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債権の消滅時効は何年か―5年・10年の原則,短期消滅時効の廃止及び分野別の時効期間(AI作成)

第1 本記事の対象と結論

1 本記事の対象

本記事は,債権の消滅時効の期間が何年かについて,民法の原則と,民法以外の法律が定める分野別の期間を整理するものである。
調査基準日は令和8年9月19日であり,条文はe-Gov法令検索で取得した現行条文と,平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)の条文で確認した。
起算点の個別の論点,完成猶予・更新,援用については,消滅時効に関するメモ書きと,そこから分けた各記事で扱う。

2 結論

令和2年4月1日以後に生じた債権の消滅時効は,原則として,債権者が権利を行使することができることを知った時から5年,又は権利を行使することができる時から10年のいずれか早い方で完成する(民法166条1項)。
売買代金,貸金,報酬等の契約上の債権は,通常,弁済期の到来を債権者が知っているから,実際には弁済期から5年で時効になることが多い。

改正前民法にあった職業別の短期消滅時効(医師の診療報酬3年,弁護士報酬2年,飲食代金1年等)と,商行為によって生じた債権の5年(改正前商法522条)は廃止された。
ただし,令和2年3月31日以前に生じた債権(原因である契約が同日以前にされた債権を含む。)には,改正前民法・改正前商法の期間がなお適用される。

民法の原則とは別に,人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権(民法167条・724条の2),不法行為による損害賠償請求権(民法724条),判決で確定した権利(民法169条),賃金(労働基準法115条・附則143条),保険給付(保険法95条),国・地方公共団体の金銭債権(会計法30条,地方自治法236条)等には,それぞれ別の期間がある。
時効期間を確認するときは,①債権の発生時期(改正前民法か改正後民法か),②債権の種類ごとの特別の定めの有無,③起算点の順で確認するのが確実である。

第2 民法166条の原則

1 条文

民法166条1項は,「債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。」とした上で,1号で「債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。」,2号で「権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。」と定める。
同条2項は,「債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。」と定める。
所有権は,同条2項の対象から除かれており,消滅時効にかからない。

2 主観的起算点と客観的起算点

1号の「知った時から五年間」は,債権者の認識を基準とする起算点であり,主観的起算点と呼ばれる。
2号の「権利を行使することができる時から十年間」は,債権者の認識を問わない起算点であり,客観的起算点と呼ばれる。
両者は別々に進行し,いずれか一方が満了した時点で時効が完成する。

法務省の一般向けパンフレットは,改正の内容を,職業別の短期消滅時効の特例を廃止するとともに,「消滅時効期間を原則として5年とするなどしています。」と説明している。
同じパンフレットは,債権者自身が権利を行使することができることを知らないような債権の例として過払金返還請求権を挙げ,そのような債権は権利を行使することができる時から10年で時効になると説明している。

3 契約上の債権では5年になることが多い

契約に基づく代金債権や貸金債権は,弁済期が契約で定められており,債権者は弁済期の到来を当然に知っている。
そのため,主観的起算点と客観的起算点が一致し,弁済期から5年で時効が完成するのが通常である。
例えば,弁済期が令和3年(2021年)6月30日の貸金債権は,時効の完成猶予・更新がなければ,初日を算入せずに計算して(民法140条),令和8年(2026年)6月30日の終了で5年の時効期間が満了する。

これに対し,債権者が権利の存在を知らないことがある債権(過払金返還請求権,契約不適合を理由とする損害賠償請求権,不当利得返還請求権等)では,主観的起算点が遅れ,客観的起算点からの10年が先に満了することもある。
過払金の起算点は過払金返還請求権の消滅時効はいつから進行するか―取引終了時とした最高裁平成21年1月22日判決で,契約不適合責任の期間は契約不適合責任の期間制限―1年以内の通知,5年・10年の消滅時効及び旧瑕疵担保責任の判例で扱う。
返済期限を定めていない貸金の起算点は,返済期限を決めていない貸金・親族間の貸付けの消滅時効はいつから進行するかで別に検討する。

