第1 結論――抗告期限と理由書期限の早見表
1 最初に確認すべき3点
本稿は,令和8年7月14日現在の法令及び裁判所の案内に基づいています。
即時抗告,執行抗告,再抗告,特別抗告及び許可抗告では,短いものは裁判の告知を受けた日から5日という不変期間が定められています。裁判書を受領したときは,少なくとも次の3点を同時に確認する必要があります。
- 不服申立ての種類が何であり,申立期間が5日,1週間又は2週間のいずれであるか。
- 期間の起算点が,裁判の告知日,抗告状の提出日,裁判所からの通知書の送達日又は公告の効力発生日のいずれであるか。
- 不服申立てに執行停止効があるか,別途,執行停止その他の仮の処分を申し立てる必要があるか。
特に,抗告状の期限と抗告理由書の期限は別に管理する必要があります。しかも,抗告理由書の期限は,手続によって起算点が異なります。
2 期限管理早見表
| 手続 | 申立期間 | 申立期間の起算点 | 理由書の期限 | 提出先 | 執行停止 |
|---|---|---|---|---|---|
| 通常抗告 | 固定された期間なし | 原裁判を取り消し,又は変更できる間 | 抗告状に具体的理由がない場合は抗告後14日 | 原裁判所 | 当然には停止しない |
| 民事訴訟法上の即時抗告 | 1週間 | 裁判の告知日 | 抗告状に具体的理由がない場合は抗告後14日 | 原裁判所 | 原則として停止する |
| 公告される破産裁判への即時抗告 | 2週間 | 公告の効力発生日 | 抗告後14日 | 原裁判所 | 個別条文を確認 |
| 公告されない破産裁判への即時抗告 | 1週間 | 裁判の告知日 | 抗告後14日 | 原裁判所 | 個別条文を確認 |
| 家事審判への即時抗告 | 2週間 | 家事事件手続法86条2項による | 抗告後14日 | 審判をした家庭裁判所 | 審判及び個別条文を確認 |
| 家事審判以外の裁判への即時抗告 | 1週間 | 裁判の告知日 | 個別に確認 | 原裁判所 | 原則として停止しない |
| 執行抗告 | 1週間 | 裁判の告知日 | 抗告状提出後1週間 | 原裁判所 | 停止しない |
| 再抗告 | 原裁判の性質による | 即時抗告型は告知日から1週間 | 抗告提起通知書送達後14日(民事訴訟では電子通知書) | 原裁判所 | 当然には停止しない |
| 特別抗告 | 5日 | 裁判の告知日 | 抗告提起通知書送達後14日(民事訴訟では電子通知書) | 原裁判所 | 停止しない |
| 許可抗告 | 5日 | 裁判の告知日 | 抗告許可申立て通知書送達後14日(民事訴訟では電子通知書) | 原裁判をした高等裁判所 | 停止しない |
※個別法に特則があるため,実際の事件では対象裁判の根拠条文を必ず確認してください。
3 期間計算の基本
(1) 告知又は送達によって始まる期間
裁判の告知日又は通知書の送達日は,原則として初日に算入しません。例えば,月曜日に裁判の告知を受け,1週間の不変期間が進行する場合は,火曜日を第1日として,翌週月曜日が第7日となります(民事訴訟法95条,民法140条)。
(2) 破産手続の公告によって始まる期間
破産法上の公告は官報に掲載して行い,掲載日の翌日に効力を生じます(破産法10条1項及び2項)。公告がされた裁判に対する即時抗告期間は,公告が効力を生じた日から2週間です(同法9条後段)。したがって,官報掲載日が7月1日であれば,7月2日に公告の効力が生じ,同日から2週間を計算します。
(3) 末日が休日の場合
期間の末日が土曜日,日曜日,国民の祝日,1月2日,1月3日又は12月29日から12月31日までの日に当たるときは,期間はその翌日に満了します(民事訴訟法95条3項)。ただし,短い不変期間では計算違いの影響が大きいため,実務上は法定末日の前日までの提出を目標にするのが安全です。
(4) 郵送は消印日ではなく到達日が基準となること
