第1 本記事の対象と結論
1 本記事の対象
本記事は,消費者金融やクレジットカードのキャッシングで,利息制限法の制限を超える利息を支払い続けた借主が持つ過払金返還請求権について,消滅時効がいつから進行し,いつ完成するかを扱う。
中心となるのは,時効の起算点を「取引が終了した時」とした最高裁判所第一小法廷平成21年1月22日判決(平成20年(受)第468号,民集63巻1号247頁)である。
調査基準日は令和8年9月19日であり,条文はe-Gov法令検索の現行条文と改正前民法(令和2年3月31日時点)の条文で,裁判例は裁判所HPの裁判例検索で確認した。
消滅時効全体の見取り図は,消滅時効に関するメモ書きで整理している。
2 結論
過払金返還請求権の消滅時効の起算点と期間は,次のとおりである。
①同じ貸金業者との間で一つの基本契約に基づき借入れと返済を繰り返していた場合には,基本契約に過払金充当合意が含まれていれば,特段の事情がない限り,消滅時効は個々の過払金が発生した時からではなく,取引が終了した時から進行する(平成21年判決)。
②令和2年4月1日より前に発生した過払金の返還請求権には,改正前民法が適用され,時効期間は取引終了時から10年であると考えられる(民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)附則10条4項)。
③貸金業者に対する請求であっても,商事消滅時効の5年ではなく10年である(最高裁昭和55年1月24日判決)。
④基本契約が複数あり,前の取引と後の取引が「事実上1個の連続した貸付取引」と評価されない場合には,前の取引の過払金は後の取引の借入金に充当されず,前の取引の終了時から時効が別に進行することになる(最高裁平成20年1月18日判決の充当に関する判断と平成21年判決の起算点に関する判断を組み合わせた帰結である。)。
⑤したがって,完済等により取引が終わってから10年を経過していれば,時効の完成猶予・更新の事由がない限り,貸金業者が時効を援用すれば過払金は請求できない。
令和8年9月19日の時点でみると,最後の取引が平成28年9月18日以前に終わっている取引の過払金は,原則として時効期間が既に満了している。
他方で,取引が現在も続いている場合や,取引の終了から10年が経っていない場合には,まだ請求の余地がある。
3 用語
本記事で「過払金」とは,利息制限法所定の制限を超えて利息として支払われた部分を元本に充当し,元本が完済となった後になお支払われた金銭をいう。
「過払金充当合意」とは,過払金が発生した時に他の借入金債務がなければ,その過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意をいい,平成21年判決の用語に従っている。
「改正前民法」とは,民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)による改正前の民法をいう。
第2 過払金返還請求権の性質
1 利息制限法の制限と元本充当
利息制限法1条は,「金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。」と定め,元本10万円未満は年2割,10万円以上100万円未満は年1割8分,100万円以上は年1割5分を上限とする。
制限を超えて利息として支払われた部分は,残元本に充当され,残元本が完済となった後の支払は法律上の原因のない給付となる。
こうして生じた過払金の返還請求権は,民法703条・704条の不当利得返還請求権である。
平成18年法律第115号による利息制限法・貸金業法等の改正が平成22年6月18日に施行され,いわゆるグレーゾーン金利は廃止された。
そのため,現在問題になる過払金の多くは,それより前の取引で支払われた利息から生じたものである。
2 悪意の受益者と利息
最高裁判所第二小法廷平成19年7月13日判決(平成17年(受)第1970号,民集61巻5号1980頁)は,貸金業者が制限超過部分を利息として受領し,その受領に貸金業法(当時の貸金業の規制等に関する法律)43条1項の適用が認められない場合には,特段の事情がない限り,貸金業者は民法704条の「悪意の受益者」であると推定されるとした。
悪意の受益者は,受けた利益に利息を付して返還しなければならない(民法704条)。
最高裁判所第三小法廷平成19年2月13日判決(平成18年(受)第1187号,民集61巻1号182頁)は,この利息の利率は,商行為である貸付けに係る過払金であっても民法所定の年5分であるとした。
3 時効期間は10年(商事消滅時効ではない)
