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弁護士の利益相反―弁護士職務基本規程27条・28条の違い,同意による例外と受任後の対応(AI作成)

第1 利益相反の確認は「誰が,どの事件で,誰のために動くか」から始める

1 本記事の対象と結論

弁護士の利益相反を検討するときは,依頼者全員の同意があれば受任できると一括して考えてはならない。
弁護士職務基本規程27条・28条は,禁止される場面と同意による例外を区別しており,27条1号・2号等には同意による例外が置かれていない。
まず適用される号を特定し,次に同意の対象者,秘密保持,受任後の対応を確認する必要がある。

本記事は,令和8年10月3日に確認した日弁連公表の現行規程,弁護士法及び日本弁護士連合会弁護士倫理委員会編著『解説「弁護士職務基本規程」第4版』(2026年)の該当箇所に基づく。
同解説書は日弁連の公式見解を記載したものではなく,解釈について意見が分かれる場面もある。
規程全体の本文と条文別索引は,弁護士職務基本規程の総合記事を参照されたい。

2 受任前に確認する順序

確認する問い主に確認する規定・事項
相手方から同じ事件の相談・依頼を受けていないか27条1号・2号,弁護士法25条1号・2号
現在の事件の相手方から別事件の依頼を受けていないか27条3号。現在の事件の依頼者の同意
現在の依頼者・顧問先を別事件で相手方にしないか28条2号。新しい依頼者と相手方の双方の同意
複数の依頼者の利益や,依頼者と自分の経済的利益が対立しないか28条3号・4号。潜在的な対立は32条も確認
同僚・元同僚や弁護士法人の事件に制約がないか56条~59条,62条~68条。個人の確認だけで終えない

この順序は,条文を見落とさないための実務上の確認方法である。
表のいずれか一つだけを満たせば受任できるという意味ではなく,複数の規定に該当するときは,各規定の制約をそれぞれ確認する。

第2 27条と28条は何が違うか

1 27条は従前の関与や現在の相手方との関係を規律する

27条は,相手方との相談・受任関係,公務員や裁判外紛争解決手続の担当者としての関与等に基づく職務の禁止を定める。
28条は,27条に規定する場合のほか,親族,現在の依頼者・顧問先,依頼者同士及び弁護士自身の経済的利益との関係を規律する。
『解説』第4版95頁は,27条を弁護士法25条との関係を明確にする規定として説明しつつ,27条5号が仲裁に限らない裁判外紛争解決手続を含むことも指摘する。

27条の号禁止される事件の概要本条の同意による例外
1号相手方の協議を受けて賛助し,又はその依頼を承諾した事件置かれていない
2号相手方の協議を受け,その程度・方法が信頼関係に基づくと認められる事件置かれていない
3号受任している事件の相手方から依頼された他の事件受任中の事件の依頼者の同意
4号公務員として職務上取り扱った事件置かれていない
5号仲裁・調停・和解斡旋その他の裁判外紛争解決手続機関の手続実施者として取り扱った事件置かれていない

弁護士法25条は現行法で9号まであり,弁護士法人等に所属する弁護士についての規定も含む。
したがって,職務基本規程27条の五つの号だけを確認して,法律上の職務制限をすべて確認したことにはならない。

2 28条は依頼者・顧問先・自己の利益との関係を加える

28条の号禁止される事件の概要同意が必要な者
1号相手方が配偶者,直系血族,兄弟姉妹又は同居の親族である事件その事件の依頼者
2号受任している他の事件の依頼者又は継続的な法律事務の提供を約している者を相手方とする事件その事件の依頼者と相手方
3号依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件その事件の依頼者と他の依頼者のいずれも
4号依頼者の利益と自己の経済的利益が相反する事件その事件の依頼者

27条3号は「現在の相手方から,別事件を頼まれる」場面であり,28条2号は「現在の依頼者・顧問先を,新しい事件で相手方にする」場面である。
依頼の向きが逆になると,同意を確認する相手も変わる。
例えば,Aから受任した事件の相手方Bが別件を依頼するときは27条3号を検討するのに対し,Cが現在の依頼者Aを訴える事件を依頼するときは28条2号を検討する。