4 改正前民法との比較

改正前民法166条1項は,「消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。」と定め,改正前民法167条1項は,「債権は、十年間行使しないときは、消滅する。」と定めていた。
改正前民法の原則は客観的起算点から10年だけであり,主観的起算点からの5年という期間はなかった。
その代わりに,改正前民法169条~174条と改正前商法522条が,多くの債権について10年より短い期間を定めていた。

第3 短期消滅時効と商事消滅時効の廃止

1 廃止された規定

改正前民法が定めていた主な短期消滅時効は,次のとおりである。

条文対象となる債権(要旨)期間
改正前民法169条年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権(定期給付債権)5年
改正前民法170条医師・助産師・薬剤師の診療・助産・調剤に関する債権,工事の設計・施工・監理を業とする者の工事に関する債権3年
改正前民法172条弁護士・弁護士法人・公証人の職務に関する債権2年
改正前民法173条生産者・卸売商人・小売商人が売却した産物・商品の代価,注文を受けて物を製作する者等の仕事に関する債権,教育を行う者が生徒の教育・衣食・寄宿の代価について有する債権2年
改正前民法174条月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料,労力の提供・演芸を業とする者の報酬,運送賃,旅館・料理店・飲食店等の宿泊料・飲食料等,動産の損料1年
改正前商法522条商行為によって生じた債権(他の法令に5年より短い定めがあるときはその定めによる)5年

改正により,改正前民法169条の定期給付債権の規定は削られて同条は判決で確定した権利の規定(改正前民法174条の2に相当する規定)に置き換えられ,現行民法170条~174条は「削除」となっている。
改正前商法522条も,民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成29年法律第45号。以下「整備法」という。)により削除され,現行商法では522条・523条が「削除」となっている。
改正前民法171条は,弁護士・公証人が職務に関して受け取った書類についての責任の期間を定めた規定であり,債権の消滅時効ではない。

2 廃止の理由

法務省のパンフレットは,改正前の民法について,消滅時効期間を「原則10年であるとしつつ,例外的に,職業別のより短期の消滅時効期間(弁護士報酬は2年,医師の診療報酬は3年など)を設けていました。」と説明した上で,改正により,より合理的で分かりやすいものとするため,職業別の短期消滅時効の特例を廃止したとしている。
同パンフレットは,職業別の短期消滅時効の例として,医師の診療報酬3年,弁護士の報酬2年,飲食代金1年,動産のレンタル代金1年,商取引債権5年を挙げ,新しいルールでは原則5年,ケースによっては最長10年となると整理している。

短期消滅時効の廃止によって,同じ職業の債権でも,どの号に当たるかを争う必要がなくなった。
他方で,飲食代金や運送賃のように従来1年で消滅していた債権は,令和2年4月1日以後に生じたものであれば5年間存続することになり,債務者側から見ると時効期間が大幅に延びた。

3 経過措置

令和2年3月31日以前に生じた債権,又はその原因である法律行為が同日以前にされた債権の時効期間は,改正前民法による(平成29年法律第44号附則10条1項・4項)。
施行日前にされた商行為によって生じた債権の時効期間も,改正前商法522条による(整備法4条7項)。
したがって,古い債権については,現在でも短期消滅時効や改正前民法167条1項の10年を検討しなければならないことがある。
経過措置の詳細と振り分け表は,消滅時効は改正前民法と改正後民法のどちらで判断するか―附則10条・35条の経過措置と振り分け表で説明する。

4 公立病院の診療報酬に関する最高裁平成17年判決

短期消滅時効と公法上の時効期間の関係について,最高裁判所第二小法廷平成17年11月21日判決(平成17年(受)第721号,民集59巻9号2611頁)がある。
同判決は,「公立病院において行われる診療は,私立病院において行われる診療と本質的な差異はなく,その診療に関する法律関係は本質上私法関係というべきであるから,公立病院の診療に関する債権の消滅時効期間は,地方自治法236条1項所定の5年ではなく,民法170条1号により3年と解すべきである。」と判示した。
ここでいう民法170条1号は,改正前民法170条1号(医師の診療に関する債権の3年)である。

同判決の考え方は,地方公共団体が債権者であっても,債権の性質が私法上のものであれば,地方自治法236条1項ではなく民法の時効期間が適用されるというものである。
改正後は改正前民法170条が削除されたから,令和2年4月1日以後の公立病院の診療報酬債権は,同判決の考え方によれば民法166条1項によることになると考えられる。
地方自治法236条2項は,同条が適用される債権について援用を要しないとしているから,どちらの規定によるかは,期間だけでなく援用の要否にも影響する。

