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要介護認定の結果に納得できない場合の資料収集と争い方―認定調査票・主治医意見書・一次判定・二次判定の読み方(AI作成)

第1 最初に確認すること

1 結論

要介護・要支援認定の結果に納得できないときは,まず結果通知書と封筒を保存し,通知を受け取った日を記録する必要がある。
その上で,市町村に決定理由の説明を求め,認定調査票,主治医意見書,一次判定を含む介護認定審査会資料及び二次判定の記録を取得できるか確認し,資料相互の不一致を調べることになる。

重要なのは,「現在の状態に合う認定へ改めたい」のか,「当初の処分時点で資料の把握又は評価が誤っていたと争いたい」のかを分けることである。
前者では区分変更申請又は新たな認定申請が中心となり,後者では介護保険審査会への審査請求が中心となる。

2 結果だけでなく資料の流れを確認する理由

介護度は,診断名の重さだけで決まるものではなく,介護サービスの必要度を二段階で判定した結果である。
したがって,「病気が重い」「家族の負担が大きい」という結論だけを述べるのではなく,どの調査項目,どの特記事項,どの医学的所見及びどの判定段階に実態とのずれがあるかを示す必要がある。

3 期間制限

行政不服審査法18条によれば,審査請求は,原則として処分があったことを知った日の翌日から3か月以内であり,処分日の翌日から1年という上限もある。
正当な理由による例外はあるが,市町村への説明要求又は資料提供の申出をしても,これらの期間が当然に止まるとは扱わない方が安全である。

取消訴訟には別の出訴期間がある。
行政事件訴訟法14条は,処分又は裁決を知った日から6か月,処分又は裁決の日から1年を原則的な上限としているため,審査請求後も裁決の到達日を記録する必要がある。

第2 認定調査から処分までの資料の流れ

1 法定の手続

介護保険法27条は,要介護認定について,市町村による面接調査,主治医からの意見聴取,介護認定審査会による審査判定及び市町村による処分という流れを定めている。
要支援認定についても,同法32条に同様の仕組みがある。

段階主な資料後から確認する点
申請申請書申請日,申請区分,主治医,調査場所
認定調査概況調査,基本調査,特記事項選択肢,選択根拠,介護の手間,頻度
医学的意見主治医意見書最終診察日,心身の状態,認知機能,医学的留意事項
一次判定一次判定結果,介護認定審査会資料入力項目,要介護認定等基準時間,修正の有無
二次判定審査会資料,審査判定議事録一次判定の修正,特記事項・主治医意見書の評価,判定理由
処分結果通知書,被保険者証認定区分,理由,有効期間,受領日

2 一次判定は最終結論ではない

厚生労働省の「要介護認定に係る制度の概要」によれば,一次判定は認定調査及び主治医意見書に基づくコンピュータ判定であり,二次判定は一次判定,主治医意見書等に基づいて介護認定審査会が行う。
一次判定は二次判定の原案であるから,一次判定と最終結果が異なることだけで直ちに誤りとはいえず,変更の根拠を審査会資料と議事録から確認する必要がある。

3 処分時点と現在時点を分ける

認定の適否を検討するときの資料は,原則として当初処分の基礎となった時期の状態を示すものである。
これに対し,処分後に生じた悪化又は改善は,現在の状態を対象とする区分変更申請等の資料となるため,両時点の記録を混ぜないことが重要である。

第3 最初に集める資料

1 行政側の資料

最初の申出では,結果通知書と被保険者証に加え,①認定調査票の概況調査,基本調査及び特記事項,②主治医意見書,③一次判定結果を含む介護認定審査会資料,④審査判定議事録又は判定理由が分かる資料を対象として確認するのがよい。
もっとも,提供制度,申出人,使用目的,本人同意及び提供範囲は自治体ごとに異なるため,これらを当然に全部入手できるとは限らない。

資料の名称が分からないときは,「一次判定が何で,二次判定でどの項目が修正されたか分かる資料」など,確認したい内容も併記する方法が考えられる。
資料提供の申出と,個人情報保護法に基づく開示請求等との関係も自治体の窓口で確認する必要がある。

2 大阪市の情報提供手続

大阪市の「大阪市要介護認定等情報提供実施要領」は,要介護認定に関する相談等を目的とする場合,本人又は親族からの申出により,認定調査情報,主治医意見書,介護認定審査会資料及び審査判定議事録を提供対象としている。
申出書には,提供を求める資料の選択欄がある。

ただし,主治医意見書について診療上の支障が生じる旨の回答があった場合は,その部分が提供されないことがあるほか,本人以外の申出では本人同意及び関係を証する資料が問題となる。
これは大阪市の制度であり,他の市町村では当該自治体の要綱,個人情報開示制度及び申請様式を確認する必要がある。

