第1 成年後見人の解任とは
1 この記事の対象と基準日
成年後見人が法律上その職を離れるのは,本人(成年被後見人)の判断能力の回復による後見開始の審判の取消し等のほかは,辞任又は解任による。
もっとも,大阪家庭裁判所後見センターは,第二期成年後見制度利用促進基本計画の下で,専門職が関与すべき課題が解決した後に親族や市民後見人へ交代することや,専門職の追加選任を積極的に検討しており(大阪家庭裁判所後見センター編『大阪家庭裁判所後見センターだより』(大阪弁護士協同組合,2025年)169頁~180頁),交代は例外的な出来事ではなくなっている。
後見人に一定の事由があるときは,家庭裁判所が後見人を「解任」してその職を解くことができる。
本記事は,成年後見人の解任について,根拠となる民法846条の解任事由(3類型),解任を求めることができる者,家庭裁判所での手続,解任の効果,実務上の不正の実情,そして令和8年に成立した改正法による見直しまでを,条文と公的資料に即して整理するものである。
保佐人・補助人・任意後見人にも同じ枠組みが及ぶ点は第3で扱う。
基準日は令和8年9月19日であり,法令は同日現在のe-Gov法令検索で確認した条文による。
2 解任・辞任・欠格の区別
成年後見人が交代する場面は,「辞任」「解任」「欠けた場合の選任」の3つの規定の組合せで整理できる。
いずれも家庭裁判所が関与し,後見人が自由に辞めたり,本人や親族が自由に交代させたりできる仕組みにはなっていない。
①辞任(民法844条)は,後見人の側から離脱する場合である。
「正当な事由があるとき」に,家庭裁判所の許可を得て任務を辞することができる。
後見人が職業上の必要から遠隔地に転居して事務に支障が生じた場合,老齢・疾病で事務に支障が生じた場合,本人やその親族との間に不和が生じた場合などが,正当な事由の例として想定されている。
ただし,前記の書籍170頁は,後見人等が本人やその親族と適切に信頼関係を構築できていない場合について,安易な辞任は認められない一方,その後見人等に事務を続けさせることが本人の利益に適うともいい難いとして,本人の意向,後見人等と本人・親族との関係,事務遂行上の課題の有無と内容,後任候補者の適格性などを総合的に考慮して判断するとしている。
同書171頁は,専門職が関与すべき課題が解決又は消滅し,事務を引き継げる親族等や市民後見人がいる場合にも,一般に正当な事由が認められるとしている。
辞任の手続,後任の選任及び市民後見人へのリレーは,成年後見人等の辞任と交代――正当な事由,後任選任の同時申立て,市民後見人へのリレーで扱っている。
大阪弁護士会高齢者・障害者総合支援センター編『【全訂版】成年後見人の実務2023』(大阪弁護士協同組合,2023年)124頁は,弁護士後見人の場合には,弁護士登録の抹消のほか,任官や期限付き公務員となった場合なども正当な事由として考えられるとしている。
②解任(民法846条)は,後見人の意思に反してでも,家庭裁判所がその職を解く処分である。
本記事の中心で,一定の解任事由が必要である。
③欠けた場合の選任(民法843条2項)は,解任や辞任などで後見人が欠けたときに,家庭裁判所が職権又は請求によって新たな後見人を選任するものである。
辞任と解任は,「後見人自身の意思に沿うかどうか」で区別される。
後見人は本人保護のために家庭裁判所から選ばれた者であり,自由な辞任も一方的な交代も認めると本人の利益を害するおそれがあるため,辞任には「正当な事由」,解任には後述の「解任事由」がそれぞれ要求されている。
3 誰が解任を求めることができるか(請求権者と職権)
民法846条は,解任を求めることができる者を,後見監督人,被後見人本人,その親族,検察官に限定している。
これに加えて,家庭裁判所が職権で(請求を待たずに)解任することもできる。
後見人の事務は家庭裁判所や後見監督人が監督しており(民法863条),監督の過程で問題が把握された場合に職権発動につながる。
市区町村長は,条文上,解任そのものの請求権者としては挙げられていない。
もっとも,成年後見の申立て自体は市区町村長申立ての事案が多く,実務では,本人・親族からの情報や監督を通じて家庭裁判所の職権解任が働くことになる。
第2 解任事由――民法846条の3類型
1 条文の構造
解任の実体要件は,民法846条が定める次の3つに限られる。
民法846条(後見人の解任)は,「後見人に不正な行為,著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは,家庭裁判所は,後見監督人,被後見人若しくはその親族若しくは検察官の請求により又は職権で,これを解任することができる」と定めている。