抗告状は,原則として期間内に裁判所へ到達する必要があり,郵便の差出日や消印日で期限を守ったことにはなりません。特別抗告状又は抗告許可申立書についても,裁判の告知を受けた日の翌日から数えて5日以内に原裁判所へ届くことが必要です。郵送する場合は配達日数及び休日を考慮し,必要に応じて持参又は利用可能な電子提出方法を検討します。
第2 抗告制度の全体像
1 抗告の対象
抗告は,判決ではなく,主として決定又は命令に対する不服申立てです。ただし,決定又は命令であれば常に抗告できるわけではありません。即時抗告,執行抗告,特別抗告及び許可抗告は,それぞれ法律が許している裁判についてのみ利用できます。
裁判書を受領したときは,裁判書の末尾にある不服申立ての教示だけに依存せず,対象裁判の根拠条文,不服申立てを許す条文及び期間条文を確認する必要があります。
2 通常抗告と即時抗告
通常抗告には固定された申立期間がありませんが,原裁判を取り消し,又は変更できる間に限られます(民事訴訟法328条1項)。これに対し,即時抗告には1週間又は2週間などの不変期間が設けられています。
「即時抗告は常に1週間」と理解するのは危険です。民事訴訟法332条の原則は1週間ですが,家事審判,非訟事件,民事保全事件及び公告される破産裁判には2週間の例があります。
3 抗告状の宛先及び提出先
抗告審を担当するのは上級裁判所ですが,抗告状は原則として原裁判所に提出します。例えば,家庭裁判所の審判に対する即時抗告は高等裁判所宛てですが,提出先は審判をした家庭裁判所です。執行抗告,特別抗告及び許可抗告も,原裁判所に提出します。
4 令和8年5月21日以後の民事裁判手続のデジタル化
令和8年5月21日から,民事訴訟手続の全面的なデジタル化が開始されました。現行の民事訴訟規則は,電子抗告提起通知書及び電子抗告許可申立て通知書という用語を使用しています。
もっとも,裁判所の「民事裁判手続のデジタル化」によれば,民事執行,倒産,労働審判等の非訟手続,人事訴訟及び家事事件は,令和8年5月21日に開始したオンライン申立て等の対象外であり,令和10年6月までに対象となる予定です。事件類型及び原審事件の開始時期によって提出方法が異なるため,担当部の案内を確認する必要があります。
第3 民事訴訟法に基づく即時抗告
1 即時抗告期間は1週間
民事訴訟法に基づく即時抗告は,裁判の告知を受けた日から1週間の不変期間内にしなければなりません(民事訴訟法332条)。告知日は原則として算入せず,その翌日を第1日として計算します。
2 抗告理由を後から提出する場合は抗告後14日
再抗告以外の抗告で,抗告状に原裁判の取消し又は変更を求める事由を具体的に記載しなかった場合は,抗告の提起後14日以内に,具体的理由を記載した書面を原裁判所に提出しなければなりません(民事訴訟規則207条)。
この14日は,裁判所から通知書が届いた日ではなく,抗告を提起した日を基準とする点に注意が必要です。
3 即時抗告の執行停止効
民事訴訟法上,抗告は即時抗告に限り執行停止の効力を有します(民事訴訟法334条1項)。ただし,民事執行法,家事事件手続法その他の特別法に執行停止効を否定する規定がある場合は,その特則が優先します。
4 特別法に2週間の例があること
民事訴訟法332条だけを見て,すべての即時抗告を1週間と処理することはできません。例えば,非訟事件手続法67条の即時抗告は2週間です。また,民事保全法上,保全命令の申立てを却下する裁判に対する即時抗告及び保全抗告は2週間です(民事保全法19条2項及び41条2項。裁判所「民事保全」参照)。対象裁判ごとに特別法を確認する必要があります。
第4 破産法に基づく即時抗告
1 公告の有無によって2週間又は1週間となること
破産法上の即時抗告期間は,裁判が公告されるかどうかによって異なります。
- 免責許可決定のように裁判が公告される場合は,公告が効力を生じた日から2週間です(破産法9条後段)。