第4 定期金債権

1 民法168条

民法168条1項は,定期金の債権について,1号で「債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができることを知った時から十年間行使しないとき。」,2号で「前号に規定する各債権を行使することができる時から二十年間行使しないとき。」に時効によって消滅すると定める。
定期金の債権とは,年金や終身定期金のように,一定期間にわたって定期に金銭その他の物を給付させることを目的とする基本的な権利をいい,そこから毎期に発生する個々の支払請求権(支分権)とは区別される。
同条2項は,定期金の債権者が,時効の更新の証拠を得るため,いつでも債務者に対して承認書の交付を求めることができるとする。

2 改正前民法との違い

改正前民法168条1項は,「定期金の債権は、第一回の弁済期から二十年間行使しないときは、消滅する。最後の弁済期から十年間行使しないときも、同様とする。」と定めていた。
改正後は,第1回の弁済期ではなく,各支分権を行使することができる時又はそれを知った時を基準とする形に改められた。

毎期に発生する個々の支払請求権(賃料,マンションの管理費等)は,改正前民法の下では定期給付債権として169条の5年の対象であったが,改正後は民法166条1項の一般原則による。
これに対し,元本を分割して返済する約束の貸金の各回の分割金は,一個の債権を分割して支払うものにすぎず,一般に定期給付債権には当たらないと解されてきたから,混同しないよう注意を要する。
放送受信料について改正前民法169条を適用した最高裁判例は,NHK受信料の消滅時効は5年―最高裁平成26年9月5日判決と大法廷平成29年12月6日判決の起算点で扱う。

第5 分野別の時効期間

1 一覧表

民法166条1項の原則とは別の期間が定められている主な債権は,次のとおりである。
いずれも令和8年9月19日時点の現行条文による。

債権の種類期間と起算点根拠条文
人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権(債務不履行構成)知った時から5年,権利を行使することができる時から20年民法166条1項・167条
不法行為による損害賠償請求権損害及び加害者を知った時から3年,不法行為の時から20年民法724条
人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権損害及び加害者を知った時から5年,不法行為の時から20年民法724条・724条の2
確定判決等によって確定した権利10年(確定の時に弁済期が到来していない債権を除く)民法169条
定期金の債権各債権を行使することができることを知った時から10年,行使することができる時から20年民法168条
債権・所有権以外の財産権権利を行使することができる時から20年民法166条2項
労働基準法上の賃金(退職手当を除く)行使することができる時から3年(当分の間)労働基準法115条・附則143条3項
退職手当行使することができる時から5年労働基準法115条・附則143条3項
労働基準法上の災害補償その他の請求権(年次有給休暇を含む)行使することができる時から2年(令和9年4月1日以後,政令で定める疾病に係る災害補償は5年)労働基準法115条(令和9年4月1日以後は同条1項・2項)
労災保険の療養補償給付・休業補償給付等行使することができる時から2年(令和9年4月1日以後,政令で定める疾病は5年)労働者災害補償保険法42条(令和9年4月1日以後は同条1項)
労災保険の障害補償給付・遺族補償給付等行使することができる時から5年労働者災害補償保険法42条(令和9年4月1日以後は同条2項)
保険給付請求権・保険料返還請求権等行使することができる時から3年保険法95条1項
保険料請求権行使することができる時から1年保険法95条2項
自賠責保険の被害者請求権等損害及び保有者を知った時から3年自動車損害賠償保障法19条
国の金銭債権・国に対する金銭債権行使することができる時から5年(他の法律に規定がないもの)会計法30条
普通地方公共団体の金銭債権・普通地方公共団体に対する金銭債権行使することができる時から5年(他の法律に定めがあるものを除く)地方自治法236条1項
国税の徴収権法定納期限から5年国税通則法72条1項
地方税の徴収権法定納期限の翌日から起算して5年地方税法18条1項
相続回復請求権相続権を侵害された事実を知った時から5年,相続開始の時から20年民法884条
遺留分侵害額請求権相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年,相続開始の時から10年民法1048条