「不正な行為」と「著しい不行跡」は例示で,「その他後見の任務に適しない事由」が包括的な受け皿になっている。
2 不正な行為
法制審議会の部会資料は,「不正な行為」を「違法な行為又は社会的に非難されるべき行為」を意味するものと説明している。
典型は,本人の預貯金の使い込み(業務上横領),自己の口座への振替,本人名義の不動産を無断で担保に入れる行為など,後見人としての権限を濫用して本人の財産に損害を与える行為である。
この「不正な行為」は,民事上の解任事由であると同時に,刑事責任にも直結する。
家庭裁判所から選任された成年後見人が本人の財物を横領した場合について,最高裁判所は,後見事務が公的性格を有することを理由に,後見人と本人との間に親族関係があっても刑法244条1項(親族間の犯罪に関する特例。いわゆる親族相盗例)は準用されず,その親族関係を量刑上酌むべき事情として考慮するのも相当でないとした(最高裁平成24年10月9日決定)。
すなわち,親族が成年後見人となって本人の財産を使い込んだ場合でも,刑が免除されたり軽くなったりする扱いは認められない。
同じ判断は,これに先立つ未成年後見人の事案でも示されていた(最高裁平成20年2月18日決定)。
横領の民事・刑事上の責任と被害回復の手段は,成年後見人による横領──親族後見人と第三者後見人の比較を中心にで扱っている。
3 著しい不行跡
「著しい不行跡」について,前記の部会資料は「品行や操行が甚だしく悪いこと」を意味すると説明している。
後見人の素行の著しい悪さが本人の財産管理などに危険を生じさせる場合を想定した類型であるが,これだけを理由に解任される例は多くなく,実際には次の包括条項とあわせて問題になる。
4 その他後見の任務に適しない事由
(1) 包括的な受け皿
「その他後見の任務に適しない事由」は,前2類型に当たらなくても,後見の任務を果たすのに適さない事情があれば解任できるという包括的な受け皿である。
実務では,次のような事情がこれに当たり得ると考えられている。
①家庭裁判所の求めに応じず,財産の調査・財産目録の作成・後見事務の報告などを行わない(報告義務や監督〔民法863条〕への非協力)。
②財産管理がずさんで,必要な支出を怠るなど,管理が不適切である。
③本人との利益相反を放置し,特別代理人の選任などの必要な措置を採らない。
④病気・高齢・所在不明に近い状態などにより,職務の遂行が客観的に困難になっている。
もっとも,④について,前記の書籍184頁~185頁は,後見人の高齢化や体調の悪化による事務処理能力の低下がうかがわれても,本人の親族や支援者が補うなどして後見事務に具体的な支障がない限り,直ちに解任事由があるとまではいえないのが通常であるとしている。
同書は,後見監督人に対し,まず辞任許可の申立てや後見人の追加選任の申立てを勧め,具体的な支障がうかがわれるに至ったときに裁判所への報告や解任の申立て等をするよう求めている。
(2) 定期報告の遅れ――大阪家庭裁判所の運用
①の報告義務について,大阪家庭裁判所は,成年後見人等が本人の誕生月に毎年自主的に後見等事務報告書等を提出する方式を採っており,裁判所から提出を促す書面は送らないとしている(大阪家庭裁判所「後見人ハンドブック」令和8年2月1日版Q16)。
前記『【全訂版】成年後見人の実務2023』105頁は,提出期限までに報告書が提出されず,家庭裁判所の督促によっても督促期間内に提出がない場合は,不正行為の存在をうかがわせる重大な事象と捉えられ,解任事由に当たり得ると考えられているとする。
同書39頁は,大阪弁護士会が家庭裁判所に推薦した成年後見人等が当初の報告書提出期限を途過し,督促を受けた再度の提出期限も途過した場合には,大阪弁護士会の高齢者・障害者総合支援センター「ひまわり」に連絡が入り,担当副会長や担当委員が面談して事情を聴取し,提出期限の確約をとって家庭裁判所に連絡する運用を紹介している。
報告の遅れは,それ自体が解任の入口になり得る事情として扱われているといえる。
定期報告の書式と記載方法は,令和7年4月全国統一書式による後見等事務報告書・報酬付与申立事情説明書の書き方で扱っている。
(3) 利益相反に関する古い裁判例
利益相反に関しては,古い事案ながら参考になる裁判例がある。
成年後見制度の前身である禁治産制度のもとで,大阪高等裁判所は,後見人の欠格・解任の判断に関し,形式上は本人を当事者とする訴訟であっても,本人との間に実質的な利益相反関係がなければ問題となる「訴訟」には含まれないと判断した(大阪高裁昭和52年2月8日決定)。
