本記事は,成年後見人が本人に代わって手術・輸血等の医的侵襲に同意することができるかという問題を,弁護士が後見人・医療機関・家族から相談を受ける場面を念頭に整理するものである。判断能力が低下した方や医療に関する記述を含むが,特定の個人を否定的に評価する趣旨は一切なく,法令及び公的資料に即して実務上の対応を検討するものである。本記事は一般的な情報提供を目的とし,特定の事案に対する法的助言ではない。
目次
第1 問題の所在と結論
1 本記事が扱う問題
認知症,知的障害又は精神障害により判断能力が低下した本人について,手術,輸血,内視鏡検査その他の身体への侵襲を伴う医療(以下「医的侵襲」という。)が必要になる場面は多い。
このとき,医療機関が成年後見人に対して同意書への署名を求めることがあり,後見人が対応に迷って弁護士に相談する例は少なくない。
本記事は,後見人自身,病院を顧問する立場又は本人の家族から相談を受ける弁護士を念頭に,成年後見人の医療同意に関する現行法の枠組み,行政ガイドラインが示す実務の到達点,個別の特別法における関与規定,本人の同意能力及び緊急時の扱い,並びに令和8年の法改正を含む立法の動向を,条文及び公的資料に即して整理する。
2 結論の要旨
現行の民法は,成年後見人に対し,本人に代わって医的侵襲に同意する権限(医療同意権)を与える明文を置いていない。
厚生労働省及び最高裁判所等が関与して作成された複数の行政ガイドラインも,医療同意は成年後見人等の業務に含まれないという立場を明示している。
もっとも,精神保健福祉法の医療保護入院や予防接種法など,個別の特別法が特定の場面で後見人・保佐人又は「保護者」を関与主体として定めている例があり,これらは一般的な医療同意権を認めたものではない。両者を区別して考える必要がある。
後見・保佐を廃止して補助に一元化する令和8年の民法改正でも,医療同意権は創設されなかった。
第2 現行法における後見人の権限と医療同意
1 民法が定める後見人の権限の範囲
成年後見人の代理権について,民法859条1項は,後見人が「被後見人の財産を管理し,かつ,その財産に関する法律行為について被後見人を代表する」と定めている。
民法858条は,後見人が生活,療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たり,本人の意思を尊重し,その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならないと定めるが,これは一般的な義務を定める規定であり,特定の権限を積極的に付与する規定ではない。
後見人の権限が明文で拡張されている例外は,成年被後見人の死亡後の事務に関する民法873条の2である。同条は,必要があるときに,相続財産の保存に必要な行為,弁済期の到来した債務の弁済及び死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結(火葬・埋葬の契約は家庭裁判所の許可を要する。)をすることができると定める。
このように死後事務については明文の手当てがされているのに対し,生前の医的侵襲への同意については,これに対応する規定が置かれていない。
療養看護に関する事務の代理として,診療契約(医療契約)や入院契約の締結,医療費の支払,診療情報の受領やカルテの開示請求を行うことは,財産に関する法律行為又はその付随事務として後見人の権限に含まれると考えられる。
しかし,契約を締結することと,その履行として実施される個々の医的侵襲に同意することは別の問題である。本記事では,前者は後見人の事務に含まれるが,後者は含まれないと整理する。
2 医的侵襲への同意が代理になじまないとされる理由
医的侵襲への同意は,本人の身体という一身専属的な法益の処分であり,日本国憲法13条に由来する自己決定権の行使としての性質を持つ。財産に関する法律行為の代理を予定した民法859条1項の枠組みには,このような判断は含まれないと解される。
この自己決定権の性質は,裁判例にもあらわれている。最高裁判所平成12年2月29日判決・民集54巻2号582頁は,宗教上の信念から輸血を拒否する固い意思を有する患者について,医師が他に救命手段がない場合には輸血する方針を採っていることを説明せず手術・輸血をした事案において,「意思決定をする権利」を奪われたことによる精神的苦痛について不法行為責任を認めた。
もっとも同判決は,本人が明確な意思を有する場面における医師の説明義務を扱ったものであり,成年後見人が本人に代わって同意することの可否を直接判断したものではない。この判決は,医的侵襲への同意が本人の人格的利益に深く結び付くという理解を示すものとして参照される。
