活動を行うことができる複合的な在留活動の許容(例えば,大学での研究活動と,これに関連する事業の経営を同時に行うことができる。),②法律上の最長期間である在留期間「5年」の一律付与,③永住許可要件の緩和(次の3で扱う。),④配偶者の就労,⑤一定の要件の下での親の帯同,⑥一定の要件の下での家事使用人の帯同,⑦入国・在留手続の優先処理である。

⑦の優先処理について,審査要領は,在留資格認定証明書交付申請を10日以内,在留資格の変更及び在留期間の更新許可申請を5日以内(ただし高度専門職2号に係る申請は2か月以内)に処理するものとしている(いずれも研究実績に係るポイント計算のために関係行政機関等への照会を要する場合等を除く。)。

高度専門職2号では,これらの優遇措置の主要な部分に加えて,ほぼ全ての就労関連活動が可能になり,在留期間が無期限になる。

2 配偶者の就労・親及び家事使用人の帯同

配偶者の就労については,高度専門職外国人本人が「教育」や「技術・人文知識・国際業務」等の在留資格に対応する活動を自ら行おうとする場合には学歴又は職歴に関する要件を満たす必要がある。

これに対し,その配偶者がこれらの活動を行おうとする場合は,高度専門職外国人の配偶者としての「特定活動」の在留資格により,学歴・職歴要件を満たさなくても行うことができる。ただし,高度専門職外国人本人と同居し,かつ日本人と同等額以上の報酬を受けることが必要である。

親の帯同は,通常,就労資格で在留する外国人の親の受入れは認められていない。もっとも,高度専門職外国人については,①高度専門職外国人又はその配偶者の7歳未満の子を養育する場合,②妊娠中の高度専門職外国人の配偶者又は妊娠中の高度専門職外国人本人の介助等を行う場合のいずれかに該当するときに,高度専門職外国人又はその配偶者の親の入国・在留が認められる。

この場合,高度専門職外国人本人と同居すること,高度専門職外国人本人とその配偶者が受ける報酬の年額を合算した世帯年収が800万円以上であること等の要件を満たす必要がある。

家事使用人の帯同は,通常,在留資格「経営・管理」又は「法律・会計業務」で在留する一部の外国人についてしか認められていない。もっとも,高度専門職外国人については,本国で雇用していた家事使用人を帯同すること,又は13歳未満の子がいる等の事情を理由に家事使用人を雇用することが認められる。

この場合,高度専門職外国人本人の世帯年収が1000万円以上であること,本国で雇用していた家事使用人を帯同する場合は1年以上継続して雇用していたこと等の要件を満たす必要がある。

ただし,高度専門職外国人本人が金融商品取引法(昭和23年法律第25号)に規定する第二種金融商品取引業,投資助言・代理業又は投資運用業に係る業務を行う場合は,本国における雇用や13歳未満の子がいることといった要件を満たす必要はない。

3 永住許可要件の緩和とその法的性質

高度専門職に関する優遇措置のうち,検索需要が特に大きいのが永住許可要件の緩和である。この点を検討する前提として,永住許可の法律上の要件を確認する必要がある。

入管法22条2項は,永住許可の申請があった場合,法務大臣は,申請人が①素行が善良であること,②独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること,のいずれにも適合し,かつ,その者の永住が日本国の利益に合すると認めたときに限り,これを許可することができると定めている。

条文上の要件は,①②の2号列挙事項と,柱書の「日本国の利益に合すると認める」という包括的な要件の2層構造になっており,在留期間の長短そのものを明文で定める規定は入管法本体には存在しない。

実務上広く知られている「原則として引き続き10年以上本邦に在留していること」という要件,及び高度専門職外国人について「70点以上で3年,80点以上で1年」に短縮するという運用は,入管法の条文ではなく,「永住許可に関するガイドライン」という法務省・出入国在留管理庁の内部運用指針によって定められている。

審査要領原本に引用された現行のガイドライン(令和6年11月18日改定)は,原則10年在留に関する特例として,①高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に70点以上を有している者であって,高度人材外国人として必要な点数を維持して3年以上継続して本邦に在留していること,②80点以上を有している者であって,同様に1年以上継続して本邦に在留していること,③特別高度人材の基準を定める省令に規定する基準に該当する者であって,特別高度人材として1年以上継続して本邦に在留していること,を掲げている。