『解説』第4版106頁~107頁は,28条2号の継続的な法律事務提供先が顧問先に限られないこと,終了した依頼関係についても守秘義務による制約が残り得ることを説明する。
顧問契約の終了だけから,同じ紛争の反対側で自由に活動できると考えてはならない。

第3 相談だけでも制約は生じるか

1 契約書や着手金の有無だけで決まらない

27条1号の前半は,協議を受けて賛助した場合を規定し,2号は一定の信頼関係に基づく協議を規定する。
そのため,正式な事件受任や着手金の支払がないことだけを理由に,利益相反の確認を省略することはできない。

『解説』第4版96頁~99頁は,具体的な事件についての相談・助言と,抽象的な相談や雑談とを区別し,相談の態様,具体性,開示情報の内容等から検討する。
相談が何分であったかだけで一律に判断する規律ではない。
相談時点で27条に該当しない場合でも,得た秘密を別の依頼者のために利用してよいことにはならず,23条の確認を要する。

2 「別事件」は事件番号が違うだけでは足りない

『解説』第4版97頁は,事件の同一性について,訴訟物や手続の形式だけでなく,基礎となる紛争の実体を検討することを説明する。
民事と刑事,訴訟と執行など,手続が違っても,同じ紛争への従前の関与が問題となることがある。

実務上は,相談日,相談者,相手方,関連する会社・親族,紛争の対象及び実際に助言した事項を,後から確認できる範囲で記録しておくことが有用である。
この記録方法は本記事の運用提案であり,相談内容を無制限に事務所全体へ共有することを勧めるものではない。
記録の閲覧権限や共有範囲については,秘密保持との両立を検討する。

第4 同意を得ればよい場面でも,説明と秘密保持を確認する

1 誰の何に対する同意かを明確にする

27条3号及び28条ただし書は,同意の主体をそれぞれ定めている。
例えば,28条2号で新しい依頼者だけの了承を得ても,現在の依頼者・顧問先である相手方の同意に代えることはできない。

『解説』第4版100頁は,27条3号について,事前に利益相反の状態を説明し,十分な理解に基づく真意による同意を得る必要があると説明する。
事後に形式的な確認書を取得するだけでよいとは考えられない。
確認書を作成する場合には,対象事件,関係者,対立する利益,予想される不利益,職務への影響,説明した事項及び同意の日時を記録する方法が考えられる。

2 利益相反の同意と秘密の開示の承諾は別に検討する

同意を求めるために,別の相談者・依頼者の事件の内容を説明する必要が生じることがある。
その説明自体が守秘義務に抵触しないかを,先に検討しなければならない。
『解説』第4版101頁及び109頁は,同意を得る過程での秘密保持を問題としており,必要な承諾を得られず,同意取得が困難となる場合もあることを示す。

相手方に説明してよい情報の範囲を確認せず,利益相反の同意書を完成させるために秘密を開示するという順序は適切ではない。
詳しくは,弁護士の守秘義務を参照されたい。

第5 受任後に利害対立が生じたとき

1 32条の事前説明と42条の事後措置

32条は,同一事件について複数の依頼者がおり,相互に利害対立が生じるおそれがあるとき,受任に当たり,各依頼者に辞任の可能性その他の不利益を説明することを定める。
42条は,その後,現実に利害対立が生じたとき,各依頼者に速やかに事情を告げ,辞任その他の適切な措置を採ることを定める。
受任時の説明をしておけば,後から実際の対立が生じてもそのまま活動を続けてよいわけではない。

『解説』第4版147頁~148頁は,42条の辞任を適切な措置の例示とする一方,一方の代理を継続できるかは,生じた対立と適用される利益相反条項によって異なることを説明する。
27条1号に該当する場面を,28条3号の双方同意で解決できる場面と同視してはならない。

