第1 子供3人という人数だけでは養育費は決まらない
1 算定表が示すのは収入と年齢に応じた標準額である
本記事は,裁判所が令和元年12月23日に公表した養育費算定表6~9及びその説明を,AIを用いて相互に照合し,子供3人の場合に必要な部分へ絞って整理したものである。
子供が3人いるという事実だけでは月額を特定できず,①養育費を支払う義務者の年収,②養育費を受け取る権利者の年収,③3人の年齢区分によって,用いる表と標準額の幅が変わる。
民法766条1項は,離婚時に子の監護費用の分担を父母の協議で定めるものとし,同条2項は,協議が調わないとき又は協議できないときは家庭裁判所が定めるものとしている。
裁判所は,父母の収入,子の人数及び年齢その他一切の事情を考慮し,養育費算定表を一般に参照すると説明しているため,算定表は法律で定められた固定料金表ではなく,標準額を簡易迅速に確認するための資料である。
2 表6~9の帯は一人分ではなく3人分の合計である
表6~9の交差部分にある「8~10万円」,「10~12万円」などの帯は,子供一人当たりの金額ではなく,3人分を合計した標準的な月額である。
例えば,交差部分が「10~12万円」であっても,月額10万円~12万円を3人の各人に支払うという意味ではない。
一人当たり額を決めるときは,まず帯の中から3人分の合計額を定め,次に3人の生活費指数の割合で配分する。
全9表の関係,算定式及び特別事情を含む全体像は,養育費算定表の見方,計算方法及び法定養育費との違いで,子供2人の場合の表3~5と配分方法は,養育費算定表で子供2人はいくらかで説明している。
第2 表6・表7・表8・表9の選び方
1 15歳以上の子供の人数で4表から選ぶ
子供3人の場合は,現在15歳以上である子供の人数を数えれば,次のとおり使用する表が決まる。
「第1子」,「第2子」及び「第3子」は年長の子供から順に当てはめればよく,3人の年齢を合計又は平均して表を選ぶものではない。
| 3人の年齢構成 | 使用する表 | 生活費指数の組合せ |
|---|---|---|
| 3人とも0歳~14歳 | 表6 | 62・62・62 |
| 15歳以上が1人,0歳~14歳が2人 | 表7 | 85・62・62 |
| 15歳以上が2人,0歳~14歳が1人 | 表8 | 85・85・62 |
| 3人とも15歳以上 | 表9 | 85・85・85 |
したがって,5歳,10歳及び13歳なら表6,8歳,12歳及び16歳なら表7,10歳,15歳及び17歳なら表8,15歳,17歳及び19歳なら表9を用いる。
ここでいう15歳以上は算定表上の年齢区分であり,成年か未成年かを基準に選ぶものではない。
2 令和元年版の表と指数を一組で用いる
裁判所は,令和元年版算定表について,標準算定方式の基本的な枠組みを維持しつつ,最新の統計資料等により基礎収入の割合及び生活費指数を更新したものと説明している。
現在は,0歳~14歳を62,15歳以上を85とする令和元年版の指数を,同じ令和元年版の表6~9と一組で用いる。
平成15年版の旧算定表を前提とするウェブ記事には,現在と異なる指数が記載されていることがある。
旧指数を令和元年版の表へ混ぜると,一人当たり額の配分がずれるため,裁判所が現在掲載している表と説明を確認する必要がある。
第3 父母の収入から3人分の総額を読む方法
1 義務者の年収は縦軸,権利者の年収は横軸に当てはめる
表6~9では,養育費を支払う義務者の年収を縦軸に,受け取る権利者の年収を横軸に当てはめ,2本の線が交差する帯を読む。
給与所得者は縦軸の左側及び横軸の下側にある「給与」の目盛を,自営業者は縦軸の右側及び横軸の上側にある「自営」の目盛を使う。
給与所得者の総収入は,手取り額ではなく,源泉徴収票の「支払金額」であり,賞与,副業又は転職がある場合の確認方法は,養育費算定表に入れる給与年収で説明している。
自営業者は,確定申告書の「課税される所得金額」に,基礎控除,青色申告特別控除その他の実際には支出されていない費用を加算して総収入を定めるため,申告書の所得額をそのまま目盛へ入れるとは限らない。
給与所得と自営業所得を含む全体の確認方法は,親記事の総収入を確認する方法を参照されたい。
2 交差する帯から3人分の合計額を定める
父母の年収が交差する帯は,通常,「10~12万円」のように1万円又は2万円の幅を持つ。
この帯は標準額の範囲を示すものであり,その上限,下限又は中間額のいずれを採るかが算定表だけで自動的に決まるわけではない。
例えば,表7の交差部分が「10~12万円」であれば,まず3人分の合計額をその範囲から父母の合意又は家庭裁判所の判断によって定める。
次の一人当たり計算は,説明を明確にするため,3人分の合計額を月額10万円と定めた場合を例にする。