この3年・1年という短縮は,平成28年6月の「日本再興戦略改訂2016」の閣議決定を受けて導入されたものであり,法務省はこれを「日本版高度外国人材グリーンカード」の創設と呼んでいる。

同省の公表資料は,「70点以上のポイントで高度外国人材として認められた者について,永住許可申請に要する在留期間を現行の5年から3年に短縮する」,「高度外国人材の中でも特に高度と認められる者(80点以上のポイントで認められた者)については,永住許可申請に要する在留期間を現行の5年から大幅に短縮し,1年とする」と説明しており,永住許可に関するガイドラインの改正を経て平成29年4月26日から施行された。

ここで留意すべきは,永住許可要件の緩和は,あくまで柱書の「日本国の利益に合すると認める」という要件の運用上の当てはめ(在留期間の考慮)を短縮するものであって,①素行善良,②独立生計という条文上の2要件そのものを免除するものではないという点である。

行政の運用指針であるガイドラインは,法務大臣の裁量権行使の基準を定めたものであり,永住許可を法律上の権利として保障するものではない。

高度専門職外国人であっても,素行善良要件や独立生計要件を満たさなければ永住許可は受けられず,また,ポイントを維持できずに70点又は80点を下回った場合は,短縮された期間での永住許可申請という優遇の対象から外れることになる(この点は第7で扱う。)。

第6 特別高度人材制度(J-Skip)と未来創造人材制度(J-Find)

1 特別高度人材制度(J-Skip)の認定要件と優遇内容

特別高度人材制度(J-Skip)は,令和5年4月21日に施行された特別高度人材の基準を定める省令(令和5年法務省令第25号)に基づき,学歴又は職歴及び年収の面で特に秀でた者について,ポイント計算によることなく高度専門職の在留資格を付与する制度である。

同省令によれば,高度専門職1号イ・ロに掲げる活動を行う外国人については,契約機関及び外国所属機関から受ける報酬の年額の合計が2000万円以上であり,かつ,①博士若しくは修士の学位又は専門職学位を有していること,②従事する研究,研究の指導若しくは教育又は業務について10年以上の実務経験があること,のいずれかに該当することが要件となる。

1号ハに掲げる活動を行う外国人については,活動機関及び外国所属機関から受ける報酬の年額の合計が4000万円以上であり,かつ,事業の経営又は管理について5年以上の実務経験があることが要件となる。

高度専門職省令第1条第1項本文も,この特別高度人材に該当する者は,ポイント計算によらずに高度専門職1号の基準に適合するものとして扱う旨を定めている。

特別高度人材として認定されると,通常のポイント制による高度専門職1号と同様の在留期間「5年」,複合的な在留活動の許容等の優遇措置に加えて,複数の固有の優遇が受けられる。

第一に,高度専門職2号への移行に必要な高度専門職1号での在留期間が,通常の3年から1年に短縮される。

第二に,永住許可申請についても,前記第5の3で述べたとおり,1年以上継続して本邦に在留していれば国益要件の在留年数の点を満たすものとして扱われる。

第三に,「短期滞在」の在留資格で在留中の外国人が特別高度人材として「高度専門職」への在留資格変更許可を申請する場合,通常は認められにくい短期滞在からの変更を,やむを得ない特別の事情に基づくものとして取り扱う特例が設けられている。

出入国在留管理庁の公表資料によれば,これらに加えて,大規模空港におけるプライオリティレーンの利用も認められる。特別高度人材として認定された者には,特別高度人材証明書が交付され,旅券への添付及び在留カード裏面への記載によってその地位が明示される。

2 未来創造人材制度(J-Find)――別の在留資格である点に注意

特別高度人材制度と同じ令和5年4月に導入された制度に,未来創造人材制度(J-Find)がある。もっとも,J-Findは高度専門職省令にも特別高度人材の基準を定める省令にも規定がなく,「高度専門職」とは別の在留資格である「特定活動」の枠組みで運用されている点に注意を要する。

出入国在留管理庁の公表資料によれば,対象となるのは,世界大学ランキング3機関(QSワールド・ユニバーシティ・ランキングス,タイムズ・ハイアー・エデュケーション・ワールド・ユニバーシティ・ランキングス,アカデミック・ランキング・オブ・ワールド・ユニバーシティズ)のうち2つ以上で上位100位以内にランクされた大学(大学院を含む。)を卒業してから5年以内の者であって,申請の時点における預貯金の額が日本円に換算して20万円以上であることを要件とする。

