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mintsで控訴・上告・上告受理申立てをする方法―提出先,不変期間,手数料及び旧法事件の区分(AI作成)

第1 この記事の対象と最初に確認する事項

1 通常民事訴訟の上訴を対象とする

この記事は,令和8年8月26日現在の法令及び裁判所資料に基づき,通常民事訴訟の判決に対して,弁護士等の訴訟代理人がmintsで控訴,上告又は上告受理申立てをする場合を対象とする。
人事訴訟,家事事件,人身保護事件その他の特別手続には,提出方法又は期間について別の規定があるため,そのまま当てはめることはできない。

mintsを使えるかどうかは,現在の日付や判決日だけでは決まらない。
原則として,第一審の訴えが令和8年5月21日以後に提起された新法事件であることを確認した上で,判決書の送達時点,法定の提出先及び上訴の種類を確定する必要がある。

2 最初に確認する四つの事項

上訴の準備を始めるときは,次の四点を最初に確認する。
① 第一審の訴えが提起された日
② 判決書の送達方法及び送達効力が生じた日時
③ 控訴,上告又は上告受理申立ての法定提出先
④ 訴訟代理人の委任状に上訴についての特別委任があるかどうか

判決送達後2週間の上訴期間は不変期間であるのに対し,控訴理由書,上告理由書及び上告受理申立て理由書の通常の提出期間である50日間は不変期間ではない。
この二種類の期間は,起算点,提出先及び期間を守らなかった場合の効果が異なる。

第2 新法事件と旧法事件の区分

1 第一審の訴え提起日で判定する

令和4年法律第48号による民事訴訟手続の全面的なデジタル化は,令和8年5月21日に施行された。
経過措置上の新法事件と旧法事件の区分は,上訴を申し立てる日ではなく,原則として第一審の訴えが提起された日を基準とする。

第一審の訴え提起日区分控訴状等の基本的な提出方法
令和8年5月20日以前旧法事件紙で原裁判所へ提出する
令和8年5月21日以後新法事件mintsで原裁判所へ電子提出する

したがって,令和8年5月21日以後に判決が言い渡され,又は上訴を申し立てる事件であっても,第一審の訴え提起日が同月20日以前であれば,原則として旧法事件である。
事件番号の年度やmints上の表示だけで判断せず,第一審記録の受付日を確認する必要がある。

2 先行手続と併合事件の例外

支払督促,訴え提起前の和解,労働審判及び刑事事件における損害賠償命令等については,施行日前に申し立てられた先行手続が後に訴訟へ移行した場合,法律上,施行日前に訴えが提起されたものと扱われることがある。
これに対し,施行日前に民事調停又は認証ADRを申し立て,施行日後に別途訴えを提起した場合は,原則として新法事件となる。

新法事件と旧法事件が併合された場合は,併合後の事件全体について旧法事件として手続を進める。
これらの分岐は,裁判所の「民事裁判手続のデジタル化に関する準備の手引」42頁~44頁に整理されている。

3 旧法事件では控訴状等を紙で提出する

旧法事件では,控訴状,上告状又は上告受理申立書そのものをmintsの新規申立て機能で提出するのではなく,紙で原裁判所へ提出し,収入印紙及び郵便費用を従前の方法で納付する。
旧法事件の第一審でmintsを利用していた場合であっても,そのことだけで控訴状等を電子提出できるわけではない。

控訴審が係属した後は,双方に訴訟代理人が選任され,双方の代理人が同意するなどの条件を満たせば,準備書面や証拠等の提出にmintsを利用できることがある。
「控訴審でmintsを利用できること」と「控訴状をmintsで提出できること」は区別する必要がある。

旧法事件と新法事件の対象範囲については,「mintsを利用できる裁判所と対象事件―旧法事件,少額訴訟,支払督促及び対象外手続(AI作成)」で詳しく説明している。

第3 上訴の種類,提出先及び上級裁判所

1 控訴,上告及び上告受理申立ての提出先

控訴状は民事訴訟法286条1項,上告状及び上告受理申立書は同法314条1項及び318条5項により,いずれも原裁判所へ提出する。
上級裁判所へ直接提出する制度ではない。