第4 3人分の総額から一人当たり額を計算する方法
1 総額に各人の生活費指数の割合を掛ける
裁判所の説明は,複数の子供がいる場合,算定表から得られた金額は全員分の合計であり,最終的には生活費指数の割合で各人へ配分して一人当たり額を定めるとしている。
計算式は,「3人分の合計額×その子の生活費指数÷3人の生活費指数の合計」である。
3人の指数合計は,表6では186,表7では209,表8では232,表9では255となる。
この分母を表に応じて取り替えれば,同じ年齢区分の子供は同額となり,15歳以上の子供には0歳~14歳の子供より大きな割合が配分される。
2 表6及び表9は原則として3分の1ずつにする
表6では3人の指数がいずれも62,表9ではいずれも85であるため,特別な配分事情がなければ,3人分の合計額を3分の1ずつにする。
合計額が月額10万円なら,数学上の一人当たり額は3万3333円3分の1であり,円単位に丸める例として,3万3334円,3万3333円,3万3333円とすれば合計10万円になる。
どの一人へ1円の端数を付けるかについて,算定表が一律の規則を定めているわけではない。
子供ごとの金額を取決めに記載する場合は,丸めた後の3人分が合計額と一致するようにする。
3 表7は85対62対62で配分する
表7では,15歳以上の子供の割合が85÷209で約40.67%,0歳~14歳の各子供の割合が62÷209で約29.67%となる。
合計額が月額10万円なら,15歳以上の子供は「10万円×85÷209」で約4万670円,0歳~14歳の各子供は「10万円×62÷209」で約2万9665円である。
この例を円単位に丸めると,4万670円,2万9665円,2万9665円となり,3人分の合計は10万円である。
表7の合計額を単純に3分の1ずつにすると,15歳以上と14歳以下の生活費指数の違いを反映できない。
4 表8は85対85対62で配分する
表8では,15歳以上の各子供の割合が85÷232で約36.64%,0歳~14歳の子供の割合が62÷232で約26.72%となる。
合計額が月額10万円なら,15歳以上の各子供は「10万円×85÷232」で約3万6638円,0歳~14歳の子供は「10万円×62÷232」で約2万6724円である。
この例を円単位に丸めると,3万6638円,3万6638円,2万6724円となり,3人分の合計は10万円である。
15歳以上の2人だけで10万円を2分の1ずつにするのではなく,最初に3人全員の指数合計232を分母にする点が計算上の要点である。
5 一人当たり額の早見表
3人分の合計を月額10万円とした場合の計算結果は,次のとおりである。
実際の事案では,先に父母の年収から3人分の合計額を定め,その金額を同じ割合で配分する。
| 使用する表 | 15歳以上の子供 | 0歳~14歳の子供 | 3人分の合計 |
|---|---|---|---|
| 表6 | 該当なし | 各3万3333円余り | 10万円 |
| 表7 | 1人が約4万670円 | 2人が各約2万9665円 | 10万円 |
| 表8 | 2人が各約3万6638円 | 1人が約2万6724円 | 10万円 |
| 表9 | 各3万3333円余り | 該当なし | 10万円 |
この早見表は,合計10万円を例に指数配分を示したものであり,子供3人の養育費が常に10万円になることを示すものではない。
算定表の帯が「10~12万円」であれば,10万円と12万円の各端点について同じ式を用いることで,一人当たり額の範囲を確認できる。
第5 年齢又は人数が変わった後の計算
1 一人が15歳になっても既存の月額は自動的には変わらない
新たに標準額を計算する時点で15歳以上の子供が増えれば,表6から表7,表7から表8,表8から表9へと使用する表が変わる。
しかし,誕生日を迎えたことだけで,既存の合意,調停又は審判に定められた月額が新しい表の金額へ自動的に書き換わるわけではない。
既存の取決めに年齢到達時の変更条項がなければ,まず父母で変更を協議し,合意できないときは家庭裁判所に増額又は減額の調停を申し立てる方法がある。
取決めを作る段階では,子供ごとの月額,支払終期及び15歳到達時の扱いを明記しておくと,後の変更対象を判別しやすい。
2 一人の支払終期が来た後は残る2人について計算し直す場合がある
一人の支払終期が来た後の月額は,常に従前の3人分の総額からその一人の配分額を引けばよいとは限らない。
子供ごとの月額と終期を既に明確に合意している場合はその取決めが出発点となるが,事情変更を理由に残る2人分の標準額を改めて算定する場合は,その時点の父母の収入と2人の年齢から表3~5を選び直す。
3人用の式から一人の指数だけを削る方法では,人数の変化に伴う基礎生活費の計算全体を反映できない。
