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控訴理由書・上告理由書の提出期限―50日の性質と原裁判所の審査範囲(AI作成)

目次

控訴理由書と上告理由書は,いずれも「50日」という期間で語られることが多い。
しかし,起算点も提出先も異なり,「50日」がどの期間なのかも同じではない。

控訴理由書は控訴を提起した日から起算して控訴裁判所へ,上告理由書は上告提起通知書の送達を受けた日から起算して原裁判所へ提出する。
いずれの50日も不変期間ではない。

本記事では,控訴理由書,上告理由書及び上告受理申立て理由書について,起算点,提出先,期間の性質,並びに原裁判所ができる審査の範囲を説明する。

第1 三つの理由書の比較

書面期間起算点提出先
控訴理由書50日控訴を提起した日控訴裁判所
上告理由書50日上告提起通知書の送達を受けた日原裁判所
上告受理申立て理由書50日上告受理申立て通知書の送達を受けた日原裁判所

控訴状を提出する裁判所は第一審裁判所であるのに対し,別途提出する控訴理由書の提出先は控訴裁判所である。
同じ上訴手続の書面であっても提出先が異なるため,控訴審事件が表示された後,事件番号と提出先を確認して提出する。

第2 控訴理由書

民事訴訟規則182条は,控訴状に第一審判決の取消し又は変更を求める具体的な理由を記載していないときは,控訴提起後50日以内に,その理由を記載した書面を控訴裁判所へ提出するものとしている。

起算点は控訴提起通知書の送達日ではなく,控訴を提起した日である。
この点を取り違えると,実際の期限より遅く見積もることになる。

控訴状に具体的な理由を記載している場合は,別途の控訴理由書は要しない。

第3 上告理由書及び上告受理申立て理由書

民事訴訟規則194条は,上告提起通知書の送達を受けた日から50日以内に上告理由書を原裁判所へ提出するものとしている。
上告受理申立て理由書についても,同規則199条により,同じ提出期間及び提出先に関する規定が準用される。

【令和8年5月21日施行後の注意】 現行の民事訴訟規則189条は,上告提起通知書について原則としてシステム送達を定めています。同規則194条の50日は,通知メールを受信した時刻ではなく,上告提起通知書の送達を受けた日から進行します。事件管理画面の送達記録と対象書類を確認してください。

上告状又は上告受理申立書に,最高裁判所規則が定める方式による理由を既に記載している場合は,その同じ理由を記載した書面を改めて提出する必要はない。

別途理由書を提出する場合は,通知書の現実の送達日と50日の満了日を記録し,上告理由と上告受理申立て理由をそれぞれ法定の理由へ対応させる。

第4 50日は不変期間ではない

控訴理由書,上告理由書及び上告受理申立て理由書の通常の50日間は,不変期間ではない。
裁判所は民事訴訟法96条1項により期間を伸長できる。

もっとも,伸長は当然に認められるものではないため,必要が判明した時点で速やかに申し立てる必要がある。

なお,通常民事訴訟以外では異なる期間が定められていることがある。
例えば,普通地方公共団体に対する国の関与等に関する訴訟では理由書の期間は10日,人身保護事件では15日である。
「理由書はすべて50日」と理解してはならない。

判決送達後2週間の控訴期間・上告期間は不変期間であり,理由書の50日とは性質が異なる。
この点は,mintsで控訴・上告・上告受理申立てをする方法で説明している。

第5 原裁判所ができる審査の範囲

1 期限内に法定理由がない場合

上告理由書が提出期間内に提出されない場合,原裁判所は民事訴訟法316条1項及び318条5項により,上告又は上告受理申立てを却下する。

上告状及び期間内に提出された書面のいずれにも民事訴訟法312条1項・2項所定の上告理由が記載されていない場合も,単なる記載方式の不備ではない。
最高裁判所第二小法廷平成12年7月14日決定(平成12年(オ)第547号)は,この場合に民事訴訟規則196条1項の補正命令を発すべきではなく,直ちに上告を却下すべきであり,提出期間経過後の補正書によって適法になるものではないとした(裁判集民事198号457頁,判例秘書L05510075)。

2 記載方式違反で補正対象となる場合

これに対し,期間内の書面に法定上告理由の記載があるものの,民事訴訟規則190条又は191条の記載方式に違反することが明らかな場合は,同規則196条1項の補正命令の対象となる。
原裁判所は相当の期間を定めて補正を命じ,その期間内に不備が補正されないときに却下する。

