目次
第1 カナダ法の養育費を調べるときの結論第2 連邦法と州法のどちらを使うか第3 基本額は年収・子の人数・州の表で求める第4 特別費用と高所得者の調整第5 共同養育と分割養育第6 養育費は何歳まで支払うか第7 一方の親が日本などカナダ国外にいる場合第8 日本とカナダの間で回収する場合第9 相談時に確認する資料第10 よくある質問1 カナダの養育費は年収の何パーセントか2 カナダの養育費は何歳までか3 共同養育なら養育費を払わなくてよいか4 日本に住んだままカナダの親へ請求できるか第11 関連記事第12 出典と調査範囲
第1 カナダ法の養育費を調べるときの結論
カナダ法の養育費は,年収の一定割合を掛けるだけでは決まらない。
カナダの離婚法に基づく場合は,原則として連邦養育費ガイドラインにより,支払義務者の年収,子の人数及び適用される州・準州の表から基本額を求め,必要に応じて特別又は臨時の費用を加える。
共同養育,高所得,成人後の子及び国外居住が関係するときは,別の調整が必要である。
本記事は,令和8年10月16日現在のカナダ連邦法令,カナダ司法省及びハーグ国際私法会議の公開資料を基礎に,連邦ルールの全体像と日加間の請求・承認・執行の確認順序を整理する。
婚姻の有無,離婚をした国,親子の居住州,既存裁判及び財産所在地によって適用法と手続が変わるため,個別事件では対象州の現行法も確認する必要がある。
第2 連邦法と州法のどちらを使うか
カナダのDivorce Actに基づいて離婚する夫婦には,Federal Child Support Guidelinesが適用される。
これに対し,婚姻していない場合,別居しているが離婚しない場合,又は外国法により離婚した場合は,申立てをする州又は準州の法律により養育費を判断することがある。
したがって,「カナダ法」というだけで連邦ガイドラインの適用を確定せず,婚姻・離婚の経過と手続をする州を先に特定する。
カナダ司法省の案内によれば,州・準州のガイドラインは連邦ガイドラインと異なることがあり,ケベック州を除く各州・準州では基本額について連邦表が用いられている。
ただし,適用法,手続,所得資料及び執行制度まで全国一律であるという意味ではない。
第3 基本額は年収・子の人数・州の表で求める
連邦ガイドライン3条は,未成年の子について,適用表による額と7条の費用を養育費の基本構造とする。
適用表の額は,支払義務者の年収,対象となる子の人数及び適用州・準州によって変わる。
年収は,原則としてカナダ歳入庁のT1 General formにおけるTotal incomeの所得項目を基礎に,Schedule IIIによる調整をして算定する。
2025年連邦養育費表は令和7年10月1日に施行された。
令和7年9月30日以前の期間については,その期間に対応する旧表を用いる。
新表は従前の養育費命令を自動的に変更するものではないが,額の差が事情変更として変更申立ての理由となり得る。
支払義務者がカナダ国内に居住するときは,原則としてその者が常居所を有する州・準州の表を用いる。
支払義務者がカナダ国外に居住し,又はその居住地が不明のときは,原則として他方配偶者が常居所を有する州・準州の表を用いる。
第4 特別費用と高所得者の調整
連邦ガイドライン7条の特別又は臨時の費用には,就労等のための保育費,子に対応する医療・歯科保険料,保険で補填されない一定の医療費,特別な教育費,高等教育費及び臨時の課外活動費が含まれる。
裁判所は,子の利益に照らした必要性と,父母及び子の資力等に照らした相当性を考慮する。
費用は,子自身の負担分を控除した上で,原則として父母の所得割合に応じて分担し,補助金や税額控除等も考慮する。
支払義務者の年収が15万カナダドルを超える場合も,直ちに定額又は単純な割合計算へ移るわけではない。
連邦ガイドライン4条は,原則として通常の算定額を用い,それが不適切と判断される場合には,最初の15万カナダドルの表額,超過部分について相当な額及び7条の費用を組み合わせる。
第5 共同養育と分割養育
双方が年間を通じて子との養育時間の40%以上を持つ共同養育では,養育費が当然にゼロになるわけではない。