3 本人側で作る資料

行政側の資料を取得するまでの間に,抽象的な介護負担の説明ではなく,調査項目と結び付く事実を記録する。
記録は後から作り直すより,日時と情報源を残して日々作成した方が,処分時点と現在時点を区別しやすい。

確認したい事実低負担で先に確保する資料
日内変動・日差日付,時間帯,できたこと・できなかったことを記録した短い日誌
介助の内容・頻度誰が,何を,どの程度行ったかの一覧,訪問・通所サービス記録
認知症に伴う行動具体的な行動,発生頻度,危険,対応内容及び対応時間の記録
調査日の特殊事情発熱,入院,緊張,薬の変更,普段と異なる場所等の記録
医学的状態診療録,検査結果,服薬情報,診療情報提供書等のうち争点に関係する部分

4 日付の照合

申請日,認定調査日,主治医意見書の最終診察日及び作成時期,審査会日,処分日,結果通知の受領日並びに認定有効期間を一枚の時系列表にする。
主治医意見書が古い診察を前提としていないか,調査後の重大な変化が二次判定資料に入っているか,審査請求期間がいつ満了するかを同じ表で確認できる。

第4 認定調査票の読み方

1 「能力」「介助の方法」「有無」を混同しない

厚生労働省の認定調査票記入の手引きは,調査項目を,①本人の能力を確認する項目,②生活上どのような介助が実際に行われているかを確認する項目,③障害又は行動の有無を確認する項目に分けている。
同じ「できる・できない」という感覚で全項目を読むと,選択基準を取り違えることになる。

例えば,ある動作を本人が行えるかという能力評価と,その動作に家族又は職員の介助が行われているかという介助方法の評価は別である。
福祉用具又は補装具を日常的に使用して能力が補完されている場合は,その使用状態で選択する項目もあるため,「器具なしではできない」という事実だけで直ちに基本調査の選択が誤りになるとは限らない。

2 調査当日だけでなく日頃の状態を見る場面

能力に関する項目等について,体調不良,調査環境又は緊張により調査時と日頃の状態が異なる場合は,概ね過去1週間における,より頻回な状態又は日頃の状態を聞き取って選択し,根拠を特記事項に記載するものとされている。
認知症に伴う行動等(BPSD関連)の有無は,概ね過去1か月の発生頻度に基づいて選択するため,調査時にその行動が現れなかったことだけで判断するものではない。

したがって,調査日の一場面を反論するだけでなく,手引きが参照する期間内の頻度を示す資料を出す必要がある。
「時々ある」ではなく,「7日間のうち5日,夜間に各2回」など,期間と回数を結び付ける方が検証しやすい。

3 特記事項の三つの要素

特記事項は,基本調査の自由記載欄というだけではなく,基本調査の選択根拠を確認し,二次判定で具体的な介護の手間を評価するための資料である。
厚生労働省の手引きは,特記事項について「選択根拠」「手間」「頻度」の三点に留意するとしている。

例えば排せつであれば,失敗があるという症状だけで終わらせず,①どの選択肢の根拠となる事実か,②誰が誘導,着脱,清拭又は後始末の何を行うか,③1日又は1週間に何回かを照合する。
基本調査と特記事項が矛盾している,介助内容だけで頻度がない,又は頻度だけで具体的な手間がない場合は,二次判定で評価できる情報が欠けていないかを確認する必要がある。

4 実際の介助がない場合又は不適切な場合

介助方法の項目は,原則として実際に行われている介助に基づいて選択する。
もっとも,独居,介護放棄,介護への抵抗その他の事情により必要な介助が提供されていない場合,又は現に行われる介助が本人にとって不適切な場合は,その理由を特記事項に記載し,適切な介助方法を選んで審査会の判断を仰ぐことができるとされている。

この取扱いを主張する場合は,「本来は介助が必要である」という結論だけでは足りない。
提供されていない介助の具体的内容,必要となる頻度,提供されない理由及び放置した場合の結果を資料に結び付ける必要がある。

第5 主治医意見書,一次判定及び二次判定の読み方

1 主治医意見書

主治医意見書では,最終診察日,診断名,傷病の経過,心身の状態,認知機能,医学的管理の必要性及び特記すべき事項を確認する。
診断名が正しいかだけでなく,認定時点の生活機能と介護の手間に関係する医学的所見が具体的に記載されているかが問題となる。

