目次
- 第1 最初に確認する結論
- 第2 新法事件と旧法事件の定義
- 第3 みなし提起その他の先行手続がある場合
- 第4 併合,反訴及び独立当事者参加
- 第5 旧法事件でもmintsを利用できる場合がある
- 第6 区分によって変わる主な取扱い
- 第7 判定の手順
- 第8 関連記事
- 出典・参考資料
民事訴訟手続の全面的なデジタル化を定めた令和4年法律第48号は,令和8年5月21日に施行された。
同日以後に提起された訴えに係る事件は新法適用事件(以下「新法事件」という。),同日前に提起された訴えに係る事件は旧法適用事件(以下「旧法事件」という。)となる。
この区分は,電子申立ての義務の有無,手数料の納付方法,直送と受領書の要否,送達の方法及び反訴の提出方法をいずれも左右する。
mintsの操作画面に事件が表示されているかどうかでは決まらず,操作する日の日付でも決まらない。
本記事では,新法事件と旧法事件の区分の基準,みなし提起その他の先行手続がある場合の例外,併合及び反訴の扱い,並びに旧法事件でもmintsを利用できる場合を,一つの記事にまとめて説明する。
第1 最初に確認する結論
1 基準は「第一審の訴えが提起された日」である
区分の基準は,操作日でも,判決の言渡日でも,上訴の申立日でもない。
原則として,第一審の訴えが提起された日又は事件が開始された日である。
したがって,令和8年5月21日以後に判決が言い渡され,又は上訴を申し立てる事件であっても,第一審の訴え提起日が同月20日以前であれば,原則として旧法事件である。
2 判定に用いる資料
判定は,次の資料を照合して行う。
①第一審記録の受付日(訴状の受付印又は事件記録上の受付年月日)
②先行手続がある場合は,その先行手続の申立日
③併合がある場合は,併合された各事件の区分
④係属部から示された運用の案内
事件番号の年度やmints上の表示だけで判断してはならない。
第2 新法事件と旧法事件の定義
1 条文上の区分
新法事件とは,施行日以後に提起された訴えに係る事件,又は施行日以後に開始される民事訴訟に関する事件をいう。
旧法事件とは,施行日前に提起された訴えに係る事件,又は施行日前に開始された民事訴訟に関する事件(訴えに係る事件を除く。)をいう。
電子申立ての義務が課されるかどうかが変わるため,事件を受任した段階で最初に確認したい。
2 控訴事件及び抗告事件は原審の申立日で判定する
控訴事件及び抗告事件では,上訴又は抗告の申立日ではなく,原審事件の申立日が基準となる。
知的財産高等裁判所の案内も,控訴事件及び抗告事件について,原審事件が申し立てられた日を基準として新旧の取扱いを分けると説明している。
3 旧法事件では控訴状等を紙で提出する
旧法事件では,控訴状,上告状又は上告受理申立書そのものをmintsの新規申立て機能で提出するのではなく,紙で原裁判所へ提出し,収入印紙及び郵便費用を従前の方法で納付する。
旧法事件の第一審でmintsを利用していた場合であっても,そのことだけで控訴状等を電子提出できるわけではない。
「控訴審でmintsを利用できること」と「控訴状をmintsで提出できること」は区別する必要がある。
第3 みなし提起その他の先行手続がある場合
1 支払督促から督促異議へ移行した場合
施行日前に支払督促を申し立て,施行日後に督促異議があった場合は,みなし提起の時点(督促申立て時)が施行日前であるため,旧法事件となる(民事訴訟法第395条)。
2 民事調停が不成立となった後に訴えを提起した場合
施行日前に民事調停を申し立て,施行日後に不成立となり,2週間以内に訴えを提起した場合は,現実の訴え提起が施行日後であるため,新法事件となる(民事調停法第19条)。
3 その他の先行手続
支払督促のほか,訴え提起前の和解,労働審判及び刑事事件における損害賠償命令等については,施行日前に申し立てられた先行手続が後に訴訟へ移行した場合,法律上,施行日前に訴えが提起されたものと扱われることがある。
これに対し,施行日前に民事調停又は認証ADRを申し立て,施行日後に別途訴えを提起した場合は,原則として新法事件となる。
先行手続がある事件では,「現実の訴え提起がいつか」と「法律上いつ訴えが提起されたものとみなされるか」を分けて確認する必要がある。
これらの分岐は,裁判所の「民事裁判手続のデジタル化に関する準備の手引」42頁~44頁に整理されている。
第4 併合,反訴及び独立当事者参加
1 併合すると事件全体が旧法事件となる
施行日前に提起された旧法事件と,施行日後の新法事件を弁論併合すると,併合時から事件全体が旧法事件として扱われる。