この要件を満たす者は,「特定活動」の在留資格により,最長2年間,就職活動又は起業準備活動を行うことができる。

J-Findは,高度専門職としての就労そのものを認めるものではなく,将来的に高度専門職その他の就労資格を取得するための準備活動を目的とした制度である点で,本記事が扱うポイント制及び特別高度人材制度とは制度の位置付けが異なる。

第7 実務上の留意点

1 ポイントを「維持」することの意味

高度専門職1号の在留期間更新許可申請においては,現に指定されている活動を行おうとするものであることに加えて,高度専門職省令第1条の規定により改めて計算した合計点が70点以上であることが確認される。

したがって,入国時や在留資格変更許可時に70点以上であったとしても,その後に年収が減少したり,年齢が上がって年齢ポイントが下がったりした結果,更新時の計算で70点を下回れば,高度専門職1号としての在留期間更新は認められない。

前記第5の3で述べた永住許可要件の緩和についても,ガイドラインは「必要な点数を維持して」3年又は1年以上継続して在留していることを求めており,一時的に70点又は80点に達していたというだけでは足りず,その後の期間を通じてポイントを維持していることが求められる。

年収や年齢によって変動しやすい項目に依拠して基準点を満たしている場合は,この変動リスクを踏まえた準備が必要になる。

2 不許可・不交付となった場合の争い方

高度専門職に関する在留資格認定証明書の不交付又は在留資格変更・在留期間更新の不許可処分を争う裁判例は,本記事の作成に当たって裁判所ウェブサイトの裁判例検索で「高度専門職」「高度人材」等の組み合わせによる複数の検索を行ったが,見当たらなかった。

裁判所ウェブサイトに掲載されていないことは,そのような紛争が存在しないことを意味するものではなく,同ウェブサイトが掲載する裁判例を選別していることによる限界であるが,少なくとも公刊された裁判例としては確認できていない。

在留資格に関する処分を争う一般的な枠組みとしては,最高裁判所大法廷判決昭和53年10月4日(民集32巻7号1223頁,いわゆるマクリーン事件判決)が示した,外国人の入国・在留の許否に関する法務大臣の広範な裁量論が出発点となる。同判決は,裁判所の審査が及ぶのは,法務大臣の判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかな場合に限られるとする。

高度専門職のポイント計算は,学歴・職歴・年収等の外形的な事実への当てはめが中心であるため,事実認定の当否自体は純粋な政策的裁量よりも司法審査になじみやすい面があると考えられる一方で,研究実績の同等性の判断等,評価的な要素を含む項目については,この裁量論がなお及ぶと考えられる。

取消訴訟を提起する場合は,行政事件訴訟法14条により,処分があったことを知った日から6か月,処分の日から1年という出訴期間の制限があることにも留意する必要がある。

もっとも,実務上は,不交付・不許可の通知を受けた後に,追加の疎明資料を整えて再申請する形で是正が図られることが少なくないと考えられ,訴訟に至る前の段階での対応が現実的な選択肢になることが多い。

出典・参考資料

1 法令・省令

出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)別表第一の二,22条,22条の4(e-Gov法令検索)
出入国管理及び難民認定法別表第一の二の表の高度専門職の項の下欄の基準を定める省令(平成26年法務省令第37号)第1条,第2条(e-Gov法令検索)
特別高度人材の基準を定める省令(令和5年法務省令第25号)(e-Gov法令検索)
行政事件訴訟法(昭和37年法律第139号)14条(e-Gov法令検索)

2 裁判例

①最高裁判所大法廷判決昭和53年10月4日(民集32巻7号1223頁,いわゆるマクリーン事件判決)

3 公的資料

①出入国在留管理庁「入国・在留審査要領」第12編第9節「高度専門職」(令和8年4月開示文書,山中弁護士ブログ掲載版
高度人材ポイント制「どのような優遇措置が受けられる?」(出入国在留管理庁)
高度人材ポイント制「ポイント評価の仕組みは?」(出入国在留管理庁)
「日本版高度外国人材グリーンカード」の創設(法務省)
特別高度人材制度(J-Skip)(出入国在留管理庁)
未来創造人材制度(J-Find)(出入国在留管理庁)
第186回国会衆議院法務委員会第19号(平成26年5月23日)谷垣禎一法務大臣答弁(国立国会図書館国会会議録検索システム)