したがって,「期限内に法定理由がない場合」と「法定理由はあるが記載方式に不備がある場合」を同じものとして扱ってはならない。

3 原裁判所が判断できない場合

最高裁判所第三小法廷平成11年3月9日決定(平成10年(ク)第646号)は,上告理由が理由不備をいうものの実質が事実誤認の主張にすぎない場合でも,原裁判所が理由の実質を審査して上告を却下することはできないとした(裁判集民事192号99頁,判例秘書L05410027)。

最高裁判所第一小法廷平成11年3月9日決定(平成11年(許)第8号)も,民事訴訟法318条1項の受理要件に該当するかを判断できるのは最高裁判所だけであり,原裁判所が重要性を欠くと考えて上告受理申立てを却下することはできないとした(裁判集民事192号109頁,判例秘書L05410028)。

【判例の確認状況】 上記3決定は,令和8年9月16日に判例秘書で事件番号,裁判日,判示事項及び全文を確認しました。また,最高裁判所裁判部書記官室の「上告審から見た書記官事務の指導ポイント」も,同じ3決定を引用して原裁判所の審査範囲を整理しています。裁判所ウェブサイトの裁判例検索には全ての裁判例が掲載されているわけではないため,ウェブ検索で直接の本文ページが見つからないことだけから判例が存在しないとは判断できません。

4 三つの場面の読み分け

原裁判所が確認するのは,提出期間の遵守,法定理由の記載の有無及び記載方式の明白な違反である。
記載された理由の当否,事実誤認の主張にすぎないかどうか,及び法令解釈上の重要事項に該当するかは,上告裁判所又は最高裁判所が判断する。

5 理由書を自足的にする

上告審から見た書記官事務の留意事項(令和6年分)は,「原審準備書面記載のとおり」とだけ記載することや,他の共同上告人の理由を援用することを不十分な処理として挙げている。
同資料が引用する昭和期裁判例の全文は本記事作成時にすべてを個別確認できていないため,ここでは同資料の指摘として紹介するにとどめる。

実務上は,必要な法条,事実,判例及び論証を当該上告人の理由書自体に記載し,他の書面を見なければ理由が分からない状態を避けるべきである。

第6 期限管理の手順

①控訴を提起した日を記録する(控訴理由書の起算点)。
②上告提起通知書・上告受理申立て通知書の送達を受けた日を記録する(システム送達では事件管理画面の送達記録を確認する。上告理由書等の起算点)。
③それぞれの50日の満了日を計算し,提出先(控訴裁判所か原裁判所か)を確認する。
④控訴状・上告状に具体的な理由を記載済みかを確認し,別途提出の要否を決める。
⑤伸長が必要になりそうなときは,判明した時点で速やかに申し立てる。
⑥通常民事訴訟以外の手続では,期間が異なる可能性を確認する。

第7 関連記事

①mintsで控訴・上告・上告受理申立てをする方法
②即時抗告・執行抗告・再抗告・特別抗告・許可抗告の期限,理由書期限及び執行停止
③mintsのシステム送達と期限管理
④民事訴訟の申立手数料の計算方法
⑤訴訟行為の追完(民事訴訟法97条)
⑥上告審から逆算する民事上訴の提出前チェックリスト
⑦大阪高裁民事部主任決議集を令和8年の民事訴訟で使う方法―mints後も残る実務と旧紙運用(AI作成)

出典・参考資料

①民事訴訟法(平成8年法律第109号)96条・285条・312条・313条・316条・318条
②民事訴訟規則182条・189条・190条・191条・193条・194条・196条・199条
③最高裁判所第二小法廷平成12年7月14日決定(平成12年(オ)第547号)(判例秘書L05510075,裁判集民事198号457頁)
④最高裁判所第三小法廷平成11年3月9日決定(平成10年(ク)第646号)(判例秘書L05410027,裁判集民事192号99頁)
⑤最高裁判所第一小法廷平成11年3月9日決定(平成11年(許)第8号)(判例秘書L05410028,裁判集民事192号109頁)
⑥上告審から見た書記官事務の留意事項(令和6年分)
⑦上告審から見た書記官事務の指導ポイント(平成29年11月1日,最高裁判所裁判部書記官室)

追加の関連記事
① 民事控訴審の控訴理由書の書き方