もっとも,新法事件として併合前に電子提出された準備書面を,併合を理由として紙で再提出する必要はない。
過去に提出したファイルを再提出するかという問題と,今後の提出方法をどうするかという問題は分けて管理する。
2 旧法事件への反訴・独立当事者参加
旧法事件への反訴及び独立当事者参加は,要件を満たす限り,その提起時から旧法事件となる。
この場合は書面による申立てが必要であり,手数料は収入印紙で納付し,郵便費用を予納する。
操作マニュアルも,旧法事件ではmintsを利用した手数料納付をしないよう注意している。
3 併合後の直送・受領書は表示のまま前提にしない
併合後に新たに提出する準備書面の直送及び受領書は,併合前の画面表示をそのまま前提にせず,併合後の事件区分と担当部の指示を確認する。
事件区分と直送の手段の組合せごとの受領書の要否は,準備書面の直送と受領書で説明している。
第5 旧法事件でもmintsを利用できる場合がある
1 経過措置による利用条件
全面施行前のmints規則及び細則は令和8年5月21日に廃止されたが,経過措置により,同月20日以前に訴えの提起等がされた事件には引き続き適用される。
裁判所の民事裁判手続のデジタル化のページによれば,①当事者双方に委任を受けた訴訟代理人があり,②双方がmintsの利用を希望するなど従前の条件を満たす事件では,旧規則に基づく電子提出を継続できる。
反対に,本人がmintsのアカウントを取得しているだけでは旧法事件を利用対象にできない。
また,双方に代理人がいても一方が利用を希望しない場合は,旧法事件についてmintsで提出することはできない。
2 「mints上に事件があるから新法事件である」とは限らない
同じ利用者の事件一覧に,新法事件と経過措置による旧法事件が並ぶことがある。
しかし,提出,直送,受領書及び送達の扱いは同一ではない。
旧法事件でmintsにより当事者ファイルを受領した場合は,受領書作成画面から受領書を提出する。
新法事件のシステム直送では受領書を提出しないため,同じ画面を使っていても取扱いが分かれる。
期日請書についても,旧法事件で既にmintsを利用している場合は,個別の指示がない限り現在の画面上の「その他」から提出し,mintsを利用していない場合はファクシミリ,郵送その他の方法について係属部の指示を確認する。
第6 区分によって変わる主な取扱い
| 場面 | 新法事件 | 旧法事件 |
|---|---|---|
| 訴え提起・控訴等の申立て | mintsで電子提出する | 紙で原裁判所へ提出する |
| 申立手数料 | 郵便費用相当額を含む額をPay-easyで現金納付する | 収入印紙で納付し,郵便費用を別に予納する |
| 準備書面の直送 | システム直送とし,別紙の受領書を提出しない | mintsで受領した場合は受領書を提出する |
| 反訴・独立当事者参加 | mintsの新規申立ての「その他」から提出する | 書面で提出する |
| 利用の条件 | 訴訟代理人には電子申立ての義務がある | 双方に代理人があり双方が利用を希望する等の条件が必要である |
第7 判定の手順
提出方法を決める前に,次の順序で確認すると誤りが少ない。
①第一審の訴え提起日又は事件開始日を確認する。
②先行手続(支払督促,訴え提起前の和解,労働審判,損害賠償命令,民事調停等)の有無を確認し,みなし提起の有無を判定する。
③控訴・抗告であれば原審事件の申立日を確認する。
④併合の有無を確認し,併合されていれば事件全体の区分を確認する。
⑤旧法事件であれば,双方に代理人があり双方が利用を希望しているかを確認する。
⑥以上を踏まえ,提出方法,手数料の納付方法及び受領書の要否を決める。
判定に迷う場合は,提出前に係属部へ確認する。
提出方法を誤ると,適式な申立てとして扱われないおそれがあるほか,期限の管理にも影響する。
第8 関連記事
①mintsを利用できる裁判所と対象事件―旧法事件,少額訴訟,支払督促及び対象外手続
②mintsの義務化はいつからか―対象者,対象事件及び紙提出の例外
③mintsで控訴・上告・上告受理申立てをする方法
④mintsで準備書面を提出する方法
⑤mintsで反訴・訴えの変更をする方法
⑥mintsで期日請書を提出する方法
⑦mintsに関する弁護士向けQ&A
出典・参考資料
①民事訴訟法(平成8年法律第109号)
②民事調停法(昭和26年法律第222号)
③裁判所「民事裁判手続のデジタル化に関する準備の手引」42頁~44頁
④裁判所「民事裁判手続のデジタル化」
⑤mints「mints操作マニュアル」
⑥知的財産高等裁判所のmintsに関する案内
⑦廃止された民事裁判書類電子提出システムに関する規則