形式ではなく実質的な利益相反の有無で判断するという発想は,現在の運用を考えるうえでも示唆的である。
ただし,この事案が扱ったのは当時の民法846条の号(現在の民法847条4号の欠格事由に相当する。)であり,現行の民法846条は号を持たない単一の解任規定になっている点に注意が必要である。
5 なぜ解任事由は限定されているか
前記の部会資料は,これらが解任事由とされている理由を,「判断能力……の不十分な本人の保護という成年後見人等の職責の重要性及び権限濫用による被害の重大性に鑑みたもの」と説明している。
裏を返せば,後見人の地位の安定(安易に解任されないこと)と本人保護との均衡として,解任は一定の重い事由に限定されている。
この「限定」が,第7で述べる令和8年改正の見直しの出発点になった。
第3 保佐人・補助人・任意後見人などへの広がり
解任の規律は,成年後見人に固有のものではなく,判断能力を補う他の担い手にも横断的に及ぶ。
①保佐人・補助人には,民法846条を含む844条から847条までの規定がそれぞれ準用される(保佐人につき民法876条の2第2項,補助人につき民法876条の7第2項)。
解任事由も手続の基本も後見人と同じである。
②後見監督人には,民法852条により846条・847条などが準用される。
成年後見監督人も同じ枠組みで解任され得る。
③任意後見人については,任意後見契約に関する法律8条が独自に定めている。
解任事由(不正な行為,著しい不行跡,その他その任務に適しない事由)は法定後見と同じであるが,請求できるのは任意後見監督人・本人・その親族・検察官に限られ,家庭裁判所の職権による解任は規定されていない。
この点が,職権解任のある法定後見(民法846条)との違いである。
第4 解任の手続
1 別表第一の審判事件
成年後見人の解任は,家事事件手続法にいう別表第一の審判事件として,家庭裁判所が扱う。
後見人にとっては職を失う処分であるため,手続保障と暫定的な措置,不服申立ての各段階が用意されている。
2 後見人の陳述聴取
家庭裁判所は,成年後見人を解任する審判をする場合には,その成年後見人の陳述を聴かなければならない(家事事件手続法120条1項4号)。
解任される側の言い分を聴かずに一方的に職を解くことはできない仕組みである。
3 審判前の保全処分(職務執行停止・職務代行者)
解任の審判が確定するまでには時間がかかり,その間に本人の財産が更に損なわれるおそれがある。
そこで家庭裁判所は,解任の審判事件が係属している場合において本人の利益のため必要があるときは,申立て又は職権により,解任の審判が効力を生ずるまでの間,後見人の職務の執行を停止し,又は職務代行者を選任することができる(家事事件手続法127条1項)。
職務執行を停止する審判は,停止される後見人・他の後見人・職務代行者に告知することで効力を生じ(同条2項),職務代行者には本人の財産の中から相当な報酬を与えることができる(同条4項)。
この保全処分は成年後見監督人の解任事件にも準用される(同条5項)。
前記『【全訂版】成年後見人の実務2023』125頁は,解任の申立てをするときに同時に審判前の保全処分を申し立てておくとよいとしている。
職務代行者の職務,報酬付与の手続及び効力の終期は,後見等開始の審判前の保全処分で扱っている。
4 不服申立て(即時抗告)
解任の審判とその却下に対しては,それぞれ即時抗告ができる。
①解任された成年後見人は,解任の審判に対して即時抗告ができる(家事事件手続法123条1項4号)。
②解任を認めなかった(却下の)審判に対しては,申立人,成年後見監督人,成年被後見人及びその親族が即時抗告ができる(同項5号)。
即時抗告は,2週間の不変期間内にしなければならない(家事事件手続法86条1項)。
期間の起算点は,審判の告知を受ける者かどうかによって異なる(同条2項)。
第5 解任の効果
解任は,後見人の地位を失わせるだけにとどまらない。
①欠格として,家庭裁判所で解任(免職)された者は,以後,後見人・保佐人・補助人となることができない(民法847条2号「家庭裁判所で免ぜられた法定代理人,保佐人又は補助人」)。
財産管理などの適格性に問題があると裁判所に認定された者だからである。
前記『【全訂版】成年後見人の実務2023』125頁は,解任された場合には欠格事由に該当することになるため,他の選任事件についても後見人ではなくなるとしている。
専門職後見人にとって,1件の解任が受任中の全ての事件に及ぶことになる。