最高裁判所第一小法廷昭和55年1月24日判決(昭和53年(オ)第1129号,民集34巻1号61頁)は,「商行為である金銭消費貸借に関し利息制限法所定の制限を超えて支払われた利息・損害金についての不当利得返還請求権の消滅時効期間は、一〇年と解すべきである。」とした(裁判要旨)。
したがって,改正前民法が適用される過払金返還請求権の時効期間は,改正前民法167条1項の10年である。
商法旧522条の5年の商事消滅時効は,平成29年法律第45号により削除されたが,それ以前の取引についても過払金に同条は適用されない。
4 取引履歴の開示
過払金の有無と額は,全取引の借入れと返済の履歴を利息制限法の利率で引き直して計算しなければ分からない。
最高裁判所第三小法廷平成17年7月19日判決(平成16年(受)第965号,民集59巻6号1783頁)は,貸金業者は,債務者から取引履歴の開示を求められた場合には,その開示要求が濫用にわたると認められるなど特段の事情のない限り,信義則上,帳簿に基づいて取引履歴を開示すべき義務を負うとした。
現行の貸金業法19条の2も,債務者等又は債務者等であった者が,貸金業者に対し帳簿(利害関係がある部分に限る。)の閲覧又は謄写を請求できると定めている。
貸金業法施行規則17条1項は,帳簿の保存期間を,極度方式基本契約については基本契約の解除の日又は最終の返済期日のうちいずれか遅い日(債権がすべて消滅したときはその消滅した日)から少なくとも10年間としている。
取引終了から長期間が経過すると,時効の問題とは別に,履歴の入手そのものが難しくなることがある。
第3 最高裁平成21年1月22日判決
1 事案
事案は,借主と貸金業者が一つの基本契約に基づき,昭和57年8月10日から平成17年3月2日まで借入れと返済を繰り返した取引である。
借入れは残元金が一定額となる限度で繰り返され,返済は借入金債務の残額の合計を基準として最低返済額を設定し毎月行われていた。
貸金業者は,過払金の一部については発生時から10年が経過したとして消滅時効を援用した。
2 判示
(1) 過払金充当合意は法律上の障害となる
平成21年判決は,過払金充当合意においては,新たな借入金債務の発生が見込まれる限り過払金を同債務に充当することとし,借主が過払金返還請求権を行使することは通常想定されていないとした。
そして,過払金充当合意には,借主が基本契約に基づく継続的な取引が終了した時点で過払金が存在していればその返還請求権を行使することとし,それまでは過払金が発生してもその都度その返還を請求しないという趣旨が含まれていると解した。
その上で,「同取引継続中は過払金充当合意が法律上の障害となるというべきであり,過払金返還請求権の行使を妨げるものと解するのが相当である。」と判示した。
(2) 借主はいつでも取引を終了できるという反論
これに対しては,借主はいつでも取引を終了させて過払金を請求できるのだから,過払金の発生時から時効が進行するという考え方もあり得る。
平成21年判決は,借主は一方的に取引を終了させて過払金の返還を請求できるとしつつ,そのように解することは,過払金が発生すれば時効期間の経過前に取引を終了させることを借主に求めるに等しく,過払金充当合意を含む基本契約の趣旨に反するとして,この考え方を退けた。
結論として,「過払金返還請求権の行使について上記内容と異なる合意が存在するなど特段の事情がない限り,同取引が終了した時点から進行するものと解するのが相当である。」とし,本件では取引の終了時である平成17年3月2日から10年が経過する前に訴えが提起されたから時効は完成していないとした。
3 同年3月3日判決・3月6日判決と反対意見
最高裁判所第三小法廷平成21年3月3日判決(平成20年(受)第543号,集民230号167頁)と最高裁判所第二小法廷平成21年3月6日判決(平成20年(受)第1170号,集民230号209頁)も,同じ判断を示した。
両判決の原審は,過払金は弁済の都度発生し直ちに行使できるとして,訴え提起の10年前より前の弁済で生じた過払金について時効の完成を認めていたが,最高裁はこれを破棄し,取引終了時を起算点とした。
平成21年3月3日判決には,過払金返還請求権の消滅時効はその発生時から進行すると解すべきであるとする裁判官1名の反対意見が付されている。
同反対意見は,明示の特約がないのに過払金充当合意に請求権の行使時期に関する合意まで含まれていると解するのは,契約の合理的な意思解釈の限度を超えると述べている。
平成21年判決の構成に対しては,学説からも,充当合意に権利不行使の合意を読み込むのは擬制であり,権利行使を期待できるかどうかで起算点を考えるべきであるとの批判がある(平野裕之「過払金返還請求権の消滅時効の起算点——契約の補充的解釈——」国民生活研究65巻1号27頁以下)。