- 免責不許可決定のように裁判が公告されない場合は,裁判の告知を受けた日から1週間です(破産法13条,民事訴訟法332条)。
破産事件では,同じ「免責の裁判」であっても,許可と不許可で期間が異なります。裁判の結論だけでなく,公告の要否を確認しなければなりません。
3年以上前の話やけど,ワイ,破産の免責不許可の即時抗告の期間を何故か2週間と勘違いしており,裁判所に1週間ですけどと言われたときの絶望感は半端なかった。依頼者には謝罪したけど,「僕の方が先生に嘘つきまくったせいで迷惑かけてすいません」て逆に謝られて,懲戒にはならなかった。 https://t.co/9pbJmnrvKt
— エロ弁 (@um9n6uwevbbAGpG) March 16,2024
2 公告が効力を生ずる日と具体的な計算例
破産法上の公告は官報への掲載によって行われ,掲載日の翌日に効力を生じます(破産法10条1項及び2項)。破産法によって裁判の公告がされたときは,一切の関係人に対して当該裁判の告知があったものとみなされます(同条4項)。
例えば,免責許可決定が7月1日発行の官報に掲載された場合は,7月2日に公告の効力が生じ,同日から2週間を計算します。決定正本がこれより早く又は遅く届いても,公告が必要な裁判の即時抗告期間は,原則として公告を基準に画一的に進行します。
3 公告される裁判の例
(1) 破産手続開始決定
破産手続開始決定は公告されます(破産法32条1項)。同法33条1項は公告の根拠ではなく,破産手続開始決定に対する即時抗告を定める条文です。
(2) 破産手続廃止決定
破産手続廃止決定の公告条項は,廃止の類型によって異なります。
- 同時廃止は破産法216条3項
- 異時廃止は破産法217条4項
- 同意廃止は破産法218条5項によって準用される217条4項
216条4項及び217条6項は,公告ではなく,即時抗告に関する条項です。
(3) 免責許可決定
裁判所は,免責許可決定をしたときは,その裁判書を破産者及び破産管財人に,その主文を記載した書面を破産債権者に,それぞれ送達しなければなりません(破産法252条3項)。実務上は,破産法10条3項に基づき,免責許可決定の主文の公告をもって破産債権者に対する送達に代える取扱いがされています。
4 公告されない裁判の例
即時抗告の対象となるものの,公告されない裁判の例として,次のものがあります。これらは,原則として裁判の告知を受けた日から1週間です。
- 自由財産拡張の申立てを却下する決定(破産法34条6項)
- 居住地を離れる許可の申立てを却下する決定(破産法37条2項)
- 郵便物等の管理に関する決定(破産法81条4項)
- 破産管財人の報酬決定(破産法87条2項)
- 破産財団に属する財産の引渡しに関する決定(破産法156条3項)
- 否認の申立てについての裁判(破産法171条4項)
5 破産手続開始決定及び免責許可決定に関する最高裁判例
最高裁平成13年3月23日決定は,破産宣告決定の送達を受けた破産者についても,即時抗告期間は決定の公告から2週間であるとしました。最高裁平成12年7月26日決定も,免責決定が公告された場合の即時抗告期間は公告から2週間であり,決定の送達を受けた破産債権者についても同じであるとしています。
これらは旧破産法下の裁判例ですが,公告が必要な裁判について利害関係人の不服申立期間を画一的に定めるという考え方は,現行破産法9条及び10条の規律とも整合します。
また,破産法13条,民事訴訟法331条本文及び285条ただし書により,破産手続開始決定又は免責許可決定の送達を受けた破産債権者は,公告前であっても即時抗告をすることができます。
不許可率は,庁によってかなり傾向が違う。
某大規模庁(お答えしない方)は率が低い。田舎の方が高い印象。統計見てないけど。