成年後見人の医的侵襲同意権の有無を正面から判断した裁判例は,裁判所ウェブサイトの裁判例検索では確認できなかった。この論点は,主として条文の不存在と後記の行政ガイドラインによって扱われている。
第3 行政ガイドラインが示す実務の到達点
1 身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定のガイドライン
厚生労働省の「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」(令和元年6月3日医政総発0603第1号の別添として発出)は,医療同意の帰属について正面から述べている。
同ガイドラインは,成年被後見人等について「成年後見人等の第三者が医療に係る意思決定・同意ができるとする規定はなく」,医療に係る決定・同意を行うことは「後見人等の業務に含まれているとは言えません」とする。また,医療行為の同意は本人の一身専属性がきわめて強く,第三者に同意の権限はないとの立場を示している。
その上で,同ガイドラインは,医療機関に対し,成年後見人等に同意書への署名を強要しないよう注意を促し,説明を行った事実を記録に残したい場合には「成年後見人として担当医の説明を受けました」といった記載による対応を例示している。
後見人に期待される関与としては,本人の意思を推定するための情報提供,説明の場への同席,多職種連携の場への参加,本人に提供される医療の内容が適切かを確認するための医療機関への説明の要求などが挙げられている。直ちに救命措置を必要とする緊急の場合には柔軟に対応する必要があるともされている。
2 意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン
最高裁判所,厚生労働省及び専門職団体等が関与して作成された「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」(令和2年10月30日)は,後見人等の役割を,まず本人の意思決定を支援することに置き,支援を尽くしてもなお意思決定・意思確認が困難な場合に限って代行決定に移行するという枠組みを示している。
もっとも,同ガイドラインは,その代行決定の対象からも「身体への侵襲を伴う医療に関する意思決定」を明示的に除外し,脚注において後見人等は医療行為に関する同意権を有していないと明記している。
医療の局面における後見人等の関与の在り方については,前記1のガイドラインを参照するよう案内している。
3 人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスのガイドライン
厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(平成30年3月改訂)は,医療同意権の帰属を論じるものではないが,本人の意思決定を基本とし,本人の意思が確認できない場合には家族等による意思の推定を尊重し,それも困難なときは医療・ケアチームで本人にとって最善の方針をとるという判断過程を示している。
同ガイドラインにいう「家族等」は,法的な親族関係に限らず,本人が信頼を寄せる者を広く含む概念とされており,成年後見人を医療同意の主体として想定するものではない。前記1のガイドラインは,本人の意思が確認できない場面の判断枠組みとして,このプロセスの考え方を踏まえるべきものとしている。
第4 個別の特別法における関与規定
一般法である民法に医療同意の代諾規定がない一方で,個別の特別法は,特定の場面ごとに関与主体を定めている。後見人の位置付けは法律ごとに異なるため,場面を特定して確認する必要がある。
1 精神保健福祉法の医療保護入院
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律33条1項は,一定の要件の下で「その家族等のうちいずれかの者の同意があるときは,本人の同意がなくても」入院させることができると定める。
ここでいう「家族等」について,同法5条2項は「精神障害者の配偶者,親権を行う者,扶養義務者及び後見人又は保佐人」と定義している。後見人及び保佐人は同意主体になり得るが,条文の列挙は保佐人までであり,補助人は含まれていない。
これは,医療内容一般への同意ではなく,非自発的な入院という手続についての同意である点に留意を要する。本記事では,これを個々の医的侵襲への一般的な同意権とは区別して理解する。
なお,令和4年法律104号による改正(医療保護入院に関する部分は令和6年4月1日施行)により,家族等の全員が意思を表示することができない場合等にも市町村長の同意による入院が可能となり,入院期間の定めと更新の仕組みが設けられたが,「家族等」の定義における後見人・保佐人の位置付け自体は変更されていない。