2 人身損害と不法行為

人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権は,債務不履行構成でも不法行為構成でも,知った時から5年・20年に揃えられている。
債務不履行構成では民法167条が166条1項2号の「十年間」を「二十年間」と読み替え,不法行為構成では民法724条の2が724条1号の「三年間」を「五年間」と読み替える。
構成ごとの違いと選び方は人身損害の消滅時効の特則―民法167条・724条の2と債務不履行構成・不法行為構成の選び方で,不法行為の起算点は不法行為の損害賠償請求権の消滅時効―3年・5年・20年と「損害及び加害者を知った時」の意義で扱う。

3 判決で確定した権利

確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利は,10年より短い時効期間の定めがあるものであっても,時効期間が10年となる(民法169条1項)。
改正前民法169条は定期給付債権の5年の規定であり,現行民法169条とは条番号が同じでも内容がまったく異なる。
詳細は判決で確定した債権の消滅時効は10年―民法169条と改正前169条(定期給付債権)の違いで説明する。

4 賃金

労働基準法115条は,賃金の請求権を5年,災害補償その他の請求権を2年と定めるが,同法附則143条3項が,当分の間,退職手当を除く賃金の請求権を3年と読み替えている。
賃金の時効は民法ではなく労働基準法によるから,民法166条1項の5年は適用されない。
労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第60号)により,令和9年4月1日から労働基準法115条は2項に分かれ,災害補償の請求権は原則2年のまま,政令で定める疾病に係るものは5年となる(附則143条3項は「第百十五条第一項」の読替えに改められ,賃金の3年と退職手当の5年は変わらない。)。
労災保険給付の請求権(労働者災害補償保険法42条)も,同日から,療養補償給付・休業補償給付等のうち政令で定める疾病に係るものが2年から5年となる。
いずれも,施行日前に生じた当該疾病に相当する疾病による事故を原因とする請求権は従前の例による(同法附則5条・9条)。
読替えの経緯,付加金,記録保存期間との関係は賃金・残業代の消滅時効は3年か5年か―労働基準法115条・附則143条の読替えと撤廃論議で扱う。

5 保険

保険法95条1項は,保険給付を請求する権利,保険料の返還を請求する権利等は,「これらを行使することができる時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。」と定め,同条2項は,保険料を請求する権利を1年としている。
保険金請求権の起算点は約款上の履行期との関係で問題になり,保険金請求権の消滅時効の起算点―保険会社の調査による履行期の延期と最高裁平成20年2月28日判決で扱う。
自賠責保険の請求権の時効は,自賠責保険の被害者請求・加害者請求の消滅時効―3年の起算点,時効中断申請書及び時効完成後の回収方法で説明する。

6 国・地方公共団体の金銭債権と租税

会計法30条は,金銭の給付を目的とする国の権利で時効に関し他の法律に規定がないものを,行使することができる時から5年で時効消滅するとし,国に対する金銭債権も同様とする。
地方自治法236条1項も,普通地方公共団体の金銭債権と普通地方公共団体に対する金銭債権について,他の法律に定めがあるものを除き5年と定める。

これらの規定による時効には,民法と異なる特色がある。
会計法31条1項と地方自治法236条2項は,法律に特別の定めがある場合を除き,時効による消滅について「時効の援用を要せず、また、その利益を放棄することができないものとする。」と定めている。
地方自治法236条4項は,「法令の規定により普通地方公共団体がする納入の通知及び督促は、時効の更新の効力を有する。」と定めており,民法150条の催告が6か月の完成猶予にとどまるのとは効果が異なる。

国税の徴収権は法定納期限から5年(国税通則法72条1項),地方税の徴収権は法定納期限の翌日から起算して5年(地方税法18条1項)で時効消滅し,いずれも援用を要しない(国税通則法72条2項,地方税法18条2項)。
前記第3の4のとおり,地方公共団体が債権者であっても,私法上の債権には民法が適用されると解されるから,債権の性質の確認が先決である。

7 相続関係

相続回復の請求権は,相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年,相続開始の時から20年で消滅する(民法884条)。
遺留分侵害額の請求権は,遺留分権利者が相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年,相続開始の時から10年で消滅する(民法1048条)。
相続回復請求権は相続回復請求権とは――表見相続人,共同相続人,5年・20年の時効と取得時効で,遺留分侵害額請求権の期限は遺留分侵害額請求の期限と手続―内容証明・交渉・調停・訴訟・必要書類で扱っている。