不許可嫌がるのは,第一に,高確率で即時抗告出るから。第二に,先例の蓄積による厳しい基準にならうから。第三に,破産者に更生の機… https://t.co/TaSiC9nMb6— とまどい (@kazunappa0802) October 22,2021
6 破産事件の抗告理由書
破産事件の即時抗告で,抗告状に具体的な理由を記載しなかった場合は,抗告の提起後14日以内に理由を記載した書面を原裁判所へ提出します(破産規則12条,民事訴訟規則207条)。公告による2週間又は告知による1週間という抗告状の期限とは,別の期限として管理します。
第5 家事事件手続法に基づく即時抗告
1 家事審判に対する即時抗告は2週間
家事審判に対する即時抗告は,特別の定めがある場合を除き,2週間の不変期間内にしなければなりません(家事事件手続法86条1項)。ただし,すべての審判に即時抗告ができるわけではなく,各事件について法律が定める抗告権者に限られます。
裁判所の「即時抗告」案内には,申立先,手数料,郵便料及び書式が掲載されています。
2 抗告権者ごとに起算点が異なること
家事審判の即時抗告期間の起算点は,家事事件手続法86条2項により,次のとおり区別されます。
- 即時抗告をする者が審判の告知を受ける者である場合は,その者が告知を受けた日
- 即時抗告をする者が審判の告知を受ける者でない場合は,申立人が告知を受けた日
- 申立人が2人以上いる場合は,そのうち最も遅い告知日
各相続人への審判の告知日が異なる場合,遺産分割審判に対する即時抗告期間は,相続人ごとに各自が告知を受けた日から進行します(最高裁平成15年11月13日決定)。
3 審判以外の裁判に対する即時抗告は1週間
家事事件において,審判以外の裁判に対する即時抗告期間は原則として1週間です(家事事件手続法101条1項)。例えば,当事者からの事件記録の閲覧,謄写等の許可申立てを却下する裁判に対する即時抗告が該当します(同法47条8項)。
この即時抗告は,特別の定めがある場合を除き,執行停止の効力を有しません。ただし,抗告裁判所又は原裁判所は,申立てにより,担保を立てさせ,又は立てさせないで,執行停止その他の必要な処分を命ずることができます(同法101条2項及び3項)。
4 家事審判の抗告理由は抗告後14日
抗告状に原審判の取消し又は変更を求める事由を具体的に記載しなかった場合は,即時抗告の提出後14日以内に,その事由を記載した書面を原裁判所に提出しなければなりません(家事事件手続規則55条)。
5 抗告審に提出する資料の期限
高等裁判所が審理を終結する日を定めた場合は,その日までに主張及び資料を提出する必要があります。審理終結日を過ぎて提出した資料は,原則として抗告審の判断資料になりません(家事事件手続法93条1項及び71条)。
6 期間前の即時抗告も有効であること
家事事件手続法86条1項ただし書は,2週間の期間前にした即時抗告も有効としています。審判以外の裁判についても,同法101条1項ただし書に同様の規定があります。民事訴訟一般に関する「裁判成立前の抗告は不適法」という判例を,家事事件にそのまま当てはめることはできません。
第6 民事執行法に基づく執行抗告
1 執行抗告期間は1週間
執行抗告は,裁判の告知を受けた日から1週間の不変期間内に,抗告状を原裁判所へ提出して行います(民事執行法10条2項)。執行抗告は,民事執行手続に関するすべての裁判に認められるのではなく,法律に特別の定めがある場合に限られます(同条1項)。
2 執行抗告理由書は抗告状提出後1週間
抗告状に執行抗告の理由を記載しなかった場合は,抗告状を提出した日から1週間以内に,執行抗告理由書を原裁判所へ提出しなければなりません(民事執行法10条3項)。理由は,原裁判の取消し又は変更を求める事由を具体的に記載します(民事執行規則6条)。
原裁判所は,理由書が期間内に提出されなかった場合,理由の記載が最高裁判所規則に明らかに違反する場合,執行抗告が不適法で補正不能であることが明らかな場合又は不当な遅延を目的とする場合には,執行抗告を却下しなければなりません(民事執行法10条5項)。