2 遺産分割等で「全員辞任か,一方を継続できるか」

(1) 共同受任時の説明と,対立発生後の対応を分ける

遺産分割で複数の相続人を代理するときは,相手方との対立だけでなく,共同依頼者間の取得財産,評価額,特別受益,寄与分,代償金及び税負担の相違を確認する。
32条は,受任時に対立のおそれがある場合の説明を求め,42条は,受任後に現実の対立が生じた場合の速やかな対応を求める。
共同受任時の包括的な了解だけで,後に生じた具体的な対立への対応を済ませることはできない。

(2) 一部の依頼者だけを継続できるという説明の限界

東京弁護士会『LIBRA』2009年1月号38頁の弁護士倫理解説は,共同依頼者間の遺産取得方法や評価額の対立について,27条1号・2号に直ちに該当するとするのではなく,28条3号や42条に即して検討し,一部の依頼者との委任関係を終了して他の依頼者を引き続き代理する場合もあり得るとする。
これは執筆者による解説であり,裁判所の判断又は一律に受任を認める規則ではない。

一方,『解説』第4版108頁は,共同代理していた相続人間の対立について,27条1号の問題として全員の代理を辞任すべきだとする有力な見解と,その見解への批判を紹介している。
27条1号・2号に該当する事件を,同意の取得だけで許容される28条の事件と扱ってはならない。
一部辞任による継続を検討するときは,終了する依頼者に対する同じ事件での対立代理にならないか,共同受任中に得た秘密を利用せずに残る依頼者の利益を守れるか,新たな対立の内容まで説明して必要な同意を得られるかを,順に確認する必要がある。

同じ遺産の帰属・取得額を争う局面で,従前の依頼者の利益を損なう主張や,その者から得た秘密の利用が必要になる場合には,「一人だけ辞任すれば解決する」と判断すべきではない。
全員辞任を含めた委任関係の解消と,各依頼者が別の弁護士を選ぶための引継ぎを検討する。
他方,単なる連絡方法の相違まで現実の利益相反と同一視するものではなく,何を誰との間で争うのかを具体化することが先決である。

(3) 説明不足と対応の遅れを問題とした議決

日弁連綱紀委員会平成23年8月26日議決(平成23年(綱)第100号,『弁護士懲戒事件議決例集』第14集168頁~171頁)は,共同依頼者である相続人2名のために税務交渉を担当した弁護士について,32条・42条違反を認め,所属弁護士会の懲戒委員会に審査を求めることを相当とした。

問題となったのは,海外送金を贈与として扱えば課税を回避できる一方,相続財産に含めれば一方の依頼者の取得分が生じるという関係である。
同議決は,受任時に辞任の可能性等を明確に説明していなかったことと,一方が他方に自己の相続分の支払等を求め,対立が現実化した後も,調整に努めず両名のために不服申立てを続け,辞任が遅れたことを問題とした。

この事例は,遺産分割調停そのものの共同受任ではなく,相続に関連する税務事件の共同受任に関するものである。
また,確認した議決は綱紀委員会の審査相当の判断であり,戒告・業務停止等の最終処分を示すものではない。
あらゆる相続事件で全員辞任が必須とする根拠にはならないが,対立発生後の説明・調整・辞任の要否の判断を先送りしてよいという根拠にもならない。

(4) 対立を認識した時点で残す記録

実務上は,①対立を認識した日時と争点,②各依頼者の指示,③適用条項と継続できない理由,④秘密を漏らさない説明の範囲,⑤調整又は辞任の方針,⑥次の期日・期限と引継ぎ先を記録することが有用である。
『解説』第4版148頁が説明するように,42条の事情説明は,一人の依頼者から秘密として得た特別受益等を,他の依頼者へ無断で伝える権限を与えるものではない。
辞任時の期限,預り金及び記録の処理は,弁護士が受任事件を途中で辞任するときのルールも参照されたい。

第6 共同事務所・弁護士法人と訴訟行為の効力

1 担当弁護士個人だけを調べて終わらない

共同事務所については,57条が,他の所属弁護士(所属していた場合を含む。)の27条・28条による職務制限との関係を定め,職務の公正を保ち得る事由がある場合の例外を置く。
58条は受任後に該当事由を知った場合の措置を,59条は受任防止のための事件情報の記録等を定める。
弁護士法人等については63条~68条等を併せて確認する必要があり,共同事務所の規定と法人の規定を混同してはならない。