対象となる判決手続法定の提出先審理する裁判所
簡易裁判所の第一審判決控訴判決をした簡易裁判所地方裁判所
地方裁判所の第一審判決控訴判決をした地方裁判所高等裁判所
地方裁判所が控訴審としてした判決上告原判決をした地方裁判所高等裁判所
高等裁判所の判決上告原判決をした高等裁判所最高裁判所
高等裁判所の判決上告受理申立て原判決をした高等裁判所最高裁判所

mintsの画面では,書面を受け付ける「提出先裁判所」と,上訴を審理する「申立先裁判所」を別々に入力する。
提出先を上級裁判所とするのではなく,控訴では第一審裁判所,上告及び上告受理申立てでは原判決をした裁判所を提出先に指定する。

2 上告受理申立てができる事件

民事訴訟法318条1項の上告受理申立ては,上告をすべき裁判所が最高裁判所である場合に限られる。
高等裁判所が終審となる事件,例えば簡易裁判所の第一審判決について地方裁判所が控訴審判決をした事件では,高等裁判所への上告はできるが,最高裁判所に対する上告受理申立てはできない。

最高裁判所への上告は,憲法違反及び民事訴訟法312条2項の絶対的上告理由等を対象とする。
上告受理申立ては,最高裁判所の判例等と相反する判断又は法令の解釈に関する重要な事項を含む事件を対象とし,単なる事実誤認を審査してもらうための手続ではない。

3 上訴についての特別委任

民事訴訟法55条2項3号により,控訴,上告若しくは上告受理申立て又はこれらの取下げについては,訴訟代理人に対する特別の委任が必要である。
第一審で提出した委任状に上訴についての授権が含まれているかを確認し,不足する場合は新たな委任状を取得する必要がある。

第一審の訴訟追行についての一般的な委任を受けていたというだけで,特別委任の確認を省略すべきではない。
mintsへ委任状を添付するかどうかは,既に提出された委任状の内容及び原裁判所の記録状況を確認した上で判断する。

第4 判決送達後2週間の不変期間

1 控訴,上告及び上告受理申立ての期間

控訴は民事訴訟法285条,上告及び上告受理申立ては同法313条及び318条5項により,判決書の送達を受けた日から2週間以内にしなければならない。
この2週間は不変期間であり,判決言渡日ではなく,判決書の送達効力が生じた日を基準に計算する。

判決書の送達前にした控訴,上告又は上告受理申立ても有効である。
もっとも,早期提出をする場合でも,申立ての対象となる判決,原裁判所,請求の範囲及び手数料を特定できる状態で提出する必要がある。

2 新法事件における電子送達の効力発生時点

新法事件で判決書がシステム送達された場合,民事訴訟法109条の3第1項により,原則として,①送達対象情報を閲覧した時,②その情報を電磁的記録として保存した時,又は③送達通知が発せられた日から1週間を経過した時のうち,最も早い時に送達の効力が生じる。
通知メールを受信した時が直ちに送達時点になるわけではないが,メールを開かなければ期間が進行しないという制度でもない。

補助者が送達対象情報を閲覧又は保存できる権限を持つ場合は,補助者の操作によって送達効が生じる可能性を前提として,事務所内の閲覧ルールを定める必要がある。
送達時刻を確認するときは,メールの受信日時ではなく,mintsの送達記録及び閲覧・保存の記録を確認する。

システム送達と期限管理の詳細は,「mintsのシステム送達と期限管理―応訴・通知メール・電子判決書・控訴期間」で説明している。

3 期間の計算と付加期間

民事訴訟法95条及び民法の期間計算により,通常は送達日を初日に算入せず,翌日から2週間を数える。
期間の末日が日曜日,土曜日,国民の祝日,1月2日若しくは3日又は12月29日から31日までに当たる場合は,その翌日まで期間が延びる。

裁判所は,住所地と裁判所の所在地との距離又は通信・交通の事情を考慮し,民事訴訟法96条2項により不変期間について付加期間を定めることができる。
外国居住者等について付加期間が定められているかどうかは,判決書及び事件記録で個別に確認する必要がある。

4 不変期間を守れなかった場合の追完

民事訴訟法97条1項により,当事者が裁判所システムの故障その他の責めに帰することができない事由により不変期間を守れなかった場合は,その事由が消滅した後1週間以内に限り,上訴を追完できる。
外国にいる当事者については2か月である。

