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第一種市街地再開発事業の変更認可・権利変換処分・明渡請求で主張できる違法―東京地裁平成20年12月25日判決と東京高裁平成21年9月16日判決(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

1 対象

本記事は,独立行政法人都市再生機構が施行した第一種市街地再開発事業について,施行規程及び事業計画の変更の認可,権利変換処分及び明渡請求処分の取消し等が争われた東京地裁平成20年12月25日判決(平成17年(行ウ)第622号等)と,その控訴審の東京高裁平成21年9月16日判決(平成21年(行コ)第38号)を,裁判所ウェブサイトに掲載された判決全文に基づいて紹介するものである。
両判決は,再開発事業の各段階の行為のうち,どれが取消訴訟の対象となり,後の段階の取消訴訟でどの違法を主張できるかを具体的に判断しており,地権者の代理人が争う対象と期限を決めるときの参考になる。
条文は令和8年10月4日時点の都市再開発法で確認し,判決当時の条番号と異なるものはその旨を示した。

2 結論

両判決の判断の骨格は次のとおりである。

①当初の施行規程及び事業計画の認可(以下「事業計画等の認可」という。)は,抗告訴訟の対象となる処分に当たる。
②新たな施行地区の編入を伴わない事業計画等の変更の認可は,処分に当たらない。
ただし,その違法は,後続の権利変換処分の取消訴訟で主張できる。
③事業計画等の認可の違法(その前提となる都市計画決定の違法を含む。)は,権利変換処分の取消訴訟では主張できない。
ただし,控訴審は,事業計画等の認可が無効であれば,後続処分の取消訴訟で無効事由として争えるとした。
④明渡請求処分の取消訴訟では,明渡請求処分に固有の違法しか主張できない。

両判決は,違法性の承継について判断した最高裁平成21年12月17日判決より前のものであり,現在の再開発紛争では,同判決の判断枠組みとの関係に注意を要する(第6)。

第2 事案の概要

1 事業と当事者

東京都小金井市内の駅南口の約3.4ヘクタールの区域で,都市再生機構を施行者とする第一種市街地再開発事業が行われた(判決文では「α駅南口第1地区」と表記されている。)。
施行地区内に宅地及び建物を所有していた地権者の一部が事業に反対し,各段階の行為の取消し等を求めた。
判決文では当事者の氏名等は匿名化されており,本記事も当事者を特定しない。

2 手続の経過

時期行為
平成14年9月27日小金井市が高度利用地区等の都市計画を,東京都が第一種市街地再開発事業の都市計画を決定
平成17年1月12日国土交通大臣が施行規程及び事業計画を認可して公告(本件事業認可)
平成17年8月1日国土交通大臣が施行規程及び事業計画の変更を認可して公告(本件変更認可)。変更の内容は,施設建築物の設計の概要(延べ面積の増加,1棟の形状の変更等),事業施行期間の延長及び事務所の所在地であり,軽微な変更として縦覧手続は行われなかった
平成17年12月1日・2日国土交通大臣が権利変換計画を認可し,都市再生機構が権利変換処分(権利変換期日は平成18年1月28日)
平成18年2月3日都市再生機構が明渡請求処分(都市再開発法96条1項)

地権者らは,本件変更認可,権利変換処分及び明渡請求処分の取消しを求め,都市再生機構は建物の明渡しを求めた。
東京地裁は,本件変更認可の取消しの訴えを却下し,その他の取消請求を棄却し,明渡請求を認容した。
東京高裁は,原判決の理由の一部を改めた上で,控訴を棄却した。
上告の有無及び判決の確定の有無は,裁判所ウェブサイトでは確認できなかった。