『解説』第4版94頁は,受任後に27条・28条の該当を知ったときにも,秘密保持に留意して依頼者に説明し,辞任その他の適切な措置を採るべきことを説明する。
事務所の移籍・退所に伴う検討は,法律事務所の退所・分裂時チェックリストを参照されたい。

2 規程違反と訴訟行為の排除を区別する

最高裁令和3年4月14日第二小法廷決定(令和2年(許)第37号)は,職務基本規程57条違反にとどまる訴訟行為について,懲戒の原因となり得ることと訴訟上の効力を分け,同条違反だけを理由とする相手方からの排除請求を認めなかった。
情報遮断措置が十分であったと認定した決定でも,倫理上の受任が常に許されるとした決定でもない。
弁護士本人の弁護士法25条違反,事務所内での規程57条違反,秘密の漏えい及び訴訟行為の排除を,それぞれ区別する必要がある。

情報遮断の評価では,記録と電子データだけでなく,補助職員,電話・FAX,会議及び口頭の情報交換も確認する。
『解説』第4版192頁~193頁は,遮断体制を事件の対立の強さ,秘密の共有のおそれ,告知・同意,事件の関連性及び移籍前後の関与等と総合して判断し,遮断体制だけで受任の可否を決めないと説明する。

共同事務所の57条・58条と,弁護士法人の63条~68条は,受任する主体と職務を行えない主体に即して確認する。
64条は他の社員等との関係における職務制限を,65条・66条は法人の業務制限を定める。65条5号についての例外は,同条ただし書の社員数と業務の公正に関する要件も確認し,64条ただし書だけで法人の受任を判断しない。
事務所の同僚の利益相反を扱う57条ただし書の検討を,弁護士本人又は法人についての受任禁止を解除する一般的な例外として用いるべきではない。
原審の具体的な情報遮断措置と,遺言執行者・同一事務所の別の弁護士に関する議決は,法律事務所の退所・分裂における情報遮断の検討で整理している。

第7 個別の場面と出典

1 さらに確認する場面

① 株主代表訴訟で会社の顧問弁護士が取締役を代理する場合
② 取締役責任調査委員会の委員弁護士と後続訴訟
③ 法律事務所の退所・分裂と利益相反
④ 解説第3版と第4版の比較

本記事は,条項ごとの確認順序に加え,共同依頼者間の対立と情報遮断について,確認した解説・裁判例・議決の射程を整理するものである。
見解が分かれる共同受任後の一方代理を,一律に適法又は違反と断定するものではない。
具体的な受任の可否は,当事者,事件,取得済みの秘密,説明と同意及び受任主体を特定した上で判断する必要がある。

2 出典

① 日本弁護士連合会「弁護士職務基本規程(会規第70号)」。23条,27条~28条,32条,42条,56条~59条,62条~68条。
② e-Gov法令検索「弁護士法」。25条。
③ 日本弁護士連合会弁護士倫理委員会編著『解説「弁護士職務基本規程」第4版』(日本弁護士連合会,2026年)。94頁~101頁,103頁~110頁,133頁~134頁,147頁~148頁。本記事では掲載裁判例・議決例を一括して原典確認済みとは扱わず,逐条解説の記述として参照した。
④ 最高裁令和3年4月14日第二小法廷決定(令和2年(許)第37号)。裁判所公表本文1頁~4頁,特に法廷意見3頁。

⑤ 東京弁護士会『LIBRA』2009年1月号38頁「複数当事者受任後の対立の顕在化における一部当事者のみの辞任の是非」(公開PDF)。共同依頼者間の対立に関する執筆者の解説。
⑥ 日弁連綱紀委員会平成23年8月26日議決(平成23年(綱)第100号),『弁護士懲戒事件議決例集』第14集168頁~178頁。日弁連の議決と,併載された所属会の原議決を区別して参照した。
⑦ 『解説』第4版108頁,147頁~148頁,192頁~193頁。共同受任後の対応,事情説明と秘密保持,情報遮断の総合評価。これらの追加資料は令和8年10月3日確認。