消滅時効に関するメモ書き

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目次
1 消滅時効の起算点に関するメモ書き
2 消滅時効の中断に関するメモ書き
3 関連記事その他

1 消滅時効の起算点に関するメモ書き
(1) 後遺障害部分の損害賠償金の場合
ア 不法行為による受傷の後遺症が顕在化したのちにおいて,症状は徐々に軽快こそすれ,悪化したとは認められないなど,受傷したのちの治療経過が原審認定のとおりである場合には,右後遺症が顕在化した時が民法724条にいう損害を知った時にあたり,その時から後遺症に基づく損害賠償請求権の消滅時効が進行します(最高裁昭和49年9月26日判決)。
イ 交通事故により負傷した者が,後遺障害について症状固定の診断を受け,これに基づき自動車保険料率算定会に対して自動車損害賠償責任保険の後遺障害等級の事前認定を申請したときは,その結果が非該当であり,その後の異議申立てによって等級認定がされたという事情があったとしても,上記後遺障害に基づく損害賠償請求権の消滅時効は,遅くとも上記症状固定の診断を受けた時から進行します(最高裁平成16年12月24日判決)。
(2) 物損の損害賠償金の場合
・ 交通事故による車両損傷を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権の民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条前段所定の消滅時効は,身体傷害を理由とする損害が生じた場合であっても,被害者が上記車両損傷を理由とする損害を知った時から進行します(最高裁令和3年11月2日判決)。
(3) 車両保険金の場合
・ 自家用自動車総合保険契約の被保険者が保険会社に対し車両保険金の支払を請求し,その保険契約に適用される約款に基づく履行期が到来した場合に,保険会社から被保険者に対し,その請求についてはなお調査中であり,調査に協力を求める旨記載した書面(協力依頼書)が送付され,その後,保険会社から被保険者に対し,調査への協力には感謝するが,請求には応じられない旨記載した書面(免責通知書)が送付されたなどといった事実関係の下では,協力依頼書の送付行為は,上記約款に基づく履行期について調査結果が出るまで延期することを求めるものであり,被保険者は,調査に協力することにより,これに応じたものであって,上記保険金に係る請求権の履行期は,合意によって,免責通知書が被保険者に到達した日まで延期されたというべきであり,その消滅時効の起算点はその翌日となります(最高裁平成20年2月28日判決)。
(4) NHK受信料の場合
・ 受信契約に基づき発生する受信設備の設置の月以降の分の受信料債権(受信契約成立後に履行期が到来するものを除く。)の消滅時効は、受信契約成立時から進行します(最高裁大法廷平成29年12月6日判決)。

2 消滅時効の中断に関するメモ書き
(1) 不真正連帯債務の場合
    民法719条所定の共同不法行為者が負担する損害賠償債務は,いわゆる不真正連帯債務であって連帯債務ではないから,右損害賠償債務については連帯債務に関する民法436条(「連帯債務者に対する履行の請求」であり,従前の民法434条です。)の規定は適用されません(最高裁昭和48年2月16日判決及び最高裁昭和48年1月30日判決参照)。
    また,共同不法行為が行為者の共謀にかかる場合であっても,民法436条は適用されません(最高裁昭和57年3月4日判決)。
    そのため,不真正連帯債務の場合,履行の請求に基づく時効消滅の効果は他の債務者には及ばないこととなります。
(2) 貸金の場合
・  同一の当事者間に数個の金銭消費貸借契約に基づく各元本債務が存在する場合において,借主が弁済を充当すべき債務を指定することなく全債務を完済するのに足りない額の弁済をしたときは,当該弁済は,特段の事情のない限り,上記各元本債務の承認として消滅時効を中断する効力を有します(最高裁令和2年12月15日判決)。
(3) 一部請求の場合
・ 数量的に可分な債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えが提起された場合,債権者が将来にわたって残部をおよそ請求しない旨の意思を明らかにしているなど,残部につき権利行使の意思が継続的に表示されているとはいえない特段の事情のない限り,当該訴えの提起は,残部について,裁判上の催告として消滅時効の中断の効力を生じ,債権者は,当該訴えに係る訴訟の終了後6箇月以内に民法153条所定の措置を講ずることにより,残部について消滅時効を確定的に中断することができます(最高裁平成25年6月6日判決)。
(4) 訴えの取下げの場合
・ 訴えの取下げが,権利主張を止めたものでもなく,権利についての判決による公権的判断を受ける機会を放棄したものでもないような場合には,訴えを取り下げても訴えの提起による時効中断の効力は存続します(最高裁昭和50年11月28日判決)。
(5) 債権執行の場合
ア  債権執行における差押えによる請求債権の消滅時効の中断の効力が生ずるためには,その債務者が当該差押えを了知し得る状態に置かれることを要しません(最高裁令和元年9月19日判決)。
イ 債権執行の申立てをした債権者が当該債権執行の手続において配当等により請求債権の一部について満足を得た後に当該申立てを取り下げた場合,当該申立てに係る差押えによる時効中断の効力が民法154条により初めから生じなかったことになるわけではない(高松高裁平成29年11月30日決定)のであって,このように解することは最高裁平成11年9月9日判決と相反するものではありません(最高裁平成30年12月18日決定)。
(6) 不動産競売の場合
・  不動産競売手続において建物の区分所有等に関する法律66条で準用される同法7条1項の先取特権を有する債権者が配当要求をしたことにより,上記配当要求における配当要求債権について,差押え(平成29年法律第44号による改正前の民法147条2号)に準ずるものとして消滅時効の中断の効力が生ずるためには,民事執行法181条1項各号に掲げる文書により上記債権者が上記先取特権を有することが上記手続において証明されれば足り,債務者が上記配当要求債権についての配当異議の申出等をすることなく売却代金の配当又は弁済金の交付が実施されるに至ったことを要しません(最高裁令和2年9月18日判決)。
(7) 地方税の場合
・  被相続人に対して既に納付又は納入の告知がされた地方団体の徴収金につき,納期限等を定めてその納付等を求める旨の相続人に対する通知は,これに係る地方税の徴収権について,地方税法18条の2第1項1号に基づく消滅時効の中断の効力を有しません(最高裁令和2年6月26日判決)。

3 民法158条1項の類推適用
・ 時効の期間の満了前6箇月以内の間に精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者に法定代理人がない場合において,少なくとも,時効の期間の満了前の申立てに基づき後見開始の審判がされたときは,民法158条1項の類推適用により,法定代理人が就職した時から6箇月を経過するまでの間は,その者に対して,時効は,完成しません(最高裁平成26年3月14日判決)。

4 関連記事その他
(1) 令和2年3月31日までに発生した治療費の消滅時効は,民法170条1号に基づき公立病院の治療費も含めて3年でした(最高裁平成17年11月21日判決)ところ,令和2年4月1日以降に発生した治療費の消滅時効は5年になっています(民法166条1項1号)。
(2) 弁護士による企業法律相談HPに債権回収時効一覧表が載っています。
(3)  抵当権の被担保債権が免責許可の決定の効力を受ける場合には,民法396条は適用されず,債務者及び抵当権設定者に対する関係においても,当該抵当権自体は同法167条2項所定の20年の消滅時効にかかります(最高裁平成30年2月23日判決)。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 損益相殺

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