第3 処分性の判断

1 当初の事業計画等の認可は処分に当たる

東京地裁は,土地区画整理事業の事業計画の決定について処分性を認めた最高裁平成20年9月10日大法廷判決の考え方に沿って,次の点を挙げた。

①事業計画等の認可の公告があると,施行地区内での土地の形質の変更や建築物の新築等が都道府県知事の許可制となり(都市再開発法60条2項5号・66条1項),権利変換手続開始の登記がされると,宅地等の処分に施行者の承認が必要となる(同法70条)。
②事業計画には施行地区,設計の概要,事業施行期間及び資金計画が定められ,設計の概要には施設建築物等の平面図又は断面図が含まれるから,事業の施行によって宅地所有者等の権利にいかなる影響が及ぶかを,一定の限度で具体的に予測できる。
③特段の事情のない限り,土地調書及び物件調書の作成,権利変換計画の作成を経て権利変換処分に至り,建築行為等の制限や処分の制限は,その障害を防ぐために権利変換期日まで続く。
④宅地の所有者等は,公告の日から30日以内に,権利変換を受けるか,金銭の給付を受けて施行地区外へ転出するかの選択を余儀なくされる(同法71条1項)。

その上で,宅地の所有者等は,事業計画等の認可によって権利変換処分を受けるべき地位に立たされるから,公告された事業計画等の認可は処分に当たるとした。
東京高裁は,これに加えて,施行者が事業計画等の認可によって具体的な事業の遂行権限を付与されること(都市再開発法58条2項により,都市計画法59条4項の認可とみなされる。)も理由に挙げた。

2 編入を伴わない変更認可は処分に当たらない

両判決は,事業計画等の変更の認可について,次のように判断した。

建築行為等の制限や処分の制限は「60条2項各号に掲げる公告」があった場合に生ずるところ,機構等が施行する事業について同項5号が掲げるのは,事業計画等の認可の公告と「新たな施行地区の編入に係る事業計画の変更の認可の公告」である。
権利変換を希望しない旨の申出も,事業計画を変更して従前の施行地区外の土地を新たに施行地区に編入した場合に限って,改めて認められる(判決当時の都市再開発法71条6項。現行法では同条5項が同じ文言の規定である。)。
したがって,新たな施行地区の編入を伴わない変更の認可は,公告されても新たな法的効果を生じず,当初の事業計画等の認可の効果が残っているにすぎないから,処分に当たらないとした。

東京地裁は,そう解しても,変更の認可の適法性を争う者は,後続の権利変換処分の取消訴訟でその違法を主張できるから,救済に欠けることにはならないとした。
また,変更が当初の施設建築物の構造等を抜本的に変え,変更後の事業計画が当初の事業計画と同一性を欠き,新たな事業計画等の決定と評価せざるを得ない場合には,別に解する余地があるとした。
本件変更認可は,施設建築物の設計の概要,施行期間及び事務所の所在地に関するもので,新たな施行地区の編入を伴わず,同一性を欠くものでもないとして,その取消しの訴えは却下された。

3 組合施行の事業への当てはめ

本件は都市再生機構が施行者であったが,都市再開発法60条2項は,施行者の種類ごとに同じ構造の規定を置いている。
市街地再開発組合が施行する事業については,同項2号が「第十九条第一項の公告又は新たな施行地区の編入に係る事業計画の変更の認可の公告」を掲げている。
そのため,組合施行の事業でも,両判決の論理によれば,事業計画の変更の認可の処分性を検討するときは,まず新たな施行地区の編入を伴うかどうかを確かめることになると考えられる。

第4 どの取消訴訟でどの違法を主張できるか

1 都市計画決定の違法

東京地裁は,高度利用地区及び市街地再開発事業に係る都市計画決定は,それ自体では直接国民の権利義務を形成するものではなく,抗告訴訟の対象とならないから,その違法は事業計画等の認可の取消訴訟で主張することができるとした。
東京高裁も,都市計画決定の違法は事業計画等の認可の違法事由として考慮されるとした。

2 事業計画等の認可から権利変換処分へ

東京地裁は,事業計画等の認可は事業全体の概要を示して施行地区内の権利を包括的に制限するものであるのに対し,権利変換処分は権利変換を受ける者の権利の個別具体的な帰すうを定めるものであるから,両者が連続した一連の手続を構成して一定の法律効果の発生を目指すものとは評価できないとした。
また,事業計画等の認可の公告があったときは,施行者は関係権利者に事業の概要を周知させるため必要な措置を講ずることとされているから(都市再開発法67条),その段階で認可の取消訴訟を提起すべきと解しても,権利の保護に欠けるところはないとした。
そのため,事業計画等の認可の違法は,その前提となる都市計画決定の違法も含めて,権利変換処分の取消訴訟では主張できないとした。