追完は,単に期限を失念した場合の一般的な救済制度ではない。
最高裁第三小法廷昭和54年7月31日判決は,訴訟の提起を知りながら判決の有無を調査しなかった事案について,控訴期間を守れなかったことが責めに帰することができない事由によるとはいえないとした。

2週間を過ぎた可能性がある場合は,追完が当然に認められると考えて通常の控訴準備を続けるのではなく,送達記録,障害記録,関係者の操作記録及び事由が消滅した日時を直ちに確定する必要がある。
責めに帰することができない事由を裏付けられず,追完期間も経過している場合は,通常の上訴手続による回復は困難である。

第5 mintsで上訴を申し立てる手順

1 新規申立て前の確認

新法事件について上訴するときは,mintsのホーム画面から新規申立てを開始する前に,①新法事件であること,②提出先となる原裁判所,③審理をする申立先裁判所,④下級審の事件番号,⑤不服を申し立てる範囲,⑥訴訟物の価額,⑦特別委任及び⑧提出期限を確認する。
控訴状等を作成できていても,提出先又は申立種別を誤ると期間内の適法な提出にならないおそれがある。

控訴では「申立種別:控訴」を選び,上告又は上告受理申立てでは「申立種別:上告・上告受理」を選択する。
第一審の訴え提起で用いる画面と共通する入力項目があるが,入力すべき下級審事件番号及び裁判所は上訴の種類ごとに異なる。

2 提出先裁判所と申立先裁判所の入力

控訴では,「提出先裁判所」に第一審判決をした裁判所,「申立先裁判所」に控訴裁判所を入力し,第一審事件番号を入力する。
地方裁判所の第一審判決に対する控訴であれば,提出先は地方裁判所,申立先は高等裁判所となる。

上告及び上告受理申立てでは,「提出先裁判所」に原判決をした裁判所,「申立先裁判所」に上告裁判所を入力し,第二審事件番号を入力する。
高等裁判所の控訴審判決に対する上告及び上告受理申立てであれば,提出先は高等裁判所,申立先は最高裁判所となる。

3 申立書,委任状その他の添付

mintsの新規申立て画面では,当事者,代理人,請求内容,訴訟物の価額及び手数料に関する情報を入力し,申立書及び必要な別紙をPDFで添付する。
委任状又は資格証明書については,原裁判所の記録にある書面で代理権を確認できるか,新たな添付を求められるかを提出前に確認する。

申立ての趣旨及び理由を画面へ直接入力する方法と,別紙PDFとして添付する方法がある。
不服申立ての範囲,当事者表示,原判決の表示及び申立ての趣旨が画面入力と添付PDFで食い違わないよう,送信前のプレビューで照合する。

4 上告と上告受理申立てを一通でする場合

民事訴訟規則188条により,上告状と上告受理申立書は一通の書面で兼ねることができる。
一通で提出する場合は,上告と上告受理申立ての双方をする書面であることを明記し,両者の申立ての趣旨及び理由を区別する。

上告理由は民事訴訟法312条所定の事由を対象とし,上告受理申立て理由は同法318条1項の判例相反又は法令解釈上の重要事項を対象とする。
一通で提出できることは,両者の理由を区別せずに記載してよいことを意味しない。

5 提出済み表示と受付記録の保存

民事訴訟法132条の10第3項により,電子申立ては,情報が裁判所の使用する電子計算機に備えられたファイルへ記録された時に裁判所へ到達したものとみなされる。
アップロードを開始した時又は送信ボタンを押した時ではなく,裁判所システムへの記録が基準となる。

送信後は,mintsの状態が「提出中」のままになっていないかを確認し,「提出済」の表示,受付番号,受理日及び提出日時を保存する。
提出した申立書のプレビュー又はダウンロードデータも保存し,送信したファイルと事務所内の確定版が一致することを確認する。

第6 控訴理由書,上告理由書及び上告受理申立て理由書

1 控訴理由書は控訴提起後50日以内に控訴裁判所へ提出する

民事訴訟規則182条は,控訴状に第一審判決の取消し又は変更を求める具体的な理由を記載していないときは,控訴提起後50日以内に,その理由を記載した書面を控訴裁判所へ提出するものとしている。
起算点は控訴提起通知書の送達日ではなく,控訴を提起した日である。