2 予防接種法における保護者
予防接種法2条7項は「保護者」を「親権を行う者又は後見人」と定義し,同法8条2項及び9条2項は,対象者が「16歳未満の者又は成年被後見人」であるときは,その保護者に対する定期の予防接種等の勧奨,及び保護者が受けさせるよう努める義務を定めている。
これは,成年後見人に医療に関連する役割を明文で与えた例であるが,努力義務を定めるものであり,医的侵襲一般への私法上の同意権を創設したものとは異なる。
3 母体保護法・臓器移植法・感染症法・医療観察法
他の特別法は,医療同意権を後見人に与える構造をとっていない。それぞれの同意・関与の主体は次のとおりである。
①母体保護法3条及び14条は,不妊手術及び人工妊娠中絶について,本人の同意及び配偶者の同意を要件とし(配偶者が知れないとき等は本人の同意で足りる。),本人以外の第三者による代諾の規定を置いていない。②臓器の移植に関する法律6条は,臓器の摘出について遺族又は家族の書面による承諾等を要件とするが,これは本人の死亡後の場面であり,後見は本人の死亡により終了する。③感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律19条による入院は,勧告と,勧告に従わない場合の措置入院という行政上の手続であり,本人又は後見人の同意を成立要件とするものではない。④心神喪失者等医療観察法による医療は,裁判所の決定に基づき国が行うものであり,本人又は後見人の同意を要件としない。
第5 本人の同意能力と緊急時の対応
1 医療同意能力は行為能力とは別に判断されること
医療行為への同意は法律行為ではないため,同意をするのに必要な能力(医療同意能力)は,財産法上の行為能力や意思能力とは別の基準で判断されると理解されている。
そのため,成年後見が開始している者であっても,当該医療行為の意味・内容及び予後を理解する能力があれば,本人が有効に同意することができ,後見人の同意は問題にならない。
この点に関して,札幌地方裁判所昭和53年9月29日判決・判例時報914号85頁(いわゆる札幌ロボトミー事件第一審判決。裁判所ウェブサイト未掲載)は,医師が手術を行うには原則として患者自身の承諾を要するとした上で,その承諾をするには患者本人が「自己の状態,当該医療行為の意義・内容,及びそれに伴う危険性の程度につき認識し得る程度の能力」を有すれば足りると述べ,精神障害者又は未成年者であっても,その能力を有する以上は本人の承諾を要すると判示した。
これは下級審の判断であるが,医療への同意能力を財産法上の行為能力とは区別し,当該医療行為の意義・内容・危険性を理解する能力の有無によって捉える考え方を示すものといえる。
同意能力は,後見が開始しているという一事によって一律に否定されるものではなく,対象となる医療行為ごとに個別に判断される。したがって,後見人の医療同意権が問題となるのは,本人に同意能力がなく,かつ緊急でもない場面に限られると整理できる。
2 緊急時に本人の同意を得られない場合
生命の危険が切迫し,本人の同意を得ることができない緊急の場面については,民法698条が,管理者が本人の身体等に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をしたときは,悪意又は重大な過失がなければ損害賠償責任を負わないと定めている。
このような緊急の場面では,推定的な承諾等により,本人の同意がなくても医療行為を行うことが正当化されると考えられ,後見人の同意を要件とするものではない。
本人の意思が確認できない場合の判断過程については,前記第3の3のプロセスガイドラインの考え方に沿って,本人の意思の推定や医療・ケアチームによる検討を行うことが,行政の示す枠組みである。
3 身元保証人・身元引受人の問題との区別
入院時に医療機関が求める身元保証・身元引受は,緊急時の連絡先の確保,医療費の支払の保証,退院支援などを目的とするものであり,医的侵襲への同意とは別の問題である。
前記第3の1のガイドラインは,身元保証人がいないことを理由に入院・医療を拒んではならないとし,身元保証機能を代替する対応を示している。後見人は,保証債務を負担する身元保証人には通常なり得ず,逆に身元保証人がいることによって医療同意権が生じるものでもない。
第6 立法の動向と令和8年改正が残した課題
1 利用促進法と基本計画による対応
成年後見制度の利用の促進に関する法律11条は,基本方針の一つとして,医療,介護等を受けるに当たり意思を決定することが困難な者が円滑に必要な医療・介護等を受けられるようにするための「支援の在り方」について,「成年後見人等の事務の範囲を含め検討を加え,必要な措置を講ずること」を掲げている(同条3号)。
