目次第1 この記事の対象と結論1 対象とする手続と基準日2 結論第2 弁護士の統一様式が使えない理由1 統一様式の根拠は申立人自身の請求権である2 家事調停・審判は対象の申立てに入っていない3 遺留分侵害額請求の訴えも対象外と考えられる第3 誰の名義の,どの年度の証明書が必要か1 固定資産税の名義は1月1日で決まる2 手続ごとに求められる年度3 発行できる年度には限りがある第4 自分で取れる場合1 被相続人に関する年度を相続人として取る2 遺産共有中の不動産を共有者として取る3 代理人弁護士が依頼者の委任を受けて取る第5 相手方名義の不動産で自分では取れない場合1 自分では取れないと考えられる理由2 相手方に提出を求める3 調停委員会に調査嘱託又は文書送付嘱託を求める4 弁護士会照会は回答を得にくい5 評価証明書が取れなくても手続は進められる第6 申請前に確認する事項第7 関連記事第8 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公文書4 裁判所の案内・説明資料5 自治体の案内6 職能団体の資料
第1 この記事の対象と結論
1 対象とする手続と基準日
本記事は,遺産分割調停・審判と,遺留分侵害額の請求調停で,不動産の固定資産評価証明書をどのように取得するかを扱う。
遺留分侵害額の請求調停は,令和元年7月1日以後に開始した相続についての手続である。
法令は令和8年9月28日現在の条文により,裁判所と自治体の案内は同日に確認した内容による。
裁判所の全国共通の案内は,遺産分割調停について「不動産登記事項証明書及び固定資産評価証明書」を,遺留分侵害額の請求調停について「不動産登記事項証明書,固定資産評価証明書」を,それぞれ標準的な申立添付書類として掲げている(裁判所「遺産分割調停」,裁判所「遺留分侵害額の請求調停」)。
ところが,訴訟の準備であれば弁護士が所有者の委任なしに評価証明書を取れる「統一様式」は,家事調停では使えない。
そのため,家事調停では,誰の名義の,どの年度の証明書が必要かによって,取り方を組み立て直す必要がある。
2 結論
結論は,次のとおりである。
①弁護士の統一様式は,遺産分割調停・審判と遺留分侵害額の請求調停のためには使えない。
②被相続人が納税義務者であった年度(死亡した年の年度等)の証明書は,相続人として,自分で請求できる。
③遺産分割前で相続登記がされていない不動産は,共同相続人の一人として,自分で請求できる場合が多い。
④相続登記又は遺贈・贈与の登記により相手方の名義になった後の年度の証明書は,自分では取れないと考えられる。
その場合は,相手方に提出を求めるか,調停委員会の手続(調査嘱託等)を求めることになり,弁護士会照会は回答を得にくい。
⑤評価証明書は評価の資料の一つにすぎず,取れない物件があっても,登記事項証明書で物件を特定し,評価の合意又は鑑定へ進むことができる。
第2 弁護士の統一様式が使えない理由
1 統一様式の根拠は申立人自身の請求権である
弁護士が所有者の委任状なしに評価証明書を取れるのは,地方税法382条の3と地方税法施行令52条の15の表第4号によるものである。
地方税法382条の3は,「市町村長は、第二十条の十の規定によるもののほか、政令で定める者の請求があつたときは、これらの者に係る固定資産として政令で定めるものに関して固定資産課税台帳に記載をされている事項のうち政令で定めるものについての証明書を交付しなければならない。」と定める。
施行令52条の15の表第4号は,「民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)別表第一の一〇の項ロ及び一三の項から一四の二の項まで並びに別表第二の一の項から七の項まで及び一一の項の上欄に掲げる申立てをしようとする者」を掲げ,対象となる固定資産を「当該申立ての目的である固定資産」に限っている。
つまり,この制度は,一定の申立てをしようとする人自身に,申立ての目的となる不動産の証明書を請求する権利を認めたものである。
日本弁護士連合会が定める「固定資産評価証明書の交付申請書」(統一様式)は,弁護士が代理人としてこの請求をするための書式である。
2 家事調停・審判は対象の申立てに入っていない
(1) 政令が掲げる申立て
政令が掲げる申立ては,訴えの提起,控訴・上告,請求の変更,反訴,参加,支払督促,民事保全,借地非訟,民事調停及び労働審判と,これらの一部の申立ての変更である。
家事審判と家事調停の申立ては,民事訴訟費用等に関する法律別表第一の15の項・15の2の項に掲げられているが,政令はこれらの項を掲げていない。
遺産分割調停・審判も遺留分侵害額の請求調停も家事事件であるから,申立人は,この制度による請求権を持たないことになる。
(2) 日本弁護士連合会と自治体の案内
(続きを読む...)遺産分割調停・遺留分調停で固定資産評価証明書をどう取るか-統一様式が使えない理由と相続人・共有者・相手方名義の場合(AI作成)