もっとも,同論文も,事案の解決として結論を大きく変えるものではないと述べており,実務は平成21年判決の枠組みで動いている。
第4 取引の個数と時効の起算点
1 一つの基本契約に基づく取引
最高裁判所第一小法廷平成19年6月7日判決(平成18年(受)第1887号,民集61巻4号1537頁)は,カードを利用して継続的に借入れと返済を繰り返すことを予定した基本契約で,毎月の返済額が借入金債務の残額の合計を基準とする一定額と定められているなどの事情の下では,基本契約は過払金充当合意を含むと解するのが相当であるとした。
いわゆるリボルビング方式のカードローンは,この類型に当たることが多い。
この場合,取引中に生じた過払金は後の借入金に次々と充当され,時効は取引の終了時から進行する。
2 基本契約が複数ある場合
最高裁判所第二小法廷平成20年1月18日判決(平成18年(受)第2268号,民集62巻1号28頁)は,第1の基本契約に基づく取引で過払金が発生し,その当時他の債務がなかったところ,その後に改めて第2の基本契約が締結された場合には,過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するなど特段の事情がない限り,第1の取引の過払金は第2の取引の債務に充当されないとした。
そして,特段の事情の有無は,次の事情を考慮して,第1の取引と第2の取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価できるかによって判断するとした。
①第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さ。
②第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間。
③第1の基本契約についての契約書の返還の有無。
④カードが発行されている場合にはその失効手続の有無。
⑤第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間における貸主と借主との接触の状況。
⑥第2の基本契約が締結されるに至る経緯。
⑦第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同。
同判決の事案では,第1の取引の最終弁済から約3年後に第2の基本契約が締結され,利率等も異なっていたことから,原審の認定した事情だけでは特段の事情があるとはいえないとして,原判決を破棄し差し戻した。
時効との関係でいえば,一連の取引と評価されれば取引全体の終了時が起算点となり,第1の取引の過払金も含めて時効が完成していないことになる。
一連の取引と評価されなければ,第1の取引の過払金はその取引の終了時から時効が進行し,第2の取引とは別に時効の完成を判断することになる。
この争点は「取引の分断」と呼ばれ,古い取引の過払金の時効が完成しているかどうかを左右する。
3 基本契約がない個別の貸付け
平成19年2月13日判決は,基本契約が締結されていない場合において,第1の貸付けに係る債務の弁済により過払金が発生し,その後に第2の貸付けに係る債務が発生したときには,特段の事情のない限り,第1の貸付けに係る過払金は第2の貸付けに係る債務に充当されないとした。
この場合には過払金充当合意を認める前提がないから,平成21年判決のいう法律上の障害はなく,過払金はその発生時から時効が進行すると考えられる。
ただし,平成19年2月13日判決自体は,時効の起算点について判断したものではない。
4 無担保のリボルビング取引と不動産担保の貸付け
最高裁判所第三小法廷平成24年9月11日判決(平成23年(受)第122号,民集66巻9号3227頁)は,無担保のリボルビング方式の取引が続けられた後,改めて不動産に担保権を設定して確定金額の貸付けがされた事案で,第2の貸付金の一部が第1の取引の約定残債務の弁済に充てられ,借主には残額だけが交付されたなどの事情があっても,当事者が両取引を事実上1個の連続した貸付取引であることを前提に取引をしていると認められる特段の事情がない限り,第1の取引の過払金を第2の借入金債務に充当する旨の合意は認められないとした。
いわゆる借換え・切替えの事案でも,取引の一連性は当然には認められない。
第5 「取引の終了」はいつか
1 完済と最終取引日
平成21年判決は,取引の終了を「基本契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点」と言い換えている。
典型は,借主が約定残高を完済し,その後借入れをしなかった場合や,基本契約を解約した場合である。
実務では,取引履歴上の最終取引日(最後の返済日又は借入日)を取引終了日として主張されることが多い。