同条が「同意権」ではなく「支援の在り方」という表現を用いていることは,医療同意権の創設を正面から掲げるのではなく,支援の枠組みの中で検討する方針を示すものと理解できる。
2 法制審部会における検討と立法の見送り
成年後見制度の見直しを審議した法制審議会の部会では,医的侵襲への同意権をめぐる議論が行われた。
中間試案の段階では,家庭裁判所が保護者に医的侵襲同意権を付与することができるとする規律について慎重に検討すべきであるとの考え方が注記として示されるにとどまり,最終的な要綱案では,医療同意権の付与は取り上げられなかった。
部会の資料では,成年後見制度の創設時に,医的侵襲に関する決定権・同意権の規定を成年後見の場面についてのみ導入することは時期尚早とされた経緯が示され,本人の意思決定支援や医療・ケアチームによる対応を前提に,医療の場面における同意を成年後見人等に求めることを検討する必要はないとの意見が記録されている。
もっとも,これに対しては,本人に同意能力がなく家族もいない場合に備えて,第三者による代行同意の仕組みを立法により整備すべきであるとの提言もされている。日本弁護士連合会は,成年後見人を第一順位の同意代行者とし,死亡等のおそれのある重大な医療行為については審査機関の許可を要するとする法律の大綱を公表している。
本記事では,これらの経緯を,医療同意を成年後見人の権限として一般的に立法することには慎重な立場が維持される一方で,代行同意の制度化を求める提言も続いているものと整理する。
3 令和8年改正後に残る課題
令和8年6月24日に公布された「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)は,後見及び保佐の制度を廃止して補助の制度に一元化するなど,成年後見制度を大きく見直すものである。もっとも,この改正によっても,成年後見人(改正後の枠組みにおける関与者)に医的侵襲同意権を付与する規定は設けられなかった。
同改正法のうち成年後見制度に関する部分の施行期日は,公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日とされており,本記事の執筆時点でその政令は確認できなかった。
後見・保佐の廃止は,これらを前提に条文を組んでいる特別法にも影響する。前記第4のとおり,精神保健福祉法の医療保護入院の同意主体や医療観察法の保護者には後見人・保佐人が組み込まれているため,これらの規定の見直しが施行に向けた課題となる。日本弁護士連合会の会長声明も,後見人等を関与主体として用いてきた各制度の見直しが不可欠であると指摘している。
本記事では,改正法の内容及び施行時期,並びに特別法の見直しの具体的内容は,施行に向けて確定していく事項であり,個別の助言の際には条文と公的資料により最新の状態を確認する必要があると整理する。
第7 弁護士が相談を受けたときの実務的検討
1 相談類型に応じた手続の選択
相談の場面に応じて,採るべき対応は異なる。以下は,これまでに整理した法令及びガイドラインから導かれる対応の方向性である。
- 後見人が医療機関から医的侵襲の同意書への署名を求められた場合は,後見人に医療同意権がないことを説明し,本人の意思の推定に資する情報の提供,説明の場への同席,医療内容が適切かの確認といった形で関与することを検討する。緊急の場面では,医療機関側の判断による対応が想定される。
- 本人になお同意能力が認められる場合は,本人の同意を基本とし,理解を助ける支援を行う。
- 精神障害により非自発的な入院が問題となる場合は,医療保護入院の枠組み(家族等の同意)に沿って検討する。
- 定期の予防接種等の場面では,保護者としての関与を検討する。
2 依頼者・関係者から聴取すべき事項
相談を受けた際に確認すべき主な事項は,次のとおりである。
- 本人の判断能力の程度及びその変動の有無
- 本人が従前に表明していた意思の有無及び内容(事前の意思表示,宗教上の信条など)
- 家族その他本人の意思を推定し得る者の有無及び本人との関係
- 当該医療の緊急性の程度
- 医療機関が求めている書面の性質(医的侵襲の同意書か,説明を受けた旨の確認書か,身元保証に関する書面か)
- 後見等の類型及び付与されている代理権の範囲
3 同意書要求への対応と結論を左右する不確実な要素
医療機関が後見人に同意書への署名を求める背景には,医療費の支払の確保等の事情があると指摘されている。医的侵襲の同意そのものについては後見人に権限がないため,前記第3の1のガイドラインが例示するように,説明を受けた旨の確認という形で記録を残す対応が考えられる。
個別事案の結論は,本人の同意能力の有無,緊急性の程度,本人及び家族の意思といった具体的事実によって異なる。これらは事案ごとに評価を要する要素である。
