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法律事務所のGoogle口コミ対応-依頼,謝礼,返信,守秘,広告及び証拠保存(AI作成)

法律事務所が依頼者へGoogle口コミを依頼すること自体は,一律に禁止されているわけではない。しかし,実際の体験に基づく任意の投稿であること,謝礼又は割引と交換しないこと,満足した依頼者だけを選別しないこと,事件内容又は受任関係を無断で公表しないことが重要である。

口コミへの返信は公開される。低評価に反論するためであっても,相談又は受任の有無,事件の内容,依頼者から受けた説明,費用の支払状況その他の秘密を,依頼者の投稿以上に明らかにすべきではない。

口コミ代行業者が架空の投稿を行い,又は口コミの件数・内容に応じて報酬を受ける場合,Googleのポリシー,弁護士広告及び第三者との提携関係を併せて検討する必要がある。

目次

第1 この記事の結論

  1. 口コミは,実際に相談又は依頼を経験した本人の任意の判断に委ねる。
  2. 投稿,星の数,書換え又は削除の見返りに利益を提供しない。
  3. 肯定的な感想を述べた依頼者だけを選んで依頼しない。
  4. 投稿内容,事件名,金額,結果又は表現を事務所側で指定しない。
  5. 口コミへの返信では,受任関係及び事件内容を新たに明らかにしない。
  6. 口コミ業者へアカウント又は依頼者情報を渡さない。
  7. 依頼方法,委託契約,支払,投稿URL及び対応経過を保存する。

第2 Googleが認める口コミ依頼と禁止する利益提供

1 口コミを依頼すること

Google Business Profileは,事業者が口コミ投稿用のリンク又はQRコードを用意し,利用者へ任意の投稿を依頼する方法を案内している。したがって,利用者へ中立的に口コミの投稿方法を知らせること自体は,Googleのポリシー上,直ちに禁止されていない。

もっとも,投稿は実際の体験を反映する必要がある。相談も依頼もしていない家族,職員,取引先又は知人に投稿を求めるべきではない。

2 謝礼,割引その他の利益を付けない

Googleは,口コミの投稿,既存口コミの変更又は低評価口コミの削除と引換えに,金銭,無料又は割引の商品・サービスその他の利益を提供することを,虚偽又は誤導的なコンテンツとして禁止している。

法律相談料の割引,着手金の減額,商品券,ポイント,紹介料又は抽選参加権等を口コミの条件とすべきではない。利益の価額が小さいことだけで許されるとは限らない。

3 肯定的な依頼者だけを選別しない

「満足した場合だけ星5を付けてください」「評価が4以下なら事務所へ直接連絡してください」等,肯定的な口コミだけを公開させる方法は,閲覧者が受け取る評価を人為的に偏らせる。

口コミを依頼する場合は,特定の評価又は内容を求めず,投稿しないことによる不利益がないことを明確にするのが望ましい。

第3 弁護士業務広告との関係

1 自ら掲載する「依頼者の声」

法律事務所が自らのウェブサイトへ依頼者の声を転載し,又は広告素材として使用する場合は,Google上に第三者が投稿した口コミが存在することとは別に,弁護士業務広告としての確認が必要になる。

依頼者を表示するには原則として書面による同意が必要であり,過去の事件を表示するときは,同意又は一般に知られている事件若しくは依頼者が特定されないことに加え,依頼者の利益を損なうおそれがないことを確認する。

2 架空口コミ及びAI生成口コミ

実在しない人物の推薦文,実際には受けていない相談又は依頼を体験したように述べる文章は,事実に合致しない広告となり得る。生成AIで作成したことを表示しても,架空の評価を実在の体験談のように見せる問題は解消しない。

文章の整理に生成AIを使う場合も,元となる依頼者本人の発言,同意した利用範囲及び最終文面を保存し,事実又は評価を追加していないことを確認する必要がある。

3 口コミ数又は星の数を成果として広告する場合

「地域で最も高評価」「顧客満足度第1位」等の表示は,比較対象,調査期間,母集団及び算定方法が不明確であれば,誤導,誇大又は比較広告の問題を生じ得る。

Google上の星の数は,投稿者の属性,相談と受任の区別,事件の難易度,投稿の真正性又は弁護士の能力を直接測定するものではない。AI検索が口コミを参照する可能性があることも,星の数を専門性又は勝訴可能性として表示する根拠にはならない。

第4 守秘義務及び個人情報

1 口コミ投稿を依頼する場面

事務所から連絡を送る際は,相談又は受任の際に取得した連絡先を口コミの依頼に利用できるか,利用目的及び連絡方法を確認する。事件終了後に一律の一斉送信を行う場合には,送信対象,送信内容,配信停止及び誤送信の防止を検討する。

口コミに事件名,裁判所,相手方,金額,傷病名その他の個人情報を書かないよう求めても,投稿者が自ら詳しい事情を記載することがある。そのため,依頼文では,事件又は関係者を特定できる情報を書かないよう案内することが望ましい。

