第1 mintsへ提出できるPDFの条件
1 正式提出用PDFの四つの確認事項
本記事は,令和8年8月26日現在の裁判所の細則,mints操作マニュアル及びmints FAQに基づき,Word,Excel,紙資料及び既存PDFから,mintsへ正式提出する文書のPDFを作る方法を説明するものである。
mintsで訴訟記録となる文書を提出する場合,提出前に確認する条件は,①ファイル形式がPDFであること,②各ページの用紙サイズが日本産業規格A4又はA3であること,③パスワードが付いていないこと,④1回にアップロードするファイルの合計が200MB以下であることである。
民事事件等に関する手続における電子情報処理組織の使用に関する細則2条1項は,電子申立て等に用いる文書形式の電磁的記録について,PDF形式であること及び出力時の用紙サイズをA4又はA3とすることを定めている。
A4は210mm×297mm,A3は297mm×420mmであり,見た目がおおむねA4であっても,PDFのページ自体が別の寸法であれば,用紙サイズのエラーとなることがある。
2 「記録」と「記録外」を区別する
mintsの「主張」,「証拠」,「証拠説明書」,「関連事件の申立て」又は「その他」へアップロードしたファイルは「記録」として訴訟記録になる。
これらの区分へ文書を正式提出するときは,A4,A3又はA4とA3が混在するPDFを用いる。
「記録外」には,PDFのほか,Wordのdocx,Excelのxlsx及びPowerPointのpptxもアップロードでき,用紙サイズの制限もない。
しかし,記録外へ置いたファイルは訴訟記録にならないため,Word又はExcelの原データを記録外へアップロードしても,正式な書面提出の代わりにはならない。
3 A3・A4の混在及び縦横の向き
A3とA4が混在する一つのPDFもアップロードできるが,その各ページはA3又はA4でなければならない。
ダウンロードした混在PDFを印刷するときは,Adobe Acrobat Readerの印刷画面で「PDFのページサイズに合わせて用紙を選択」を設定すれば,各ページのサイズに対応して印刷できる。
PDFは縦向きと横向きのいずれもアップロードできる。
もっとも,mints操作マニュアル別紙4は,画面上の見やすさ及びタイムスタンプの位置を考慮し,縦置きの原稿は縦向き,横置きの原稿は横向きのPDFとするよう案内している。
第2 Wordから提出用PDFを作る方法
1 用紙サイズをA4又はA3に設定する
Microsoft 365 AppsのWordでは,「レイアウト」タブを選び,「ページ設定」グループの「サイズ」からA4又はA3を指定する。
文書の一部にセクション区切りがある場合は,セクションごとに用紙サイズが異なっていないかを確認する必要がある。
用紙サイズの一覧にA4又はA3が表示されない場合,mints操作マニュアル別紙3は,いったん「ファイル」から「印刷」を開き,プリンタを「Microsoft XPS Document Writer」に変更して文書へ戻った後,再度用紙サイズを設定する手順を示している。
WordやWindowsのバージョンにより画面表示が異なる場合は,操作マニュアルの画面と使用中の環境を照合する必要がある。
2 「名前を付けて保存」からPDFへ変換する
用紙サイズを確定した後,「ファイル」から「名前を付けて保存」を選び,ファイルの種類を「PDF(*.pdf)」にする。
次に「その他のオプション」から「オプション」を開き,裁判所の操作マニュアルに従ってPDFの出力設定を確認してから保存する。
同マニュアルのMicrosoft 365 Apps向け手順は,「PDF/A準拠」,「ドキュメントのプロパティ」,「アクセシビリティ用のドキュメント構造タグ」及び「フォントの埋め込みが不可能な場合はテキストをビットマップに変換する」の各チェックを外すよう示している。
また,「ドキュメントをパスワードで暗号化する」は選択しない。
MicrosoftのOfficeデスクトップアプリに関する案内も,Word等からアドインを用いずにPDFへ保存できるとしている。
別のPDF変換ソフトを用いる場合でも,変換後のPDFがA4又はA3であり,パスワードがなく,表示内容が原稿と一致することを別途確認する必要がある。
3 変換したPDFを開いて確認する
PDFを保存しただけで作業を終えず,いったん閉じてから提出予定のPDFを開き直す。
ページ数,ページ順,改ページ,脚注,図表,文字化け,余白,縦横及び最終ページの欠落を確認し,PDFのプロパティでもページサイズと作成者情報を確認する。
ファイル名が正しくても内容が旧版であることがあるため,表紙又は第1ページだけでなく,変更した箇所及び最終ページまで確認する。
変換前のWordファイルは上書きせず,提出用PDFとは別に保存しておくのが安全である。
第3 Excelから提出用PDFを作る方法
1 印刷するシート及び範囲を確定する
Excelでは,最初に提出対象となるシートと印刷範囲を確定する。
Microsoftの印刷範囲に関する案内によれば,複数の印刷範囲は別々のページとして印刷され,設定した印刷範囲はブックとともに保存されるため,過去の設定が不要なページを生じさせていないかを確認する必要がある。