2 貸付停止やカードの失効
貸金業者が一方的に貸付けを停止しただけの場合や,約定残高が残ったまま返済が止まった場合には,取引が終了したといえるかが争われる。
前掲の平野論文(国民生活研究65巻1号49頁~55頁)は,平成21年判決後の東京地裁等の下級審裁判例を整理し,次の傾向を紹介している。
①貸付停止措置が暫定的なものか解除の趣旨か明らかでない場合には,取引の終了を認めないものが多い。
②カードの有効期限が満了し新たなカードが発行されなかった場合,高齢を理由に全契約者に一律の貸付停止をした場合,総量規制のため貸付停止とされ解除の見込みがなかった場合等には,新たな貸付けの見込みがなくなったとして取引の終了を認めたものがある。
③取引終了の客観性に加え,借主がそのことを認識し得たことを要するとする裁判例がある。
これらの下級審裁判例は裁判所HPで個別に確認していないので,本記事では同論文が紹介する傾向として示すにとどめる。
第6 改正後民法の下での扱い
1 経過措置
民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)附則10条4項は,「施行日前に債権が生じた場合におけるその債権の消滅時効の期間については、なお従前の例による。」と定め,同条1項は,施行日前に債権が生じた場合には,施行日以後に債権が生じた場合であってもその原因である法律行為が施行日前にされたときを含むものとしている。
施行日は令和2年4月1日である。
過払金返還請求権は,過払金の発生の都度生じ(平成21年判決も,過払金充当合意の趣旨を,過払金が発生しても「その都度その返還を請求することはせず」に後の借入金債務に充当するものと述べている。),その行使が過払金充当合意によって妨げられているにすぎないから,令和2年3月31日までに発生した過払金の返還請求権には改正前民法が適用されると考えられる。
取引の終了が令和2年4月1日以後であっても,それ以前に発生した過払金については同じである。
経過措置の全体像は,消滅時効は改正前民法と改正後民法のどちらで判断するか―附則10条・35条の経過措置と振り分け表で扱う。
2 改正後の5年・10年
改正後民法166条1項は,債権は,「債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。」(1号)と,「権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。」(2号)に,時効によって消滅すると定める。
令和2年4月1日以後に発生した過払金があり,改正後民法が適用される場合には,取引終了時から10年(2号)のほか,借主が権利を行使することができることを知った時から5年(1号)でも時効が完成し得る。
過払金返還請求権で「知った時」がいつかは,取引の終了と過払金の発生を借主が認識した時と考える余地があるが,この点を正面から判断した最高裁判例は確認できなかった。
また,継続的な取引で施行日の前後にまたがって発生した過払金について,附則10条1項括弧書の「原因である法律行為」を基本契約とみるかどうかも,確認できた資料の範囲では明らかでない。
債権の時効期間の全体像は,債権の消滅時効は何年か―5年・10年の原則,短期消滅時効の廃止及び分野別の時効期間で扱う。
第7 計算例と実務上の対応
1 日付による計算例
改正前民法が適用される場合の計算例を示す。
期間の計算は初日不算入であり(民法140条),取引終了日の翌日から起算して10年後の応当日の前日が満了日となる(民法143条2項)。
| 取引の状況 | 起算日 | 満了日 | 令和8年9月19日時点 |
|---|---|---|---|
| 平成27年3月31日に完済し以後借入れなし | 平成27年4月1日 | 令和7年3月31日 | 満了済み(完成猶予・更新がなければ援用されれば請求不可) |
| 平成28年9月19日に完済し以後借入れなし | 平成28年9月20日 | 令和8年9月19日 | 本日の経過で満了 |
| 平成29年6月30日に完済し以後借入れなし | 平成29年7月1日 | 令和9年6月30日 | 未完成 |
| 平成10年から現在まで同じ基本契約で取引継続中 | 進行していない | ― | 未完成 |
上の表は,一つの基本契約に基づく一連の取引で,過払金充当合意が認められることを前提としている。
取引の分断が認められる場合には,前の取引の終了日から別に計算する。
2 時効の完成を止める手段
時効の満了が迫っている場合には,完成猶予・更新の手段を検討する。
改正前民法が適用される過払金返還請求権でも,施行日(令和2年4月1日)以後に生じた完成猶予・更新の事由には改正後民法の規定が適用される(附則10条2項の反対解釈)。