加えて,令和8年改正の施行時期及び特別法の見直しの内容は,施行に向けて確定していく事項である。したがって,個別の助言に当たっては,条文はe-Gov法令検索で,裁判例は裁判所ウェブサイトで,その時点の最新の状態を確認することが必要である。
第8 出典・参考資料
1 法令(いずれもe-Gov法令検索により現行条文を確認)
- 民法(858条=意思の尊重及び身上の配慮,859条=財産の管理及び代表,873条の2=死亡後の事務,697条・698条=事務管理・緊急事務管理)
- 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(5条2項=家族等の定義,33条=医療保護入院)
- 予防接種法(2条7項=保護者の定義,8条・9条=勧奨及び努力義務)
- 母体保護法(3条=不妊手術,14条=人工妊娠中絶)
- 臓器の移植に関する法律(6条=臓器の摘出における承諾)
- 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(19条=入院の勧告及び措置)
- 成年後見制度の利用の促進に関する法律(11条3号=医療・介護等に係る意思決定支援の在り方の検討)
- 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(42条=入院等の決定,81条=医療の実施)
- 民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号。後見・保佐の廃止及び補助への一元化。公布は令和8年6月24日。成年後見制度に関する部分の施行は公布から2年6月以内で政令で定める日)。改正の概要は法務省の解説ページによる。法務省「民法等の一部を改正する法律(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」
2 裁判例
- 最高裁判所平成12年2月29日第三小法廷判決・民集54巻2号582頁(平成10年(オ)第1081号。輸血拒否の意思決定をする権利と医師の説明義務。医的侵襲への同意が本人の人格的利益に結び付くことの理解を示すものとして参照)
- 札幌地方裁判所昭和53年9月29日判決・判例時報914号85頁(いわゆる札幌ロボトミー事件第一審判決。参照法令=民法709条)。医療への同意能力が,当該医療行為の意義・内容・危険性を認識し得る程度の能力によって判断されることの根拠。裁判所ウェブサイト未掲載,第一法規D1-Lawで全文確認済み。
3 行政資料・立法資料
- 厚生労働省「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」(令和元年6月3日医政総発0603第1号の別添)。成年後見人等に医療同意権がないこと,同意書署名の強要を避けるべきこと,緊急時の柔軟な対応等の根拠。本文(厚生労働省)
- 意思決定支援ワーキング・グループ「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」(令和2年10月30日)。身体への侵襲を伴う医療が代行決定の対象外であること,後見人等に医療同意権がないことの根拠。本文(裁判所)
- 厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(平成30年3月改訂)。本人の意思決定を基本とする判断過程の根拠。本文(厚生労働省)
- 法制審議会民法(成年後見等関係)部会の中間試案補足説明(令和7年)。医的侵襲同意権が注記にとどめられた経緯,及び制度創設時に時期尚早とされた経緯の根拠。本文(法務省)
4 文献等
- 日本弁護士連合会「医療同意能力がない者の医療同意代行に関する法律大綱」(2011年12月15日)。医療同意能力が意思能力とは別に判断されること,及び代行同意の立法提案(見解として参照)。本文(日本弁護士連合会)
- 日本弁護士連合会「民法等(成年後見等関係)の改正に関する要綱に対する会長声明」(令和8年2月12日)。後見人等を関与主体として用いてきた特別法の見直しが課題であることの根拠。本文(日本弁護士連合会)
- 第二東京弁護士会高齢者・障がい者総合支援センター運営委員会「ゆとりーな」編『Q&A高齢者の財産管理をめぐる実務――契約の選択・締結・履行・終了』(新日本法規出版,2021年)。医的侵襲への同意権が一身専属性の強いものであり本人しか有しないとする実務上の整理(230頁以下)。
本記事は,特定の事案に対する法的助言ではなく,一般的な情報提供を目的とするものである。個別の事案については,具体的な事実関係及び資料に基づく検討を要する。