控訴状を提出する裁判所は第一審裁判所であるのに対し,別途提出する控訴理由書の提出先は控訴裁判所である。
同じ上訴手続の書面であっても提出先が異なるため,控訴審事件がmintsに表示された後,事件番号と提出先を確認して提出する。

2 上告理由書等は通知書の送達後50日以内に原裁判所へ提出する

民事訴訟規則194条は,上告提起通知書の送達を受けた日から50日以内に上告理由書を原裁判所へ提出するものとしている。
上告受理申立て理由書についても,同規則199条により,同じ提出期間及び提出先に関する規定が準用される。

上告状又は上告受理申立書に,最高裁判所規則が定める方式による理由を既に記載している場合は,その同じ理由を記載した書面を改めて提出する必要はない。
別途理由書を提出する場合は,通知書の現実の送達日と50日の満了日を記録し,上告理由と上告受理申立て理由をそれぞれ法定の理由へ対応させる。

3 50日間は不変期間ではない

控訴理由書,上告理由書及び上告受理申立て理由書の通常の50日間は,不変期間ではない。
裁判所は民事訴訟法96条1項により期間を伸長できるが,伸長は当然に認められるものではないため,必要が判明した時点で速やかに申し立てる必要がある。

通常民事訴訟以外では異なる期間が定められていることがある。
例えば,普通地方公共団体に対する国の関与等に関する訴訟では理由書の期間は10日,人身保護事件では15日であるため,「理由書はすべて50日」と理解してはならない。

4 原裁判所ができる審査の範囲

上告理由書又は上告受理申立て理由書が期間内に提出されず,又は最高裁判所規則が定める記載方式を欠く場合,原裁判所は民事訴訟法316条1項及び318条5項により申立てを却下する。
最高裁第二小法廷平成12年7月14日決定は,期間内に提出された書面のいずれにも同法312条1項・2項の事由が記載されていない場合,原裁判所は補正命令をせず,直ちに上告を却下すべきであるとした。

これに対し,最高裁第三小法廷平成11年3月9日決定は,提出された上告理由が実質的に事実誤認の主張にすぎない場合でも,原裁判所が理由の実質を審査して上告を却下することはできないとした。
最高裁第一小法廷平成11年3月9日決定も,民事訴訟法318条1項の受理要件を満たさないという理由で原裁判所が上告受理申立てを却下することはできないとしている。

第7 申立手数料とペイジー納付

1 新法事件では郵便費用相当額を含む手数料となる

新法事件では,民事訴訟費用等に関する法律別表第二により,従来の訴額対応部分に郵便費用相当額を加えた申立手数料を納付する。
弁護士等がmintsで電子提出する場合の加算額は,控訴が800円,上告及び上告受理申立てが1100円である。

新法事件を書面で提出することが許される場合の加算額は,控訴が1900円,上告及び上告受理申立てが2700円である。
旧法事件では,従来どおり,控訴は第一審手数料の1.5倍,上告及び上告受理申立ては2倍を収入印紙で納付し,郵便費用を別途予納する。

事件区分と提出方法控訴上告・上告受理申立て
旧法事件第一審手数料の1.5倍+別途郵便費用第一審手数料の2倍+別途郵便費用
新法事件・電子提出第一審の基礎額の1.5倍+800円第一審の基礎額の2倍+1100円
新法事件・適法な紙提出第一審の基礎額の1.5倍+1900円第一審の基礎額の2倍+2700円

2 代表的な訴額における手数料

裁判所の「手数料額早見表」による代表的な金額は,次のとおりである。
金額は申立手数料であり,弁護士費用その他の費用を含まない。

訴額控訴・旧法控訴・新法電子上告等・旧法上告等・新法電子
10万円1500円2300円2000円3100円
100万円1万5000円1万5800円2万円2万1100円
1000万円7万5000円7万5800円10万円10万1100円

新法事件の電子申立てでは,裁判所から通知された納付番号等を用いてペイジーで納付する。
新規申立て画面に入力した金額だけを根拠に送金せず,裁判所から届いた納付情報の事件,費目,金額及び納付期限を照合する。

ペイジー納付の画面と確認事項については,「mintsの手数料をPay-easyで納付する方法|金額確認・郵便費用相当額・納付期限・還付(AI作成)」で説明している。