東京高裁は,この部分の理由を改め,違法性の承継が認められるのは,一定の法律効果のために複数の処分が連続した一連の手続を構成し,後行処分においても先行処分と同様の違法性審査が予定される場合であるとした。
その上で,事業計画等の認可と権利変換処分は,再開発事業を構成する一連の手続ではあるが,それぞれ異なる法的効果を有し,先行処分の効果を確定させ,これを前提に後行処分がされる関係にあるから,これに当たらないとした。

3 編入を伴わない変更認可の違法は権利変換処分の取消訴訟で主張できる

両判決は,独立して取消訴訟で争えない変更の認可については,関係権利者の権利保護の必要から,その違法を権利変換処分の取消訴訟で主張することが許されるとした。
他方,変更の認可は当初の事業計画等と一体となった計画全体の新たな認可であり,当初の認可の違法も変更の認可の違法になるという地権者の主張は,法が編入を伴わない変更に特段の法的効果を付与していないことを理由に退けられた。

4 明渡請求処分

東京地裁は,明渡請求処分は事業計画等の認可や権利変換処分とは性格の異なる処分であり,明渡請求処分に至る前の段階で先行処分について抗告訴訟を提起することを期待しても酷ではないとして,明渡請求処分の取消訴訟では先行処分の違法を主張できないとした。

5 無効事由の主張

東京高裁は,先行処分である事業計画等の認可が無効であれば,これを前提とする権利変換処分や明渡請求処分も適法な根拠を失うから,違法性の承継を論ずるまでもなく,後続処分の取消訴訟で無効事由として争うことができるとした。
その上で,都市計画決定及び事業計画等の認可の違法の主張を無効事由の主張として検討したが,いずれも退けた。

第5 本案の主な判断

1 軽微な変更と縦覧手続

地権者らは,本件変更認可により自己に割り当てられる権利床が不利に変わったのに,縦覧手続を経なかったのは違法であると主張した。
東京地裁は,事業計画は施行地区,設計の概要,事業施行期間及び資金計画を定めるもので,権利床の具体的な位置は権利変換計画で定める事項(都市再開発法73条1項1号)であるから,この主張は前提を欠くとした。
また,施設建築物の延べ面積の10分の1を超える増減を伴わない設計の概要の変更について縦覧を要しないとする政令の定め(都市再開発法施行令4条1項)は,事業計画の段階では設計の概要を定め,後に細部を変更することがあり得ることを予定した法の趣旨と整合し,不合理ではないとした。

2 権利変換計画の衡平

権利変換計画は,関係権利者間の利害の衡平に十分の考慮を払って定めなければならない(都市再開発法74条2項)。
東京地裁は,どの権利者に施設建築物のどの部分を与えるかは一義的に定まらず多数の選択肢があり得るから,権利変換計画の策定は施行者の裁量的判断に委ねられ,違法となるのは,その内容が法所定の各要素に照らして社会通念上不相当で,裁量権の逸脱・濫用がある場合であるとした。
駅からの距離だけで衡平を論ずる主張や,一筆の施設建築敷地の土地単価が同一であることを問題とする主張は,いずれも退けられた。

3 その他の争点

高度利用地区の壁面の位置の制限(都市計画法8条3項2号チ),施設建築物の駐車場の附置義務(東京都駐車場条例),権利変換計画に記載すべき失われる宅地等の価額(判決当時の都市再開発法73条1項12号。現行法では同項19号が同じ内容の規定と考えられる。)等についても判断がされたが,地権者らの主張はいずれも退けられた。

第6 最高裁平成21年12月17日判決との関係

両判決は,最高裁平成21年12月17日判決が違法性の承継について示した考慮要素,すなわち,先行処分と後行処分が同一の目的を達成するために行われ,両者が結合して初めてその効果を発揮するものであるかという点と,先行処分の適否を争うための手続的保障が十分に与えられているかという点が示される前の判断である。
東京地裁は,最高裁平成20年9月10日大法廷判決の補足意見を参照して,先行処分と後行処分が連続した一連の手続を構成し,一定の法律効果の発生を目指しているかどうかという基準を用いていた。