東京地方裁判所の「執行抗告,執行異議の申立てについて」には,売却許可・不許可決定及び引渡命令に対する執行抗告の提出先,費用及び必要書類が掲載されています。
3 告知を受けるべき者でない抗告人の起算点
執行抗告をすることができる者が裁判の告知を受けるべき者でない場合,執行抗告期間は,裁判の告知を受けるべきすべての者に告知された日から進行します(民事執行規則5条)。抗告権者が裁判書を実際に知った日が直ちに起算点になるとは限りません。
4 執行停止効がないこと
執行抗告をしただけでは,原裁判の執行又は民事執行手続は自動的に停止しません。抗告裁判所は,執行抗告についての裁判が効力を生ずるまで,担保を立てさせ,又は立てさせないで,原裁判の執行若しくは民事執行手続の全部若しくは一部の停止を命ずることができます。記録が原裁判所にある間は,原裁判所も同様の処分を命ずることができます(民事執行法10条6項)。したがって,停止が必要な場合は,執行抗告とは別に執行停止を申し立て,停止決定を得る必要があります。
第7 再抗告
1 再抗告ができる裁判
再抗告は,簡易裁判所の裁判について,抗告審として地方裁判所がした決定に対し,さらに高等裁判所へ抗告する場合に限られます。高等裁判所が抗告審としてした決定に対し,民事訴訟法330条による再抗告をすることはできません。
2 再抗告理由の制限
再抗告は,憲法の解釈の誤りその他の憲法違反,又は決定に影響を及ぼすことが明らかな法令違反を理由とするときに限って許されます(民事訴訟法330条)。単なる事実認定の誤りを主張するだけでは,再抗告理由になりません。
3 再抗告期間
再抗告期間は,再抗告の対象となる裁判が,通常抗告又は即時抗告のいずれによるべき性質の裁判であるかによって決まります(最高裁平成16年9月17日決定)。
- 通常抗告に関する再抗告は,取消し又は変更の利益がある間にすることができます。
- 即時抗告に関する再抗告は,裁判の告知を受けた日から1週間の不変期間内にしなければなりません。
4 再抗告理由書は通知書送達後14日
再抗告状に理由を記載しなかった場合,再抗告理由書の提出期間は,電子抗告提起通知書の送達を受けた日から14日です(民事訴訟規則210条1項)。民事訴訟法上の一般の抗告理由書が「抗告後14日」であるのに対し,再抗告は「通知書送達後14日」である点が異なります。
非訟事件手続法74条に基づく再抗告でも,抗告提起通知書の送達を受けた日から14日です(非訟事件手続規則60条及び61条)。非訟事件は令和8年5月21日の民事訴訟手続デジタル化の対象外であるため,民事訴訟における電子通知書と区別して管理します。
第8 特別抗告及び許可抗告
1 両制度の違い
| 区分 | 特別抗告 | 許可抗告 |
|---|---|---|
| 主な理由 | 憲法の解釈の誤りその他の憲法違反 | 最高裁判例等との相反又は法令解釈に関する重要事項 |
| 原裁判 | 民事訴訟法336条又は家事事件手続法94条が定める裁判 | 高等裁判所の決定又は命令 |
| 許可の要否 | 不要 | 原裁判をした高等裁判所の許可が必要 |
| 申立期間 | 5日 | 5日 |
2 申立期間はいずれも5日
特別抗告及び許可抗告は,いずれも裁判の告知を受けた日から5日の不変期間内にしなければなりません(特別抗告につき民事訴訟法336条2項,許可抗告につき同法337条6項及び336条2項)。家事事件の特別抗告及び許可抗告にも,家事事件手続法96条及び98条によって民事訴訟法336条2項が準用されます。
広島高等裁判所のQ&Aも,決定又は命令の謄本を受領した日の翌日から数えて5日以内に,書面が裁判所へ届く必要があると案内しています。
3 理由書は通知書送達後14日