②新たな後見人の選任として,後見人が欠けることになるため,家庭裁判所が職権又は請求により後見人を選任する(民法843条2項)。
③損害賠償・刑事責任として,不正な行為による解任の場合,本人(新たな後見人)からの損害賠償請求や,業務上横領罪(刑法253条)の刑事責任が問題になる。
前記のとおり,親族であっても親族相盗例による免除・減軽は認められない。
第6 数字で見る後見人の不正(最高裁の実情調査)
「不正な行為」による解任がどの程度あるのかは,最高裁判所事務総局家庭局の実情調査で数値化されている。
次は,家庭裁判所が各年(1月から12月)に不正事例への一連の対応を終えたものとして把握した件数と被害額である(いずれも概数)。
ピークだった平成26年と,近年の令和の各年を示す。
| 年 | 件数(総数) | 被害額 | うち専門職の件数 |
|---|---|---|---|
| 平成26年(ピーク) | 831 | 約56億7千万円 | 22 |
| 令和元年(平成31年含む) | 201 | 約11億2千万円 | 32 |
| 令和2年 | 185 | 約7億9千万円 | 30 |
| 令和3年 | 169 | 約5億3千万円 | 9 |
| 令和4年 | 191 | 約7億5千万円 | 20 |
| 令和5年 | 184 | 約7億円 | 29 |
| 令和6年 | 188 | 約7億9千万円 | 27 |
| 令和7年 | 178 | 約7億9千万円 | 26 |
この数字からは,2つのことが読み取れる。
第1に,不正の件数・被害額は平成26年(831件・約56億7千万円)を境に大きく減少し,近年は年180件前後・被害額7億円から8億円台で推移している。
第2に,不正の大半は親族の後見人によるものであり,弁護士・司法書士などの専門職による件数は各年の総数のごく一部にとどまる。
件数の減少の背景としては,後見制度支援信託・支援預貯金の普及や,専門職後見人・後見監督人の活用が指摘されている。
すなわち,専門職の起用と監督の強化が,不正(=解任の最大のきっかけ)の予防として機能していると考えられる。
支援信託・支援預貯金の仕組みと利用状況は,後見制度支援信託と後見制度支援預貯金で扱っている。
この調査は,各年に家庭裁判所が対応を終えた件数であって,不正行為そのものが当該年に行われたことを示すものではない。
また,平成23年10月及び平成24年4月に報告対象事件の定義が変更されているため単純な年別比較はできず,数値はいずれも概数である。
第7 令和8年改正による解任事由の見直し
1 見直しの背景
ここまで述べたとおり,現行法では解任事由が「不正な行為」「著しい不行跡」「その他後見の任務に適しない事由」に限定されているため,不正はないが本人の利益にかなわないという場面では交代させにくいという課題が指摘されてきた。
法制審議会の部会資料は,遺産分割の協議のために選任された後見人が,協議の終了後に本人の身上保護のための関係機関の連携会議などに関与しないにもかかわらず,財産管理は適切に行っているとして辞任に応じない事例を挙げ,現行の解任事由がない場合でも後見人の職を解くべきときの要件を検討する必要があるとしていた。
2 改正の内容
この検討を経て,令和8年6月24日に「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)が公布された。
成年後見制度に関する部分は,公布から2年6月を超えない範囲で政令で定める日に施行されることとされており,基準日現在未施行である。
解任に関する主な内容は次のとおりである(条番号は法務省の新旧対照条文による)。
①法定後見の一元化として,後見・保佐を廃止し,基本的に「補助」の制度に一元化する。
特定の行為ごとに,個別に代理権を付与し,又は同意を要する審判をする仕組みへと改められる。
②補助人の解任事由は,改正後の民法876条の5で3号に組み直される。
1号は「補助人が不正な行為をしたとき」,2号は「補助人がその任務に著しく反したことによりその職務を継続させることが相当でないとき」,3号は「補助開始の審判を受けた者の利益のため特に必要があるとき」である。
現行の「著しい不行跡」「その他後見の任務に適しない事由」という文言はなくなり,任務違反の程度で判断する2号と,後見人側の非違を前提としない3号とに整理されることになる。
請求権者は補助監督人,本人若しくはその親族又は検察官で,職権による解任もできる。
③3号の事由で解任された者は欠格事由から除かれる(改正後の民法876条の6第2号「家庭裁判所で免ぜられた法定代理人又は補助人(前条第三号の事由により解任されたものを除く。)」)。