現在の再開発紛争では,平成21年判決の二つの観点を,事業計画等の認可と権利変換処分の関係に当てはめて検討することになる。
例えば,令和6年司法試験の公法系科目第2問は,新たな施行地区の編入を伴う事業計画の変更の認可と権利変換処分について,二つの観点から違法性の承継を肯定する立論を求めるものであった。
法務省の出題の趣旨は,肯定する論拠として,事業計画の段階では個々の宅地所有者等に与えられる権利床等の詳細が確定していないこと,縦覧・意見書提出手続や変更の認可の公告が個別に通知する制度ではないこと等を挙げている。

両判決が承継を否定した理由のうち,事業計画等の認可は事業全体の概要を定めるものであり,権利変換処分は個々の権利の帰すうを定めるものであるという点は,平成21年判決の実体法的観点でも否定する方向の事情として検討の対象になると考えられる。
また,都市再開発法67条の周知措置は,手続法的観点で否定する方向の事情として検討の対象になると考えられる。
したがって,地権者側が違法性の承継を主張するときは,両判決の存在を前提に,二つの観点から,当該事業の制度上の手続保障が十分かどうかを具体的に論ずる必要がある。
両判決が下級審の判断であり,上告の有無を確認できていないことにも留意を要する。

第7 地権者側の実務上の注意点

①事業計画等の認可と,新たな施行地区の編入を伴う変更の認可は,公告の日を起点に出訴期間(行政事件訴訟法14条)を管理する。
後の権利変換処分の取消訴訟でその違法を主張できるとは限らない。
②都市計画決定の違法は,事業計画等の認可の取消訴訟で主張することになる。
③変更の認可が新たな施行地区の編入を伴わないものであれば,両判決によれば,その違法は権利変換処分の取消訴訟で主張することになる。
④権利床の位置や配分の不服は,事業計画の段階ではなく,権利変換計画の縦覧期間内の意見書(都市再開発法83条2項)と権利変換処分の段階で争う。
⑤宅地等の価額の不服には,意見書を採択しない旨の通知を受けた日から30日以内に収用委員会に裁決を申請する手続(同法85条1項)がある。
⑥明渡請求処分の段階では,先行処分の違法は原則として主張できない。
⑦権利変換を希望しない旨の申出は公告の日から30日以内にしなければならず(同法71条1項),新たな施行地区の編入に係る事業計画の変更の認可の公告があると,その日から改めて30日の期間が始まる(同条4項・5項)。

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第9 出典及び確認状態

1 裁判例

①東京地裁平成20年12月25日判決(平成17年(行ウ)第622号等,裁判所ウェブサイト)
②東京高裁平成21年9月16日判決(平成21年(行コ)第38号,裁判所ウェブサイト)
③最高裁平成20年9月10日大法廷判決(平成17年(行ヒ)第397号,民集62巻8号2029頁)
④最高裁平成21年12月17日第一小法廷判決(平成21年(行ヒ)第145号,民集63巻10号2631頁)

2 法令

都市再開発法(58条,60条2項,66条1項,67条,70条,71条,73条1項,74条2項,83条2項,85条1項,96条1項),都市再開発法施行令4条1項,都市計画法59条4項,行政事件訴訟法14条(いずれもe-Gov法令検索で確認。都市再開発法は令和8年5月27日施行の版)

3 公式資料

法務省「令和6年司法試験の結果について」の「論文式試験出題の趣旨」(PDF。公法系科目〔第2問〕はPDF3頁〜5頁)

4 確認状態

①②の判決は,裁判所ウェブサイトの判決全文(①は73頁,②は13頁)で,本記事で紹介した判断部分を確認した。
③④の判決は,裁判所ウェブサイトの判決全文で,本記事で触れた理由の部分を確認した。
①②の判決の上告の有無及び確定の有無は確認できなかった(裁判所ウェブサイトの検索で上告審の裁判は見つからなかったが,そのことは上告審の裁判が存在しないことを意味しない。)。
判決当時の条番号と現行法の対応(71条6項と現行71条5項,73条1項12号と現行同項19号)は,規定の文言の一致から本記事が判断したものである。
都市再開発法には,令和8年11月26日及び令和9年5月26日に施行が予定されている改正(令和8年法律第23号)があるが,本記事で引用した条文の内容は変わらないことを,e-Gov法令検索の施行予定版で確認した。