第6 時効期間を確認するときの手順

1 確認の順序

実務で時効期間を確認するときは,次の順序で確認すると漏れが少ない。
①債権がいつ生じたか(原因である契約がいつ締結されたか)を特定し,改正前民法・改正前商法と改正後民法のどちらが適用されるかを決める。
②債権の種類について,労働基準法,労働者災害補償保険法,保険法,自動車損害賠償保障法,会計法,地方自治法,国税通則法,地方税法その他の特別の定めがないかを確認する。
③人身損害であれば民法167条・724条の2の特則,判決等で確定した権利であれば民法169条の適用を確認する。
④起算点(弁済期,損害及び加害者を知った時等)を特定し,主観的起算点と客観的起算点の両方から満了日を計算する。
⑤完成猶予・更新の事由(訴えの提起,差押え,催告,協議合意,承認等)がないかを確認する。

2 計算の例

令和4年(2022年)9月30日に弁済期が到来した売買代金債権は,改正後民法が適用され,債権者が弁済期を知っていれば,令和9年(2027年)9月30日の終了で5年の時効期間が満了する。
平成31年(2019年)3月31日に弁済期が到来した小売商人の商品代金債権は,改正前民法173条1号の2年が適用され,中断等がなければ令和3年(2021年)3月31日の終了で時効期間が満了している。
同じ日に弁済期が到来した個人間の貸金債権は,改正前民法167条1項の10年が適用され,令和11年(2029年)3月31日の終了まで時効期間が満了しない。

時効期間が満了しても,債務者が援用しなければ裁判所は時効による消滅を前提に裁判をすることができない(民法145条)。
援用前に債務を承認すると援用が許されなくなることがあり,この点は時効完成後に債務を承認・一部弁済したら時効を援用できないか―最高裁昭和41年4月20日大法廷判決と再度の時効で扱う。
時効の進行を止める方法は,時効の完成猶予と更新の違い―旧法の中断・停止との対応関係と事由の一覧で整理している。

第7 関連記事

消滅時効全体の見取り図は,消滅時効に関するメモ書きにある。
新旧民法の振り分けは,消滅時効は改正前民法と改正後民法のどちらで判断するか―附則10条・35条の経過措置と振り分け表で扱う。
遺留分の制度全般は遺留分に関するメモ書きに,医療事件の時効は医療過誤事件の調査・立証・判例・消滅時効にまとめている。
相続の使途不明金の時効は,相続の使途不明金の消滅時効―請求原因・起算点・旧法の見分け方で説明している。

第8 出典・参考資料

1 法令

①民法(明治29年法律第89号)140条,145条,150条,166条~169条,724条,724条の2,884条,1048条(e-Gov法令検索で令和8年6月24日施行時点の現行条文を取得して確認)
②改正前民法166条~174条(e-Gov法令検索で令和2年3月1日施行時点の条文を取得して確認)
③改正前商法522条(e-Gov法令検索で平成31年4月1日施行時点の条文を取得して確認)
④民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)附則10条(e-Gov法令検索の民法の改正附則で確認)
⑤民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成29年法律第45号)4条7項(衆議院ウェブサイト掲載の法律本文で確認)
⑥労働基準法115条,附則143条(現行条文及び令和9年4月1日施行予定の条文を確認)
⑦保険法95条
⑧自動車損害賠償保障法19条
⑨会計法30条,31条
⑩地方自治法236条
⑪国税通則法72条
⑫地方税法18条
⑬労働者災害補償保険法42条(現行条文及び令和9年4月1日施行予定の条文を確認)
⑭労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第60号)附則1条,5条,9条(e-Gov法令検索の労働者災害補償保険法及び労働基準法の改正附則で確認)

2 裁判例

①最高裁判所第二小法廷平成17年11月21日判決(平成17年(受)第721号,民集59巻9号2611頁)(裁判所HP

3 公的資料

法務省「民法(債権法)改正」パンフレット(全般)
法務省「民法の一部を改正する法律(債権法改正)について」