厚生労働省の主治医意見書記入の手引きは,介護認定審査会が心身の状況に関する74項目と主治医意見書に基づく一次判定結果を原案とし,特記事項と医学的意見を加味して二次判定を行うと説明している。
また,長期間医学的管理をする主治医の方が本人の状況を正確に把握していることが明らかな場合,審査会は認定調査結果を修正し,一次判定からやり直すとしている。

2 一次判定

一次判定については,要介護認定等基準時間の数値だけを見るのではなく,その前提となった基本調査の選択,主治医意見書から入力された項目及び審査会による修正の有無を確認する。
入力となる基本調査に誤記又は選択基準の取違いがあれば,計算結果だけが整っていても検討は終わらない。

厚生労働省の「要介護認定はどのように行われるか」は,要介護認定等基準時間を,特別な方法で推計された介護の必要性の「ものさし」と説明している。
これは実際に家庭で行われる介護時間又は在宅サービスの利用時間そのものではないため,家族の介護時間との差だけで一次判定の計算誤りを示すことはできない。

3 二次判定

二次判定では,①基本調査の選択が修正されたか,②一次判定がどのように確定されたか,③特記事項のどの介護の手間が評価されたか,④主治医意見書のどの医学的所見が加味されたかを確認する。
一次判定から介護度が変わっている場合は,変更そのものを問題にするのではなく,その根拠となる具体的事実と手引き上の評価方法が対応しているかを検討する。

4 資料間の不一致の読み方

不一致先に確認すること直ちにはいえないこと
基本調査と特記事項選択根拠,介助内容,頻度,記載上の矛盾基本調査又は特記事項のどちらかが必ず正しいとはいえない
認定調査票と主治医意見書評価項目の定義,観察時点,最終診察日,医学的根拠記載が違うだけで調査結果が誤りとはいえない
一次判定と二次判定審査会による修正項目,特記事項,医学的意見介護度が変わっただけで違法とはいえない
診断名と認定区分疾病が生活機能と介護の手間に及ぼす具体的影響疾病が重いほど介護度も必ず高いとはいえない

第6 手続の選択と主張資料

1 市町村への説明要求

低負担の初動は,結果通知書を持って市町村の担当窓口に決定理由の説明を求め,情報提供又は開示の手続を確認することである。
大阪府の「審査請求について」も,まず処分をした保険者の窓口で決定理由の説明を受けられると案内している。

説明を受ける際は,「なぜこの介護度か」という一般的な質問だけでなく,①一次判定は何か,②二次判定で修正した項目はあるか,③特記事項と主治医意見書をどのように評価したか,④取得できる記録は何かを確認する。
ただし,説明要求を続ける間にも審査請求期間は進行すると考え,受領日と期限を別に管理する必要がある。

2 区分変更申請又は新たな認定申請

介護保険法29条及び同法33条の2は,現に認定を受けている区分と異なる介護又は支援の必要度に該当すると認める場合の変更申請を定めている。
非該当者の再申請,要支援者が要介護認定を求める場合その他の申請区分は,市町村の案内に従って確認する必要がある。

この手続は,処分後の悪化又は現在の実態に合う認定を求める場合に適する。
新たな認定調査と主治医意見書により現在の状態が改めて判定される一方,前の処分が違法又は不当であったかを判断する手続ではなく,希望した方向へ必ず変更されるものでもない。

3 介護保険審査会への審査請求

介護保険法183条により,要介護・要支援認定に関する処分に不服がある者は,都道府県の介護保険審査会へ審査請求をすることができる。
主張の対象は,当初処分時点における事実の把握,調査項目の選択,主治医意見書の評価,一次判定の修正又は二次判定の過程にある具体的な誤りである。

大阪府の案内では,審査請求人は原則として処分を受けた被保険者本人であり,委任を受けた代理人による審査請求も認められている。
家族が手続を支援する場合は,家族自身が当然に審査請求人になると考えず,本人の意思と代理権を確認することになる。

大阪府の案内によれば,介護保険審査会は処分の違法又は不当を審理して処分を取り消すことはできるが,自ら介護度を希望する区分へ変更することはできない。
したがって,審査請求書では「要介護3にしてほしい」という結論だけでなく,取り消すべき処分,誤って把握又は評価された事実,根拠資料及びその誤りが判定に与えた影響を対応させる必要がある。

4 取消訴訟

介護保険法196条は,認定処分の取消しの訴えについて審査請求前置を定めている。
もっとも,行政事件訴訟法8条2項は,審査請求から3か月を経過しても裁決がない場合,著しい損害を避ける緊急の必要がある場合その他正当な理由がある場合に,裁決前置の例外を定めている。