民事訴訟では,特別抗告理由書は電子抗告提起通知書の送達を受けた日から,抗告許可申立て理由書は電子抗告許可申立て通知書の送達を受けた日から,それぞれ14日以内に提出します(民事訴訟規則210条1項及び2項)。
家事事件では,特別抗告理由書は抗告提起通知書の送達を受けた日から14日以内に提出します(家事事件手続規則63条)。許可抗告の理由書についても,同規則69条1項が63条を読み替えて準用するため,抗告許可申立て通知書の送達を受けた日から14日です。
非訟事件でも,特別抗告は非訟事件手続規則66条,許可抗告は同規則67条によって同規則61条が準用されるため,それぞれの通知書の送達を受けた日から14日です。
許可抗告理由書の起算点は,許可決定の送達日ではなく,抗告許可申立てがあった旨を知らせる通知書の送達日です。期間内に理由書を提出しない場合又は理由の記載方法が相当でない場合は,申立てが却下される可能性があります。
4 両方を申し立てる場合は別々の書面を提出すること
同一の裁判について特別抗告と許可抗告の両方を申し立てることはできますが,1通の書面ですることはできません。特別抗告状と抗告許可申立書を別々に提出します。他方,裁判所の案内では,両方を申し立てる場合の手数料及び郵便料は1件分で足りるとされています。
5 確定遮断効及び当然の執行停止効がないこと
特別抗告及び許可抗告には,確定遮断効も当然の執行停止効もありません。ただし,民事訴訟法上の特別抗告については,最高裁判所又は原裁判をした裁判所若しくは裁判官が,抗告について決定があるまで,原裁判の執行停止その他の必要な処分を命ずることができます(民事訴訟法336条3項,334条2項)。許可抗告については,許可決定後に337条6項によって336条3項が準用されます。
家事事件では,特別抗告は執行停止の効力を有しませんが,最高裁判所又は原裁判所は,申立てにより,担保を立てさせ,又は立てさせないで,執行停止その他の必要な処分を命ずることができます(家事事件手続法95条)。許可抗告についても同法98条により同様です。
6 5日を14日と誤認した懲戒事例
平成30年12月19日発効の京都弁護士会の懲戒処分(戒告)では,家事事件の各即時抗告申立事件について,高等裁判所の棄却決定を受領した後,特別抗告及び許可抗告の申立期間を14日と誤認し,5日の申立期間を経過させたことが処分理由に記載されています(自由と正義2019年4月号70頁)。
この事例は,家事審判の即時抗告が2週間であることと,その抗告審決定に対する特別抗告及び許可抗告が5日であることを混同してはならないことを示しています。
第9 再度の考案
1 民事訴訟法上の再度の考案
原裁判をした裁判所又は裁判長は,抗告を理由があると認めるときは,その裁判を更正しなければなりません(民事訴訟法333条)。これを再度の考案といいます。抗告を受けた原裁判所が自ら原裁判を見直す制度です。
特別抗告及び許可抗告には,再度の考案の制度はありません。
2 家事事件における別表第二事件の例外
家事審判の即時抗告についても再度の考案が認められますが,家事事件手続法別表第二に掲げる事項についての審判には適用されません(家事事件手続法90条ただし書)。別表第二事件では,当事者間の対立構造を踏まえ,原裁判所が抗告を受けて自ら審判を変更する仕組みを採っていません。
3 破産事件における実例
同時廃止事案における免責許可決定に対する即時抗告について,即時抗告後に明らかとなった事情を踏まえて再度の考案を行い,免責許可決定を取り消して免責不許可決定をした事例として,千葉地方裁判所八日市場支部平成29年4月20日決定があります(判例タイムズ1439号176頁。裁判所ウェブサイト未掲載)。
第10 不変期間を徒過した場合の追完
1 追完の要件及び期間
当事者が,裁判所の電子計算機の故障その他その責めに帰することができない事由により不変期間を守ることができなかった場合は,その事由が消滅した後1週間以内に限り,期間内にすべき訴訟行為を追完できます。外国に在る当事者については,この期間は2か月です(民事訴訟法97条)。