本人の利益のために交代するにすぎない場合に,他の事件の地位まで失わせないための手当てである。
④改正後の家事事件手続法では,補助人の解任の審判に対して補助人が即時抗告をすることができるのは,1号又は2号の事由により解任された場合に限られる。
⑤任意後見人の解任は改正後の任意後見契約に関する法律12条に移り,解任事由が「不正な行為をしたとき,又は任意後見人がその任務に著しく反したことによりその職務を継続させることが相当でないとき」に改められ,請求権者に補助人及び補助監督人が加わり,職権による解任も可能になる。
⑥本人の意向の尊重として,補助人に本人の意向を把握し尊重する義務が明確化され(改正後の民法876条の11),選任時に家庭裁判所が考慮すべき要素の冒頭に「本人の意見」が置かれる。
3 既存の成年後見人への適用
施行日前に後見開始の審判がされた成年被後見人とその成年後見人・成年後見監督人には,原則として従前の例が適用される(同法附則2条1項)。
しかし,成年後見人及び成年後見監督人の解任については,成年後見人を補助人と,成年後見監督人を補助監督人とそれぞれみなして,改正後の民法876条の5が適用される(同法附則2条2項)。
保佐人・保佐監督人も同様である(同法附則3条2項)。
したがって,施行後は,既存の成年後見人も,不正がなくても「本人の利益のため特に必要があるとき」に解任され得ることになる。
本人の意向の尊重についても,改正後の民法876条の11が既存の成年後見人に適用される(同法附則2条3項)。
解任理由の考え方は,従来の「後見人の側の非違(不正・不行跡・任務への不適格)」を中心とするものから,「本人の利益に照らした交代の必要性」を含むものへと,軸が広がっていくことになる。
改正の全体像は令和8年成年後見制度改正と関係法律61本の整備で,後見監督人の制度の変化は後見監督人とは――選任基準,職務,責任及び令和8年改正による制度再編で扱っている。
第8 出典・参考資料
1 法令
民法(843条,844条,845条,846条,847条,852条,859条,863条,876条の2,876条の7)
任意後見契約に関する法律(4条,8条)
家事事件手続法(86条,120条,123条,127条)
刑法(244条1項,253条)
民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)附則2条・3条,同法による改正後の民法876条の5,876条の6,876条の11,任意後見契約に関する法律12条及び家事事件手続法 法務省「新旧対照条文(民法等改正法)」,法務省「民法等の一部を改正する法律」
2 裁判例
最高裁平成24年10月9日決定(平成24年(あ)第878号・業務上横領被告事件,刑集66巻10号981頁)
最高裁平成20年2月18日決定(平成19年(あ)第1230号・業務上横領被告事件,刑集62巻2号37頁。未成年後見人の事案)
大阪高裁昭和52年2月8日決定(昭和49年(ラ)第212号・後見人解任並びに後見人選任申立却下審判に対する即時抗告申立事件,家庭裁判月報29巻9号82頁。旧民法846条5号の解釈。裁判所HP未掲載)
3 公的資料
法制審議会民法(成年後見等関係)部会 部会資料4「成年後見人等の交代等(辞任・解任を含む。)……」 法務省・PDF
法務省民事局「民法等の一部を改正する法律(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」 法務省
最高裁判所事務総局家庭局「後見人等による不正事例」 裁判所ウェブサイト
大阪家庭裁判所「後見人ハンドブック」(令和8年2月1日版) 大阪家庭裁判所
4 文献
大阪弁護士会高齢者・障害者総合支援センター編『【全訂版】成年後見人の実務2023』(大阪弁護士協同組合,2023年)39頁,105頁,124頁~125頁
大阪家庭裁判所後見センター編『大阪家庭裁判所後見センターだより』(大阪弁護士協同組合,2025年)169頁~185頁
5 関連記事
成年後見人による横領──親族後見人と第三者後見人の比較を中心に
後見監督人とは――選任基準,職務,責任及び令和8年改正による制度再編
令和8年成年後見制度改正と関係法律61本の整備
成年後見事件における親族の意向の取扱い――選任,職務遂行及び解任の各場面における法的地位
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後見制度支援信託と後見制度支援預貯金――仕組み,専門職後見人の職務及び最新の利用状況