3 上告と上告受理申立てを併用する場合

民事訴訟費用等に関する法律3条4項により,上告と上告受理申立てを併用する場合,一方について納めた手数料は,両申立てに共通する利益の範囲で,他方についても納めたものとみなされる。
同じ原判決の同じ部分について上告と上告受理申立てを併用する通常の場合は,二重に全額を納付する扱いではない。

もっとも,条文上は「共通する利益の限度」という限定がある。
不服申立ての範囲が両手続で異なる場合は,自己判断で一件分と決めず,原裁判所が示す納付額を確認する必要がある。

第8 システム障害と期限切迫時の対応

1 電子提出義務の例外

民事訴訟法132条の11第1項により,委任を受けた訴訟代理人等は,原則として裁判所の電子情報処理組織を使用して申立て等をしなければならない。
ただし,同条3項は,裁判所の使用する電子計算機の故障その他の責めに帰することができない事由により電子提出ができない場合を,電子提出義務の例外としている。

電子提出できない事情があるからといって,2週間の不変期間が自動的に停止するわけではない。
障害の内容と期限までの残り時間に応じて,原裁判所と連絡を取り,紙による提出その他の代替方法を選ぶ必要がある。

2 復旧を待たずに原裁判所へ連絡する

裁判所の「民事裁判手続のデジタル化に関する準備の手引」46頁は,控訴期限が迫っている場面でシステム障害が発生した場合,障害情報を確認して裁判所へ連絡し,書面による申立てを検討する対応を示している。
期限直前には,mintsの復旧だけを待つべきではない。

保存すべき資料は,①裁判所の障害情報,②エラー画面及び発生時刻,③送信を試みたファイル,④原裁判所への連絡日時及び担当者,⑤紙で提出した場合の受付記録並びに⑥障害が解消した日時である。
これらは,適法な代替提出を説明するだけでなく,期間の追完が問題となった場合に責めに帰することができない事由とその消滅時点を示す資料となる。

具体的な障害別の分岐については,「mintsで電子申立てができない場合の対応―システム障害・期限切迫・代替提出」で説明している。

3 ファクシミリは代替提出方法にならない

民事訴訟規則3条1項は,手数料を納付すべき申立て,訴訟手続を開始・続行・完結させる申立て,代理権を証明する書面並びに上告理由書及び上告受理申立て理由書等を,ファクシミリで提出できる書面から除外している。
したがって,mintsに障害がある場合でも,控訴状等をファクシミリ送信するだけでは代替提出にならない。

紙で提出する場合は,法定の提出先である原裁判所への到達を確保し,収入印紙その他の納付方法について同裁判所の指示を受ける。
郵送又は持参のどちらを選ぶ場合も,発送時ではなく原裁判所への到達が期間内であることを確認する必要がある。

第9 上訴手続に関する裁判例

上訴手続に関する裁判例からは,提出先,期間内到達,理由書の方式及び追完について,次の実務上の帰結を確認できる。

裁判例判示内容と実務上の意味
東京高裁昭和38年11月5日判決・昭和37年(ツ)第197号・下級裁判例集16巻8号637頁上告理由書を誤って上告裁判所へ直接提出した場合,転送されれば期間内に原裁判所へ届いたはずであっても,期間を守ったことにはならないとした。mintsでも提出先裁判所の選択を確認する必要がある。
最高裁第二小法廷平成12年7月14日決定・平成12年(オ)第547号・集民198号457頁期間内の書面に民事訴訟法312条1項・2項の理由が全く記載されていないときは,原裁判所は補正命令をせず,直ちに上告を却下すべきであるとした。
最高裁第三小法廷平成11年3月9日決定・平成10年(ク)第646号・集民192号99頁上告理由が実質的に事実誤認にすぎない場合でも,原裁判所は理由の実質を審査して上告を却下できないとした。
最高裁第一小法廷平成11年3月9日決定・平成11年(許)第8号・集民192号109頁民事訴訟法318条1項の事件に当たらないことを理由として,原裁判所が上告受理申立てを却下することはできないとした。
最高裁第三小法廷昭和54年7月31日判決・昭和54年(オ)第46号・集民127号325頁訴訟の提起を知りながら判決の有無を調査しなかった場合,控訴期間を守れなかったことについて責めに帰することができない事由があるとはいえないとした。
名古屋高裁平成14年6月19日判決・平成13年(ネ)第975号同居する母への補充送達が有効とされ,控訴期間経過後の追完が認められなかった。事務所又は住所地で受領した書類の確認体制が期間判断に直結する。
東京高裁平成29年10月16日判決・平成29年(ネ)第726号等控訴状は期間内に受領されていたのに,誤った受付日付に基づいて却下された事案で国の責任を認めた。受付日時を示す記録を保存する意味を示す。