単なる失念,法令の読み違い,事務所内の連絡不足又は郵便の差出しが遅れたことだけで追完が認められるわけではありません。
2 訴訟代理人の過失がある場合
当事者本人に責めに帰することができない事由があっても,その者に代わって手続をする権限を有する代理人にその事由がない場合は,原則として追完できません(最高裁昭和33年9月30日判決)。訴訟代理人の故意又は過失は,本人側の事由として扱われます。
3 期間を誤信した場合の特段の事情
他方,裁判所の手続上の対応等によって,不服申立期間を過失なく誤信したと評価できる特段の事情がある場合には,期間徒過後の不服申立てが適法とされた例があります(最高裁平成15年11月13日決定)。もっとも,期間を誤信しただけで追完が当然に認められるものではありません。
4 期限徒過が判明した直後の対応
期限徒過の可能性が判明した場合は,次の資料を直ちに保全し,追完の可否を検討します。
- 裁判書及び封筒,送達報告書,受領印その他の受領日を示す資料
- 裁判所からの連絡記録及び教示内容
- 電子提出システムの障害情報,送信記録及びエラー画面
- 郵便追跡記録,交通障害,災害その他の客観資料
- 当事者及び代理人が手続できなかった具体的経過
「弁護士にとって命取りになるミスは3つだけ。法定期限の徒過,預かった書類の原本の紛失,預かり金の横領。それ以外は何とかなるよ」
と,独立する少し前,遠ーい親戚の老弁護士から言われた。確かにそのとおりだと今では思う。— d e e b こと エーロン・デ-ヴ・マスク (@g_ym1k) July 29,2022
第11 関連する最高裁判例及び周辺手続
1 補助参加人の上訴期間
補助参加人の上告申立期間は,被参加人の上告申立期間に限られます。また,被参加人が上告を申し立てた場合に,補助参加人が被参加人のために上告理由書を提出できる期間も,被参加人の上告理由書提出期間に限られます(最高裁昭和25年9月8日判決)。
2 裁判の成立前にした抗告
決定又は命令が成立する前にした抗告は不適法であり,その却下前に抗告人に不利益な決定又は命令が告知されても,原則として瑕疵は治癒されません(最高裁昭和32年9月26日決定)。
ただし,家事事件手続法86条1項ただし書及び101条1項ただし書は,所定の期間前にした即時抗告も有効としています。また,破産手続開始決定又は免責許可決定の送達を受けた者が公告前にした即時抗告にも別の規律があります。対象手続の特則を確認する必要があります。
3 高等裁判所の決定に対する不服申立て
訴訟法に特別の定めがある場合を除き,高等裁判所の裁判に対して通常の抗告をすることはできません(裁判所法16条2号及び7条2号参照)。民事訴訟法330条及び非訟事件手続法74条に基づく再抗告の対象は,地方裁判所が抗告審としてした決定に限られます。
高等裁判所の決定又は命令については,法定の要件を満たす場合に,特別抗告又は許可抗告を検討します。非訟事件については非訟事件手続法75条及び77条に特則があります。
4 過納手数料の還付処分及び費用額確定処分
民事訴訟費用等に関する法律9条1項に基づく過納手数料の還付は,申立てにより裁判所書記官が処分します。同処分に対しては,告知を受けた日から1週間の不変期間内に,その裁判所書記官の所属する裁判所へ異議を申し立てることができます(同条6項)。異議について地方裁判所又は簡易裁判所がした終局決定に対しては,即時抗告ができます(同条7項,非訟事件手続法66条)。高等裁判所がした終局決定に対しては,特別抗告又は許可抗告を検討することになります。
裁判所書記官による訴訟費用額確定処分に対する異議申立ては,処分の告知を受けた日から1週間の不変期間内にしなければなりません(民事訴訟法71条4項)。
5 上告理由書の不提出と控訴理由書との違い