非表示の行,列又はシートに提出対象が含まれていないかを確認し,改ページプレビューで各ページの範囲を確認する。
数式を提出するのか計算結果を提出するのか,シート見出し,ヘッダー及びフッターを含めるのかも,PDF化前に確定する。
2 A4・A3,向き及び縮尺を設定する
「ページレイアウト」で用紙をA4又はA3にし,表の横幅に応じて縦向き又は横向きを選ぶ。
広い表では,A4縦へ無理に縮小するより,A4横又はA3を用いた方が可読性を保てる場合がある。
Microsoftのワークシートの拡大縮小に関する案内は,幅を1ページ,高さを自動とする設定を示している。
縦横とも1ページへ固定すると,行数の多い表が極端に縮小されることがあるため,印刷プレビューで文字と罫線を読めることを確認する。
3 PDFへの変換後に全ページを確認する
Wordと同様に,「名前を付けて保存」からPDFを選び,裁判所の操作マニュアルに従ってオプションを確認して保存する。
保存後は,すべてのシート及びページについて,列の切れ,改ページ,繰返し行,空白ページ,数値表示,日付表示及び罫線を確認する。
Microsoftは,ブック内の内部リンク等がPDF変換時に失われる場合があると説明している。
リンク先の内容まで証拠又は説明資料の一部とする場合は,PDF上でリンクが維持されているかを確認し,必要であればリンク先自体を別資料として提出するかを検討する。
第4 紙資料及び既存PDFから作る方法
1 紙資料をA4又はA3のPDFとしてスキャンする
紙資料をスキャンするときは,スキャナの出力用紙サイズをA4又はA3に設定する。
領収書,名刺その他の小さい原稿を自動クロップして原寸に近いページとして保存すると,PDFページがA4又はA3以外となることがあるため,A4又はA3のページ上に配置して保存する必要がある。
片面・両面,カラー・グレースケール・白黒及び原稿の縦横を資料の内容に応じて設定する。
スキャン後は,ページの欠け,傾き,裏面の欠落,重送,順序及び上下を確認し,朱書き,写真,細線,印影その他の識別に必要な情報が読めるかを確認する。
2 解像度及びOCRはmintsの必須条件ではない
現行の最高裁判所の細則,mints操作マニュアル及びmints FAQは,提出用PDFについて最低解像度,特定のdpi又はOCR処理をアップロード条件として定めていない。
解像度は,原資料を判読できることとファイル容量との均衡を見て設定する。
AdobeのスキャンPDF設定に関する案内によれば,OCRを用いると画像内の文字を検索又は選択できるようになる。
もっとも,OCRには誤認識があり得るため,検索用テキストだけでなく画像として表示される文字,数字及び記号を原資料と照合する必要がある。
3 既存PDFの用紙サイズを変更する
既存PDFがA4又はA3でない場合,mints操作マニュアル別紙3は,Adobe Acrobat Reader及びWindows 11を用いて新しいPDFを作る手順を示している。
具体的には,印刷画面で「Microsoft Print to PDF」を選び,プリンタのプロパティの詳細設定でA4又はA3を指定し,「合わせる」を選択して,新しいPDFとして保存する。
この再出力によって,しおり,リンク,フォーム,添付ファイル,レイヤー,電子署名又は検索用テキストが失われる場合がある。
変換後は,元PDFとページ数,表示内容及び可読性を照合し,元PDFも保持する。
第5 パスワード,PDF/A及びメタデータ
1 パスワード付きPDFはアップロードできない
mints操作マニュアル65頁は,パスワード付きのファイルをアップロードできないと明記している。
PDFを開くためのパスワードだけでなく,印刷や編集を制限するセキュリティ設定が残っていないかを,提出前に確認する。
既存PDFのセキュリティを解除するには,その権限及び必要なパスワードがなければならない。
AdobeのPDFパスワード解除に関する案内によれば,Acrobat Readerではセキュリティ設定を解除できないため,権限のある者が対応製品を用いてパスワードのない提出用複製を作る必要がある。
2 PDF/Aを一律に「提出不可」とは扱わない
最高裁判所の細則が明示する条件は,PDF形式並びにA4又はA3であることであり,すべてのPDF/Aを一律に禁止する規定は確認できない。
他方,mints操作マニュアル別紙3のMicrosoft 365 Apps向け変換手順は,「PDF/A準拠」のチェックを外すよう示しているため,Officeから作成するときは同手順に従う。
したがって,「PDF/Aは常にmintsで拒否される」と一般化するのではなく,裁判所が示した変換手順ではPDF/A準拠を選択しない,という範囲で理解する必要がある。
裁判所からアクセシビリティ等のために別形式の情報提供を求められた場合は,細則2条2項に基づく個別の指示に従う。
3 作成者情報等を残さない
mints操作マニュアル別紙3は,Microsoft 365 AppsからPDFへ保存するときに「ドキュメントのプロパティ」のチェックを外し,保存後のPDFのプロパティで作成者等が消えていることを確認する手順を示している。
変換前のWord又はExcel側でプロパティを削除しただけでは,PDF化したときに作成者名が残る場合があるため,提出するPDF自体を確認する。