訴訟では,現在の状態が重くなったという事情だけではなく,当初処分における専門技術的判断の過程に,取消しを要する違法があったことを主張立証する必要がある。
審査請求より負担が大きいため,記録を照合してもなお残る具体的争点があり,どの資料又は専門的意見によって結論が変わり得るかを説明できる場合に検討対象となる。

5 調査の優先順位と停止基準

本記事では,①結果通知・認定調査票・主治医意見書・審査会資料の取得,②調査項目別の対照表と時系列表の作成,③市町村の説明及び書面による反論,④必要な場合に限る医師等の追加意見,⑤審査請求又は訴訟,という順を基本形とする。
高負担の専門家意見又は大量記録分析は,低負担の照合で特定した争点を解決できる場合に絞る方が,費用と時間を管理しやすい。

希望介護度と結果が違うという点しかなく,基本調査,特記事項,主治医意見書及び審査会資料に具体的な誤記・欠落・評価矛盾を特定できない場合は,過去の処分を争う追加負担に見合うかを再評価する必要がある。
他方,現在の状態変化が資料で確認でき,必要なサービスの確保が主目的である場合は,審査請求の期間を確認した上で,現在時点を対象とする申請を優先することが考えられる。

第7 名古屋地裁平成30年3月8日判決

1 処分取消しを認めた判断

名古屋地方裁判所平成30年3月8日判決(平成28年(行ウ)第148号)は,要介護・要支援認定等非該当処分を取り消した。
同判決は,要介護状態区分等の認定が専門技術的判断を要することを踏まえ,介護認定審査会の審査判定過程に看過し難い過誤又は欠落があり,市町村の判断がこれに依拠したと認められる場合は,裁量権の範囲の逸脱又は濫用として違法となるとの枠組みを示した。

同判決は,主治医意見書と前年の認定調査結果等も踏まえ,必要に応じてさらに情報を収集すべきであったとし,認知機能及び日常生活自立度に関係する複数項目について調査・当てはめが不十分であったと判断した。
この判決が示すのは,結論の介護度だけでなく,認定要領に即して重要資料を収集し,具体的項目へ当てはめたかを検討する必要があるという点である。

2 希望介護度の義務付けは認めなかったこと

他方,同判決は,裁判所が要介護1である旨の認定を市に命じる請求を退けた。
疾病の症状と要介護状態区分は必ずしも一致せず,資料収集が不十分であったからといって原告の主張する症状又は介護度が当然に認められるものではなく,裁判所が審査会の判断を実体的に代置するだけの資料がなかったためである。

したがって,この判決から,調査に不備があれば希望する介護度が直ちに認定されると一般化することはできない。
取消しを求める主張と,特定の介護度まで法的に確定させる主張とでは,必要な資料と立証の程度が異なる。

第8 出典・参考資料

1 法令

介護保険法(平成9年法律第123号)27条,29条,32条,33条の2,183条及び196条(e-Gov法令検索)
行政不服審査法(平成26年法律第68号)18条(e-Gov法令検索)
行政事件訴訟法(昭和37年法律第139号)8条及び14条(e-Gov法令検索)

2 裁判例

名古屋地方裁判所平成30年3月8日判決(平成28年(行ウ)第148号,処分取消等請求事件,判決実頁28頁~36頁,裁判所ウェブサイト)

3 厚生労働省の通知・運用資料

①厚生労働省老健局長「『要介護認定等の実施について』の一部改正について」(令和7年11月20日老発1120第2号,介護保険最新情報vol.1439,令和8年4月1日適用)通知実頁1頁及び別添実頁1頁~2頁(PDF2頁・10頁~11頁
②厚生労働省老健局老人保健課長「『要介護認定における「認定調査票記入の手引き」,「主治医意見書記入の手引き」及び「特定疾病にかかる診断基準」について』の一部改正について」(令和7年11月20日老老発1120第1号,介護保険最新情報vol.1440,令和8年4月1日適用)認定調査票記入の手引き実頁8頁~17頁及び主治医意見書記入の手引き実頁1頁~5頁(PDF18頁~27頁・100頁~104頁
③厚生労働省「要介護認定に係る制度の概要」(令和8年8月28日確認)
④厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか」(令和8年8月28日確認)
⑤厚生労働省「要介護認定に係る法令」(令和8年8月28日確認)

4 自治体の手続資料

①大阪府福祉部高齢介護室介護支援課「審査請求について」(令和7年5月15日更新,令和8年8月28日確認)
②大阪市福祉局高齢者施策部介護保険課「大阪市要介護認定等情報提供実施要領」1頁~4頁(令和8年7月1日施行)
③大阪市福祉局「要介護認定等の情報提供に係る申出書」1頁~2頁(令和8年8月28日確認)