控訴理由書の提出期限を経過しても,そのことだけで控訴が当然に却下されるものではありません。これに対し,上告理由書を法定期間内に提出しない場合に原裁判所が上告を却下する取扱いは,憲法32条に違反しません(最高裁昭和32年10月10日決定)。
控訴理由書,上告理由書,一般の抗告理由書,執行抗告理由書及び特別抗告等の理由書は,期限の起算点及び不提出の効果が異なります。名称が似ているため,事件管理表では別々の項目として登録する必要があります。
第12 受任直後の期限管理チェックリスト
1 裁判書受領当日に確認する事項
- 裁判の種類,事件番号,裁判年月日及び受領日
- 裁判が判決,決定,命令又は裁判所書記官の処分のいずれであるか
- 不服申立てを許す根拠条文及び抗告権者
- 申立期間,起算点,初日不算入及び末日の休日
- 複数当事者について告知日が異ならないか
- 破産事件では公告の有無及び官報掲載日
- 執行停止又は仮の処分を別途申し立てる必要があるか
2 抗告状提出時に確認する事項
- 宛先は抗告裁判所,提出先は原裁判所になっているか
- 裁判の特定,不服の範囲及び抗告の趣旨が明確か
- 抗告理由を抗告状に記載するか,理由書を追完するか
- 必要な収入印紙,郵便料,副本及び資格証明書を確認したか
- 特別抗告と許可抗告を併行する場合,別々の書面を作成したか
- 郵送の場合,法定末日までに原裁判所へ到達するか
3 理由書及び執行停止申立ての管理
- 一般の抗告理由書は抗告後14日
- 家事審判の抗告理由書は即時抗告提出後14日
- 執行抗告理由書は抗告状提出後1週間
- 再抗告理由書は抗告提起通知書送達後14日(民事訴訟では電子通知書)
- 特別抗告理由書は抗告提起通知書送達後14日(民事訴訟では電子通知書)
- 許可抗告理由書は抗告許可申立て通知書送達後14日(民事訴訟では電子通知書)
- 執行停止効がない手続では,執行停止申立てを別事件として準備したか
期限管理表には,法定期限だけでなく,所内期限,確認担当者,提出方法,到達確認及び理由書の起算資料を記録しておくことが有用です。
第13 関連記事及び出典
1 関連記事
- 最高裁判所に係属した許可抗告事件一覧表(平成25年分以降),及び許可抗告事件の実情
- 最高裁判所裁判部作成の民事・刑事書記官実務必携
- 最高裁の既済事件一覧表(民事)
- 最高裁判所調査官
- 最高裁判所判例解説
- 文書提出命令に関する最高裁判例
- 最高裁判所大法廷の判決及び決定の一覧
2 裁判所の実務資料
- 裁判所「即時抗告」
- 広島高等裁判所「高等裁判所がした決定又は命令に不服がある場合の手続について(Q&A)」
- 東京地方裁判所「執行抗告,執行異議の申立てについて」
- 大阪地方裁判所「裁判手続を利用する方へ」
- 郵便料及び予納金一覧【大阪地方裁判所本庁,管内支部】
- 旧・予納郵便切手内訳基準表(令和5年10月1日~)【大阪地方裁判所本庁,堺支部,岸和田支部】(84円切手等を含む旧料金資料であり,現行郵便料金には対応していません。公式サイトの現行資料一覧には掲載されていません)
郵便料金,現金予納及び電子納付の取扱いは改定されるため,提出前に申立先裁判所の最新資料を確認してください。
3 書籍及び論文
- 『民事訴訟・執行・保全・破産における不服申立の実務』
- 『民事上訴審の手続と書記官事務の研究〔補訂版〕』
- 『コンメンタール民事訴訟法3(281条~405条)第三版追補版』
- 『改正民法対応 Q&A 民事法における期間・期日・期限』
- 『抗告・異議申立ての実務』
- 『時効・期間制限の理論と実務』
- 38期の小池一利裁判官「民事抗告審の実務と考察」・判例タイムズ1274号(2008年10月1日付)
抗告全般の期間,宛先及び提出先については,弁護士雨のち晴れブログの「民事訴訟・刑事訴訟・家事審判と不服申立-期間,宛先,提出先」も参照してください。