2 返信で受任関係を認めない

口コミを書いた人物が実際の依頼者であっても,法律事務所が公開返信で「ご依頼ありがとうございました」と書けば,受任関係を事務所側から公表することになる。

低評価の内容が事実と異なる場合も,「あなたには何度も証拠を提出するよう求めた」「費用を払わなかった」「和解案を拒絶した」等と具体的に反論すれば,事件情報又は依頼者情報を新たに明らかにする危険がある。

公開返信は,「個別の相談又は事件の有無及び内容については回答できません。ご本人から事務所へご連絡いただいた場合には,記録を確認します」等の一般的な内容にとどめることが考えられる。

第5 低評価,虚偽投稿及び恐喝への対応

1 最初に証拠を保存する

問題となる口コミについて,投稿日,投稿者名,星の数,全文,投稿URL,プロフィールURL,返信及び画面全体を保存する。内容が変更又は削除される可能性があるため,確認日時も記録する。

2 Googleへ報告する

実体験に基づかない投稿,利害関係者による操作,なりすまし,個人情報,嫌がらせその他のポリシー違反がある場合は,該当する理由を特定してGoogleへ報告する。単に評価が低いという理由だけで削除されるものではない。

3 削除と引換えに金銭を要求された場合

低評価口コミの削除と引換えに金銭その他の利益を要求された場合は,支払又は個別交渉を先行させず,要求文,連絡先,日時及び口コミURLを保存する。Googleは口コミ恐喝専用の報告手続を案内している。

第6 口コミ代行業者へ委託する場合

口コミ代行,MEO,SEO又はLLMOという契約名だけで適否を判断することはできない。少なくとも次の事項を確認する。

  1. 投稿者が実際の相談者又は依頼者であるか
  2. 投稿の見返りに利益を提供しないか
  3. 肯定的な利用者だけを選別しないか
  4. 業者が文章,星の数又は投稿時期を指定しないか
  5. 事務所のアカウント又は依頼者一覧へアクセスするか
  6. 再委託先又は投稿者募集サイトを利用するか
  7. 報酬が口コミ件数,星の数,相談又は受任に連動するか
  8. 削除,契約終了及びデータ返還の方法

業者が架空アカウントを用い,又は第三者へ報酬を支払って投稿させる場合,Googleのポリシーに反する。業者任せにして事務所が方法を知らなかったという事情だけで,公開された広告又はアカウント管理についての説明責任がなくなるわけではない。

第7 実務上の依頼文及び返信文

1 口コミ依頼文の例

当事務所の対応について,Google上で任意にご感想をお寄せいただけます。投稿の有無又は評価内容によって,費用その他の取扱いが変わることはありません。事件名,相手方,裁判所,金額その他,ご自身又は関係者を特定できる情報は記載しないようお願いいたします。

これは法定の文言ではない。実際の運用,利用目的及び連絡方法に合わせて修正する必要がある。

2 公開返信の例

ご意見をお寄せいただきありがとうございます。当事務所は,守秘義務のため,公開の場で個別の相談又は事件の有無及び内容を確認することができません。ご本人から事務所へ直接ご連絡いただいた場合には,保存している記録を確認します。

この文例も,受任関係の存在を認める趣旨ではない。口コミの内容及び事務所の記録に応じて,返信しないことを含めて個別に判断する。

第8 保存する記録

  1. 口コミを依頼した対象者の範囲及び選定基準
  2. 依頼文,送信日及び送信方法
  3. 利益を提供していないことを確認できる費用・契約記録
  4. 投稿URL,確認日時及び画面
  5. 依頼者の声として転載する場合の同意書及び最終文面
  6. 外部業者との契約,仕様書,再委託先,請求書及び支払記録
  7. 低評価又は虚偽投稿に対する報告,返信及びGoogleとの連絡
  8. 恐喝その他の不正な要求があった場合の通信記録

弁護士業務広告に当たる利用については,広告内容,広告方法,業者との契約,入出金及び必要な同意を証する記録を,広告終了時から3年間保存する必要がある。

第9 一次資料及び判例の位置付け

Google口コミの投稿及び削除に関する仕様は,Google Business Profile及びGoogle Mapsの公式ポリシーが一次資料となる。弁護士広告については,日弁連の業務広告に関する規程及び指針が一次資料となる。

守秘義務及び個人情報については,具体的な投稿内容,投稿者,受任関係,返信内容及び利用目的によって評価が変わる。本記事を作成するに当たり,法律事務所によるGoogle口コミの依頼又は返信を直接扱った日本の裁判例は確認しておらず,判例秘書による網羅的な裁判例検索も行っていない。

第10 関連記事

第11 出典・参考資料

  1. Google Business Profile Help「Tips to get more reviews
  2. Google Maps User Generated Content Policy Help「Fake engagement
  3. Google Maps User Generated Content Policy Help「Maps user-generated content policy
  4. Google Business Profile Help「Report negative review extortion scams on your Business Profile
  5. 日本弁護士連合会「弁護士等の業務広告に関する規程
  6. 日本弁護士連合会「業務広告に関する指針」(令和8年2月19日改正)