プロパティの削除と,文書内容の確認は別の作業である。
本文,コメント,変更履歴,非表示の行・列・シート,画像及びファイル名に不要な情報が残っていないかは,それぞれ確認する必要がある。
第6 1回合計200MBの確認と超過時の対応
1 200MBは「1ファイル」ではなく「1回の合計」である
裁判所は,令和8年3月20日,mintsで一度にアップロードできる最大容量を50MBから200MBへ引き上げた。
mints操作マニュアル65頁は,1回にアップロードできる最大容量を「合計200MBまで」としており,同じ操作で選択する複数ファイルの合計を確認する必要がある。
例えば,120MBと90MBのファイルを同時に選択すると合計210MBとなるため,同じ回にはアップロードできない。
この場合は,それぞれを別の回に分けてアップロードする。
2 単一ファイルが200MBを超える場合
単一のPDFが200MBを超える場合は,まず不要な空白ページ,重複ページ及び過大な画像解像度がないかを確認する。
その上で,内容の可読性を損なわない範囲で圧縮し,又は文書・証拠のまとまりを維持できる範囲でPDFを分割する。
AdobeのPDFファイルサイズ縮小に関する案内のような圧縮機能を利用した場合も,細字,朱書き,写真,地図,印影,罫線及びQRコード等が判読できるかを確認する。
一つの書証を複数ファイルへ分割すると証拠番号や枝番との対応が分かりにくくなる場合は,自己判断で細分化せず,事件係属部へ提出方法を確認するのが安全である。
3 200MBの厳密なバイト数は公表されていない
裁判所の公表資料は,200MBを正確に何バイトとして判定するかを示していない。
OS又はソフトによって容量表示に差が生じ得るため,上限ちょうどのファイルを作るのではなく,余裕を持って200MB未満にする。
もっとも,裁判所が独自の安全上限を定めているわけではないため,「190MBまで」などの数値をmintsの公式条件として扱うことはできない。
圧縮後又は分割後の内容確認を省略して容量だけを小さくすることも避ける必要がある。
第7 提出前の確認及び関連記事
1 mintsの受入条件を確認する
提出前に,①正式提出する文書がPDFになっていること,②すべてのページがA4又はA3であること,③パスワード又は暗号化がないこと,④同じ回に選択する全ファイルの合計が200MB以下であることを確認する。
Word又はExcelの原データも共有する場合は,正式提出するPDFと記録外へ置く編集可能データを混同しない。
ファイルを閉じてから開き直し,①目的のファイルであること,②ページ数及び順序が正しいこと,③文字,数字,画像,印影及び罫線を読めること,④縦横及び余白が適切であること,⑤不要な作成者情報等が残っていないことを確認する。
元のWord,Excel,紙資料又はPDFは,提出用PDFとは別に保持する。
2 アップロード時のエラーは別に原因を切り分ける
適合するPDFを作成しても,ファイル名,ウイルス判定,ブラウザ又は反映待ちによって提出できない場合がある。
症状別の切分け及び提出期限が迫っている場合の対応は,mintsでファイルをアップロードできない場合で説明している。
提出用PDFを「主張」,「証拠」,「証拠説明書」等のどの区分へアップロードするかは,PDFの作成方法とは別の問題である。
準備書面の提出区分及び直送は,mintsで準備書面を提出する方法を参照されたい。
3 mintsの手続全体及び証拠提出との関係
mintsのアカウント,電子申立て,証拠提出,システム送達及び障害対応の全体像は,mintsの実務解説・弁護士向けQ&Aで説明している。
新規事件の提出画面,添付書類及び手数料納付は,mintsで訴訟を提起する方法を参照されたい。
書証PDFの証拠番号,枝番及び証拠説明書との対応は,mints後の証拠説明書で説明している。
mints操作マニュアル全体の構成及び各機能は,mints操作マニュアル~当事者ユーザ編~の解説を参照されたい。
第8 出典・参考資料
1 法令・告示
①民事訴訟法(平成8年法律第109号)132条の10第1項,132条の11第1項・第3項(e-Gov法令検索)
②民事事件等に関する手続における電子情報処理組織の使用に関する細則2条~4条(令和7年11月28日最高裁判所告示第4号,PDF1頁~2頁)
2 裁判所公表資料
①「mints操作マニュアル」バージョン2.3資料上65頁~69頁,PDFビューア109頁~123頁(裁判所,令和8年7月15日改訂)
②「mints FAQ」PDFビューア7頁~10頁(裁判所)
③「フェーズ3に向けたmints改修作業完了のお知らせ」PDF1頁(裁判所,令和8年3月20日)
④「知的財産権関係民事・行政事件での書式データ等」(大阪地方裁判所)
3 ソフトウェア提供者の資料
①「OfficeデスクトップアプリでPDF又はXPSに保存又は変換する」(Microsoft)
②「ワークシートの印刷範囲を設定またはクリアする」及び「ワークシートを拡大縮小する」(Microsoft)
③「PDFのパスワードを解除する方法」(Adobe,令和8年3月26日更新)
④「スキャンPDFの設定」及び「PDFのファイルサイズを縮小」(Adobe)