これらの裁判例は紙提出時代のものを含むが,法定の提出先へ期間内に到達したか,理由書が方式を満たすか,期間を守れなかった事情が本人側の責めに帰するかという問題は,電子提出でも残る。
ただし,電子提出の到達時点は民事訴訟法132条の10第3項によって判断するため,紙の受付印に代わり,mintsの提出日時,受付番号及び提出済み表示が中心的な確認資料となる。

第10 関連記事

① mintsによる新規申立て全般については,「mintsで訴訟を提起する方法|新規申立て・添付書類・手数料納付・証拠提出の流れ(AI作成)」参照。
② 旧法事件及び対象外手続については,「mintsを利用できる裁判所と対象事件―旧法事件,少額訴訟,支払督促及び対象外手続(AI作成)」参照。
③ 電子送達の効力発生時点については,「mintsのシステム送達と期限管理―応訴・通知メール・電子判決書・控訴期間」参照。
④ ペイジー納付については,「mintsの手数料をPay-easyで納付する方法|金額確認・郵便費用相当額・納付期限・還付(AI作成)」参照。
⑤ システム障害時の対応については,「mintsで電子申立てができない場合の対応―システム障害・期限切迫・代替提出」参照。
⑥ mintsの機能全般については,「mintsの実務解説 弁護士向けQ&A―電子申立て・証拠提出・送達・障害対応(AI作成)」参照。

第11 出典・参考資料

1 法令及び最高裁判所規則

① e-Gov法令検索「民事訴訟法」55条2項3号,95条~97条,109条の3,132条の10,132条の11,285条,286条,311条~318条
② e-Gov法令検索「民事訴訟費用等に関する法律」3条,4条,6条,8条,9条及び別表第一・第二
③ 民事訴訟規則3条,182条,188条~199条
④ 民事訴訟規則等の一部を改正する規則(令和6年最高裁判所規則第14号)の未施行・経過措置関係14条,29条
⑤ 民事訴訟法等の一部を改正する法律(令和4年法律第48号)附則2条,5条,11条,12条,20条,25条,26条
⑥ 普通地方公共団体に対する国の関与等に関する訴訟規則3条
⑦ 人身保護規則41条

2 裁判所の公表資料

① 最高裁判所「mints操作マニュアル~当事者ユーザ編~」40頁~53頁(PDF44頁~57頁)
② 最高裁判所「民事裁判手続のデジタル化に関する準備の手引」40頁~46頁
③ 最高裁判所「手数料額早見表
④ 知的財産高等裁判所「mintsの利用について

3 裁判例

① 東京高裁昭和38年11月5日判決・昭和37年(ツ)第197号・下級裁判例集16巻8号637頁
② 最高裁第二小法廷平成12年7月14日決定・平成12年(オ)第547号・集民198号457頁
③ 最高裁第三小法廷平成11年3月9日決定・平成10年(ク)第646号・集民192号99頁
④ 最高裁第一小法廷平成11年3月9日決定・平成11年(許)第8号・集民192号109頁
⑤ 最高裁第三小法廷昭和54年7月31日判決・昭和54年(オ)第46号・集民127号325頁
⑥ 名古屋高裁平成14年6月19日判決・平成13年(ネ)第975号
⑦ 東京高裁平成29年10月16日判決・平成29年(ネ)第726号等

4 文献

① 最高裁判所事務総局民事局監修『条解民事訴訟規則(デジタル化関係等)』(司法協会,2025年)466頁,469頁~476頁
② 松本博之『民事上告審ハンドブック―憲法上の手続基本権に基づく上告審手続の構築に向けて』(日本加除出版,2019年)308頁~311頁
③ 脇村真治編著『一問一答 新しい民事訴訟制度(デジタル化等)―令和4年民事訴訟法等改正の解説』(商事法務,2024年)