残る2人の表選択と配分は,養育費算定表で子供2人はいくらか―表3~5の選び方と一人当たり額の計算を参照し,各人の支払終期については,養育費の支払終期と「未成熟子」の判断で説明している。
第6 表6~9をそのまま使えない場合
1 父母が3人の子供を分けて監護する場合
表6~9は,権利者が3人の子供を監護し,義務者がその3人分の養育費を支払う標準的な形を簡易に読むための表である。
父母が子供を分けて監護する場合は,表の帯を子供の人数で割ったり,相互の支払額を当然に相殺したりするだけでは,双方の収入差と各子供の年齢差を正確に反映できない。
分離監護の場合には,各親が監護する子供の生活費を双方の収入に応じて分担する計算が別に必要となる。
共同監護を含む監護形態と養育費の関係は,共同親権・共同監護と養育費で説明している。
2 再婚相手の子供又は別世帯の子供を機械的に3人へ数えない
表6~9の「子供3人」は,通常,権利者が監護し,義務者へ養育費を請求する対象の子供が3人である場面を指す。
義務者又は権利者が再婚し,別の扶養対象者がいるというだけで,その者を表6~9の3人へ機械的に加えたり,請求対象の一人と入れ替えたりするものではない。
再婚後の子供又は養子の存在は,扶養義務の有無,監護状況及び各世帯の収入を含む別の計算要素となり得る。
再婚及び養子縁組が養育費へ与える影響は,再婚・養子縁組と養育費で説明している。
3 標準額では著しく不公平となる特別事情がある場合
裁判所の説明によれば,算定表の標準額を超えて考慮するのは,その額では著しく不公平となる特別な事情がある場合に限られ,特別事情の内容,必要な費用及び父母の負担割合を具体的に検討する。
私立学校の学費,高額な医療費又は通常と異なる扶養関係があるというだけで,表の金額へ一定額を機械的に加減するものではない。
本記事は,通常例における表6~9の選択と指数配分を扱うものである。
個別事情の確認順序及び既存額の増減額は,養育費算定表がおかしい場合の確認方法で扱う。
第7 法定養育費6万円及び先取特権24万円との違い
1 月額6万円は子供3人の標準養育費ではない
令和8年4月1日以後に養育費の取決めをしないまま協議離婚し,離婚時から引き続き3人の監護を主として行う親が要件を満たす場合,法定養育費は子供一人につき月額2万円,3人で月額6万円となる。
しかし,法定養育費は取決め等ができるまで最低限度の生活費を暫定的・補充的に確保する制度であり,表6~9から求める標準的な養育費額ではない。
したがって,算定表の結果が月額6万円を上回っても6万円へ引き下げるものではなく,算定表の結果が6万円を下回っても法定養育費が算定表の下限を示すものではない。
法定養育費には,取決め又は審判が成立・確定した日,子供が成年に達した日などの終期及び支払能力に関する例外がある。
2 月額24万円は養育費の上限でも支払額でもない
令和8年4月1日以後は,確定期限の定めがある養育費の定期金債権について,子の監護費用の先取特権が認められ,法務省令はその保護範囲を一月当たり子供一人につき8万円としている。
養育費の対象となる子供が3人なら月額24万円が保護範囲の上限となるが,これは養育費そのものを月額24万円と定める制度でも,養育費全体の上限を24万円に制限する制度でもない。
実際の養育費額が月額24万円未満なら,先取特権によって実際の債権額を超える額を請求できるわけではない。
法定養育費と先取特権の発生要件及び効果は,法定養育費及び養育費の先取特権で説明している。
第8 出典・参考資料
1 法令
①民法(明治29年法律第89号)第308条の2,第766条及び第766条の3(e-Gov法令検索。令和8年8月24日確認)
②民法第三百八条の二の規定による子の監護費用の先取特権に係る額の算定等に関する省令(令和7年法務省令第56号)第1条及び第2条(e-Gov法令検索。令和8年8月24日確認)
2 裁判所公表資料
①裁判所「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」(令和元年12月23日公表。養育費算定表6~9を含む。)
②裁判所「養育費・婚姻費用算定表について」1頁~5頁(PDFビューア1頁~5頁)
③裁判所「家事事件Q&A」(養育費の算定,変更及び法定養育費に関する説明。令和8年8月24日確認)
④裁判所「養育費に関する手続」(令和8年8月24日確認)
⑤裁判所「養育費に基づく差押え」(法定養育費及び子の監護費用の先取特権に関する説明。令和8年8月24日確認)
3 文献
①大阪弁護士協同組合『令和元年改定 養育費・婚姻費用算定表(解説及びQ&A付き)』大阪弁護士協同組合,2020年,1頁~5頁
②秋武憲一『第4版 離婚調停』日本加除出版,2021年,305頁~311頁