①訴えの提起又は支払督促の申立てにより,時効の完成が猶予され,確定判決等により権利が確定すれば時効は更新される(民法147条)。
②内容証明郵便による催告は,6か月間だけ時効の完成を猶予する(民法150条)。
③貸金業者との間で書面による協議を行う旨の合意をすれば,民法151条により完成が猶予される。
④貸金業者が過払金の存在を認めることは承認に当たり得るが,和解の提案の文言によっては承認と評価されないこともあるので,承認を根拠にする場合は書面の文言を確認する。
各手段の詳細は,訴えの提起と時効の完成猶予・更新―明示的一部請求,訴えの取下げ及び訴えの変更,内容証明による催告と協議を行う旨の合意―6か月の完成猶予,再度の催告及び民法151条の使い方及び債務の承認による時効の更新―一部弁済,破産管財人の承認及び相続人への通知で扱う。
支払督促の手続は,mintsによる支払督促で整理している。
3 現在の実務上の意味
グレーゾーン金利の廃止から16年以上が経過した現在では,制限超過利息の支払を含む取引の多くは既に終了し,その終了から10年を経過したものが増えている。
そのため,現在の過払金請求では,時効の完成が最大の争点となることが多く,取引が本当に終了したのはいつか,前後の取引が一連のものといえるかが結論を分ける。
取引の途中に完済と再借入れがある場合には,完済時点で時効が進行を始めたと貸金業者から主張されることがあるので,平成20年判決の考慮要素に沿って一連性を裏付ける事情を集めることになる。
時効が完成した後であっても,貸金業者が時効を援用しなければ裁判所は時効を理由に請求を棄却できない(民法145条)。
時効の援用については,消滅時効を援用できるのは誰か―保証人・物上保証人・第三取得者,後順位抵当権者及び詐害行為の受益者で扱う。
第8 関連記事
①消滅時効に関するメモ書き
②消滅時効は改正前民法と改正後民法のどちらで判断するか―附則10条・35条の経過措置と振り分け表
③債権の消滅時効は何年か―5年・10年の原則,短期消滅時効の廃止及び分野別の時効期間
④時効の完成猶予と更新の違い―旧法の中断・停止との対応関係と事由の一覧
⑤時効完成後に債務を承認・一部弁済したら時効を援用できないか―最高裁昭和41年4月20日大法廷判決と再度の時効
⑥遅延損害金の利率は年3%か年5%か―令和2年4月1日の経過措置,商事法定利率の廃止及び3年ごとの見直し
⑦平成21年度から令和6年度までの最高裁民事破棄判決の分析
第9 出典・参考資料
1 法令
①民法(明治29年法律第89号)140条,143条,145条,147条,150条,151条,166条,703条,704条(e-Gov法令検索の現行条文)
②民法(令和2年3月31日時点)166条,167条(e-Gov法令検索の時点指定条文)
③民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)附則10条
④利息制限法(昭和29年法律第100号)1条
⑤貸金業法(昭和58年法律第32号)19条,19条の2
⑥貸金業法施行規則(昭和58年大蔵省令第40号)17条
2 裁判例
①最高裁判所第一小法廷平成21年1月22日判決(平成20年(受)第468号,民集63巻1号247頁)
②最高裁判所第三小法廷平成21年3月3日判決(平成20年(受)第543号,集民230号167頁)
③最高裁判所第二小法廷平成21年3月6日判決(平成20年(受)第1170号,集民230号209頁)
④最高裁判所第一小法廷平成19年6月7日判決(平成18年(受)第1887号,民集61巻4号1537頁)
⑤最高裁判所第二小法廷平成20年1月18日判決(平成18年(受)第2268号,民集62巻1号28頁)
⑥最高裁判所第三小法廷平成19年2月13日判決(平成18年(受)第1187号,民集61巻1号182頁)
⑦最高裁判所第三小法廷平成24年9月11日判決(平成23年(受)第122号,民集66巻9号3227頁)
⑧最高裁判所第二小法廷平成19年7月13日判決(平成17年(受)第1970号,民集61巻5号1980頁)
⑨最高裁判所第一小法廷昭和55年1月24日判決(昭和53年(オ)第1129号,民集34巻1号61頁)
⑩最高裁判所第三小法廷平成17年7月19日判決(平成16年(受)第965号,民集59巻6号1783頁)
3 公的資料
①金融庁「過払金返還請求権の消滅時効に関する最高裁判決の概要について」(平成21年2月19日)
4 文献
①平野裕之「過払金返還請求権の消滅時効の起算点——契約の補充的解釈——」国民生活研究65巻1号(独立行政法人国民生活センター,令和7年7月)27頁~70頁(特に49頁~55頁)